説明

空気亜鉛電池

【課題】空気亜鉛電池の耐漏液特性を向上させる。
【解決手段】開口部の上端2がかしめ加工により折り曲げられており、かつ底部に空気孔3を有する正極ケース1と、外周に折り返されたリバース部11を有し、そのリバース部が正極ケースの内周面で囲まれるように正極ケースの前記開口部に配置された負極ケース10と、負極ケースのリバース部と正極ケースの内周面との間に介在され、かつリバース部の底面が配置される段差16を内周面に有する環状の絶縁ガスケット15と、負極ケースの内面と対向し、無汞化亜鉛合金及びアルカリ電解液を含むゲル状負極9とを具備する空気亜鉛電池であって、負極ケースの少なくとも内面とリバース部の底面とにCu、In、Sn、Bi及びZnよりなる群から選択される少なくとも一種類の金属が配されており、リバース部の底面が平担部を有する形状になっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気亜鉛電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
空気電池の主な使用用途として補聴器が挙げられる。日本国内においても高齢化が進むにつれ補聴器の需要が高まってきている。さらに、補聴器の形状も耳掛け型から耳孔型に移行しつつあり、より安全性の高い電池が要求されている。電池の安全性に関する項目として耐漏液特性があげられる。この耐漏液特性は、電池の封口性に依存していることが判っている。電池の封口方法としては、正極ケースと負極ケースの間にナイロン等の合成樹脂製の絶縁ガスケットを配置し、かしめ固定により絶縁ガスケットと正極ケース、絶縁ガスケットと負極ケースを密着させる方式を採用しているものがほとんどである。
【0003】
電解液の漏出は、正極ケースと絶縁ガスケットの接面からよりも、負極ケースとガスケットの接面からの方が起こりやすい。このため、負極ケースの開口端を外側に折り返して折り返し部を形成することにより、正極ケースと負極ケースと絶縁ガスケットとの圧着性を高めることが行われている。しかしながら、これだけではまだ十分でないため、例えば特許文献1〜4に示すように、負極ケースと絶縁ガスケットの隙間に封止剤を充填することが行われている。
【0004】
近年環境問題から空気亜鉛電池において無水銀化の要求が高まっており、無汞化亜鉛合金を負極活物質として使用し、かつ負極ケースの内面にSn、In等の水素過電圧の高い金属を配することが行われている。しかしながら、このような負極活物質と負極ケースを使用すると、特許文献1〜4に記載されているような封止剤を使用しても、十分な耐漏液特性を得られないという問題点を生じる。
【特許文献1】特公昭62−52426号特許公報
【特許文献2】特公昭62−31783号特許公報
【特許文献3】特開平8−7918号公報
【特許文献4】特開平9−129204号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、無汞化亜鉛合金を含む負極を備えた空気亜鉛電池の耐漏液特性を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る空気亜鉛電池は、
開口部の上端がかしめ加工により折り曲げられており、かつ底部に空気孔を有する正極ケースと、
外周に折り返されたリバース部を有し、そのリバース部が前記正極ケースの内周面で囲まれるように前記正極ケースの前記開口部に配置された負極ケースと、
前記負極ケースの前記リバース部と前記正極ケースの内周面との間に介在され、かつ前記リバース部の底面が配置される段差を内周面に有する環状の絶縁ガスケットと、
前記負極ケースの内面と対向し、無汞化亜鉛合金及びアルカリ電解液を含むゲル状負極と
を具備する空気亜鉛電池であって、
前記負極ケースの少なくとも前記内面と前記リバース部の前記底面とにCu、In、Sn、Bi及びZnよりなる群から選択される少なくとも一種類の金属が配されており、
前記リバース部の前記底面が平担部を有する形状になっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、無汞化亜鉛合金を含む負極を備えた空気亜鉛電池の耐漏液特性を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
上述した課題を解決するために本発明者らが鋭意研究を重ねた結果、有底筒型の金属ケースの開口端を外周面に折り返してリバース部を形成すると、得られた負極ケースでは、リバース部の底面(負極ケースの開口部の端面)がR形状になり、リバース部と絶縁ガスケットとがほぼ一点で接していることがわかった。一方、負極ケースの少なくとも内面とリバース部底面とに形成されたCu、In、Sn、Bi及びZnよりなる群から選択される少なくとも一種類からなる表面層は、無汞化亜鉛合金と負極ケースとが局部電池を形成するのを抑制することが可能である半面、負極に含まれるアルカリ電解液に溶解するという性質を有する。
【0009】
よって、リバース部の底面がR形状であると、表面層のアルカリ電解液への溶出によって、リバース部の底面と絶縁ガスケットの段差との間に若干の空間が生じ、この隙間を伝ってアルカリ電解液が外部に漏れ出し、漏液発生率が高くなる。
【0010】
本発明者らは、リバース部の底面を平担部を有する形状とすることによって、表面層のアルカリ電解液への溶出が生じても、リバース部の底面と絶縁ガスケットの段差との密着性を維持することができ、高温多湿という過酷な環境においても漏液発生率が少なくなることを見出したのである。
【0011】
また、平坦部の幅を負極ケースの板厚の0.5倍より大きく、2倍以下にすると、漏液発生率がさらに低くなることも本発明者らにより明らかとなった。
【0012】
以下、本発明に係る空気亜鉛電池の一実施形態を図面を参照して説明する。
【0013】
図1は本発明に係る空気亜鉛電池の一実施形態を示す模式的な断面図で、図2は図1の空気亜鉛電池の要部拡大断面図である。
【0014】
図1に示すように、有底円筒形をなす正極ケース1は、その開口部の上端2がかしめ加工により内方に折り曲げられている。正極ケース1は、底部に空気孔3を有する。この正極ケース1は、例えばステンレス鋼などの金属から形成されており、正極端子を兼ねているものである。この正極ケース1内には、正極触媒層4が収納されている。正極触媒層4に含まれる正極触媒としては、例えば、活性炭及び二酸化マンガンのようなマンガン酸化物の混合物を使用することができる。正極触媒層4は、例えば、活性炭と、マンガン酸化物と、導電性材料として膨張化黒鉛と、結着剤としてポリテトラフルオロエチレン粉末とを混合し、シート状に成型することにより得られる。
【0015】
正極触媒層4に空気を均一に拡散させるための拡散紙5は、正極ケース1の底部内面に配置されている。拡散紙5には、例えば、クラフト紙を使用することができる。拡散紙5の厚さは50〜100μmの範囲にすることが望ましい。酸素透過性を有する撥水膜6は、拡散紙5と正極触媒層4の間に介装されている。この撥水膜6は、アルカリ電解液が正極ケース1の空気孔3から外部に漏れ出すのを防止するためのものである。撥水膜6は、例えば、ポリテトラフルオロエチレンフィルムのようなフッ素樹脂フィルムから形成することができる。なお、撥水膜6は、1枚に限らず、2枚以上重ねて使用することも可能である。
【0016】
正極集電体7は、正極触媒層4上に配置され、その周縁部が正極ケース1の内面と接している。これにより、正極と正極ケース1との導通が確保される。正極集電体7は、例えば、金属ネットのような導電性の多孔質板から形成することができる。
【0017】
正極集電体7には、セパレータ8及びゲル状の負極9がこの順番に積層されている。セパレータ8は、例えば、ポリプロピレンのようなポリオレフィン製の微多孔膜と不織布とから形成されている。微多孔膜の方を負極9と対向させ、不織布を正極集電体7と対向させる。微多孔膜は、酸化亜鉛の析出による内部短絡を防止するためのものである。アルカリ電解液の保持に寄与しているのは、主に不織布である。
【0018】
ゲル状負極9は、無汞化亜鉛合金及びアルカリ電解液を含むものである。ゲル状負極9は、例えば、無汞化亜鉛合金粉末と、アルカリ電解液と、増粘剤(ゲル化剤)と、必要に応じてインヒビターとを混合することにより形成される。
【0019】
無汞化亜鉛合金としては、無水銀かつ鉛無添加の亜鉛合金が望ましい。この亜鉛合金は、アルミニウム、ビスマス及びインジウムよりなる群から選択される少なくとも1種類を含有するものが望ましい。かかる無汞化亜鉛合金の中でも、Bi含有量が50〜1000ppm、In含有量が100〜1000ppmで、Al及びCaから選択される少なくとも1種類の含有量が10〜100ppmの亜鉛合金が好ましい。Bi含有量のさらに好ましい範囲は100〜500ppmで、In含有量のさらに好ましい範囲は300〜700ppmで、Al及びCaから選択される少なくとも1種類の含有量のさらに好ましい範囲は20〜50ppmである。また、無汞化亜鉛合金は、100〜300μm程度の粒度を有する粉末であることが望ましい。
【0020】
アルカリ電解液としては、例えば、水酸化カリウムを含むアルカリ水溶液等を挙げることができる。アルカリ電解液中の水酸化カリウム濃度は30〜45重量%の範囲にすることが好ましい。
【0021】
増粘剤(ゲル化剤)としては、アルカリ電解液の粘性を増加させてゲル化させる機能を有するものを使用することができる。このような増粘剤としては、例えば、ポリアクリル酸のような吸水性高分子を挙げることができる。
【0022】
インヒビターとしては、例えば、酸化インジウム、水酸化インジウム、酸化ビスマス等を挙げることができる。
【0023】
負極ケース10は、負極集電体と負極端子を兼ねているものである。負極ケース10は、有底円筒形状で、外周面に折り返されたリバース部11を有する。図2に示すように、リバース部11の底面12(負極ケース10の円形開口部の端面)は、ほぼ環状に平坦部が形成されている。平坦部は、曲面でなければ良く、水平面に限らず、傾斜面であっても良い。
【0024】
負極ケース10は、基材13と、Cu、In、Sn、Bi及びZnよりなる群から選択される少なくとも一種類の表面層14とが積層された板材から形成されており、表面層14が負極ケース10の内面、リバース部12の底面及びリバース部12の外周面に位置している。
【0025】
表面層14は、Cu、In、Sn、BiまたはZnの単体金属から形成されていても、これらの金属を含む合金から形成されていても良い。また、Cu層とSn層のような金属層同士、あるいは合金層同士、もしくは金属層と合金層を積層した多層板を表面層としても良い。中でも、Sn金属層、Sn合金層が好ましい。このSn合金層では、Sn含有量を80質量%以上にし、かつZn,Bi,Cu及びInよりなる群から選択される少なくとも1種類からなる添加金属元素の含有量を0.1質量%以上、20質量%以下にすることが望ましい。さらに好ましい範囲は、Sn含有量が85質量%以上で、かつ添加金属元素の含有量が5質量%以上、15質量%以下である。
【0026】
表面層14の厚さは、3μm以上、40μm以下にすることが望ましい。これは以下に説明する理由によるものである。表面層14の厚さを3μm未満にすると、電解液への溶出により基材13が表出して負極活物質と局部電池を形成する恐れがある。一方、表面層14の厚さが40μmを超えると、かしめ固定による封口強度が低下して漏液の発生が助長される恐れがある。さらに好ましい範囲は5μm以上、30μm以下である。
【0027】
基材13としては、例えば、ニッケル層とステンレス鋼層とが積層された板材を使用することができる。ニッケル層は、メッキもしくはクラッド接合により形成することが可能である。基材13のステンレス鋼層の表面に前述した表面層14を接合することが好ましい。よって、負極ケース10の外表面がニッケル層で形成されていることが望ましい。基材13と表面層14の接合方法としては、メッキ、クラッド加工等を挙げることができる。
【0028】
基材13の厚さは、50μm以上、150μm以下にすることが望ましい。さらに好ましい範囲は、50μm以上、120μm以下である。
【0029】
負極ケース10は、例えば、基材13と表面層14とが接合された板材を、内面が表面層14となるように絞り加工により有底円筒形に成型した後、その開口端を外周面に折り返してリバース部11を形成し、リバース部11の底面に圧縮加工を施すことによって得られる。
【0030】
このような負極ケース10は、正極ケース1の開口部に配置され、封口部材として機能する。負極ケース10のリバース部11の外周面は、正極ケース1の開口部付近の内周面と対向している。
【0031】
リング状の絶縁ガスケット15は、正極ケース1の内周面と、これと対向する負極ケース10及びゲル状負極9の外周面との間に介在されている。絶縁ガスケット15は、内周面に環状に段差16が形成されており、この段差16に負極ケース10のリバース部11の底面12が配置されている。絶縁ガスケット15は、例えばナイロン製で、その表面がポリアミド系樹脂でコーティングされている。このような材料から形成された絶縁ガスケット15は、耐アルカリ性を向上することができる。
【0032】
ところで、正極ケース1の空気孔3は、未使用時の無駄な放電を防ぐため、正極ケース1の底面に貼られたシールテープ17で一時的に塞がれている。
【0033】
上述したような構造の空気亜鉛電池によれば、高温環境下での使用等によって負極ケース10の表面層14がゲル状負極9のアルカリ電解液に溶出しても、負極ケース10のリバース部11の底面12と絶縁ガスケット15の段差16との間に隙間が生じるのを回避することができる。これにより、高温環境下での使用時の漏液発生率を低くすることができ、空気亜鉛電池の耐漏液特性を向上することができる。
【0034】
リバース部11の底面12には、ほぼ環状に平坦部が形成されており、この平坦部の径方向に平行な幅L(μm)が下記(1)式を満足することが望ましい。
【0035】
0.5t<L≦2t (1)
但し、tは負極ケース10の板厚(μm)である。負極ケース10の板厚tは50〜200μmの範囲にすることが望ましい。中でも、局部電池形成による水素ガスの発生を抑制し、かつかしめ固定による封口強度を確保する観点から、表面層14の厚さを3μm以上、40μm以下とし、かつ基材13の厚さを50μm以上、150μm以下とし、板厚tをこれらの合計値とすることが望ましい。さらに好ましくは、表面層14の厚さを5μm以上、30μm以下とし、かつ基材13の厚さを50μm以上、120μm以下とし、板厚tをこれらの合計値とすることである。
【0036】
なお、平坦部の幅L(μm)の測定は、まず、空気亜鉛電池をその直径方向に沿って切断し、得られた断面における平坦部の長さを測定する。このような測定を任意の4箇所の断面について行う。得られた平坦部の長さを平均したものを、平坦部の幅Lとする。
【0037】
平坦部の幅Lを0.5t以下にすると、絶縁ガスケット15の段差16とリバース部11の底面12との密着性が低下して漏液発生率が高くなる恐れがある。一方、平坦部の幅Lが2tを超えるものは、リバース部11と負極ケース10の外周面との隙間が大きいため、かしめ固定の際にリバース部11が変形して封止ができなくなる恐れがある。
【0038】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0039】
[実施例]
以下、本発明の実施例を前述した図面を参照して詳細に説明する。
【0040】
(実施例1)
Niメッキを施した厚さ135μmのSUS304の板材(基材13)のSUS304面に、厚さ15μmのSnの板材(表面層14)が接合された厚さ150μmのクラッド材を用意した。これを内面がSn金属層14となるように有底円筒形状に絞り加工した。この有底円筒形ケースの開口端を外周面側に折り返し、リバース部の外周面側とケースの内周面側とに金型を配置し、これら金型でリバース部を挟みつつ、リバース部の底面をリング状の金型で下から加圧する圧縮加工により、リバース部の底面に平坦部をほぼ環状に形成し、負極ケース10を得た。
【0041】
リバース部11の底面12の平坦部の幅Lは、負極ケース10の板厚tの2倍に相当する大きさであった。
【0042】
ナイロン製で、表面がポリアミド系樹脂でコーティングされた絶縁ガスケット15を用意した。この絶縁ガスケット15は、リング状をなし、その内周面に環状に段差16が設けられている。この絶縁ガスケット15内に負極ケース10を挿入し、リバース部11の底面12を段差16に配置した。
【0043】
また、電解液の増粘作用を持つゲル化剤としてのポリアクリル酸の微粉末にインヒビターとしての酸化インジウム(In23)を均一になるまで混合・攪拌した。次いで、Biを397ppm、Inを498ppm、Alを32ppm含有する平均粒径205μmの無汞化亜鉛合金粉末に、30%のKOHと1%のZnOからなるアルカリ電解液と、ポリアクリル酸と酸化インジウムの混合物とを添加し、これらを混合・攪拌して、ゲル状の亜鉛負極を調製した。
【0044】
こうして得られたゲル状亜鉛負極9を負極ケース10に充填後、正極触媒層4が収納された正極ケース1にかしめ加工により固定し、前述した図1に示す構造を有するJIS規格PR44型のボタン形空気亜鉛電池を製造した。
【0045】
(実施例2〜4)
負極ケース10の板厚tに対するリバース部11の底面12の平坦部の幅Lの比率を下記表1に示すように変更すること以外は、実施例1と同様にして前述した図1に示す構造を有するPR44型のボタン形空気亜鉛電池を製造した。
【0046】
(実施例5)
Sn金属層の代わりにSn−Zn合金層(Snが91質量%で、Znが9質量%)を使用すること以外は、実施例1と同様にして前述した図1に示す構造を有するPR44型のボタン形空気亜鉛電池を製造した。
【0047】
(実施例6)
Sn金属層の代わりにSn−Zn−Bi合金(Snが89質量%で、Znが8質量%で、Biが3質量%)を使用すること以外は、実施例1と同様にして前述した図1に示す構造を有するPR44型のボタン形空気亜鉛電池を製造した。
【0048】
(実施例7)
Sn金属層の代わりにSn−Zn−In合金(Snが91.5質量%で、Znが8質量量%で、Inが0.5質量%)を使用すること以外は、実施例1と同様にして前述した図1に示す構造を有するPR44型のボタン形空気亜鉛電池を製造した。
【0049】
(比較例)
リバース部の底面に圧縮加工を施さずにR形状のままにしておくこと以外は、実施例1と同様にして前述した図1に示す構造を有するPR44型のボタン形空気亜鉛電池を製造した。
【0050】
これら実施例1〜7及び比較例の空気亜鉛電池をそれぞれ50個ずつ用意し、45℃−95%RHの環境で30日、60日、90日、120日貯蔵後の漏液発生率と、60℃−95%RHの環境で10日、20日、30日、60日貯蔵後の漏液発生率を測定し、その結果を表1に示す。
【表1】

【0051】
表1から明らかなように、リバース部の底面に平坦部が形成されている実施例1〜7の電池は、45℃で95%相対湿度の環境下と60℃で95%相対湿度の環境下いずれにおいても漏液発生率が低かった。特に、負極ケースの板厚に対する平坦部の幅の比が0.5より大きく、2以下の実施例1〜3によると、いずれの貯蔵条件においても漏液発生率が0%であった。
【0052】
一方、リバース部の底面がR形状をしている比較例によると、45℃で95%相対湿度の環境では90日間の貯蔵で漏液を生じ、60℃で95%相対湿度の環境では20日間の貯蔵で漏液を生じてしまった。
【0053】
なお、前述した実施例では、ボタン型空気亜鉛電池の例を説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の形態をとることができる。たとえば、コイン型、主面の形状が四角もしくは略四角形の扁平形等にすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明に係る空気亜鉛電池の一実施形態を示す断面図。
【図2】図1の空気亜鉛電池の要部の拡大断面図。
【符号の説明】
【0055】
1…正極ケース、2…開口部の上端、3…空気孔、4…正極触媒層、5…空気拡散紙、6…撥水膜、7…正極集電体、8…セパレータ、9…ゲル状亜鉛負極、10…負極ケース、11…リバース部、12…リバース部の底面(負極ケースの開口部の端面)、13…基材、14…表面層、15…絶縁性ガスケット、16…段差、17…シールテープ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部の上端がかしめ加工により折り曲げられており、かつ底部に空気孔を有する正極ケースと、
外周に折り返されたリバース部を有し、そのリバース部が前記正極ケースの内周面で囲まれるように前記正極ケースの前記開口部に配置された負極ケースと、
前記負極ケースの前記リバース部と前記正極ケースの内周面との間に介在され、かつ前記リバース部の底面が配置される段差を内周面に有する環状の絶縁ガスケットと、
前記負極ケースの内面と対向し、無汞化亜鉛合金及びアルカリ電解液を含むゲル状負極と
を具備する空気亜鉛電池であって、
前記負極ケースの少なくとも前記内面と前記リバース部の前記底面とにCu、In、Sn、Bi及びZnよりなる群から選択される少なくとも一種類の金属が配されており、
前記リバース部の前記底面が平担部を有する形状になっていることを特徴とする空気亜鉛電池。
【請求項2】
前記平坦部の幅は、前記負極ケースの板厚の0.5倍より大きく、2倍以下であることを特徴とする請求項1記載の空気亜鉛電池。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−134605(P2006−134605A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−319632(P2004−319632)
【出願日】平成16年11月2日(2004.11.2)
【出願人】(000003539)東芝電池株式会社 (109)
【Fターム(参考)】