説明

空調機器の熱交換器取付構造

【課題】 熱交換器の伝熱管の開口側先端に、U字管を正確に溶接したのちに、熱交換器を背面パネルへ容易に取付けできるファンコンベクタを提供する。
【解決手段】 前面が開放された背面パネルと、同背面パネルの前面に装着される前面パネルとで本体を構成し、背面パネルの上部に吸込口を、下部に吹出口を設け、これら吸込口と吹出口とを結ぶ空気通路に、多数のフィン8aと、複数のU字状の伝熱管8bと、フィンの両側部に設けられ背面パネルに取り付けられる側板11と、伝熱管の開口側先端に溶接されるU字管8cとからなる熱交換器8と、同熱交換器により熱交換された空気を吹出口から送出する送風ファン9とを設けてなり、両側板に伝熱管に対向させたコ字状のフランジ部11a を設けるとともに、側板の長手方向に熱交換器の取付部11b1,11b2,11b3,11b4 を設けてなる構成となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調機器の熱交換器に係わり、より詳しくは、筐体の背面パネル等に取付ける熱交換器の取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の空調機器の熱交換器取付構造には、例えば図6で示すようものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
図6において、熱交換器4’は多数のフィン4a’と、これに直交して両先端を突出させた複数のU字状の伝熱管4b’と、同伝熱管4b’の開口側先端に溶接されるU字管4c’と、前記フィン4a’の両側部に固定される後述する側板とから構成されている。
【0003】
前記フィン4a’の両側部には、第一側板7’と、同第一側板7’に接続する接続部およびベース2’に取り付ける取付部からなる第二側板8’とに分割された側板が固定される構成となっており、これによって、前記フィン4a’の両側部に前記第一側板7’を固定し、前記伝熱管4b’の開口側先端に前記U字管4c’を溶接し、前記第一側板7’に接続した前記第二側板8’を前記ベース2’に取付できるようにした構成となる。
【0004】
また、前記第一側板7’に前記第二側板8’を接続する接続部は、ねじ孔7c’を備えて前記第一側板7’に設けたフランジ7b’と、前記ねじ孔7c’に対応して、前記第二側板8’に設けた接続孔8a’とからなり、同第二側板8’を前記ベース2’に取り付ける取付部は、同ベース2’に設けた取付溝3a’と、同取付溝3a’に対応して、前記第二側板8’に設けた取付片8b’とからなり、前記フランジ7b’のねじ孔7c’に前記接続孔8a’を挿通したねじ9’で螺着して前記接続部を接続し、前記取付片8b’を前記取付溝3a’に嵌入して前記第二側板8’を前記ベース2’に取り付けるようにした構成となっており、また、前記第一側板7’のフランジ7b’は、前記伝熱管4b’の突出部に比して小さい寸法形状で形成した構成となっている。
【0005】
これによって、図6(B)で示すように、前記フィン4a’の両側に挿通孔7a’を備えた前記第一側板7’を固定したのちに、前記伝熱管4b’の開口側先端に前記U字管4c’を溶接する際、前記突出部の突出寸法aに比して前記フランジ7b’の寸法bが小さくなるため、前記U字管4c’を溶接する際、溶接炎Aが前記フランジ7b’の先端で遮蔽されることなく、正確な溶接作業を行えるようにした構成となる。
【0006】
しかしながら、上記従来の構造では、側板が第一側板と第二側板の2枚用いられ部品点数が増え、かつ、第一側板のフランジは片側のみであり、強度的に十分ではない。
【0007】
【特許文献1】特開平10−26400号公報(3〜4頁、第2図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記の問題点に鑑み、熱交換器の両側板のフランジ部の高さをU字管の溶接に支障のない高さに制限し,フランジ部の端部に、背面パネルへの取付部を形成すことにより、伝熱管の開口側先端にU字管を正確に溶接したのちに、熱交換器を背面パネルへ容易に取付けることができる空調機器の熱交換器取付構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上述の課題を解決するため、筐体の吸込口と吹出口とを結ぶ空気通路に、多数のフィンと、これに直交した伝熱管と、前記フィンの両側部に、同フィンと併設して設けられた側板と、前記伝熱管に溶接されるU字管とからなる熱交換器を設けてなり、
前記両側板に前記伝熱管に対向させたコ字状のフランジ部を設けるとともに、前記側板の長手方向に前記熱交換器の取付部を設けてなる構成となっている。
【0010】
また、筐体の背面上部に設けられた吸込口と、前面下部に設けられた送風ケーシングからなる吹出口と、前記吸込口と前記吹出口とを結ぶ空気通路に、多数のフィンと、これに直交した伝熱管と、前記フィンの両側部に、同フィンと併設して設けられた側板と、前記伝熱管に溶接されるU字管とからなる熱交換器を設けてなり、
