説明

積層コンデンサ、および積層コンデンサの製造方法

【課題】ESLを大幅に低減することができる積層コンデンサと、その製造方法を提供する。
【解決手段】積層コンデンサ10は、複数の誘電体層12a,12bが積層されて形成される誘電体素体12と,複数の第1内層用導体層および第2内層用導体層が誘電体層を介して交互に積層されている内層部17と、内層部17の両端面に隣接し、複数の第1外層用導体層および第2外層用導体層が誘電体層12bを介して積層されている外層部19a,19bと、側面に形成される複数の第1端子電極および第2端子電極と、を有する。第1端子電極が第1内層用導体層と第1外層用導体層とに接続され、第2端子電極が第2内層用導体層と第2外層用導体層とに接続される。外層部19a,19bの誘電体層12bが一対の第1外層用導体層あるいは一対の第2外層用導体層において、各々の外層用導体層同士を互いに接続させる複数のピンホール導体部20を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、等価直列インダクタンス(ESL)を大幅に低減した積層コンデンサと、その製造方法に係り、特にデカップリングコンデンサなどとして用いられる積層コンデンサと、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LSIなどの集積回路に供給用の電源においては低電圧化が進む一方で負荷電流は増大している。
【0003】
従って、負荷電流の急激な変化に対して電源電圧の変動を許容値内に抑えることが非常に困難になっている。このため、デカップリングコンデンサ(例えば2端子構造の積層セラミックコンデンサ)が電源に接続されるようになっている。そして、負荷電流の過渡的な変動時に、この積層セラミックコンデンサからCPU等のLSIに電流を供給して、電源電圧の変動を抑えるようにしている。
【0004】
しかし、今日のCPUの動作周波数の一層の高周波数化に伴って、負荷電流の変動はより高速且つ大きなものとなり、デカップリングコンデンサ自身が有している等価直列インダクタンス(ESL)が、電源電圧の変動に大きく影響するようになった。
【0005】
つまり、従来の積層セラミックコンデンサではESLが高いことから、負荷電流iの変動に伴って、上記と同様に電流電圧Vの変動が大きくなり易かった。
【0006】
これは、負荷電流の過渡時における電圧変動が下記の式1で近似され、ESLの高低が電源電圧の変動の大きさと関係するからである。そして、この式1から、ESLの低減が電源電圧を安定化することに繋がるとも言える。
【0007】
dV=ESL・di/dt …式1
ここで、dVは過渡時の電圧変動(V)であり、iは電流変動量(A)であり、tは変動時間(秒)である。
【0008】
ESLの低減を図った積層コンデンサとして、下記の特許文献1に示す積層コンデンサが知られている。この積層コンデンサによれば、寄生インダクタンスの低減を図ることができ、結果としてESLの低減を図ることができる。しかしながら、さらにESLの低減が求められている。
【0009】
特許文献2においては、内層部の導体層と、積層方向において内層部を挟み込むダミー導体層とを有し、ダミー導体層同士、およびダミー導体層と端子電極とが、誘電体層中の金属粒子を介して接続されている2端子コンデンサが示されている。しかし、特許文献2に示すの2端子コンデンサにおいては、誘電体層中の金属粒子は、端子電極の剥離を防止するためのものであり、ESL低減の効果は充分に得られらない。
【0010】
さらにESLを低減させた積層コンデンサとしては、下記の特許文献3に示す多端子積層コンデンサが知られている。この多端子積層コンデンサでは、外部端子電極を多くすることにより、一つの内層用導体層の中で方向が異なる電流の流れを実現することができる。その結果、さらにESLを低減することが可能である。しかしながら、今日におけるCPU動作周波数の一層の高周波数化に対応するために、多端子積層コンデンサにおいても、さらなるESLの低減が求められている。
【特許文献1】特開2003−51423号公報
【特許文献2】特開2006−60147号公報
【特許文献3】特開2002−299152号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、その目的は、ESLを大幅に低減することができる積層コンデンサと、該積層コンデンサの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明に係る積層コンデンサは、
複数の誘電体層が積層されて形成される略直方体形状の誘電体素体と、
前記誘電体素体において、相互に異なる電位に設定される複数の第1内層用導体層および第2内層用導体層が、積層方向において互いに重複するように前記誘電体層を介して交互に積層され、コンデンサの内部電極回路が形成されている内層部と、
前記誘電体素体において、前記積層方向における前記内層部の両端面の少なくともいずれかに隣接し、相互に異なる電位に設定される複数の第1外層用導体層および第2外層用導体層が、前記積層方向において互いに重複しないように前記誘電体層を介して積層されている外層部と、
前記誘電体素体の側面のうち、少なくとも、前記積層方向に対して平行な側面に形成され、相互に異なる電位に設定される複数の第1端子電極および第2端子電極と、を有し、
前記第1端子電極の各々が、少なくとも1つの前記第1内層用導体層と、複数の前記第1外層用導体層とに接続され、
前記第2端子電極の各々が、少なくとも1つの前記第2内層用導体層と、複数の前記第2外層用導体層とに接続され、
前記外層部に位置する前記誘電体層が、該誘電体層と隣接する一対の前記第1外層用導体層あるいは一対の前記第2外層用導体層と重複する領域において、該誘電体層と隣接する一対の該第1外層用導体層同士あるいは一対の該第2外層用導体層同士を、前記積層方向において互いに接続させる複数のピンホール導体部を有する。
【0013】
なお、本願発明において、「複数の第1外層用導体層および第2外層用導体層が、積層方向において互いに重複しない」とは、第1外層用導体層のいずれかと、第2外層用導体層のいずれかとが重複することがないことを意味する。第1外層用導体層同士、あるいは第2外層用導体層同士は重複してよい。
【0014】
本発明に係る積層コンデンサにおいては、外層部において、第1外層用導体層および第2外層用導体層が、積層方向において重複しないように誘電体層を介して積層されている。よって、第1端子電極の電位が、第2端子電極に対して高い場合においては、第1端子電極から第1外層用導体層に対して、電流が分流すると共に、第2外層用導体層から第2端子電極へ向けて電流が流れ込む。一方、第2端子電極の電位が、第1端子電極に対して高い場合においては、第2端子電極から第2外層用導体層に対して、電流が分流すると共に、第1外層用導体層から第1端子電極へ向けて電流が流れ込む。このように、いずれの場合においても、各端子電極から各導体層へ流れる電流を分流することによって、積層コンデンサ全体のESLを軽減することができる。また、外層部が第1および第2外層用導体層をそれぞれ複数有することによって、各端子電極から外層用導体層へ電流を分流させる効果を増大させることができる。すなわち、複数の第1外層用導体層および第2外層用導体層が、各端子電極に並列接続された複数のインダクタ成分として機能し、積層コンデンサ全体のESLを軽減することができる。
【0015】
また、外層部に位置する誘電体層が、該誘電体層と隣接する一対の第1外層用導体層同士あるいは一対の第2外層用導体層同士を、積層方向において互いに接続させる複数のピンホール導体部を有する。その結果、ピンホール導体部を介して、一対の第1外層用導体層間あるいは一対の第2外層用導体層間において、積層方向に電流が多枝にわたって分流される。さらには、各端子電極に接続された全第1外層用導体層間あるいは全第2外層用導体層間にわたって、電流を分流させることができる。その結果、積層コンデンサ全体のESLを更に低減することができる。
【0016】
また、本発明においては、第1あるいは第2外層用導体層同士を無数のピンホール導体部によって接続することによって、複数の外層用導体層を積層方向において貫通するスルーホール導体部で接続する場合に比べて、より多枝にわたって電流を分流させることができ、積層コンデンサ全体のESLを、より低減することができる。
【0017】
すなわち、本発明に係る積層コンデンサによれば、積層コンデンサの大幅な低ESL化が図られて、電源電圧の振動を抑制できるようになり、デカップリングコンデンサなどとして好適に用いられることができる。
