説明

穀粒の単粒化装置

【課題】相互に強く結着した穀粒であっても単粒化できる、穀粒の単粒化装置の提供。
【解決手段】複数の孔が形成される仕切り板、仕切り板の上方に横設され、周囲に複数の羽根部材が配設される回転軸、を有し、仕切り板上の空間に供給される穀粒の塊を回転軸に配設される羽根部材により小さな塊に解砕し、解砕された小さな塊を前記仕切り板に形成される複数の孔から落下させる解砕部2と、表面に複数の第1突起が配設される固定盤、固定盤に対向して配置され、第1突起の内周側に位置するよう表面に複数の第2突起が配設される回転盤、を有し、回転盤は水平な回転軸を中心に回転駆動可能とされ、第1突起及び第2突起は回転盤の回転軸に対し同心円上に配設されるものであり、解砕部の仕切り板に形成される複数の孔から落下した穀粒の小さな塊を、固定盤に配設される第1突起及び回転盤に配設される第2突起により個々の穀粒に単粒化する単粒化部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、米粒等の穀粒の塊を解して単粒化する装置に関し、より具体的には、加熱により結着した米粒等の穀粒の塊を解きほぐし、結着する前の個々の穀粒の状態に戻すのに好適な穀粒の単粒化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、熱湯に浸漬するか、電子レンジで加温するだけで食べることができる各種レトルト米飯が市販されており、該レトルト米飯の製造方法も数多く提案されている。
【0003】
本件出願人らは、先に、生産効率の向上を図ることを目的として、生米を加圧加熱蒸気処理して米粒の表層部に薄いアルファ化層を形成するとともに中心部を多孔状となし、該米粒を、冷却工程を経ることなく直ちに所定量の炊飯液とともに容器に充填して密封し、前記米粒を炊飯液に浸漬・吸水させて当該米粒の吸水状態及び容器内の炊飯液の量を調整し、レトルト殺菌するレトルト米飯の製造方法を提案した(特許文献1参照)。
【0004】
ところが、上記レトルト米飯の製造方法は、加圧加熱蒸気処理後の米粒が、相互に強く結着して板状の塊となるものであり、容器への充填に際し、高温の米粒の塊を作業員が手作業により解し単粒化する必要があった。
【0005】
ところで、従来、米粒等の穀粒を加熱した場合、該穀粒に含まれる澱粉がアルファ化し、穀粒同士が相互に結着することが知られており、このような穀粒の塊を解きほぐし、結着前の個々の状態に戻すための単粒化装置が開発されている(特許文献2,3参照。)。
【0006】
特許文献2には、インスタントライスの製造過程において、熱処理によりアルファ化され団子状となった米粒を単粒化する装置が記載されている。
特許文献2に記載された単粒化装置は、団子状になった米粒を、噴水とほぐしローラによりほぐしながら傾斜したスクリーン上を流下させるとともに、該米粒に常温又は高温の高速エアーを送り水分を噴き飛ばして徐々に単粒化し、該米粒を、横設したスクリーン上を排出部に向かって振動移送する間に、該スクリーンの下方から常温の風や高速エアーを送り単粒化するものである。
【0007】
特許文献3には、例えば、玄米茶等の製造過程において、加熱した穀類を単粒化する装置が記載されている。
特許文献3に記載された単粒化装置は、穀類粒の塊を、攪拌羽根を有する攪拌機により攪拌しながらネットコンベア上で熱風にあてることで、該穀類粒を引き離すと同時に表面水分を蒸発させて単粒化するものである。
【0008】
上記特許文献2及び3に記載された各単粒化装置は、加熱により結着した米粒等の穀粒の塊を小さな塊に解したり、結着力の弱い穀粒を単粒化したりできるものである。
しかしながら、上記各単粒化装置は、本件出願人らが提案したレトルト米飯の製造方法のように、圧力が加わり穀粒同士が相互に強く結着した塊についてまで、該穀粒の塊を解きほぐし、結着する前の個々の状態に戻すことができるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】PCT/JP2010/005975
【特許文献2】特開2004−159561号公報
