説明

空気清浄化装置及び換気空調システム

【課題】換気と空調の両方を考慮した散液装置を用いた換気空調用空気清浄化装置を提供する。
【解決手段】上流側に換気用空気吸込部31Aが設けられ、下流側に換気用空気吐出部20が設けられた換気用空気通過空間17Aと、上流側に空調用空気吸込部31Bが設けられ、下流側に空調用空気吐出部21が設けられた空調用空気通過空間17Bとを有しており、換気用空気通過空間17A内と空調用空気通過空間17B内とが、それぞれ個別に浄化液としての水を散水可能な散液装置としてのエアワッシャー19を備えた構成とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気清浄化装置、及びこの空気清浄化装置を備えた換気空調システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、建物の床上空間における換気と空調とを同時に行える換気空調システムが知られている(例えば、特許文献1等を参照)。
【0003】
また、建物の床上空間における換気又は空調を行うにあたり、散液装置(エアワッシャー)を用いて空気を清浄化する換気空調システムも知られている(例えば、特許文献2等を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−181096号公報
【特許文献2】特開2009−103373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のような従来の換気空調システムは、高い空気清浄化機能を備えたものではなかった。
【0006】
また、特許文献2のような換気空調システムでは、散液装置を用いて高い空気清浄化機能を備えているものの、この散液装置は、空調を主に対象としているため、換気単独時については特に考慮されたものではなかった。
【0007】
そこで、本発明は、換気と空調の両方を考慮した散液装置を用いた空気清浄化装置、及びこの空気清浄化装置を備えた換気空調システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明の空気清浄化装置は、上流側に換気用空気吸込部が設けられ、下流側に換気用空気吐出部が設けられた換気用空気通過空間と、上流側に空調用空気吸込部が設けられ、下流側に空調用空気吐出部が設けられた空調用空気通過空間とを有し、前記換気用空気通過空間内と前記空調用空気通過空間内とが、それぞれ個別に散液可能な散液装置を備えていることを特徴とする。
【0009】
ここで、前記換気用空気通過空間と前記空調用空気通過空間とが、1つのケーシング内を区画壁で区画して形成されているとともに、前記散液装置は、共通の給液管から前記換気用空気通過空間と前記空調用空気通過空間とに分岐されているとよい。
【0010】
また、前記換気用空気通過空間内及び前記空調用空気通過空間内の少なくとも一方には、浄化液と空気との接触面積を大きくする充填材が設けられているとよい。
【0011】
本発明の換気空調システムは、上記した空気清浄化装置の下流側に、換気空調装置が接続されていることを特徴とする。
【0012】
ここで、前記換気空調装置は、冷暖房機能及び除湿機能を有するとよい。
【発明の効果】
【0013】
このような本発明の空気清浄化装置は、上流側に換気用空気吸込部が設けられ、下流側に換気用空気吐出部が設けられた換気用空気通過空間と、上流側に空調用空気吸込部が設けられ、下流側に空調用空気吐出部が設けられた空調用空気通過空間とを有している。
【0014】
そして、換気用空気通過空間内と空調用空気通過空間内とが、それぞれ個別に散液可能な散液装置を備えた構成とされている。
【0015】
こうした構成なので、屋外などから採り入れられる換気用空気は、散液装置により絶えず清浄化された空気とすることができる。
【0016】
そのうえ、屋内を循環する空調用空気は、通常モードでは、散液装置による清浄化を行わないため、散液による圧力損失が無い分、省エネルギーで送風することができ、清浄化モードでは、散液装置による清浄化を行うため、清浄化された空気とすることができる。
【0017】
すなわち、必要に応じて、通常モードと清浄化モードとを使い分けることができる。
【0018】
ここで、換気用空気通過空間と空調用空気通過空間とが、1つのケーシング内を区画壁で区画して形成されているとともに、散液装置は、共通の給液管から換気用空気通過空間と空調用空気通過空間とに分岐されている場合は、空気清浄化装置を簡易且つ安価に製造することができる。
【0019】
また、換気用空気通過空間内及び空調用空気通過空間内の少なくとも一方には、浄化液と空気との接触面積を大きくする充填材が設けられている場合は、充填材により、空気清浄化機能をより高めることができる。
【0020】
このような本発明の換気空調システムは、上記した空気清浄化装置の下流側に、換気空調装置が接続された構成とされている。
【0021】
