説明

窓用空気調和機の送風構造

【課題】 冷房能力の向上を実現した窓用空気調和機の構造に関する。
【解決手段】 枠体1には室内送風機2と室外送風機3と冷凍サイクルを構成する圧縮機4・コンデンサ5・エバボレータ6を備え、枠体1内を仕切壁7で二室に分割し、室外側空気流路13にはコンデンサ5と室外送風機3とを配置し、室内側空気流路10には仕切壁7と間隔14をあけてエバポレータ6を配置し、エバポレータ6の前面側に室内送風機2を配置し、室内送風機2の周囲にファンケース15を形成する。フロントパネル1aの側面に室内空気吸入口8を縦長に形成し、フロントパネル1aの上面に室内空気吹出口9を横長に形成し、室内側空気流路10には室内空気吸入口8から間隔14に向かう空気流を形成し、間隔14に送られた空気はエバポレータ6を通過してファンケース15に流入して送風ファン2によって上方に向けられ、室内空気吹出口9から吹き出す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、窓用空気調和機の送風構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
窓用空気調和機は枠体内にエバポレータ・コンデンサ・圧縮機からなる冷凍サイクルを備え、枠体は前後に仕切られており、室外側にコンデンサを、室内側にエバポレータを配置し、室内送風機によって室内空気が室内空気吸入口から枠体内に送られてエバポレータを通過するときに冷却され、この冷却された室内空気を室内空気吹出口から室内に戻すことによって室内空気の空気調和が行われている。
【0003】
窓用空気調和機は縦長形状の枠体であり、室内側にはその上部から中央部にかけて、エバポレータとクロスフローファンによる室内送風機とが配置され、室内側のベースには圧縮機が配置され、それぞれエバポレータと圧縮機とを備えた部屋の間は仕切板によって区画されている。そして、室内空気吹出口は枠体前面に縦長に設けられ、室内空気吸入口は室内空気吹出口と隣接するように枠体前面に配置してある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−246465
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
室内空気吹出口から空気調和された冷風が吹出す時、室内空気吹出口の内壁面や、その周辺の枠体の前面板は低温度に冷却されている。そして、室内送風機によって吹き出された低温空気は周囲の室内空気を巻き込んで、室内空気吹出口の周辺に渦巻き空気流を作っており、この巻き込み空気流は除湿前の室内空気であるから、吹出口の周辺の低温部に触れれば、空気中の水蒸気が結露するものである。
【0006】
室内空気吹出口が縦長に構成してあるものは、室内空気吹出口の周縁で結露が発生すると、付着した水滴のうちで一つでも重力によって下方に流れ始めれば、水滴が集まって急に大きくなり、やがて室内空気吹出口の下端から枠体前面板を伝って室内に結露水が滴下するトラブルとなる。このため、室内空気吹出口の下部に結露水を回収する受け皿を設け、室内空気吹出口を流れる結露水を枠体内に回収して処理する構造が必要となる。一方、運転開始時のような高湿度の時にこのようなトラブルが発生しても、空気調和機を運転して室内の除湿が進めば自然にトラブルの進行が止まるから、何等対策がとられていないものもある。
【0007】
また、枠体前面に室内空気吹出口と室内空気吸入口とが隣接するように配置してあるため、室内空気吹出口から吹き出す空気が室内空気吸入口に吸い込まれるショートサーキットとよばれる現象が発生しやすいものとなっている。このための従来の対策は、室内空気吹出口に隣接する室内空気吸入口に冷風が向かないようにする必要があり、可変ルーバーを備えたものは、枠体の正面から室内空気吸入口のない側の斜め前方の間で吹出方向を可変する設定となっている。このように冷風の吹出方向が制限されるため、一定の範囲にしか冷風が届かないものであり、室内空気吹出口が室内の壁に近い側に配置されているときは、室内の中央や人がいる方向に向かって風を吹き出すことができず、空気調和機が設置される位置によって使い勝手に大きな差が生じてしまうものであった。