【特許文献3】特開2005−49060号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明は、相互に強く結着した穀粒であっても単粒化することができる、穀粒の単粒化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明における穀粒の単粒化装置は、複数の孔が形成される仕切り板、該仕切り板の上方に横設され、周囲に複数の羽根部材が配設される回転軸、を有し、前記仕切り板上の空間に供給される穀粒の塊を前記回転軸に配設される羽根部材により小さな塊に解砕し、該解砕された小さな塊を前記仕切り板に形成される前記複数の孔から落下させる解砕部と、表面に複数の第1突起が配設される固定盤、該固定盤に対向して配置され、前記第1突起の内周側に位置するよう表面に複数の第2突起が配設される回転盤、を有し、当該回転盤は水平な回転軸を中心に回転駆動可能とされ、前記第1突起及び第2突起は前記回転盤の回転軸に対し同心円上に配設されるものであり、前記解砕部の前記仕切り板に形成される複数の孔から落下した穀粒の小さな塊を、前記固定盤に配設される第1突起及び前記回転盤に配設される第2突起により個々の穀粒に単粒化する単粒化部と、を備えることを特徴とするものである。
【0012】
本発明における穀粒の単粒化装置は、メッシュコンベアを備え、当該メッシュコンベア上の穀粒の塊にエアを供給しながら当該穀粒の塊を前記解砕部に搬送する搬送部、をさらに備えることが好ましい。
【0013】
本発明における穀粒の単粒化装置は、前記搬送部において穀粒の塊に供給したエアにより、前記単粒化部において単粒化された穀粒を機外に搬出することが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明における穀粒の単粒化装置は、前記解砕部において、穀粒の塊を小さな塊、即ち、仕切り板に設けた複数の孔を通過する大きさに粗く解砕し、前記単粒化部において、前記粗く解砕された小さな塊を固定盤に配設される第1突起及び回転盤に配設される第2突起により個々の穀粒に単粒化するものであるから、穀粒同士が相互に強く結着する場合であっても、該穀粒を確実に単粒化することができる。
【0015】
本発明における穀粒の単粒化装置は、前記搬送部において、加熱処理され結着した穀粒の塊にエアを供給することで、該穀粒を冷却するとともに水分を奪うものであり、それにより穀粒同士の結着力を弱めることができるから、後の解砕部及び単粒化部における穀粒の単粒化処理を容易とし、該穀粒を結着する前の個々の状態に戻すことができる。
【0016】
本発明における穀粒の単粒化装置は、前記搬送部において穀粒の塊に供給したエアにより、前記単粒化部において単粒化された穀粒を機外へ搬出するものとすれば、前記エアは水分を含む湿った状態となっており、機外への搬出に際し穀粒の割れが生じにくい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態における穀粒の単粒化装置の斜視断面図。
【図2】本発明の実施の形態における穀粒の単粒化装置の正面断面図。
【図3】図1における解砕部及び単粒化部の拡大図。
【図4】図2における解砕部及び単粒化部の拡大図。
【図5】図4におけるA−A断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施の形態における穀粒の単粒化装置の斜視断面図を示す。図2は、本発明の実施の形態における穀粒の単粒化装置の正面断面図を示す。図3は、図1における解砕部及び単粒化部の拡大図を示す。図4は、図2における解砕部及び単粒化部の拡大図を示す。図5は、図4におけるA−A断面図を示す。
【0019】
図1及び図2に示すように、本実施の形態における穀粒の単粒化装置は、搬送部1と、該搬送部1の側方に設けられる解砕部2と、該解砕部2の下方に設けられる単粒化部3を備える。
【0020】
前記搬送部1は、単粒化装置に対し穀粒の塊を供給する供給ホッパ11、該供給ホッパ11に供給される前記穀粒の塊を解砕部2に搬送するメッシュコンベア12、該メッシュコンベア12上の前記穀粒の塊に供給されるエアを浄化するエアフィルター13を備える。
本実施の形態における穀粒の単粒化装置の下部には吸引ファン41が配設されており、該吸引ファン41が、図示しない配管を介して、前記メッシュコンベア12を上から下に通過するようエアを吸引することで、該エアが、前記メッシュコンベア12の上方に配設される前記エアフィルター13で浄化され、前記メッシュコンベア12上の前記穀粒の塊に供給される。
【0021】
図3乃至図5に示すように、前記解砕部2は、複数の孔21aが形成される正面視U字形の仕切り板21、該仕切り板21の上方の空間に水平方向に横設配置され、放射状に複数のピン22が配設される回転軸23を備える。
【0022】
図3及び図4に示すように、前記単粒化部3は、開口32aが形成され、該開口32aの周囲の下半部において、表面に複数の角柱状突起31が半円弧状に配設される固定盤32、該固定盤32に対向して配置され、前記角柱状突起31の内周側に位置するように、表面に複数の角柱状突起33が少なくとも円周状に配設される回転盤34、を備える。ここで、前記回転盤34は水平な回転軸に固定されて回転駆動可能とされる。また、前記固定盤32と回転盤34の表面に配設される複数の角柱状突起31,33は、前記回転盤34の水平回転軸に対し同心円上に配設される。さらに、前記固定盤32と回転盤34は、ともに表面が前記回転盤34の回転軸に直角な方向を向く状態で配置され、前記各角柱状突起31,33は、前記固定盤32及び回転盤34の各表面に対し、前記回転盤34の回転軸と平行な水平方向に延出する状態で配設される。
【0023】
本実施の形態における穀粒の単粒化装置の下部には、前記単粒化部3で単粒化された穀粒を前記吸引ファン41の吐出エアにより単粒化装置外へニューマ搬送できるよう、前記吸引ファン41の吐出口に連結したニューマパイプ42が配設されている。
【0024】
本実施の形態における穀粒の単粒化装置において、例えば、加圧加熱蒸煮処理等により表面がアルファ化され、相互に強く結着してなる米粒の塊が、前記搬送部1の供給ホッパ11に供給されると、該米粒の塊は、順次、メッシュコンベア12上に落下し、前記解砕部2に向けて搬送される。このとき、単粒化装置の下方に配設される前記吸引ファン41により、前記メッシュコンベア12の中間部上方に配設されるエアフィルター13を介し、該メッシュコンベア12を上から下に通過するよう清浄なエアが吸引されて、メッシュコンベア12上の米粒の塊にエアが供給される結果、該塊を形成する米粒は冷却されるとともに水分を奪われ、これにより米粒同士の結着力が弱められる。
【0025】
前記搬送部1において結着力が弱められた米粒の塊は、前記搬送部1におけるメッシュコンベア12の端部から前記解砕部2の仕切り板21上に形成される空間に供給され、該仕切り板21上の空間において、前記回転軸23の周囲に配設される複数のピン22により解砕される。このとき、前記仕切り板21に形成される複数の孔21aの端縁部が抵抗として作用し、前記米粒の塊の解砕が促進される。そして、前記仕切り板21に形成される複数の孔21aを通過する大きさに粗く解砕された米粒の小さな塊は、前記複数の孔21aから落下する。
【0026】
前記解砕部2において粗く解砕され、前記仕切り板21に形成される複数の孔21aから落下した米粒の小さな塊は、前記単粒化部3の固定盤32に形成される開口32aから、該固定盤32と、該固定盤32に対向して配置される回転盤34との間に形成される空間に供給される。そして、前記米粒の小さな塊は、前記回転盤34の回転により、前記固定盤32の前記開口32aの周囲の下半部において、該固定盤の表面に半円弧状に配設される複数の角柱状突起31と、前記回転盤34の表面に少なくとも円周状に配設される複数の角柱状突起33により、個々の米粒に単粒化される。このとき、前記回転盤34の回転速度を適宜調整することで、米粒を傷つけることなく単粒化することができる。また、前記固定盤32の表面に配設される複数の角柱状突起31の間隔を、米粒が通過する程度の大きさに調整しておけば、単粒化された米粒のみを該固定盤32と回転盤34の間の空間から下方へ排出することができる。
【0027】
前記単粒化部3において単粒化され、前記固定盤32と回転盤34の間の空間から下方へ排出された米粒は、単粒化装置の下部に配設されるニューマパイプ42に流下する。該ニューマパイプ42は、前記吸引ファン41の吐出口と連結されており、前記単粒化された米粒は、前記吸引ファン41の吐出エアにより単粒化装置外へニューマ搬送される。このとき、前記吸引ファン41の吐出エアは、前記搬送部1において米粒の塊に供給された結果、水分を含む湿った状態となっており、ニューマ搬送に際して米粒の割れが生じにくい。
【0028】