こうした構成なので、換気空調装置の換気用空気の通気側では、散液装置がフィルターのかわりとなり、しかもフィルター交換の必要がないため、略メンテナンスフリーとなる。
【0022】
そのうえ、換気空調装置の空調用空気の通気側には、フィルターは必要であるが、屋外などから採り入れられる換気用空気は常に清浄化されたものであるうえに、空気清浄化装置における通常モードと清浄化モードとの使い分けが行われるため、フィルターのメンテナンスの頻度を大幅に少なくすることができる。
【0023】
ここで、換気空調装置は、冷暖房機能及び除湿機能を有する場合は、冷暖房と調湿を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施例の換気空調システムの概略構成を説明する説明図である。
【図2】実施例の空気清浄化装置の概略構成を説明する説明図である。
【図3】実施例の空気清浄化装置の詳細を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を実施するための形態を、図面に示す実施例に基づいて説明する。
【実施例】
【0026】
先ず、実施例の構成について説明する。
【0027】
図1は、実施例の空気清浄化装置3Bを備えた換気空調システム1の概略構成を示している。
【0028】
この実施例の換気空調システム1は、下流側の換気空調装置としてのエアコンディショナの屋内機3Aと、上流側の空気清浄化装置3Bとから主に構成されている。
【0029】
ここで、換気空調装置としてのエアコンディショナの屋内機3Aは、ヒートポンプ式であり、屋外機(図示せず)と熱媒循環管路(図示せず)により接続されている。
【0030】
また、このエアコンディショナの屋内機3Aは、冷暖房機能及び除湿機能を有している。
【0031】
さらに、このエアコンディショナの屋内機3Aは、その下流側に、換気空調用空気吹出部32を有している。
【0032】
なお、このエアコンディショナの屋内機3Aには、換気空調用空気吹出部32から空気を様々な強さで吹き出させることが可能なファン(図示せず)が内蔵されているとともに、排水用のドレイン(図示せず)も設けられている。
【0033】
ここで、空気清浄化装置3Bは、図2に示したように、1つのケーシング17内が区画壁17aにより、換気用空気通過空間17Aと空調用空気通過空間17Bとに区画されている。
【0034】
そして、ケーシング17内の上部には、給液管としての給水管18に接続された散水ノズル22が設けられているとともに、散水ノズル22の給水管18との接続部近傍の空調用空気通過空間17B側には、空調用空気通過空間17Bでの散水のオン・オフを切り替えることのできる開閉弁B1が設けられており、換気用空気通過空間17A内と、空調用空気通過空間17B内とが、それぞれ個別に浄化液としての水を散水可能な散液装置としてのエアワッシャー19を備えている。
【0035】
また、空気清浄化装置3Bでは、換気用空気通過空間17Aの上流側に外気などの換気用空気を採り入れる換気用空気吸込部31Aが設けられ、下流側には換気用空気吐出部20が設けられており、空調用空気通過空間17Bの上流側に空調用空気吸込部31Bが設けられ、下流側には空調用空気吐出部21が設けられている。
【0036】
そして、空気清浄化装置3Bの換気用空気吐出部20と空調用空気吐出部21とは、換気空調装置としてのエアコンディショナの屋内機3Aの上流側からその内部と通気可能に連通している。
【0037】
また、換気用空気吸込部31Aから延びるダクト81と換気用空気排気用のダクト82とは、並列した部分に熱交換装置2が設けられており、換気による熱損失を低減させるようになっている。
【0038】
さらに詳しく説明すると、空気清浄化装置3Bには、図3にも示したように、散水ノズル22の下部には、浄化液としての水と空気とを効率よく接触させることができる充填材4が設けられている。
【0039】
この充填材4としては、例えば、ラシヒリング、レッシングリング、ボールリング、サドル、スルザーパッキンなどのように散水ノズル22の下部空間よりも十分に小さい個体を満たせばよく、または、スポンジ構造体、多孔質発泡体、ハニカム構造体、繊維質立体構造体などを成形したものを充填してもよい。
【0040】
また、これらを組み合わせて用いてもよい。
【0041】
そして、給水管18から給水された水が散水ノズル22から、開閉弁B1が開成状態では、換気用空気通過空間17A内及び空調用空気通過空間17B内で散水され、水と接触して換気用空気及び空調用空気が清浄化される。
【0042】
また、開閉弁B1が閉成状態では、換気用空気通過空間17A内のみで散水され、水と接触して換気用空気のみが清浄化される。
【0043】
ここで、ケーシング17の底と区画壁17aの下部との間には隙間が設けられており、散水により溜まった水は排水管23から排水され、ポンプPにより汲み上げられた水は、循環管24を通って、再度、給水管18から散水ノズル22へ給水される。