【0008】
また、近年は材料費の高騰が進んで生産コストが上昇する傾向にあるため、コストダウンの要求が高まってきている。従来のものは、室内側のエバポレータを枠体前面の空気吸入口と対向する位置に設けているため、エバポレータとコンデンサが離れた位置に設置されており、枠体内の部品の配置効率が悪いという課題がある。そこで、コストダウンの要求に応えるため、圧縮機とエバポレータとコンデンサをできるだけコンパクトにまとめて配置できるようにし、圧縮機とエバポレータとコンデンサを接続する冷媒配管や断熱材などの部品についてもコンパクトな形状で構成して使用される材料費の削減を図る必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は上記の課題を解決するもので、枠体1には室内送風機2と、室外送風機3と、冷凍サイクルを構成する圧縮機4・コンデンサ5・エバボレータ6とを備えるとともに、前記枠体1は室内側にフロントパネル1aと、室外側に向けたリアパネル1bと、枠体1内を二室に分割する仕切壁7とを設け、前記フロントパネル1aには室内空気吸入口8と室内空気吹出口9とを配置し、前記仕切壁7で仕切られて室内空気吸入口8から室内空気吹出口9を連絡する室内側空気流路10には、前記エバボレータ6と前記室内送風機2とを配置し、前記リアパネル1bには室外空気吸入口11と室外空気吹出口12とを配置し、前記仕切壁7で仕切られて室外空気吸入口11から室外空気吹出口12を連絡する室外側空気流路13には、前記コンデンサ5と前記室外送風機3とを配置し、前記圧縮機4で高温高圧に圧縮された冷媒はコンデンサ5によって液化し、液化した冷媒はエバボレータ6で気化して室内側空気流路10を通過する室内空気を冷却する窓用空気調和機において、前記室内空気吸入口8を前記フロントパネル1aの側面に縦長に形成し、前記室内側空気流路10内には前記エバポレータ6を前記仕切壁7と間隔14をあけて対向するように配置し、前記エバポレータ6の前面側に前記室内送風機2を配置すると共に、前記室内送風機2の周囲を囲んで前記室内空気吹出口9に向かう空気流を作るファンケース15を形成し、該ファンケース15は前記室内側空気流路10と連通する空気流入口15aをエバポレータ6の前面にのぞませて配置し、前記室内空気吹出口9を前記フロントパネル1aの上面に横長に形成してファンケース15の出口15bを接続し、前記室内側空気流路10には前記室内空気吸入口8から前記間隔14に向かう空気流を形成し、前記間隔14に送られた空気は前記エバポレータ6を通過して前記ファンケース15に流入し前記送風ファン2によって上方に向けられて前記室内空気吹出口9から吹き出すように構成したことを特徴とするものである。
【0010】
また、前記室内側空気流路10には前記フロントパネル1aの側面と前記ファンケース15の側面との間に空気流通間隙10aを形成し、前記フロントパネル1aの側面に設けた前記室内空気吸入口8が前記エバポレータ6と前記空気流通間隙10aと対向することにより、枠体1の奥行き寸法を広げることなく室内空気吸入口8を形成するスペースが確保できる。
【0011】
また、前記エバポレータ6の側面にU字状の接続パイプ6aを設け、前記エバポレータ6は前記接続パイプ6aが前記室内空気吸入口8を向くように前記室内側空気流路10内に配置し、前記室内空気吸入口8から前記室内側空気流路10に流入する空気が前記接続パイプ6aの周囲を通過して前記間隔14に向かうことにより、エバポレータ6の全体で室内空気と熱交換が可能となる。
【0012】
また、前記室内側空気流路10の下部に仕切板16を設けて前記室内側空気流路10とは区画された下部空間17を形成し、該下部空間17内には前記圧縮機4と空気調和機の制御基板18を配置し、前記エバポレータ6と前記圧縮機4を枠体1の片側に寄せて配置すると共に、前記下部空間17の他側に前記制御基板18を配置し、前記制御基板18は前記エバポレータ6よりも枠体1前面側で前記フロントパネル1aの前面もしくは側面と対向するように配置されていることにより、制御基板18をエバポレータ6からのドレン水が滴下する方向から離れて配置できる。
