空気調和機
【課題】冷媒の変更に伴う既設配管の流用に際し、既設配管の仕様(径、肉厚、材質など)が現場によって異なっていても、各現場での対応(冷房・暖房の最大能力の低下を可能な限り抑えること)が可能な空気調和機を提供すること。
【解決手段】制御基板13で危険回避を行うことにより、室内機2の圧縮機11から吐出された冷媒が制限圧力以下に抑えられるが、この点、制限圧力は、安全を確保するものであって、制御基板31上の複数のディップスイッチ32で既設配管4A,4Bの仕様を入力すると、室外機2と室内機3を接続する既設配管4A,4Bの仕様に適合した値に変更させることができる。
【解決手段】制御基板13で危険回避を行うことにより、室内機2の圧縮機11から吐出された冷媒が制限圧力以下に抑えられるが、この点、制限圧力は、安全を確保するものであって、制御基板31上の複数のディップスイッチ32で既設配管4A,4Bの仕様を入力すると、室外機2と室内機3を接続する既設配管4A,4Bの仕様に適合した値に変更させることができる。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、パッケージクラスのヒートポンプ式の空気調和機において、HCFC系冷媒(R12,R22)及びHFC(R407C)を含む冷媒からR410Aの冷媒へ切り替える際に適用する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、ヒートポンプ式の空気調和機においては、オゾン層破壊防止等の観点から、R12,R22(R407Cを含む)などからR410Aに冷媒が切り替えられている。この点、R12又はR22(R407Cを含む)などを使用している空気調和機が既存する場合には、作業性や費用等の観点から、室内機と室外機を接続していた接続配管を流用して、R410Aを使用する空気調和機に交換することが多い。
【0003】
具体的に言えば、図12(a)に示すように、R12又はR22(R407Cを含む)などを使用している空気調和機の室内機102及び室外機101が接続配管(以下、「既設配管」という)103で接続されていた場合、先ず、室内機102及び室外機101を撤去して、図12(b)に示すように、既設配管103だけを残し、その後に、図12(c)に示すように、既設配管103に対して、R410Aを使用する空気調和機の室内機104及び室外機105を接続していた。
【0004】
もっとも、R410Aを使用する空気調和機の設計圧力は、R12又はR22(R407Cを含む)などを使用している空気調和機の設計圧力と比べて高く、例えば、R22を使用している空気調和機の設計圧力に対しては、1.5倍になる。従って、R12又はR22(R407Cを含む)などを使用している空気調和機のために仕様(径、肉厚、材質など)が決定された既設配管103を、R410Aを使用する空気調和機に流用すると、既設配管103を流れる冷媒の圧力が既設配管103の許容圧力を超えてしまう危険があった。
【0005】
そこで、この危険を回避するために、例えば、圧力感知装置により圧縮機の吐出圧力を感知して、設定の圧力になった時点で膨張弁の開放等の圧力制限手段を実行し、圧縮機の吐出圧力を減衰させることが行われてきた(例えば、特許文献1参照)。これによれば、冷房・暖房の最大能力が低下するものの、連続運転することが可能となる。
【0006】
【特許文献1】
特開2000−314563号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、既設配管103の仕様は、現場によって異なることが多いにもかかわらず、圧力制限手段を実行させるための設定の圧力を現場で変更することができなかった。さらに、既設配管103の仕様は多数存在することから、既設配管103の仕様と設定の圧力との組合せによっては、冷房・暖房の最大能力の低下が著しくなるおそれがあった。そのため、冷房・暖房の最大能力の低下を可能な限り抑えるためには、既設配管103の仕様毎に、最適な圧力が設定されたものを、予め用意する必要があった。
【0008】
そこで、本発明は、上述した点を鑑みてなされたものであり、冷媒の変更に伴う既設配管の流用に際し、既設配管の仕様が現場によって異なっていても、各現場での対応(冷房・暖房の最大能力の低下を可能な限り抑えること)が可能な空気調和機を提供することを課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
この課題を解決するために成された請求項1に係る発明は、室外機と、前記室外機と接続配管で接続される室内機と、前記室内機の圧縮機から吐出された冷媒を制限圧力以下に抑える危険回避手段と、前記危険回避手段を制御する制御手段と、を有する空気調和機において、前記接続配管の仕様に適合した値に前記制限圧力を変更させるための設定手段を備えたこと、を特徴としている。
【0010】
すなわち、本発明の空気調和機では、制御手段で危険手段を制御することにより、室内機の圧縮機から吐出された冷媒が制限圧力以下に抑えられるが、この点、制限圧力は、安全を確保するものであって、設定手段により、室外機と室内機を接続する接続配管の仕様に適合した値に変更させることができるので、冷媒の変更に伴う既設配管の流用に際し、既設配管の仕様が現場によって異なっていても、各現場での対応(冷房・暖房の最大能力の低下を可能な限り抑えること)が可能である。
【0011】
また、請求項2に係る発明は、請求項1に記載する空気調和機であって、前記制御手段は、前記接続配管の高圧側の温度を考慮して前記制限圧力を補正すること、を特徴としている。
【0012】
すなわち、本発明の空気調和機では、接続配管の温度により接続配管の許容圧力が変化することを鑑み、制御手段が、接続配管の高圧側の温度を考慮して制限圧力を補正しており、高圧側の接続配管の温度が低くなれば制限圧力を大きくし、高圧側の接続配管の温度が高くなれば制限圧力を小さくしていく。従って、高圧側の接続配管の温度が低くなれば制限圧力が大きくなるので、高圧側の接続配管の温度が低いほど、冷房・暖房の最大能力の低下をより一層抑えることができる。
【0013】
尚、危険回避手段は、室内機の圧縮機から吐出された冷媒を制限圧力以下に抑えるために、圧縮機を停止することもある。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照にして説明する。図1に示すように、本実施の形態の空気調和機1は、室外機2、室内機3、及び、室外機2と室内機3を接続する接続配管4A,4Bなどから構成されている。この点、室外機2及び室内機3は、R410Aを冷媒として使用するものである。一方、接続配管4A,4Bは、R12又はR22(R407Cを含む)などを冷媒として使用していた空気調和機の室外機及び室内機を接続していた既設のものであり、以下、「既設配管」と呼ぶ。
【0015】
また、本実施の形態の空気調和機1は、図1に示すように、コンプレッサ11及び、オイルセパレータ12、四方弁13、室外熱交換器14、過冷却器15、電子膨張弁16、室内熱交換機17、二重管熱交換器18、アキュムレータ19、制御基板31などから構成されている。
