説明

窓構造体及び扉構造体

【課題】
耐震性、免震性、制振性に優れた改装窓、窓構造体、及び扉構造体を提供することを目的とする。
【解決手段】
本発明は、既設窓枠と新設窓枠との間の空間部分の略全体に発泡硬化体が充填された、略長方形の改装窓において、改装窓の上辺に対して水平方向に層間変形を加えた時に、改装窓の許容水平変形量ΔがC+C+H/W×(C+C)より大きくなる改装窓に関する。本発明では、既設窓枠2a、2bを取り外すことなく新設窓枠1a、1bを取り付けた改装窓において、既設窓枠2a、2bと新設窓枠1a、1bとの間の空間部分の略全体に発泡ウレタン4a、4bが充填されている。さらに、本発明は、耐震性、免震性、制振性に優れた窓構造体及び扉構造体に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐震性、免震性、又は、制振性に優れた、窓構造体(改装窓を含む)及び扉構造体、並びに、窓構造体の製造方法及び扉構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
老朽化した窓をリフォームする場合、既設窓枠を撤去せずに、既設窓枠を基礎にしてその上から新設窓枠を取り付ける、いわゆる「かぶせ工法」が一般的である。この工法は、既設窓枠を取り外す必要が無いため、外壁等を壊す必要が無く、また足場が不要、工事音が少ない、工期が短い、粉塵・廃棄物が出ない、など様々な利点があり、窓を改装する方法として非常に有用である。
【0003】
かぶせ工法において、新設窓枠を既設窓枠に取り付けるには、既設窓枠に新設窓枠を、介装部材を介して溶接又はビス止め等により取り付ける方法が一般的であるが、既設窓枠と新設窓枠との間に隙間が生じるため、この隙間部分を塞ぐことが必要である。例えば、この空間を塞ぐ従来技術として、特許文献1が開示されている。特許文献1に係る発明によれば、新設窓枠の室外側外周部に外部アタッチメントを備え、この外部アタッチメントによって、新設窓枠と既設窓枠との間に形成される空間を塞いでいる。
【0004】
しかし、窓の改装が必要な場合というのは、そもそも窓枠の周りの柱や梁などの躯体に、歪みや撓み、傾きなどの不具合が生じている場合が多く、この不具合が生じた状態のまま新設窓枠を取り付けても、既設窓枠との間に生じる空間が四辺で一定ではなく、例えば、窓枠の上枠が水平でない場合などが挙げられるが、窓枠のサイズが大きければ大きいほど、このような不具合は大きく生じているのが通常である。このような躯体の歪みや撓み、傾きは、上下方向、左右方向にだけ生じるのではなく、前後方向にも生じることがあり、3次元的に生じる。また、このような躯体の不具合は、全て一様ではなく個別に異なるものである。
【0005】
そのため、窓の改装は、個別に異なる躯体に合わせて行わなければならないため効率が悪く、一度窓枠を取り付けた後に傾き等が発見されても、後から補正することができない。したがって、外部アタッチメントにより既設窓枠と新設窓枠との間の隙間部分を塞ぐ場合においても、現場で特別に加工を施す必要が生ずるなど熟練技術を要し、さらに、新設窓枠は、メーカーによって構造が異なる汎用性の無い商品であるため、施工には専門知識を要する。そのため、かぶせ工法による窓の改装には、高度な専門知識と技能を有する職人が必要であり、人手不足や施工が高コストになり易いという問題があった。
【0006】
また、いかに腕の良い職人により施工されたとしても、既設窓枠と新設窓枠との間の空間部分を完全に塞ぐことは困難であり、地震などによる水平応力が働いた場合、既設窓枠と新設窓枠との間の空間部分に変位が生じ、既設窓枠の変形が新設窓枠に直接作用することになり、ガラスが破壊しやすくなるといった問題が発生する。このような中、躯体と窓枠の間隙に発泡ポリウレタンを充填し、さらにカバー部分の内面に発泡ポリウレタンを吹き付ける躯体の改修方法が特許文献2に開示されている。
【0007】
しかし、特許文献2の発明によっても、既設窓枠と新設窓枠との間に空間部分は残っているため、改装窓の耐震性等は十分ではなく、また、新設窓枠の取り付けを個別に異なる躯体に合わせて行わなければならないといった、施工の困難性を解決することはできない。
【0008】
ところで、建物に新しい窓を取り付ける場合にも、窓の耐震性等が求められる。地震などによる水平応力が窓に対して働くと、窓枠が変形し、その結果、窓枠が破壊されるといった問題が発生する。このような中、窓枠に補強部材を取り付けることにより、地震の際の水平応力に耐え得るようにした耐震性補強窓が特許文献3に開示されている。しかし、特許文献3の発明によっても、窓の耐震性等は十分ではなく、また、窓枠に補強部材を各種取付ける必要があり、施工の煩雑性といった問題が発生する。
【0009】
また、同様に、扉についても耐震性等が求められている。地震による水平応力が扉に対して働くと、壁部に形成された開口部と扉との間に歪みが発生し、扉の開閉ができなくなるなどの問題が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平9−13797号公報
【特許文献2】特開2005−139712号公報