【0013】
前記ファンケース15を前記仕切板16より高所に配置し、前記ファンケース15の底面と前記仕切板16との間に間隙19を形成したことにより、仕切板16はファンケース15を流れる冷気による影響を受けず結露することがない。
【発明の効果】
【0014】
この発明の空気調和機は、枠体1のフロントパネル1aの上面に横長の室内空気吹出口9を形成し、枠体1の正面上部から冷風を吹き出すように構成したから、室内空気吹出口9から吹き出す冷風は室内の高所から横方向に広がりながら床面に向かって流れるものとなり、冷気が室内の全体に循環しやすくなって冷房効果を向上することができるものとなった。また、室内空気吸入口8をフロントパネル1aの側面に配置して枠体1の側方の室内空気を吸い込む構成であるから、室内空気吹出口9から吹き出す冷風が室内空気吸入口8の方向を向くことはなく、吹出角度を大きく広げることが可能となり、枠体1が壁に接近するように設置されているときでも、冷風の吹出方向を確実に室内の中央に向けることができるので、壁に沿って冷気が流れることはなくなり、空気調和機の設置条件が緩和できるものとなった。
【0015】
また、室内空気吹出口9の周縁で結露が発生しても、水滴は室内空気吹出口9に付着したままか、枠体1内に滴下するものとなり、従来のように室内空気吹出口を伝って枠体の下方に流れることはなく、水滴が室内に滴下する心配はなくなった。更に、室内空気吹出口9が室内の高所に位置しているから、室内空気吹出口9から手や異物が挿入されることを防ぐことができるものである。
【0016】
また、圧縮機4とコンデンサ5とエバポレータ6を枠体1内の仕切壁7の付近に配置できるものとなり、圧縮機4とコンデンサ5とエバポレータ6に接続する冷媒配管や断熱材などの部材もコンパクトな形状で構成することができるものとなり、使用部品の材料費を抑えることができるから、生産コストの低減が実現できるものとなった。
【0017】
また、室内側空気流路10はフロントパネル1aの側面とファンケース15の側面との間に空気流通間隙10aを形成し、フロントパネル1aの側面の室内空気吸入口8を空気流通間隙10aと対向する位置にも形成することで、枠体1の奥行き寸法を広げることなく室内空気吸入口8の開口面積を確保することができるものとなる。このため、枠体1の奥行き寸法を変更する必要がなく、空気調和機の設置構造は従来のまま変更することなく、室内空気吹出口9から吹き出す冷風が室内空気吸入口8に向かうショートサーキット現象を発生させない空気調和機が実現できるものとなった。
【0018】
また、エバポレータ6の側面にはU字状の接続パイプ6aが設けられており、接続パイプ6aにも冷媒が流れている。このため、エバポレータ6の接続パイプ6aが室内空気吸入口8を向くように室内側空気流路10内に配置することにより、室内空気吸入口8から空気流通間隙10aに流入した空気が間隔14に向かうときに接続パイプ6aの周囲を通過するから、エバポレータ6のU字状の接続パイプ6a部分でも熱交換が行われ、エバポレータ6の全体で熱交換が可能となるから、熱交換効率が向上するものとなった。
【0019】
また、室内側空気流路10の下部に仕切板16を設けて室内側空気流路10とは区画された下部空間17を形成し、下部空間17内の片側に寄せて圧縮機4を設置し、他側に空気調和機の制御基板18を配置したものであり、制御基板18は室内側空気流路10のエバポレータ6よりも枠体1前面側に位置し、フロントパネル1aの前面もしくは側面と対向するように取り付けられている。エバポレータ6から滴下するドレン水は室外側に誘導され、フロントパネル1aの表面で結露を発生させることがないから、制御基板18はエバポレータ6からのドレン水が処理される方向から離れて配置できるものとなり、制御基板18の防水対策が簡略化でき、生産コストの低減やメンテナンス性の向上が期待できるものとなった。
【0020】
また、ファンケース15にはエバポレータ6を通過した後の冷気が流れているため、ファンケース15の表面の温度が低下して結露することがあるが、この発明ではファンケース15を仕切板16より高所に配置して、ファンケース15の底面と仕切板16との間に間隙19を形成し、仕切板16がファンケース15と接触せず、ファンケース15によって直接冷却されない構成としたから、仕切板16の表面で結露することはなく、仕切板16の下方の下部空間17に配置された制御基板18の付近は冷気による結露の影響を受けず、制御基板18の防水構造が簡略化でき、生産コストの低減やメンテナンス性の向上が期待できるものとなった。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】この発明の実施例を示す窓用空気調和機の要部の縦断面図である。
【図2】この発明の実施例を示す窓用空気調和機の要部の横断面図である。
【図3】この発明の実施例を示す窓用空気調和機の要部の正面断面図である。
【図4】この発明の実施例を示す窓用空気調和機の仕切板を一部切り欠いた要部の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
実施例を示す図によってこの構成を説明すると、1は窓用空気調和機を構成する枠体、1aは枠体1の室内側を構成するフロントパネル、1bは枠体1の室外側を構成する室外側に向けたリアパネル、7は枠体1内を室内側と室外側の二室に分割する仕切壁である。
8は空気調和するために枠体1内に室内空気を取り込む室内空気吸入口、9は空気調和後の空気を室内に吹出す室内空気吹出口であり、共に前記フロントパネル1aに設けられている。10は前記仕切壁7で仕切られて室内空気吸入口8から室内空気吹出口9を連絡するよう構成された室内側空気流路、2はこの室内側空気流路10内に配置した室内送風機である。
11は室内空気を空気調和するための処理空気を室外から取り込む室外空気吸入口、12はこの処理空気を室外に排出する室外空気吹出口であり、共に前記リアパネル1bに設けられている。13は前記仕切壁7で仕切られて室外空気吸入口11から室外空気吹出口12を連絡するよう構成された室外側空気流路、3はこの室外側空気流路13内に配置した室外送風機である。
【0023】
1cは枠体1のベース、4は枠体1内のベース1cの上に設置された圧縮機、5は前記室外側空気流路13内に設置したコンデンサ、6は前記室内側空気流路10内に設置したエバボレータ、4aは圧縮機4とコンデンサ5とエバポレータ6とを接続する冷媒配管であり、この圧縮機4によって圧縮されて高圧高温のガス状となった冷媒はコンデンサ5に送られて液化し、この液体の冷媒は次にエバポレータ6に送られて気化し、この時の気化熱で室内側空気流路10の室内空気を冷却する。そして、エバポレータ6で気化した冷媒は再び圧縮機4に送られて圧縮されてコンデンサ5に送られており、冷凍サイクルを構成している。
【0024】
窓用空気調和機は、窓枠に載せて設置する奥行き寸法が大きく取れない縦に長い枠体形状となっており、室内側空気流路10と圧縮機4は枠体1内に上下に配置される。16は圧縮機1と室内側空気流路10との間に配置されて枠体1内を上下に区画する仕切板、17は仕切板16の下方に形成される下部空間であり、圧縮機4は下部空間17内に設置されている。
【0025】
20はエバポレータ6の下方に配置したドレン受け、20aはドレン受け20のドレン水をコンデンサに誘導する導水路であり、ドレン受け20と導水路20aは仕切板16の上面に形成されており、導水路20aは仕切壁7を貫通して室外側空気流路13のコンデンサ5に届いている。室内空気がエバポレータ6を通過するときに空気中に含まれる水分が結露してエバポレータ6の表面に付着し、ドレン水となってドレン受け20に滴下し、ドレン受け20に滴下したドレン水は導水路20aを流れてコンデンサ5に誘導される。
