説明

突起形成方法及びそれに使用される回転刃物及び切削装置

【課題】薄板、厚板、ブロック材の表面を切削して、各種の突起を格子状に形成するための方法。
【解決手段】回転刃物11は、外周に切削刃16が形成された回転盤12又は先端に切削刃が形成された回転軸であって、回転刃物とワークを相対的に前後左右に移動させ、ワークに突起を格子状に形成するものである。切削装置は、ワークを固定する固定台と、前記回転刃物が装着された回転駆動体を備え、固定台と回転駆動体を相対的に前後左右方向に移動させ、多数本の格子状の溝とそれら格子状の溝に囲まれた多数の突起を形成可能としたものである。回転刃物による切削片の飛散を防止する飛散防止具を備えることもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は薄板、厚板、ブロック材といった各種ワークの表面を切削して、多数の突起を格子状に形成するための方法及びそれに使用される回転刃物及び切削装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
多数の突起を備えた器具や部材は従来から各種ある。それらの例として突起付足踏み台、突起付マッサージ器(特許文献1参照)等がある。
【0003】
【特許文献1】特開2005−160620号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記突起付足踏み台や突起付マッサージ器は指圧目的のものであるため、突起が指圧に適した大きさ、形状、硬さに成形されており、指圧以外の用途に使用することはできなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本件出願の発明は、足や背中の指圧に使用できるだけでなく、椅子やベンチ、スノコ、枕、敷物、下駄や雪駄のような履物、滑り止め、天井材、床材、壁材、反響防止用壁材といった各種用途に使用可能な突起材、例えば、図9(a)(b)に示すように、木材1の表面に多数の突起4が前後左右に格子状に形成された突起材3の製造方法とそれに使用される回転刃物と製造装置を提供するものである。
【0006】
本件発明の突起形成方法は、請求項1に記載したように、ワークと回転刃物の双方又はいずれか一方を移動させて、回転刃物によりワーク上面を切削してその上面に溝と突起の一部を一列又は二列以上形成し、ワークと回転刃物の双方又はいずれか一方を前記移動方向と交差する方向に移動させてワーク上面をその移動方向に切削して、先に形成された溝と突起の一部と交差する方向に溝と突起の残りの一部を一列又は二列以上形成して多数の突起を格子状に形成するようにした。
【0007】
本件発明の回転刃物は、請求項2に記載したように、外周に切削刃が形成された回転盤を回転させながら回転盤とワークを相対的に前後左右に移動させることにより、ワークに突起を格子状に形成できる回転刃物であり、前記切削刃は回転盤の外周側を刃先とし、刃先から根元側に弧状又は角型に凹陥した逃げ部を形成し、切削刃をその刃幅方向に二枚以上並べて形成した。
【0008】
本件発明の回転刃物は、請求項3に記載したように、前記回転刃物において、先端に切削刃が形成された軸を回転させながら軸とワークを相対的に前後左右に移動させることにより、ワークに突起を格子状に形成できる回転刃物であり、前記切削刃を軸の先端中心から外側上方広がりに弧状又は角型に凹陥して形成し、切削刃を軸の周方向に一又は間隔をあけて二以上形成した。
【0009】
本件発明の切削装置は、請求項4に記載したように、ワークを固定する固定台と、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の回転刃物が一又は二以上並べて装着された回転駆動体を備え、回転駆動体は固定台の上方に移動可能に配置され、前記固定台と回転駆動体は相対的に前後左右方向に移動可能であり、回転刃物は固定台と回転駆動体が相対的に一方向に移動することによりワークを切削して溝と突起の一部を一列または二列以上形成し、固定台とワークを相対的に前記移動方向と交差する方向に移動させることによりその移動方向にワークを切削して、先に形成された溝と突起の一部と交差する方向に溝と突起の残りの一部を一列又は二列以上形成して、多数の突起を格子状に形成できるようにした。
【0010】
本件発明の切削装置は、請求項5に記載したように、前記切削装置において、回転駆動体に装着された回転刃物の外側に、その回転刃物の切削により生ずる切削片の飛散を防止する飛散防止具を設けた。
【発明の効果】
【0011】
本件出願の請求項1記載の突起形成方法は次のような効果がある。
(1)ワークと回転刃物を相対的に前後左右に移動させることで、多数本の溝を格子状に形成すると同時にそれら溝の両側に突起の一部を形成することができるため、多数の突起を効率よく形成することができる。
(2)回転刃物の切削刃のサイズを変えるだけで、突起の高さ、大きさ等を所望サイズに変えることができる。
(3)溝と突起をワーク上面に形成するので、ワーク上面が平面状であれば、ワーク自体の肉厚や形状に関係なく多数の突起を格子配列で形成することができる。
【0012】
本件出願の請求項2記載の回転刃物は次のような効果がある。
(1)回転刃物を回転させながら前後左右に移動させるだけで、ワーク上面に格子状の溝及び突起を同時に形成することができるため、作業性が良い。
(2)刃幅方向に二以上の切削刃が形成された回転刃物を使用すれば、一度の移動で多くの溝及び突起を切削形成することができ、切削効率が良い。
【0013】
本件出願の請求項3記載の回転刃物は次のような効果がある。
(1)先端に切削刃が形成された軸を回転させながら軸とワークを相対的に前後左右に移動させることにより、ワークに溝と突起を同時に形成できるので、多数の突起を格子状に形成することができる。
(2)軸を回転させながら前後左右に移動させるだけでワーク上面に格子状の溝及び突起を形成することができるため、ワーク上面が平面であれば、ワーク自体の形状やサイズに関係なく多数の突起を格子状に形成することができる。
(3)回転刃物がドリル式であるため、ワーク上面の所望位置にのみ多数の突起を格子状に形成することもできる。
(4)切削刃が軸の周方向に二枚以上形成されれば、切削効率が向上する。
【0014】
本件出願の請求項4記載の切削装置は次のような効果がある。
(1)固定台と回転駆動体を相対的に前後左右方向に移動させるだけで、回転刃物によってワーク上面を切削して、多数の突起を格子状に形成できるので、ワーク上面に多数の突起を容易に形成することができる。
(2)回転駆動体に取り付ける回転刃物の切削刃の形状、サイズを変えることにより、ワークに形成される突起形状を変えることができる。
(3)回転駆動体に回転刃物を二以上装着すれば、一度の回転によって形成される溝及び突起の数が多くなるため切削効率が向上する。
【0015】
本件出願の請求項5記載の切削装置は次のような効果がある。
(1)回転駆動体に装着された回転刃物の外側に、切削片の飛散を防止する飛散防止具を設けたので、切削片が切削装置周辺に散らばらず、良好な作業環境を確保できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(突起形成方法の実施形態1)
本発明の突起形成方法の実施形態の一例を、図面を参照して説明する。この実施形態は、回転刃物11が図1〜図3に示すような回転盤式の場合であり、回転刃物11を回転させながら図6の矢印A方向に移動させて、固定台30に吸引固定されている平板(ワーク)2の上面を右端2bから左端2cに向けて切削して、その上面に溝3と突起4の半分(図9b参照。)を形成する。この場合、溝3と突起4の半分が回転刃物11の切削刃16の枚数分だけ並んで形成される。回転刃物11が図6のA方向に移動し終えると、固定台30が図6の矢印B方向に回転刃物11の幅分だけ横移動する。その後に、回転刃物11が図6のC方向に移動してワーク2の上面を左端2cから右端2bに向けて切削し、ワーク2の先に形成された溝3及び突起4の横に、溝3と突起4の半分(図9b参照。)を切削刃16の枚数分だけ並んで形成する。回転刃物11が図6のC方向に移動し終えると、固定台30が図6の矢印D方向に回転刃物11の幅分だけ横移動する。以下、前記動作の繰り返しでワーク2の全面に、ワーク2の幅方向の溝3と突起4を多数列形成する。
【0017】
