説明

種子コーティング装置

【課題】 コーティングの精度にバラツキが生じない種子コーティング装置を提供する。
【解決手段】 底壁11の周端部から周壁12を立設したドラム容器10と、ドラム容器10の底壁11に固定される回転軸21を介してドラム容器10を回転させる駆動部20と、駆動部20を支持する脚体部30と、駆動部20に取付けられたアーム40と、駆動部20と脚体部30との間に取付部51によって取付けられ、ドラム容器10の傾斜角度αを調節するガイド片50と、駆動部20に接続されたコントローラー60と、アーム40に取付けた噴射筒71によってドラム容器10に水Wを供給する水供給部70と、を設けて構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物の種子(主として、水稲用の種籾)の表面をコーティングする装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、植物の種子にコーティングを施す装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。種子をコーティングする理由は様々である。例えば、コーティングによって種子の形状を均一化して播種機による播種を行い易くしたり、あるいは、湛水播栽培する水稲用の種籾に鉄粉のコーティングを施す場合は、その種籾の発芽率を向上させ、鳥害から守り、浮き苗の発生を回避する等のためである。
【0003】
こうした理由で種籾等の種子にコーティングを施す装置には、回転するドラム容器に大量の種子を投入した後、コーティング剤を供給するものがある。この装置は、ドラム容器を回転させて種子を攪拌しながら、その種子の表面にコーティング剤を付着させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−333609号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の装置において、回転するドラム容器内で種子をコーティングする場合、その種子の形状、湿り具合、量、あるいはコーティング剤の種類によって、ドラム容器内における種子の流れが変わるため、コーティングの精度にバラツキが生じてしまう。
【0006】
こうしたバラツキをなくすための手段としては、運転中に、ドラム容器の傾斜角度を変えることが有効である。しかし、従来のコーティング装置は、運転前に傾斜角度を変えることは可能であるが、運転中に変えることは困難であった。また、運転前にドラム容器の傾斜角度を適切に調節するには、十分な経験が必要なため、熟練者に限って行うことができた。
【0007】
また、従来の装置は、水を噴霧するノズルが固定されているため、ドラム容器の傾斜角度を変えると、水が噴霧される方向が相対的に変わってしまう。従って、このことも、コーティングの精度にバラツキが生じてしまうことの一因となっていた。
【0008】
本発明はこうした問題に鑑み創案されたもので、コーティングの精度にバラツキが生じない種子コーティング装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
図1乃至図6を参照して説明する。請求項1に記載の種子コーティング装置1は、種子Sにコーティングを施すものであり、底壁11の周端部から周壁12を立設して形成したドラム容器10と、前記ドラム容器10の底壁11の中心部に固定される回転軸21を備え、その回転軸21を介して前記ドラム容器10を回転させる駆動部20と、地面に載置され、前記駆動部20を支持する脚体部30と、前記駆動部20に取付けられたアーム40と、を備える。
【0010】
また、この装置1は、前記駆動部20と脚体部30との間に取付けられ、少なくとも前記駆動部20または脚体部30に取付けられる部分に複数または長穴状の取付部51を有し、前記ドラム容器10の傾斜角度αを調節するガイド片50と、前記駆動部20に接続され、前記ドラム容器10の回転をオン・オフするメインスイッチ61および前記ドラム容器10の回転速度を調整する速度スイッチ62を備えたコントローラー60と、を備える。
【0011】
さらに、噴射筒71が前記アーム40に取付けられ、前記ドラム容器10に水Wを供給する水供給部70を備える。なお、コーティング剤Cは、手作業によって、直接、ドラム容器10に投入される。
【0012】
請求項2に記載の種子コーティング装置1は、種子Sにコーティングを施すものであり、底壁11の周端部から周壁12を立設して形成したドラム容器10と、前記ドラム容器10の底壁11の中心部に固定される回転軸21を備え、その回転軸21を介して前記ドラム容器10を回転させる駆動部20と、地面に載置され、前記駆動部20を支持する脚体部30と、前記駆動部20に取付けられたアーム40と、を備える。
