説明

空気調和装置の室外機

【課題】水と空気とが供給されることによって前記水を噴霧する噴霧ノズルを備えた室外機であって消費電力をより抑えることができる空気調和装置の室外機を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明は、空気調和装置1の室外機10であって、熱交換器12と、水と所定の圧力の空気とが供給されることにより前記水を噴霧して熱交換器12を冷却する噴霧ノズル22と、熱交換器12から供給された冷媒を膨張させて排出する膨張機30と、空気を昇圧させて噴霧ノズル22に供給する空気昇圧装置50と、を備え、膨張機30は、前記冷媒の膨張によって回転動力を発生させ、空気昇圧装置50は、膨張機30が発生させた回転動力を用いて前記空気の昇圧を行うことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷媒が循環して蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行う空気調和装置の室外機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱交換器に水を噴霧することにより冷却効率を向上させた、空気調和装置の室外機として、特許文献1に記載のものが知られている。
【0003】
具体的に、室外機は、図8に示されるように、熱交換器102と、水と所定の圧力の空気とが供給されることにより前記水を噴霧する噴霧ノズル104と、前記水を噴霧させるための所定の圧力の空気を噴霧ノズル104に供給する図略の噴霧用コンプレッサーと、を備える。この室外機100では、噴霧ノズル104が噴霧する水の蒸発潜熱を利用して熱交換器102を冷却することにより、熱交換器102における冷媒の冷却効率を向上させ、これにより、冷凍サイクルを行うために消費される電力削減を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3707737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、室外機100においては、上記のように噴霧される水の蒸発潜熱を利用して熱交換器102での冷媒の冷却効率を向上させることによって、冷凍サイクルを行うための消費電力は抑えられている。
【0006】
しかし、この室外機10では、噴霧ノズル104に所定の圧力の空気を供給するために空気昇圧装置を駆動させなければならず、冷凍サイクルを行うために消費される電力以外に前記空気昇圧装置を駆動させるための電力が必要であったため、運転条件によって室外機10全体での消費電力の削減効果が十分に得られない場合があった。
【0007】
そこで、水と空気とが供給されることによって前記水を噴霧する噴霧ノズルを備えた室外機であって消費電力をより抑えることができる空気調和装置の室外機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、上記課題を解消すべく、本発明は、空気調和装置(1)の室外機(10)であって、熱交換器(12)と、水と所定の圧力の空気とが供給されることにより前記水を噴霧して前記熱交換器(12)を冷却する噴霧ノズル(22)と、前記熱交換器(12)から供給された冷媒を膨張させて排出する膨張機(30)と、空気を昇圧させて前記噴霧ノズル(22)に供給する空気昇圧装置(50、50A)と、を備える。そして、前記膨張機(300)は、前記冷媒の膨張によって回転動力を発生させ、前記空気昇圧装置(50)は、前記膨張機(30)が発生させた回転動力を用いて前記空気の昇圧を行う。
【0009】
かかる構成によれば、冷凍サイクルにおいて冷媒を膨張させる膨張機(30)が発生させた回転動力を利用して空気昇圧装置(50)によって空気を昇圧させることにより、空気昇圧装置(50)において、噴霧ノズル(22)に所定の圧力の空気を供給する際の室外機(10)外からの供給電力の消費を無くす若しくは抑制することができる。これにより、噴霧した水の蒸発潜熱を利用して熱交換器(12)における冷媒の高い冷却効率を維持しつつ室外機(10)の消費電力を抑制することができる。
【0010】
本発明に係る空気調和装置(1)の室外機(10)においては、前記膨張機(30)は、前記冷媒の膨張によって回転する回転駆動軸(34)を有し、前記空気昇圧装置(50)は、前記回転駆動軸(34)によって伝達される回転動力を用いて前記空気の昇圧を行ってもよい。