【0016】
この点、コンプレッサ11においては、その吐出口がオイルセパレータ12に接続されている。そして、オイルセパレータ12は、フィルタドライヤF3及びキャピラリーC3を介して、コンプレッサ11とアキュムレータ19に接続されている。また、オイルセパレータ12は、バイパス弁20を介して、アキュムレータ19に接続されている。さらに、オイルセパレータ12は、四方弁13の入口ポートに接続されている。
【0017】
また、四方弁13には、第1出口ポート及び、第2出口ポート、第3出口ポートが存在する。そして、第1出口ポートに対しては、ストレーナーS3及び、ボールバルブV2、フレアナットN2を介して、室内熱交換機17が接続されている。第2出口ポートに対しては、二重管熱交換器18を介して、アキュムレータ19が接続されている。第3出口ポートに対しては、室外熱交換器14が接続されている。
【0018】
また、室外熱交換器14と室内熱交換器17は、過冷却器15及び、フィルタドライヤF1、ボールバルブV1、フレアナットN1、ストレーナーS1、電子膨張弁16、ストレーナーS2などを介して、接続されている。さらに、フィルタドライヤF1に対しては、キャピラリーC2及びフィルタドライヤF2が並列的に設けられている。さらに、電子膨張弁16に対しては、キャピラリーC1が並列的に設けられている。
【0019】
尚、コンプレッサ11とオイルセパレータ12の間には温度センサーT1が設けられている。また、室外熱交換器14には温度センサーT2が設けられている。また、室内熱交換器17には温度センサーT3が設けられている。また、二重管熱交換器18とアキュムレータ19の間には温度センサーT4が設けられている。また、アキュムレータ19とコンプレッサ11の間には温度センサーT5が設けられている。
【0020】
さらに、ボールバルブV1,V2の室外機2の側には温度センサー21,22が設けられている。また、オイルセパレータ12と四方弁13の間には、圧力センサーP及び圧力スイッチSWが設けられている。また、コンプレッサ11には破裂板23が設けられるとともに、過冷却器15とフィルタドライヤF1の間には可溶栓24が設けられている。また、制御基板31には、複数のディップスイッチ32が設けられている。
【0021】
そして、本実施の形態の空気調和機1において、冷房運転を行うときは、電子膨張弁16を開け、アキュムレータ19で冷媒液を除いた冷媒ガスに対し、コンプレッサ11で圧縮行程を行い、四方弁13などを介して、室外熱交換器14で凝縮行程を行い、フィルタドライヤF1などを介して、膨張弁16で膨張行程を行い、室内熱交換器17で蒸発行程を行った後、四方弁13などを介して、室内熱交換器17からの冷媒をアキュムレータ19に吸い込ませることより、冷凍サイクルを繰り返している。
【0022】
一方、本実施の形態の空気調和機1において、暖房運転を行うときは、電子膨張弁16を閉じ、アキュムレータ19で冷媒液を除いた冷媒ガスに対し、コンプレッサ11で圧縮行程を行い、四方弁13などを介して、室内熱交換器17で凝縮行程を行った後、キャピラリーC1で膨張行程を行い、フィルタドライヤF2などを介して、室外熱交換器14で蒸発行程を行った後、四方弁13などを介して、室外熱交換器17からの冷媒をアキュムレータ19に吸い込ませていることより、冷凍サイクルを繰り返している。
【0023】
これらの冷凍サイクルは、制御基板31で制御されることになるが、この制御基板31は、コンプレッサ11から吐出された冷媒ガスの圧力を圧力センサーPで測定し、圧力センサーPの測定圧力が制限圧力よりも大きいと判断した場合に、コンプレッサ11の回転数の減少や、電子膨張弁16の開度の増加、室外熱交換器14のファンの回転数や台数の増加、バイパス弁20の開放、運転停止などにより、コンプレッサ11から吐出された冷媒ガスの圧力の上昇を防いでいる。
【0024】
この点、本実施の形態の空気調和機1は、室外機2及び室内機3においてR410Aを冷媒として使用するものであるので、制限圧力としては、基準凝縮温度が65℃であるときの設計圧力である4.2MPaを使用する。しかしながら、上述したように、室外機2及び室内機3を接続する既設配管4A,4Bは、R12又はR22(R407Cを含む)などを冷媒として使用していた空気調和機の室外機及び室内機を接続していたものであることから、制限圧力として4.2MPaを使用すると、既設配管4A,4Bの仕様(径、肉厚、材質など)によっては、既設配管4A,4Bが破損するおそれがある。
【0025】
具体的には、例えば、図5に示すように、既設配管4A,4Bの材質がO材又はOL材の銅管である場合、径が12.7mm以上のものであると、最高使用圧力が4.2MPaより小さいので、制限圧力として4.2MPaを使用すれば、既設配管4A,4Bが破損するおそれがある。尚、図5の最高使用圧力とは、配管の許容圧力をケージ圧に換算したものである。
【0026】
また、図6に示すように、既設配管4A,4Bの材質が1/2H材又はH材の銅管である場合、径が25.4mm以上のものであると、最高使用圧力が4.2MPaより小さいので、制限圧力として4.2MPaを使用すれば、既設配管4A,4Bが破損するおそれがある。尚、図6の最高使用圧力とは、配管の許容圧力をケージ圧に換算したものである。また、図6においては、径が19.05mm以下のものの最高使用圧力は、4.2MPaより大きくなることが明らかであるので、数値を省略している。
【0027】
そこで、本実施の形態の空気調和機1では、制御基板31に設けられた複数のディップスイッチ32により、既設配管4A,4Bの仕様を入力さえすれば、制限圧力を、既設配管4A,4Bの仕様に適合した値に変更できるようにしている(後述する図4参照)。
【0028】
例えば、既設配管4A,4Bの材質がO材又はOL材の銅管であって、径が12.7mmであることを、複数のディップスイッチ32で入力すると、最高使用圧力である3.84MPa(図5参照)から所定値(例えば、機器誤差等を考慮した余裕分である0.05MPa)を引いた値を制限圧力とする。また、既設配管4A,4Bの材質がO材又はOL材の銅管であって、径が15.88mmであることを、複数のディップスイッチ32で入力すると、最高使用圧力である4.11MPa(図5参照)から所定値(例えば、機器誤差等を考慮した余裕分である0.05MPa)を引いた値を制限圧力とする。このようにして、複数のディップスイッチ32で入力された既設配管4A,4Bの仕様に対応する最高使用圧力(図5参照)が4.2MPaより小さい場合には、当該最高使用圧力から所定値(例えば、機器誤差等を考慮した余裕分である0.05MPa)を引いた値を制限圧力とする。尚、最高使用圧力から所定値(例えば、機器誤差等を考慮した余裕分である0.05MPa)を引いた値を制限圧力とするのは、圧力センサーPの測定誤差や圧力損失などを配慮したためである。一方、複数のディップスイッチ32で入力された既設配管4A,4Bの仕様に対応する最高使用圧力が4.2MPa以上である場合(図5では、径が、6.35mm又は9.52mmである場合)には、4.2MPaを制限圧力とする。