前記両側板に前記伝熱管に対向させたコ字状のフランジ部を設けるとともに、前記側板の長手方向の両端に前記熱交換器の取付部をそれぞれ設け、同取付部の一方を前記筐体の背面側に、他方を前記送風ケーシング側に取付けてなる構成となっている。
【0011】
また、前記取付部は前記フランジ部が延設されてなる構成となっている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、請求項1の両側板に伝熱管に対向させたコ字状のフランジ部を設けるとともに、側板の長手方向に熱交換器の取付部を設けることにより、伝熱管の開口側先端にU字管を正確に溶接したのちに、熱交換器を背面パネルへ容易に取付けることができる。請求項2の両側板に伝熱管に対向させたコ字状のフランジ部を設けるとともに、側板の長手方向の両端に熱交換器の取付部をそれぞれ設け、同取付部の一方を筐体の背面側に、他方を前記送風ケーシング側に取付けることにより、取付部を取付けるための、筐体および送風ケーシングに設けられるボスの高さを低くでき、取付けが容易にできる。請求項3の取付部はフランジ部が延設されてなることにより、部品点数を増やさず一体成形することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を、ファンコンベクタと呼ばれる温水暖房機の室内機を例に、添付図面に基づいた実施例として詳細に説明する。
図1(A)は本発明におけるファンコンベクタの要部縦断面図で,(B)は熱交換器の取付け部分の要部斜視図のある。
図2は本発明における背面パネルに熱交換器を取付けた状態の斜視図である。
図3は本発明における熱交換器の斜視図である。
図4は本発明におけるU字管の溶接を説明するための要部斜視図である。
【実施例1】
【0014】
以下、本発明の実施例1を図1、図2、図3および図4に基づいて説明する。
図1および図2において、1はファンコンベクタ本体を構成する筐体、2は床面に載置される前記筐体1を構成するスタンド、3は前面が開放された樹脂製の背面パネル、4は後面が開放され前記背面パネル3に被着される前面パネルで、これらにより本体を構成している。
【0015】
5は前記筐体1の背面上部に設けられた吸込口、6は前面下部に設けられた送風ファンケーシング7からなる吹出口、8はこれら吸込口5および吹出口6を結ぶ空気通路7に設けられ、前記吸込口5に臨ませて、温水を循環することにより前記吸込口5から吸い込まれた吸込空気を熱交換する熱交換器、9は前記送風ファンケーシング7に収納され、前記熱交換器8により熱交換された温風を前記吹出口6に送出するための送風ファン、10は前記筐体1の上面、前面および両側面との間に所定の間隔をなし同筐体1内に配置され、空気通路12を形成してなる遮熱板で、前記熱交換器8により熱交換された温風による熱を、前記前面パネル4に伝わらないようにしている。
【0016】
図3において、熱交換器8は多数のフィン8aと、これに直交して両先端を突出させたU字状の伝熱管8bと、同伝熱管8bの開口側先端に溶接されるU字管8cと、前記フィン8aの両側部に固定される後述する側板11とから構成されている。
【0017】
前記フィン8aの両側部には、図2及び図3に示すように、前記背面パネル3に取り付ける取付部11b1、11b2、11b3及び11b4を備えた側板11が固定される構成となっている。前記取付部11b1、11b2、11b3及び11b4をそれぞれ前記背面パネル3に取り付けることにより、前記側板11を前記背面パネル3に取付できるようにした構成となる。
【0018】
図4(A),(B)に示すように、前記両側板11に前記伝熱管8bに対向させたコ字状のフランジ部11aをそれぞれ形成し、このフランジ部11aの高さHを前記U字管8cの溶接に支障のない高さ(例えば、10mm以下)に制限している。即ち、フランジ部11aは、前記伝熱管8bの突出部の高さMに比して小さい寸法形状(H<M)で形成した構成となっている。
従って、前記伝熱管8bの開口側先端に前記U字管8cを溶接する際、溶接炎Aが前記フランジ部11aの先端で遮蔽されることなく、正確な溶接作業を行えるようにした構成となる。
【0019】
また、対向させたコ字状の前記両フランジ部11aの長手方向の端部に、前記熱交換器8の前記取付部11b1、11b2、11b3及び11b4をそれぞれ設けるとともに、同取付部11b1、11b2、11b3及び11b4にネジを挿通する挿通孔11c1、11c2、11c3及び11c4をそれぞれ設ける。前記取付部11b1及び11b2は、前記背面パネル3側のフランジ部11aの上部に設けられ、前記取付部11b3及び11b4は、前記前面パネル4側のフランジ部11aの下部に設けられている。
【0020】