【0018】
好ましくは、前記ピンホール導体部のピンホール径が、1〜10μmである。また、好ましくは、前記ピンホール導体部のピンホール径が、ピンホール導体部を形成するためにピンホール内へ充填される導電材の粒子径よりも大きい。なお、本願発明において、ピンホール径とは、ピンホール導体部が形成された誘電体層の面方向におけるピンホール導体部の直径を意味する。
【0019】
ピンホール径を、1〜10μmの範囲内とすることによって、ピンホール導体部の形成工程において、ピンホール内へ導電材を、緻密に充填することができる。その結果、ピンホール導体部が誘電体層を完全に貫通する。よって、誘電体層に隣接する一対の第1外層用導体層同士あるいは一対の第2外層用導体層同士を電気的に接続でき、電流を充分に分流できる。その結果、積層コンデンサ全体のESLを低減することができる。
【0020】
好ましくは、前記ピンホール導体部の総横断面積が、該ピンホール導体部が接続する前記第1外層用導体層およひ/または第2外層用導体層の総面積に対して、30〜50%である。なお、ピンホール導体部の総横断面積とは、1つの誘電体層に形成された複数のピンホール導体部の面積(積層方向に垂直な面方向の面積)の合計値を意味する。
【0021】
ピンホール導体部の総横断面積(電流の流路断面積)を上記範囲内とすることによって、第1外層用導体層間または第2外層用導体層間で電流を充分に分流することができ、積層コンデンサ全体のESLを充分に低減できる。また、外層部の誘電体層を形成するグリーンシートの強度を充分なものとすることができる。
【0022】
好ましくは、複数の前記ピンホール導体部を有する前記誘電体層の前記積層方向および該積層方向に対して垂直な平面方向において、複数の前記ピンホール導体部がランダムに配置されている。
【0023】
積層コンデンサの外層部において、無数のピンホール導体部をランダムに配置に配置することによって、外層用導体層間で電流を多枝にわたり、多様な方向へ分流させることができる。これは、ピンホール導体部に比べて寸法が大きく、数が限られ、また規則的に配置されるスルーホール導体部等によっては得られない作用効果である。また、誘電体層において無数のピンホール導体部をランダムに配置に配置することによって、誘電体層と、該誘電体層に隣接する第1および2外層用導体層との密着強度を向上させることができる。
【0024】
好ましくは、それぞれの前記第1端子電極および前記第2端子電極が、前記誘電体素体の側面のうち、少なくとも、前記積層方向に対して平行な第1側面、および該第1側面に対向する第2側面のいずれかに形成されている。
【0025】
好ましくは、それぞれの前記第1端子電極および前記第2端子電極が、前記第1側面または前記第2側面と、前記誘電体素体の側面のうち、該第1側面および該第2側面に隣接し、前記積層方向に対して垂直な第5側面および/または第6側面に跨がって形成されている。
【0026】
好ましくは、前記第5側面および/または前記第6側面に形成された前記第1端子電極と、前記第1外層用導体層とが、該第1端子電極と該第1外層用導体層との間に位置する前記誘電体層が有する複数の前記ピンホール導体部によって接続され、
前記第5側面および/または前記第6側面に形成された前記第2端子電極と、前記第2外層用導体層とが、該第2端子電極と該第2外層用導体層との間に位置する前記誘電体層が有する複数の前記ピンホール導体部によって接続される。
【0027】
第1端子電極と、第1外層用導体層とが、複数のピンホール導体部によって接続されることによって、第1端子電極と、第1外層用導体層との間で、電流を分流することができる。同様に、第2端子電極と、第2外層用導体層とが、複数のピンホール導体部によって接続されることによって、第2端子電極と、第2外層用導体層との間で、電流を分流することができる。その結果、積層コンデンサ全体のESLを低減することができる。
【0028】
好ましくは、前記積層方向に垂直な面方向において、前記第5側面および/または前記第6側面における各第1端子電極が、前記積層方向において該第1端子電極に隣接し、該第1端子電極に接続された前記第1外層用導体層を完全に被覆し、
前記積層方向に垂直な面方向において、前記第5側面および/または前記第6側面における各第2端子電極が、前記積層方向において該第2端子電極に隣接し、該第2端子電極に接続された前記第2外層用導体層を完全に被覆する。
【0029】
本願発明では、外層部に位置する誘電体層において、第1外層用導体層および/または第2外層用導体層と重複する領域にのみ、ピンホール導体部が形成されている。従って、積層方向に垂直な面方向において、第5側面および/または第6側面における各第1端子電極が、積層方向において該第1端子電極に隣接し、該第1端子電極に接続された第1外層用導体層を完全に被覆することによって、誘電体素体の第5側面および/または第6側面に、ピンホール導体部が露出することを防止できる。同様に、積層方向に垂直な面方向において、第5側面および/または第6側面における各第2端子電極が、積層方向において該第2端子電極に隣接し、該第2端子電極に接続された前記第層用導体層を完全に被覆することによって、誘電体素体の第5側面および/または第6側面にピンホール導体部が露出することを防止できる。
【0030】
このように、ピンホール導体部が素子本体の側面に露出することを防止することによって、ピンホール導体部の劣化(酸化)を防止することができる。また、積層コンデンサの製造工程において、ピンホール導体部からコンデンサ内部へ、水分、導電材等の不純物が浸入することを防止できる。
【0031】
好ましくは、それぞれの前記第1端子電極が、前記第1側面または前記第2側面に露出した前記第1内層用導体層および前記第1外層用導体層を完全に被覆し、
それぞれの前記第2端子電極が、前記第1側面または前記第2側面に露出した前記第2内層用導体層および前記第2外層用導体層を完全に被覆する。
【0032】
その結果、各内層用導体層および各外層用導体層が、素子本体の第1側面および第2側面に露出することを防止し、各内層用導体層および各外層用導体層が劣化(酸化)することを防止できる。
【0033】
本願発明に係る積層コンデンサの製造方法は、
内層用グリーンシートを形成する工程と、
前記第1内層用導体層および前記第2内層用導体層を形成する工程と、
前記第1内層用導体層および前記第2内層用導体層を、前記積層方向において互いに重複するように前記内層用グリーンシートを介して交互に積層し、内層積層部を形成する工程と、
複数のピンホールを有する外層用グリーンシートを形成する工程と、
複数の前記第1外層用導体層および前記第2外層用導体層を形成する工程と、
複数の前記ピンホールを導電材で充填して、複数の前記ピンホール導体部を形成する工程と、
複数の前記第1外層用導体層および前記第2外層用導体層を、前記積層方向において互いに重複しないように、前記ピンホール導体部が形成された前記外層用グリーンシートを介して積層し、外層積層部を形成する工程と、
前記内層積層部において、前記積層方向に対して垂直な両端面の少なくともいずれかに、前記外層積層部を積層して、積層体を形成する工程と、
前記積層体を所定の寸法に切断してグリーンチップを形成する工程と、
前記グリーンチップを焼成して前記誘電体素体を形成する工程と、
前記誘電体素子本体に複数の前記第1端子電極および前記第2端子電極を形成する工程と、を有する。
【0034】
好ましくは、前記ピンホール導体部は、前記第1外層用導体層または前記第2外層用導体層を、前記外層用グリーンシートの表面に積層して形成する際に同時に形成される。たとえば外層用グリーンシートの表面に印刷法により第1外層用導体層または前記第2外層用導体層を形成する場合には、これらの導体層を形成するための電極ペースト(導電材)が外装用グリーンシートのピンホールに入り込み、ピンホール導体部が同時に形成される。すなわち、本願発明に係る積層コンデンサの製造方法においては、第1外層用導体層および第2外層用導体層の形成と、ピンホール導体部の形成とを、同時に行うこともできる。
【0035】
好ましくは、前記外層積層部を形成した後に連続して前記内層積層部を形成する。さらに好ましくは、前記内層積層部を形成した後に連続して前記外層積層部を形成する。積層体を形成するためのグリーンシートの積層工程は、外層積層部と内層積層部とで、ブロックごとに区別して積層しても良いが、これらを区別しないで、連続して行うことが好ましい。
【0036】
