説明

空調制御装置および空調制御方法

【課題】チルドビームを用いた空気調和システムにおいて、結露の発生を防止できる空調制御装置および空調制御方法を提供する。
【解決手段】DDC21は、トータル結露ステータスに基づいて給気温度を制御する。これにより、チルドビーム12a〜12cの熱交換器121a〜121cに結露を発生させずに給気温度を制御できるので、結果として、省エネルギー化を実現することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調制御装置および空調制御方法に関するものであり、特に、外調機によって熱処理された調和空気を被空調空間に放出供給するダクトと、熱処理された冷媒が供給される熱交換器とを備えた複数の空調装置を備えた空調システムにおいて、外調機よりダクトを介して供給する調和空気の温度等を制御する空調制御装置および空調制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、熱処理された冷媒が供給される熱交換器を用いた空調装置が知られている。この種の空調装置は、「チルドビーム」とも呼ばれ、冷媒を循環させるコイルや放射パネル等の熱交換器を各被制御空間の天井などに配設して、この熱交換器からの輻射と対流によって熱伝達をおこなうので、省エネルギー性に優れた空調技術として、近年注目を浴びている。
このような「チルドビーム」は、対流の原理を利用して熱交換を行う「パッシブ・チルドビーム」と、外調機によって熱処理された調和空気を熱交換器に供給する「アクティブ・チルドビーム」とに大別され、パッシブ・チルドビームよりもアクティブ・チルドビームの方が、顕熱冷却能率が高い。以下、本明細書においては、アクティブ・チルドビームを単に「チルドビーム」と呼ぶことにする。
【0003】
図15にチルドビームの一構成例を示す。図15において、チルドビーム300は、天井裏に配設された熱交換器301と、この熱交換器301の上方に配設されたダクト302と、これらを覆う筐体303とから構成されている。ダクト302には、熱交換器301の周囲に向けて調和空気を吐出する吹き出し口302aが設けられ、筐体303に設けられた通気口304を通じて調和空気を被空調空間に供給する。
このようなチルドビーム300では、熱交換器301に外部より供給される冷却(または加熱)された冷媒が循環する一方、ダクト302を介して外調機によって外気を一定レベルまでに熱処理した調和空気がファンで加圧され供給されている。この調和空気は、吹き出し孔302aから通気口304に向けて吹き出される。このとき、周囲の空気を引き込んで送風するいわゆる誘引効果により、室内を上昇して熱交換器301により冷却(または加熱)された空気が、吹き出し孔302aから供給される調和空気により吸引され、互いに混合した状態で室内に供給される。
【0004】
図16に、上述したチルドビームを備えた空気調和システムの一構成例を示す。この空気調和システムは、複数の被空調空間400a〜400cに対してそれぞれ設けられたチルドビーム300a〜300cと、熱源装置と熱交換装置とファンとを備え、これらのチルドビーム300a〜300cに熱処理した調和空気および冷媒を供給する外調機410とから構成される。外調機410と各チルドビーム300a〜300cの熱交換器301a〜301cとの間に設けられた冷媒用配管420には、各熱交換器301a〜301cに供給される冷媒の流量を調整するバルブ420a〜420cが設けられている。また、外調機410とチルドビーム300a〜300cとをつなぐダクト430には、チルドビーム300a〜300cを介して各被空調空間に供給される調和空気の量を調整する変風量ユニット430a〜430cが設けられている。また、外調機410には、熱源装置(図示せず)から外調機410に導入される冷媒の量を調整するバルブ440が設けられている。
一方、被空調空間400a〜400cには、被空調空間内の室温および露点温度を計測する室内センサ450a〜450cが配設されている。また、冷媒用配管420には、外調機410からチルドビーム300a〜300cの熱交換器301a〜301cに供給される冷媒の温度を計測する送水温度センサ460が設けられている。また、ダクト430には、外調機410から供給される調和空気の温度を計測する給気センサ470が設けられていると。
このような空気調和システムを制御する制御装置として、室内センサ450a〜450cの計測結果に基づいてバルブ420a〜420cの開度を制御する熱交換器用温度調節計(TIC:Temperature indicating controller)480a〜480cと、給気センサ260の計測結果に基づいてバルブ440の開度を制御する給気温度制御用TIC490とを備えている(例えば、非特許文献1参照。)。
【0005】
このような空気調和システムにおいて、外調機410から各チルドビーム300a〜300cに供給される一定温度の調和空気はチルドビーム300a〜300cにそれぞれ設けられた熱交換器301a〜301cによってさらに熱交換された上で各被空調空間400a〜400cに供給される。このような空気調和システムにおいて冷房を行う場合を考えると、顕熱負荷(温度負荷)や潜熱負荷(湿度)が大きい場合には、外調器410からチルドビーム300a〜300cに供給される調和空気の温度を低下させる。また、それらの負荷が小さい場合にはその調和空気の温度を上昇させることによって、外調機410の消費エネルギーを削減することができ、その結果として、さらなる省エネルギーが実現可能となると考えられる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Federation of European Heating and Air-conditionig Association、Chilled Beam application GUIDEBOOK
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、調和空気の温度を上昇させると露点温度も上昇するので、熱交換器に結露が発生する恐れがある。
ところが、チルドビームは、その構造上、コイルや放射パネルといった熱交換器に結露した水を排出する機構を設けることを想定していない。したがって、従来の技術では、結露の発生を回避しつつ、調和空気の温度を制御することが困難であったので、結果として、省エネルギー化を実現することが難しかった。
【0008】
そこで、本発明は、チルドビームを用いた空気調和システムにおいて、結露の発生を防止できる空調制御装置および空調制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述したような課題を解決するために、本発明に係る空調制御装置は、複数の被空調空間の天井裏にそれぞれに配設された空調装置であって、外調機によって熱処理された調和空気を被空調空間に供給するダクトと、熱処理された冷媒が供給される熱交換器とを備えた空調装置に対し、ダクトを介して供給する調和空気の給気温度を制御する空調制御装置であって、被空調空間のそれぞれに設けられた第1のセンサにより測定された当該被空調空間の露点温度と、第2のセンサにより測定された熱交換器に供給される冷媒の温度とに基づいて、熱交換器に結露が発生する可能性を示す結露ステータスを空調装置ごとに演算する第1の演算部と、この第1の演算部により演算された複数の結露ステータスに基づいて、複数の空調装置の熱交換器のいずれかに結露が発生する可能性を示すトータル結露ステータスを演算する第2の演算部と、この第2の演算部により演算されたトータル結露ステータスに基づいて、外調機から供給される調和空気の給気温度を制御する制御部とを備えたことを特徴とするものである。
【0010】
また、上記空調制御装置において、第1のセンサにより測定された露点温度と第2のセンサにより測定された温度との差分と、結露ステータスとの関係を記憶した第1の記憶部と、空調装置のそれぞれに対して演算された結露ステータスの組合せと、トータル結露ステータスとの関係を記憶した第2の記憶部と、トータル結露ステータスと調和空気の給気温度の制御量との関係を記憶した第3の記憶部とをさらに備え、第1の演算部は、第1のセンサにより測定された露点温度および第2のセンサにより測定された温度と、第1の記憶部に記憶された関係とに基づいて、結露ステータスを演算し、第2の演算部は、第1の演算部によって演算された空調装置ごとの結露ステータスと第2の記憶部に記憶された関係とに基づいてトータル結露ステータスを演算し、制御部は、トータル結露ステータスと第3の記憶部に記憶された関係と調和空気の現在の給気温度とに基づいて、調和空気の給気温度を決定するようにしてもよい。
【0011】
また、上記空調制御装置において、被空調空間のそれぞれに設けられた第3のセンサにより測定された当該被空調空間の室温と当該被空調空間に目標温度として設定された設定温度とに基づいて、当該被空調空間への給気温度を演算する第3の演算部をさらに備え、制御部は、第2の演算部により演算されたトータル結露ステータスに基づいて求められた調和空気の給気温度と第3の演算部によって演算された給気温度とに基づいて、調和空気の温度を制御するようにしてもよい。
【0012】
また、本発明に係る他の空調制御装置は、複数の被空調空間の天井裏にそれぞれに配設された空調装置であって、除湿機能を有する外調機によって熱処理された調和空気を被空調空間に供給するダクトと、熱処理された冷媒が供給される熱交換器とを備えた空調装置に対し、ダクトを介して供給する調和空気の露点温度を制御する空調制御システムであって、被空調空間のそれぞれに設けられた第1のセンサにより測定された当該被空調空間の露点温度と、第2のセンサにより測定された熱交換器に供給される冷媒の温度および前記熱交換器の表面の温度のうちの一方とに基づいて、熱交換器に結露が発生する可能性を示す結露ステータスを空調装置それぞれごとに演算する第1の演算部と、この第1の演算部により演算された複数の結露ステータスに基づいて、複数の空調装置の熱交換器のいずれかに結露が発生する可能性を示すトータル結露ステータスを演算する第2の演算部と、第2の演算部により演算されたトータル結露ステータスに基づいて、調和空気の露点温度を制御する制御部とを備えることを特徴とするものである。
【0013】
また、上記空調制御装置において、制御部は、第2の演算部により演算されたトータル結露ステータスおよび第5のセンサにより測定された外気の露点温度に基づいて、外調機からの調和空気の風量を制御する風量制御部を有するようにしてもよい。
【0014】
また、本発明に係る空調制御方法は、複数の被空調空間の天井裏にそれぞれに配設された空調装置であって、外調機によって熱処理された調和空気を被空調空間に供給するダクトと、熱処理された冷媒が供給される熱交換器とを備えた空調装置に対し、ダクトを介して供給する調和空気の給気温度を制御する空調制御方法であって、被空調空間のそれぞれに設けられた第1のセンサにより測定された当該被空調空間の露点温度と、第2のセンサにより測定された熱交換器に供給される冷媒の温度および前記熱交換器の表面の温度のうちの一方とに基づいて、熱交換器に結露が発生する可能性を示す結露ステータスを空調装置ごとに演算する第1の演算ステップと、この第1の演算ステップにより演算された複数の結露ステータスに基づいて、複数の空調装置の熱交換器のいずれかに結露が発生する可能性を示すトータル結露ステータスを演算する第2の演算ステップと、この第2の演算ステップにより演算されたトータル結露ステータスに基づいて、外調機から供給される調和空気の給気温度を制御する制御ステップとを有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、トータル結露ステータスに基づいて給気の温度を制御することにより、輻射冷暖房装置に結露を発生させずに給気の温度を制御できるので、結果として、省エネルギー化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明の第1の実施の形態に係る空気調和システムの構成を模式的に示す図である。
【図2】図2は、図1におけるDDC20a〜20cの構成を示すブロック図である。
【図3】図3は、結露ステータスの一例を説明するための図である。
【図4】図4は、図1におけるDDC21の構成を示すブロック図である。
【図5】図5は、トータル結露ステータスの一例を説明するための図である。
【図6】図6は、結露ステータスの他の例を説明するための図である。
【図7】図7は、結露ステータスの他の例を説明するための図である。
【図8】図8は、本発明の第2の実施の形態に係る空気調和システムの構成を模式的に示す図である。
【図9】図9は、図8におけるDDC20−1a〜20−1cの構成を示すブロック図である。
【図10】図10は、図8におけるDDC21−1の構成を示すブロック図である。
【図11】図11は、本発明の第3の実施の形態に係る空気調和システムの構成を模式的に示す図である。
【図12】図12は、図11におけるDDC21−2の構成を示すブロック図である。
【図13】図13は、本発明の第4の実施の形態に係る空気調和システムの構成を模式的に示す図である。
【図14】図14は、図13におけるDDC21−3の構成を示すブロック図である。
【図15】図15は、チルドビームの構成を示す模式図である。
【図16】図16は、チルドビームを適用した従来の空気調和システム全体の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[第1の実施の形態]
まず、本発明の第1の実施の形態について説明する。
【0018】
図1に示すように、本実施の形態に係る空気調和システム1は、被空調空間11a〜11cの天井裏に配設されたチルドビーム12a〜12cと、これらのチルドビーム12a〜12cに外気を熱処理した調和空気および熱処理した冷媒(冷温水)を供給する外調機13とから構成される。外調機13と各チルドビーム12a〜12cの熱交換器121a〜121cとの間に設けられた冷媒用配管14には、各熱交換器121a〜121cに供給される冷媒の量を調整するバルブ14a〜14cが設けられている。また、外調機13とチルドビーム12a〜12cとをつなぐダクト15には、チルドビーム12a〜12cを介して各被空調空間11a〜11cに供給される調和空気の量を調整する変風量ユニット15a〜15cが設けられている。また、外調機13には、熱源装置(図示せず)から外調機13に導入される冷媒の量を調整するバルブ16a,16bが設けられている。
一方、被空調空間11a〜11cには、被空調空間内の室内温度および室内露点温度を計測する室内センサ17a〜17cが配設されている。また、冷媒用配管14には、外調機13からチルドビーム12a〜12cに供給される冷媒の温度(以下、「送水温度」と言う。)を計測する送水温度センサ18が設けられている。また、ダクト15には、外調機13から供給される調和空気の温度(以下、「給気温度」と言う。)を計測する給気センサ19とを備えている。