【0029】
また、既設配管4A,4Bの材質が1/2H材又はH材の銅管であって、径が25.4mmであることを、複数のディップスイッチ32で入力すると、最高使用圧力である3.97MPa(図6参照)から所定値(例えば、機器誤差等を考慮した余裕分である0.05MPa)を引いた値を制限圧力とする。また、既設配管4A,4Bの材質がO材又はOL材の銅管であって、径が28.58mmであることを、複数のディップスイッチ32で入力すると、最高使用圧力である3.67MPa(図6参照)から所定値(例えば、機器誤差等を考慮した余裕分である0.05MPa)を引いた値を制限圧力とする。このようにして、複数のディップスイッチ32で入力された既設配管4A,4Bの仕様に対応する最高使用圧力(図6参照)が4.2MPaより小さい場合には、当該最高使用圧力から所定値(例えば、機器誤差等を考慮した余裕分である0.05MPa)を引いた値を制限圧力とする。尚、最高使用圧力から所定値(例えば、機器誤差等を考慮した余裕分である0.05MPa)を引いた値を制限圧力とするのは、圧力センサーPの測定誤差や圧力損失などを配慮したためである。一方、複数のディップスイッチ32で入力された既設配管4A,4Bの仕様に対応する最高使用圧力が4.2MPa以上である場合(図6では、径が、6.35mm〜22.22mmである場合)には、4.2MPaを制限圧力とする。
【0030】
但し、既設配管4A,4Bとして使用される銅管などにおいては、図8に示すように、温度が高くなるほど許容引張応力が小さくなるので、図7に示すように、温度が高くなるほど許容圧力が小さくなる。従って、図5及び図6に示した最高使用圧力は、既設配管4A,4Bにおいて想定される冷媒の最高温度(約120℃)を超えた125℃での許容圧力の値から換算している。
【0031】
もっとも、逆の見方をすれば、既設配管4A,4Bとして使用される銅管などにおいては、図8に示すように、温度が低くなるほど許容引張応力が大きくなるので、図7に示すように、温度が低くなるほど許容圧力が大きくなる。そこで、本実施の形態の空気調和機1では、温度センサー21,22で測定した既設配管4A,4Bの温度により、図5及び図6R>6に示した最高使用圧力を補正する。
【0032】
具体的に言えば、例えば、既設配管4A,4Bの材質がO材又はOL材の銅管であって、径が15.88mmであった場合、先ず、複数のディップスイッチ32でその仕様を入力すると、125℃での許容圧力からケージ圧に換算した4.11MPaを最高使用圧力とし(図5,図7参照)、当該最高使用圧力から所定値(例えば、機器誤差等を考慮した余裕分である0.05MPa)を引いた値を制限圧力とする。その後、温度センサー21,22で測定した既設配管4A,4Bの温度が90℃であったときは、90℃での許容圧力である4.2MPa(図7参照)からケージ圧に換算した値を最高使用圧力とし、当該最高使用圧力から所定値(例えば、機器誤差等を考慮した余裕分である0.05MPa)を引いた値を制限圧力とする。
【0033】
これによれば、既設配管4A,4Bの温度が低下すると、図9に示すように、制限圧力をA1からA2に大きくすることができる。従って、負荷が増加して、圧力センサーPの測定値(コンプレッサ11から吐出された冷媒ガスの圧力)が制限圧力A1に等しくなったB点であっても、制限圧力がA1からA2に大きくなった結果、コンプレッサ11による冷媒ガスの圧力の上昇が許され、例えば、図9の一点鎖線に示すような圧力のトレンドを描くことになる。一方、制限圧力がA1で固定されていると、コンプレッサ11から吐出された冷媒ガスの圧力の上昇を防ぐために、コンプレッサ11の回転数の減少や、電子膨張弁16の開度の増加、室外熱交換器14のファンの回転数や台数の増加、バイパス弁20の開放などが行われ、図9のB点以降は、例えば、点線に示すような圧力のトレンドを描くことになる。
【0034】
尚、図5及び図6の表は、制御基板31の記憶領域に記憶される。また、図7のグラフについては、図5及び図6の表に記載された既設配管4A,4Bの仕様の全てについて用意し、制御基板31の記憶領域に記憶される。
【0035】
ここで、本実施の形態の空気調和機1の制御基板31にて行われる制御のフローチャートを図4に示す。先ず、S11において、リモコンなどの指示によりシステムの運転を開始させると、S12において、制限圧力の設定が行われる。具体的には、制御基板31上の複数のディップスイッチ32で入力された既設配管4A,4Bの仕様と図5,図6の表から、既設配管4A,4Bの仕様に対した最高使用圧力を取得し、当該最高使用圧力から所定値(例えば、機器誤差等を考慮した余裕分である0.05MPa)を引いた値を制限圧力とする。次に、S13において、既設配管4A,4Bの温度を温度センサー21,22で測定した後、S14に進んで、制限圧力の補正を行う。具体的には、温度センサー21,22で測定した既設配管4A,4Bの温度での許容圧力からケージ圧に換算した値を最高使用圧力とし、当該最高使用圧力から所定値(例えば、機器誤差等を考慮した余裕分である0.05MPa)を引いた値を制限圧力とする。
【0036】
もっとも、本実施の形態の空気調和機1では、冷房時・暖房時のいずれであっても、既設配管4Aには液状の冷媒が流れ、既設配管4Bにはガス状の冷媒が流れるので、既設配管4A,4Bの径が異なる。さらに、冷房時は、既設配管4Aが高圧で既設配管Bが低圧となり、暖房時には、既設配管4Aが低圧で既設配管Bが高圧となる。そこで、既設配管4A,4Bの両者の仕様を複数のディップスイッチ32で入力しておき、冷房時には、高圧側の既設配管4Aの仕様に基づいて、上述したような制限圧力の設定・補正を行い、暖房時には、高圧側の既設配管4Bの仕様に基づいて、上述したような制限圧力の設定・補正を行う。
【0037】
そして、S15において、コンプレッサ11から吐出された冷媒ガスの圧力を圧力センサーPで測定した後、S16に進んで、制限圧力と圧力センサーPの測定値を比較する。ここで、制限圧力が圧力センサーPの測定値より大きいと判断した場合には(S16:Yes)、S17に進んで、危険回避を行った後に、S13に戻る。ここで、危険回避とは、コンプレッサ11の回転数の減少や、電子膨張弁16の開度の増加、室外熱交換器14のファンの回転数や台数の増加、バイパス弁20の開放、運転停止などを行うことによって、コンプレッサ11から吐出された冷媒ガスの圧力の上昇を防ぐことである。尚、運転停止を行った際には、同時に異常を発報する。一方、制限圧力が圧力センサーPの測定値以下であると判断した場合には(S16:Yes)、何もすることなく、S13に戻る。
【0038】
尚、本実施の形態の空気調和機1においては、コンプレッサー11に破裂板23を設けたり、過冷却器15とフィルタドライヤF1との間に可溶栓24を設けたりすることで、安全を確保している。さらに、オイルセパレータ12と四方弁13の間に設置された圧力スイッチSWが作動すると運転を停止することで、安全を確保している。
【0039】