【0011】
かかる構成によれば、回転駆動軸(34)によって膨張機(30)から空気昇圧装置(50)まで直接回転動力が伝達されるため、膨張機(30)が生成した回転動力によって発電しこの電力を用いて空気を圧縮する場合に比べ、膨張機(30)から空気昇圧装置(50)への回転動力を効率よく伝達することができる。
【0012】
また、前記空気昇圧装置(50A)は、前記膨張機(30)が発生させた回転動力によって発電する発電部(52)と、前記発電部(52)によって生成された電力を用いて前記空気の昇圧を行う昇圧機構部(54)と、を有してもよい。
【0013】
かかる構成によれば、発電部(52)と昇圧機構部(54)とが電線等によって通電可能に接続されていれば互いに離間した状態で配置することが可能となり、室外機(10)における空気昇圧装置(50A)の配置の自由度が向上する。
【0014】
前記室外機10は、内部に所定の容積の収容空間(s)を有し、且つ、前記空気昇圧装置(50)から排出された空気を前記収容空間(s)内に収容すると共にこの収容した空気を前記噴霧ノズル(22)に向けて排出する容器(60)を備えることが好ましい。
【0015】
かかる構成によれば、空気昇圧装置(50)から排出される空気が一旦容器(60)内に収容された後、噴霧ノズル(22)に供給されることにより、噴霧ノズル(22)に供給される空気の圧力脈動を抑制することができる。また、容器(60)は、所定の容積の収容空間(s)内に収容された空気を噴霧ノズル(22)に向けて排出するため、空気昇圧装置(50)から昇圧された空気が直接噴霧ノズル(22)に供給される場合に比べ、空気の圧力低下が生じ難い。
【0016】
この場合、室外機10が前記容器(60)から前記噴霧ノズル(22)に供給される空気の流路を開閉可能な弁(62)を備えることにより、噴霧ノズル(22)への空気の供給と停止との切り換えが容易になる。
【発明の効果】
【0017】
以上より、本発明によれば、水と空気とが供給されることによって前記水を噴霧する噴霧ノズルを備えた室外機であって消費電力をより抑えることができる空気調和装置の室外機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施形態に係る空気調和装置の概略構成図である。
【図2】前記空気調和装置の室外機の概略構成図である。
【図3】前記室外機の斜視図である。
【図4】前記室外機における膨張機を説明するための図である。
【図5】前記膨張機の断面であって、大径偏心部の回転中心軸に対して垂直な断面をシャフト部の回転角度45°毎に示した図である。
【図6】前記室外機の噴霧装置における噴霧ノズルの拡大断面図である。
【図7】他実施形態に係る空気昇圧装置を説明するための図である。
【図8】熱交換器に水を噴霧する方式の従来の室外機を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
【0020】
本実施形態に係る室外機は、例えば、図1に示される空気調和装置1に用いられる。この空気調和装置1は、室外機10と、室内機2と、これらを接続する冷媒配管3,3とを備える。
【0021】
室外機10は、図2及び図3にも示されるように、熱交換器12と、吸込み空気用ファン13と、四方切換弁14、15と、膨張機30と、圧縮機16と、温度センサ(吸込み空気温度検出部)18と、噴霧装置20と、室外機制御部40と、を備える。尚、図2では、説明の便宜のため、噴霧装置20の一部が省略されている。また、図2では、説明の便宜のため、膨張機30や空気昇圧装置50、バッファータンク60等が室外機10のケーシング11の外側に記載されているが、実際には、図1に示すように、いずれもケーシング11内に配置されている。また、図3では、説明の便宜のため、噴霧装置20の噴霧ノズル22に接続される水用流路部240等が省略されている。
【0022】
熱交換器12は、内部を冷媒が流れる伝熱管(図示省略)と、前記伝熱管が貫通する多数のプレートフィン(図示省略)と、を備える。この熱交換器12では、伝熱管の管壁とプレートフィンとを介して伝熱管内を流れる冷媒とプレートフィン同士の間を流れる外気(空気)との間で熱交換が行われる。本実施形態の熱交換器12は、例えば、クロスフィンコイル式の熱交換器であるが、これに限定されない。