【0044】
なお、ケーシング17内部の水が汚染されるため、使用度合いに応じて、これを入れ換える制御を行う。
【0045】
例えば、数時間から数日間の使用時間を設定しておき、この使用時間に達すると、排水管23の下部近傍に設けた開閉弁B2を所定時間開成状態として、汚染された水をドレイン26により排水するとともに、給水管18の上部近傍に設けた開閉弁B3を所定時間開成状態として、市水給水管25から清浄な市水を給水して、ケーシング17内部の水を入れ換える。
【0046】
勿論、換気と空調のいずれも行っていない場合は、ポンプPは稼動せず、換気用空気通過空間17A内及び空調用空気通過空間17B内ともに、散水ノズル22から散水されない。
【0047】
なお、この実施例の換気空調システム1は、建物の床下空間、屋根裏空間、又は床上の収納空間等に設置して実施すると、意匠的外観が良い。
【0048】
次に、実施例の換気空調システム1の運転パターンについて説明する。
【0049】
まず、暖房運転時のパターンについて説明する。
【0050】
図1に示すように、暖房運転の際は、空気清浄化装置3B内を空気が通過するために、少なくとも換気用空気が加湿されるので、換気空調用空気吹出部32からは適度に加湿された空気がエアコンディショナの屋内機3Aにより暖められて吹き出され、加湿器が不要となる。
【0051】
なお、必要に応じて、図3に示す空気清浄化装置3B内の換気用空気通過空間17Aのみで散水して換気用空気のみを清浄化する通常モードと、空気清浄化装置3B内の換気用空気通過空間17Aと空調用空気通過空間17Bの両方で散水して換気用空気及び空調用空気を清浄化する清浄化モードとを使い分けることができる。
【0052】
次に、冷房運転時のパターンについて説明する。
【0053】
図1に示すように、冷房運転時の際は、空気清浄化装置3B内を空気が通過するために、エアコンディショナの屋内機3Aの除湿機能で除湿するので、換気空調用空気吹出部32からは適度に乾燥された空気がエアコンディショナの屋内機3Aにより冷やされて吹き出される。
【0054】
なお、この冷房運転時においても、暖房運転時と同様、必要に応じて、図3に示す空気清浄化装置3B内の換気用空気通過空間17Aのみで散水して換気用空気のみを清浄化する通常モードと、図3に示すように、空気清浄化装置3B内の換気用空気通過空間17Aと空調用空気通過空間17Bの両方で散水して換気用空気及び空調用空気を清浄化する清浄化モードとを使い分けることができる。
【0055】
次に、空気清浄化運転時のパターンについて説明する。
【0056】
空気清浄化運転時の際は、基本的には、図1に示すエアコンディショナの屋内機3Aの送風機能のみを用いるが、空気清浄化装置3B内を空気が通過するために、湿度の高い夏場などであれば、エアコンディショナの屋内機3Aの除湿機能で除湿し、湿度の低い冬場などであれば、除湿機能を停止して、加湿すればよい。
【0057】
なお、この空気清浄化運転時においては、図3に示すように、空気清浄化装置3B内の換気用空気通過空間17Aと空調用空気通過空間17Bの両方で散水して換気用空気及び空調用空気を清浄化する清浄化モードとする。
【0058】
次に、実施例の作用効果について説明する。
【0059】
図1に示すように、このような実施例の空気清浄化装置3Bは、上流側に換気用空気吸込部31Aが設けられ、下流側に換気用空気吐出部20が設けられた換気用空気通過空間17Aと、上流側に空調用空気吸込部31Bが設けられ、下流側に空調用空気吐出部21が設けられた空調用空気通過空間17Bとを有している。
【0060】
そして、図3に示す換気用空気通過空間17A内と空調用空気通過空間17B内とが、それぞれ個別に浄化液としての水を散水可能な散液装置としてのエアワッシャー19を備えた構成とされている。
【0061】
こうした構成なので、屋外などから採り入れられる換気用空気は、エアワッシャー19により絶えず清浄化された空気とすることができる。
【0062】
そのうえ、屋内を循環する空調用空気は、通常モードでは、エアワッシャー19による清浄化を行わないため、散水による圧力損失が無い分、省エネルギーで送風することができ、清浄化モードでは、エアワッシャー19による清浄化を行うため、清浄化された空気とすることができる。
【0063】
すなわち、必要に応じて、通常モードと清浄化モードとを使い分けることができる。
【0064】
ここで、換気用空気通過空間17Aと空調用空気通過空間17Bとが、1つのケーシング17内を区画壁17aで区画して形成されているとともに、エアワッシャー19は、共通の給液管としての給水管18から換気用空気通過空間17Aと空調用空気通過空間17Bとに散水ノズル22により分岐されている。
【0065】
このため、空気清浄化装置3Bを簡易且つ安価に製造することができる。
【0066】