なお、本発明においては、第1内層用導体層と第2内層用導体層とは、相対的な概念であり、第1内層用導体層と第2内層用導体層とは逆であっても良い。また、その他の「第1…」および「第2…」に関しても同様である。第1外層用導体層と第2外層用導体層とについても同様である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る積層コンデンサの斜視図、
図2は、図1に示す誘電体素体の分解斜視図、
図3は、図1に示す積層コンデンサを、III方向に見た概略断面図、
図4は、本発明の一実施形態に係る積層コンデンサにおける第1内層用導体層の平面図、
図5は、本発明の一実施形態に係る積層コンデンサにおける第1外層用導体層および第2外層用導体層の平面図、
図6は、本発明の実施例および比較例に係るインピーダンス特性を表すグラフである。
【0038】
(積層コンデンサ)
まず、本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサ(以下単に、積層コンデンサと言う)10の全体構成について説明する。図1に示すように、積層コンデンサ10は、誘電体層であるセラミックグリーンシートを複数枚積層した積層体を焼成することで得られた直方体状の焼結体である誘電体素体12を有する。
【0039】
誘電体素体12は、誘電体層の積層方向Zに対して平行な第1側面12Aと、それに対向する第2側面12Bを有する。また、誘電体素体12は、第1側面12Aおよび第2側面12Bに隣接し、誘電体層の積層方向Zに対して平行であり、かつ、互いに対向する第3側面12Cおよび第4側面12Dを有する。さらに、誘電体素体12は、第1側面12Aおよび第2側面12Bに隣接し、積層方向Zに対して垂直あり、かつ、互いに対向する第5側面12Eおよび第6側面12Fを有する。
【0040】
誘電体素体12の外面には、第1側面12Aと、第5側面12Eおよび第6側面12Fとの3つの側面に跨がって、第1端子電極31a,31bおよび第2端子電極32a,32bが形成される。また、誘電体素体12の第2側面12Bと、第5側面12Eおよび第6側面12Fとの3つの側面に跨がって、第1端子電極31c,31dおよび第2端子電極32c,32dがが形成される。
【0041】
図1に示すように、各第1端子電極31a〜31dおよび各第2端子電極32a〜32dは、互いに電気的に絶縁されている。また、各第1端子電極と各第2端子電極とは、電子回路内において、相互に異なる電位に設定される。すなわち、各第1端子電極が、電子回路内において正極に接続され、高電位にある場合、各第2端子電極は、負極に接続され、各第1端子電極に対して低電位にある。なお、電子回路における各第1端子電極および各第2端子電極の電位の高低関係は、逆であってもよい。
【0042】
好ましくは、図1に示すように、第1側面12AのX方向に沿って、第1端子電極31a,31bおよび第2端子電極32a,32bが交互に配列される。同様に、好ましくは、第2側面12BのX方向に沿って、第1端子電極31c,31dおよび第2端子電極32c,32dが交互に配列される。また、好ましくは、第1側面12Aに形成された各第1端子電極に対向する位置(第2側面12B)には、それぞれ第2端子電極が形成されている。同様に、好ましくは、第1側面12Aに形成された各第2端子電極に対向する位置(第2側面12B)には、それぞれ第1端子電極が形成されている。
【0043】
このように、隣接する端子電極同士の電気的極性が逆になるように、各第1端子電極および各第2端子電極を配置することによって、各端子電極近辺に発生する磁場が、隣接する端子電極同士間で相殺される。その結果、積層コンデンサ10全体のESLを低減させることができる。
【0044】
図2に示すように、誘電体素体12は、内層部17および外層部19aおよび19bを有する。外層部19aおよび19bは、積層方向Zにおける内層部17の両端面に隣接するように位置する。
【0045】
内層部17においては、複数の第1内層用導体層21a,21b,21c,21dおよび第2内層用導体層22a,22b,22c,22dが、積層方向Zにおいて互いに重複するように誘電体層12aを介して交互に積層されている。コンデンサの内部電極回路が形成されている。本実施形態では、誘電体層12aの間に挟まれる形で、誘電体素体12内に4枚の第1内層用導体層と、4枚の第2内層用導体層が交互に配置されている。
【0046】
外層部19aおよび19bにおいては、第1外層用導体層23a,23b,23c,23dおよび第2外層用導体層25a,25b,25c,25dの各々が、積層方向Zにおいて誘電体層12bを介して積層されている。また、図2に示すように、各外層用導体層は、異なる端子電極にそれぞれ接続された導体層同士が積層方向Zにおいて互いに重複しないように積層されている。
【0047】
図1に示す各第1端子電極は、図2に示す第1内層用導体層のいずれか一つと、複数の各第1外層用導体層とに接続されている。また、複数の各第1外層用導体層同士は、各第1外層用導体層間に位置する誘電体層12が有するピンホール導体部によって、電気的に接続されている。
【0048】
図1に示す第1端子電極31aには、図2に示す第1内層用導体層21aと、6つの第1外層用導体層23aが接続されている。また、外層部19aにおける3つの第1外層用導体層23a同士、および外層部19bにおける3つの第1外層用導体層23a同士はそれぞれ、誘電体層12bに形成されたピンホール導体部によって、互いに接続されている。
【0049】
図1に示す第1端子電極31bには、図2に示す第1内層用導体層21bと、6つの第1外層用導体層23bが接続されている。また、外層部19aにおける3つの第1外層用導体層23b同士、および外層部19bにおける3つの第1外層用導体層23b同士はそれぞれ、誘電体層12bに形成されたピンホール導体部によって、互いに接続されている。
【0050】
図1に示す第1端子電極31cには、図2に示す第1内層用導体層21cと、6つの第1外層用導体層23cが接続されている。また、外層部19aにおける3つの第1外層用導体層23c同士、および外層部19bにおける3つの第1外層用導体層23c同士はそれぞれ、誘電体層12bに形成されたピンホール導体部によって、互いに接続されている。
【0051】
図1に示す第1端子電極31dには、図2に示す第1内層用導体層21dと、6つの第1外層用導体層23dが接続されている。また、外層部19aにおける3つの第1外層用導体層23d同士、および外層部19bにおける3つの第1外層用導体層23d同士はそれぞれ、誘電体層12bに形成されたピンホール導体部によって、互いに接続されている。
【0052】
図1に示す各第2端子電極は、以下のように、図2に示す第2内層用導体層のいずれか一つと、複数の第2外層用導体層とに接続されている。また、複数の各第2外層用導体層同士は、各第2外層用導体層間に位置する誘電体層12bが有するピンホール導体部によって、電気的に接続されている。
【0053】
図1に示す第2端子電極32aには、図2に示す第2内層用導体層22aと、6つの第2外層用導体層25aが接続されている。また、外層部19aにおける3つの第2外層用導体層25a同士、および外層部19bにおける3つの第2外層用導体層25a同士はそれぞれ、誘電体層12bに形成されたピンホール導体部によって、互いに接続されている。
【0054】
図1に示す第2端子電極32bには、図2に示す第2内層用導体層22bと、6つの第2外層用導体層25bが接続されている。また、外層部19aにおける3つの第2外層用導体層25b同士、および外層部19bにおける3つの第2外層用導体層25b同士はそれぞれ、誘電体層12bに形成されたピンホール導体部によって、互いに接続されている。
【0055】
図1に示す第2端子電極32cには、図2に示す第2内層用導体層22cと、6つの第2外層用導体層25cが接続されている。また、外層部19aにおける3つの第2外層用導体層25c同士、および外層部19bにおける3つの第2外層用導体層25c同士はそれぞれ、誘電体層12bに形成されたピンホール導体部によって、互いに接続されている。
【0056】
図1に示す第2端子電極32dには、図2に示す第2内層用導体層22dと、6つの第2外層用導体層25dが接続されている。また、外層部19aにおける3つの第2外層用導体層25d同士、および外層部19bにおける3つの第2外層用導体層25d同士はそれぞれ、誘電体層12bに形成されたピンホール導体部によって、互いに接続されている。
【0057】
なお、各第1端子電極と、各第2端子電極とは、上述のように、互いに異なる電位に設定されるため、各第1端子電極に接続された各第1内層用導体層および第1外層用導体層と、各第2端子電極に接続された各第2内層用導体層および第2外層用導体層とは、各端子電極と同様に、互いに異なる電位を有する。