【0023】
この熱交換器12は、ケーシング11の底板11aから上方に向かって立設され、例えば、ケーシング11を構成する側面板11b及び背面板11cに沿うように平面視においてL字状、U字状、又はコ字状に配置される。尚、ケーシング11の側面板11b及び背面板11cにおける熱交換器12と対向する領域には、外気がケーシング11内部に流入できるように開口(図示省略)がそれぞれ設けられている。
【0024】
吸込み空気用ファン13は、熱交換器12に外気(吸込み空気)を導くものであり、羽根車13aと、この羽根車13aを回転させるモータ(図示省略)とを備える。本実施形態の吸込み空気用ファン13は、ケーシング11の天板11dに配置される。この吸込み空気用ファン13は、側面板11b及び背面板11cの熱交換器12と対向する領域に設けられた前記開口からケーシング11内に外気を引き込み、この引き込んだ外気を天板11d側から外部に排出する(図2の矢印参照)。尚、天板11dにおける吸込み空気用ファン13(羽根車13a)が配置された位置には、ケーシング11の内部と外部とを連通する開口(図示省略)が設けられている。
【0025】
四方切換弁14、15は、空気調和装置1において冷房運転(図1の状態)と暖房運転とが切り換えられて室外機10と室内機2と間で循環する冷媒の循環方向が反対になっても、当該四方切換弁14、15をそれぞれ切り換えることによって膨張機30と圧縮機16とに供給される冷媒の流れ方向を一方向に保つ。
【0026】
膨張機30は、供給された冷媒を膨張させることによって当該冷媒の圧力を低下させ、圧力低下後の冷媒を排出する。即ち、膨張機30は、空気調和装置の冷房運転時において、室外機10の熱交換器(凝縮器)12から供給された高圧の冷媒を膨張させて低圧にし、室内機2の熱交換器(蒸発器)に向けて排出する。また、この膨張機30は、冷媒の膨張によって回転動力を発生させる。
【0027】
本実施形態の膨張機30は、回転駆動軸34を有し、前記冷媒の膨張によって回転駆動軸34を回転させることにより前記回転動力を発生させる。尚、膨張機30は、回転駆動軸34を一方向に回転させる。
【0028】
膨張機30は、いわゆる揺動ピストン型の膨張機構であって、図4(A)及び図4(B)に示されるように、膨張機本体32と、回転駆動軸34と、を備える。
【0029】
膨張機本体32は、シリンダ300と、ピストン310と、シリンダ300内に冷媒を流入させる流入ポート320と、シリンダ300内の冷媒を外部に吐出する吐出ポート322と、を備える。
【0030】
シリンダ300は、短筒状のシリンダ本体302と、シリンダ本体302の軸方向における一方の端部開口(図4(B)における左端の開口)を閉塞するフロントヘッド304と、他方の端部開口(図4(B)における右端の開口)を閉塞するリアヘッド307と、を有する。
【0031】
ピストン310は、ピストン本体312とブレード315とを有し、シリンダ300内に配置される。このピストン310とシリンダ300とによって膨張室36を形成する。このピストン310がシリンダ300内においてシリンダ本体302の内周面303に沿って揺動することにより、回転駆動軸34が回転するので回転動力が生成される。
【0032】
ピストン本体312は、円環形状を有する。ピストン本体312の中心部の開口には、回転駆動軸34の大径偏心部350が嵌め込まれる。
【0033】
ブレード315は、ピストン本体312から径方向に突出した板状の部位である。シリンダ300の内周面とピストン本体312の外周面313とに囲まれた膨張室36は、このブレード315によって高圧側(吸入/膨張側)と低圧側(排出側)とに仕切られる。
【0034】
回転駆動軸34は、シャフト部340と、大径偏心部350と、を有する。
【0035】
シャフト部340は、膨張機本体32から空気昇圧装置50に向かう方向に延び、一方の端部がフロントヘッド304を貫通するように配置される。このシャフト部340は、ピストン310の揺動によって生成された回転動力を外部(空気昇圧装置50)に伝達する。
【0036】
