説明

空気調和機

【課題】 クロスフローファンの外周羽根流入角や翼弦長、およびこれに対向するスタビライザ中心角とを好適な組み合わせにして、送風性能が損なわれることなく騒音の発生を抑制できるようにした空気調和機を提供する。
【解決手段】 スタビライザ1aおよび舌部1bを含むフロントガイダ1とリアガイダ2とからなる送風路3内に、前記スタビライザ1aに対向するクロスフローファン4を設けてなる空気調和機において、前記クロスフローファン4の軸線および前記スタビライザ1aによるギャップの先端部を結ぶ線と、前記クロスフローファンの軸線および前記舌部1bを結ぶ線とによるスタビライザ中心角θが、30度≦θ≦35度の範囲になり、前記クロスフローファン4の外周羽根流入角β1 が、25.3度≦β1 ≦28.7度の範囲になり、前記クロスフローファン4の翼弦長Cが、12mm≦C≦13.2mmの範囲になるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和機に係わり、より詳細には、クロスフローファンの外周羽根流入角および翼弦長と、同クロスフローファンに対向するスタビライザ中心角とを好適な組み合わせにして、送風性能が損なわれることなく騒音の発生を抑制できるようにした構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
空気調和機に用いられる従来のクロスフローファンとして、両側の端版および中間部の支持板により、複数のブレードが保持された羽根車を複数個連結させてなるクロスフローファンにおいて、外周羽根角度(流入角)β0 、内周羽根角度(流出角)β1 、節弦比τとした時に、(β1 /β0 )/τで表される無次元羽根車比Xの値を4.5〜5.0の範囲になるように羽根車の外周羽根角度(流入角)β0 、内周羽根角度(流出角)β1 、節弦比τの組み合わせを決定してなるものが開示されていた(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
しかしながら、上記構成でなるクロスフローファンにおいては、例えば空気調和機に用いられた際、前記クロスフローファンに対向するスタビライザ中心角をどのように設定するかといった考慮がされていないことから、実際に空気調和機に用いられた場合に送風性能が損なわれることがないようにしたり、騒音の発生をより効果的に抑制できるようにするための充分な構成は開示されていなかった。
【0004】
【特許文献1】特開平6−323294号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は上述した課題を解決するためになされたものであって、その目的は、クロスフローファンの外周羽根流入角や翼弦長、およびこれに対向するスタビライザ中心角とを好適な組み合わせにして、送風性能が損なわれることなく騒音の発生を抑制できるようにした空気調和機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した目的を達成するため、本発明は以下に示す特徴を備えている。
スタビライザおよび舌部を含むフロントガイダとリアガイダとからなる送風路内に、前記スタビライザに対向するクロスフローファンを設けてなる空気調和機において、
前記クロスフローファンの軸線および前記スタビライザによるギャップの先端部を結ぶ線と、前記クロスフローファンの軸線および前記舌部を結ぶ線とによるスタビライザ中心角θが、30度≦θ≦35度の範囲になり、前記クロスフローファンの外周羽根流入角β1 が、25.3度≦β1 ≦28.7度の範囲になり、前記クロスフローファンの翼弦長Cが、12mm≦C≦13.2mmの範囲になるように構成してなることを特徴としている。
【0007】
また、前記スタビライザ中心角θ、前記外周羽根流入角β1 または前記翼弦長Cのうち何れか二つの数値を特定する一方、残りの一つの数値を変動可能に設定するように構成してなることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、クロスフローファンの外周羽根流入角や翼弦長、およびこれに対向するスタビライザ中心角の組み合わせが決定されるようにすることによって、空気調和機としての送風性能が損なわれないようになり、且つ騒音の発生をより効果的に抑制できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