このような空気調和システム1を制御する制御装置として、室内センサ17a〜17cの計測結果に基づいてバルブ14a〜14cの開度を制御する直接計数制御器(DDC:Direct Digital Controller)20a〜20cと、室内センサ17a〜17c、送水温度センサ18、給気センサ19およびDDC20a〜20cから取得する各種情報に基づいて外調機13の運転およびバルブ16の開度を制御するDDC21とを備えている。
なお、図1において、同じ被空調空間11a〜11cに対応づけられた構成要素には、同じ添え字a〜cを付している。
【0019】
ここで、チルドビーム12a〜12cは、背景技術の欄において図15を参照して説明したチルドビーム300と同等の構成を有するものであり、熱交換器121a〜121cおよびダクト122a〜122cを備えている。このようなチルドビーム12a〜12cには、外調機13から熱処理された冷媒が熱交換器121a〜121cに供給されるとともに、外調機13から熱処理された調和空気がダクト121a〜121cに供給される。
【0020】
外調機13は、ボイラ等の熱源装置から供給される温水HWにより外気を加熱する加熱コイル131と、冷却塔等の熱源装置から供給される冷水CWにより外気を冷却する冷却コイル132と、加熱コイル131または冷却コイル132により熱処理が行われた外気(調和空気)を送出するファン133とを備えている。ここで、加熱コイル131または冷却コイル132を通過した温水HWや冷水CWからなる冷媒は、チルドビーム12a〜12cの熱交換器121a〜121cに供給されて循環する。また、ファン13により送出された調和空気は、チルドビーム12a〜12cのダクト121a〜121cに供給される。
【0021】
バルブ14a〜14cは、外調機13と対応するチルドビーム12a〜12cとを接続する冷媒用配管14に設けられ、そのチルドビーム12a〜12cの熱交換器121a〜121cに流入する冷媒の量を制御する公知の流量制御弁から構成される。このようなバルブ14a〜14cは、対応するDDC20a〜20cからの制御信号に基づいて駆動し、開度を変更する。
【0022】
変風量ユニット15a〜15cは、外調機13と対応するチルドビーム12a〜12cとを接続するダクトに設けられ、そのチルドビーム12a〜12cのダクト122a〜122cに流入する調和空気の量を制御する公知の流量制御弁から構成される。
【0023】
バルブ16a,16bは、DDC21からの制御信号に基づいて駆動して、その開度が調整される公知の流量制御弁から構成される。ここで、バルブ16aは、ボイラなどの加熱装置と外調機13とを接続する配管に配設され、外調機13の加熱コイル131に供給される温水HWの量を制御する。一方、バルブ16bは、冷却塔などの加熱装置と外調機13とを接続する配管に配設され、外調機13の冷却コイル132に供給される冷水CWの量を制御する。
【0024】
室内センサ17a〜17cは、対応する被空調空間11a〜11cに配設され、内部の室内温度および室内露点温度を計測する公知の温度センサおよび露点温度センサから構成される。この測定結果は、対応するDDC20a〜20cに送信される。
【0025】
送水温度センサ18は、冷媒用配管14中を流れる冷媒の温度を測定する公知の温度センサから構成される。この測定結果は、各DDC20a〜20cに送信される。
【0026】
給気センサ19は、ダクト15中を流れる調和空気の温度を測定する公知の温度センサから構成される。この測定結果は、DDC21に送信される。
【0027】
DDC20a〜20cは、対応するチルドビーム12a〜12cに対して設けられ、CPUなどの演算装置、メモリやハードディスクなどの記録装置等を備えたコンピュータと、このコンピュータにインストールされたプログラムとから構成される。すなわち、ハードウェア装置とソフトウェアが協働することによって、上記ハードウェア資源がプログラムによって制御されて、図2に示すように、I/F部201、比較部202、結露ステータス演算部203および記憶部204が実現される。便宜上、以下においては、DDC20aの場合を例にその構成について説明するが、DDC20b,20cもDDC20aと同等の構成を有しているので、その説明を省略する。
【0028】
I/F部201は、バルブ14a、室内センサ17a、送水温度センサ18、DDC21と電気的に接続されており、これらとの間で各種情報のやりとりを行うとともに、必要に応じてその各種情報を駆動部202、比較部202および結露ステータス演算部203に送出する。また、I/F部201は、被空調空間11a〜11c内に設けられたリモコンや操作パネルとも電気的に接続されており、ユーザ等からの操作入力に基づいて被空調空間11a〜11cの設定温度が入力される。
【0029】
比較部202は、室内センサ17aにより計測された被空調空間11aの露点温度と、送水温度センサ18により計測された送水温度とを比較し、これらの差分を算出する。
【0030】
結露ステータス演算部203は、第1の演算部として機能し、比較部202による比較結果に基づいて、チルドビーム12aの結露ステータスを演算する。この結露ステータスとは、チルドビーム12aの熱交換器121aに結露が発生する可能性を示す指標である。本実施の形態においては、結露が発生する可能性が高い「危険」、結露が発生する可能性がある「注意」、結露が発生する可能性が低い「ドライ」という3つの結露ステータスを演算して設定する。これらの結露ステータスは、記憶部204に記憶された閾値に基づいて演算される。演算した結露ステータスは、I/F部201を介してDDC21に送出される。
【0031】
記憶部204は、第1の記憶部として機能し、結露ステータス設定部203が結露ステータスの演算に用いる閾値を予め記憶している。この閾値は、送水温度と露点温度との差分に基づいて設定されている。具体的には、図3に示すように、被空調空間11aの露点温度が、送水温度から2℃低い温度よりも低い場合には「ドライ」の結露ステータス、送水温度から2℃低い温度以上送水温度未満の範囲内の場合には「注意」の結露ステータス、送水温度以上の場合は「危険」の結露ステータスが演算されるように設定されている。
【0032】
DDC21は、DDC20a〜20cの上位装置として設けられ、CPUなどの演算装置、メモリやハードディスクなどの記録装置等を備えたコンピュータと、このコンピュータにインストールされたプログラムとから構成される。すなわち、ハードウェア装置とソフトウェアが協働することによって、上記ハードウェア資源がプログラムによって制御され、図4に示すように、I/F部211、駆動部212、トータルステータス演算部213、記憶部214および結露防止部215が実現される。
【0033】
I/F部211は、外調機13、バルブ16a,16b、給気センサ19およびDDC20a〜20cと電気的に接続されており、これらとの間で各種情報のやりとりを行うとともに、必要に応じてその各種情報を駆動部212、トータルステータス演算部213および結露防止部215に送出する。
【0034】
駆動部212は、室内センサ17a〜17c、送水温度センサ18、給気センサ19およびDDC20a〜20cから取得した情報に基づいて、外調機13の駆動およびバルブ16a,16bの開度を制御する。ここで、外調機13からの給気温度は、結露防止部215により設定された給気温度に基づいて、バルブ16a,16bの開度を制御することにより制御される。