大径偏心部350は、シャフト部340の直径よりも大径の円板形状を有し、シャフト部340の軸心から所定量だけ偏心した状態でシャフト部340の一方の端部に設けられている。この大径偏心部350は、ピストン本体312の内径と略一致する外径を有する。そして、大径偏心部350の外周面351は、ピストン本体312の内周面314と周方向においてほぼ全面に亘って摺動可能に接する。これにより、大径偏心部350は、ピストン本体312がシリンダ本体302の内周面303に沿って揺動することにより、シャフト部340の軸心を回転中心にして回転する。このように大径偏心部350が回転することによって、シャフト部340がその軸心を回転中心にして回転する。
【0037】
以上のように構成される膨張機30では、図5及び以下のようにして冷媒を膨張させて排出すると共に前記冷媒の圧力を利用して回転動力を発生させる。尚、図5は、大径偏心部350の回転中心軸に対して垂直な膨張機30の断面をシャフト部340の回転角度45°毎に示したものである。
【0038】
膨張室36に高圧冷媒が導入されることにより、シャフト部340が図5において反時計方向に回転する。
【0039】
シャフト部340の回転角度が45°の時点では、流入ポート320と膨張室36とが連通し、流入ポート320から膨張室36に高圧冷媒が流入する。このように、膨張室36(高圧側)への高圧冷媒の導入は、シャフト部340の回転角度が0°から45°に至るまでの間に開始される。
【0040】
膨張室36が流入ポート320と連通して膨張室36の高圧側に高圧冷媒が流入すると、膨張室36の高圧側と低圧側との圧力差によって、ピストン310がシリンダ300の内周面に沿って揺動する(図5の0°〜360°を順に参照)。この揺動によって膨張室36の高圧側の容積が増大するのに伴い、当該高圧側に流入した冷媒の容積が増大する(即ち、膨張する)。これにより、シャフト部340が回転する(即ち、回転動力が発生する)。
【0041】
一方、膨張室36の低圧側では、膨張後の低圧冷媒が吐出ポート322を通じて膨張室(低圧側)36から排出される。
【0042】
シャフト部340の回転角度が315°から360°に至るまでの間において、ピストン310におけるシリンダ300との接触部分が吐出ポート322を通過すると、膨張室36が吐出ポート322と連通し、これにより、膨張して低圧となった冷媒が吐出ポート322から排出される。
【0043】
以上の工程が繰り返されることによって、膨張機30が冷媒を膨張させて排出すると共に前記冷媒の圧力を利用して回転動力を発生させる。
【0044】
圧縮機16は、当該圧縮機16の駆動によって室外機10と室内機2との間において冷媒を循環させる。
【0045】
温度センサ18は、室外機制御部40に接続され、ケーシング11内に吸気される吸込み空気の温度を測定し、測定結果に応じた空気温度信号を出力する。
【0046】
噴霧装置20は、空気調和装置1の冷房運転時において水を噴霧することにより、熱交換器12に向かう外気(吸込み空気)を冷却する。この吸込み空気の流れは、上記の吸込み空気用ファン13の駆動によって形成される。このように、噴霧装置20は、水を霧状に噴霧し、その蒸発潜熱を利用して熱交換器12を補助的(間接的)に冷却することによって、熱交換器12における冷媒の冷却効率の向上を図る(即ち、空気調和装置1の冷房能力の向上を図る)。
【0047】
具体的に、噴霧装置20は、複数の噴霧ノズル22と、水供給機構24と、エア供給機構26と、を備える。本実施形態の室外機10では、各噴霧ノズル22に対して水供給機構24と、エア供給機構26とがそれぞれ接続されている。図2においては、一つの噴霧ノズル22と、この噴霧ノズル22に接続された水供給機構24及びエア供給機構26とを示しており、他の噴霧ノズル22及びこれに接続される水供給機構24及びエア供給機構26の図示を省略している。これら他の噴霧ノズル22と、これに接続される水供給機構24及びエア供給機構26との構成は、図2に示されるものと同様であるため説明を省略する。尚、噴霧ノズル22の配置される数は、複数に限定されず、1つでもよい。
【0048】
各噴霧ノズル22は、熱交換器12を冷却するための水を噴霧するノズルであり、ケーシング11に設けられた誘導板110によって支持される。尚、図2における誘導板110は、噴霧装置20の説明の便宜のために模式的に記載されているため、ケーシング11に対する寸法の比率が実際のものと異なっている。
【0049】
誘導板110は、ケーシング11の側面板11b及び背面板11cの外面側において、前記開口が設けられた領域(熱交換器12と対向する領域)を囲うように設けられる(図3参照)。この誘導板110は、噴霧ノズル22から噴霧された水(液滴)が熱交換器12以外に散逸するのを防いで前記水を噴霧された吸込み空気が熱交換器12に到達するように空気の流れを誘導するためのものである。この誘導板110における、側面板11b及び背面板11cとは反対側の端部には、誘導板110に囲まれた領域を覆うように金網111が配置されている。そして、誘導板110の対向する部位間に架橋された固定部材(本実施形態では、水平方向に架橋された部材)112に各噴霧ノズル22が固定されている。
【0050】
複数の噴霧ノズル22は、噴霧装置20による冷却効果が熱交換器12のほぼ全体に及ぼされるように、互いに間隔をあけて配置される。
【0051】
噴霧ノズル22は、図6にも示されるように、胴部220と、この胴部220の先端(水の流れ方向における下流側)に設けられるオリフィス部221と、を有する。また、胴部220は、水供給機構24から供給された水に気体(本実施形態では空気)を供給し、この水の中に多数の気泡を形成する気泡形成部220Bと、多数の気泡を含んだ状態の水をオリフィス部221まで案内する案内部220Aと、を有する。このように構成されることによって、気泡形成部220Bにおいて水の中に多数の気泡が形成され、この状態の水が案内部220Aによってオリフィス部221まで案内されることにより多数の気泡と水とが十分に混ざり、これら各気泡がオリフィス部221から外部に噴出されるときの圧力差によってそれぞれはじけ、噴霧ノズル22(オリフィス部221)から噴出される水が微細な霧状となる。即ち、当該噴霧ノズル22によれば、水中に多数の気泡を形成してこの気泡を圧力差によってはじけさせて水を霧状にすることにより、従来のいわゆる2流体ノズルのように高圧の空気の流れによるせん断力を利用して水を霧状にする場合に比べ、使用空気量を少なくすることができると共に液滴の大きさも小さくすることができる。
【0052】
胴部220は、水供給機構24から供給される水をオリフィス部221まで案内すると共に、エア供給機構26から供給される空気によって水の中に多数の気泡を形成する。この胴部220は、水案内配管222と、空気案内配管224と、を有する。
【0053】
水案内配管222は、水供給機構24から供給された水をオリフィス部221まで案内する水流路を形成する管である。この水案内配管222は、所定の内径を有する管であり、その基端(水の流れ方向における上流端)222bが後述の水用流路部240の下流端に接続されると共にその先端(水の流れ方向における下流端)222aがオリフィス部221に接続される。水案内配管222は、先端部に設けられた混和領域222Aと、その上流側に設けられた気泡形成領域222Bとを有する。
【0054】
気泡形成領域222Bは、エア供給機構26から供給された空気を水案内配管222内を流れる水の中に導入(供給)して多数の気泡を水中に形成する領域である。この気泡形成領域222Bの管壁には、水案内配管222の内側と外側とを連通する複数の孔223が形成され、この孔223を通じて水案内配管222内を流れる水の中に空気が供給される。
【0055】
混和領域222Aは、多数の気泡が内部に形成された状態の水を所定の距離流すことにより、水の中に形成された多数の気泡を水と十分に混ぜあわせるための領域である。即ち、気泡形成領域222Bでは、管壁に形成された孔223を通じて水の中に空気が供給されるために管壁近傍に気泡が形成され易いが、この状態の水が混和領域222Aにおいて所定の距離流れることによって気泡と水とが十分に混ざる。これにより、オリフィス部221から噴出される霧状の水(液滴)の大きさのむらを抑えることができる。この混和領域222Aは、気泡を含む水を流したときに、気泡と水とが十分に混ざる長さ(水案内配管222の軸方向の長さ)寸法に設定されている。
【0056】
空気案内配管224は、水案内配管222の外側に配置される管である。具体的に、空気案内配管224は、水案内配管222の外径よりも大きな内径を有し、水案内配管222の軸と当該空気案内配管224の軸とが一致するように配置される。この空気案内配管224は、水案内配管222よりも軸方向の長さ寸法が小さい。空気案内配管224の先端224aは、水案内配管222の先端222a同様にオリフィス部221(オリフィス部221の裏面221b)に接続され、水案内配管222の基端222bは、空気案内配管224の基端224bから軸方向に突出している。空気案内配管224の基端部224bでは、その内周面と水案内配管222の外周面との間が閉塞部材225によって塞がれている。