次に、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は本発明による空気調和機の説明図で、(A)は縦断面図、(B)は正面図であり、図2は本発明による空気調和機の実施例1を示す要部説明図で、(A)はクロスフローファンの羽根形状を示す断面図、(B)はクロスフローファンと、スタビライザおよび舌部を含むフロントガイダとリアガイダとを示す断面図であり、図3は流量特性を示すグラフで、(A)はクロスフローファンの外周羽根流入角−流量特性のグラフ、(B)はクロスフローファンの翼弦長−流量特性のグラフ、(C)はスタビライザ中心角−流量特性のグラフであり、図4は効率および騒音特性を示すグラフで、(A)は従来のクロスフローファンおよび本発明によるクロスフローファンを用いた場合の流量−効率のグラフ、(B)は騒音特性を示すグラフである。
【0010】
本発明に係る空気調和機は、図に示すように、本体上部に設けられた吸込口aと本体下部に設けられた吹出口bとを結ぶ空気通路に、前記吸込口aから吸い込まれた空気中の塵埃を除去するフィルタcと、塵埃を除去した空気を熱交換する熱交換器fと、スタビライザ1aおよび舌部1bを含むフロントガイダ1とリアガイダ2とにより形成した送風路3内に前記スタビライザ1aに対向して配置されるクロスフローファン4とを設けた構成になっている。
【0011】
前記フィルタcは、近年、同フィルタcに付着した塵埃をダストボックスeを備えた自動清掃装置dによって一定時間毎に自動的に除去することにより、該箇所における通風抵抗が大きくなってしまわないようにして、騒音を発生させることなく効率のよい運転を行えるようにしている。
【0012】
近年、前記自動清掃装置dによって細かい塵埃を容易に除去できるようにするため、同自動清掃装置dが空気抵抗になったり、また、前記フィルタcは従来のフィルタ以上に目が細かく空気抵抗の大きいものが使用されていることから、前記クロスフローファン4は高速回転域で使用することで高風量化を実現せざるを得ず、従来のフィルタを搭載する場合に比べて高騒音化を避けにくいという傾向になっている。
【0013】
そのため、本発明においては、前記クロスフローファン4の外周羽根流入角β1 や翼弦長C、およびこれに対向するスタビライザ中心角θなどを好適なパラメータ値に設定し、または設定して組み合わせることにより、空気調和機として送風性能が損なわれることなく、騒音の発生を抑えることができるように構成している。
【0014】
前記クロスフローファン4は、両側の端板および中間部の支持板により多数のブレードが保持された羽根車を、軸方向に複数個連結させてなる構成になっており、前記羽根車の仕様は、外周羽根流入角β1 、内周羽根流出角β2 、羽根枚数Z、羽根車の外径D、翼弦長Cなどにより決定されるようになっている。
【実施例1】
【0015】
ここで、実施例1として示す図2(A)および図2(B)に基づいて、空気調和機として送風性能が損なわれることなく、騒音の発生を抑えることができるようにするための前記クロスフローファン4の羽根車の仕様について、実験結果から得た好適なパラメータ値について説明すると共に、前記クロスフローファン4の軸線および前記スタビライザ1aによるギャップ5の先端部を結ぶ線と、前記クロスフローファン4の軸線および前記舌部1bを結ぶ線とによる前記スタビライザ中心角θについて、前記羽根車の仕様と同様に実験結果から得た好適なパラメータ値について説明する。
【0016】
なお、前記クロスフローファン4は上述したパラメータ値毎に最適値を有しており、例えば外周羽根流入角β1 :28度、内周羽根流出角β2 :90度、翼弦長C:12.5mm、最大板厚位置(内径側):50%、羽根車の外径D:98mm、羽根枚数Z:35枚としたような場合、図4(A)に示すように、パラメータ値の異なる従来のクロスフローファンに比べて高性能な流量−効率カーブとなる実験結果を得ている。
【0017】
また、実験結果から得られる好適なパラメータ値となる数値範囲は、図4(B)により騒音特性のグラフとして示すように、同一の空気流量における騒音の違いを比較することにより、従来以上の騒音特性と判定できる流量係数φ=0.48を閾値として設定するようにしている。
【0018】
前記羽根車の仕様のうち、例えば前記内周羽根流出角β2 を90度、前記羽根枚数Zを35枚、前記羽根車の外径Dを98mmに夫々設定し、これら以外の仕様として、先ず外周羽根流入角β1 に関する好適な実験結果について、図3(A)に示す「羽根車の外周羽根流入角−流量特性」のグラフに基づいて説明する。
【0019】
前記羽根車の外周羽根流入角β1 は25.3度以上であって、且つ28.7度以下の角度範囲に設定することにより、流量係数φ=0.48の閾値に対し従来以上に良好な騒音特性を実現できる実験値を得ていることから、25.3度≦β1 ≦28.7度の角度範囲が好適なパラメータ値となる。
【0020】
また、前記羽根車の翼弦長Cは、図3(B)に示すように12mm以上であって、且つ13.2mm以下の数値範囲に設定することにより、流量係数φ=0.48の閾値に対し従来以上に良好な騒音特性を実現できる実験値を得ていることから、12mm≦C≦13.2mmの数値範囲が好適なパラメータ値となる。
【0021】
また、前記クロスフローファン4の軸線および前記スタビライザ1aによるギャップ5の先端部を結ぶ線と、前記クロスフローファン4の軸線および前記舌部1bを結ぶ線とによる前記スタビライザ中心角θは、図3(C)に示すように30度以上であって、且つ35度以下の角度範囲に設定することにより、流量係数φ=0.48の閾値に対し従来以上に良好な騒音特性を実現できる実験値を得ていることから、30度≦θ≦35度の角度範囲が好適なパラメータ値となる。
【0022】
これらによって、前記外周羽根流入角β1 が25.3度≦β1 ≦28.7度の範囲に設定され、翼弦長Cが12mm≦C≦13.2mmの範囲に設定されてなる前記クロスフローファン4が、前記スタビライザ中心角θを30度≦θ≦35度の範囲に設定してなる空気調和機に実際に用いられることによって、空気調和機としての送風性能が損なわれないようになり、且つ騒音の発生をより効果的に抑制できるようになる。
【実施例2】
【0023】
そして、上述した前記羽根車の外周羽根流入角β1 、前記羽根車の翼弦長Cおよび前記スタビライザ中心角θなどのパラメータ値は、何れか二つの数値を特定する一方、残りの一つの数値を変動可能に設定するように構成することで、更に好適なパラメータ値の組み合わせを容易に実現できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明による空気調和機の説明図で、(A)は縦断面図であり、(B)は正面図である。
【図2】本発明による空気調和機の実施例1を示す要部説明図で、(A)はクロスフローファンの羽根形状を示す断面図であり、(B)はクロスフローファンと、スタビライザおよび舌部を含むフロントガイダとリアガイダとを示す断面図である。
【図3】流量特性を示すグラフで、(A)はクロスフローファンの外周羽根流入角−流量特性のグラフであり、(B)はクロスフローファンの翼弦長−流量特性のグラフであり、(C)はスタビライザ中心角−流量特性のグラフである。
【図4】効率および騒音特性を示すグラフで、(A)は従来のクロスフローファンおよび本発明によるクロスフローファンを用いた場合の流量−効率のグラフであり、(B)は騒音特性を示すグラフである。
【符号の説明】
【0025】
1 フロントガイダ
1a スタビライザ
1b 舌部
2 リアガイダ
3 送風路
4 クロスフローファン
5 ギャップ
a 吸込口
b 吹出口
c フィルタ
d 自動清掃装置
e ダストボックス
f 熱交換器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スタビライザおよび舌部を含むフロントガイダとリアガイダとからなる送風路内に、前記スタビライザに対向するクロスフローファンを設けてなる空気調和機において、
前記クロスフローファンの軸線および前記スタビライザによるギャップの先端部を結ぶ線と、前記クロスフローファンの軸線および前記舌部を結ぶ線とによるスタビライザ中心角θが、30度≦θ≦35度の範囲になり、前記クロスフローファンの外周羽根流入角β1 が、25.3度≦β1 ≦28.7度の範囲になり、前記クロスフローファンの翼弦長Cが、12mm≦C≦13.2mmの範囲になるように構成してなることを特徴とする空気調和機。
【請求項2】
前記スタビライザ中心角θ、前記外周羽根流入角β1 または前記翼弦長Cのうち何れか二つの数値を特定する一方、残りの一つの数値を変動可能に設定するように構成してなることを特徴とする請求項1に記載の空気調和機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate