説明

空気調和装置

【課題】空調運転時において、内燃機関の燃料である化石燃料を利用しつつ、電力網に供給される再生可能エネルギーによる発電電力を有効利用することができる空気調和装置を提供する。
【解決手段】空気調和装置1は、圧縮機11,12の駆動源としてガスエンジン13及び電動モータ14を備える。コントローラ16は、電動モータ14への供給電力として活用される再生可能エネルギーの状態情報を取得し、該取得された再生可能エネルギーの状態情報に基づいて、ガスエンジン13及び電動モータ14の動力比率を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮機の駆動源として内燃機関及び電動モータを備えた空気調和装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、こうした空気調和装置としては、例えば特許文献1、2に記載されたものが知られている。これらの空気調和装置は、圧縮機の駆動源にガスエンジンを用いたガスヒートポンプ式の空気調和機(以下、「GHP」ともいう)と、圧縮機の駆動源に電動モータを用いた電気ヒートポンプ式の空気調和機(以下、「EHP」ともいう)とを備えている。そして、GHP及びEHPが同一の空間を空調する場合に、地域別外気温データや地域別電気/ガス料金データ、空調の容量データ、顧客の要望などの情報を用いて、顧客の要望に最適な最適制御パターンを導出する。GHP及びEHPは、この最適制御パターンに基づく運転パターンで空調を行うように統括的に制御される。
【0003】
しかしながら、これらの空気調和装置は、電動モータの電源として使用される電力会社の商用電源について基本的に低コスト化することしか考慮しておらず、例えば電力供給時の再生可能エネルギー(自然エネルギー)の活用の実態については何ら考慮されていない。
【0004】
環境意識が高まる中、世の流れとして、低炭素化社会に向けて、再生可能エネルギーの利用が盛んになっている。再生可能エネルギーを利用した電力供給システムとしては、常時平均的に電力供給可能なものもあるが、太陽電池を利用する太陽光発電や風力発電などでは安定的に電力供給することができない。従って、これらの電力供給システムでは、発電電力が大きいときには蓄電池等を用いて電力を蓄え、逆に発電電力が小さいときには蓄電池等から電力を系統に供給することで、安定的な電力供給を行っている。
【0005】
また、例えば特許文献3では、エネルギー量が変動する各種の再生可能エネルギーを組み合わせて平準化を図り、効果的に活用するとともに、回収したエネルギーを単に電力バッテリーに貯蔵して利用するばかりでなく、最終の利用形態を考えてその必要なエネルギーに変換して利用することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−41801号公報
【特許文献2】特開2009−14245号公報
【特許文献3】特開平11−93826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献3では、各種の再生可能エネルギーを効果的に組み合わせて活用するのみで、既存の化石燃料(石油、天然ガスなど)を含めたエネルギーの有効利用については何ら言及されていない。従って、当然ながら、このような電力供給システムをハイブリッド型の空気調和装置の電動モータの電源として使用したとしても、全体として見た場合には効率的なエネルギー利用になっていない可能性がある。
【0008】
本発明の目的は、空調運転時において、内燃機関の燃料である化石燃料を利用しつつ、電力網に供給される再生可能エネルギーによる発電電力を有効利用することができる空気調和装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、圧縮機の駆動源として内燃機関及び電動モータを備えた空気調和装置において、前記電動モータへの供給電力として活用される再生可能エネルギーの状態情報を取得する取得手段と、前記取得された再生可能エネルギーの状態情報に基づいて、前記内燃機関及び前記電動モータの動力比率を制御する動力比率制御手段とを備えたことを要旨とする。
【0010】
同構成によれば、前記取得された再生可能エネルギーの状態情報に基づいて、前記動力比率制御手段により前記内燃機関及び前記電動モータの動力比率が制御される。従って、例えば前記再生可能エネルギーの状態情報が、その発電電力が多い状態を表しているときには、前記電動モータの動力を優先して前記圧縮機を駆動することで、電力網に供給される再生可能エネルギーによる発電電力を有効利用することができる。一方、前記再生可能エネルギーの状態情報が、その発電電力が少ない状態を表しているときには、前記内燃機関の動力を優先して前記圧縮機を駆動することで、前記再生可能エネルギーによる発電電力に影響されることなく再生可能でないエネルギーの使用を抑制しつつ必要な動力を確保することができる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の空気調和装置において、前記再生可能エネルギーの状態情報は、気象情報であることを要旨とする。
同構成によれば、例えば前記気象情報が、その発電電力が多い状態(例えば太陽電池を利用する太陽光発電における晴天時など)を表しているときには、前記電動モータの動力を優先して前記圧縮機を駆動することで、前記再生可能エネルギーによる発電電力を有効利用することができる。一方、前記気象情報が、その発電電力が少ない状態(例えば太陽光発電における曇天時や雨天時など)を表しているときには、前記内燃機関の動力を優先して前記圧縮機を駆動することで、必要な動力を確保することができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の空気調和装置において、前記再生可能エネルギーの状態情報は、電力網に対する前記再生可能エネルギーによる発電電力の供給情報であることを要旨とする。
【0013】
同構成によれば、例えば前記供給情報が、前記再生可能エネルギーによる発電電力(例えば太陽光発電や風力発電などによる発電電力)が多い状態を表しているときには、前記電動モータの動力を優先して前記圧縮機を駆動することで、前記再生可能エネルギーによる発電電力を有効利用することができる。一方、前記供給情報が、前記再生可能エネルギーによる発電電力が少ない状態を表しているときには、前記内燃機関の動力を優先して前記圧縮機を駆動することで、必要な動力を確保することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、空調運転時において、内燃機関の燃料である化石燃料を利用しつつ、電力網に供給される再生可能エネルギーによる発電電力を有効利用することができる空気調和装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1は、本実施形態に係る空気調和装置を示す模式図である。同図に示すように、空気調和装置1は、室外機10と、複数の室内機20とを備えて構成される。そして、室外機10は、互いに独立した対の圧縮機11,12と、一方の圧縮機11の駆動源となる内燃機関としてのガスエンジン13と、他方の圧縮機12の駆動源となる電動モータ14とを備える。つまり、空気調和装置1は、圧縮機11,12の駆動源としてガスエンジン13及び電動モータ14を備えたいわゆるハイブリッド型である。また、室外機10は、各圧縮機11,12と室内機20との間を接続する冷媒回路15を備えている。この冷媒回路15は、圧縮機11,12及び室内機20と共に冷凍サイクルを構成する。圧縮機11,12は、各々の吐出する冷媒を冷媒回路15を介して室内機20に供給するとともに、該室内機20から排出された冷媒を冷媒回路15を介して吸引する。この際、室内機20において、室内空間の空気と適宜の熱交換がなされて、当該空間の空調が行われる。
【0017】
ここで、ガスエンジン13は、ガス会社から供給される化石燃料としてのガスを燃焼させることで圧縮機11を駆動する。一方、電動モータ14は、商用電源31から電力変換器17を介してと電気的に接続されており、該商用電源31から供給される電力によって圧縮機12を駆動する。あるいは、電動モータ14は、再生可能エネルギーによる発電電力が供給される電力網32と電力変換器17が電気的に接続されており、該電力網32から供給される電力によって圧縮機12を駆動する。なお、電力網32には、再生可能エネルギーとして太陽光を利用する太陽光発電33が電気的に接続されるとともに、再生可能エネルギーとして風力を利用する風力発電34が電気的に接続されている、
また、室外機10は、ガスエンジン13、電動モータ14及び冷媒回路15等を統括制御するコントローラ16を備える。このコントローラ16は、電力網32に設けられた制御装置(図示略)と適宜の電気通信回線Nを介して接続されており、該制御装置との通信によってその提供する電力状況の情報を取得する(取得手段)。具体的には、コントローラ16は、電力網32に対する再生可能エネルギー(太陽光及び風力)による発電電力の供給情報を電気通信回線Nを介して取得する。
【0018】
そして、コントローラ16は、取得された電力状況の情報に基づいて、ガスエンジン13及び電動モータ14の動力比率を制御する(動力比率制御手段)。例えば電力網32に対する再生可能エネルギー(太陽光及び風力)による発電電力が所定レベルを超えるときには、コントローラ16は、ガスエンジン13の駆動を停止して、電力網32から供給される電力によって電動モータ14のみを駆動する。この場合、空調動作に係る冷媒の循環は、圧縮機12のみの駆動で実現される。あるいは、電力網32に対する再生可能エネルギーによる発電電力が前記所定レベル以下のときには、コントローラ16は、ガスエンジン13及び電動モータ14の動力比率をガスエンジン13の比率が大きくなるように制御する。
【0019】
以上詳述したように、本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1)本実施形態では、取得された再生可能エネルギーの状態情報(電力網32に対する再生可能エネルギーによる発電電力の供給情報)に基づいて、ガスエンジン13及び電動モータ14の動力比率が制御される。従って、例えば再生可能エネルギーの状態情報が、その発電電力が多い状態を表しているときには、電動モータ14の動力を優先して圧縮機12を駆動することで、電力網32に供給される再生可能エネルギーによる発電電力を有効利用することができる。一方、再生可能エネルギーの状態情報が、その発電電力が少ない状態を表しているときには、ガスエンジン13の動力を優先して圧縮機11を駆動することで、再生可能エネルギーによる発電電力に影響されることなく必要な動力を確保することができる。以上により、空調運転時において、ガスエンジン13の燃料であるガスを利用しつつ、電力網32に供給される再生可能エネルギーによる発電電力を有効利用することができ、動力不足に陥ることなく二酸化炭素の排出量を低減することができる。
【0020】
(2)本実施形態では、再生可能でないエネルギーの使用を抑制することにより二酸化炭素の排出を抑制することができ、ひいては地球温暖化抑制に貢献することができる。
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
【0021】
・図1に併せ示したように、コントローラ16が、再生可能エネルギーによる発電電力を推定し得る気象情報を電気通信回線Nを介して取得できる場合には、該気象情報に基づいてガスエンジン13及び電動モータ14の動力比率を制御してもよい。なお、気象情報は、電力会社又は個人若しくは事業主が設置する適宜の気象観測手段から得られるもので、例えば太陽光発電33の設置位置における天気(晴天や曇天、雨天など)、風力発電34の設置位置における風力などである。この場合、例えば気象情報が、その発電電力が多い状態(例えば太陽電池を利用する太陽光発電における晴天時など)を表しているときには、電動モータ14の動力を優先して圧縮機12を駆動する。一方、気象情報が、その発電電力が少ない状態(例えば太陽光発電における曇天時や雨天時など)を表しているときには、ガスエンジン13の動力を優先して圧縮機11を駆動する。
【0022】
・前記実施形態において、室外機10が複数台の場合には、各室外機10のコントローラ16と電気通信回線Nとの間に遠隔制御装置を設けて、該遠隔制御装置にてこれらコントローラ16(室外機10)を統括制御するようにしてもよい。具体的には、電力網32に対する再生可能エネルギーによる発電電力の供給情報に基づいて、電動モータ14を駆動する室外機10の台数を制御する。このように変更することで、電力供給の不安定な再生可能エネルギーを常時有効利用することができる。この場合、ガスエンジン13及び電動モータ14の動力比率の制御は、コントローラ16及び遠隔制御装置のいずれか一方が主体的に行えばよい。
【0023】
・前記実施形態において、電力網32は、電力会社の所有する設備であってもよいし、個人等の所有する設備であってもよい。
・前記実施形態において、電力網32が電力会社の所有になる場合には、該電力網32は、商用電源31の生成に係る電力網と一体化されていてもよい。この場合、コントローラ16によるガスエンジン13及び電動モータ14の動力比率の制御にあたっては、商用電源31の電力網に対する再生可能エネルギーによる発電電力の供給情報が電力会社から提供される必要がある。
【0024】
・前記実施形態において、一方の圧縮機11に接続される室内機20と、他方の圧縮機12に接続される室内機20とは、互いに独立していてもよい。
・前記実施形態において、圧縮機11と室内機20とを接続する冷媒回路と、圧縮機12と室内機20とを接続する冷媒回路は、冷媒回路15内で完全に独立していてもよいし、一部又は全部が共用されていてもよい。
【0025】
・前記実施形態において、ガスエンジン13又は電動モータ14によって共通の1つの圧縮機を駆動するようにしてもよい。
・前記実施形態において、ガスエンジン13に代えて内燃機関としての灯油エンジンで圧縮機を駆動してもよい。
【符号の説明】
【0026】
1…空気調和装置、11,12…圧縮機、13…ガスエンジン(内燃機関)、14…電動モータ、16…コントローラ(取得手段、動力比率制御手段)、17…電力変換器、32…電力網。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機の駆動源として内燃機関及び電動モータを備えた空気調和装置において、
前記電動モータへの供給電力として活用される再生可能エネルギーの状態情報を取得する取得手段と、
前記取得された再生可能エネルギーの状態情報に基づいて、前記内燃機関及び前記電動モータの動力比率を制御する動力比率制御手段とを備えたことを特徴とする空気調和装置。
【請求項2】
請求項1に記載の空気調和装置において、
前記再生可能エネルギーの状態情報は、気象情報であることを特徴とする空気調和装置。
【請求項3】
請求項1に記載の空気調和装置において、
前記再生可能エネルギーの状態情報は、電力網に対する前記再生可能エネルギーによる発電電力の供給情報であることを特徴とする空気調和装置。

【図1】
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【公開番号】特開2011−247450(P2011−247450A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−118239(P2010−118239)
【出願日】平成22年5月24日(2010.5.24)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】