【0057】
胴部220において、閉塞部材225、水案内配管222の外周面、空気案内配管224の内周面、及びオリフィス部221によって囲まれた空間が、エア供給機構26から供給された空気を水案内配管222の気泡形成領域222Bに設けられた孔223まで案内する空気流路となる。
【0058】
また、空気案内配管224には、エア供給機構26(詳しくはエア用流路部260)が接続される接続部226が設けられ、この接続部226に接続されたエア供給機構26から供給された空気が当該接続部226を介して空気流路に導入される。
【0059】
以上のように構成される本実施形態の胴部220では、軸方向において、混和領域222Aに対応する部位が案内部220Aであり、気泡形成領域222Bに対応する部位が気泡形成部220Bである。
【0060】
オリフィス部221は、胴部220によって案内された気泡を含む水を外部(噴霧ノズル22の外部)に噴出させる。本実施形態のオリフィス部221は、胴部220の軸方向と直交する方向に拡がる円板形状を有する。このオリフィス部221は、水案内配管222と空気案内配管224との先端222a、224aに接続されている。オリフィス部221は、軸方向に水流路と噴霧ノズル22の外部とを連通する噴霧孔229を有する。この噴霧孔229は、オリフィス部221の裏面221bから先端面(水の流れ方向の下流側の面)221aに向かって径が漸減するテーパ面229Aと、テーパ面229Aの先端から延びる円筒面229Bと、によって規定される。
【0061】
尚、噴霧ノズル22は、以上の構成に限定されず、水と空気とが供給されることにより前記水を噴霧可能なノズルであればよい。例えば、噴霧ノズルは、水と高圧の空気とが供給され、前記空気の流れによる剪断力を利用して水を噴霧する所謂2流体ノズルであってもよい。
【0062】
図1及び図2に戻り、水供給機構24は、例えば水道やタンク等の水供給源(図示省略)から噴霧ノズル22まで水を案内する流路を形成する水用流路部240と、流路内を流れる水を噴霧ノズル22に向けて加圧する水用ポンプ242と、を有する。尚、水供給源から噴霧装置20に十分な圧力で水が供給される場合には、水供給機構24においてポンプ242が省略されてもよい。
【0063】
エア供給機構26は、外気(空気)を吸気すると共に噴霧ノズル22に向けて送り出す空気昇圧装置50と、バッファータンク(容器)60と、外気を空気昇圧装置50まで案内する第1流路部260と、空気昇圧装置50が排出する空気をバッファータンク60まで案内する第2流路部262と、バッファータンク60が排出する空気を噴霧ノズル22(詳しくは、胴部220の接続部226)まで案内する第3流路部264と、第3流路部264において空気の流れ方向における中間位置に取り付けられる電磁弁(弁)62と、を有する。
【0064】
空気昇圧装置50は、膨張機30が発生させた回転動力を用いて空気の昇圧を行う。具体的に、空気昇圧装置50は、膨張機30から回転駆動軸34によって伝達される回転動力を用いて、空気(外気)を吸気し、この吸気した空気を所定の圧力まで昇圧させて排出する。本実施形態の空気昇圧装置50では、複数の歯車等が組み合わされ、これら複数の歯車によって回転駆動軸34によって伝達された回転駆動力が増幅されている。
【0065】
バッファータンク60は、噴霧ノズル22に供給される空気の圧力を安定させる。具体的に、バッファータンク60は、内部に所定の容積の収容空間sを有し、空気昇圧装置50から排出される空気を一旦収容空間sに収容した後、噴霧ノズル22に向けて排出する。このように空気昇圧装置50からの空気が一旦バッファータンク60内に蓄えられた(収容された)後、排出されることにより、排出される空気において圧力脈動が抑えられる。また、バッファータンク60は、空気昇圧装置50から噴霧ノズル22に供給される空気の流路の途中(中間位置)に当該タンク60が設けられることによってその内部(所定の容積の収容空間s内)に十分な量の空気が収容され、これにより、水を噴霧する際に十分な圧力及び流量の空気を噴霧ノズル22に確実に供給することができる。尚、バッファータンク60には、収容空間s内の圧力(空気圧)を測定する圧力計等が設けられ、この圧力計等による測定結果は、室外機制御部40に出力される。
