説明

窒化アルミニウム粉末およびその製造方法

【課題】 軽量で、且つ、樹脂やグリース、接着剤、塗料等に充填して放熱性を向上させるための高熱伝導性フィラーとして好適な窒化アルミニウム粉末およびその製造方法を提供する。
【解決手段】 平均粒子径が5〜100μm、酸素濃度2重量%以下、圧壊強度が20MPa以上の窒化アルミニウム中空粒子より構成される窒化アルミニウム粉末であり、かかる窒化アルミニウム粉末は、平均粒子径が5〜90μmであり、比表面積が0.01〜3m/gのアルミナ粒子を、フッ化カルシウムを還元助剤として使用して還元窒化することによって製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な窒化アルミニウム粉末およびその製造方法に関する。詳しくは、軽量で、且つ、樹脂やグリース、接着剤、塗料等に充填して放熱性を向上させるための高熱伝導性フィラーとして好適な窒化アルミニウム粉末およびその製造方法を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
窒化アルミニウムは、高熱伝導性、電気絶縁性などの優れた特性を有しており、高熱伝導性基板、放熱部品、絶縁放熱用フィラーとして利用されている。近年、電子機器の小型化、高集積化が進み、これに伴い放熱部材の小型化・軽量化が望まれている。これらに用いられる放熱部材としては、樹脂やゴムに高熱伝導性フィラーを充填させた放熱シートやスペーサー、グリース等がある。樹脂やゴムに高い熱伝導率を付与するためには、高熱伝導フィラー同士の接触効率を高め、マトリックス内に熱伝導パスを形成する必要があり、そのため、数μm〜数十μm程度の窒化アルミニウム粒子からなる窒化アルミニウム粉末が望まれている。
【0003】
しかし、一般的な窒化アルミニウム粉末の製造方法では、サブミクロンオーダーの粒子がほとんどであり、数十μm程度の大粒子径の窒化アルミニウム粒子を得るのは困難である。
【0004】
そこで、上記大きさの粒子径を有する窒化アルミニウム粉末を得るために、様々な方法が検討されている。
【0005】
例えば、アルミナをカーボンの存在下に窒素ガスまたは、アンモニアガスによって還元窒化し、その後、表面酸化することにより、平均粒子径が50μm以下の耐水性の優れた窒化アルミニウム粉末を製造する方法(特許文献1)か開示されている。
【0006】
しかしながら、上記方法は、原料となるアルミナとして粒径の大きいものを使用した場合、特に、3μm以上の大粒子径の原料アルミナを用いた場合には、アルミナから窒化アルミニウムへの反応が進行し難く、粒子内部にアルミナが残存することが懸念される。そして、このようにアルミナから窒化アルミニウムへの反応率、すなわち窒化アルミニウム転化率が低く、アルミナが残存する場合、前記放熱性を付与する熱伝導性フィラーとして使用した場合、十分な熱伝導パスを形成できないばかりか、被充填物中で窒化アルミニウム粒子が破壊した際に、アルミナ成分による熱伝導率の低下が生じる。
【0007】
また、窒化アルミニウム粉末に成形助剤を配合、湿式混合し、スプレードライヤーを用いて造粒、顆粒状とした後に、窒化ホウ素粉末を混合、該混合物を窒素雰囲気下、高温で焼成した球状の窒化アルミニウム粉末が開示されている(特許文献2参照)。
上記方法で得られた窒化アルミニウム粉末は、熱伝導性にも優れているが、中実であるため、放熱材料を構成するマトリクスである樹脂等に高充填した場合、材料の重量の増加が懸念される。また、焼成時に凝集し易く、上記放熱材料への分散性の不良が起こることもある。
【0008】
一方、酸化アルミニウム粉末、炭素粉末と、アルカリ土類金属化合物や希土類元素化合物との混合粉末を出発原料として、窒素を含む非酸化性雰囲気中にて焼成して窒化アルミニウム粉末を製造する方法が開示されている(特許文献3参照)。この方法は、アルカリ土類金属化合物や希土類化合物が還元窒化反応を促進させる働き、即ち、還元助剤としての働きを利用して、1,500℃以下の低温での窒化アルミニウムを生成せしめようとするものである。
【0009】
しかしながら、上記方法によって得られる窒化アルミニウム粉末は、具体的には、粒子径が高々1μm程度であり、数μmのオーダーの比較的大きい粒子径のものは得られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2005−162555号公報
【特許文献2】特開平11−162555号公報
【特許文献3】特開平5−221618号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、本発明の目的は、粒子径が数μm〜数十μm程度の窒化アルミニウム粒子からなり、軽量で、且つ、アルミナの残存等に起因する酸素濃度(酸素元素の含有割合)が著しく低減された窒化アルミニウム粉末、および<その製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討を行った。その結果、特定の粒子径と比表面積とを有するアルミナとカーボンブラックとを、還元助剤としてフッ化カルシウムを使用し、これらの混合粉末を出発原料として還元窒化することにより、目的の窒化アルミニウム粉末が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明は、平均粒子径が5〜100μm、酸素濃度2重量%以下、圧壊強度が20MPa以上の窒化アルミニウム中空粒子より構成されることを特徴とする窒化アルミニウム粉末を提供するものである。
【0014】
また、本発明は、上記窒化アルミニウム粉末の製造方法として、平均粒子径が5〜90μmであり、比表面積が0.01〜3m/gのアルミナ粒子を、フッ化カルシウムを還元助剤として使用して還元窒化する製造方法をも提供する。
【0015】
尚、本発明において、平均粒子径は、レーザー回折/散乱法により測定した粒度分布における累積体積が50%のときの粒子径をいう。
【発明の効果】
【0016】
本発明の窒化アルミニウム粉末は、平均粒子径が5〜100μmの大きさであるにも拘わらず、残存するアルミナ等に起因する酸素濃度が極めて小さく、高い熱伝導率を有する。
【0017】
また、後述の図2に示すように、内部に空洞を有する窒化アルミニウムの殻によって構成される中空粒子であるため、軽量であり、しかも、上記樹脂等のマトリクス中においては、該窒化アルミニウムの殻を介して良好な熱伝導パスを形成することができ、高熱伝導性フィラーとして、前記放熱材料に高い放熱特性を付与することができる。
【0018】
しかも、前記したように、本発明の窒化アルミニウム粉末は、十分な圧壊強度を有しているが、前記マトリクスへの充填時や取り扱い時に一部が破壊した場合においても、内部も酸素元素の割合が極めて少ない高純度の、熱伝導性の高い窒化アルミニウムより構成されているため、放熱材料の熱伝導率が低下することがないというメリットを有する。
【0019】
また、前記本発明の球状窒化アルミニウム粉末を製造するための特徴的な製造方法によれば、還元助剤として使用するフッ化カルシウムの触媒作用によって、原料として粒子径の大きいアルミナを用いても1500℃以下の温度でも短時間で還元窒化反応が進行することから、目的とする窒化アルミニウム粉末を再現性良く、且つ、生産性よく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の窒化アルミニウム中空粒子の構造の一例を示す電子顕微鏡写真
【図2】本発明の窒化アルミニウム中空粒子の断面構造の一例を示す電子顕微鏡写真
【発明を実施するための形態】
【0021】
[窒化アルミニウム粉末]
本発明の球状窒化アルミニウム粉末は、図1に示すように、大粒径であり、図2に示すように、粒子内部に空洞を有する中空である。
【0022】
即ち、本発明の窒化アルミニウム粉末の平均粒子径は、5〜100μm、特に、7〜80μm、さらには10〜60μm、という大粒径を有することを特徴の一つとする。そして、かかる大きさの窒化アルミニウム粉末は、樹脂に高充填し易く、他のフィラーとの併用も容易となる。
【0023】
また、本発明の中空窒化アルミニウム粉末は、上記大きい粒径を有しながら、酸素濃度は、2重量%以下、好ましくは、1.6重量%以下、さらに好ましくは1.2重量%以下であり、粒子の窒化率が高いことも特徴とする。従来、還元窒化により製造される窒化アルミニウム粉末は、上記酸素濃度が2重量%を超えるものであり、これを充填して得られる放熱材料の熱伝導性の改善効果が小さい。また、酸素濃度が高い従来の窒化アルミニウム粉末は、万が一、破壊した場合、内部よりアルミナ成分がマトリクス中に分散し、熱伝導率の低下をもたらすことが懸念される。
【0024】
更に、本発明の窒化アルミニウム粉末の圧壊強度は、20MPa以上、特に、30MPa、更には、50MPa以上の実用的な強度を有するものである。
【0025】
ここで圧壊強度とは、単一粒子の圧縮試験(JIS R 1639−5)によって求めた破壊強度であり、任意の粒子を100個抽出した測定値の平均値である。
【0026】
本発明の窒化アルミニウム粉末は中空であり、その密度は、0.5〜2.5g/cmの範囲にある。そのうち、特に、1.0〜2.0g/cm、更に、1.3〜1.8g/cmのものが好適である。
【0027】
上記密度は、気体置換法の一種である定容積膨張法により求めたものである。
【0028】
[窒化アルミニウム粉末の製造方法]
前記本発明の窒化アルミニウム粉末の製造方法は、特に制限されないが、代表的な製造方法として、以下の方法が挙げられる。
【0029】
即ち、平均粒子径が5〜90μmであり、比表面積が0.01〜3m/gのアルミナ粒子を、フッ化カルシウムを還元助剤として使用して還元窒化することを特徴とする製造方法が挙げられる。
【0030】
上記の還元窒化は、1300〜1500℃の温度下に、1〜10時間行うことが好ましく、また、フッ化カルシウムをアルミナとカーボンの合計量100重量部に対して1〜10重量部使用することが好ましい。
【0031】
[原料]
本発明の窒化アルミニウム粉末の製造方法において、原料としては、例えば、α、γ、θ、δ、η、κ、χ等の結晶構造を持つアルミナが挙げられる。これらは単独或いは種類の異なるものが混合された状態で用いてもよい。上記アルミナのうち、特に反応性が高く、反応制御が容易なα−アルミナ、γ−アルミナ、が好適に用いられる。
【0032】
また、本発明の製造方法において、アルミナは、還元窒化により径が増大するため、上記アルミナの平均粒子径は、目的とする窒化アルミニウム粉末の粒径に合わせて、5〜90μm、好ましくは6〜80μm、さらに好ましくは7〜60μmのものが使用される。また、上記アルミナの比表面積は、0.01〜3m/g、好ましくは、0,02〜2.5m/gである。上記アルミナとして上記範囲の比表面積のものを使用することによって、後述する還元助剤との作用により、酸素濃度が低く、且つ圧壊強度が高い窒化アルミニウム粉末を得ることができる。
【0033】
〔還元窒化〕
本発明において、還元窒化は、還元剤と窒化源とによって前記アルミナを還元窒化する方法であり、かかる還元剤は公知のもの特に制限なく用いられる。例えば、カーボンや還元性のガスが一般的に用いられる。
【0034】
上記カーボンは、カーボンブラック、黒鉛および高温、反応ガス雰囲気中においてカーボン源となり得るカーボン前駆体が何ら制限なく使用できる。そのうち、カーボンブラックが重量当たりの炭素量、物性の安定性から好適である。これらのカーボンブラックの粒子径は、任意であるが0.01〜20μmのものを用いるのが好ましい。また、原料の飛散防止に流動パラフィンなど液状のカーボン源を併用してもよい。
【0035】
また、還元性ガスを用いる場合は、還元性を示すガスであれば制限なく使用できる。具体的には、水素、一酸化炭素、アンモニア、炭化水素系ガスなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、上記カーボンやカーボン前駆体と併用してもよい。
【0036】
[還元助剤]
本発明において、還元助剤としてフッ化カルシウム粉末を用いることが大きな特徴である。即ち、アルミナの還元窒化にフッ化カルシウムを使用することによって、還元窒化反応を極めて効率よく行うことができ、前記比表面積との作用により、大粒径の原料アルミナを使用した場合でも、中空で、且つ、十分還元窒化された窒化アルミニウム粒子を得ることができる。
【0037】
本発明で用いるフッ化カルシウムの平均粒子径は何ら制限されないが、10μm以下が好ましく、5μm以下のものが反応性の面で好適に使用される。
【0038】
〔原料混合〕
本発明において、還元剤としてカーボン又はカーボン源(以下、単にカーボンと言う)を用いる場合、アルミナ等とカーボンとフッ化カルシウムを混合する方法としては、アルミナ等とカーボンとフッ化カルシウムが均一になるような方法であればいずれの方法でもよいが、通常混合手段はブレンダー、ミキサー、ボールミルによる混合が好適である。
【0039】
本発明の窒化アルミニウム粉末の製造方法において、アルミナ等とカーボンは、当量比以上ならば如何なる配合比で配合させても良い。凝集や未反応を少なくするため、アルミナ等に対し、カーボンを炭素換算で、アルミナに対して36〜100重量部、好ましくは40〜75重量部倍配合させるのがよい。カーボン量が少ない場合、反応速度が低下することに加え、転化率の低下を招く場合がある。また、カーボン量が多過ぎる場合、炭素が残存する虞がある。
【0040】
本発明において、アルミナ粉末等に対するフッ化カルシウムの配合量は特に制限されないが、アルミナ粉末等とカーボンの合計量に対して、1〜10重量部、好ましくは、3〜8重量部、さらに好ましくは、4〜7重量部の割合でフッ化カルシウムを混合することが好ましい。上記フッ化カルシウム配合量が1重量部未満の場合、フッ化カルシウムによる窒化反応の促進効果が十分に得られ難くなり、10重量部を超える場合、収率が低下する傾向がある。
【0041】
〔還元窒化〕
本発明の窒化アルミニウム粉末は、アルミナ等を窒素流通下、カーボン及び/または還元性ガスの存在下で、還元窒化することによって得ることができる。還元窒化における温度は特に制限されないが、1300〜1500℃が好ましく、1350℃〜1450℃がさらに好ましい。上記温度が1300℃未満では窒化反応が十分進行せず、また、フッ化カルシウムが液相を生成しないため、窒化反応の促進効果を得ることが困難となる。また、焼成温度が1500℃を超えるとフッ化カルシウムが揮発してしまうため、多量のフッ化カルシウムを必要とするため、経済的でない。
【0042】
また、上記還元窒化の時間についても制限されないが、1〜10時間、好ましくは、3〜8時間が適当である。
【0043】
尚、窒化アルミニウムへの反応が終了後であれば、前記温度以上で焼成して、フッ化カルシウムを揮発させ、不純物として系外に排出してもよい。
【0044】
上記本発明において、窒素ガス或いは還元性ガスと窒素の混合ガスの流量は、アルミナが十分に還元窒化される量であれば特に制限されず、用いるアルミナの種類や、反応装置の能力及び装置の構造等を勘案して適宜決定すれば良い。上記窒素ガスの流量としては、1L/min〜10L/min程度流通させれば十分である。
【0045】
〔酸化処理〕
本発明において、得られる窒化アルミニウム粉末が余剰のカーボンを含んでいる場合は、酸化処理による脱炭を行うことが好ましい。上記酸化処理において、酸化性ガスとしては、空気、酸素、など炭素を酸化して除去できるガスならば何等制限無く採用できるが、経済性や得られる窒化アルミニウムの酸素含有率を考慮して、空気が好適である。また、酸化処理温度は一般的に500〜900℃がよく、脱炭素の効率と窒化アルミニウム表面の過剰酸化を考慮して、600〜750℃が好適である。
【0046】
即ち、酸化温度が高すぎると、窒化アルミニウム粉末の表面が過剰に酸化され、アルミナ層が形成されるため、熱伝導率が低下してしまう傾向があるため、適当な酸化温度と時間を選択するのが好ましい。
【0047】
〔用途〕
本発明の中空窒化アルミニウム粉末は、窒化アルミニウムの性質を生かした種々の用途、特に放熱シート、放熱グリース、放熱接着剤、塗料、熱伝導性樹脂などの放熱材料用フィラーとして広く用いることができる。
【実施例】
【0048】
以下、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例及び比較例における各種物性は、下記の方法により測定した。
【0049】
(1)平均粒子径
平均粒子径(D50)は、試料をホモジナイザーにてピロリン酸ソーダ中に分散させ、レーザー回折粒度分布装置(日機装株式会社製MICROTRAC HRA)にて測定した。
【0050】
(3)窒化アルミニウム粉末の密度
窒化アルミニウム粉末の密度は、乾燥式自動密度計(マイクロメリティックス製アキュピック1330−03)を用いて測定した。
【0051】
(4)圧壊強度
微小圧縮試験機(島津製作所製MTC−W)を用いて、任意の粒子100個の単独粒子の圧縮試験を行い、破壊試験力と粒径より圧壊強度を求め、算術平均した。
【0052】
(5)酸素濃度
酸素濃度は堀場製作所製「EMGA−620W」を使用して、粉末を酸素気流中で燃焼させ、発生したCOガス量から定量した。
【0053】
実施例1
平均粒子径10μm、比表面積0.8m/gのαアルミナ100重量部に対して、比表面積125m/gのカーボンブラックを40重量部、さらに平均粒子径1.0μmのフッ化カルシウムをαアルミナとカーボンブラックの合計量に対して4重量部添加して混合した後、カーボン容器に入れ、窒素ガスを1L/minで流通しつつ、焼成温度1350℃、焼成時間10時間の条件で窒化後、空気雰囲気下において700℃で4時間、酸化処理を行って窒化アルミニウム粉末を得た。得られた粉末を前述の方法にて、酸素濃度、密度、圧壊強度、平均粒径を測定した結果を表1に示す。
実施例2〜3
表1の焼成温度及び焼成時間とした以外は、実施例1と同様に還元窒化及び酸化処理を行った。得られた中空窒化アルミニウムの酸素濃度、密度、圧壊強度、平均粒径を表1に示す。
【0054】
【表1】

【0055】
実施例4
表2の還元助剤添加量及び焼成時間とした以外は、実施例3と同様に還元窒化及び酸化処理を行った。得られた中空窒化アルミニウムの酸素濃度、密度、圧壊強度、平均粒径を表2に示す。
【0056】
【表2】

【0057】
実施例5〜6
表3の原料アルミナを用いた以外は、実施例3と同様に還元窒化及び酸化処理を行った。得られた中空窒化アルミニウムの酸素濃度、密度、圧壊強度、平均粒径を表3に示す。
【0058】
比較例1
表3の原料アルミナを用いた以外は、実施例3と同様に還元窒化及び酸化処理を行った。得られた中空窒化アルミニウムの酸素濃度、密度、圧壊強度、平均粒径を表3に示す。
【0059】
【表3】

【0060】
比較例2〜5
表4の還元助剤を用いた以外は、実施例3と同様に還元窒化及び酸化処理を行った。得られた中空窒化アルミニウムの酸素濃度、密度、圧壊強度、平均粒径を表4に示す。
【0061】
【表4】

【0062】
前記実施例4の条件で得られた中空窒化アルミニウムの粒子及びその断面構造を走査電子顕微鏡で観察した写真を図1に示す。また、実施例4の条件で得られた中空窒化アルミニウムをエポキシ樹脂中に埋包し、硬化後、これを研磨することによって中空窒化アルミニウムの断面を観察した。断面の写真を図2に示す。図1からわかるように、丸みを帯びた中空窒化アルミニウム粒子が得られている。図2の暗色の部分がエポキシ樹脂、白色部分が中空窒化アルミニウムである。図2に示すように、1〜3μmの窒化アルミニウム殻を有する中空粒子が得られていることが分かる。
【0063】
また、他の実施例で得られた窒化アルミニウム粉末についても同様に確認した結果、実施例4と同様に中空粒子が得られていたことが確認された。
【0064】
また、本発明の窒化アルミニウム粉末を、エポキシ樹脂100重量部に対して80重量部配合して放熱材料を構成したところ、アルミナ粉末を使用した場合に比べて、熱伝導性を、平均で約6割程度向上させることが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒子径が5〜100μm、酸素濃度2重量%以下、圧壊強度が20MPa以上の窒化アルミニウム中空粒子より構成されることを特徴とする窒化アルミニウム粉末。
【請求項2】
平均粒子径が5〜90μmであり、比表面積が0.01〜3.0m/gのアルミナ粒子を、フッ化カルシウムを還元助剤として使用して還元窒化することを特徴とする窒化アルミニウム中空粒子の製造方法。
【請求項3】
前記還元窒化を1300〜1500℃の温度下に、1〜10時間行う請求項1記載の窒化アルミニウム中空粒子の製造方法。
【請求項4】
前記還元窒化において、フッ化カルシウムをアルミナとカーボンの合計量100重量部に対して1〜10重量部使用する、請求項2又は3記載の窒化アルミニウム中空粒子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−193054(P2012−193054A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−56471(P2011−56471)
【出願日】平成23年3月15日(2011.3.15)
【出願人】(000003182)株式会社トクヤマ (839)
【出願人】(504182255)国立大学法人横浜国立大学 (429)