【0013】
また、この装置1は、前記駆動部20と脚体部30との間に取付けられ、少なくとも前記駆動部20または脚体部30に取付けられる部分に複数または長穴状の取付部51を有し、前記ドラム容器10の傾斜角度αを調節するガイド片50と、前記駆動部20に接続され、前記ドラム容器10の回転をオン・オフするメインスイッチ61および前記ドラム容器10の回転速度を調整する速度スイッチ62を備えたコントローラー60と、を備える。
【0014】
さらに、噴射筒71が前記アーム40に取付けられ、前記ドラム容器10に水Wを供給する水供給部70を備える。コーティング剤Cは、手作業によって、直接、ドラム容器10に投入される。
【0015】
またさらに、前記アーム40に、先端部がドラム容器10の底面角部に達するように取付けられたクレーパ80を備える
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載の種子コーティング装置1は、駆動部20と脚体部30との間に、少なくとも駆動部20または脚体部30に取付けられる部分に複数または長穴状の取付部51を有するガイド片50を設けたので、運転中(ドラム容器10が回転中)においても、ドラム容器10の傾斜角度αを変えることができる。
【0017】
すなわち、例えば、複数の取付部51を有する場合は、当初の取付部51から他の取付部51に変えて脚体部30(または駆動部20)に取付けることによって、ドラム容器10の傾斜角度αを変えることができる。これにより、ドラム容器10内における種子Sの流れを変えることができるため、コーティングの精度にバラツキが生じるといった事態を防止することができる。
【0018】
また、駆動部20に取付けられたアーム40に、水供給部70の噴射筒71を取付けたので、噴射筒71を、ドラム容器10の傾斜角度αを変えた際に、それに追随させることができる。従って、ドラム容器10内に、水Wをそれまでと同一の方向から供給することができるのでコーティングの精度にバラツキが生じない。水Wを同一方向(定位置)から噴霧することで、種子を均一に湿らせることができるからである。
【0019】
すなわち、ドラム容器10の傾斜角度αを変えることによって、水Wの供給方向も同様に変わってしまうと、ドラム容器10の傾斜角度αを変えて種子Sの流れを変えても、種子Sに対して同一の方向から水Wが供給されることになるので、大きな効果を得ることができない。従って、一部の種子Sが極端に湿って、コーティング剤Cがダマ(塊)になったり、種子S同士が付着してしまい、コーティングの精度が低下してしまう結果となる。本発明では、ドラム容器10の傾斜角度αのみを変えて、水Wの供給方向はそれまで通りとするので、ドラム容器10の傾斜角度αを変えたことによる効果を正確に得ることができる。これにより、ダマの発生や種子S同士の付着を防止して、コーティングの精度を高めることができる。
【0020】
請求項2に記載の種子コーティング装置1は、請求項1に記載の発明と同様の効果を発揮する。また、アーム40に、先端部がドラム容器10の底面角部に達するクレーパ80を取付けたので、ドラム容器10の底面角部に溜まった種子Sやコーティング剤Cを掻き落とすことができる。これによって、コーティング剤Cを無駄にすることなく、より効率的な作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る種子コーティング装置の実施形態を示す側面図である。
【図2】図1に示す種子コーティング装置の正面図である。
【図3】図1に示す種子コーティング装置の回転軸およびその周囲を示す一部拡大図である。
【図4】図1に示す種子コーティング装置の取付部およびその周囲を示す一部拡大図である((a)は側面図、(b)は正面断面図)。
【図5】取付部の他の態様を示す拡大図である。
【図6】図1に示す種子コーティング装置のクレーパおよびその周囲を示す一部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明に係る種子コーティング装置1の実施形態を、図1乃至図4および図6に示す。この装置1は、ドラム容器10、駆動部20、脚体部30、二つのアーム40、ガイド片50、コントローラー60、水供給部70、およびクレーパ80を備える。なお、コーティング剤Cは、手作業によって、収納容器90から、直接、ドラム容器10に投入される。本実施形態における装置1は、湛水直播水稲用の種籾Sの表面をコーティングするために使用されるものであるが、他の植物の種子をコーティングするために使用することもできる。
【0023】
ドラム容器10は、円板状の底壁11の全周端部から周壁12を立設して形成されたものであり、上面が開放されている。
【0024】
駆動部20は、箱状である外箱体22を備え、その外箱体22の内部に、モーター(減速機を含む)および、それに連結された回転軸21を有する。また、外箱体22の内部には、電装品が収納されている。回転軸21は、その先端部が外箱体22から突出し、ドラム容器10の底壁11外面の中心部に、その底壁11に対して垂直方向の姿勢で固定されている。この回転軸21は、モーターによって回転し、ドラム容器10を回転させる。また、外箱体22と、ドラム容器10の底壁11との間には円筒状の筒体23が、外箱体22に一体的に組付けられ、回転軸21の先端部がこの筒体23を挿通している。外箱体22の一方側面には連結部材24と規制部材26が設けられている。規制部材26は、ドラム容器10が必要以上に回動してしまうと危険であるため、その回動姿勢を規制するために設けられている。
【0025】
脚体部30は、地面に載置され、駆動部20を支持する。この脚体部30は、地面と平行に配置された基部31と、その基部31から略三脚状に立設された三本の脚片32とを備える。なお、脚片32の数は三本に限定されず、四本以上とすることもできる。脚体部30の上端部は、外箱体22の連結部材24と、軸棒25を介して回動自在に連結されている。これにより、駆動部20およびドラム容器10は、軸棒25を中心として回動する。
【0026】
アーム40は、駆動部20に取付けられている。本実施形態におけるアーム40は、駆動部20の外箱体22の側面に固定されている。
【0027】
ガイド片50は、駆動部20と脚体部30との間に取付けられている。本実施形態のガイド片50は、その一端部が駆動部20の外箱体22に固定され、他端部が脚体部30の脚片32に着脱自在に取付けられている。また、ガイド片50の他端部には、三つの丸穴状の取付部51(第一取付部51a、第二取付部51b、第三取付部51c)が形成されており、その内の一つが、脚片32に締結部材B(ボルトB1とナットB2)によって組付けられる。なお、ボルトB1とナットB2に代えて、例えば、ピンを使用することもできる。
【0028】
本実施形態では、脚片32に貫通孔33を形成し、取付部51に通したボルトB1をこの貫通孔33に挿通し、ナットB2で螺合することによって、ガイド片50を脚片32に組付けている。また、複数の取付部51のうち、第一取付部51aが脚片32に最も近い位置に形成され、第三取付部51cが脚片32から最も遠い位置に形成されている。従って、ドラム容器10の傾斜角度αは、第一取付部51a、第二取付部51bおよび第三取付部51cのいずれを脚片32に組付けるかによって自在に変えることができる。
【0029】
なお、本実施形態における取付部51は、三つの丸穴で構成しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、図5に示すような一つの長穴で構成することもできる。
【0030】
コントローラー60は、駆動部20に電線63を介して電気的に接続され、ドラム容器10の回転をオン・オフするメインスイッチ61と、ドラム容器10の回転速度を調整する速度スイッチ62を備えている。
【0031】
水供給部70は、噴射筒71と連通管73を備える。噴射筒71は、第二アーム42の先端部に取付けられる。また、連通管73は、一端部が噴射筒71に連結され、他端部が水道の蛇口72に連結される。そして、水道の水Wを、連通管73と噴射筒71を介してドラム容器10の内部の種籾Sに供給(噴霧)する。手作業によって、収納容器10から直接ドラム容器10に投入されるコーティング剤Cは、過酸化カルシウム、鉄粉、焼石膏等から成る粉体で構成される。なお、水道の水Wに代えて、他の水(井戸水や貯留水など)をポンプで汲み上げて使用することもできる。
【0032】
そして、クレーパ80は、アーム40に、その先端部がドラム容器10の底壁11と周壁12とで形成される底面角部に達するように取付けられている。
【0033】
本実施形態に係る種子コーティング装置1は、次のようにして使用することができる。まず、ガイド片50を脚片32に一つの取付部51(例えば、第二取付部51b)を介して固定した状態で、ドラム容器10に多量の種籾Sを投入する。
【0034】
次に、コントローラー60のメインスイッチ61をオン状態としてドラム容器10を回転させる。続いて、水供給部70によって、その噴射筒71から水Wを噴霧し、種籾Sの表面を湿らせると共に、コーティング剤Cを少量ずつ投入する。この際、種子Sの表面の湿り具合によって水Wの噴霧量を適宜調整する。
【0035】
そして、種籾Sの形状、湿り具合、量、あるいはコーティング剤Cの種類によって、種子Sとコーティング剤Cが均一に攪拌されていない場合は、コントローラー60の速度スイッチ62を切り替えてドラム容器10の回転数を変え、種籾Sの流れを変える。これによって、均一に攪拌することができるので、コーティングの精度を高めることができる。なお、この作業は、ドラム容器10を回転させながら行うことができるので、攪拌の状態を視認することができる。従って、コーティングの精度のバラツキを防止することができる。
【0036】
また、それと共に、あるいはそれとは別個に、ガイド片50を脚片32に他の取付部51(例えば、第二取付部51b)を介して組付け変える。これにより、ドラム容器10の傾斜角度αを変えて種籾Sの流れを変え、コーティングの精度のバラツキを防止することができる。
【0037】
なお、この作業は、締結部材Bを外した後、回転していない部分である駆動部20やガイド片50を持って行うことができるので、ドラム容器10を回転させながら(コーティングされている種籾Sの状態を視認しながら)実行することができる。
【0038】
この際、噴射ノズルおよび噴出筒は、駆動部20(筒体23)に取付けられているのでドラム容器10に追随して傾動する。従って、ドラム容器10に対してそれまでと同じ方向(位置)に水Wを供給(噴霧)することができる。従って、コーティングの精度のバラツキを、より未然に防止することができる。
【0039】
また、種籾Sやコーティング剤Cは、ドラム容器10の底面角部に溜まり易いが、この装置1は、先端部がその底面角部に達するクレーパ80を設けているので、そうした状況の発生を防止することができる。これにより、効率良く作業することができる。
【0040】
なお、上記実施形態においては、アーム40を一つとし、そのアームに噴射筒71を取付けているが、本発明はこれに限定されるものではなく、アーム40を二つとし、一方に噴射筒71を取付け、他方にクレーパ80を取付けることもできる。
【符号の説明】
【0041】
1 種子コーティング装置
10 ドラム容器
11 底壁
12 周壁
20 駆動部
21 回転軸
22 外箱体
23 筒体
24 連結部材
25 軸棒
26 規制部材
30 脚体部
31 基部
32 脚片
33 貫通孔
40 アーム
50 ガイド片
51 取付部
51a 第一取付部
51b 第二取付部
51c 第三取付部
60 コントローラー
61 メインスイッチ
62 速度スイッチ
63 電線
70 水供給部
71 噴射筒
72 水道(蛇口)
73 連通管
80 クレーパ
90 収納容器
B 締結部材
B1 ボルト
B2 ナット
C コーティング剤
S 種子(種籾)
W 水
α 傾斜角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
種子(S)にコーティングを施す装置であって、底壁(11)の周端部から周壁(12)を立設して形成したドラム容器(10)と、前記ドラム容器の底壁の中心部に固定される回転軸(21)を備え,該回転軸を介して前記ドラム容器を回転させる駆動部(20)と、地面に載置され,前記駆動部を支持する脚体部(30)と、前記駆動部に取付けられたアーム(40)と、前記駆動部と脚体部との間に取付けられ,少なくとも前記駆動部または脚体部に取付けられる部分に複数または長穴状の取付部(51)を有し,前記ドラム容器の傾斜角度(α)を調節するガイド片(50)と、前記駆動部に接続され,前記ドラム容器の回転をオン・オフするメインスイッチ(61)および前記ドラム容器の回転速度を調整する速度スイッチ(62)を備えたコントローラー(60)と、噴射筒(71)が前記アームに取付けられ,前記ドラム容器に水(W)を供給する水供給部(70)と、を備えることを特徴とする種子コーティング装置。
【請求項2】
種子(S)にコーティングを施す装置であって、底壁(11)の周端部から周壁(12)を立設して形成したドラム容器(10)と、前記ドラム容器の底壁の中心部に固定される回転軸(21)を備え,該回転軸を介して前記ドラム容器を回転させる駆動部(20)と、地面に載置され,前記駆動部を支持する脚体部(30)と、前記駆動部に取付けられたアーム(40)と、前記駆動部と脚体部との間に取付けられ,少なくとも前記駆動部または脚体部に取付けられる部分に複数または長穴状の取付部(51)を有し,前記ドラム容器の傾斜角度(α)を調節するガイド片(50)と、前記駆動部に接続され,前記ドラム容器の回転をオン・オフするメインスイッチ(61)および前記ドラム容器の回転速度を調整する速度スイッチ(62)を備えたコントローラー(60)と、噴射筒(71)が前記アームに取付けられ,前記ドラム容器に水(W)を供給する水供給部(70)と、前記アームに,先端部がドラム容器の底面角部に達するように取付けられたクレーパ(80)と、を備えることを特徴とする種子コーティング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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