以上詳細に説明したように、本実施の形態の空気調和機1では、制御基板13で危険回避を行うことにより(S17)、室内機2の圧縮機11から吐出された冷媒が制限圧力以下に抑えられるが(S16:Yes,S17)、この点、制限圧力は、安全を確保するものであって、制御基板31上の複数のディップスイッチ32で既設配管4A,4Bの仕様を入力すると、室外機2と室内機3を接続する既設配管4A,4Bの仕様に適合した値に変更させることができるので(S12)、冷媒の変更に伴う既設配管4A,4Bの流用に際し、既設配管4A,4Bの仕様が現場によって異なっていても、各現場での対応(冷房・暖房の最大能力の低下を可能な限り抑えること)が可能である。
【0040】
また、本実施の形態の空気調和機1では、既設配管4A,4Bの温度により既設配管4A,4Bの許容圧力が変化することを鑑み(図7参照)、制御基板13が、既設配管4A,4Bのうち高圧側の温度を考慮して制限圧力を補正しており(S14)、既設配管4A,4Bのうち高圧側の温度が低くなれば制限圧力を大きくし、既設配管4A,4Bのうち高圧側の温度が高くなれば制限圧力を小さくしていく(図9参照)。従って、既設配管4A,4Bのうち高圧側の温度が低くなれば制限圧力が大きくなるので、既設配管4A,4Bのうち高圧側の温度が低いほど、冷房・暖房の最大能力の低下をより一層抑えることができる。
【0041】
尚、本発明は上記実施の形態に限定されるものでなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
例えば、本実施の形態の空気調和機1では、温度センサー21,22で既設配管4A,4Bの温度を測定していた。これは、既設配管4A,4Bに最も近い場所に温度センサー21,22を設置することにより、温度センサー21,22の測定値を既設配管4A,4Bの温度とするものである。しかしながら、冷媒の状態を考えれば、冷房時には、室外熱交換器14からボールバルブV1までの冷媒配管(図2の太線)に設置された温度センサーの測定値を既設配管4Aの温度としてもかまわない。従って、室外熱交換器14の温度センサーT2で代用することも可能である。また、暖房時には、コンプレッサー11からボールバルブV2までの冷媒配管(図3の太線)に設置された温度センサーの測定値を既設配管4Bの温度としてもかまわない。従って、温度センサーT1で代用することも可能である。
【0042】
また、温度センサーを使用しなくとも、圧力センサーPの測定圧力から冷媒の温度を算出し、既設配管4A,4Bの温度を推定してもよい。尚、この目的のためのみに使われる圧力センサーは、冷房時では、コンプレッサー11からボールバルブV1を介して電子膨張弁16又はキャピラリーC1までの高圧側の冷媒配管(図10の太線)に設置されればよく、暖房時では、コンプレッサー11からボールバルブV2を介して電子膨張弁16又はキャピラリーC1までの高圧側の冷媒配管(図11の太線)に設置されればよい。
【0043】
もっとも、室外機2から温度センサーを延出させ、当該温度センサーで既設配管4A,4Bの温度を直接測定してもよい。
【0044】
【発明の効果】
本発明の空気調和機では、制御手段で危険手段を制御することにより、室内機の圧縮機から吐出された冷媒が制限圧力以下に抑えられるが、この点、制限圧力は、安全を確保するものであって、設定手段により、室外機と室内機を接続する接続配管の仕様に適合した値に変更させることができるので、冷媒の変更に伴う既設配管の流用に際し、既設配管の仕様が現場によって異なっていても、各現場での対応(冷房・暖房の最大能力の低下を可能な限り抑えること)が可能である。
【0045】
また、本発明の空気調和機では、接続配管の温度により接続配管の許容圧力が変化することを鑑み、制御手段が、高圧側の接続配管の温度を考慮して制限圧力を補正しており、高圧側の接続配管の温度が低くなれば制限圧力を大きくし、高圧側の接続配管の温度が高くなれば制限圧力を小さくしていく。従って、高圧側の接続配管の温度が低くなれば制限圧力が大きくなるので、接続配管の温度が低いほど、冷房・暖房の最大能力の低下をより一層抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態による空気調和機の概要を示した図である。
【図2】本発明の一実施形態による空気調和機の概要を示した図であって、冷房時において、既設配管の温度を測定する温度センサーの設置可能な範囲を太線で示したものである。
【図3】本発明の一実施形態による空気調和機の概要を示した図であって、暖房時において、既設配管の温度を測定する温度センサーの設置可能な範囲を太線で示したものである。
【図4】本発明の一実施形態による空気調和機の制御基板で実行される制御のフローチャートを示した図である。
【図5】空気調和機の室外機と室内機を接続する接続配管について、材質がO材又はOL材の銅管である場合における、径及び、肉厚、最高使用圧力との関係を示した表である。
【図6】空気調和機の室外機と室内機を接続する接続配管について、材質が1/2H材又はH材の銅管である場合における、径及び、肉厚、最高使用圧力との関係を示した表である。
【図7】空気調和機の室外機と室内機を接続する接続配管について、材質がO材又はOL材の銅管であって径が15.88mmの場合における、温度と最高使用圧力との関係を示したグラフである。
【図8】空気調和機の室外機と室内機を接続する接続配管について、温度と許容引張応力の一般的な関係を示したグラフである。
【図9】本発明の一実施形態による空気調和機において、既設配管の温度を考慮して制限圧力を補正した場合と補正しない場合の、圧力センサーの測定値のトレンドを比較したグラフである。
【図10】本発明の一実施形態による空気調和機において、既設配管の温度を推定するための圧力を測定する圧力センサーの設置範囲を太線で示した図である(冷房時)。
【図11】本発明の一実施形態による空気調和機において、既設配管の温度を推定するための圧力を測定する圧力センサーの設置範囲を太線で示した図である(暖房時)。
【図12】R12又はR22(R407Cを含む)などを使用している空気調和機が既存する場合において、室内機と室外機を接続していた接続配管を流用して、R410Aを使用する空気調和機に交換するときの概念図である。
【符号の説明】
1 空気調和機
2 室外機
3 室内機
4A,4B 既設配管(接続配管)
11 圧縮機
21,22 温度センサー
31 制御基板
32 ディップスイッチ
A1,A2 制限圧力
P 圧力センサ
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、パッケージクラスのヒートポンプ式の空気調和機において、HCFC系冷媒(R12,R22)及びHFC(R407C)を含む冷媒からR410Aの冷媒へ切り替える際に適用する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、ヒートポンプ式の空気調和機においては、オゾン層破壊防止等の観点から、R12,R22(R407Cを含む)などからR410Aに冷媒が切り替えられている。この点、R12又はR22(R407Cを含む)などを使用している空気調和機が既存する場合には、作業性や費用等の観点から、室内機と室外機を接続していた接続配管を流用して、R410Aを使用する空気調和機に交換することが多い。