【0035】
トータルステータス演算部213は、第2の演算部として機能し、DDC20a〜20cそれぞれの結露ステータス演算部203により設定された結露ステータスと、記憶部214に記憶されたルールとに基づいて、トータル結露ステータスを演算して設定する。このトータル結露ステータスとは、空気調和システム1に含まれるチルドビーム12a〜12cのいずれかの熱交換器に結露が発生する可能性を示す指標である。本実施の形態においては、結露が発生する可能性が高い「危険」、結露が発生する可能性がある「注意」、結露が発生する可能性が低い「ドライ」という3つのトータル結露ステータスが設定される。設定されたトータル結露ステータスは、結露防止部214に送出される。
【0036】
記憶部214は、第2の記憶部として機能し、トータルステータス演算部213がトータル結露ステータスの演算に用いるルールを予め記憶している。このルールは、チルドビーム12a〜12cそれぞれの結露ステータスと、これらの結露ステータスから演算されるトータル結露ステータスとを示すものである。その一例を図5に示す。
【0037】
図5に示すルールは、結露の発生をより確実に防ぐことを目的に設定されたものである。具体的には、全てのチルドビームの結露ステータスが「危険」の場合、トータル結露ステータスは「危険」と設定される。また、複数のチルドビームのうち少なくとも1つのチルドビームの結露ステータスが「危険」、他のチルドビームの結露ステータスが「注意」や「ドライ」の場合、トータル結露ステータスは「危険」と設定される。また、全てのチルドビームの結露ステータスが「注意」の場合、トータル結露ステータスは「注意」と設定される。また、複数のチルドビームのうち少なくとも1つのチルドビームの結露ステータスが「注意」で、他のチルドビームの結露ステータスが「ドライ」の場合、トータル結露ステータスは「注意」と設定される。また、全てのチルドビームの結露ステータスが「ドライ」の場合、トータル結露ステータスは「ドライ」と設定される。
【0038】
なお、ルールは、図5に示すものに限定されず、適宜自由に設定することができ、例えばより省エネルギー化を実現するように、「危険」や「注意」のトータル結露ステータスが演算されないように設定することもできる。また、図5は、チルドビームの台数を限定せずにチルドビーム12a〜12nを設けた場合について示しているが、その台数を3台とすることにより本実施の形態に適用できることは言うまでもない。
【0039】
結露防止部215は、制御部として機能し、トータルステータス設定部213により設定されたトータル結露ステータスに基づいて、給気温度を制御する。
【0040】
上述したように、顕熱負荷(温度負荷)や潜熱負荷(湿気)が大きい場合には給気温度を下降させ、負荷が小さい場合には給気温度を上昇させた方が消費エネルギーを削減することができる。ところが、給気温度を上昇させすぎると、被空調空間11a〜11cの露点温度が上昇して、結露が発生する恐れがある。
【0041】
そこで、本実施の形態では、結露防止部215がトータル結露ステータスに基づいて給気温度を制御することにより、結露が発生するのを防ぐ。具体的には、トータル結露ステータスが「危険」の場合、すなわち、被空調空間11a〜11cのいずれかにおいて室内露点温度が送水温度以上の場合には、給気温度を2℃下降させる。これにより給気温度が外調機13における露点温度よりも低くなると、外調機13で除湿される。
【0042】
また、トータル結露ステータスが「注意」の場合、すなわち、被空調空間11a〜11cのいずれかにおいて室内露点温度が送水温度から2℃低い温度以上かつ送水温度未満の範囲内の場合には、給気温度を1℃下降させる。これにより、チルドビーム12a〜12cの熱交換器121a〜121cに供給される給気の湿度が低下するので、結果として、の熱交換器121a〜121cに結露が生じることを防ぐことができる。
【0043】
また、トータル結露ステータスが「ドライ」の場合、すなわち、被空調空間11a〜11cの全てにおいて室内露点温度が送水温度から2℃低い温度よりもさらに低い場合には、給気温度を0.5℃上昇させる。このように給気温度を上昇させるので、省エネルギーを実現することができる。このとき、送水温度が室内露点温度に対して十分低いので、給気温度を上げたとしても結露が発生することを防ぐことができる。
【0044】
以上説明したように、本実施の形態によれば、トータル結露ステータスに基づいて給気温度を制御することにより、チルドビーム12a〜12cの熱交換器121a〜121cに結露を発生させずに給気温度を制御できるので、結果として、省エネルギー化を実現することができる。
【0045】
なお、給気温度を変更してから、室内露点温度が変化するまでには一定の応答時間を要する。すなわち、給気温度の変更は、応答時間を見込んだ効果を待つ時間が必要となる。そこで、結露防止部215は、その効果を待つ時間の周期で、給気温度変更の判断を実施することにより、より効果的に結露の防止と省エネルギー化を実現することができる。
【0046】
また、本実施の形態において、結露ステータスは、図3に示すようにデジタル的に設定する場合を例に説明したが、結露ステータスを設定する方法はそれに限定されず適宜自由に設定することができる。例えば、図6に示すように、アナログ的に設定するようにしてもよい。この図6においては、結露ステータスを数値で表しており、送水温度が、室内露点温度から2℃低い温度以下を0、室内露点温度以上を100、その2℃低い温度から室内露点温度までの範囲については送水温度が上がるに連れて結露ステータスも上がる状態としている。このようにして設定したチルドビーム12a〜12cの各結露ステータスのうち最大の値を、トータル結露ステータスとする。そして、給気温度は、−0.02×トータル結露ステータスとする。これにより、給気温度を各被空調空間11a〜11cの状態に応じてより微細に設定できるので、より効果的に結露の防止と省エネルギー化を実現することができる。
【0047】
また、結露ステータスは、図6に示すようにアナログ的に設定できるのみならず、図7に示すように、多段階のアナログ的に設定するようにしてもよい。この図7においては、送水温度が、室内露点温度から4℃低い温度以下を−50、室内露点温度以上を100としいる。また、その4℃低い温度から室内露点温度よりも2℃低い温度までの範囲と、この2℃低い温度から室内露点温度までの範囲との傾きを変えるようにしている。これにより、給気温度を各被空調空間11a〜11cの状態に応じてさらに微細に設定できるので、より効果的に結露の防止と省エネルギー化を実現することができる。
【0048】
また、本実施の形態では、DDC20a〜20cにより結露ステータスを設定する場合を例に説明したが、DDC21により結露ステータスを設定するようにしてもよい。この場合、室内センサ17a〜17cおよび送水温度センサ18をDDC21に接続するとともに、比較部202および結露ステータス演算部203をDDC21にさらに設けることにより、実現することができる。
【0049】
また、本実施の形態において、室内センサ17a〜17cにより計測された室内温度およびI/F部201に入力された設定温度に基づいて、冷媒の流量を制御するバルブ14aを駆動させて、その開度を調整する駆動部をDDC20a〜20cにさらに設けるようにしてもよい。これにより、チルドビーム12a〜12cの熱交換器に供給される冷媒の流量を制御して、その熱交換器により生じる輻射や対流による熱伝達を変化せることにより、被空調空間11a〜11cの室内温度を変化させることができる。例えば、チルドビーム12aに外調機13から冷水が供給されている場合において、被空調空間11aの室内温度が設定温度よりも低い場合には、バルブ14aの開度を小さくし、チルドビーム12aに供給される冷水の量を少なくする。これにより、熱交換器による熱伝達が小さくなるので、室内温度の低下を防ぐことができる。一方、被空調空間11aの室内温度が設定温度よりも高い場合には、バルブ14aの開度を大きくし、チルドビーム12aに供給される冷水の量を多くする。これにより、熱交換器による熱伝達が大きくなるので、室内温度を低下させることができる。
【0050】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。
本実施の形態は、上述した結露ステータスおよびトータル結露ステータスに加え、被空調空間の空調負荷を考慮して給気温度を制御するものである。
さらに、本実施の形態では、各被空調空間の空調負荷、すなわち、各被空調空間の室温と当該被空調空間ごとに目標温度として設定された設定温度との差分を評価する「室温ステータス」に基づいて、調和空気の給気温度を算出するものである。以下の説明においては、上述した第1の実施の形態におけるDDC20a〜20cおよびDDC21において、後述する室温ステータスまたはトータル室温ステータスをさらに設定するものとする。したがって、本実施の形態において、第1の実施の形態と同等の構成要素については、同じ名称および符号を付して適宜説明を省略する。
【0051】
図8に示すように、本実施の形態に係る空気調和システム2は、被空調空間11a〜11cの天井裏に配設されたチルドビーム12a〜12cと、これらのチルドビーム12a〜12cに外気を熱処理した調和空気および熱処理した冷媒(冷温水)を供給する外調機13とから構成される。外調機13と各チルドビーム12a〜12cの熱交換器121a〜121cとの間に設けられた冷媒用配管14には、各熱交換器121a〜121cに供給される冷媒の量を調整するバルブ14a〜14cが設けられている。また、外調機13とチルドビーム12a〜12cとをつなぐダクト15には、チルドビーム12a〜12cを介して各被空調空間11a〜11cに供給される調和空気の量を調整する変風量ユニット15a〜15cが設けられている。また、外調機13には、熱源装置から外調機13に導入される冷媒の量を調整するバルブ16a,16bが設けられている。
一方、被空調空間11a〜11cには、被空調空間内の室内温度および室内露点温度を計測する室内センサ17a〜17cが配設されている。また、冷媒用配管14には、外調機13からチルドビーム12a〜12cに供給される冷媒の送水温度を計測する送水温度センサ18が設けられている。また、ダクト15には、外調機13から供給される調和空気の給気温度を計測する給気センサ19とを備えている。
このような空気調和システム2を制御する制御装置として、室内センサ17a〜17cの計測結果に基づいてバルブ14a〜14cの開度を制御するDDC20−1a〜20−1cと、室内センサ17a〜17c、送水温度センサ18、給気センサ19およびDDC20a〜20cから取得する各種情報に基づいて外調機13の運転およびバルブ16の開度を制御するDDC21−1とを備えている。
なお、図8においても、同じ被空調空間11a〜11cに対応づけられた構成要素には、同じ添え字a〜cを付している。
【0052】
ここで、DDC20−1a〜20−1cは、対応するチルドビーム12a〜12cに対して設けられており、CPUなどの演算装置、メモリやハードディスクなどの記録装置等を備えたコンピュータと、このコンピュータにインストールされたプログラムとから構成される。すなわち、ハードウェア装置とソフトウェアが協働することによって、上記ハードウェア資源がプログラムによって制御され、図9に示すように、それぞれI/F部201、比較部202−1、結露ステータス演算部203、記憶部204−1および室温ステータス演算部205が実現される。
【0053】
比較部202−1は、室内センサ17a〜17cにより計測された対応する被空調空間11a〜11cの露点温度と、送水温度センサ18により計測された送水温度とを比較し、これらの差分を算出する。また、比較部202−1は、室内センサ17a〜17cにより計測された対応する被空調空間11a〜11cの室内温度や露点温度と、この被空調空間11a〜11cの設定温度とを比較し、これらの差分を算出する。
【0054】
結露ステータス演算部203は、比較部202−1による露点温度と送水温度との比較結果に基づいて、対応するチルドビーム12a〜12cの結露ステータスを設定する。この結露ステータスは、上述した第1の実施の形態における結露ステータスと同等である。
【0055】
記憶部204−1は、上述した第1の実施の形態において説明した結露ステータス設定部203が結露ステータスの演算に用いる閾値を予め記憶している。また、記憶部204−1は、室温ステータス演算部205が室温ステータスの演算すに用いる閾値も予め記憶している。この閾値の詳細については後述する。
【0056】
室温ステータス演算部205は、第3の演算部として機能し、比較部202−1による室内温度と設定温度との比較結果に基づいて、対応する被空調空間11a〜11cの室温ステータスを演算する。この演算された室温ステータスは、I/F部201を介してDDC21−1に送出される。
【0057】
ここで、室温ステータスとは、対応する被空調空間11a〜11cの温度状態を示す指標である。本実施の形態においては、例えば冷房運転の場合、室内温度が設定温度よりも低く冷房能力が空調負荷よりも高い「過剰」、室内温度が設定温度と同等あり冷房能力と空調負荷とのバランスがとれている「適正」、室内温度が設定温度よりも高く冷房能力が空調負荷よりも低い「能力不足」という3つの室温ステータスが設定される。これらの室温ステータスは、記憶部204−1に記憶された閾値に基づいて設定される。この閾値は、室内温度と設定温度との差分に基づいて設定されている。例えば、バルブ14aが全開のときには、チルドビーム12aは室温ステータスを「能力不足」とみなす。また、バルブ14aが「全開」や「低開度」のときには、チルドビーム12aは室温ステータスを「過剰」とみなす。
【0058】
DDC21−1は、DDC20−1a〜20−1cの上位装置として設けられており、CPUなどの演算装置、メモリやハードディスクなどの記録装置等を備えたコンピュータと、このコンピュータにインストールされたプログラムとから構成される。すなわち、ハードウェア装置とソフトウェアが協働することによって、上記ハードウェア資源がプログラムによって制御され、図10に示すように、I/F部211、駆動部212、トータルステータス演算部213−1、記憶部214−1および結露防止部215−1が実現される。
【0059】
トータルステータス演算部213−1は、DDC20−1a〜20−1cそれぞれの結露ステータス演算部203−1により設定された結露ステータスと、記憶部214−1に記憶されたルールとに基づいて、トータル結露ステータスを設定する。このトータル結露ステータスは、上述した第1の実施の形態におけるトータル結露ステータスと同等である。
また、トータルステータス演算部213−1は、DDC20−1a〜20−1cそれぞれの室温ステータス演算部205により設定された室温ステータスと、記憶部214−1に記憶されたルールとに基づいて、トータル室温ステータスを設定する。
【0060】
ここで、トータル室温ステータスとは、空気調和システム1に含まれる被空調空間11a〜11cの室内温度の状態を示す指標である。本実施の形態においては、冷房の場合、被空調空間11a〜11cの室内温度が設定温度よりも低く冷房能力が空調負荷よりも高い「過剰」、被空調空間11a〜11cの室内温度が設定温度と同等あり冷房能力と空調負荷とのバランスがとれている「適正」、被空調空間11a〜11cの室内温度が設定温度よりも高く冷房能力が空調負荷よりも低い「能力不足」という3つのトータル室温ステータスが設定される。
【0061】
記憶部214−1は、トータルステータス演算部213−1がトータル結露ステータスの演算に用いるルールを予め記憶している。このルールは、上述した第1の実施の形態におけるルールと同等である。また、記憶部214−1は、トータルステータス設定部213−1がトータル室温ステータスの演算に用いるルールも予め記憶している。本実施の形態において、そのルールは、最も多い室温ステータスをトータル室温ステータスとするものである。例えば、ひとつでも、室温ステータスに「能力不足」があった場合には、トータル室温ステータスを「能力不足」とし、冷房では給気温度を1℃下げ、暖房では給気温度を1℃上げる。また、室温ステータスがすべて「過剰」の場合には、トータル室温ステータスを過剰とし、冷房では給気温度を1℃上げて、暖房では給気温度を1℃下げる。
【0062】
結露防止部215−1は、トータルステータス演算部213−1により設定されたトータル結露ステータスおよびトータル室温ステータスに基づいて、給気温度を設定する。この詳細について以下に示す。
【0063】
まず、結露防止部215−1は、トータル結露ステータスに基づく給気温度、より具体的には、現在の給気温度との差分を演算する。本実施の形態においては、一例として冷房運転の場合、トータル結露ステータスが「危険」のときには、給気温度を現在の温度から2℃下降させる。また、トータル結露ステータスが「注意」のときには、給気温度を現在の温度から1℃下降させる。また、トータル結露ステータスが「ドライ」のときには、給気温度を現在の温度から0.5℃上昇させる。
【0064】
また、結露防止部215−1は、トータル室温ステータスに基づく給気温度の差分を演算する。本実施の形態においては、一例として冷房運転の場合、トータル室温ステータスが「過剰」のときには、給気温度の差分を所定の値(例えば、0.5℃)として、現在の給気温度からその値だけだけ上昇させる。また、トータル室温ステータスが「能力不足」のときには、差分の値を所定の値(例えば、−1℃)とし、給気温度を現在の温度からその値だけ下降させる。また、トータル室温ステータスが「適正」のときには、差分を±0℃とし、給気温度を変更しない。
【0065】
トータル結露ステータスに基づく給気温度の差分と、トータル室温ステータスに基づく給気温度の差分とがそれぞれ演算されると、結露防止部215−1は、これら2つの差分の値を加算して、その結果が所定の範囲内にあるか否かを確認する。例えば、2つの差分の値を加算した値が±2℃以内など所定の範囲内である場合には、その値を現在の温度に付加し新たな給気温度として設定する一方、その値が、例えば+2℃を越える場合は、+2℃とし、−2℃を越える場合は−2℃として、現在の給気温度に付加して新たな給気温度として設定する。このように、給気温度の差分を所定の上限値と下限値との間に抑える「上下限処理」を行うのは、給気温度の変更幅が大きすぎると、空調システムが給気温度制御の変化に応答できない恐れがあるからである。上限値および下限値は、被制御空間の空調負荷や外調機等の容量に基づいて定めればよい。
このような上下限処理を行った後の差分と現在の給気温度とから新しい給気温度が設定される。
【0066】
なお、上述した説明では、トータル結露ステータスに基づいて算出された給気温度の差分と、トータル室温ステータスに基づいて算出された給気温度の差分とを加算して助加減処理を行う態様について説明したが、2つの差分を加算する代わりに、両者を比較して小さい値を採用するようにしてもよい。
湿気の多い季節の変わり目などでは、室温は適正であるもの結露の恐れがある場合がある。このような場合、本実施の形態では、トータル結露ステータスに応じて給気温度が下降するので、結露の発生を防ぐことができる。
【0067】
このように、本実施の形態によれば、トータル結露ステータスとともにトータル室温ステータスを設定することにより、より効果的に結露の発生を防ぐことができる。
なお、本実施の形態においては、被空調空間の室温とその被空調空間に対して目標温度として設定された設定温度とに基づいて、室温ステータスおよびトータル室温ステータスを介して給気温度を求めるものとして説明したが、本発明においては、これを他の制御方法、例えば、比例制御(P制御)や比例積分制御(PI制御)、比例積分微分制御(PID制御)によって求めてもよい。
【0068】
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。なお、本実施の形態は、上述した第2の実施の形態における外調機13の除湿機能を利用したものである。したがって、本実施の形態において、第2の実施の形態と同等の構成要素については、同じ名称および符号を付して適宜説明を省略する。
【0069】
図11に示すように、本実施の形態に係る空気調和システム3は、被空調空間11a〜11cの天井裏に配設されたチルドビーム12a〜12cと、これらのチルドビーム12a〜12cに外気を熱処理した調和空気および熱処理した冷媒(冷温水)を供給する外調機13−1とから構成される。外調機13−1と各チルドビーム12a〜12cの熱交換器121a〜121cとの間に設けられた冷媒用配管14には、各熱交換器121a〜121cに供給される冷媒の量を調整するバルブ14a〜14cが設けられている。また、外調機13とチルドビーム12a〜12cとをつなぐダクト15には、チルドビーム12a〜12cを介して各被空調空間11a〜11cに供給される調和空気の量を調整する変風量ユニット15a〜15cが設けられている。また、外調機13−1には、熱源装置から外調機13−1に導入される冷媒の量を調整するバルブ16a,16bが設けられている。
一方、被空調空間11a〜11cには、被空調空間内の室内温度および室内露点温度を計測する室内センサ17a〜17cが配設されている。また、冷媒用配管14には、外調機13−1からチルドビーム12a〜12cに供給される冷媒の送水温度を計測する送水温度センサ18が設けられている。また、ダクト15には、外調機13−1から供給される調和空気の給気温度を計測する給気センサ19と、外調機13−1からの給気の露点温度(以下、「給気露点温度」と言う。)を計測する給気露点温度センサ30とが設けられている。
このような空気調和システム3を制御する制御装置として、室内センサ17a〜17cの計測結果に基づいてバルブ14a〜14cの開度を制御するDDC20−1a〜20−1cと、室内センサ17a〜17c、送水温度センサ18、給気センサ19およびDDC20a〜20cおよび給気露点温度センサ30から取得する各種情報に基づいて外調機13−1の運転およびバルブ16の開度を制御するDDC21−1とを備えている。
なお、図11においても、同じ被空調空間11a〜11cに対応づけられた構成要素には、同じ添え字a〜cを付している。
【0070】
外調機13−1は、熱源装置から供給される温水HWにより外気を加熱する加熱コイル131と、熱源装置から供給される冷水CWにより外気を冷却する冷却コイル132と、加熱コイル131または冷却コイル132により熱処理が行われた外気(給気)を送出するファン133とを備えている。ここで、外調機13−1は、それらの構成要素により除湿を行う機能を備えている。なお、外調機13−1には、冷却再加熱やデシカントなどの除湿専用のための装置をさらに設けるようにしてもよい。
【0071】
DDC21−2は、DDC20−1a〜20−1cの上位装置として設けられており、CPUなどの演算装置、メモリやハードディスクなどの記録装置等を備えたコンピュータと、このコンピュータにインストールされたプログラムとから構成される。すなわち、ハードウェア装置とソフトウェアが協働することによって、上記ハードウェア資源がプログラムによって制御され、図12に示すように、I/F部211、駆動部212、トータルステータス演算部213−1、記憶部214−1および結露防止部215−2が実現される。
【0072】
結露防止部215−2は、制御部として機能し、トータルステータス演算部213−1により演算されたトータル室温ステータスに基づいて給気温度を演算する。また、結露防止部215−2は、トータルステータス演算部213−1により演算されたトータル結露ステータスに基づいて給気露点温度を演算して設定する。
【0073】
給気温度に関しては、トータル室温ステータスが「能力不足」の場合には、冷房で給気温度を1℃下げ、暖房で給気温度を1℃上げる。また、室温ステータスが全て「過剰」の場合には、トータル室温ステータスを「過剰」とし、冷房では給気温度を1℃上げて、暖房では給気温度を1℃下げる。
【0074】
一方、給気露点温度については、トータル結露ステータスが「危険」の場合には、給気露点温度を2℃下降させる。また、トータル結露ステータスが「注意」の場合には、給気露点温度を1℃下降させる。また、トータル結露ステータスが「ドライ」の場合には、給気露点温度を0.5℃上昇させる。このような給気露点温度については、給気露点温度センサ30によって計測される。
【0075】
このようにして給気温度および給気露点温度が設定されると、駆動部212は、その設定された給気温度および給気露点温度に基づいて、外調機13等を制御する。ここで、給気露点温度については、外調機13の除湿機能を用いて制御される。
【0076】
このように、本実施の形態によれば、トータル結露ステータスに基づいて給気露点温度が制御されるので、結露の発生をより効果的に防ぐことができる。
【0077】
[第4の実施の形態]
次に、本発明の第4の実施の形態について説明する。なお、本実施の形態は、上述した第1の実施の形態にさらに外気の露点温度を測定する外気露点温度センサを設けたものである。したがって、本実施の形態において、第1の実施の形態と同等の構成要素については、同じ名称および符号を付して適宜説明を省略する。
【0078】
図13に示すように、本実施の形態に係る空気調和システム4は、被空調空間11a〜11cの天井裏に配設されたチルドビーム12a〜12cと、これらのチルドビーム12a〜12cに外気を熱処理した調和空気および熱処理した冷媒(冷温水)を供給する外調機13とから構成される。外調機13と各チルドビーム12a〜12cの熱交換器121a〜121cとの間に設けられた冷媒用配管14には、各熱交換器121a〜121cに供給される冷媒の量を調整するバルブ14a〜14cが設けられている。また、外調機13とチルドビーム12a〜12cとをつなぐダクト15には、チルドビーム12a〜12cを介して各被空調空間11a〜11cに供給される調和空気の量を調整する変風量ユニット15a〜15cが設けられている。また、外調機13には、熱源装置から外調機13に導入される冷媒の量を調整するバルブ16a,16bが設けられている。
一方、被空調空間11a〜11cには、被空調空間内の室内温度および室内露点温度を計測する室内センサ17a〜17cが配設されている。また、冷媒用配管14には、外調機13からチルドビーム12a〜12cに供給される冷媒の送水温度を計測する送水温度センサ18が設けられている。また、ダクト15には、外調機13から供給される調和空気の給気温度を計測する給気センサ19とを備えている。さらに、空気調和システム4の外部には、外気の露点温度を測定する外気露点温度センサ40が設けられている。
このような空気調和システム4を制御する制御装置として、室内センサ17a〜17cの計測結果に基づいてバルブ14a〜14cの開度を制御するDDC20a〜20cと、室内センサ17a〜17c、送水温度センサ18、給気センサ19、外気露点温度センサ40およびDDC20a〜20cから取得する各種情報に基づいて外調機13の運転およびバルブ16の開度を制御するDDC21−3とを備えている。
なお、図13においても、同じ被空調空間11a〜11cに対応づけられた構成要素には、同じ添え字a〜cを付している。
【0079】
DDC21−3は、DDC20a〜20cの上位装置として設けられており、CPUなどの演算装置、メモリやハードディスクなどの記録装置等を備えたコンピュータと、このコンピュータにインストールされたプログラムとから構成される。すなわち、ハードウェア装置とソフトウェアが協働することによって、上記ハードウェア資源がプログラムによって制御され、図14に示すように、I/F部211、駆動部212、トータルステータス演算部213、記憶部214および結露防止部215−3が実現される。
【0080】
結露防止部215−3は、制御部として機能し、トータル結露ステータス演算部213により演算されたトータル結露ステータスに基づいて、給気温度を演算する。また、結露防止部215−3は、トータル結露ステータスが「危険」または「注意」であり、かつ、外気露点温度センサ40で計測された外気の露点温度が、室内センサ17a〜17cにより計測された被空調空間11a〜11cの室内露点温度のいずれかよりも高い場合、外調機13のファン133の回転数を上昇させる。
【0081】
このようにして給気温度およびファン133の回転数が設定されると、駆動部212は、その設定された給気温度および回転数に基づいて、外調機13等を制御する。
【0082】
トータル結露ステータスからチルドビーム12a〜12cが結露する可能性が高く、かつ屋外の露点温度が高い、すなわち湿度が高い場合には、外気が直接被空調空間11a〜11cに流入すると結露が発生する恐れがある。外気の被空調空間11a〜11cへの流入経路としては、すきま風やドア・窓の開閉などが想定される。そこで、そのような外気の流入を防ぐために、ファン133の回転数を上昇させ、給気の風量を増大させる。これにより、被空調空間11a〜11c内の気圧を大気圧よりも高めて、被空調空間11a〜11c内部の空気が外部へ流出させることにより、外気が被空調空間11a〜11cに流入することを防ぐことができる。
【0083】
以上説明したように、本実施の形態によれば、トータル結露ステータスに基づいて給気の風量を増大させることにより、外気が被空調空間11a〜11c内部に流入することを防ぐことができるので、結果として、結露が生じることを防ぐことができる。
【0084】
なお、本実施の形態は、上述した第2,第3の実施の形態にも適用できることは言うまでもない。
【0085】