上記本発明の実施の形態において、加圧加熱蒸煮処理等により表面がアルファ化され、相互に強く結着してなる米粒の塊を単粒化する場合を例として説明したが、単粒化する米粒は、加熱処理や他の理由により結着したものであってもよいし、米粒以外の穀粒を単粒化してもよい。
【0029】
上記本発明の実施の形態において、搬送部1に配設されるメッシュコンベア12は、穀粒を落下させることなく、エアを通過させるものであればよく、その素材やメッシュの大きさは任意に定めることができる。
【0030】
上記本発明の実施の形態において、解砕部2の仕切り板21の形状は、正面視V字形や水平配置される平板形としてもよい。
【0031】
上記本発明の実施の形態において、解砕部2の回転軸23に配設されるピン22は、穀粒の塊を解きほぐすことができるものであればよく、例えば回転軸23の軸方向に一定の幅をもつ羽根等に変更することもできる。
【0032】
上記本発明の実施の形態において、単粒化部3の固定盤32及び回転盤34に配設される角柱状突起31,33は、穀粒を単粒化できるものであればよく、例えば円柱状などの他の形状の突起としても構わない。また、固定盤32に配設される角柱状突起31は、少なくとも、単粒化された穀粒が該固定盤32と回転盤34の間の空間から排出される位置に配設すればよい。さらに、回転盤34に配設される角柱状突起33は、円周以外の位置にも適宜配設してもよい。
【0033】
上記本発明の実施の形態において、単粒化部3において単粒化された米粒をニューマ搬送により単粒化装置外へ搬送するものとしたが、他の手段により装置外へ搬送するものでも構わない。
【0034】
本発明は、上記実施の形態に限るものでなく、発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、その構成を適宜変更できることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明の穀粒の単粒化装置は、相互に強く結着してなる穀粒の塊であっても、該穀粒を確実に単粒化することができるものであり、利用価値の高いものである。
【符号の説明】
【0036】
1 搬送部
2 解砕部
3 単粒化部
11 供給ホッパ
12 メッシュコンベア
13 エアフィルター
21 仕切り板
21a 孔
22 ピン(羽根部材)
23 回転軸
31 角柱状突起(第1突起)
32 固定盤
32a 開口
33 角柱状突起(第2突起)
34 回転盤
41 吸引ファン
42 ニューマパイプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の孔が形成される仕切り板、該仕切り板の上方に横設され、周囲に複数の羽根部材が配設される回転軸、を有し、前記仕切り板上の空間に供給される穀粒の塊を前記回転軸に配設される羽根部材により小さな塊に解砕し、該解砕された小さな塊を前記仕切り板に形成される前記複数の孔から落下させる解砕部と、
表面に複数の第1突起が配設される固定盤、該固定盤に対向して配置され、前記第1突起の内周側に位置するよう表面に複数の第2突起が配設される回転盤、を有し、当該回転盤は水平な回転軸を中心に回転駆動可能とされ、前記第1突起及び第2突起は前記回転盤の回転軸に対し同心円上に配設されるものであり、前記解砕部の前記仕切り板に形成される複数の孔から落下した穀粒の小さな塊を、前記固定盤に配設される第1突起及び前記回転盤に配設される第2突起により個々の穀粒に単粒化する単粒化部と、を備えることを特徴とする穀粒の単粒化装置。
【請求項2】
メッシュコンベアを備え、当該メッシュコンベア上の穀粒の塊にエアを供給しながら当該穀粒の塊を前記解砕部に搬送する搬送部、をさらに備える請求項1記載の穀粒の単粒化装置。
【請求項3】
前記搬送部において穀粒の塊に供給したエアにより、前記単粒化部において単粒化された穀粒を機外に搬出する請求項2記載の穀粒の単粒化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−165663(P2012−165663A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−27221(P2011−27221)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(000001812)株式会社サタケ (223)
【Fターム(参考)】