【0003】
具体的に言えば、図12(a)に示すように、R12又はR22(R407Cを含む)などを使用している空気調和機の室内機102及び室外機101が接続配管(以下、「既設配管」という)103で接続されていた場合、先ず、室内機102及び室外機101を撤去して、図12(b)に示すように、既設配管103だけを残し、その後に、図12(c)に示すように、既設配管103に対して、R410Aを使用する空気調和機の室内機104及び室外機105を接続していた。
【0004】
もっとも、R410Aを使用する空気調和機の設計圧力は、R12又はR22(R407Cを含む)などを使用している空気調和機の設計圧力と比べて高く、例えば、R22を使用している空気調和機の設計圧力に対しては、1.5倍になる。従って、R12又はR22(R407Cを含む)などを使用している空気調和機のために仕様(径、肉厚、材質など)が決定された既設配管103を、R410Aを使用する空気調和機に流用すると、既設配管103を流れる冷媒の圧力が既設配管103の許容圧力を超えてしまう危険があった。
【0005】
そこで、この危険を回避するために、例えば、圧力感知装置により圧縮機の吐出圧力を感知して、設定の圧力になった時点で膨張弁の開放等の圧力制限手段を実行し、圧縮機の吐出圧力を減衰させることが行われてきた(例えば、特許文献1参照)。これによれば、冷房・暖房の最大能力が低下するものの、連続運転することが可能となる。
【0006】
【特許文献1】
特開2000−314563号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、既設配管103の仕様は、現場によって異なることが多いにもかかわらず、圧力制限手段を実行させるための設定の圧力を現場で変更することができなかった。さらに、既設配管103の仕様は多数存在することから、既設配管103の仕様と設定の圧力との組合せによっては、冷房・暖房の最大能力の低下が著しくなるおそれがあった。そのため、冷房・暖房の最大能力の低下を可能な限り抑えるためには、既設配管103の仕様毎に、最適な圧力が設定されたものを、予め用意する必要があった。
【0008】
そこで、本発明は、上述した点を鑑みてなされたものであり、冷媒の変更に伴う既設配管の流用に際し、既設配管の仕様が現場によって異なっていても、各現場での対応(冷房・暖房の最大能力の低下を可能な限り抑えること)が可能な空気調和機を提供することを課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
この課題を解決するために成された請求項1に係る発明は、室外機と、前記室外機と接続配管で接続される室内機と、前記室内機の圧縮機から吐出された冷媒を制限圧力以下に抑える危険回避手段と、前記危険回避手段を制御する制御手段と、を有する空気調和機において、前記接続配管の仕様に適合した値に前記制限圧力を変更させるための設定手段を備えたこと、を特徴としている。
【0010】
すなわち、本発明の空気調和機では、制御手段で危険手段を制御することにより、室内機の圧縮機から吐出された冷媒が制限圧力以下に抑えられるが、この点、制限圧力は、安全を確保するものであって、設定手段により、室外機と室内機を接続する接続配管の仕様に適合した値に変更させることができるので、冷媒の変更に伴う既設配管の流用に際し、既設配管の仕様が現場によって異なっていても、各現場での対応(冷房・暖房の最大能力の低下を可能な限り抑えること)が可能である。
【0011】
また、請求項2に係る発明は、請求項1に記載する空気調和機であって、前記制御手段は、前記接続配管の高圧側の温度を考慮して前記制限圧力を補正すること、を特徴としている。
【0012】
すなわち、本発明の空気調和機では、接続配管の温度により接続配管の許容圧力が変化することを鑑み、制御手段が、接続配管の高圧側の温度を考慮して制限圧力を補正しており、高圧側の接続配管の温度が低くなれば制限圧力を大きくし、高圧側の接続配管の温度が高くなれば制限圧力を小さくしていく。従って、高圧側の接続配管の温度が低くなれば制限圧力が大きくなるので、高圧側の接続配管の温度が低いほど、冷房・暖房の最大能力の低下をより一層抑えることができる。
【0013】
尚、危険回避手段は、室内機の圧縮機から吐出された冷媒を制限圧力以下に抑えるために、圧縮機を停止することもある。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照にして説明する。図1に示すように、本実施の形態の空気調和機1は、室外機2、室内機3、及び、室外機2と室内機3を接続する接続配管4A,4Bなどから構成されている。この点、室外機2及び室内機3は、R410Aを冷媒として使用するものである。一方、接続配管4A,4Bは、R12又はR22(R407Cを含む)などを冷媒として使用していた空気調和機の室外機及び室内機を接続していた既設のものであり、以下、「既設配管」と呼ぶ。
【0015】
また、本実施の形態の空気調和機1は、図1に示すように、コンプレッサ11及び、オイルセパレータ12、四方弁13、室外熱交換器14、過冷却器15、電子膨張弁16、室内熱交換機17、二重管熱交換器18、アキュムレータ19、制御基板31などから構成されている。
【0016】
この点、コンプレッサ11においては、その吐出口がオイルセパレータ12に接続されている。そして、オイルセパレータ12は、フィルタドライヤF3及びキャピラリーC3を介して、コンプレッサ11とアキュムレータ19に接続されている。また、オイルセパレータ12は、バイパス弁20を介して、アキュムレータ19に接続されている。さらに、オイルセパレータ12は、四方弁13の入口ポートに接続されている。
【0017】
また、四方弁13には、第1出口ポート及び、第2出口ポート、第3出口ポートが存在する。そして、第1出口ポートに対しては、ストレーナーS3及び、ボールバルブV2、フレアナットN2を介して、室内熱交換機17が接続されている。第2出口ポートに対しては、二重管熱交換器18を介して、アキュムレータ19が接続されている。第3出口ポートに対しては、室外熱交換器14が接続されている。
【0018】
また、室外熱交換器14と室内熱交換器17は、過冷却器15及び、フィルタドライヤF1、ボールバルブV1、フレアナットN1、ストレーナーS1、電子膨張弁16、ストレーナーS2などを介して、接続されている。さらに、フィルタドライヤF1に対しては、キャピラリーC2及びフィルタドライヤF2が並列的に設けられている。さらに、電子膨張弁16に対しては、キャピラリーC1が並列的に設けられている。
【0019】
尚、コンプレッサ11とオイルセパレータ12の間には温度センサーT1が設けられている。また、室外熱交換器14には温度センサーT2が設けられている。また、室内熱交換器17には温度センサーT3が設けられている。また、二重管熱交換器18とアキュムレータ19の間には温度センサーT4が設けられている。また、アキュムレータ19とコンプレッサ11の間には温度センサーT5が設けられている。
【0020】
さらに、ボールバルブV1,V2の室外機2の側には温度センサー21,22が設けられている。また、オイルセパレータ12と四方弁13の間には、圧力センサーP及び圧力スイッチSWが設けられている。また、コンプレッサ11には破裂板23が設けられるとともに、過冷却器15とフィルタドライヤF1の間には可溶栓24が設けられている。また、制御基板31には、複数のディップスイッチ32が設けられている。
【0021】
そして、本実施の形態の空気調和機1において、冷房運転を行うときは、電子膨張弁16を開け、アキュムレータ19で冷媒液を除いた冷媒ガスに対し、コンプレッサ11で圧縮行程を行い、四方弁13などを介して、室外熱交換器14で凝縮行程を行い、フィルタドライヤF1などを介して、膨張弁16で膨張行程を行い、室内熱交換器17で蒸発行程を行った後、四方弁13などを介して、室内熱交換器17からの冷媒をアキュムレータ19に吸い込ませることより、冷凍サイクルを繰り返している。
【0022】
一方、本実施の形態の空気調和機1において、暖房運転を行うときは、電子膨張弁16を閉じ、アキュムレータ19で冷媒液を除いた冷媒ガスに対し、コンプレッサ11で圧縮行程を行い、四方弁13などを介して、室内熱交換器17で凝縮行程を行った後、キャピラリーC1で膨張行程を行い、フィルタドライヤF2などを介して、室外熱交換器14で蒸発行程を行った後、四方弁13などを介して、室外熱交換器17からの冷媒をアキュムレータ19に吸い込ませていることより、冷凍サイクルを繰り返している。
【0023】
これらの冷凍サイクルは、制御基板31で制御されることになるが、この制御基板31は、コンプレッサ11から吐出された冷媒ガスの圧力を圧力センサーPで測定し、圧力センサーPの測定圧力が制限圧力よりも大きいと判断した場合に、コンプレッサ11の回転数の減少や、電子膨張弁16の開度の増加、室外熱交換器14のファンの回転数や台数の増加、バイパス弁20の開放、運転停止などにより、コンプレッサ11から吐出された冷媒ガスの圧力の上昇を防いでいる。
【0024】
この点、本実施の形態の空気調和機1は、室外機2及び室内機3においてR410Aを冷媒として使用するものであるので、制限圧力としては、基準凝縮温度が65℃であるときの設計圧力である4.2MPaを使用する。しかしながら、上述したように、室外機2及び室内機3を接続する既設配管4A,4Bは、R12又はR22(R407Cを含む)などを冷媒として使用していた空気調和機の室外機及び室内機を接続していたものであることから、制限圧力として4.2MPaを使用すると、既設配管4A,4Bの仕様(径、肉厚、材質など)によっては、既設配管4A,4Bが破損するおそれがある。
【0025】
具体的には、例えば、図5に示すように、既設配管4A,4Bの材質がO材又はOL材の銅管である場合、径が12.7mm以上のものであると、最高使用圧力が4.2MPaより小さいので、制限圧力として4.2MPaを使用すれば、既設配管4A,4Bが破損するおそれがある。尚、図5の最高使用圧力とは、配管の許容圧力をケージ圧に換算したものである。
【0026】
また、図6に示すように、既設配管4A,4Bの材質が1/2H材又はH材の銅管である場合、径が25.4mm以上のものであると、最高使用圧力が4.2MPaより小さいので、制限圧力として4.2MPaを使用すれば、既設配管4A,4Bが破損するおそれがある。尚、図6の最高使用圧力とは、配管の許容圧力をケージ圧に換算したものである。また、図6においては、径が19.05mm以下のものの最高使用圧力は、4.2MPaより大きくなることが明らかであるので、数値を省略している。
【0027】
そこで、本実施の形態の空気調和機1では、制御基板31に設けられた複数のディップスイッチ32により、既設配管4A,4Bの仕様を入力さえすれば、制限圧力を、既設配管4A,4Bの仕様に適合した値に変更できるようにしている(後述する図4参照)。
【0028】
例えば、既設配管4A,4Bの材質がO材又はOL材の銅管であって、径が12.7mmであることを、複数のディップスイッチ32で入力すると、最高使用圧力である3.84MPa(図5参照)から所定値(例えば、機器誤差等を考慮した余裕分である0.05MPa)を引いた値を制限圧力とする。また、既設配管4A,4Bの材質がO材又はOL材の銅管であって、径が15.88mmであることを、複数のディップスイッチ32で入力すると、最高使用圧力である4.11MPa(図5参照)から所定値(例えば、機器誤差等を考慮した余裕分である0.05MPa)を引いた値を制限圧力とする。このようにして、複数のディップスイッチ32で入力された既設配管4A,4Bの仕様に対応する最高使用圧力(図5参照)が4.2MPaより小さい場合には、当該最高使用圧力から所定値(例えば、機器誤差等を考慮した余裕分である0.05MPa)を引いた値を制限圧力とする。尚、最高使用圧力から所定値(例えば、機器誤差等を考慮した余裕分である0.05MPa)を引いた値を制限圧力とするのは、圧力センサーPの測定誤差や圧力損失などを配慮したためである。一方、複数のディップスイッチ32で入力された既設配管4A,4Bの仕様に対応する最高使用圧力が4.2MPa以上である場合(図5では、径が、6.35mm又は9.52mmである場合)には、4.2MPaを制限圧力とする。
【0029】
また、既設配管4A,4Bの材質が1/2H材又はH材の銅管であって、径が25.4mmであることを、複数のディップスイッチ32で入力すると、最高使用圧力である3.97MPa(図6参照)から所定値(例えば、機器誤差等を考慮した余裕分である0.05MPa)を引いた値を制限圧力とする。また、既設配管4A,4Bの材質がO材又はOL材の銅管であって、径が28.58mmであることを、複数のディップスイッチ32で入力すると、最高使用圧力である3.67MPa(図6参照)から所定値(例えば、機器誤差等を考慮した余裕分である0.05MPa)を引いた値を制限圧力とする。このようにして、複数のディップスイッチ32で入力された既設配管4A,4Bの仕様に対応する最高使用圧力(図6参照)が4.2MPaより小さい場合には、当該最高使用圧力から所定値(例えば、機器誤差等を考慮した余裕分である0.05MPa)を引いた値を制限圧力とする。尚、最高使用圧力から所定値(例えば、機器誤差等を考慮した余裕分である0.05MPa)を引いた値を制限圧力とするのは、圧力センサーPの測定誤差や圧力損失などを配慮したためである。一方、複数のディップスイッチ32で入力された既設配管4A,4Bの仕様に対応する最高使用圧力が4.2MPa以上である場合(図6では、径が、6.35mm〜22.22mmである場合)には、4.2MPaを制限圧力とする。
【0030】