【0058】
好ましくは、それぞれの図1の第1端子電極が、第1側面12Aまたは第2側面12Bに露出した第1内層用導体層および第1外層用導体層を完全に被覆し、それぞれの第2端子電極が、第1側面12Aまたは第2側面12Bに露出した第2内層用導体層および第2外層用導体層を完全に被覆する。
【0059】
その結果、各内層用導体層および各外層用導体層が、誘電体素体12の第1側面12Aまたは第2側面12Bに露出することを防止し、各内層用導体層および各外層用導体層が劣化(酸化)することを防止できる。
【0060】
次に、以下では、X方向に垂直であって、第1端子電極31aおよび第2端子電極32dを通る積層コンデンサ10の断面図である図3を用いて、外層部19a,19bにおけるピンホール導体部20について詳説する。
【0061】
図3に示すように、外層部19a、19bにおいては、誘電体層12bが、該誘電体層12bと隣接する一対の第1外層用導体層23aおよび一対の第2外層用導体層25dと重複する領域において、複数のピンホール導体部20を有する。この複数のピンホール導体部20は、該誘電体層12bと隣接する一対の第1外層用導体層23a同士あるいは一対の第2外層用導体層25d同士を、積層方向Zにおいて互いに電気的に接続する。
【0062】
好ましくは、第5側面12Eおよび第6側面12Fに形成された第1端子電極31aと、第1外層用導体層23aとが、第1端子電極31aと第1外層用導体層23aとの間に位置する誘電体層12bが有する複数のピンホール導体部20によって接続されている。また、好ましくは、第5側面12Eおよび第6側面12Fに形成された第2端子電極32dと、第2外層用導体層25dとが、第2端子電極32dと第2外層用導体層25dとの間に位置する誘電体層12bが有する複数のピンホール導体部20によって接続される。
【0063】
第1端子電極31aと、第1外層用導体層23aとが、複数のピンホール導体部20によって接続されることによって、第1端子電極31aと、第1外層用導体層23aとの間で、電流を分流することができる。同様に、第2端子電極32dと、第2外層用導体層25dとが、複数のピンホール導体部20によって接続されることによって、第2端子電極32dと、第2外層用導体層25dとの間で、電流を分流することができる。その結果、積層コンデンサ全10体のESLを低減することができる。
【0064】
図3に示すように、積層コンデンサ10の第1端子電極31aおよび第2端子電極32dは、それぞれ、基板側電極端子13Aおよび13Bを介して、回路基板15上に接続される。
【0065】
以上、X方向に垂直であって、第1端子電極31aおよび第2端子電極32dを通る積層コンデンサ10の断面図(図3)における積層コンデンサの構造について説明した。なお、第1端子電極31dおよび第2端子電極32aを通る断面、第1端子電極31bおよび第2端子電極32cを通る断面、第1端子電極31cおよび第2端子電極32bを通る断面における積層コンデンサの構造も、各内層用導体層および各外層用導体層と各端子電極との対応関係以外は上述した図3の場合と同様であるため、これらの断面に関する説明は省略する。
【0066】
図4は、積層コンデンサ10における第1内層用導体層21aを、積層方向Zから観察した平面図である。第1内層用導体層21aは、誘電体層12aの外形形状に合わせた形状を持ち、誘電体層12aの周囲端部から所定の絶縁隙間パターン43で離れている本体部分121aを有する。この内層用導体層本体部分121aがコンデンサの一方の電極を構成する部分である。第1内層用導体層21aは、この本体部分121aと一体的に同一平面上に形成され、誘電体素体12の第1側面12Aに引き出される第1リード部21Aをさらに有する。この第1リード部21Aにおいて、第1内層用導体層21aと、第1端子電極31aとが接続されている。
【0067】
絶縁隙間パターン43の隙間幅W1は、好ましくは100〜200μm程度である。これらの隙間幅W1が小さすぎると、各第1端子電極31a〜31dおよび第2端子電極32a〜32dとの絶縁性が不十分になるおそれがあり、大きすぎると、本体部分121aの面積を狭め、コンデンサとしての能力を低下させる恐れがある。
【0068】
好ましくは、第1リード部21Aの幅W2は、第1リード部21Aが接続される第1端子電極31aの幅W3より小さい。すなわち、W2<W3であることが好ましい。W2<W3とすることによって、第1側面12Aにおいて、第1リード部21Aが、第1端子電極31aによって完全に被覆される。その結果、第1リード部21A(および内層用導体層本体部分121a)の露出および劣化(酸化)を防止できる。
【0069】
なお、他の第1内層用導体層も、それぞれ第1リード部を有し、第1リード部を介して、各第1端子電極と接続される。第1内層用導体層21b(図2)は、第1リード部21Bを介して、第2端子電極31b(図1)と接続される。第1内層用導体層21c(図2)は、第1リード部21Cを介して、第2端子電極31c(図1)と接続される。第1内層用導体層21d(図2)は、第1リード部21Dを介して、第2端子電極31d(図1)と接続される。
【0070】
また、他の第2内層用導体層も、それぞれ第2リード部を有し、第2リード部を介して、各第2端子電極と接続される。第2内層用導体層22a(図2)は、第2リード部22Aを介して、第2端子電極32a(図1)と接続される。第2内層用導体層22b(図2)は、第2リード部22Bを介して、第2端子電極32b(図1)と接続される。第2内層用導体層22c(図2)は、第2リード部22Cを介して、第2端子電極32c(図1)と接続される。第2内層用導体層22d(図2)は、第2リード部22Dを介して、第2端子電極32d(図1)と接続される。
【0071】
なお、各第1内層用導体層21b〜21dおよび各第1リード部21B〜21D、各第2内層用導体層22a〜22dおよび第2リード部22A〜22Dを、積層方向Zから観察した平面図は、各導体層と各端子電極との接続位置以外は上述した図4と同様であるため、これらの平面図については、説明を省略する。
【0072】
図5は、積層コンデンサ10の外層部19b(図2,3)において、積層方向Zに垂直な同一平面上に位置する第1外層用導体層23a〜23dおよび第2外層用導体層25a〜25dを観察した平面図である。図5に示すように、第1外層用導体層23a〜23dおよび第2外層用導体層25a〜25dは、絶縁隙間パターン45を介して配置されている。よって、同一平面内に配置された各外層用導体層同士は通電しない。
【0073】
なお、第1外層用導体層23a〜23dおよび第2外層用導体層25a〜25dは、積層方向Zにおいて互いに重複しない限り、必ずしも同一平面上に位置しなくても良い。
【0074】
第1外層用導体層23aは、該第1外層用導体層23aと一体的に同一平面上に形成され、誘電体素体12の第1側面12Aに引き出される第3リード部23Aを有する。第3リード部23Aを介して、第1外層用導体層23aは、第1端子電極31aと接続されている。なお、他の第1外層用導体層および第2導体層も、それぞれ第3リード部を有し、各第3リード部を介して、各端子電極と接続される。各外層用導体層、各第3リード部、および各端子電極の形状、寸法、接続関係等は、全て同様であるため、以下では、第1外層用導体層23a、第3リード部23A、および第1端子電極31aに関してのみ説明する。
【0075】
好ましくは、第3リード部23AのX方向の幅W4は、第3リード部23Aが接続される第1端子電極31aの幅W3より小さい。すなわち、W4<W3であることが好ましい。W4<W3とすることによって、第1側面12Aにおいて、第3リード部23Aが、第1端子電極31aによって完全に被覆される。その結果、第3リード部23A(および第1外層用導体層23a)の露出および劣化(酸化)を防止できる。なお、第3リード部23AのY方向の幅(絶縁隙間パターン45の隙間幅W1)は、100〜200μm程度である。
【0076】
第1外層用導体層23a〜23dおよび第2外層用導体層25a〜25dには、各導体層と、各導体層に隣接する誘電体層12bとが重複する領域において、複数のピンホール導体部20が接続されている。
【0077】
好ましくは、ピンホール導体部20のピンホール径が、1〜10μmである。また、好ましくは、ピンホール導体部20のピンホール径が、ピンホール導体部20を形成するためにピンホール内へ充填される導電材(金属粒子)の粒子径よりも大きい。