【特許文献3】特開2007−224582号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであり、発泡ポリウレタンや発泡石膏等の発泡硬化体を用いることで、耐震性、免震性、又は制振性に優れた改装窓、窓構造体、及び扉構造体を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、既設窓枠と新設窓枠との間の空間部分の略全体に発泡硬化体が充填された、略長方形の改装窓(窓構造体)において、改装窓の上辺に対して水平方向に層間変形を加えた時に、改装窓の許容水平変形量ΔがC+C+H/W×(C+C)より大きくなる改装窓に関する。ここで、Cは改装窓のサッシの右辺と窓ガラスの右辺との間のクリアランス、Cは改装窓のサッシの左辺と窓ガラスの左辺との間のクリアランス、Cは改装窓のサッシの上辺と窓ガラスの上辺との間のクリアランス、Cは改装窓のサッシの下辺と窓ガラスの下辺との間のクリアランス、Hは改装窓のサッシの上下方向の内法寸法、Wは改装窓のサッシの左右方向の内法寸法を意味する。
【0013】
本発明は、略長方形の窓用の開口部が形成された壁部と、開口部に設置された窓とを備え、窓の外周に沿って設けられたサッシと壁部との間の一部又は全体に発泡硬化体が充填されている窓構造体において、窓構造体の上辺に対して水平方向に層間変形を加えた時に、窓構造体の許容水平変形量ΔがC+C+H/W×(C+C)より大きくなる窓構造体に関する。ここで、Cはサッシの右辺と窓ガラスの右辺との間のクリアランス、Cはサッシの左辺と窓ガラスの左辺との間のクリアランス、Cはサッシの上辺と窓ガラスの上辺との間のクリアランス、Cはサッシの下辺と窓ガラスの下辺との間のクリアランス、Hはサッシの上下方向の内法寸法、Wはサッシの左右方向の内法寸法を意味する。
【0014】
本発明は、略長方形の窓用の開口部が形成された壁部と、開口部に設置された窓とを備え、窓の外周に沿って設けられたサッシに形成された摺動溝と係合するレール部を有する窓枠と壁部との間の一部又は全体に発泡硬化体が充填されている窓構造体において、窓構造体の上辺に対して水平方向に層間変形を加えた時に、窓構造体の許容水平変形量ΔがC+C+H/W×(C+C)より大きくなる窓構造体に関する。ここで、Cはサッシの右辺と窓ガラスの右辺との間のクリアランス、Cはサッシの左辺と窓ガラスの左辺との間のクリアランス、Cはサッシの上辺と窓ガラスの上辺との間のクリアランス、Cはサッシの下辺と窓ガラスの下辺との間のクリアランス、Hはサッシの上下方向の内法寸法、Wはサッシの左右方向の内法寸法を意味する。
【0015】
本発明では、発泡硬化体は発泡ポリウレタンであることが好ましい。
【0016】
本発明では、許容水平変形量ΔとC+C+H/W×(C+C)の差は、充填された発泡硬化体の厚さの0.5〜1.8倍であることが好ましい。
【0017】
本発明は、略長方形の窓用の開口部が形成された壁部と、開口部に設置された窓とを備え、窓の外周に沿って設けられたサッシと壁部との間の一部又は全体に発泡硬化体が充填されている窓構造体の製造方法において、窓を壁部に固定させたのち、サッシと壁部との間に生じる室外側と室内側の隙間部分のいずれか一方あるいは両方から、サッシと壁部との間の一部又は全体に発泡硬化体原料を注入し、発泡硬化体原料を硬化反応させることで発泡硬化体とすることを特徴とする窓構造体の製造方法に関する。
【0018】
本発明は、略長方形の窓用の開口部が形成された壁部と、開口部に設置された窓とを備え、窓の外周に沿って設けられたサッシに形成された摺動溝と係合するレール部を有する窓枠と壁部との間の一部又は全体に発泡硬化体が充填されている窓構造体の製造方法において、窓枠を壁部に固定させたのち、窓枠と壁部との間に生じる室外側と室内側の隙間部分のいずれか一方あるいは両方から、窓枠と壁部との間の一部又は全体に発泡硬化体原料を注入し、発泡硬化体原料を硬化反応させることで発泡硬化体とすることを特徴とする窓構造体の製造方法に関する。
【0019】
本発明は、略長方形の扉用の開口部が形成された壁部と、開口部に設置された扉とを備え、扉を蝶着する扉枠と壁部との間の一部又は全体に発泡硬化体が充填されている扉構造体に関する。
【0020】
本発明は、略長方形の扉用の開口部が形成された壁部と、開口部に設置された扉とを備え、扉を蝶着する扉枠と壁部との間の一部又は全体に発泡硬化体が充填されている扉構造体の製造方法において、扉枠を壁部に固定させたのち、扉枠と壁部との間に生じる室外側と室内側の隙間部分のいずれか一方あるいは両方から、扉枠と壁部との間の一部又は全体に発泡硬化体原料を注入し、発泡硬化体原料を硬化反応させることで発泡硬化体とすることを特徴とする扉構造体の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、発泡硬化体を活用することで、耐震性、免震性、又は、制振性に優れた改装窓、窓構造体及び扉構造体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態にかかる改装窓の上下方向の断面図の一例である。
【図2】本発明の実施の形態にかかる改装窓の上下方向の断面図の一例である。
【図3】窓ガラスとサッシについての模式図である。
【図4】本発明の実施の形態にかかる扉構造体の一例である。
【図5】本発明の実施例にかかる模擬窓構造体の外観図である。
【図6】本発明の実施例にかかる模擬窓構造体の水平方向の断面図である。
【図7】本発明の実施例にかかる模擬窓構造体のA−A線矢視断面図である。
【図8】本発明の比較例にかかる模擬窓構造体の外観図である。
【図9】本発明の比較例にかかる模擬窓構造体の水平方向の断面図である。
【図10】本発明の比較例にかかる模擬窓構造体のA’−A’線矢視断面図である。
【図11】本発明の実施例にかかる改装窓の水平方向の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、本発明にかかる第一の実施の形態について説明する。図1は、第一の実施の形態にかかる改装窓の上下方向の断面図(窓が未設置の場合)であり、図2は、第一の実施の形態にかかる改装窓の上下方向の断面図(窓を設置した場合)である。改装窓は、窓の改装にあたって新たに設けられる窓枠である新設窓枠1と、窓の改装前に既に設けられていた窓枠である既設窓枠2と、新設窓枠1を既設窓枠2に固定するフラットバー・アングル3と、新設窓枠1と既設窓枠2により形成される空間の略全体に充填された発泡硬化体4と、既設窓枠2が固定されたモルタルからなる壁部5、新設窓枠1に設置された引違い窓6により構成されている。
【0024】
新設窓枠1は既設窓枠2の内周側に設けられる。改装窓の上部に位置する新設窓枠1aは、室内側はフラットバー3a、室外側はアングル3b、3cなどの治具によりビスを用いて、既設窓枠2aに固定されている。新設窓枠1aと既設窓枠2aにより形成された空間には、発泡硬化体4aが充填されている。同様に、改装窓の下部に位置する新設窓枠1bは、室内側はフラットバー3d、室外側はフラットバー3eにより既設窓枠2bに固定されており、新設窓枠1bと既設窓枠2bにより形成された空間には、発泡硬化体4bが充填されている。室内側の引違い窓6a及び室外側の引違い窓6bの上端におけるサッシに形成された摺動溝が、新設窓枠1aの下方に突出して設けられたレール部と係合し、同様に引違い窓6a、6bの下端におけるサッシに形成された摺動溝が、新設窓枠1bの上方に突出して設けられたレール部と係合することで、引違い窓6が新設窓枠1に設置されている。引違い窓6a、6bは共に水平方向に開閉が可能である。
【0025】
本発明の改装窓は、既設窓枠2と新設窓枠1との間に生じる、窓枠の四辺の室内外に通じる隙間部分が(図示しない)化粧部材で塞がれていてもよい。新設窓枠1は、既設窓枠2の内周側に取り付けるものであるから、既設窓枠2よりも小さいものを使用するが、既設窓枠2に対して新設窓枠1が隙間無く収まるということはなく、どうしても既設窓枠2と新設窓枠1との間に若干の隙間部分が生じてしまうし、既設窓枠2自体が傾いていたり、歪んでいれば、隙間部分は必ず生じるものである。このように、既設窓枠2と新設窓枠1との間に隙間部分があることで、窓枠の室内外から、既設窓枠2と新設窓枠1との空間部分に充填した発泡硬化体4が見えてしまう。そこで、隙間部分を化粧部材により塞ぐことで、発泡硬化体4が窓枠の室内外から見えないようにすることができる。
【0026】
化粧部材は、例えば、平板状、又は断面がL字形状のアルミ製のものが適しているが、プラスチック製、木製、紙製等の材質でも良い。また、美観向上の観点から、化粧部材の上に、さらに木目が印刷されたプラスチック板や紙片、合板などを貼り付けても良い。化粧部材は、隙間部分が生じる窓枠の四辺に取り付けられ、粘着性の両面テープや接着剤などで窓枠に接着されても良いし、ビス留めされても良い。なお、改装窓の止水性、気密性、断熱性、遮音性は、既設窓枠2と新設窓枠1の間の空間部分の略全体を発泡硬化体4で埋めることで十分得られるので、化粧部材は、単に美観上の問題として隙間部分を隠すだけで良く、強固に取り付ける必要はない。
【0027】
隙間部分は、室内側と室外側の両方に生じるが、化粧部材は両方とも同じ部材を用いる必要は無い。例えば、室内側は、常に居住者から見える部分であるため、美観を損なわないように配慮する必要があるが、室外側は、美観よりも機能を重視する必要があるから、雨風に強い部材を用いる必要がある。
【0028】
化粧部材は、発泡硬化体4を充填した後に取り付けても良いし、発泡硬化体4を充填する前に取り付けても良い。発泡硬化体4を充填する前に化粧部材を取り付けた場合は、化粧部材によって発泡硬化体4が溢れ出ないようにすることができる。それとは逆に、発泡硬化体4を充填した後に化粧部材を取り付ける場合は、発泡ポリウレタンが充填され、溢れ出た場合には削ぎ落としてから取り付けることになる。
【0029】
化粧部材を取り付ける際には、バックアップ材及びシーリング材などの充填材によってコーキングを施しても良いし、これらのコーキングを施さないで、そのまま化粧部材を取り付けるだけでも良い。これは、発泡硬化体がコーキングの役目を果たすためである。但し、室外側の雨風に曝される場所については、化粧部材の剥がれや汚れを防ぐために、コーキングを施しておくことが好ましい。
【0030】
既設窓枠2と新設窓枠1との間の空間部分の略全体に発泡硬化体4を充填する前に化粧部材を取り付ける場合は、化粧部材の任意の箇所に、発泡硬化体原料を空間内に注入する注入孔が設けられていても良い。発泡硬化体4を充填した後に化粧部材を取り付ける場合、発泡硬化体4は既に空間内部に充填されているため、化粧部材を取り付けた後に発泡硬化体4を充填する必要は無いが、発泡硬化体4を充填する前に化粧部材を取り付けた場合は、発泡硬化体原料を空間内部に充填する隙間を確保しておくか、化粧部材自体に発泡硬化体原料を注入する注入孔を設けておく必要がある。
【0031】
化粧部材の任意の箇所に発泡硬化体原料を注入する注入孔を設ける場合、空間内部で発泡した発泡硬化体4は、注入孔から溢れ出ることになるが、隙間部分全体から発泡硬化体4が溢れ出る場合と比べ、溢れ出る量を極めて少なくできるだけでなく、溢れ出た発泡硬化体4を削り落とす作業が大幅に減ることになり、発泡硬化体4の充填量の節約にもつながる。
【0032】
本発明における発泡硬化体4とは、発泡ポリウレタン、発泡ポリオレフィン等の発泡性樹脂や発泡石膏等の、発泡しつつ(比較的短時間で)硬化する物質をいう。発泡ポリオレフィンとは、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィンに発泡剤を加えて発泡させたものをいう。石膏は、高速攪拌機を用いて焼石膏と水の混合物に空気を導入することにより発泡させることができる。また、硬化に要する時間は、10〜20分程度である。
【0033】
本発明の発泡硬化体4として発泡ポリウレタンが用いられる場合、発泡硬化体原料は2種類のポリウレタン原料と発泡剤とを含む混合物である。発泡ポリウレタンとは、ポリウレタン原料に発泡剤を加えて発泡及び硬化させたものをいい、例えば、2種類の液体ポリウレタン原料(イソシアネート及びポリオール等)と、代替フロン液化ガス等の発泡剤とを高圧容器に密封してあり、使用時にこれらを混合して空気中に放出することにより、発泡しつつ硬化する一般的な市販品を採用すればよい。発泡ポリウレタンであれば、既設窓枠2と新設窓枠1の間の空間部分といった複雑な形状であっても、空間の略全体にわたって、簡便に硬化体を充填することが可能である。なお、発泡ポリウレタン、特に一般に硬質発泡ポリウレタンと呼ばれるものは、硬化後の硬度が比較的高く、新設窓枠の接着強度が高まるため、より好ましい。
【0034】
一般の市販品においては、2種類のポリウレタン原料を同一の高圧容器に充填してあり、使用時にその高圧容器内で混合するもの(1液性)と、2種類のポリウレタン原料を別個の高圧容器に充填してあり、使用時に注入ノズル内等で混合するもの(2液性)が存在している。2液性の発泡ポリウレタンは、2種類のポリウレタン原料が別個の高圧容器に充填してあり、使用時に注入ノズル内等で混合させ化学反応により硬化させるタイプの発泡ポリウレタンである。発泡剤は、2種類のポリウレタン原料と一緒に高圧容器に充填してあるものが一般的である。2液性のポリウレタンは、1液性の発泡ポリウレタンよりも発泡量が大きく発泡不良が生じ難いため、施工時に取り扱い易い。
【0035】
このように、空間部分の略全体に発泡ポリウレタンを充填することで、既設窓枠2と新設窓枠1の間の空間部分を埋めることができ、止水性、気密性、断熱性、遮音性が高まるだけでなく、既設窓枠2と新設窓枠1とが強力に接着するので接合強度が高まり、耐風圧性能が増す。そのため、非常に頑丈な窓に改装することができる。既設窓枠2と新設窓枠1との間の空間部分は、新設窓枠1の外周側、すなわち窓枠の上下左右の四辺に生じるが、それら四辺全ての空間部分に発泡ポリウレタンが充填される。但し、当該空間部分の全てに一切の隙間なく発泡ポリウレタンを充填することを要求するものではなく、発泡ポリウレタンの発泡不足や充填量の不足により、多少の隙間が残存しても差し支えない。
【0036】
発泡ポリウレタンの充填作業は、既設窓枠2と新設窓枠1との間の空間部分の所望の箇所に注入ノズルを差し込み、2種類のポリウレタン原料と発泡剤とを、高圧容器内(1液性)又は注入ノズル内等(2液性)で混合しつつ注入するなどの方法によって行う。発泡ポリウレタンは、注入(充填)された箇所から徐々に発泡して空間部分を埋めていき、最終的には空間部分の隅々にまで行き渡る。このようにして、人の手が届かない隙間にも簡単に発泡ポリウレタンを充填することができるため、注入ノズルを差し込めない隙間に対しても発泡ポリウレタンを充填することが可能となる。
【0037】
仮に、発泡ポリウレタンを過剰に充填してしまい、空間部分から発泡ウレタンが溢れ出てしまっても、硬化後にカッターナイフなどで溢れ出た発泡ポリウレタン部分だけを簡単に削ぎ落とすことができるので、充填する量を気にせずに作業を行うことができる。そして、発泡ポリウレタンは、その種類によって異なるが、一般に約2分〜20分間で硬化し、既設窓枠2と新設窓枠1とを強固に接着する。充填作業は、熟練の技術を一切要せず、非常に簡便に、且つ、短時間で完了することができ、極めて高い耐震性、免震性、制振性、耐風圧性、止水性、気密性、断熱性、又は、遮音性を得ることができる。
【0038】
また、発泡ポリウレタンは硬化反応による発熱量が大きいため、その温度を測定することにより、発泡不良による不具合を検出することができる。通常、新設窓枠と既設窓枠との間の空間部分に充填した発泡ポリウレタンは、大部分は外部から見えないため、その発泡状態や硬化状態を視認することができないが、未だ硬化していない状態の発泡ポリウレタンの一部に、温度計の温度検知部を挿入して測定することで、発泡ポリウレタンの発泡状態や硬化状態の良否を簡易に判断することも可能である。発泡ポリウレタンが硬化する際に発する化学反応熱による温度上昇を検知することにより、発泡ポリウレタンの発泡状態や硬化状態の良否を簡易に判断できる。発泡ポリウレタン原料が硬化する際には化学反応により発熱するが、発熱量が小さい場合は、化学反応が十分に生じておらず、発泡ポリウレタンの発泡状態及び硬化状態が不完全となっている可能性がある。発泡状態及び硬化状態が不完全な場合は、新設窓枠と既設窓枠の接着強度が不十分になり、また、窓枠間の空間部分に大きな空洞が残存することがあり、耐震性、免震性、制振性、耐風圧性、止水性、気密性、断熱性、又は、遮音性が低下する。
【0039】
