説明

空気調和機

【課題】扉を容易に開閉操作することができるとともに、扉のシール機能を十全に確保することができる空気調和機を提供する。
【解決手段】ロック手段は、一方のロック対象部材に固定配置する係合体601と、係合体601に係合するロック位置と係合体から離脱する解除位置とにわたってスライド可能に他方のロック対象部材に設ける可動ロック爪部602と、可動ロック爪部602をスライド可能に保持して他方のロック対象部材に固定配置し、かつ可動ロック爪部602のスライド方向の両側部に当接して可動ロック爪部602に作用する反力を受け止める保持体603からなり、可動ロック爪部602はロック位置において係合体601に係合する辺縁部をなすストッパー部607がスライド方向と平行をなす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は空気調和機に関し、特に扉体のロック構造に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の空気調和機では、ケーシングに空気調和対象系と連通する還気口および給気口を設け、ケーシングの還気口と給気口の間に給気通風路を形成し、給気通風路にフィルター、熱交換器、給気ファン装置等を配置しており、扉には気密性が求められた。
【0003】
このため、例えば特許文献1に記載するものでは、図6に示すように、ケーシング1の開口部に装着する扉2の裏面にスライドバー3を装着し、スライドバー3に係合孔4を形成しており、係合孔4に係合する締め付けフック5をケーシング1の側に設けている。また、扉2にはスライドバー3を覆ってスライドカバー6を設けており、スライドカバー6がスライドバー3を受け止めている。
【0004】
そして、スライドバー3が締め付けフック5に対して相対的に移動するのに伴って締め付けフック5がスライドバー3を扉閉動側へ引き付け、スライドバー3を受け止めるスライドカバー6および扉2を扉閉動側へ案内する。このように、扉2が扉閉動側へ移動することで扉2とケーシング1との間に配置するシール材の面圧を高めて気密性を確保している。
【0005】
また、特許文献2では、扉の左右の垂直辺と上下の水平辺に沿って垂直ロッドと水平ロッドを配置し、垂直ロッドと水平ロッドにフック金具を固着しており、フック金具は、扉閉鎖時にボックス本体に固着されたローラを引寄せて係合するフック部と、扉に固着されたローラを引寄せて係合するフック部を有している。そして、閉鎖時には引き出したハンドルの回転操作によってフック金具を移動させてパッキングを圧縮させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−271142号公報
【特許文献2】特開2000−170457号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の構成においては、スライドバー3が締め付けフック5に対して相対的に移動するのに伴って締め付けフック5がスライドバー3を案内する。
しかしながら、スライドバー3が扉2とともに扉閉動側へ移動してケーシング1に近づくほどにシール材から反力を受ける。このため、締め付けフック5とスライドバー3の間に大きな摩擦力が生じ、扉2が閉まり難くなる。
【0008】
また、スライドバー3の閉動時にスライドバー3とスライドカバー6との摩擦がスライドバー3の移動を阻害する要因となり、扉2が閉まり難くなる。
扉2とケーシング1との間に配置するシール材の面圧は、図7に示すように、扉2とケーシング1との距離によって変化し、扉2とケーシング1との距離は締め付けフック5とスライドバー3との位置関係、つまり係合状態によって変化する。図7(a)に示すように、スライドバー3への締め付けフック5の入り込みが浅いほどに、締め付けフック5の先端とスライドバー3との距離L1が小さくなってシール材の面圧が小さくなり、図7(b)に示すように、スライドバー3への締め付けフック5の入り込みが深いほどに、締め付けフック5の先端とスライドバー3との距離L1が大きくなってシール材の面圧が大きくなる。
【0009】
このため、外部から加わる力によってケーシング1が変形し、ケーシング1に対して扉2が相対的に上方へL2だけ位置ずれすると、ケーシング1に対する扉2の押し付け圧力が変化し、シール材の面圧が変化して気密性が損なわれる。
【0010】
本発明は上記の課題を解決するものであり、扉を容易に開閉操作することができるとともに、扉のシール機能を十全に確保することができる空気調和機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の空気調和機は、ケーシングと、ケーシングに開閉自在に装着する扉と、扉とケーシングとの間を気密にシールするシール材と、シール材を介してロック対象部材である扉とケーシングを圧接させるロック手段を備え、ロック手段は、一方のロック対象部材に固定配置する係合体と、係合体に係合するロック位置と係合体から離脱する解除位置とにわたってスライド可能に他方のロック対象部材に設ける可動ロック爪部と、可動ロック爪部をスライド可能に保持して他方のロック対象部材に固定配置する保持体からなり、可動ロック爪部はロック位置において係合体に係合する辺縁部をなすストッパー部がスライド方向と平行をなし、保持体は可動ロック爪部のスライド方向の両側部に当接して可動ロック爪部に作用する反力を受け止めることを特徴とする。
【0012】
また、係合体は可動ロック爪部に当接して回転する回転体を有することを特徴とする。
また、可動ロック爪部と保持体との間に摩擦軽減手段を介装したことを特徴とする。
また、可動ロック爪部はスライドバーとスライドバーに固定されるロック爪からなり、摩擦軽減手段はスライドバーに設けた係合孔に嵌め込んで装着される樹脂緩衝材からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
以上のように本発明によれば、ロック操作時には、ロック対象部材である扉とケーシングがシール材を介して対向する状態で、可動ロック爪部を解除位置からロック位置へ向けてスライド方向に移動させる。可動ロック爪部の移動に伴って係合体が可動ロック爪部に係合し、可動ロック爪部が保持体を介してロック対象部材の扉をケーシングに引き寄せることで、扉の閉動およびロック操作に伴ってシール材が押圧され、扉のシール機能を十全に確保することができる。
【0014】
ロック位置において可動ロック爪部はストッパー部で係合体に係合し、保持体が可動ロック爪部のスライド方向の両側部に当接して可動ロック爪部に作用する反力を受け止めるので、可動ロック爪部は係合体に当接するストッパー部と保持体に当接するスライド方向の両側部とにおいて3点支持され、安定した姿勢を保持し、係合体に係合する辺縁部をなすストッパー部をスライド方向と平行に維持する。
【0015】
このため、外部から加わる力によってケーシングが変形し、ケーシングに対して扉が位置ずれして、ストッパー部と係合体とが相対的に移動してその当接位置が変化しても、所定長さを有するストッパー部をスライド方向と平行に維持することで、扉とケーシングの相互間の距離が変化しない。
【0016】
よって、ケーシングに対する扉の押し付け圧力およびシール材の面圧も変化することがなく、扉とケーシングの間の気密性が損なわれることがない。
係合体が回転体からなり、可動ロック爪部に当接して回転することで、可動ロック爪部と係合体との摩擦力が低減され、ロック操作および解除操作をスムーズに行なえる。
【0017】
摩擦軽減手段により可動ロック爪部と保持体との間の摩擦を軽減することで、ロック操作および解除操作をスムーズに行なえる。
摩擦軽減手段を可動ロック爪部のスライドバーに設けた係合孔に嵌め込んで装着される樹脂緩衝材とすることで、摩擦軽減手段を容易に装着できるとともに、摩擦軽減手段は保持部材の内方に位置して露出しなくなるので、摩擦軽減手段に手先や服が引っ掛かる虞がなくなり扉を開けての作業時の安全性向上につながる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態におけるロック手段を示す断面図
【図2】同実施の形態におけるロック操作の手順を示す模式図
【図3】本発明の他の実施の形態におけるロック手段を示す断面図
【図4】本発明の実施の形態における扉パネルを示す模式図
【図5】本発明の実施の形態におけるケーシングを示す模式図
【図6】従来のロック手段を示す断面図
【図7】従来のロック操作を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
(全体構造)
図5に示すように、空気調和機のケーシング51は、架台50の上に側壁をなす複数の壁板パネル52を立設し、壁板パネル52の上端に天井部をなす複数の天板パネル53を配置し、ケーシング51の内部に隔壁をなす中仕切パネル54を立設し、各パネルを相互に接合して組み立てた構造をなし、開口部に扉パネル55を配置しており、別途に骨組の構造材を必要としないフレームレス構造である。壁板パネル52、天板パネル53、中仕切パネル54、扉パネル55は基本的に同じ断熱パネルの構造を有している。
(ロック手段)
図4に示すように、扉パネル55は上辺縁部および下辺縁部に設けた支軸551でケーシング51の天板パネル53および架台50に開閉自在に装着しており、ケーシング51に対向する扉パネル55の内側面には、その周縁部の全周にわたって扉パネル55とケーシング51との間を気密にシールするシール材552と、ロック手段600の一部を設けている。
【0020】
ロック手段600は、シール材552を介してロック対象部材である扉パネル55とケーシング1の壁板パネル52、天板パネル53、中仕切パネル54および架台50を圧接させるものである。
【0021】
図1に示すように、ロック手段600は、その基本的な構成において係合体601と可動ロック爪部602と保持体603からなる。ここでは、一方のロック対象部材をなす壁板パネル52あるいは中仕切パネル54にピン状の係合体601を固定配置し、係合体601に遊嵌して円筒状の回転体604を配置しており、回転体604は係合体601の軸心廻りに回動可能である。
【0022】
他方のロック対象部材をなす扉パネル55に可動ロック爪部602および保持体603が配置してある。可動ロック爪部602は係合体601および回転体604に係合するロック位置と係合体601および回転体604から離脱する解除位置とにわたってスライド可能に設けている。可動ロック爪部602はスライドバー605にロック爪606を固定したものであり、ロック爪606はロック位置において係合体601に係合する所定長さの辺縁部をなすストッパー部607がスライド方向と平行をなし、先端に円弧状の導入ガイド部607aを形成している。
【0023】
保持体603は可動ロック爪部602を覆って扉パネル55に固定配置したスライドカバーであり、可動ロック爪部602をスライド可能に保持し、開口部603aにおいてロック爪606の移動を許容しており、かつ可動ロック爪部602のスライド方向の両側部に当接して可動ロック爪部602に作用する反力を受け止めるものである。
【0024】
図3(a)に示すように、長尺なスライドバー605の両端にロック爪606を設ける場合にあっては、スライドバー605の長さに応じて保持体603を長尺に形成してスライドバー605の全長に対応させる。図3(b)に示すように、保持体603は、各々のロック爪606に対応するように短尺に形成することも可能である。図3(c)に示すように、保持体603は複数に分割して配置することも可能であり、ロック爪606の相互間、ロック爪606を隔てたスライドバー605の端部に対応させて保持体603を配置する。
【0025】
図1に示すように、可動ロック爪部602のスライドバー605と保持体603との間には摩擦軽減手段をなす樹脂緩衝材608を介装しており、ここではスライドバー605に設けた係合孔(図示省略)に嵌め込んで樹脂緩衝材608を装着しているが、樹脂緩衝材608は保持体603に設けることも可能である。
【0026】
摩擦軽減手段としてはスライドバー605または保持体603に凸状のエンボス加工を施したものや、樹脂体を接着する方法等でもよい。
また、摩擦軽減手段を介装する際は、ストッパー部607をスライド方向と平行に維持するためにも、摩擦軽減手段はロック爪606の両側部近くに設けることが望ましい。
【0027】
以下、上記した構成における作用を説明する。ロック操作時には、図2(a)に示すように扉パネル55を閉動させ、ロック対象部材である扉パネル55とケーシング51の壁板パネル52、天板パネル53、中仕切パネル54の側端面とがシール材を介して対向する状態に配置し、可動ロック爪部602を係合体601の上方に位置させる。
【0028】
図2(b)に示すように可動ロック爪部602を上方の解除位置から下方のロック位置へ向けてスライド方向に移動させる。可動ロック爪部602の移動に伴って係合体601および回転体604が可動ロック爪部602に係合し、ロック爪606の先端の導入ガイド部607aにより係合体601および回転体604をロック爪606の内側へ導き、可動ロック爪部602が保持体603を介してロック対象部材の扉パネル55をケーシング51に引き寄せる。この際に、可動ロック爪部602に当接する回転体604が回転することで、ロック爪606と係合体601との摩擦力が低減されるので、ロック操作をスムーズに行なえ、解除操作もスムーズに行なえる。また、樹脂緩衝材608により可動ロック爪部602と保持体601との間の摩擦を軽減することでロック操作スムーズに行なえ、解除操作もスムーズに行なえる。
【0029】
この可動ロック爪部602と係合体601との係合により扉パネル55をケーシング51に引き寄せるロック操作に伴ってシール材552が押圧され、扉パネル55のシール機能を十全に確保することができる。
【0030】
図2(c)に示すように、さらに可動ロック爪部602を移動させてロック位置に配置し、可動ロック爪部602をストッパー部607で係合体601に係合させる。この状態で可動ロック爪部602に作用する反力を保持体603によって受け止める。つまり、保持体603が可動ロック爪部602のスライド方向の両側部に当接し、可動ロック爪部602が係合体601の側へ抜け出ることを阻止する。
【0031】
このため、可動ロック爪部602は、係合体601に当接するストッパー部607と、保持体603に当接するスライド方向の両側部とにおいて3点支持されることで、安定した姿勢を保持し、係合体601に係合する辺縁部をなすストッパー部607をスライド方向と平行に維持する。
【0032】
このため、外部から加わる力によってケーシング51が変形し、ケーシング51に対して扉パネル55が位置ずれしてストッパー部607と係合体601とが相対的に移動し、その当接位置が変化しても、例えば図2(b)に示すように、係合体601に対して可動ロック爪部602が上方へ移動して、あるいは図2(d)に示すように、係合体601に対して可動ロック爪部602が下方へ移動しても所定長さの辺縁部をなすストッパー部607をスライド方向と平行に維持することで、扉パネル55とケーシング51の相互間の距離が変化しない。
【0033】
よって、ケーシングに対する扉の押し付け圧力およびシール材の面圧も変化することがなく、扉とケーシングの間の気密性が損なわれることがない。
【符号の説明】
【0034】
50 架台
51 ケーシング
52 壁板パネル
53 天板パネル
54 中仕切パネル
55 扉パネル
551 支軸
552 シール材
600 ロック手段
601 係合体
602 可動ロック爪部
603 保持体
603a 開口部
604 回転体
605 スライドバー
606 ロック爪
607 ストッパー部
607a 導入ガイド部
608 樹脂緩衝材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングと、ケーシングに開閉自在に装着する扉と、扉とケーシングとの間を気密にシールするシール材と、シール材を介してロック対象部材である扉とケーシングを圧接させるロック手段を備え、ロック手段は、一方のロック対象部材に固定配置する係合体と、係合体に係合するロック位置と係合体から離脱する解除位置とにわたってスライド可能に他方のロック対象部材に設ける可動ロック爪部と、可動ロック爪部をスライド可能に保持して他方のロック対象部材に固定配置する保持体からなり、可動ロック爪部はロック位置において係合体に係合する辺縁部をなすストッパー部がスライド方向と平行をなし、保持体は可動ロック爪部のスライド方向の両側部に当接して可動ロック爪部に作用する反力を受け止めることを特徴とする空気調和機。
【請求項2】
係合体は可動ロック爪部に当接して回転する回転体を有することを特徴とする請求項1に記載の空気調和機。
【請求項3】
可動ロック爪部と保持体との間に摩擦軽減手段を介装したことを特徴とする請求項1又は2に記載の空気調和機。
【請求項4】
可動ロック爪部はスライドバーとスライドバーに固定されるロック爪からなり、摩擦軽減手段はスライドバーに設けた係合孔に嵌め込んで装着される樹脂緩衝材からなることを特徴とする請求項3に記載の空気調和機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−181034(P2010−181034A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−22076(P2009−22076)
【出願日】平成21年2月3日(2009.2.3)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【出願人】(000104836)クボタ空調株式会社 (31)
【Fターム(参考)】