【0066】
電磁弁62は、第3流路部264内を流れる空気の流量を調整する。この電磁弁62は、室外機制御部40に接続され、この室外機制御部40からの指示信号に従ってその開度を調整する。尚、電磁弁は、流量調整弁に限定されず、例えば、弁の開度を調整できず、流路の開閉のみを行う開閉弁であってもよい。
【0067】
このように構成される空気昇圧装置50及バッファータンク60では、以下のようにして空気を昇圧している。
【0068】
空気調和装置1の冷房運転が開始されると、室外機10と室内機2との間を冷媒が循環し、膨張機30が回転動力を生成し始める。膨張機30の回転駆動軸34を通じて空気昇圧装置50に回転動力が伝達されると、この回転動力を用いて空気昇圧装置50が空気(外気)を吸引してこれを昇圧させる。所定の圧力まで昇圧された空気は、空気昇圧装置50からバッファータンク60に供給される。このとき、室外機制御部40が電磁弁62を閉じることにより、バッファータンク60内に空気昇圧装置50からの空気が蓄えられる(収容される)。室外機制御部40は、バッファータンク60の収容空間s内に空気が十分収容された(即ち、バッファータンク60内が所定の圧力になった)のを前記圧力計等によって検知すると、電磁弁62を開いてバッファータンク60から噴霧ノズル22に空気の供給を開始する。これと同時に、室外機制御部40は、水用ポンプ242を駆動して、噴霧ノズル22に水を供給する。これにより、水と、この水を噴霧するのに十分な圧力及び流量の空気と、が噴霧ノズル22に供給され、熱交換器12に向けて水が噴霧される。このようにして、室外機10では、膨張機30において冷媒の膨張を利用して回転動力を発生させ、この回転動力を用いて空気昇圧装置50が空気を所定の圧力まで昇圧して噴霧ノズル22に供給する。即ち、当該室外機10では、噴霧ノズル22から水を噴霧させるために必要な所定の圧力の空気を電力を使用することなく噴霧ノズル22に供給することが可能である。
【0069】
室外機制御部40は、上記のような水用ポンプ242の駆動制御の他に、室外機10の各構成要素の制御も行う。例えば、空気調和装置1の運転時に、室外機制御部40は、圧縮機16を駆動させる制御を行うと共に、吸込み空気用ファン13を駆動する制御を行う。これにより、空気調和装置1において、室外機10と室内機2との間を冷媒が循環すると共に、外気がケーシング11内に引き込まれて熱交換器12が冷却される。
【0070】
以上の空気調和装置1の室外機10によれば、冷凍サイクルにおいて冷媒を膨張させる膨張機30が発生させた回転動力を利用して空気昇圧装置50が用いて空気を昇圧させることにより、空気昇圧装置50において、噴霧ノズル22に所定の圧力の空気を供給する際の外部からの供給電力の消費を無くすことができる。これにより、噴霧した水の蒸発潜熱を利用して熱交換器12における冷媒の高い冷却効率を維持しつつ室外機10の消費電力を抑制することができる。
【0071】
また、上記実施形態の室外機10では、空気昇圧装置50から排出される空気が一旦バッファータンク60内に収容された後、噴霧ノズル22に供給されるため、噴霧ノズル22に供給される空気の圧力脈動が抑制される。また、バッファータンク60は、所定の容積の収容空間s内に収容された空気を噴霧ノズル22に向けて排出するため、空気昇圧装置50から昇圧された空気が直接噴霧ノズル22に供給される場合に比べ、空気の圧力低下が生じ難い。
【0072】
また、本実施形態の室外機10では、バッファータンク60から噴霧ノズル22に供給される空気の流路(第3流路部264)を開閉可能な電磁弁62が設けられているため、噴霧ノズル22への空気の供給と停止との切り換えを容易に行うことができる。しかも、電磁弁62は、その開度を調整することができるため、噴霧ノズル22への空気の供給流量を容易に調整することができる。
【0073】
尚、本発明の空気調和装置の室外機は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0074】