但し、既設配管4A,4Bとして使用される銅管などにおいては、図8に示すように、温度が高くなるほど許容引張応力が小さくなるので、図7に示すように、温度が高くなるほど許容圧力が小さくなる。従って、図5及び図6に示した最高使用圧力は、既設配管4A,4Bにおいて想定される冷媒の最高温度(約120℃)を超えた125℃での許容圧力の値から換算している。
【0031】
もっとも、逆の見方をすれば、既設配管4A,4Bとして使用される銅管などにおいては、図8に示すように、温度が低くなるほど許容引張応力が大きくなるので、図7に示すように、温度が低くなるほど許容圧力が大きくなる。そこで、本実施の形態の空気調和機1では、温度センサー21,22で測定した既設配管4A,4Bの温度により、図5及び図6R>6に示した最高使用圧力を補正する。
【0032】
具体的に言えば、例えば、既設配管4A,4Bの材質がO材又はOL材の銅管であって、径が15.88mmであった場合、先ず、複数のディップスイッチ32でその仕様を入力すると、125℃での許容圧力からケージ圧に換算した4.11MPaを最高使用圧力とし(図5,図7参照)、当該最高使用圧力から所定値(例えば、機器誤差等を考慮した余裕分である0.05MPa)を引いた値を制限圧力とする。その後、温度センサー21,22で測定した既設配管4A,4Bの温度が90℃であったときは、90℃での許容圧力である4.2MPa(図7参照)からケージ圧に換算した値を最高使用圧力とし、当該最高使用圧力から所定値(例えば、機器誤差等を考慮した余裕分である0.05MPa)を引いた値を制限圧力とする。
【0033】
これによれば、既設配管4A,4Bの温度が低下すると、図9に示すように、制限圧力をA1からA2に大きくすることができる。従って、負荷が増加して、圧力センサーPの測定値(コンプレッサ11から吐出された冷媒ガスの圧力)が制限圧力A1に等しくなったB点であっても、制限圧力がA1からA2に大きくなった結果、コンプレッサ11による冷媒ガスの圧力の上昇が許され、例えば、図9の一点鎖線に示すような圧力のトレンドを描くことになる。一方、制限圧力がA1で固定されていると、コンプレッサ11から吐出された冷媒ガスの圧力の上昇を防ぐために、コンプレッサ11の回転数の減少や、電子膨張弁16の開度の増加、室外熱交換器14のファンの回転数や台数の増加、バイパス弁20の開放などが行われ、図9のB点以降は、例えば、点線に示すような圧力のトレンドを描くことになる。
【0034】
尚、図5及び図6の表は、制御基板31の記憶領域に記憶される。また、図7のグラフについては、図5及び図6の表に記載された既設配管4A,4Bの仕様の全てについて用意し、制御基板31の記憶領域に記憶される。
【0035】
ここで、本実施の形態の空気調和機1の制御基板31にて行われる制御のフローチャートを図4に示す。先ず、S11において、リモコンなどの指示によりシステムの運転を開始させると、S12において、制限圧力の設定が行われる。具体的には、制御基板31上の複数のディップスイッチ32で入力された既設配管4A,4Bの仕様と図5,図6の表から、既設配管4A,4Bの仕様に対した最高使用圧力を取得し、当該最高使用圧力から所定値(例えば、機器誤差等を考慮した余裕分である0.05MPa)を引いた値を制限圧力とする。次に、S13において、既設配管4A,4Bの温度を温度センサー21,22で測定した後、S14に進んで、制限圧力の補正を行う。具体的には、温度センサー21,22で測定した既設配管4A,4Bの温度での許容圧力からケージ圧に換算した値を最高使用圧力とし、当該最高使用圧力から所定値(例えば、機器誤差等を考慮した余裕分である0.05MPa)を引いた値を制限圧力とする。
【0036】
もっとも、本実施の形態の空気調和機1では、冷房時・暖房時のいずれであっても、既設配管4Aには液状の冷媒が流れ、既設配管4Bにはガス状の冷媒が流れるので、既設配管4A,4Bの径が異なる。さらに、冷房時は、既設配管4Aが高圧で既設配管Bが低圧となり、暖房時には、既設配管4Aが低圧で既設配管Bが高圧となる。そこで、既設配管4A,4Bの両者の仕様を複数のディップスイッチ32で入力しておき、冷房時には、高圧側の既設配管4Aの仕様に基づいて、上述したような制限圧力の設定・補正を行い、暖房時には、高圧側の既設配管4Bの仕様に基づいて、上述したような制限圧力の設定・補正を行う。
【0037】
そして、S15において、コンプレッサ11から吐出された冷媒ガスの圧力を圧力センサーPで測定した後、S16に進んで、制限圧力と圧力センサーPの測定値を比較する。ここで、制限圧力が圧力センサーPの測定値より大きいと判断した場合には(S16:Yes)、S17に進んで、危険回避を行った後に、S13に戻る。ここで、危険回避とは、コンプレッサ11の回転数の減少や、電子膨張弁16の開度の増加、室外熱交換器14のファンの回転数や台数の増加、バイパス弁20の開放、運転停止などを行うことによって、コンプレッサ11から吐出された冷媒ガスの圧力の上昇を防ぐことである。尚、運転停止を行った際には、同時に異常を発報する。一方、制限圧力が圧力センサーPの測定値以下であると判断した場合には(S16:Yes)、何もすることなく、S13に戻る。
【0038】
尚、本実施の形態の空気調和機1においては、コンプレッサー11に破裂板23を設けたり、過冷却器15とフィルタドライヤF1との間に可溶栓24を設けたりすることで、安全を確保している。さらに、オイルセパレータ12と四方弁13の間に設置された圧力スイッチSWが作動すると運転を停止することで、安全を確保している。
【0039】
以上詳細に説明したように、本実施の形態の空気調和機1では、制御基板13で危険回避を行うことにより(S17)、室内機2の圧縮機11から吐出された冷媒が制限圧力以下に抑えられるが(S16:Yes,S17)、この点、制限圧力は、安全を確保するものであって、制御基板31上の複数のディップスイッチ32で既設配管4A,4Bの仕様を入力すると、室外機2と室内機3を接続する既設配管4A,4Bの仕様に適合した値に変更させることができるので(S12)、冷媒の変更に伴う既設配管4A,4Bの流用に際し、既設配管4A,4Bの仕様が現場によって異なっていても、各現場での対応(冷房・暖房の最大能力の低下を可能な限り抑えること)が可能である。
【0040】
また、本実施の形態の空気調和機1では、既設配管4A,4Bの温度により既設配管4A,4Bの許容圧力が変化することを鑑み(図7参照)、制御基板13が、既設配管4A,4Bのうち高圧側の温度を考慮して制限圧力を補正しており(S14)、既設配管4A,4Bのうち高圧側の温度が低くなれば制限圧力を大きくし、既設配管4A,4Bのうち高圧側の温度が高くなれば制限圧力を小さくしていく(図9参照)。従って、既設配管4A,4Bのうち高圧側の温度が低くなれば制限圧力が大きくなるので、既設配管4A,4Bのうち高圧側の温度が低いほど、冷房・暖房の最大能力の低下をより一層抑えることができる。
【0041】
尚、本発明は上記実施の形態に限定されるものでなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
例えば、本実施の形態の空気調和機1では、温度センサー21,22で既設配管4A,4Bの温度を測定していた。これは、既設配管4A,4Bに最も近い場所に温度センサー21,22を設置することにより、温度センサー21,22の測定値を既設配管4A,4Bの温度とするものである。しかしながら、冷媒の状態を考えれば、冷房時には、室外熱交換器14からボールバルブV1までの冷媒配管(図2の太線)に設置された温度センサーの測定値を既設配管4Aの温度としてもかまわない。従って、室外熱交換器14の温度センサーT2で代用することも可能である。また、暖房時には、コンプレッサー11からボールバルブV2までの冷媒配管(図3の太線)に設置された温度センサーの測定値を既設配管4Bの温度としてもかまわない。従って、温度センサーT1で代用することも可能である。
【0042】
また、温度センサーを使用しなくとも、圧力センサーPの測定圧力から冷媒の温度を算出し、既設配管4A,4Bの温度を推定してもよい。尚、この目的のためのみに使われる圧力センサーは、冷房時では、コンプレッサー11からボールバルブV1を介して電子膨張弁16又はキャピラリーC1までの高圧側の冷媒配管(図10の太線)に設置されればよく、暖房時では、コンプレッサー11からボールバルブV2を介して電子膨張弁16又はキャピラリーC1までの高圧側の冷媒配管(図11の太線)に設置されればよい。
【0043】
もっとも、室外機2から温度センサーを延出させ、当該温度センサーで既設配管4A,4Bの温度を直接測定してもよい。
【0044】
【発明の効果】
本発明の空気調和機では、制御手段で危険手段を制御することにより、室内機の圧縮機から吐出された冷媒が制限圧力以下に抑えられるが、この点、制限圧力は、安全を確保するものであって、設定手段により、室外機と室内機を接続する接続配管の仕様に適合した値に変更させることができるので、冷媒の変更に伴う既設配管の流用に際し、既設配管の仕様が現場によって異なっていても、各現場での対応(冷房・暖房の最大能力の低下を可能な限り抑えること)が可能である。
【0045】
また、本発明の空気調和機では、接続配管の温度により接続配管の許容圧力が変化することを鑑み、制御手段が、高圧側の接続配管の温度を考慮して制限圧力を補正しており、高圧側の接続配管の温度が低くなれば制限圧力を大きくし、高圧側の接続配管の温度が高くなれば制限圧力を小さくしていく。従って、高圧側の接続配管の温度が低くなれば制限圧力が大きくなるので、接続配管の温度が低いほど、冷房・暖房の最大能力の低下をより一層抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態による空気調和機の概要を示した図である。
【図2】本発明の一実施形態による空気調和機の概要を示した図であって、冷房時において、既設配管の温度を測定する温度センサーの設置可能な範囲を太線で示したものである。
【図3】本発明の一実施形態による空気調和機の概要を示した図であって、暖房時において、既設配管の温度を測定する温度センサーの設置可能な範囲を太線で示したものである。
【図4】本発明の一実施形態による空気調和機の制御基板で実行される制御のフローチャートを示した図である。
【図5】空気調和機の室外機と室内機を接続する接続配管について、材質がO材又はOL材の銅管である場合における、径及び、肉厚、最高使用圧力との関係を示した表である。
【図6】空気調和機の室外機と室内機を接続する接続配管について、材質が1/2H材又はH材の銅管である場合における、径及び、肉厚、最高使用圧力との関係を示した表である。
【図7】空気調和機の室外機と室内機を接続する接続配管について、材質がO材又はOL材の銅管であって径が15.88mmの場合における、温度と最高使用圧力との関係を示したグラフである。
【図8】空気調和機の室外機と室内機を接続する接続配管について、温度と許容引張応力の一般的な関係を示したグラフである。
【図9】本発明の一実施形態による空気調和機において、既設配管の温度を考慮して制限圧力を補正した場合と補正しない場合の、圧力センサーの測定値のトレンドを比較したグラフである。
【図10】本発明の一実施形態による空気調和機において、既設配管の温度を推定するための圧力を測定する圧力センサーの設置範囲を太線で示した図である(冷房時)。
【図11】本発明の一実施形態による空気調和機において、既設配管の温度を推定するための圧力を測定する圧力センサーの設置範囲を太線で示した図である(暖房時)。
【図12】R12又はR22(R407Cを含む)などを使用している空気調和機が既存する場合において、室内機と室外機を接続していた接続配管を流用して、R410Aを使用する空気調和機に交換するときの概念図である。
【符号の説明】
1 空気調和機
2 室外機
3 室内機
4A,4B 既設配管(接続配管)
11 圧縮機
21,22 温度センサー
31 制御基板
32 ディップスイッチ
A1,A2 制限圧力
P 圧力センサ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
室外機と、前記室外機と接続配管で接続される室内機と、前記室内機の圧縮機から吐出された冷媒を制限圧力以下に抑える危険回避手段と、前記危険回避手段を制御する制御手段と、を有する空気調和機において、
前記接続配管の仕様に適合した値に前記制限圧力を変更させるための設定手段を備えたこと、を特徴とする空気調和機。
【請求項2】
請求項1に記載する空気調和機であって、
前記制御手段は、前記接続配管の高圧側の温度を考慮して前記制限圧力を補正すること、を特徴とする空気調和機。
【請求項1】
室外機と、前記室外機と接続配管で接続される室内機と、前記室内機の圧縮機から吐出された冷媒を制限圧力以下に抑える危険回避手段と、前記危険回避手段を制御する制御手段と、を有する空気調和機において、
前記接続配管の仕様に適合した値に前記制限圧力を変更させるための設定手段を備えたこと、を特徴とする空気調和機。
【請求項2】
請求項1に記載する空気調和機であって、
前記制御手段は、前記接続配管の高圧側の温度を考慮して前記制限圧力を補正すること、を特徴とする空気調和機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2004−251535(P2004−251535A)
【公開日】平成16年9月9日(2004.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−42349(P2003−42349)
【出願日】平成15年2月20日(2003.2.20)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成16年9月9日(2004.9.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成15年2月20日(2003.2.20)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】
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