説明

穀物乾燥調製施設

【課題】 自然が相手の農業にふさわしく自然エネルギーそのものである太陽熱を何れの乾燥条件下であっても最大限に活用して、所要の出荷日時に調製済み穀物を出荷可能にする穀物乾燥調製施設を提供する。
【解決手段】 荷受け部1で荷受けした未乾燥穀物を、太陽熱乾燥部2、穀物を貯留し常温空気を通風して乾燥を施す貯留乾燥3、および加温空気を通風して乾燥を施す加温乾燥4による各乾燥手段をその順で優先選択して乾燥する。選択した各乾燥手段の乾燥処理条件を所要の出荷日時に調製済み穀物を出荷可能にするように選定する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、収穫した未乾燥穀物を荷受けし、荷受けした未乾燥穀物を所定の水分まで仕上げ乾燥したうえ、脱ぷ選別等の調製を行って出荷する穀物乾燥調製施設に関する。
【0002】
【従来の技術】収穫した未乾燥穀物の荷受け装置、太陽熱乾燥装置、加温風による循環型通風乾燥装置、穀物貯留装置、籾摺調製装置、出荷計量装置等を備えた穀物乾燥調製施設は、実開平4−95291号公報に記載されているものが知られており、この従来の穀物乾燥調製施設においては、荷受けした未乾燥穀物を太陽熱乾燥装置で所定の水分まで乾燥し、乾燥した穀物を穀物貯留装置に貯留しておき、穀物貯留装置から乾燥穀物を取り出して籾摺り等の調製を施して出荷している。
【0003】また、上記公報に記載されている従来の穀物乾燥調製施設において、籾の乾燥に比して3倍程度の乾燥能力を要する小麦の乾燥の場合には、太陽熱乾燥装置に加温風によって穀物を乾燥する循環型穀物乾燥機を併用して乾燥能力の不足を補うことが行われている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】従来のこの種の穀物乾燥調製施設において、収穫した未乾燥籾を太陽熱乾燥により仕上げ水分まで乾燥するには、未乾燥籾の水分が24%、仕上げ水分が14%とすると通常2日間を要している。このため、太陽熱乾燥のみでは、所要の出荷日時に乾燥調製済みの籾の出荷ができない場合があるので、前記公報に記載されている穀物乾燥調製施設のように、太陽熱乾燥に加温乾燥を併用すれば、所要の日時に乾燥調製済み籾の出荷が可能である。
【0005】しかしながら、穀物を太陽熱により乾燥することは、特に自然を相手にして成り立つ農業の分野で自然エネルギーの有効利用を図ることにより、化石燃料の使用をできるだけ少なくして省エネルギーを達成し、自然環境を守るところに主眼があるので、従来のこの種の穀物乾燥調製施設のように、太陽熱乾燥に加温乾燥を単に併用するのみでは、必ずしもその要請に十分応えられないのが実状である。
【0006】そこで、本発明は、従来の太陽熱乾燥能力の不足分を単に加温乾燥で補うという発想を大きく転換して、太陽熱乾燥、穀物を貯留し常温空気を通風して乾燥を施す貯留乾燥、および加温空気を通風して乾燥を施す加温乾燥による各乾燥手段の有機的活用を図り、もって、自然が相手の農業にふさわしく自然エネルギーそのものである太陽熱を何れの乾燥条件下であっても最大限に活用し、しかも所要の出荷日時に調製済み穀物を出荷可能にする穀物乾燥調製施設を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するための本発明に係る穀物乾燥調製施設は、収穫した未乾燥穀物を荷受けし、荷受けした未乾燥穀物を所定の水分まで仕上げ乾燥したうえ、脱ぷ選別等の調製を行って出荷する穀物乾燥調製施設であって、太陽熱乾燥、穀物を貯留し常温空気を通風して乾燥を施す貯留乾燥、および加温空気を通風して乾燥を施す加温乾燥による各乾燥手段をその順で優先選択し、かつ選択した各乾燥手段の乾燥処理条件を所要の出荷日時に調製済み穀物を出荷可能に選定して、荷受けした未乾燥穀物を乾燥することを特徴とするものである。
【0008】そして、本発明に係る穀物乾燥調製施設おいては、太陽熱乾燥を、荷受けした未乾燥穀物の予備乾燥手段とし、貯留乾燥を、太陽熱乾燥により予備乾燥した穀物を累積貯留する手段とすることが好適である。
【0009】
【発明の実施の形態】添付図面において、図1は本発明に係る穀物乾燥調製施設の全体構成を示すブロック図、図2ないし図5は図1の各構成部をそれぞれ示し、図2はその荷受け部の構成図、図3は太陽熱乾燥部の構成図、図4は貯留乾燥部の構成図、図5は加温乾燥部および出荷部の構成図である。
【0010】図1において、1は荷受け部、2は太陽熱乾燥部、3は穀物を貯留し常温空気を通風して乾燥を施す貯留乾燥部、4は加温空気を通風して乾燥を施す加温乾燥部、5は出荷部である。
【0011】図1に示すように、荷受け部1で荷受けされた未乾燥穀物は、太陽熱乾燥部2に優先して送られ、太陽熱により乾燥される。そして、太陽熱乾燥部2で予め設定した乾燥時間内に穀物が仕上げ水分まで乾燥できる場合は、太陽熱乾燥部2から仕上げ乾燥穀物を出荷部5に送出し、脱ぷその他所要の調製処理を施し袋詰めして出荷される。未乾燥穀物は、収穫した籾で水分が24%程度であり、籾の仕上げ水分は14%程度である。
【0012】太陽熱乾燥部2で予め設定した乾燥時間内に穀物が仕上げ水分まで乾燥できない場合は、太陽熱乾燥部2で設定時間内において最大限乾燥するか、または予め設定した一定の水分まで乾燥したうえ、貯留乾燥部3に送り、貯留中に常温風の通風により乾燥し、ここで仕上げ水分まで乾燥できるときは仕上げ乾燥穀物を出荷部5に送り、所要の調製処理を施して出荷するが、貯留乾燥部3で仕上げ水分まで乾燥する時間的余裕がない場合は、加温乾燥部4に送って仕上げ水分まで加温乾燥したうえ出荷部5に送り、所要の調製処理を施して出荷する。
【0013】なお、図示の乾燥調製施設においては、荷受け部1で荷受けした未乾燥穀物を直接貯留乾燥部3に送って貯留乾燥により仕上げ水分まで乾燥して出荷部5から出荷することや、未乾燥穀物を直接加温乾燥部4に送って加温乾燥により仕上げ水分まで乾燥して出荷部5から出荷することも可能であり、さらに、荷受け部1で荷受けした未乾燥穀物を貯留乾燥部3での貯留乾燥を経たうえ加温乾燥部4での加温乾燥で仕上げ水分まで乾燥して出荷部5から出荷することも可能である。
【0014】本発明においては、前記の構成になる穀物乾燥調製施設において、荷受け部1で荷受けした未乾燥穀物を、太陽熱乾燥、貯留乾燥、および加温乾燥の順に優先させて、その各乾燥手段を選定して仕上げ水分まで乾燥処理するが、各乾燥手段の選定条件としては、所要の出荷日時に当該穀物乾燥調製施設に求められる量の調製済み穀物を出荷可能にすることを前提として、各乾燥部の乾燥能力、その他種々の条件を勘案して行われる。
【0015】したがって、太陽熱乾燥部2のみで所要の乾燥処理が可能な場合は、太陽熱乾燥部1から直接仕上げ乾燥穀物を出荷部5に送出し、また、太陽熱乾燥部2で仕上げ乾燥された穀物を一旦貯留乾燥部3に貯留して順次所要量の穀物を出荷部5に送出する。
【0016】また、太陽熱乾燥部2における乾燥のみで乾燥能力が不足する場合は、太陽熱乾燥部2で穀物を半乾状態(籾では20〜17%程度)まで予備乾燥し、それを貯留乾燥部3に貯留したうえ、出荷までに時間的余裕がある場合は、貯留乾燥部3において仕上げ水分まで乾燥して出荷部5に送出する。また、その時間的余裕がない場合は、貯留乾燥部3に貯留した予備乾燥穀物を加温乾燥部4に送って仕上げ水分まで短時間で乾燥し、所要の出荷日時に調製済み穀物を出荷する。
【0017】ところで、上記のように、太陽熱乾燥部2において穀物を半乾状態に予備乾燥し、それを貯留乾燥部3に貯留する手段を採用すれば、太陽熱乾燥部2の施設規模を大幅に縮小することができる。太陽熱乾燥部1は、太陽熱を受ける施設であるから、一般にその設置面積が大となるものであるが、本発明のように構成することにより、穀物乾燥調製施設の処理能力を下げることなく太陽熱乾燥部2の施設規模を縮小することができ、穀物乾燥調製施設全体の規模の縮小を図ることができる。
【0018】また、太陽熱乾燥部2において穀物を半乾状態に予備乾燥し、それを貯留乾燥部3に貯留する手段を採用することにより、貯留乾燥部3には予備乾燥穀物が十分貯留され、しかも貯留乾燥部3では貯留穀物に常温風による乾燥が施されので、貯留乾燥部3から出荷部5の脱ぷ能力に応じた乾燥穀物を滞り無く供給することができる。したがって、荷受け部5における脱ぷ処理能力を増大しなくても、所要量の調製済み穀物を所要の出荷日時に出荷可能となる。一方、加温乾燥部4を併用することにより、貯留乾燥部3の穀物貯留量を増大しなくても、加温乾燥部4における短時間の乾燥で所要量の調製済み穀物を所要の出荷日時に出荷可能となる。
【0019】以下、図2ないし図5に基づき荷受け部1、太陽熱乾燥部2、貯留乾燥部3、加温乾燥部4、出荷部5の具体的構成を説明する。
【0020】図2に示す荷受け部1において、6は荷受けホッパ、7は荷受けコンベア、8は荷受け昇降機、9は粗選機、10は荷受け計量機、11は張込昇降機、12は張込中継昇降機、13はサンプル取出口である。
【0021】図3に示す太陽熱乾燥部3において、14は張込中継コンベア、15は張込コンベア、16は太陽熱撹拌乾燥装置、17は排出コンベア、18は排出中継コンベア、19は中継コンベア、20は排出中継昇降機である。
【0022】図4に示す貯留乾燥部3において、21は張込中継コンベア、22は張込昇降機、23はフローコンベア、24は貯留ビン、25は排出コンベア、26は排出中継コンベアである。貯留ビン24は穀物を貯留して常温通風により穀物を貯留乾燥するものである。
【0023】図5に示す加温乾燥部4および出荷部5において、27は加温風により穀物を乾燥する加温乾燥機、28は張込コンベア、29は張込昇降機、30は排出コンベア、31は張込中継コンベア、32は排出中継コンベアである。また、33は籾摺機、34は精選別機、35は籾摺昇降機、36は調量タンク、37は粒選別機、38は石抜機、39は製品昇降機、40は製品タンク、41は出荷計量機、42は屑粒コンベア、43は屑米昇降機、44は混米機、45は屑米タンク、46は屑米計量機である。
【0024】図2ないし図5において、Aは荷受け部1から太陽熱乾燥部2への穀物移送経路、Bは太陽熱乾燥部2から貯留乾燥部3への穀物移送経路、Cは貯留乾燥部3から加温乾燥部4への穀物移送経路、Dは加温乾燥部4から出荷部5への穀物移送経路である。P1は互いの接続点を示す。なお、図2ないし図5中、矢印は処理穀物の移動方向およびその経路を示している。
【0025】
【発明の効果】本発明によれば、太陽熱乾燥、穀物を貯留し常温空気を通風して乾燥を施す貯留乾燥、および加温空気を通風して乾燥を施す加温乾燥による各乾燥手段の有機的活用を図り、自然が相手の農業にふさわしく自然エネルギーそのものである太陽熱を何れの乾燥条件下であっても最大限に活用して、所要の出荷日時に調製済み穀物を出荷可能にする穀物乾燥調製施設を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る穀物乾燥調製施設の全体構成を示すブロック図である。
【図2】荷受け部の構成図である。
【図3】太陽熱乾燥部の構成図である。
【図4】貯留乾燥部の構成図である。
【図5】加温乾燥部および出荷部の構成図ある。
【符号の説明】
1 荷受け部
2 太陽熱乾燥部
3 貯留乾燥部
4 加温乾燥部
5 出荷部
6 荷受けホッパ
7 荷受けコンベア
8 荷受け昇降機
9 粗選機
10 荷受け計量機
11 張込昇降機
12 張込中継昇降機
13 サンプル取出口
14 張込中継コンベア
15 張込コンベア
16 太陽熱撹拌乾燥装置
17 排出コンベア
18 排出中継コンベア
19 中継コンベア
20 排出中継昇降機
21 張込中継コンベア
22 張込昇降機
23 フローコンベア
24 貯留ビン
25 排出コンベア
26 排出中継コンベア
27 加温乾燥機
28 張込コンベア
29 張込昇降機
30 排出コンベア
31 張込中継コンベア
32 排出中継コンベア
33 籾摺機
34 精選別機
35 籾摺昇降機
36 調量タンク
37 粒選別機
38 石抜機
39 製品昇降機
40 製品タンク
41 出荷計量機
42 屑粒コンベア
43 屑米昇降機
44 混米機
45 屑米タンク
46 屑米計量機
A 荷受け部1から太陽熱乾燥部2への穀物移送経路
B 太陽熱乾燥部2から貯留乾燥部3への穀物移送経路
C 貯留乾燥部3から加温乾燥部4への穀物移送経路
D 加温乾燥部4から出荷部5への穀物移送経路

【特許請求の範囲】
【請求項1】 収穫した未乾燥穀物を荷受けし、荷受けした未乾燥穀物を所定の水分まで仕上げ乾燥したうえ、脱ぷ選別等の調製を行って出荷する穀物乾燥調製施設であって、太陽熱乾燥、穀物を貯留し常温空気を通風して乾燥を施す貯留乾燥、および加温空気を通風して乾燥を施す加温乾燥による各乾燥手段をその順で優先選択し、かつ選択した各乾燥手段の乾燥処理条件を所要の出荷日時に調製済み穀物を出荷可能に選定して、荷受けした未乾燥穀物を乾燥することを特徴とする穀物乾燥調製施設。
【請求項2】 太陽熱乾燥は、荷受けした未乾燥穀物の予備乾燥手段であり、貯留乾燥は、太陽熱乾燥により予備乾燥した穀物を累積貯留する手段であることを特徴とする請求項1記載の穀物乾燥調製施設。

【図1】
image rotate


【図3】
image rotate


【図2】
image rotate


【図4】
image rotate


【図5】
image rotate


【公開番号】特開平9−210555
【公開日】平成9年(1997)8月12日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平8−15285
【出願日】平成8年(1996)1月31日
【出願人】(000001465)金子農機株式会社 (53)