また、上述した第1〜第4の実施の形態では、被空調空間11a〜11cの露点温度と、送水温度センサ18により計測された送水温度とを比較し、これらの差分から結露ステータスを演算する場合を例に説明したが、送水温度の代わりに熱交換器121a〜121cの表面の温度を用いるようにしてもよい。この表面の温度は、熱交換器121a〜121cの表面に取り付けた温度センサにより測定することができる。このようにしても、上述した第1〜第4の実施の形態と同等の作用効果を実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明は、家屋やビルなど複数の部屋を備えた建造物に設けられた空気調和システムに適用することができる。
【符号の説明】
【0087】
1〜3…空気調和システム、11a〜11c…被空調空間、12a〜12n…チルドビーム、13,13−1…外調機、14…冷媒用配管、14a〜14c…バルブ、15…ダクト、15a〜15c…変風量ユニット、16a,16b…バルブ、17a〜17c…室内センサ、18…送水温度センサ、19…給気センサ、20a〜20c,20−1a〜20−1c…DDC、21,21−1〜21−3…DDC、30…給気露点温度センサ、40…外気露点温度センサ、121a〜121c…熱交換器、122a〜122c…ダクト、131…加熱コイル、132…冷却コイル、133…ファン、201…I/F部、202…比較部、203…ステータス演算部、204…記憶部、211…I/F部、212…駆動部、213,213−1…トータルステータス演算部、214,214−1…記憶部、215,215−1〜3…結露防止部、300…チルドビーム、301…熱交換器、302…ダクト、303…筐体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の被空調空間の天井裏にそれぞれに配設された空調装置であって、外調機によって熱処理された調和空気を被空調空間に供給するダクトと、熱処理された冷媒が供給される熱交換器とを備えた空調装置に対し、前記ダクトを介して供給する前記調和空気の給気温度を制御する空調制御装置であって、
前記被空調空間のそれぞれに設けられた第1のセンサにより測定された当該被空調空間の露点温度と、第2のセンサにより測定された前記熱交換器に供給される前記冷媒の温度および前記熱交換器の表面の温度のうちの一方とに基づいて、前記熱交換器に結露が発生する可能性を示す結露ステータスを前記空調装置ごとに演算する第1の演算部と、
この第1の演算部により演算された複数の前記結露ステータスに基づいて、複数の前記空調装置の前記熱交換器のいずれかに結露が発生する可能性を示すトータル結露ステータスを演算する第2の演算部と、
この第2の演算部により演算された前記トータル結露ステータスに基づいて、前記外調機から供給される前記調和空気の給気温度を制御する制御部と
を備えたことを特徴とする空調制御装置。
【請求項2】
前記第1のセンサにより測定された前記露点温度と前記第2のセンサにより測定された前記温度との差分と、前記結露ステータスとの関係を記憶した第1の記憶部と、
前記空調装置のそれぞれに対して演算された前記結露ステータスの組合せと、前記トータル結露ステータスとの関係を記憶した第2の記憶部と、
前記トータル結露ステータスと前記調和空気の給気温度の制御量との関係を記憶した第3の記憶部と
をさらに備え、
前記第1の演算部は、前記第1のセンサにより測定された前記露点温度および前記第2のセンサにより測定された前記温度と、前記第1の記憶部に記憶された関係とに基づいて、前記結露ステータスを演算し、
前記第2の演算部は、前記第1の演算部によって演算された前記空調装置ごとの結露ステータスと前記第2の記憶部に記憶された関係とに基づいて前記トータル結露ステータスを演算し、
前記制御部は、前記トータル結露ステータスと前記第3の記憶部に記憶された関係と前記調和空気の現在の給気温度とに基づいて、前記調和空気の給気温度を決定する
ことを特徴とする請求項1記載の空調制御装置。
【請求項3】
前記被空調空間のそれぞれに設けられた第3のセンサにより測定された当該被空調空間の室温と当該被空調空間に目標温度として設定された設定温度とに基づいて、当該被空調空間への給気温度を演算する第3の演算部
をさらに備え、
前記制御部は、前記第2の演算部により演算された前記トータル結露ステータスに基づいて求められた前記調和空気の給気温度と前記第3の演算部によって演算された給気温度とに基づいて、前記調和空気の温度を制御する
ことを特徴とする請求項1または2記載の空調制御装置。
【請求項4】
複数の被空調空間の天井裏にそれぞれに配設された空調装置であって、除湿機能を有する外調機によって熱処理された調和空気を被空調空間に供給するダクトと、熱処理された冷媒が供給される熱交換器とを備えた空調装置に対し、前記ダクトを介して供給する前記調和空気の露点温度を制御する空調制御システムであって、
前記被空調空間のそれぞれに設けられた第1のセンサにより測定された当該被空調空間の露点温度と、第2のセンサにより測定された前記熱交換器に供給される前記冷媒の温度および前記熱交換器の表面の温度のうちの一方とに基づいて、前記熱交換器に結露が発生する可能性を示す結露ステータスを前記空調装置それぞれごとに演算する第1の演算部と、
この第1の演算部により演算された複数の前記結露ステータスに基づいて、複数の前記空調装置の前記熱交換器のいずれかに結露が発生する可能性を示すトータル結露ステータスを演算する第2の演算部と、
前記第2の演算部により演算された前記トータル結露ステータスに基づいて、前記調和空気の露点温度を制御する制御部と
を備えたことを特徴とする空調制御装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記第2の演算部により演算された前記トータル結露ステータスおよび前記第5のセンサにより測定された前記外気の露点温度に基づいて、前記外調機からの調和空気の風量を制御する風量制御部を有する
ことを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の空調制御装置。
【請求項6】
複数の被空調空間の天井裏にそれぞれに配設された空調装置であって、外調機によって熱処理された調和空気を被空調空間に供給するダクトと、熱処理された冷媒が供給される熱交換器とを備えた空調装置に対し、前記ダクトを介して供給する前記調和空気の給気温度を制御する空調制御方法であって、
前記被空調空間のそれぞれに設けられた第1のセンサにより測定された当該被空調空間の露点温度と、第2のセンサにより測定された前記熱交換器に供給される前記冷媒の温度および前記熱交換器の表面の温度のうちの一方とに基づいて、前記熱交換器に結露が発生する可能性を示す結露ステータスを前記空調装置ごとに演算する第1の演算ステップと、
この第1の演算ステップにより演算された複数の前記結露ステータスに基づいて、複数の前記空調装置の前記熱交換器のいずれかに結露が発生する可能性を示すトータル結露ステータスを演算する第2の演算ステップと、
この第2の演算ステップにより演算された前記トータル結露ステータスに基づいて、前記外調機から供給される前記調和空気の給気温度を制御する制御ステップと
を有することを特徴とする空調制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−92281(P2013−92281A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−233597(P2011−233597)
【出願日】平成23年10月25日(2011.10.25)
【出願人】(000006666)アズビル株式会社 (1,808)
【Fターム(参考)】