次に、図7に示すように回転刃物11を90度回転させて、回転刃物11を図7の矢印方向に配置させる。この状態で固定台30を図7の矢印E方向に移動させ、その移動中にワーク2の上面を前端2aから後端2dに向けて切削して、先に図7の動作で切削された横方向の溝3及び突起4と交差する縦方向に溝3及び突起4の半分を切削刃16の枚数分だけ形成する。ワーク2の前端2aが図7のように回転刃物11の右側まで移動して、ワーク2の後端2dまで溝3及び突起4の半分が形成されたら、回転刃物11を図7の矢印F方向に回転刃物11の幅分だけ移動させる。この状態で、ワーク2を図7の矢印G方向に移動させ(戻し)、その間に回転刃物11により、ワーク2を切削してその後端2dから前端2aまで溝3と突起4の半分を形成する。ワーク2の右端が図7のように回転刃物11の左側まで移動して、ワーク2の右端まで溝3及び突起4の半分が形成されたら、回転刃物11を図7の矢印H方向に回転刃物11の幅分だけ移動させる。以下前記動作を繰り返して、ワーク2の全面に、ワーク2の長手方向の溝3と突起4を多数列形成する。この切削により、図9(a)(b)のようにワーク2の上面に、前後左右方向の溝(格子状の溝)3が形成され、同時に、その内側に突起4が形成されて、突起4が格子状に配列される。
【0018】
(突起形成方法の実施形態2)
本発明の突起形成方法では、回転刃物11に図4、図5(a)(b)に示すようなドリル刃式のものを使用することもできる。この場合も、ワーク2と回転刃物11を前記実施形態1と同様に移動させて、ワーク2の上面を切削して、その上面に格子状に溝3及び突起4を形成する。
【0019】
(突起形成方法の実施形態3)
本願発明では溝3及び突起4は縦横いずれの方向を先に形成してもよい。また、ワーク2及び回転刃物11の移動方向及び移動順序も前記実施形態の動作に限定されることはなく、ワーク2と回転刃物11が相対的に動作して図9(a)(b)の溝3及び突起4を形成することができれば他の動きにすることもできる。
【0020】
(突起形成方法の実施形態4)
本願発明では使用する回転刃物の切削刃の形状やサイズを変えることにより、所望の形状、大きさ、高さの突起4を形成することができる。例えば、半球状の突起、頂点が尖った形状、台形状等々とすることができる。
【0021】
(回転刃物の実施形態1)
本発明の回転刃物の実施形態の一例を、図1〜図3を参照して以下に説明する。この回転刃物11は、ほぼ正六角形の回転盤12の中央に軸孔13が開口され、回転盤12の片面側の軸孔13の周囲部分14は外側に隆起しており、外周縁の六ヶ所の角には、夫々突出部15が形成されており、各突出部15の先端には切削刃16が形成されている。六ヶ所の切削刃16は、突出部15の先端に横に三枚ずつ並べられている。切削刃16は、その先端部を刃先16aとし、刃先16aの両外側に根元側へ向かって弧状に湾曲凹陥した凹陥部16bが形成されている。刃先16aはワーク2上面に溝3を形成するための部分であり、凹陥部16bは溝3の左右に突起4を半分ずつ形成するための部分である。
【0022】
図1〜図3の回転刃物11は、軸孔13に回転軸(図示しない)を挿通固定させ、回転軸の回転により図1の矢印方向に回転させると三枚の切削刃16の刃先16aからワーク2上面に食込んでその上面を切削する。このとき、回転刃物11を移動させるかワーク2を移動させることにより、回転刃物11はワーク2上面を前進しながら切削し、三枚の切削刃16の刃先16aによりワーク2上面に三本の溝3を切削しながら、各刃先16aの両側の凹陥部16bによって溝3の左右に突起4を半分ずつ形成することができる(図9b参照。)。図1〜図3の回転刃物11は、切削方向を90度回転させて、先に形成された溝3及び突起4と直交する方向に移動させることにより、先に形成された溝3と直交する三本の溝3を形成すると同時に、溝3の左右に突起4を半分ずつ形成する。これにより、溝3が格子状に形成されると同時に、夫々の格子状の溝3の内側に突起4が形成される。この場合、突出部15の外側に前記逃げ部19があるため、回転刃物11が回転しながら移動しても、切削刃16で半分ずつ形成される突起4が潰れることはない。
【0023】
(回転刃物の実施形態2)
本発明の回転刃物の実施形態の他の一例を、図4、図5(a)(b)を示して説明する。この回転刃物11は回転駆動体(図示しない)に取り付けて回転可能な軸21の下端に大径部21aが形成され、その大径部21aの外周部周方向に切削刃16が二枚形成されたものである。切削刃16は図5(a)(b)に示すように中心先端部16cから外側上方広がりに弧状に凹陥して凹陥部16dを形成し、中心先端部16cが刃先となっている。この回転刃物11は図4のように軸21を回転駆動体に取り付けて、軸21を図4の矢印方向に回転させながら前後左右に移動させてワーク2上面を切削することにより、切削刃16の中心先端部16cと広がりの狭い凹陥部16d下部でワーク2上面に溝3を形成し、それと同時に、広がりの広い凹陥部16d上方でワーク2上面に突起4を形成できるようにしてある。
【0024】
(回転刃物の実施形態3)
前記した回転刃物の実施形態1、2の切削刃16の形状、数、サイズ等は図1〜図5に示す形状、数、サイズ等に限られず、ワーク2に形成する溝3及び突起4の形状に合せて任意の形状、数、サイズ等とすることができる。従って、図1〜図3の回転刃物の場合は、例えば、刃先16aの形状を変えたときはそれに合わせて凹陥部16b、逃げ部19の形状を変えることができ、図4、5の場合は、例えば、切削刃16の形成枚数を一枚や三枚以上としたり、中心先端部16cを鋭く尖らせたり、凹陥部16dを角型としたり、他の形状とすることもできる。前記回転盤12、周囲部分14、突出部15、切削刃16、軸21はいずれも金属製が適し、特に、切削刃16は摩耗しにくいように焼入れされたものを使用するのが望ましい。
【0025】
(切削装置の実施形態1)
本発明の切削装置の実施形態の一例を、図6〜図8を参照して説明する。この切削装置は、図1〜図3の回転盤式回転刃物11を用いた装置である。レール31と、レール31の上にレールに沿って移動可能に配置された固定台30と、前記回転刃物11を装着でき、装着された回転刃物11を回転させる回転駆動体34と、回転刃物11の向きを90度回転させることのできる回転装置40と、回転装置40をワーク2の幅方向に往復移動させて回転装置40に装着されている回転刃物11を同方向に移動させる移動装置35を備えている。回転駆動体34、回転装置40、移動装置35は固定台30の上方に配置されている。
【0026】
前記固定台30はワーク2を載せて位置決め及び固定するための平面台であり、固定台30の上面には図8に示すようにワーク2を位置決めするためのガイド片36が方形枠状に固定されており、その内側にワーク2を位置決めしてセットできるようにしてある。
【0027】
固定台30には図8に示すように、ワーク2のセット位置に吸引孔37が複数個開口されて、これら吸引孔37から吸引装置(図示しない)によって固定台30上にセットされているワーク2を吸引して、ワーク2を固定台30の上に吸引固定できるようにしてある。各吸引孔37の上にはスポンジのような多孔のカバー材38が貼付されており、吸引時に吸引孔37から塵芥や切削屑等が吸引されないようにしてある。
【0028】
固定台30の下のレール31は二本一組で配置されており、このレール31の上に前記固定台30がレール31に沿って前後方向(図中ワーク2の長手方向)に往復移動可能に配置されている。固定台30の往復移動は図示されていないエアー式、ギアー式等の駆動装置により行われる。
【0029】
前記回転駆動体34にはモータ等が使用され、その回転軸32が前記回転刃物11の軸孔13に差し込まれ、回転駆動体34の回転軸32の回転により回転するようにしてある。前記回転刃物11の外周にはカバー33が設けられおり、カバー33には飛散防止具39を取り付けて、カバー33の内側の回転刃物11によって切削したワーク2の切削屑が周囲に飛散するのを防止できるようにしてある。
【0030】
前記移動装置35は回転装置40に装着されている回転刃物11及びカバー33をワーク2の幅方向に移動させるものであり、コンベアとかチェーン等が使用されている。この移動装置35はレール31を横切る方向(図中ワーク2の幅方向)に配置されており、その配置方向に往復回転するようにしてある。
【0031】
前記移動装置35に取り付けられた回転装置40は、図6、図7に示すように、回転装置40により90度横回転可能としてあり、この横回転によって、回転装置40に装着されている回転刃物11の切削方向を、左右方向(図6)と前後方向(図7)とに切り替えることができる。また、回転装置40は移動装置35に取り付けられた状態で高さ調節も可能としてあり、回転刃物11のワーク切削高(突起の高さ、溝の深さ)を調節できるようにしてある。
【0032】
前記固定台30の往復移動、移動装置35による回転刃物11の移動、回転装置40による回転刃物11の回転、回転刃物11の高さ調節といった各種動作はNC制御によって自動的に行なわれる。
【0033】
(本実施形態の切削装置によるワーク切削の動作説明)
本実施形態の切削装置を用いて、木製の板状ワーク2に縦方向及び横方向の溝3を切削して図9(a)(b)に示すような、突起4を多数有する突起材1を形成する場合の動作を、図6、図7を参照して説明する。
(1)予め回転駆動体34を作動させて、回転刃物11を回転させておく。このとき回転刃物11の切削方向は、図6に示すように、左右方向(図中ワーク2の幅方向)としてある。
(2)ワーク2を固定台30上にセットし、真空装置を作動させてワーク2を固定台30上に吸引固定させる。
(3)ワーク2を固定した固定台30を、レール31に沿って移動させて、ワーク2の前端部2aを、図6に示すように、移動装置35に沿って移動する回転刃物11が通過する位置(切削位置)に配置して固定する。
(4)移動装置35を作動させて、回転刃物11を図6の矢印A方向に移動させながら、回転する回転刃物11によってワーク2を切削して、ワーク2の右端2bから左端2cに貫通する横方向の溝3を三列と、溝3の両側に突起4の半分を形成する(図1、図9b参照。)。
(5)溝3及び突起4を形成し終えたら、固定台30を更に図6の矢印B方向に移動させて、ワーク2を回転刃物11の幅分だけ移動させ、ワーク2の溝3及び突起4が形成されていない部分を切削位置に配置して固定する。
(6)移動装置35を作動させて、回転刃物11を図6の矢印C方向に移動させながら、回転する回転刃物11によってワーク2を切削して、ワーク2の左端2cから右端2bに貫通する横方向の溝3を更に三列と、溝3の両側に突起4の半分を形成する。
(7)溝3及び突起4を形成し終えたら、固定台30を更に図6の矢印D方向に移動させてワーク2を回転刃物11の幅分だけ移動させ、ワーク2の溝3及び突起4が形成されていない部分を切削位置に配置して固定する。
(8)上記(3)〜(7)に示すように、ワーク2の回転刃物11の幅分ずつの移動と、回転刃物11の左右方向の移動とを交互に行い、回転刃物11の移動時に回転する回転刃物11によって横方向の溝3を三列ずつと、溝3の両側に突起4の半分を、ワーク2の後端部2dまで形成する。
【0034】
(9)ワーク2表面全面に右端2bと左端2c間を貫通する横方向の溝3を形成し終えたら、図7に示すように、回転装置40によって回転刃物11を90度横回転させて、回転刃物11の切削方向を前後方向(図中ワーク2の長手方向)に切り替える。このとき、固定台30を後方へ移動させて、ワーク2を図7に示す位置へ移動させる。
(10)移動装置35を作動させて、図7に示すように、回転刃物11がワーク2の右端2b寄りを切削する位置にくるように回転刃物11を移動させて固定させる。
(11)固定台30を図7の矢印E方向へ移動させて、ワーク2を前方に移動させながら、待機している回転刃物11によってワーク2の右端2b寄りを切削して、ワーク2の前端2aから後端2dに貫通する縦方向の溝3を三列と、溝3の両側に突起4の半分を形成する。ここで形成される縦方向の溝3は、既にワーク2に形成されている横方向の溝3と直交し、縦横の溝3の内側には突起4が格子状に形成されることとなる。
(12)溝3及び突起4を形成し終えたら、移動装置35を作動させて、回転刃物11がワーク2の縦方向の溝3及び突起4が形成されていない部分を切削する位置にくるように回転刃物11の幅分だけ移動させて(図7中矢印F)固定させる。
(13)固定台30を図7の矢印G方向へスライドさせて、ワーク2を後方に移動させながら、待機している回転刃物11によってワーク2を切削して、ワークの後端2dから前端2aに貫通する縦方向の溝3を三列と、溝3の両側に突起4の半分を形成する。
(14)溝3及び突起4を形成し終えたら、移動装置35を作動させて、回転刃物11がワーク2の溝3が形成されていない部分を切削する位置にくるように回転刃物11の幅分だけ移動させて(図7中矢印H)固定させる。
(15)上記(10)〜(14)に示すように、回転刃物11の幅分ずつの移動と、ワーク2のスライドとを交互に行い、ワーク2のスライド時に、回転する回転刃物11によって縦方向の溝3を三列と、溝3の両側に突起4の半分を、ワーク2の左端2cまで形成する。
(16)上記(1)〜(15)のように、横方向の溝3と縦方向の溝3をワーク2表面全面に形成すると、図9(a)(b)に示すように、互いに直交する縦横の溝3の内側に、格子状の突起4が形成された突起材1が完成する。
【0035】
本発明の切削装置では、回転駆動体34の回転軸32に取り付ける回転刃物11は一枚には限られず、二枚以上備えて、切削効率を向上させることも可能である。
【0036】
また、本発明の切削装置による突起材1の作成手順は、前記動作説明のように、横方向の溝3及び突起4の形成後に縦方向の溝3及び突起4を形成する手順には限られず、任意の手順で縦横の溝3及び突起4を形成して突起材1を形成することができる。従って、例えば、縦方向の溝3及び突起4の形成後に横方向の溝3及び突起4を形成する手順とすることもできる。
【0037】
(切削装置の実施形態2)
本発明の切削装置の実施形態の他の例を説明する。本発明の切削装置は、図4、図5(a)(b)に示すドリル式回転刃物11を用いた装置とすることもできる。本実施形態における切削装置においても、固定台30、レール31、移動装置35の基本的構成は前記各実施形態のものと共通する。本実施形態の切削装置は、回転刃物11が図4、図5(a)(b)に示すドリル式のものであって、回転駆動体34に直接取りつけて回転させられるようにしたものである。
【0038】
本実施形態の切削装置も、固定台30とワーク2の双方を移動させ、回転刃物11の切削位置を調節し、回転する回転刃物11をワーク2に押し当てながら移動させて、図5(a)(b)に示すように、溝3と、その両側に突起4の半分を切削形成する。本実施形態の切削装置は、溝3と突起4の半分をワーク2表面の任意の場所に形成することができる。
【0039】
本実施形態の切削装置においても、回転駆動体34に取り付ける回転刃物11は一本には限られず、二本以上備えて、切削効率を向上させることも可能である。
【0040】
(切削装置のその他の実施形態)
前記固定台30は、前後方向だけでなく、左右方向にも自在にスライドさせられるようにすることもできる。また、固定台30を90度横回転可能として、ワーク2の向きの転換を可能とすることもできる。その場合は、回転刃物11を固定して移動させなくても、固定台30を前後左右にスライドさせ、固定台30を90度横回転させてワーク2の向きを転換させてワーク2を切削して溝3を縦横に形成することができる。
【0041】
また、前記回転刃物11を、左右方向だけでなく、前後方向にも自在にスライドさせられるようにすることもできる。その場合は、固定台30を固定してスライドさせなくても、回転刃物11を前後左右に移動させ、回転刃物11の向きを転換させてワーク2を切削して溝3を縦横に形成することができる。
【0042】
前記固定台30は、図8に示すようにチップ状の固定具36によって載せたワーク2を固定、位置決めしているが、固定具の形状はこれには限られず、例えば枠体状とする等、ワークの固定、位置決めが可能であれば任意の形状のものを用いることができる。
【0043】
前記各実施形態では、固定台30上に開口した吸引孔37から、固定台30上に載せたワーク2を真空装置によって吸引して固定させているが、ワーク2の吸引方式はこれには限られず、ワーク2を吸引固定可能であれば任意の方式とすることができる。従って、例えば、固定台のワーク設置部分を網状等にして、ワークの全面を真空装置で吸引して固定台上にワークを吸引固定させること等も可能である。
【0044】
固定台30と回転刃物11の前後左右方向の移動幅は、前記のように回転刃物11の幅分には限られず、固定台30と回転刃物11の前後左右方向の移動幅を変化させることもできる。その場合は、形成される突起4の形状及び大きさが変化する。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の突起形成方法及び回転刃物及び切削装置は、前記のように木製のワーク3の切削には限られず、積層木材や合成木材、樹脂、ゴム、それらの複合材製のものの切削にも応用することができる。また、前記のように板状のワークには限定されず、箱状、足載せ具形のもの等、任意の形状のワークの切削に応用することもできる。
【0046】
本発明の突起形成方法及びそれに用いられる回転刃物及び切削装置によってワークを切削して形成した図9(a)(b)に示す突起材は、次のように応用することができる。
(1)突起4と溝3による凹凸があるため、滑り止めを必要とする箇所、例えば、階段の踏み板、浴室のスノコ等に利用することができる。
(2)突起4と溝3による凹凸があるため、指圧を必要とする箇所、例えば、流しや洗面所の前に敷く踏み板、シーツの下に敷いたりシーツの代わりに敷く敷物、椅子の座板、椅子やソファの背当て、下駄やサンダル等の履物等々に利用することができる。
(3)突起4と溝3による凹凸により音の反響が防止されるので、室内の壁面やコンサートホールの壁板等に利用することもできる。
(4)天井材、床材、壁材等にも利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の回転刃物の実施形態の一例を示す斜視図。
【図2】図1に示す回転刃物の正面図。
【図3】図1に示す回転刃物の平面図。
【図4】本発明の回転刃物の実施形態の他の一例を示す斜視説明図。
【図5】(a)は、図4に示す回転刃物の正面説明図。(b)は、図4に示す回転刃物の側面説明図。
【図6】本発明の切削装置の実施形態の一例であって、ワークに横方向の溝及び突起を形成している様子を示す平面説明図。
【図7】図6の切削装置であって、ワークに縦方向の溝及び突起を形成している様子を示す平面説明図。
【図8】図6に示す切削装置の固定台を示す平面説明図。
【図9】(a)は、本発明の回転刃物及び切削装置によってワークを切削して形成した突起材の一例を示す平面図。(b)は、(a)の突起材のX−X断面図。
【符号の説明】
【0048】
1 突起材
2 ワーク
3 溝
4 突起
11 回転刃物
12 回転盤
13 軸孔
14 周囲部分
15 突出部
16 切削刃
16a 刃先
16b 凹陥部
16c 先端部
16d 凹陥部
21 軸
30 固定台
31 レール
32 回転軸
33 カバー
34 回転駆動体
35 移動装置
36 ガイド片
37 吸引孔
38 カバー材
39 飛散防止具
40 回転装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークと回転刃物の双方又はいずれか一方を移動させて、回転刃物によりワーク上面を切削してその上面に溝と突起の一部を一列又は二列以上形成し、ワークと回転刃物の双方又はいずれか一方を前記移動方向と交差する方向に移動させてワーク上面をその移動方向に切削して、先に形成された溝と突起の一部と交差する方向に溝と突起の残りの一部を一列又は二列以上形成して多数の突起を格子状に形成することを特徴とする突起形成方法。
【請求項2】
外周に切削刃が形成された回転盤を回転させながら回転盤とワークを相対的に前後左右に移動させることにより、ワークに突起を格子状に形成できる回転刃物であり、前記切削刃は回転盤の外周側が刃先であり、その刃先から根元側に弧状又は角型に凹陥した逃げ部が形成され、切削刃がその刃幅方向に二枚以上並べて形成されたことを特徴とする回転刃物。
【請求項3】
先端に切削刃が形成された軸を回転させながら軸とワークを相対的に前後左右に移動させることにより、ワークに突起を格子状に形成できる回転刃物であり、前記切削刃は軸の先端中心から外側上方広がりに弧状又は角型に凹陥して形成され、切削刃は軸の周方向に一又は間隔をあけて二以上形成されたことを特徴とする回転刃物。
【請求項4】
ワークを固定する固定台と、請求項2又は請求項3記載の回転刃物が一又は二以上並べて装着された回転駆動体を備え、回転駆動体は固定台の上方に移動可能に配置され、前記固定台と回転駆動体は相対的に前後左右方向に移動可能であり、回転刃物は固定台と回転駆動体が相対的に一方向に移動することによりワークを切削して溝と突起の一部を一列または二列以上形成し、固定台とワークを相対的に前記移動方向と交差する方向に移動させることによりその移動方向にワークを切削して、先に形成された溝と突起の一部と交差する方向に溝と突起の残りの一部を一列又は二列以上形成して多数の突起を格子状に形成できることを特徴とする切削装置。
【請求項5】
請求項4記載の切削装置において、回転駆動体に装着された回転刃物の外側に、その回転刃物の切削により生ずる切削片の飛散を防止する飛散防止具を備えたことを特徴とする切削装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−118142(P2007−118142A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−314488(P2005−314488)
【出願日】平成17年10月28日(2005.10.28)
【出願人】(505147637)
【Fターム(参考)】