上記実施形態の空気昇圧装置50では、膨張機30から回転駆動軸34によって直接伝達された回転動力を用いて空気を昇圧させているが、この構成に限定されない。例えば、 図7に示されるように、空気昇圧装置50Aは、膨張機30が発生させた回転動力によって発電する発電部52と、発電部52によって生成された電力を用いて空気の昇圧を行う昇圧機構部54と、を有してもよい。この場合、発電部52によって生成された電力は、電線56等によって昇圧機構部54に送電される。この構成によれば、発電部52と昇圧機構部54とが電線56等によって通電可能に接続されていれば互いに離間した状態で配置することが可能となり、室外機10における空気昇圧装置50Aの配置の自由度が向上する。但し、上記実施形態の空気昇圧装置50のように、回転駆動軸34によって膨張機30から直接回転動力が伝達される構成の方が、前記膨張機30が生成した回転動力によって発電しこの電力を用いて空気を圧縮する場合に比べ、膨張機30から空気昇圧装置50への回転動力伝達が効率よく行われる。
【0075】
上記実施形態の膨張機30は、いわゆる揺動ピストン型の膨張機構であるが、この構成に限定されない。例えば、膨張機は、シリンダ内部における冷媒の膨張によってピストンが回転し、これにより、回転動力を生成する膨張機構であってもよい。即ち、膨張機は、冷凍サイクルにおいて冷媒圧力を下げて蒸発器に供給するために冷媒を膨張させたときに、この冷媒の膨張に伴って回転動力を発生させることができる構成であればよい。
【0076】
上記実施形態の空気昇圧装置50は、外部から電力を供給することなく所定の圧力まで昇圧された空気が噴霧ノズル22に供給されるように構成されているが、これに限定されない。空気昇圧装置は、空気を昇圧させるときに、膨張機30において得られた回転動力と共に、外部から供給される電力を用いるように構成されてもよい。この場合でも、従来のように、コンプレッサーのみによって空気を昇圧してこの昇圧した空気を噴霧ノズル22に供給するのに比べて消費電力を削減することができる。
【0077】
上記実施形態の室外機10では、吸込み空気用ファン13は、ケーシング11内に引き込んだ空気(外気)を上方に向けて吹き出すように設けられているが、この位置に限定されず、前記空気をケーシング11から横向きに吹き出すように設けられてもよい。
【符号の説明】
【0078】
1 空気調和装置
10 室外機
12 熱交換器
20 噴霧装置
22 噴霧ノズル
30 膨張機
34 回転駆動軸
50、50A 空気昇圧装置
52 発電部
54 昇圧機構部
60 バッファータンク
62 電磁弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気調和装置(1)の室外機(10)であって、
熱交換器(12)と、
水と所定の圧力の空気とが供給されることにより前記水を噴霧して前記熱交換器(12)を冷却する噴霧ノズル(22)と、
前記熱交換器(12)から供給された冷媒を膨張させて排出する膨張機(30)と、
空気を昇圧させて前記噴霧ノズル(22)に供給する空気昇圧装置(50、50A)と、を備え、
前記膨張機(30)は、前記冷媒の膨張によって回転動力を発生させ、
前記空気昇圧装置(50)は、前記膨張機(30)が発生させた回転動力を用いて前記空気の昇圧を行う空気調和装置の室外機。
【請求項2】
前記膨張機(30)は、前記冷媒の膨張によって回転する回転駆動軸(34)を有し、
前記空気昇圧装置(50)は、前記回転駆動軸(34)によって伝達される回転動力を用いて前記空気の昇圧を行う請求項1に記載の空気調和装置の室外機。
【請求項3】
前記空気昇圧装置(50A)は、前記膨張機(30)が発生させた回転動力によって発電する発電部(52)と、前記発電部(52)によって生成された電力を用いて前記空気の昇圧を行う昇圧機構部(54)と、を有する請求項1に記載の空気調和装置の室外機。
【請求項4】
内部に所定の容積の収容空間(s)を有し、且つ、前記空気昇圧装置(50)から排出された空気を前記収容空間(s)内に収容すると共にこの収容した空気を前記噴霧ノズル(22)に向けて排出する容器(60)を備える請求項1乃至3のいずれか1項に記載の空気調和装置の室外機。
【請求項5】
前記容器(60)から前記噴霧ノズル(22)に供給される空気の流路を開閉可能な弁(62)を備える請求項4に記載の空気調和装置の室外機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate