説明

穀物に含有するγ−アミノ酪酸の富化処理方法

【課題】本発明は、玄米に亀裂を生じることなく、ギャバ富化した玄米を連続的に大量生産して生産性を向上させる方法を提供することを技術的課題とする。
【解決手段】本発明の方法は、仕上げ水分まで乾燥した籾、半乾状態まで乾燥した籾、又は生状態の籾のいずれかに加湿温風を通風し、前記籾に含まれるγ−アミノ酪酸の含有量を富化させる処理を行い、その後、前記籾を仕上げ水分まで乾燥させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、籾(もみ)米(以下、「籾」という。)などの穀物に含有する機能性成分であるγ−アミノ酪酸(通称、「ギャバ(GABA)」という。)を増加させることのできる方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
昨今、食品に含有された機能性成分の一つであるγ−アミノ酪酸が注目されている。γ−アミノ酪酸は、人体の血圧上昇を抑制するなどの健康維持又は疾病予防に有効な物質として知られている。このγ−アミノ酪酸の含有量を増加(富化)させる方法としては、例えば、本出願人による特許文献1の方法が知られている。特許文献1の方法は、一般的な米麦用循環式乾燥機を用いて、原料玄米を機内循環させながら高湿空気を通風して玄米の緩慢な水分上昇を行い、この後に、貯留タンク内に数時間静置させることにより、玄米に胴割れを生じることなくγ−アミノ酪酸の含有量を大幅に富化させるものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−215504号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の方法には玄米中のγ−アミノ酪酸を富化させる際の生産性に問題があった。すなわち、上記特許文献1の方法では、玄米を原料とするとともに一般的な米麦用循環式乾燥機を用いて、玄米に胴割れを生じないように0.2%/h以下の緩慢的な加水を行うため、その加湿に係る所要時間と、その後の貯留タンク内で静置させることによってγ−アミノ酪酸を富化させる所要時間(例えば10時間)とが掛かる。また、この他、前記循環式乾燥機において、玄米中のγ−アミノ酪酸の富化処理がバッチ式で行われるために、γ−アミノ酪酸が富化した玄米を連続的に大量生産することが困難であるという問題点があった。
そこで、本願発明は、上記問題点にかんがみ、玄米に亀裂を生じることなく、γ−アミノ酪酸が富化した玄米を連続的に大量生産して生産性を向上させることのできる方法を提供することを技術的課題としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、請求項1により、
仕上げ水分まで乾燥した籾、半乾状態まで乾燥した籾、又は生状態の籾のいずれかに加湿温風を通風し、前記籾に含まれるγ−アミノ酪酸の含有量を富化させる処理を行い、その後、前記籾を仕上げ水分まで乾燥させる、という技術的手段を講じるものである。
【0006】
また、請求項2により、
仕上げ水分まで乾燥した籾、半乾状態まで乾燥した籾、又は生状態の籾のいずれかをギャバ生成部(12)に連続的に供給し、該ギャバ生成部(12)で前記籾に加湿温風を通風して当該籾に含まれるγ−アミノ酪酸の含有量を富化させる処理を行い、その後、前記籾を仕上げ水分まで乾燥させるようにするとよい。
【0007】
さらに、請求項3により、
荷受部(2)で荷受した籾を粗選部(4)を介して乾燥部(11)に供給し、該乾燥部(11)で半乾状態まで乾燥した前記籾を貯蔵部(19)に一旦貯蔵した後、該貯蔵部(19)から前記籾を前記ギャバ生成部(12)に連続的に供給し、該ギャバ生成部(12)で前記籾に加湿温風を通風して当該籾に含まれるγ−アミノ酪酸の含有量を富化させる処理を行ない、この後、前記籾を前記乾燥部(11)に供給して仕上げ水分まで乾燥させるようにするとよい。
【0008】
また、請求項4により、
荷受部(2)で荷受した籾を粗選部(4)を介して乾燥部(11)に供給し、前記乾燥部(11)で仕上げ水分まで乾燥した前記籾を貯蔵部(19)に一旦貯蔵した後、該貯蔵部(19)から前記籾を前記ギャバ生成部(12)に連続的に供給し、該ギャバ生成部(12)で前記籾に加湿温風を通風して当該籾に含まれるγ−アミノ酪酸の含有量を富化させる処理を行ない、この後、前記籾を前記乾燥部(11)に供給して再度仕上げ水分まで乾燥させるようにするとよい。
【0009】
さらに、請求項5により、
荷受部(2)で荷受した生状態の籾を前記ギャバ生成部(12)に連続的に供給し、該ギャバ生成部(12)で前記籾に加湿温風を通風して当該籾に含まれるγ−アミノ酪酸の含有量を富化させる処理を行ない、この後、前記籾を乾燥部(11)に供給して仕上げ水分まで乾燥させるようにするとよい。
【0010】
また、請求項6により、
前記籾に通風する加湿温風は、温度約70℃、湿度90%〜98%であり、前記加湿温風の通風時に前記ギャバ生成タンク(12a)内で籾が滞留する時間を少なくとも2時間から4時間とするのがよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、共同乾燥調製施設に、荷受籾に含まれるγ−アミノ酪酸の含有量を富化させるギャバ生成部を配設して、該ギャバ生成部に、荷受籾を仕上げ状態にした籾、又は半乾燥状態にした籾、更には、生状態の籾のいずれかを連続的に供給して加湿温風を通風して、γ−アミノ酪酸の富化処理した籾を効率よく連続的に大量生産して貯蔵することができる。このため、必要に応じて、γ−アミノ酪酸が富化した籾を籾摺・精選等の処理を行ってγ−アミノ酪酸を富化させた玄米(お米)を出荷することができるものである。よって、γ−アミノ酪酸が富化したお米商品を市場に迅速に供給することができる。また、本発明によってγ−アミノ酪酸を富化させた籾は、そのまま家畜等の飼料としても使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の方法で使用するγ−アミノ酪酸の富化穀物の製造設備((大規模穀物乾燥調製貯蔵施設(共同乾燥調製施設))を示す概略全体ブロック図である。
【図2】ギャバ生成装置の縦断面図である。(a)は正断面図であり、(b)は側断面図を表す。
【図3】ギャバ生成装置の他の実施例を示した概略斜視図である。
【図4】本発明の実施例1、実施例2及び実施例3の各生産工程のフロー図である。
【図5】本発明の実施例1、実施例2及び実施例3における加湿温風の通風条件等を示した一覧表である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の方法で使用するγ−アミノ酪酸の富化穀物の製造施設について説明する。図1は、本発明の方法で使用するγ−アミノ酪酸の富化穀物の製造設備1を示したブロック図であり、大規模穀物乾燥調製貯蔵施設(共同乾燥調製施設)1を基礎とするものである。前記大規模穀物乾燥調製貯蔵施設1は、収穫後の高水分籾を荷受する荷受ポッパー(荷受部)2を備え、該荷受ホッパー2の後工程に続いて、穀物を揚穀搬送する昇降機3、夾雑物を除去する粗選機(粗選部)4、荷受籾の重量を測定する計量機5を備える。該計量機5の後工程には、昇降機6に続いて、切換弁7を介して一方側に生籾貯留通風タンク設備8を設け、他方側に昇降機9を設ける。前記生籾貯留通風タンク設備8は、複数の貯留タンク8aを備え、各貯留タンク8aは送風機8bからの送風を生籾に通風できる構成とする。また、前記各貯留タンク8aの上方には籾を各貯留タンク8aに供給する供給搬送コンベヤー8cを配設する一方、下方には貯留タンク8aから排出された籾を搬送する排出搬送コンベヤー8dを配設する。該排出搬送コンベヤー8dの後工程は前記昇降機9に連絡する。
【0014】
前記昇降機9の後工程には、切換弁10を介して一方側に循環型穀物乾燥機(乾燥部)11を設け、他方側にはギャバ生成装置12を設ける。なお、循環型穀物乾燥機11の設置台数は、施設の処理能力を高めるため、複数台を配置するのが好ましい。
【0015】
前記ギャバ生成装置(ギャバ生成部)12は(図2参照)、任意の大容量の籾を入れることができるギャバ生成タンク12aを有し、該ギャバ生成タンク12aは、上部に原料籾供給口12bを設ける一方、下部に排出繰出バルブ12cを設ける。また、前記ギャバ生成タンク12aは、内部に、多孔壁によって構成した送風管12dと、同じく多孔壁によって構成した排気管12eとをそれぞれ複数横設する。すなわち、複数の前記送風管12dを等間隔に並設するとともに、複数の前記排気管12eを前記送風管12dの列の下方位置に等間隔に並設して構成し、前記送風管12d及び排気管12を上下方向に千鳥状に配設する。また、前記送風管12d及び排気管12eよりも下方位置には複数個の繰出バルブ12hを配設し、籾を前記排出繰出バルブ12cに繰り落とすようにしてある。
【0016】
前記各送風管12dの送風供給側には、各送風管12d内に加湿温風を導入するための加湿温風供給風胴12fが設けてあり、該加湿温風供給風胴12fの上流側には加湿温風生成供給装置13が配設してある。そして、該加湿温風生成供給装置13は、加湿温風の供給上流側から送風ファン13a、熱交換器13b、蒸気混合器13c及び除水器13dを順次配設して前記加湿温風供給風胴12fに加湿温風が供給できるように構成してある。
【0017】
前記熱交換器13bは、送風ファン13aから送られた風(空気)を加熱するものであり、前記蒸気混合器13cは、加熱されて送られてきた空気に蒸気を添加して加湿するものである。そして、前記除水器13dは、送られてくる加湿温風によって生成された結露水を排除するものである。
【0018】
前記各排気管12eの排風側には、各排気管12e内からの排風を合流させてまとめて機外に排風するための排風胴12gが設けてあり、該排風胴12gの排風側には吸引ファン14が接続してある。
【0019】
また、前記排出繰出バルブ12cの下流側には切換弁16aが配設してあり、該切換弁16aの一方側は、穀物還流装置16としての昇降機やエアー搬送装置を構成して籾を前記ギャバ生成タンク12aに還流するようにしてある。なお、該切換弁16aの他方側は、前記ギャバ生成タンク12aでγ−アミノ酪酸の富化作用を受けた籾を次工程に搬送する搬送路と接続している。
【0020】
次に、ギャバ生成装置の他の実施例として、図3におけるギャバ生成装置15を説明する。該ギャバ生成装置15が前記ギャバ生成装置12と異なる構成点は、籾の流下路の点にあり、図3に示したように、上方から供給された籾を上下方向にジグザグの層状に流下させる一対の穀物流下層15a,15aを間隔を介して並設した点にある。各穀物流下層15aは、側面を、穀物の流下スペースを設けて対向配設させた外部側の多孔壁15bと内部側の多孔壁15cとからなる一対の対向した側面部及び、他方の一対の対向した側面部からなるタンク側壁から構成する。また、前記のとおり各穀物流下層15aは、流下する穀物が撹拌されるように上下方向にわたってジグザグ状に構成する。このため、各穀物流下層15aの内部には、複数の傾斜板15dを上下方向に適宜間隔をおいて配設するとともに、これに合わせて前記内部側の各多孔壁15cの形状もジグザグ状に形成する。また、前記各穀物流下層15aの下端部には、穀物を排出するための繰出バルブ15hをそれぞれ配設し、該繰出バルブ15hは、搬送手段(図示せず)を介して次工程に接続している。
【0021】
また、前記各穀物流下層15aにおける前記外部側の多孔壁15bの各外方側に加湿温風供給風胴15eを構成する一方、前記各穀物流下層15aの内方側に、加湿温風供給風胴15eから供給されて各穀物流下層15aを通過した加熱温風の排風胴15fを構成する。該排風胴15fは、排出口側(図示せず)に、排風胴15f内の排風を機外に吸引するための吸引ファン(図示せず)が配管を介して接続してある。また、前記各加湿温風供給風胴15eの下部供給側は、配管15gを介して、前記ギャバ生成装置12(図2)で示したものと同じ加湿温風生成供給装置13と接続する。
【0022】
前記ギャバ生成装置12,15の各後工程は、切換弁16aを介して一方側を、昇降機17及び上部搬送供給コンベヤー18を介して、複数からなる穀物貯蔵サイロ(貯蔵部)19に接続し(図1参照)、他方側は、前記ギャバ生成装置12,15内に籾を還流するための昇降機16に接続してある。前記各穀物貯蔵サイロ19の下方には、各穀物貯蔵サイロ19から排出された籾を搬出する下部搬出コンベヤー20を配設し、該下部搬出コンベヤー20の下流側は切換弁21に接続し、該切換弁21の一方側は昇降機22を介して前記ギャバ生成装置12,15の原料供給側に配管を介して接続してあり、他方側は籾摺精選工程(精選出荷部)23に配管を介して接続してある。
【0023】
なお、前記γ−アミノ酪酸の富化穀物の製造設備1には、施設の全体的な運転制御を行う中央制御部24を構成し、前記各貯留タンク8aからの生籾の排出命令や、前記各穀物貯蔵サイロ19からの半乾籾や本乾燥籾(乾燥仕上り籾)の排出命令などが行われるようになっている。そして、前記中央制御部24には、図4に基づいて後述する運転制御プログラムが内蔵してある。該運転制御プログラムは、生籾からγ−アミノ酪酸の富化を行う運転制御プログラム(実施例1)、半乾籾からγ−アミノ酪酸の富化を行う運転制御プログラム(実施例2)及び本乾燥籾からγ−アミノ酪酸の富化を行う運転制御プログラム(実施例3)からなる。
【0024】
次に、本発明の方法で使用するγ−アミノ酪酸の富化穀物の製造設備1の作用について、図4のフローを参照しながら、前記三つの実施例について説明する。
【0025】
実施例1(生籾からギャバ富化する運転制御プログラム):
荷受ホッパー2に荷受された高水分籾(例えば水分24%)は、前記中央制御部24による管理のもと、粗選機4及び計量機5を経て貯留タンク8aに順次一次的に貯留されて、前記送風機8bからの送風によって通風される(ステップ1,ステップ2)。
【0026】
次に、前記貯留タンク8aに一次貯留された生籾は、前記ギャバ生成装置12に順次供給し、ギャバ生成タンク12a内に堆積される。ギャバ生成タンク12a内に生籾が満量まで供給されたら、その時点で前記貯留タンク8aからの生籾の搬送供給を一旦中止するとともに、ギャバ生成タンク12aの各繰出しバルブ12h及び排出繰出バルブ12cの各駆動を開始する。また、同じく、前記加湿温風生成供給装置13及び吸引ファン14の駆動を開始する。これにより、前記加湿温風生成供給装置13で生成された加湿温風は、吸引ファン14の吸引作用によって、加湿温風供給風胴12fから各送風管12d内に供給された後に、各送風管12dを構成する多孔壁の各孔から噴風されて生籾の粒間を通風して生籾を加湿した後、前記各排気管12eを構成する多孔壁の各孔から各排気管12e内に吸入され、排風胴12gを介して吸引ファン14から排風される。
【0027】
初期運転(還流制御運転):
前記ギャバ生成タンク12a内の生籾は、前記加湿温風によって加湿及び加温されながら排出繰出バルブ12cの駆動によって順次繰り出され、前記切換弁16a及び穀物還流装置16を介して該ギャバ生成タンク12a内に還流される。このとき、生籾のγ−アミノ酪酸の富化条件として(図5の条件表参照)、前記ギャバ生成タンク12a内の生籾に通風する加湿温風の温度を約70℃で湿度90%〜98%とし、かつ、通風時間(タンク内滞留時間)を少なくとも2時間とするのがよい。このため、運転開始直後の初期運転においては、ギャバ生成タンク12a内の下部に堆積した生籾に少なくとも2時間の通風時間(タンク内滞留時間)を与えるため、ギャバ生成タンク12aの大きさ及び/又は繰出し速度等(流下速度)を考慮しながら、前記生籾を、穀物還流装置16を介してギャバ生成タンク12a内に任意時間還流・循環させる。
【0028】
γ−アミノ酪酸の富化:
γ−アミノ酪酸は、籾内部の玄米に水分を付加することで、主に胚芽内に蓄積されたグルタミン酸が脱炭酸酵素によって転換・生成されるものであり、γ−アミノ酪酸の生成に適した温度・湿度の空気による玄米の加湿により胚芽中で富化(生成)されて、胚乳部に移行する。
【0029】
連続運転:
前記初期運転を終えると、続いて、連続運転を行う。すなわち、前記初期運転によってギャバ生成タンク12aで2時間の循環・通風を終え、このとき水分が約27%となった生籾(γ−アミノ酪酸が富化した籾)を排出繰出バルブ12cから順次排出し、事前に切換えた前記切換弁16aを介して前記循環型穀物乾燥機11に搬送供給し、乾燥運転を開始する。その一方で、ギャバ生成タンク12aへの新たな生籾の搬送供給を再開し、γ−アミノ酪酸の富化を終えて排出された分だけ貯留タンク8aから生籾原料をギャバ生成タンク12aに供給し、γ−アミノ酪酸が富化した生籾の生産を連続して行い1回の流下でγ−アミノ酪酸を富化させる。このとき、新たに供給された生籾原料が前記条件の加湿温風の通風を2時間受けることができるように各繰出しバルブ12hの駆動スピードが調整され、これによって、時間当たり約20トンのギャバ富化した生籾を製造することができる(以上がステップ3)。
【0030】
なお、本発明は籾を対象としているので、前記加湿温風の通風条件が「加湿温風を温度約70℃で湿度90%〜98%、かつ、通風時間(タンク内滞留時間)を少なくとも2時間」であっても、玄米の場合における胴割れ及びその後工程での砕米が生じることなく、効率よくγ−アミノ酪酸が富化した生籾を大量に生産することができる。
【0031】
こうして、前記循環型穀物乾燥機11のタンク内にγ−アミノ酪酸の富化を終えた生籾が搬送されて所定量が張り込まれると、循環型穀物乾燥機11は乾燥運転を開始して、水分が約17%の、いわゆる半乾籾になるまで生籾を熱風通風しながら循環乾燥を行う(ステップ4)。
【0032】
前記循環型穀物乾燥機11において乾燥が終わると、籾を該循環型穀物乾燥機11から排出し、前記穀物貯蔵サイロ19に搬送して一旦貯留する(ステップ5)。そして、前記循環型穀物乾燥機11の空き状況をみながら、前記半乾籾を前記循環型穀物乾燥機11に搬送して水分約15%まで仕上げ乾燥を行い、仕上げ乾燥終了後は、再度、前記穀物貯蔵サイロ19に搬送して貯蔵する(ステップ6,ステップ7)。
【0033】
上記実施例1のようにしてγ−アミノ酪酸を富化した籾について、籾摺りを行った玄米のγ−アミノ酪酸の含有量(GABA値)を測定したところ、通常の玄米では2.0mg/100gd.bであるものが、本実施例による玄米では18mg/100gd.b、それを無洗米処理した米粒では14mg/100gd.bの各含有量であり、γ−アミノ酪酸の含有量が増加していることが確認された。また、本実施例による玄米又は無洗米を炊飯した米飯は、食味が良好であるが、いわゆる籾臭については多少あった(図5参照)。
【0034】
実施例2(半乾籾からγ−アミノ酪酸を富化する運転制御プログラム):
本実施例2の説明において、前記実施例1と重複するステップの説明は省略する。荷受ホッパー2に荷受された高水分籾(例えば水分24%)は、順次、循環型穀物乾燥機11に搬送されて張り込まれ、水分が約17%の半乾籾になるまで循環乾燥される(ステップ1、ステップ2)。次いで、乾燥が終了した半乾籾は、前記循環型穀物乾燥機11から排出・搬送され、前記穀物貯蔵サイロ19に貯留される。このようにして、前記荷受された全ての高水分籾を複数の循環型穀物乾燥機11によって半乾籾状態(水分約17%)まで乾燥し、前記穀物貯蔵サイロ19に一旦貯留する(ステップ3)。
【0035】
次いで、前記穀物貯蔵サイロ19に貯留した半乾籾を順次、ギャバ生成タンク12aに供給する。γ−アミノ酪酸を富化させる条件は、前記実施例1のステップ3と同じく、前記ギャバ生成タンク12a内の籾に通風する加湿温風を温度約70℃で湿度90%〜98%とし、かつ、通風時間(タンク内滞留時間)を少なくとも2時間とする(図5の条件表参照)。そして、前記実施例1と同様に初期運転(還流制御運転)とこれに続く連続運転とを行って、時間当たり20トンのγ−アミノ酪酸が富化した生籾を製造することができる(ステップ4)。
【0036】
次いで、前記ステップ4でγ−アミノ酪酸の富化された籾(水分約20%)を順次複数の循環型穀物乾燥機11に搬送供給して仕上げ水分の約15%まで乾燥し、乾燥を終えた籾は前記穀物貯蔵サイロ19に貯留する(ステップ5、ステップ6)
【0037】
上記実施例2のようにしてγ−アミノ酪酸が富化した籾について、籾摺りを行った玄米のγ−アミノ酪酸の含有量(GABA値)を測定したところ、通常の玄米では2.0mg/100gd.bであるものが、本実施例による玄米では18mg/100gd.b、それを無洗米処理にした米粒では14mg/100gd.bの各含有量であり、本実施例によりγ−アミノ酪酸の含有量が増加していることが確認された。また、本実施例による玄米又は無洗米を炊飯した米飯は、食味が良好であり、いわゆる籾臭については気にならない程度であった(図5参照)。
【0038】
なお、上記実施例2における前記加湿温風の通風条件(加湿温風を温度約70℃で湿度90%〜98%、かつ、通風時間(タンク内滞留時間)を少なくとも2時間)については、前記実施例1で述べたように、籾であるが故に胴割れが生じることなく、効率よくγ−アミノ酪酸を富化することができた。
【0039】
実施例3(乾燥籾からギャバ富化する運転制御プログラム):
本実施例3の説明において、前記実施例1及び実施例2と重複するステップの説明は省略する。荷受ホッパー2に荷受された高水分籾(例えば水分24%)は、順次、循環型穀物乾燥機11に搬送されて張り込まれ、水分が約15%(仕上げ乾燥籾)になるまで循環乾燥される(ステップ1、ステップ2)。
【0040】
次いで、乾燥が終了した仕上げ乾燥籾を、順次、ギャバ生成タンク12aに供給する。γ−アミノ酪酸を富化する条件は、前記ギャバ生成タンク12a内の籾に通風する加湿温風を温度約70℃で湿度90%〜98%とし、かつ、通風時間(籾のタンク内滞留時間)を少なくとも4時間とする(図5の条件表参照)。そして、前記実施例1と同様に初期運転(還流制御運転)と連続運転とを行って、時間当たり20トンのギャバ富化した生籾を製造することができる(ステップ3)。
なお、乾燥が終了した仕上げ乾燥籾は、一旦前記循環型穀物乾燥機11から排出・搬送して前記穀物貯蔵サイロ19に貯留しておくようにしてもよい。
【0041】
次いで、前記ステップ3でγ−アミノ酪酸が富化された籾(水分が約18%に上昇)を順次複数の循環型穀物乾燥機11に搬送供給して仕上げ水分の約15%まで乾燥し、乾燥を終えた籾は前記穀物貯蔵サイロ19に貯留する(ステップ4、ステップ5)
【0042】
上記実施例3においてγ−アミノ酪酸が富化した籾について、籾摺りを行った玄米のγ−アミノ酪酸の含有量(GABA値)を測定したところ、通常の玄米では2.0mg/100gd.bであるものが、本実施例による玄米では18mg/100gd.b、それを無洗米処理にした精白米粒では14mg/100gd.bの各含有量であり、本実施例においてγ−アミノ酪酸の含有量が増加していることが確認された。また、本実施例による玄米又は無洗米を炊飯した米飯は、食味が良好であり、いわゆる籾臭については気にならない程度であった(図5参照)。
【0043】
なお、上記実施例3における加湿温風の通風条件(加湿温風を温度約70℃で湿度90%〜98%、かつ、通風時間(タンク内滞留時間)を少なくとも4時間)については、前記実施例1及び実施例2で述べたように、籾であるが故に胴割れが生じることなく、効率よくγ−アミノ酪酸が富化した籾を大量に生産することができた。
【0044】
前記実施例1、実施例2及び実施例3における方法で使用する大規模穀物乾燥調製貯蔵施設(共同乾燥調製施設)1においてγ−アミノ酪酸を富化した大量の籾は穀物貯蔵サイロに備蓄されるものであり、需要に応じて籾摺り・精選等の処理を施して適宜出荷することができるものである。よって、γ−アミノ酪酸を富化したお米をスムーズかつ迅速に市場に供給することができる。また、本発明によるγ−アミノ酪酸が富化した籾は、そのまま家畜等の飼料としても使用することができる。
【0045】
本発明における前記実施例1(生籾からギャバ富化)、実施例2(半乾籾からギャバ富化)及び実施例3(仕上げ乾燥籾からギャバ富化)に関しては、実施例2を採用するのがより好ましい。その理由として、実施例2は、荷受籾を一旦半乾燥して貯蔵可能にした後にγ−アミノ酪酸の富化処理をするので、共同乾燥調製施設の荷受工程において荷受待ち等の稼働ロスを最小限にできるほか、米飯品質において比較的籾臭が気にならない故である。
【0046】
なお、本発明は、前記実施例1、実施例2及び実施例3を適宜切換えて実施できるように中央制御部24において制御するようにすることもできる。これにより、収穫シーズン中の共同乾燥調製施設の荷受ピーク時期の実施形態と、荷受ピーク時期でない時期の実施形態とを任意に切換えて、共同乾燥調製施設の稼働率を維持しつつ効率的にγ−アミノ酪酸が富化したお米を大量生産することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0047】
昨今注目されているγ−アミノ酪酸が富化した米を効率的に大量生産し、市場に対して迅速な供給が可能になる。また、昨今のトウモロコシなどの輸入家畜飼料の価格の高騰化を背景に、トウモロコシなどの家畜飼料の一部に代わるものを日本国内において大量生産することができる。
【符号の説明】
【0048】
1 ギャバ富化穀物の製造設備(大規模穀物乾燥調製貯蔵施設(共同乾燥調製施設))
2 荷受ホッパー(荷受部)
3 昇降機
4 粗選機(粗選部)
5 計量機
6 昇降機
7 切換弁
8 生籾貯留通風タンク設備
8a 貯留タンク
8b 排出搬送コンベヤー
8c 供給搬送コンベヤー
8d 送風機
9 昇降機
10 切換弁
11 循環型穀物乾燥機(乾燥部)
12 ギャバ生成装置(ギャバ生成部)
12a ギャバ生成タンク
12b 原料籾供給口
12c 排出繰出バルブ
12d 送風管
12e 排気管
12f 加湿温風供給風胴
12g 排風胴
12h 繰出バルブ
13 加湿温風生成供給装置
13a 送風ファン
13b 熱交換器
13c 蒸気混合器
13d 除水器
14 吸引ファン
15 ギャバ生成装置(他の実施例)
15a 穀物流下層
15b 多孔壁(外側部)
15c 多孔壁(内側部)
15d 傾斜板
15e 加湿温風供給風胴
15f 排風胴
15g 配管
15h 繰出バルブ
16 穀物還流装置
16a 切換弁
17 昇降機
18 上部搬送供給コンベヤー
19 穀物貯蔵サイロ(貯蔵部)
20 下部搬出コンベヤー
21 切換弁
22 昇降機
23 籾摺精選工程(精選出荷部)
24 中央制御部



【特許請求の範囲】
【請求項1】
仕上げ水分まで乾燥した籾、半乾状態まで乾燥した籾、又は生状態の籾のいずれかに加湿温風を通風し、前記籾に含まれるγ−アミノ酪酸の含有量を富化させる処理を行い、その後、前記籾を仕上げ水分まで乾燥させるγ−アミノ酪酸の富化処理方法。
【請求項2】
請求項1記載のγ−アミノ酪酸の富化処理方法であって、
仕上げ水分まで乾燥した籾、半乾状態まで乾燥した籾、又は生状態の籾のいずれかをギャバ生成部(12)に連続的に供給し、該ギャバ生成部(12)で前記籾に加湿温風を通風して当該籾に含まれるγ−アミノ酪酸の含有量を富化させる処理を行い、その後、前記籾を仕上げ水分まで乾燥させる共同乾燥調製施設におけるγ−アミノ酪酸の富化処理方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載のγ−アミノ酪酸の富化処理方法であって、
荷受部(2)で荷受した籾を粗選部(4)を介して乾燥部(11)に供給し、該乾燥部(11)で半乾状態まで乾燥した前記籾を貯蔵部(19)に一旦貯蔵した後、該貯蔵部(19)から前記籾をギャバ生成部(12)に連続的に供給し、該ギャバ生成部(12)で前記籾に加湿温風を通風して当該籾に含まれるγ−アミノ酪酸の含有量を富化させる処理を行ない、この後、前記籾を前記乾燥部(11)に供給して仕上げ水分まで乾燥させるγ−アミノ酪酸の富化処理方法。
【請求項4】
請求項1又は2記載のγ−アミノ酪酸の富化処理方法であって、
荷受部(2)で荷受した籾を粗選部(4)を介して乾燥部(11)に供給し、前記乾燥部(11)で仕上げ水分まで乾燥した前記籾を貯蔵部(19)に一旦貯蔵した後、該貯蔵部(19)から前記籾をギャバ生成部(12)に連続的に供給し、該ギャバ生成部(12)で前記籾に加湿温風を通風して当該籾に含まれるγ−アミノ酪酸の含有量を富化させる処理を行ない、この後、前記籾を前記乾燥部(11)に供給して再度仕上げ水分まで乾燥させるγ−アミノ酪酸の富化処理方法。
【請求項5】
請求項1又は2記載のγ−アミノ酪酸の富化処理方法であって、
荷受部(2)で荷受した生状態の籾をギャバ生成部(12)に連続的に供給し、該ギャバ生成部(12)で前記籾に加湿温風を通風して当該籾に含まれるγ−アミノ酪酸の含有量を富化させる処理を行ない、この後、前記籾を乾燥部(11)に供給して仕上げ水分まで乾燥させるγ−アミノ酪酸の富化処理方法。
【請求項6】
請求項2乃至5のいずれかに記載のγ−アミノ酪酸の富化処理方法であって、
前記籾に通風する加湿温風は、温度約70℃、湿度90%〜98%であり、前記加湿温風の通風時に前記ギャバ生成タンク(12a)内で籾が滞留する時間を少なくとも2時間から4時間とする共同乾燥調製施設におけるγ−アミノ酪酸の富化処理方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−139236(P2012−139236A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−72614(P2012−72614)
【出願日】平成24年3月27日(2012.3.27)
【分割の表示】特願2009−94786(P2009−94786)の分割
【原出願日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【出願人】(000001812)株式会社サタケ (223)
【Fターム(参考)】