発泡ポリウレタンは断熱性が高いため、表面温度と内部温度が大きく異なる。したがって、正確な温度計測のためには、温度計の温度検知部を、充填した発泡ポリウレタンのなるべく中心部に挿入する必要がある。良否判断の基準となる温度は、使用する発泡ポリウレタンの種類により異なるため、適宜、基準となる温度を設けることが可能であるが、2液性簡易発泡硬質ウレタンフォーム(例えば、フォモジャパン株式会社製、品番:♯2205)の場合には、最高温度が110℃以上に上昇すれば、十分に発泡及び硬化したものと判断できる。より好ましくは120℃以上である。
【0040】
本発明における改装窓の施工手順としては、既設窓枠2に新設窓枠1を接合させたのち、新設窓枠1と既設窓枠2との間に生じる室外側と室内側の隙間部分のいずれか一方あるいは両方を粘着テープで塞ぎ、該粘着テープに発泡硬化体原料を注入する注入孔を穿設し、注入孔から発泡硬化体原料を注入して新設窓枠1と既設窓枠2との間の空間部分の略全体に発泡硬化体4を充填する方法があげられる。ここで、接合とは、新設窓枠1を既設窓枠2に接着、固定させるための手段であり、例えば、既設窓枠2と新設窓枠1とを直接、あるいは介装部材(フラットバー・アングル3)を介してビス止めで固定し、あるいは溶接によって固着させても良く、また、接着剤や粘着テープによって両窓枠を接着させても良い。但し、発泡硬化体4は、硬化することで既設窓枠2と新設窓枠1とを強固に接着して接合強度を高めるので、接合は、発泡硬化体4が硬化するまでの間、新設窓枠1が安定した状態を維持できる強度があれば足りる。介装部材の形状は、L字形、T字形、コの字形などのいずれの形状でも良く、必ずしも完全に窓枠に平行な面を有するように配置しなくてもよい。新設窓枠1を傾くことなく水平に維持できれば、介装部材は、新設窓枠1に対して、やや傾いた面を有していても良い。また、フラットバー3は、300mmから450mm程度のピッチでビスにより固定されるため、ピッチ間の隙間を透明又は半透明の粘着テープで塞ぐことで、発泡硬化体原料を注入した際の流出を防ぐことも可能となる。
【0041】
粘着テープに穿設された注入孔から発泡硬化体原料を注入した後に、新設窓枠1と既設窓枠2との間に生じる室外側と室内側の隙間部分のいずれか一方あるいは両方を化粧部材で塞ぐことも可能である。粘着テープは、化粧部材の取り付けに邪魔にならなければそのままでも良いし、剥がしてから化粧部材を取り付けても良い。新設窓枠1と既設窓枠2との間に生じる室外側と室内側の隙間部分のいずれか一方のみを注入孔を設けてある化粧部材で塞ぎ、他方は注入孔を設けていない化粧部材で塞ぐことも可能である。また、室外に面する既設窓枠2と新設窓枠1との隙間部分はバックアップ材をはめ込みシール等で充填しても良い。
【0042】
本発明における粘着テープとは、紙製のクラフト粘着テープ、布製の布粘着テープ、セロハンテープ、延伸ポリプロピレン製のOPP粘着テープなど、新設窓枠1と既設窓枠2との間の隙間部分を窓枠に接着するようにして塞ぐことのできるテープ状の素材であれば、いずれでも良い。発泡硬化体4を充填する前に粘着テープで隙間部分を塞ぐことで、充填された発泡硬化体4が隙間部分から溢れ出ないようにすることができる。例えば、透明又は半透明の粘着テープであれば、新設窓枠1と既設窓枠2との間の空間部分に注入された発泡硬化体4の充填具合を見ることができるため、効率良く発泡硬化体4を充填でき、さらに最適な発泡硬化体4の充填量を見極めることができるので、発泡硬化体4の使用量を節約することができる。
【0043】
なお、粘着テープは、片面だけに粘着剤が塗られたものだけでなく、いわゆる両面テープのように、両面に粘着剤が塗られたものを使用しても良い。例えば、両面テープを用いた場合、新設窓枠1と既設窓枠2との間の隙間部分を前記の化粧部材によって塞ぐ場合、両面テープの上から両面テープに貼り付くように化粧部材を接着させることができるため、非常に簡便に効率良く作業を行うことができる。片面テープを用いた場合でも、粘着テープを残したまま化粧部材を取り付けることはできるが、粘着テープが不要な場合は、化粧部材を取り付ける前に粘着テープを剥がす必要がある。この場合は、発泡硬化体4が硬化したのちに粘着テープを剥がすことで、充填された発泡硬化体4が隙間部分から溢れ出ることもなく、簡単に粘着テープを剥がして化粧部材を取り付けることができる。
【0044】
上記の説明では、既設窓枠2に新設窓枠1を取り付けて固定することを最初の施工手順としているが、例えば、新設窓枠1にフラットバー3を取り付けた後で、既設窓枠2に新設窓枠1を取り付けて固定し、発泡硬化体4を充填した後に目隠し、カバーの為のフラットバー3をさらに固定しても良く、施工の順番は特に限定されない。カバーのためのアングル・フラットバー3の隙間はコーキング材等によりシールすることで、窓枠内部への止水が可能となる。
【0045】
次に、本発明の第二の実施の形態にかかる窓構造体ついて説明する。第二の実施の形態にかかる窓構造体は、主に、FIX窓等に適用される。窓構造体は、窓用の開口部が形成された壁部と、開口部に設置された窓と、窓の外周に沿って設けられたサッシと壁部との間の一部又は全体に充填された発泡硬化体により構成されている。窓は略長方形であり、木製又は金属製のサッシが窓の四辺に設けられている。サッシの内側に溝が形成されており、この溝に透明又は半透明のガラスが嵌めこまれている。窓全体は、壁部に形成された開口部に収まる大きさ及び形状を有するものが用いられており、壁部と窓のサッシの隙間に、発泡硬化体が充填されている。
【0046】
第二の実施の形態にかかる窓構造体の施工方法としては、壁部に窓を接合させたのち、壁部とサッシとの間に生じる室外側と室内側の隙間部分のいずれか一方あるいは両方を粘着テープで塞ぎ、該粘着テープに発泡硬化体原料を注入する注入孔を穿設し、注入孔から発泡硬化体原料を注入して壁部とサッシとの間の空間部分に発泡硬化体を充填する方法があげられる。ここで接合とは、例えば、壁部とサッシとを直接あるいは介装部材を介して固定する方法があげられる。
【0047】
粘着テープに穿設された注入孔から発泡硬化体原料を注入した後に、壁部とサッシとの間に生じる室外側と室内側の隙間部分のいずれか一方あるいは両方を化粧部材で塞ぐことも可能である。粘着テープは、化粧部材の取り付けに邪魔にならなければそのままでも良いし、剥がしてから化粧部材を取り付けても良い。壁部とサッシとの間に生じる室外側と室内側の隙間部分のいずれか一方のみを注入孔を設けてある化粧部材で塞ぎ、他方は注入孔を設けていない化粧部材で塞ぐことも可能である。また、室外に面する壁部とサッシとの隙間部分はバックアップ材をはめ込みシール等で充填しても良い。なお、第二の実施の形態において、発泡硬化体、化粧部材、及び粘着テープは、第一の実施の形態で例示したものと同じものを使用することができる。
【0048】
発泡ポリウレタンの充填作業に際し、壁部とサッシとの間の空間部分に仮止め用のスペーサを、等間隔毎(例えば、35〜40cm毎)に挿入し、窓本体を壁部に固定しても良い。発泡ポリウレタンが充填された後、仮止め用のスペーサを外し、スペーサが挿入されていた部分(発泡ポリウレタンが充填されていない部分)にも発泡ポリウレタンを注入することで、窓構造体が得られる。
【0049】
次に、本発明の第三の実施の形態にかかる窓構造体について説明する。第三の実施の形態にかかる窓構造体は、主に、引き違い窓等に適用される。窓構造体は、窓用の開口部が形成された壁部と、開口部に設置された窓と、さらには窓枠とを備えている。窓は略長方形であり、引き違い窓の場合は、2枚の略長方形の窓が水平方向に交差することで、壁部に形成された開口部の開閉が行なわれる。窓には、木製又は金属製のサッシが四辺に設けられている。サッシの内側には溝が形成されており、この溝に透明又は半透明のガラスが嵌めこまれている。また、サッシの上辺及び下辺には摺動溝が形成されており、窓枠は、この摺動溝と係合するレール部を上辺及び下辺に有しており、このレール部に沿って、窓を左右に移動させることが可能となる。窓枠は、壁部に形成された開口部に収まる大きさ及び形状を有するものが用いられており、壁部と窓枠との空間部分に発泡硬化体が充填されている。
【0050】
第三の実施の形態にかかる窓構造体の施工方法としては、第二の実施の形態にかかる窓構造体の施工方法と同様の方法をとることができる。
【0051】
次に、許容水平変形量について説明する。許容水平変形量とは、窓に対して水平方向に層間変形を加える場合において、窓ガラスの破損を免れることが可能な水平方向への変形量の最大値をいう。図3は、窓ガラスとサッシについての模式図である。窓ガラス11はサッシ12に嵌め込まれている。サッシ12は、窓ガラス11を嵌め込むことが可能なように、上下左右の何れの辺においても、内側に溝が設けられている。ここで、図3では、サッシ12は外側にある長方形と、そのすぐ内側にある長方形により表示されているが、この内側の長方形を構成する各線分は、サッシ12の溝底を表示するものである。サッシ12の内法寸法は、窓ガラス11の寸法より大きく設定されており、若干のクリアランスが設けられている。
【0052】
許容水平変形量は、このクリアランスの大きさやサッシの内法寸法に依存するもので、許容水平変形量の理論値は、通常、Bouwkampの式(Δ=C+C+H/W×(C+C))により求められる。ここで、C〜C、H、Wは、図3からも分かるように、それぞれ下記の事項を意味する。
:サッシの右辺と窓ガラスの右辺との間のクリアランス
:サッシの左辺と窓ガラスの左辺との間のクリアランス
:サッシの上辺と窓ガラスの上辺との間のクリアランス
:サッシの下辺と窓ガラスの下辺との間のクリアランス
H:サッシの上下方向の内法寸法
W:サッシの左右方向の内法寸法
【0053】
ただし、本発明の改装窓及び窓構造体の許容水平変形量は、この許容水平変形量の理論値Δよりも大きな値をとる。本発明の改装窓及び窓構造体の許容水平変形量Δは、許容水平変形量の理論値Δに対して1.1倍、好ましくは1.2倍、より好ましくは1.3倍、さらに好ましくは1.5倍である。より好ましくは2倍、さらには3倍である。
【0054】
許容水平変形量ΔとC+C+H/W×(C+C)の差は、充填された発泡硬化体の厚さに対して、0.5〜1.8倍であることが好ましく、1.0〜1.7倍であることがより好ましく、1.2〜1.6倍であることがさらに好ましい。発泡硬化体の厚さに対して、許容水平変形量ΔとC+C+H/W×(C+C)の差が小さくなると、十分な耐震性が得られない傾向にある。ここで、発泡硬化体の厚さとは、改装窓又は窓構造体の上下方向及び水平方向に充填された発泡硬化体のうち、水平方向に充填された発泡硬化体の水平方向の厚さをいう。サッシ枠の形状によっては、窓の厚さ方向及び上下方向の位置が変われば発泡硬化体の厚さも変化することがあるが、ここでは、水平方向の厚さの平均値をとる。
【0055】
許容水平変形量Δは発泡硬化体の厚さに依存するため、可能な限り、厚く充填することが好ましい。発泡硬化体の厚さとしては、5〜35mmであることが好ましく、10〜30mmであることがより好ましく、15〜25mmであることがさらに好ましい。発泡硬化体の厚さが5mm未満となると、許容水平変形量Δが小さくなって十分な耐震性が得られず、発泡硬化体の厚さが35mmより大きくなると、改装窓又は窓構造体の強度が十分でなくなる傾向にある。
【0056】
次に、本発明の第四の実施の形態にかかる扉構造体について説明する。図4は、本発明の実施の形態にかかる扉構造体の一例である。扉構造体は、扉用の開口部が形成された壁部35と、開口部に設置された扉31とを備えている。扉31は略長方形であり、ノブ34を有し、蝶番33により扉枠32に蝶着されている。扉枠32も同様に略長方形であり、扉31を開閉することができるよう、その開口部が、扉31と内接するよう形成されている。発泡硬化体4は、扉枠32と壁部35との間の空間部分の一部又は全体に充填されている。
【0057】
第四の実施の形態にかかる扉構造体の施工方法としては、第二の実施の形態にかかる窓構造体の施工方法と同様の方法をとることができる。
【0058】
本発明は、新築だけでなく、築年数が数十年経過した建物、マンション、アパート、ホテル、病院、学校、公共施設等における窓又は扉の取替え工事において利用できる。また、現場で発生する騒音問題も騒音が小さく、建付けにおいても溶接しないため、火気の心配がなく、環境問題においてもエコ工法として推奨できる。
【実施例】
【0059】
(実施例1)
第一の実施の形態で記載した方法で、既設窓枠と新設窓枠との間の空間部分の略全体に、2液性簡易発泡硬質ウレタンフォーム(フォモジャパン株式会社製、品番:♯2205)による発泡硬化体を充填した、既存サッシ枠と新規サッシ枠が連結した試験体Xを作製し、静的変形能試験を実施した。試験体Xの水平断面図を図11に示す。図11からわかるように、発泡ウレタン4は、H鋼10のフランジ、既設サッシ枠2、及び新規サッシ枠1により形成される空間に充填されている。なお、窓構造体の壁部に相当する部分については、後述する実施例2と同様に、H鋼10を用いた。H鋼10と既存サッシ1はスペーサ13を介して、ドリリングタッピングねじ14により固定し、既存サッシ枠1の下枠のみ下水平材(下辺のH鋼)に溶接したアングルにサッシアンカーを溶接してモルタルを充填した。連結試験体の寸法は以下のものを用いた。
【0060】
既存サッシ枠の内法寸法:W=1800mm,H=2085mm
新規サッシ枠の内法寸法:W=1730mm,H=1990mm
H鋼の内法寸法:W=1850mm,H=2200mm
窓:引き違い窓
クリアランス:上辺、下辺、左辺、右辺のいずれも7mm
ガラス :8mm厚フロート板
【0061】
(静的変形能試験)
面内せん断試験装置内に作製した試験体Xを垂直に設置し、下水平材を試験装置の固定台に緊結した。その後、試験体の上辺に対して水平方向に正負の層間変形を加え、水平方向の変位、上下方向の変位を測定した。結果を表1に示す。
【0062】
【表1】

【0063】
(実施例2)
試験体として、図5〜7で表される模擬窓構造体を作成した。図5は、実施例2にかかる模擬窓構造体の外観図であり、図6は、実施例2にかかる模擬窓構造体の水平方向の断面図である。また、図7は、実施例2にかかる模擬窓構造体のA−A線矢視断面図である。実施例2の模擬窓構造体は、窓構造体の壁部に相当するH鋼10と、窓ガラス11が嵌め込まれたサッシ12と、H鋼10とサッシ12により形成される空間の一部又は全体に充填された発泡硬化体4により構成されている。H鋼10は、縦に2本のフランジ、横に1本のウェブから構成されるH形の鋼材であり、H鋼のフランジ部分がサッシ12の四方を囲むように、四本のH鋼が長方形を形成するよう連結されている。
【0064】
窓ガラス11は、サッシ12の内側に設けられた凹形状の溝に差し込まれており、サッシ12の凹部底面12aと窓ガラス11の端面11aとの間は隙間が確保されている。この底面12aと端面11aとの最短距離が、Bouwkampの式におけるクリアランスである。窓ガラス11は、グレイジングチャンネル20を介在させることで、サッシ12に固定される。このグレイジングチャンネル20は、塩化ビニル系樹脂等の弾性体が主に用いられ、窓ガラス11の端面11aがサッシ12の溝と直接接触して割れることを防いでいる。
【0065】
H鋼10とサッシ12との間の空間部分の略全体には、2液性簡易発泡硬質ウレタンフォーム(フォモジャパン株式会社製、品番:♯2605)による発泡硬化体を充填した試験体Yを作製し、実施例1と同様にして静的変形能試験を実施した。なお、試験体の寸法は以下のものを用いた。結果を表2に示す。
【0066】
H鋼の内法寸法:W=1850mm,H=2200mm
FIX窓枠のサッシの内法寸法:W=1740mm,H=2065mm
サッシ幅:35mm
発泡ウレタンの厚さ:20mm
クリアランス:上辺、下辺、左辺、右辺のいずれも7mm
ガラス :5mm厚トーメイ
【0067】
【表2】

【0068】
(比較例1)
試験体として、図8〜10で表される模擬窓構造体を作成した。図8は、比較例1にかかる模擬窓構造体の外観図であり、図9は、比較例1にかかる模擬窓構造体の水平方向の断面図である。また、図10は、比較例1にかかる模擬窓構造体のA’−A’線矢視断面図である。比較例1の模擬窓構造体は、窓構造体の壁部に相当するH鋼10と、窓ガラス11が嵌め込まれたサッシ12により構成されている。サッシ12は、H鋼10とサッシ12により形成される空間に設置されたスペーサ13(アルミ製、20mm厚)により固定されている。スペーサ13は、略直方体であり、H鋼10のフランジ部分とサッシ12の側端の両方に接するように設置され、ナット21とボルト22によりH鋼10のフランジ部分に固定されている。また、スペーサ13は、サッシ12に沿って、等間隔で350mm毎に配置されている。得られた試験体Zは、実施例1と同様にして静的変形能試験を実施した。なお、試験体の寸法は実施例2と同一である。結果を表3に示す。
【0069】
【表3】

【符号の説明】
【0070】
1 新設窓枠
2 既設窓枠
3 アングル・フラットバー
4 発泡ウレタン
5 壁部
6 引違い窓
10 H鋼
11 窓ガラス
12 サッシ
13 スペーサ
14 ドリリングタッピングねじ
20 グレイジングチャンネル
21 ナット
22 ボルト
31 扉
32 扉枠
33 蝶番
34 ノブ
35 壁部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設窓枠と新設窓枠との間の空間部分の略全体に発泡硬化体が充填された、略長方形の窓構造体において、窓構造体の上辺に対して水平方向に層間変形を加えた時に、窓構造体の許容水平変形量ΔがC+C+H/W×(C+C)より大きくなる窓構造体。
:窓構造体のサッシの右辺と窓ガラスの右辺との間のクリアランス
:窓構造体のサッシの左辺と窓ガラスの左辺との間のクリアランス
:窓構造体のサッシの上辺と窓ガラスの上辺との間のクリアランス
:窓構造体のサッシの下辺と窓ガラスの下辺との間のクリアランス
H:窓構造体のサッシの上下方向の内法寸法
W:窓構造体のサッシの左右方向の内法寸法
【請求項2】
略長方形の窓用の開口部が形成された壁部と、開口部に設置された窓とを備え、
窓の外周に沿って設けられたサッシと壁部との間の一部又は全体に発泡硬化体が充填されている窓構造体において、窓構造体の上辺に対して水平方向に層間変形を加えた時に、窓構造体の許容水平変形量ΔがC+C+H/W×(C+C)より大きくなる窓構造体。
:サッシの右辺と窓ガラスの右辺との間のクリアランス
:サッシの左辺と窓ガラスの左辺との間のクリアランス
:サッシの上辺と窓ガラスの上辺との間のクリアランス
:サッシの下辺と窓ガラスの下辺との間のクリアランス
H:サッシの上下方向の内法寸法
W:サッシの左右方向の内法寸法
【請求項3】
略長方形の窓用の開口部が形成された壁部と、開口部に設置された窓とを備え、
窓の外周に沿って設けられたサッシに形成された摺動溝と係合するレール部を有する窓枠と壁部との間の一部又は全体に発泡硬化体が充填されている窓構造体において、窓構造体の上辺に対して水平方向に層間変形を加えた時に、窓構造体の許容水平変形量ΔがC+C+H/W×(C+C)より大きくなる窓構造体。
:サッシの右辺と窓ガラスの右辺との間のクリアランス
:サッシの左辺と窓ガラスの左辺との間のクリアランス
:サッシの上辺と窓ガラスの上辺との間のクリアランス
:サッシの下辺と窓ガラスの下辺との間のクリアランス
H:サッシの上下方向の内法寸法
W:サッシの左右方向の内法寸法
【請求項4】
発泡硬化体が発泡ポリウレタンであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の窓構造体。
【請求項5】
許容水平変形量ΔとC+C+H/W×(C+C)の差が、充填された発泡硬化体の厚さの0.5〜1.8倍であることを特徴とする請求項1〜4に記載の窓構造体。
【請求項6】
略長方形の窓用の開口部が形成された壁部と、開口部に設置された窓とを備え、窓の外周に沿って設けられたサッシと壁部との間の一部又は全体に発泡硬化体が充填されている窓構造体の製造方法において、
窓を壁部に固定させたのち、サッシと壁部との間に生じる室外側と室内側の隙間部分のいずれか一方あるいは両方から、サッシと壁部との間の一部又は全体に発泡硬化体原料を注入し、発泡硬化体原料を硬化反応させることで発泡硬化体とすることを特徴とする窓構造体の製造方法。
【請求項7】
略長方形の窓用の開口部が形成された壁部と、開口部に設置された窓とを備え、窓の外周に沿って設けられたサッシに形成された摺動溝と係合するレール部を有する窓枠と壁部との間の一部又は全体に発泡硬化体が充填されている窓構造体の製造方法において、
窓枠を壁部に固定させたのち、窓枠と壁部との間に生じる室外側と室内側の隙間部分のいずれか一方あるいは両方から、窓枠と壁部との間の一部又は全体に発泡硬化体原料を注入し、発泡硬化体原料を硬化反応させることで発泡硬化体とすることを特徴とする窓構造体の製造方法。
【請求項8】
略長方形の扉用の開口部が形成された壁部と、開口部に設置された扉とを備え、
扉を蝶着する扉枠と壁部との間の一部又は全体に発泡硬化体が充填されている扉構造体。
【請求項9】
略長方形の扉用の開口部が形成された壁部と、開口部に設置された扉とを備え、扉を蝶着する扉枠と壁部との間の一部又は全体に発泡硬化体が充填されている扉構造体の製造方法において、
扉枠を壁部に固定させたのち、扉枠と壁部との間に生じる室外側と室内側の隙間部分のいずれか一方あるいは両方から、扉枠と壁部との間の一部又は全体に発泡硬化体原料を注入し、発泡硬化体原料を硬化反応させることで発泡硬化体とすることを特徴とする扉構造体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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