【0078】
ピンホール径を、1〜10μmの範囲内とすることによって、ピンホール導体部20の形成工程において、ピンホール内へ導電材を緻密に充填することができる。その結果、ピンホール導体部20が誘電体層12bを完全に貫通する。よって、誘電体層12bに隣接する一対の各外層用導体層同士を電気的に接続でき、電流を充分に分流できる。その結果、積層コンデンサ10全体のESLを低減することができる。
【0079】
好ましくは、ピンホール導体部20の総横断面積が、該ピンホール導体部20が接続する第1外層用導体層23a〜23dおよび第2外層用導体層25a〜25dの総面積に対して、30〜50%である。なお、ピンホール導体部20の総横断面積とは、1つの誘電体層12bに形成された複数のピンホール導体部20の面積(積層方向Zに垂直なXY面方向の面積)の合計値を意味する。
【0080】
ピンホール導体部20の総横断面積(電流の流路断面積)を上記範囲内とすることによって、積層方向Zにおいて重複した第1外層用導体層間または第2外層用導体層間で電流を充分に分流することができ、積層コンデンサ10全体のESLを充分に低減できる。また、外層部19bの誘電体層12bを形成するための外層用グリーンシートの強度を充分なものとすることができる。
【0081】
好ましくは、複数のピンホール導体部20を有する誘電体層12bの積層方向Zおよび積層方向Zに対して垂直なXY平面方向において、複数のピンホール導体部20がランダムに配置されている。
【0082】
積層方向ZおよびXY平面方向において無数のピンホール導体部20をランダムに配置することによって、第1外層用導体層間または第2外層用導体層間で電流を多枝にわたり、多様な方向へ分流させることができる。これは、ピンホール導体部20に比べて寸法が大きく、数が限られるスルーホール導体部(ホール径50μm程度)等によっては得られない作用効果である。また、誘電体層12bにおいて無数のピンホール導体部20をランダムに配置することによって、誘電体層12bと、該誘電体層12bに隣接する第1外層用導体層または第2外層用導体層との密着強度を向上させることができる。
【0083】
好ましくは、図5に示すように、積層方向Zに垂直なXY面方向において、第5側面12Eにおける各第1端子電極31A〜31Dが、積層方向Zにおいて各第1端子電極31A〜31Dに隣接し、各1端子電極31A〜31Dに接続された各第1外層用導体層23a〜23dを完全に被覆する。また、同様に、積層方向Zに垂直なXY面方向において、第6側面12Fにおける各第1端子電極31A〜31Dも、積層方向Zにおいて各第1端子電極31A〜31Dに隣接し、各1端子電極31A〜31Dに接続された各第1外層用導体層23a〜23dを完全に被覆する。
【0084】
好ましくは、図5に示すように、積層方向Zに垂直なXY面方向において、第5側面12Eにおける各第2端子電極32A〜32Dが、積層方向Zにおいて各第2端子電極32A〜32Dに隣接し、各2端子電極32A〜32Dに接続された各第2外層用導体層25a〜25dを完全に被覆する。また、同様に、積層方向Zに垂直なXY面方向において、第6側面12Fにおける各第2端子電極32A〜32Dも、積層方向Zにおいて各第2端子電極32A〜32Dに隣接し、各2端子電極32A〜32Dに接続された各第2外層用導体層25a〜25dを完全に被覆する。
【0085】
本実施形態では、外層部19a,19bに位置する誘電体層12bにおいて、第1外層用導体層23a〜23dおよび/または第2外層用導体層25a〜25dと重複する領域にのみ、ピンホール導体部20が形成されている。従って、積層方向Zに垂直なXY面方向において、第5側面12Eおよび第6側面12Fにおける各第1端子電極31A〜31Dが、積層方向Zにおいて各第1端子電極31A〜31Dに隣接し、各第1端子電極31A〜31Dに接続された第1外層用導体層23a〜23dを完全に被覆することによって、誘電体素体12の第5側面12Eおよび第6側面12Fに、ピンホール導体部20が露出することを防止できる。同様に、積層方向Zに垂直なXY面方向において、第5側面12Eおよび第6側面12Fにおける各第2端子電極32A〜32Dが、積層方向Zにおいて各第2端子電極32A〜32Dに隣接し、各第2端子電極32A〜32Dに接続された第2外層用導体層25a〜25dを完全に被覆することによって、誘電体素体12の第5側面12Eおよび第6側面12Fに、ピンホール導体部20が露出することを防止できる。
【0086】
このように、ピンホール導体部20が誘電体素体12の側面に露出することを防止することによって、ピンホール導体部20の劣化(酸化)を防止することができる。また、積層コンデンサ10の製造工程において、ピンホール導体部20からコンデンサ内部へ、水分、導電材等の不純物が浸入することを防止できる。
【0087】
本実施形態においては、図2に示すように、外層部19bにおいて、それぞれ第1外層用導体層23a〜23dおよび第2外層用導体層25a〜25dが、誘電体層12bを介して積層されている。また、各外層用導体層は、異なる各端子電極に接続された第1外層用導体層と第2外層用導体層とが積層方向Zにおいて互いに重複しないように積層されている。さらに、第1外層用導体層23a〜23dと、第2外層用導体層25a〜25dとは直接通電していない。よって、第1外層用導体層23a〜23dおよび第2外層用導体層25a〜25dは、コンデンサにおける内部電極としての機能(蓄電機能)を有さないダミー電極として機能する。すなわち、積層コンデンサ10においては、各端子電極から、各端子電極に接続された各ダミー電極(各外層用導体層)へ向けて、電流が分流される結果、積層コンデンサ10全体のESLを軽減することができる。
【0088】
本実施形態においては、外層部19bが第1外層用導体層23a〜23dおよび第2外層用導体層25a〜25dをそれぞれ複数有することによって、各端子電極から、各端子電極に接続された各外層用導体層へ電流を分流させる効果を増大させることができる。すなわち、複数の第1外層用導体層および第2外層用導体層が、各端子電極に並列接続された複数のインダクタ成分として機能し、積層コンデンサ全体のESLを軽減することができる。
【0089】
本実施形態においては、図3に示すように、外層部19bに位置する誘電体層12bが、該誘電体層12bと隣接する一対の第1外層用導体層同士あるいは一対の第2外層用導体層2同士を、積層方向Zにおいて互いに電気的に接続させる複数のピンホール導体部20を有する。その結果、ピンホール導体部20を介して、一対の第1外層用導体層間あるいは一対の第2外層用導体層間において、積層方向Zに電流が多枝にわたって分流される。さらには、外層部19bにおいて、各端子電極に接続され、積層方向Zにおいて重複する複数の第1外層用導体層間(図2では、第1外層用導体層23a〜23dそれぞれ3層間)あるいは第2外層用導体層間(図2では、第2外層用導体層25a〜25dそれぞれ3層間)にわたって、電流を分流させることができる。その結果、積層コンデンサ10全体のESLを更に低減することができる。
【0090】
本実施形態においては、複数(8枚)の内部導体層をそれぞれ誘電体素体12内に配置することで、静電容量が高まるだけでなく磁界を相殺する作用がさらに大きくなり、インダクタンスがより大幅に減少してESLが一層低減される。
【0091】
このように、本実施形態に係る積層コンデンサ10によれば、積層コンデンサ10の大幅な低ESL化が図られて、電源電圧の振動を抑制できるようになり、デカップリングコンデンサなどとして好適に用いられることができる。
【0092】
なお、図3に示す2つの外層部19a,19bのうち、内層部17を挟んで回路基板15の反対側に位置する外層部19aにおいては、電流が流れない。従って、外層部19aはESLの低減には寄与しないので、必須ではない。
【0093】
(積層コンデンサの製造方法)
次に、本実施形態に係る積層コンデンサ10の製造方法について説明する。なお、本実施形態に係る積層コンデンサ10の製造方法は、以下に示す方法に限定されない。
【0094】
内層用グリーンシートの形成
まず、支持シートの表面に、グリーンシート用スラリーを塗布して、内層用グリーンシートを形成する。内層用グリーンシートは、完成後の積層コンデンサ10(図3)において、内層部17における誘電体層12aとなる。
【0095】
内層用グリーンシートの形成方法は、層を均一に形成できる方法であれば特に限定されず、ドクターブレード法、ノズルコート法などが例示される。なお、形成後のグリーンシートは、必要に応じて乾燥させる。
【0096】
グリーンシート用スラリーは、主成分として、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウムなどのセラミック粉体を含む。さらには、副成分として、アルカリ土類金属、遷移金属、希土類元素、ガラス組成物などがグリーンシート用スラリーに含まれる。これらセラミック粉体および副成分と、溶剤、分散剤、可塑剤、バインダ等とを混合し、これを分散処理することによって、内層グリーンシート用スラリーを得る。
【0097】
溶剤としては、特に限定されないが、グリコール類、アルコール、ケトン類、エステル類、芳香族類などが例示される。具体的には、テルピネオール、アルコール、ブチルカルビトール、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、トルエン、キシレン、酢酸エチル、ステアリン酸ブチル、イソボニルアセテートなどが用いられる。
【0098】
分散剤としては、特に限定されないが、マレイン酸系分散剤、ポリエチレングリコール系分散剤、アリルエーテルコポリマー分散剤が例示される。
【0099】
可塑剤としては、特に限定されないが、フタル酸エステル、アジピン酸、燐酸エステル、グリコール類などが例示される。
【0100】
バインダとしては、特に限定されないが、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール等のブチラール系樹脂、ポリビニルアセタール、ポリビニルアルコール、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリスチレン、または、これらの共重合体からなる有機質、またはエマルジョンなどが例示される。
【0101】
支持シートの材質は、剥離時の適当な柔軟性と、支持体としての剛性とを持つものであれば特に限定されないが、通常、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステルフィルムなどが用いられる。
【0102】
外層用グリーンシートおよびピンホールの形成
次に、支持シートの表面に、グリーンシート用スラリーを塗布して、外層用グリーンシートを形成する。外層用グリーンシートは、完成後の積層コンデンサ10において外層部19a,19bにおける誘電体層12bとなる。
【0103】
外層用グリーンシートの形成に用いる原材料の種類は、上述した内層用グリーンシートの場合とほぼ同様である。したがって、以下では、外層用グリーンシートの形成法と、内層用グリーンシートの形成法との相違点のみについて説明し、両者の共通点に関する説明は省略する。
【0104】
外層用グリーンシートには、後工程においてピンホール導体部20を形成するために、ピンホールを形成する。
【0105】
ピンホールの形成法としては、特に限定されず、以下に示す方法が挙げられる。
【0106】
例えば、グリーンシート用スラリーの主成分として、内層用グリーンシートの場合に比べて、粒径が大きく、形状が粗いセラミック粉体(チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム等)を用いる。その結果、グリーンシートに含まれるセラミック粉体間に、微小な隙間、すなわちピンホールが形成される。
【0107】
あるいは、グリーンシート用スラリーに含まれるバインダ、溶剤等の組成、これらの含有量を調整することによって、グリーンシートに意図的に欠陥(穴)を形成してもよい。この欠陥がピンホールとして機能する。
【0108】
あるいは、内層用グリーンシートに比べて、外層用グリーンシートの厚さを薄くしても良い。外層用グリーンシートの厚さを薄くすることによって、グリーンシートに意図的に欠陥(穴)が形成される。この欠陥がピンホールとして機能する。
【0109】
好ましくは、外層用グリーンシートに形成されるピンホール径が、1〜10μmである。また、好ましくは、ピンホール径が、ピンホール導体部を形成するためにピンホール内へ充填される導電材(金属粒子)の粒子径よりも大きい。
【0110】
本実施形態では、ピンホール径を、1〜10μmの範囲内とすることによって、上述の不具合を防止し、積層コンデンサ10全体のESLを低減することができる。
【0111】
内層用導体層の形成
次に、内層用グリーンシートの表面に、内層用電極ペーストを所定のパターン状に塗布し、焼成前の第1内層用導体層21a〜21d(図2)および第2内層用導体層22a〜22d(図2)をそれぞれ形成する。
【0112】
各内層用導体層の形成方法は、層を均一に形成できる方法であれば特に限定されず、たとえば内層用電極ペーストを用いたスクリーン印刷法あるいはグラビア印刷法などの厚膜形成方法、あるいは蒸着、スパッタリングなどの薄膜法が例示される。なお、形成後の内層用導体層は、必要に応じて乾燥させる。
【0113】
内層用電極ペーストは、導電材、溶剤、分散剤、可塑剤、バインダ、添加物粉末などを、ボールミルなどで混練し、スラリー化することによって得られる。
【0114】
導電材としては、特に限定されないが、通常、Cu、Cu合金、Ni、Ni合金、Ag,Ag−Pd合金、In−Ga合金等を用いる。
【0115】
溶剤としては、特に限定されないが、ターピネオール、ブチルカルビトール、ケロシン、アセトン、イソボニルアセテートなどが例示される。
【0116】
分散剤としては、特に限定されないが、マレイン酸系分散剤、ポリエチレングリコール系分散剤、アリルエーテルコポリマー分散剤が例示される。
【0117】
可塑剤としては、特に限定されないが、フタル酸エステル、アジピン酸、燐酸エステル、グリコール類などが例示される。
【0118】
バインダとしては、特に限定されないが、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、エチルセルロース樹脂などが例示される。
【0119】
添加物粉末としては、グリーンシートに含まれるセラミック粉体と同じ組成を有する共材が挙げられる。共材は、焼成過程において導電材の焼結を抑制する。
【0120】
外層用導体層およびピンホール導体部の形成
次に、外層用グリーンシートの表面に、外層用電極ペーストを所定のパターン状に塗布し、第1外層用導体層23a〜23d(図2,5)および第2外層用導体層25a〜25d(図2,5)を形成する。以下では、外層用導体層の形成法と内層用導体層の形成法との相違点についてのみ説明し、共通点に関する説明は省略する。
【0121】
各外層用導体層の形成方法は、層を均一に形成できる方法であれば特に限定されないが、好ましくは、外層用電極ペーストを用いたスクリーン印刷法あるいはグラビア印刷法を用いる。
【0122】
ピンホールを有する外層用グリーンシートに、導電材を含む外層用電極ペーストを印刷塗布することによって、外層用グリーンシートの表面に、第1外層用導体層23および第2外層用導体層25が形成されると同時に、ピンホールが外層用電極ペースト(導電材)で充填され、ピンホール導体部20も形成される。すなわち、本実施形態に係る積層コンデンサの製造方法においては、第1外層用導体層23および第2外層用導体層25の形成と、ピンホール導体部20の形成とを、同時に行うことが好ましい。
【0123】
好ましくは、外層用電極ペーストに含まれる導電材(金属粒子)の粒径が、ピンホール径よりも小さい。導電材の粒径を、ピンホール径よりも小さくすることによって、ピンホールを隙間無く充填して、外層用グリーンシート(後の誘電体層12b)を完全に貫通するピンホール導体部20を形成することができる。
【0124】
なお、形成後の各外層用導体層は、必要に応じて乾燥させる。
【0125】
余白パターン層の形成
なお、各グリーンシートの表面に各導体層を形成した後(またはその前)に、各グリーンシートの表面において各導体層が形成されていない余白部分に余白パターン層用ペーストを塗布して、各導体層と同じ厚さを有する余白パターン層を形成する。その結果、各導体層と、各グリーンシートとの間の段差を解消することができる。
【0126】
余白パターン層は、各導体層あるいは各グリーンシートと同様の方法によって形成することができる。なお、形成後の余白パターン層は、必要に応じて乾燥させる。
【0127】
余白パターン層用ペーストとしては、通常、グリーンシート用ペーストと同様のペーストを用いる。
【0128】
積層体の形成
次に、第1外層用導体層23a〜23dおよび第2外層用導体層25a〜25dが形成された外層用グリーンシートから、支持シートを剥離し、順次積層する。その結果、下側の外層積層部が得られる。下側の外層積層部は、完成後の積層コンデンサ10において、外層部19b(図2、3)となる。
【0129】
次に、下側の外層積層部の上に、第1内層用導体層21a〜21d、第2内層用導体層22a〜22dがそれぞれ形成された各内層用グリーンシートを順次積層する。その結果、内層積層部が得られる。内層積層部は、完成後の積層コンデンサ10において、内層部17(図2、3)となる。
【0130】
次に、内層積層部の上に、第1外層用導体層23a〜23dおよび第2外層用導体層25a〜25dが形成された外層用グリーンシートを順次積層する。その結果、上側の外層積層部が得られる。上側の外層積層部は、完成後の積層コンデンサ10において、外層部19a(図2,3)となる。
【0131】
本実施形態においては、上述のように、好ましくは、外層積層部を形成した後に連続して内層積層部を形成する。さらに好ましくは、内層積層部を形成した後に連続して、もうひとつの外層積層部を形成する。すなわち、積層体を形成するためのグリーンシートの積層工程は、外層積層部と内層積層部とで、ブロックごとに区別して積層しても良いが、これらを区別しないで、連続して行うことが好ましい。
【0132】
次に、形成された積層体に対して、さらに加熱、加圧処理(積層方向Zに対する加圧処理)を行う。
【0133】
グリーンチップの形成
次に、積層体を所定の寸法に切断して、グリーンチップを形成する。次に、得られたグリーンチップを固化乾燥させ後、水バレル等によって、グリーンチップを研磨し、グリーンチップの角部に丸み(R)をつける。研磨後のグリーンチップは、洗浄し、乾燥させる。
【0134】
誘電体素体の形成
次にグリーンチップに対して、脱バインダ処理、焼成処理、およびアニール処理を行うことによって、誘電体素体12(図1、2)を形成する。
【0135】
次に、得られた誘電体素体12に対して、研磨処理を行う。この研磨処理によって、誘電体素体12の第1側面12Aにおいて、焼成及び熱処理によって酸化した第1内層用導体層21a,21b、第2内層用導体層22a,22b、第1外層用導体層23a,23b、および第2外層用導体層25a,25bの端部を除去し、酸化していない金属部分を各側面に露出させる。同様に、研磨処理によって、誘電体素体12の第2側面12Bにおいて、焼成及び熱処理によって酸化した第1内層用導体層21c,21d、第2内層用導体層22c,22d、第1外層用導体層23c,23d、および第2外層用導体層25c,25dの端部を除去し、酸化していない金属部分を各側面に露出させる。
【0136】
研磨処理後の誘電体素体12は、洗浄し、乾燥させる。
【0137】
端子電極の形成
次に、図1に示すように、誘電体素体12の第1側面12Aに、第1端子電極31a,31b、第2端子電極32a,32bをそれぞれ形成する。また、誘電体素体12の第2側面12Bに、第1端子電極31c,31d、第2端子電極32c,32dをそれぞれ形成する。
【0138】
各外端子電極は、通常、下地層、中間めっき層、および外側めっき層の3層から構成される。
【0139】
まず、誘電体素体12に対して下地層を形成する。下地層は、誘電体素体12の各側面に、電極ペースト膜(Ag,Cu等)を塗布し、これに焼き付け処理を行うことで形成される。
【0140】
次に、誘電体素体12に形成された下地層の表面に中間めっき層を形成する。中間めっき層は、NiまたはNi合金膜等で構成され、無電解めっき法に等より形成される。
【0141】
次に、中間めっき層の表面に、外側めっき層を形成することによって、図1に示す積層コンデンサ10が完成する。なお、外側めっき層は、電解めっき法等により形成され、SnあるいはSn合金のめっき層で構成される。
【0142】
本実施形態に係る積層コンデンサの製造方法は、上述したように、ピンホールを有する外層用グリーンシートに外層用電極ペーストを印刷塗布することによって、各第1外層用導体層および各第2外層用導体層が形成されると同時に、ピンホールが導電材ペーストで充填され、ピンホール導体部20も形成される。すなわち、本実施形態においては、各第1外層用導体層および各第2外層用導体層の形成と、ピンホール導体部20の形成とを、同時に行うことができる。
【0143】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
【0144】
たとえば、本発明に係る積層コンデンサでは、内層用導体層の積層数は、特に限定されず、数十あるいは数百としても良い。
【0145】
上述した本実施形態においては、図3に示すように、誘電体素体12が、2つの外層部19a,19bを有する。この2つの外層部のうち、内層部17を挟んで回路基板15の反対側に位置する外層部19aにおいては、電流が流れない。従って、外層部19aはESLの低減に寄与しないので、必須ではない。しかし、誘電体素体12が外層部19aを有することによって、外層部19aと外層部19bとが、内層部17を挟んで対称的に位置する。すなわち、誘電体素体12がバランスの取れた形状を有することができる。その結果、誘電体素体12の焼成時に、誘電体素体12が変形することを防止できる。また、誘電体素体12が外層部19aを有することによって、図3の積層コンデンサ10を回路基板15に対して、上下反転させた場合でも、積層コンデンサ10を機能させることが可能となる。
【0146】
また、第1端子電極31a〜31dの各々に、第1内層用導体層21a〜21dのうち2種類以上の第1内層用導体層が接続されてもよい。換言すれば、第1内層用導体層21a〜21dの各々が、第1端子電極31a〜31dのうち2種類以上の第1端子電極に接続されてもよい。同様に、また、第2端子電極32a〜32dの各々に、第2内層用導体層22a〜22dのうち2種類以上の第2内層用導体層が接続されてもよい。換言すれば、第2内層用導体層22a〜22dの各々が、第2端子電極32a〜32dのうち2種類以上の第2端子電極に接続されてもよい。この場合も上述の実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0147】
上述の実施形態では、コンデンサ10が、第1内層用導体層および第2内層用導層をそれぞれ複数かつ同数有したが、第1内層用導体層および第2内層用導層の数が異なっても良い。あるいは、いづれかの導体層が単数であって、他方の導体層が複数であってもよい。この場合も上述の実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0148】
上述の実施形態では、第1端子電極31a〜31dおよび第2端子電極32a〜32dが、誘電体素体12において積層方向Zに平行な第1側面12Aおよび第2側面12Bの2つの側面のいずれかに形成されていたが、積層方向Zに平行であり、第1側面12Aおよび第2側面12Bに隣接する第3側面12Cあるいは第4側面12Dにおいても、第1端子電極あるいは第2端子電極が形成されていてもよい。この場合も上述の実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【実施例】
【0149】
次に、本発明をさらに具体的な実施例に基づき説明するが、本発明は、この実施例に限定されない。この実施例では、インピーダンスアナライザを使用して、Sパラメータからインピーダンスへ換算し、以下の各コンデンサ試料のESLをそれぞれ求めた。
【0150】
まず、各コンデンサ試料の内容を説明する。図1に示す実施形態に係る多端子型積層コンデンサをサンプルEx1とした。また、ピンホール導体部20を有さないこと以外は、サンプルEx1と同様にして製造されたコンデンサをサンプルCex1とし、各サンプルのESLをそれぞれ求めた。
【0151】
そして、この結果として、各サンプルのインピーダンス特性を測定した。その結果を図6に示す。図6のグラフに示すように、高周波側では、サンプルEx1の方がサンプルCex1よりもインピーダンスの値は小さくなることが確認された。また、ESLを求めたところ、サンプルEx1ではESLが27pHであり、サンプルCex1では、ESLが35pHであった。つまり、本発明の実施形態によるサンプルEx1において、ESLが大幅に低減されることが確認された。
【0152】
なお、このESLは、2πf=1/√(ESL・C)の式より求められるものであり、fは自己共振周波数で、Cは静電容量である。
【0153】
ここで用いた各試料の寸法としては、図1、4、5に示す寸法において、L0=1.6mm、W0=0.8mm、W1=0.15mm、W2=0.12mm、W3=0.25mm、W4=0.12mmであった。内層用導体層の積層数は、図2に示す第1内層用導体層21a,21b,21c,21dおよび第2内層用導体層22a,22b,22c,22dの計8層を1積層単位としたとき、合計で70積層単位であり、静電容量は、0.4μFであった。
【図面の簡単な説明】
【0154】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る積層コンデンサの斜視図である。
【図2】図2は、図1に示す誘電体素体の分解斜視図である。
【図3】図1に示す積層コンデンサを、III方向に見た概略断面図である。
【図4】図4は、本発明の一実施形態に係る積層コンデンサにおける第1内層用導体層の平面図である。
【図5】図5は、本発明の一実施形態に係る積層コンデンサにおける第1外層用導体層および第2外層用導体層の平面図である。
【図6】図6は、本発明の実施例および比較例に係るインピーダンス特性を表すグラフである。
【符号の説明】
【0155】
10… 積層コンデンサ
12… 誘電体素体
12a,12b… 誘電体層
12A… 第1側面
12B… 第2側面
12C… 第3側面
12D… 第4側面
12E… 第5側面
12F… 第6側面
17… 内層部
19a,19b… 外層部
20… ピンホール導体部
21a,21b,21c,21d… 第1内層用導体層
21A,21B,21C,21D… 第1リード部
22a,22b,22c,22d… 第2内層用導体層
22A,22B,22C,22D… 第2リード部
23a,23b,23c,23d… 第1外層用導体層
25a,25b,25c,25d… 第2外層用導体層
31a,31A,31b,31B,31c,31C,31d,31D… 第1端子電極
32a,32A,32b,32B,32c,32C,32d,32D… 第2端子電極
43,45… 絶縁隙間パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の誘電体層が積層されて形成される略直方体形状の誘電体素体と、
前記誘電体素体において、相互に異なる電位に設定される複数の第1内層用導体層および第2内層用導体層が、積層方向において互いに重複するように前記誘電体層を介して交互に積層され、コンデンサの内部電極回路が形成されている内層部と、
前記誘電体素体において、前記積層方向における前記内層部の両端面の少なくともいずれかに隣接し、相互に異なる電位に設定される複数の第1外層用導体層および第2外層用導体層が、前記積層方向において互いに重複しないように前記誘電体層を介して積層されている外層部と、
前記誘電体素体の側面のうち、少なくとも、前記積層方向に対して平行な側面に形成され、相互に異なる電位に設定される複数の第1端子電極および第2端子電極と、を有し、
前記第1端子電極の各々が、少なくとも1つの前記第1内層用導体層と、複数の前記第1外層用導体層とに接続され、
前記第2端子電極の各々が、少なくとも1つの前記第2内層用導体層と、複数の前記第2外層用導体層とに接続され、
前記外層部に位置する前記誘電体層が、該誘電体層と隣接する一対の前記第1外層用導体層あるいは一対の前記第2外層用導体層と重複する領域において、該誘電体層と隣接する一対の該第1外層用導体層同士あるいは一対の該第2外層用導体層同士を、前記積層方向において互いに接続させる複数のピンホール導体部を有することを特徴とする積層コンデンサ。
【請求項2】
前記ピンホール導体部のピンホール径が、1〜10μmであり、
前記ピンホール導体部の総横断面積が、該ピンホール導体部が接続する前記第1外層用導体層および/または第2外層用導体層の面積に対して、30〜50%であることを特徴とする請求項1に記載の積層コンデンサ。
【請求項3】
複数の前記ピンホール導体部を有する前記誘電体層の前記積層方向および該積層方向に対して垂直な平面方向において、複数の前記ピンホール導体部がランダムに配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の積層コンデンサ。
【請求項4】
それぞれの前記第1端子電極および前記第2端子電極が、前記誘電体素体の側面のうち、少なくとも、前記積層方向に対して平行な第1側面、および該第1側面に対向する第2側面のいずれかに形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の積層コンデンサ。
【請求項5】
それぞれの前記第1端子電極および前記第2端子電極が、前記第1側面または前記第2側面と、前記誘電体素体の側面のうち、該第1側面および該第2側面に隣接し、前記積層方向に対して垂直な第5側面および/または第6側面に跨がって形成されていることを特徴とする請求項4に記載の積層コンデンサ。
【請求項6】
前記第5側面および/または前記第6側面に形成された前記第1端子電極と、前記第1外層用導体層とが、該第1端子電極と該第1外層用導体層との間に位置する前記誘電体層が有する複数の前記ピンホール導体部によって接続され、
前記第5側面および/または前記第6側面に形成された前記第2端子電極と、前記第2外層用導体層とが、該第2端子電極と該第2外層用導体層との間に位置する前記誘電体層が有する複数の前記ピンホール導体部によって接続されることを特徴とする請求項5に記載の積層コンデンサ。
【請求項7】
前記積層方向に垂直な面方向において、前記第5側面および/または前記第6側面における各第1端子電極が、前記積層方向において該第1端子電極に隣接し、該第1端子電極に接続された前記第1外層用導体層を完全に被覆し、
前記積層方向に垂直な面方向において、前記第5側面および/または前記第6側面における各第2端子電極が、前記積層方向において該第2端子電極に隣接し、該第2端子電極に接続された前記第2外層用導体層を完全に被覆することを特徴とする請求項6に記載の積層コンデンサ。
【請求項8】
それぞれの前記第1端子電極が、前記第1側面または前記第2側面に露出した前記第1内層用導体層および前記第1外層用導体層を完全に被覆し、
それぞれの前記第2端子電極が、前記第1側面または前記第2側面に露出した前記第2内層用導体層および前記第2外層用導体層を完全に被覆することを特徴とする請求項4〜7のいずれかに記載の積層コンデンサ。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の積層コンデンサを製造する方法であって、
内層用グリーンシートを形成する工程と、
前記第1内層用導体層および前記第2内層用導体層を形成する工程と、
前記第1内層用導体層および前記第2内層用導体層を、前記積層方向において互いに重複するように前記内層用グリーンシートを介して交互に積層し、内層積層部を形成する工程と、
複数のピンホールを有する外層用グリーンシートを形成する工程と、
複数の前記第1外層用導体層および前記第2外層用導体層を形成する工程と、
複数の前記ピンホールを導電材で充填して、複数の前記ピンホール導体部を形成する工程と、
複数の前記第1外層用導体層および前記第2外層用導体層を、前記積層方向において互いに重複しないように、前記ピンホール導体部が形成された前記外層用グリーンシートを介して積層し、外層積層部を形成する工程と、
前記内層積層部において、前記積層方向に対して垂直な両端面の少なくともいずれかに、前記外層積層部を積層して、積層体を形成する工程と、
前記積層体を所定の寸法に切断してグリーンチップを形成する工程と、
前記グリーンチップを焼成して前記誘電体素体を形成する工程と、
前記誘電体素子本体に複数の前記第1端子電極および前記第2端子電極を形成する工程と、を有する積層コンデンサの製造方法。
【請求項10】
前記ピンホール導体部は、前記第1外層用導体層または前記第2外層用導体層を、前記外層用グリーンシートの表面に積層して形成する際に同時に形成されることを特徴とする請求項9に記載の積層コンデンサの製造方法。
【請求項11】
前記外層積層部を形成した後に連続して前記内層積層部を形成することを特徴とする請求項9または10に記載の積層コンデンサの製造方法。
【請求項12】
前記内層積層部を形成した後に連続して前記外層積層部を形成することを特徴とする請求項9〜11のいずれかに記載の積層コンデンサの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−112896(P2008−112896A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−295682(P2006−295682)
【出願日】平成18年10月31日(2006.10.31)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】