そして、前記挿通孔11c1及び11c2に前記本体の前面側よりネジ(図示せず)を螺着し、前記フランジ部11aの上部の取付部11b1及び11b2を前記筐体1の背面パネル3の上部に取付け、前記挿通孔11c3及び11c4に前記本体の前面側よりネジを螺着し、前記フランジ部11aの下部の取付部11b3及び11b4を前記送風ファンケーシング7の上部に取付け、図1(A)に示すように、前記熱交換器8を前記吸込口5に沿って斜めに取付けてなる構成となっている。
【0021】
上記構成において、前記熱交換器8をコ字状の前記フランジ部11aの背面側と前面側とで保持する構成となっているため、片側のフランジ部11aのみで保持する場合に対し、前記熱交換器8の荷重が分散されるため安全性が向上する。
また、前記熱交換器8を前記吸込口5に沿って斜めに配置した場合でも、図2に示すように前記取付部11b1、11b2、11b3及び11b4が前面側に向かって露になるので、取付作業が容易にできるという効果がある。
【0022】
図5は本発明における他の実施例を示したもので、前記両フランジ部11aの上端部に、前記フィン8aの長手方向の端面より延出して前記背面パネル3への取付部11bを形成し、同取付部11bにネジを挿通する挿通孔11cを設けると共に、前記両フランジ部11aの下端部に、下方に突出する爪12をそれぞれ設け、図示しないが、前記背面パネル3に設けられた爪受部に、前記爪12を挿入し、前記挿通孔11cに前記本体前面側よりネジ(図示せず)を螺着し前記背面パネル3に前記熱交換器8を取り付けてなる構成となっている。このため、前記背面パネル3への取付けネジは2本で済み、上記第1の実施例に比べ2本削減でき作業性がより向上する。
【0023】
上記に説明したように、本発明によれば、前記熱交換器8の前記両側板11に前記伝熱管8bに対向させたコ字状のフランジ部11aをそれぞれ形成し、このフランジ部11aの高さを前記U字管8cの溶接に支障のない高さに制限し,前記フランジ部11aの端部に、前記背面パネル3への取付部11bを形成し、同取付部11bにネジを螺着し前記背面パネル3に前記熱交換器8を取り付けてなる構成とすることにより、前記伝熱管8bの開口側先端に前記U字管8cを正確に溶接したのちに、前記熱交換器8を背面パネル3へ容易に取付けできるファンコンベクタとなる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明におけるファンコンベクタの縦断面図である。
【図2】本発明における背面パネルに熱交換器を取付けた状態の斜視図である。
【図3】本発明における熱交換器の外観斜視図である。
【図4】本発明における熱交換器の要部斜視図である。
【図5】本発明における他の実施例を示す熱交換器の外観斜視図である。
【図6】従来例における熱交換器の取付け構造を示す図で、(A)は分解斜視図で、(B)は(A)の熱交換器を下から見た図である。
【符号の説明】
【0025】
1 筐体(ファンコンベクタ)
2 ベース
3 背面パネル
4 前面パネル
5 吸込口
6 吹出口
7 送風ファンケーシング
8 熱交換器
8a フィン
8b 伝熱管
8c U字管
9 送風ファン
10 遮熱板
11 側板
11a フランジ部
11b1〜11b4 取付部
11c1〜11c4 挿通孔
12 爪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体の吸込口と吹出口とを結ぶ空気通路に、多数のフィンと、これに直交した伝熱管と、前記フィンの両側部に、同フィンと併設して設けられた側板と、前記伝熱管に溶接されるU字管とからなる熱交換器を設けてなり、
前記両側板に前記伝熱管に対向させたコ字状のフランジ部を設けるとともに、前記側板の長手方向に前記熱交換器の取付部を設けてなることを特徴とする空調機器の熱交換器取付構造。
【請求項2】
筐体の背面上部に設けられた吸込口と、前面下部に設けられた送風ケーシングからなる吹出口と、前記吸込口と前記吹出口とを結ぶ空気通路に、多数のフィンと、これに直交した伝熱管と、前記フィンの両側部に、同フィンと併設して設けられた側板と、前記伝熱管に溶接されるU字管とからなる熱交換器を設けてなり、
前記両側板に前記伝熱管に対向させたコ字状のフランジ部を設けるとともに、前記側板の長手方向の両端に前記熱交換器の取付部をそれぞれ設け、同取付部の一方を前記筐体の背面側に、他方を前記送風ケーシング側に取付けてなることを特徴とする空調機器の熱交換器取付構造。
【請求項3】
前記取付部は前記フランジ部が延設されてなることを特徴とする請求項1または2に記載の空調機器の熱交換器取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−40640(P2007−40640A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−227354(P2005−227354)
【出願日】平成17年8月5日(2005.8.5)
【出願人】(000006611)株式会社富士通ゼネラル (1,266)
【Fターム(参考)】