また、換気用空気通過空間17A内及び空調用空気通過空間17B内には、浄化液としての水と空気との接触面積を大きくする充填材4が設けられている。
【0067】
このため、充填材4により、空気清浄化機能をより高めることができる。
【0068】
このような実施例の換気空調システム1は、上記した空気清浄化装置3Bの下流側に、換気空調装置としてのエアコンディショナの屋内機3Aが接続された構成とされている。
【0069】
こうした構成なので、エアコンディショナの屋内機3Aの換気用空気の通気側では、エアワッシャー19がフィルターのかわりとなり、しかもフィルター交換の必要がないため、略メンテナンスフリーとなる。
【0070】
そのうえ、エアコンディショナの屋内機3Aの空調用空気の通気側には、フィルターは必要であるが、屋外などから採り入れられる換気用空気は常に清浄化されたものであるうえに、空気清浄化装置3Bにおける通常モードと清浄化モードとの使い分けが行われるため、フィルターのメンテナンスの頻度を大幅に少なくすることができる。
【0071】
ここで、換気空調装置としてのエアコンディショナの屋内機3Aは、冷暖房機能及び除湿機能を有している。
【0072】
このため、冷暖房と調湿を行うことができる。
【0073】
また、エアコンディショナの屋内機3Aは、ヒートポンプ式のものが用いられている。
【0074】
このため、ヒートポンプを用いるので、省エネルギー性能に優れたものとすることができる。
【0075】
以上、図面を参照して、本発明を実施するための形態を実施例に基づいて詳述してきたが、具体的な構成は、この実施例に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0076】
例えば、上記した実施例では、空気清浄化装置3Bの換気用空気通過空間17A内の換気用空気と空調用空気通過空間17B内の空調用空気を、1つのエアワッシャー19で散水して清浄化するようにして実施したが、これに限定されず、個別のエアワッシャーで散水して清浄化するようにして実施してもよい。
【0077】
また、上記した実施例では、空気清浄化装置3Bの換気用空気通過空間17Aと空調用空気通過空間17Bとを1つのケーシング17で一体のものとして実施したが、これに限定されず、離れた状態として実施してもよい。
【符号の説明】
【0078】
1 換気空調システム
2 熱交換装置
3A エアコンディショナの屋内機(換気空調装置)
3B 空気清浄化装置
31A 換気用空気吸込部
31B 空調用空気吸込部
32 換気空調用空気吹出部
4 充填材
81 ダクト
82 ダクト
17 ケーシング
17a 区画壁
17A 換気用空気通過空間
17B 空調用空気通過空間
18 給水管(給液管)
19 エアワッシャー(散液装置)
20 換気用空気吐出部
21 空調用空気吐出部
22 散水ノズル
23 排水管
24 循環管
25 市水給水管
26 ドレイン
B1 開閉弁
B2 開閉弁
B3 開閉弁
P ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上流側に換気用空気吸込部が設けられ、下流側に換気用空気吐出部が設けられた換気用空気通過空間と、上流側に空調用空気吸込部が設けられ、下流側に空調用空気吐出部が設けられた空調用空気通過空間とを有し、
前記換気用空気通過空間内と前記空調用空気通過空間内とが、それぞれ個別に散液可能な散液装置を備えていることを特徴とする空気清浄化装置。
【請求項2】
前記換気用空気通過空間と前記空調用空気通過空間とが、1つのケーシング内を区画壁で区画して形成されているとともに、前記散液装置は、共通の給液管から前記換気用空気通過空間と前記空調用空気通過空間とに分岐されていることを特徴とする請求項1に記載の空気清浄化装置。
【請求項3】
前記換気用空気通過空間内及び前記空調用空気通過空間内の少なくとも一方には、浄化液と空気との接触面積を大きくする充填材が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の空気清浄化装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の空気清浄化装置の下流側に、換気空調装置が接続されていることを特徴とする換気空調システム。
【請求項5】
前記換気空調装置は、冷暖房機能及び除湿機能を有することを特徴とする請求項4に記載の換気空調システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−102940(P2012−102940A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−252143(P2010−252143)
【出願日】平成22年11月10日(2010.11.10)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【出願人】(000004400)オルガノ株式会社 (606)