21はコンデンサ5の下方に配置した下部ドレン受けであり、下部ドレン受け21は仕切壁7より室外側の枠体1のベース1cに形成されており、導水路20aによって誘導されたドレン水はコンデンサ5をつたって下方に流れ、このときドレン水の一部はコンデンサ5の熱で蒸発して水蒸気となって室外空気吹出口12から室外に排出され、コンデンサ5で蒸発できなかったドレン水は下部ドレン受け21に溜まる。
【0026】
下部ドレン受け21には図示しない回転板を備えており、回転板はドレン受けに溜められたドレン水の中に位置しており、回転板が回転すると下部ドレン受け21のドレン水がかきあげられてコンデンサ5に散水される。コンデンサ5に付着したドレン水はコンデンサ5の熱で蒸発して水蒸気となり、室外空気吹出口12から室外に排出されており、ドレン水をコンデンサ5で蒸発させることによって、下部ドレン受け21のドレン水を排水することなく処理できるものである。また、コンデンサ5にドレン水をかけることによってコンデンサ5が冷却されるので、冷媒の冷却効率がよくなり、冷房能力の向上が期待できるものとなった。
【0027】
一般的な窓用空気調和機は、窓枠に乗せることができる奥行き寸法が大きく取れない縦に長い枠体形状であるため、室内空気吸入口と室内空気吹出口を枠体のフロントパネルの前面に隣接して配置しなければならないと考えられてきた。このため、室内空気吹出口から吹き出す冷気が室内空気吸入口に向かないようにする必要があり、冷気の吹出方向を可変するルーバーを使うときは、枠体正面から室内空気吸入口のない斜め前方の間でしか吹出方向が変更できないようになっていた。
このような構成であるから、縦長の室内空気吹出口から吹き出す冷気は横方向への広がりが少なく、室内空気吹出口からの送風が狭い範囲に限られてしまうため、枠体が室内の壁に接近して設置されるときは、冷気が壁に沿って流れやすくなり速やかに室内に循環せず、室内の温度むらが大きくなりやすいものであった。
【0028】
この発明は、縦に長い枠体形状を持つ窓用空気調和機であっても、従来にはない新しい室内空気吸入口8と室内空気吹出口9の配置構造を実現するものであり、この新たな配置構造を実現するために枠体1内の送風構造を特定したものである。
【0029】
そして、この発明では、枠体1の仕切壁7より前面側のフロントパネル1aの側面に室内空気吸入口8を縦長に形成し、フロントパネル1aの上面に室内空気吹出口9を横幅広く形成している。実施例の室内空気吸入口8はフロントパネル1aの両側面に形成されているが、空気流が確保できれば室内空気吸入口8はフロントパネル1aの一方の側面だけに設けてもよい。
【0030】
エバポレータ6は室内側空気流路10内の片側に寄せて室外側空気流路13の室外送風機3と並べて配置されており、14はエバポレータ6と仕切壁7との間に形成される間隔であり、エバポレータ6は間隔14をあけて仕切壁7と対向するように配置されている。
【0031】
また、室内送風機2はシロッコファンで構成され、エバポレータ6の前面側に室内送風機2を配置しており、15は室内送風機2を囲むように形成された送風ケーシングを構成するファンケース、15aは室内側空気流路10とファンケース15内を連通するファンケース15の空気流入口、15bは室内空気吹出口9に接続するファンケース15の出口、2aはファンケース15の空気流入口15aの中央に配置された室内送風機2のモータであり、モータ2aに通電して室内送風機2が回転すると室内空気流入口15aから空気が吸い込まれ、出口15bに向かう空気流が形成される。
15cはファンケース15の空気流入口15aの周囲に設けた空気誘導部材であり、ファンケース15は空気誘導部材15cがエバポレータ6の前面に接続されて空気流入口15aがエバポレータ6と対向するように配置され、ファンケース15の出口15bは上方に向けられてフロントパネル1aの上面に設けた室内空気吹出口9に接続している。
この構成では、室内送風機2が回転すると、フロントパネル1a側面の室内空気吸入口8から室内側空気流路10に室内空気が流入し、室内側空気流路10内には室内空気吸入口8から間隔14に向かう空気流を作り出し、間隔14に送られた空気は枠体1の前方側を向いてエバポレータ6を通過し、空気誘導部材15cを経て空気流入口15aからファンケース15に流入する。そして、ファンケース15内で上方に向かう空気流が形成され、ファンケース15の出口15bを経て室内空気吹出口9から室内に吹き出すものである。
【0032】
この構成では、室内空気吹出口9を枠体1の横幅のほぼ全体となるよう横に長く構成したことで、横幅広く構成した室内空気吹出口9の全体から冷風を吹き出すことができるから、枠体1前方の広い範囲に冷風を吹き出すことができるものとなった。また、室内空気吹出口9が室内の天井付近に位置しているから、冷風が室内の天井付近から床面に向かって流れるものとなる。このため、冷風はすぐに床面付近に流れることがなく、空気調和機の前方に広がりながら空気調和機から離れた遠い範囲まで届きやすくなり、冷気が速やかに室内に循環するものとなった。
【0033】
また、この構成では、室内側空気流路10内の室内送風機2がエバポレータ6よりも前方に位置しており、フロントパネル1aの上面に設けた室内空気吹出口9も枠体1前面側に位置しているから、室内空気吹出口9から吹き出す冷風は枠体1の側方に向かうことはなく、枠体1前面の前方に向かうものとなる。そして、室内空気吸入口8がフロントパネル1aの側面に配置され、枠体1の側方の空気を吸い込むから、室内空気吹出口9から吹き出す冷気が室内空気吸入口8に吸い込まれることはなくなり、ショートサーキット現象を発生させることがなくなった。
【0034】
9aは室内空気吹出口9に設けたルーバーであり、冷気の吹き出し方向を上下及び左右に変更できるようにしている。この発明ではルーバー9aによって冷気の吹き出し方向を左右に変更して枠体1の斜め前方に向けたときでも、冷気は枠体1の側方に向かうことがなく、冷風がフロントパネル1aの側面に設けた室内空気吸入口8に吸い込まれることがないから、ルーバー9aの吹き出し角度を枠体1前方の広い範囲に設定することができるものとなった。
【0035】
このため、枠体1の側面が室内の壁面に接近して設置されるときに、ルーバー9aによって室内空気吹出口9から吹き出す冷気を、ショートサーキット現象を発生させることなく、室内の壁面とは反対方向の室内の中央に向けることができるものとなり、枠体1が室内の左右どちらの壁面と接近しているかは関係なく、冷気が速やかに室内に循環するものとなったから、室内の温度むらを発生させず、冷房効果が向上できるものとなった。
【0036】
また、エバポレータ6が室内送風機2よりも仕切壁7側に配置されているから、エバポレータ6はフロントパネル1aとは対向せず、フロントパネル1aから離れた枠体1内に位置しており、エバポレータ6とコンデンサ5と圧縮機4を枠体1内の仕切壁7の付近に配置できるから、圧縮機4とコンデンサ5とエバポレータ6の距離を近づけて枠体1内にコンパクトにまとめて配置することができる。
【0037】
従来はエバポレータが室内空気吸入口と対向するようにフロントパネルの内側に沿って配置されており、ドレン受けや冷媒配管もフロントパネルの内側に沿って配置されるものが一般的な構成となっており、冷媒配管の冷気の影響でフロントパネルの表面でも結露を発生させる恐れがあるため、冷媒配管には断熱材を取付ける必要がある。しかしながら、エバポレータとコンデンサが枠体内の前後の離れた位置に配置されているため、冷媒配管の長さが必要となり、ドレン受けや断熱材の形状も大きくなり、これら部品に使用される材料が多く必要となり、生産コストの増加につながっていた。
【0038】
この発明では、エバポレータ6とコンデンサ5との距離を短くできるから、ドレン受け20や導水路20aをコンパクトな形状で構成することができ、また、冷媒配管4aを枠体1内の仕切壁7の付近にまとめて配置することができるので、冷媒配管4aの長さを短くでき、構造を簡略化できるものとなった。更に、冷媒配管4aがフロントパネル1aと対向しない枠体1内に配置できるから、冷媒配管4aの冷気の影響によるフロントパネル1a表面の結露の心配はなくなり、冷媒配管4aに取り付けていた結露防止用の断熱材の使用量も少なくできるので、冷媒配管4aや断熱材にかかる材料費を抑えることができるものとなり、コストの低減が可能となる。
【0039】
また、空気調和機の組立て手順は、冷凍サイクルを構成する圧縮機4とコンデンサ5とエバポレータ6を枠体1に取付けて冷媒配管4aを接続した後、室内送風機2や室外送風機3などの部品を取付けるものである。この発明では、エバポレータ6が室内送風機2よりも仕切壁7に近い枠体1内側に配置されるから、エバポレータ6が先に枠体1に取付けられていても、室内送風機2の取り付け作業の妨げにはならず、作業性が向上できる。更に、室内送風機2とモータ2aはファンケース15によって予め一体に構成しておくことができ、エバポレータ6の前面にファンケース15ごと取付ければよく、組立てライン上での室内送風機2とモータ2aの取り付け作業は不要となるから、生産性が向上でき、生産コストの低減が可能となる。
【0040】
また、室内空気吹出口9から冷気が吹き出すため、室内空気吹出口9の内壁面やその周辺の枠体1のフロントパネル1aの表面は低温度に冷却される。そして、室内空気吹出口9の周辺の除湿前の室内空気が室内空気吹出口9やその周辺の低温部に触れると、結露するものである。この発明は室内空気吹出口9をフロントパネル1aの上面に設けたから、室内空気吹出口9の内壁面に付着した水滴はファンケース15をつたって枠体1内に流れるようになり、結露水がフロントパネル1aの表面を伝って流れることがなくなり、室内に滴下させる心配はなくなった。
なお、空気調和機の運転開始時の高湿度のときは結露が発生しやすいが、時間の経過と共に室内の除湿が進めば、室内空気吹出口9とその周辺での結露の発生が抑えられるので、ファンケース15内に結露水が溜まることはない。
【0041】
更に、室内空気吹出口9が室内の高所に位置するので、室内空気吹出口9に手が届かなくなるから、手や異物を挿入するなどの子供のいたずらを防止できるという効果も期待できるものとなった。
【0042】
また、従来の窓用空気調和機は枠体の前面に室内空気吸入口と室内空気吹出口とが隣接して配置されているため、同じようなデザインになっていたが、この発明の空気調和機は枠体1のフロントパネル1aの前面に室内空気吸入口8と室内空気吹出口9が配置されないから、フロントパネル1aの前面のデザインの自由度が広がり、デザインでの差別化を図ることができるようになったものである。
【0043】
また、10aはファンケース15の横幅を枠体1の横幅よりも短く構成して枠体1のフロントパネル1aの側面とファンケース15の側面との間に形成した空気流通間隙であり、フロントパネル1a側面の室内空気吸入口8は空気流通間隙10aと対向する位置にも形成されている。このようにすると、室内空気は室内空気吸入口8から空気流通間隙10aに流入し、ファンケース15とエバポレータ6の側面に沿って間隔14に向かう空気流が形成できるから、フロントパネル1aの前後の長さを広げることなく室内空気吸入口8の開口面積を確保することができるものとなった。このため、枠体1の奥行き寸法を変更する必要はなく、奥行き寸法が大きく取れない窓用空気調和機であっても新しい配置構造が実現できるものとなった。
【0044】
また、6aはエバポレータ6の側面に形成されたU字状の接続パイプであり、エバポレータ6は垂直方向に小間隙を介して配置した多数の平板フィンと、水平方向に配設した複数本の配管と、複数の配管の端部を交互に接続するU字状の接続パイプ6aとで構成されており、エバポレータ6のU字状の接続パイプ6aが枠体1側面に設けた室内空気吸入口8を向くように室内側空気流路10に配置されている。
このようにすると、室内空気吸入口8から流入した室内空気が空気流通間隙10aから間隔14に向かって流れるときにU字状の接続パイプ6aの周囲を通過するので、U字状の接続パイプ6aに触れた空気が冷却されるものとなり、室内空気が通過するエバポレータ6の中央部分だけでなく、接続パイプ6aの部分でも熱交換を行うことができるものとなる。更に、エバポレータ6と室内送風機2が対向するように配置されているので、エバポレータ6の全体に均一に室内空気を通過させることができるものとなる。このため、エバポレータ6の全体で熱交換を行うことができ、熱交換効率の優れた空気調和機が実現できるものとなった。
【0045】
18は室内送風機2や室外送風機3や圧縮機4などの運転・停止を指示する制御基板であり、制御基板18は枠体1の下部空間17に配置される。室内側空気流路10のエバポレータ6は枠体1の片側に寄せて配置されており、下部空間17の圧縮機4をエバポレータ6側の下方に位置するように枠体1の片側に寄せて配置し、制御基板18は圧縮機4とは反対側で、室内側空気流路10のエバポレータ6よりも枠体1前面側に配置している。
22aは下部空間17の圧縮機4と制御基板18との間に配置した制御基板室壁、22はフロントパネル1aの前面と制御基板壁22aとの間に形成される制御基板室である。
【0046】
エバポレータ6とドレン受け20はフロントパネル1aの前面から離れた枠体1内の仕切壁7の付近に位置しており、エバポレータ6で結露してドレン受け20に滴下するドレン水は導水路20aから室外側のコンデンサ5に向かい、室内送風機2が配置された枠体1前面側でドレン水の処理が行われることはないので、フロントパネル1aの表面で結露を発生させることがなくなり、制御基板18をフロントパネル1aの前面と対向するように配置しても、制御基板18にドレン水がかかる恐れはなくなった。
このため、制御基板18の前面側にカバーを設ける必要がなくなり、制御基板室壁22aとフロントパネル1aの前面との間で制御基板室22を構成することができるので、制御基板室22の構造が簡略化できるものとなり、部品点数を減らしてコストの低減が可能となった。また、フロントパネル1aを取り外したときに、制御基板室22に取り付けられた制御基板18を枠体1の前面に露出させることができ、分解・組立て作業が容易になってメンテナンス性が向上できるものとなった。
【0047】
また、19はファンケース15を仕切板16よりも高所に配置してファンケース15の底面と仕切板16の上面との間に形成した間隙であり、ファンケース15と仕切板16とが接触しない構成となっている。ファンケース15にはエバポレータ6を通過して冷却された空気が流れているため、ファンケース15の表面が低温度に冷却され、室内側空気流路10を流れるエバポレータ6を通過する前の室内空気が触れると結露する可能性がある。一方、仕切板16とファンケース15との間に間隙19を構成しているから、ファンケース15の冷気が直接仕切板16に伝わることはない。このため、制御基板室22の上面に位置する仕切板16の表面ではファンケース15の冷気の影響による結露を発生させることはなく、制御基板室22に配置された制御基板18を水から保護できるものである。
【符号の説明】
【0048】
1 枠体
1a フロントパネル
1b リアパネル
2 室内送風機
3 室外送風機
4 圧縮機
5 コンデンサ
6 エバポレータ
6a 接続パイプ
7 仕切壁
8 室内空気吸入口
9 室内空気吹出口
10 室内側空気流路
10a 空気流通間隙
11 室外空気吸入口
12 室外空気吹出口
13 室外側空気流路
14 間隔
15 ファンケース
15a 空気流入口
15b 出口
16 仕切板
17 下部空間
18 制御基板
19 間隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠体(1)には室内送風機(2)と、室外送風機(3)と、冷凍サイクルを構成する圧縮機(4)・コンデンサ(5)・エバボレータ(6)とを備えるとともに、
前記枠体(1)は室内側にフロントパネル(1a)と、室外側に向けたリアパネル(1b)と、枠体(1)内を二室に分割する仕切壁(7)とを設け、
前記フロントパネル(1a)には室内空気吸入口(8)と室内空気吹出口(9)とを配置し、前記仕切壁(7)で仕切られて室内空気吸入口(8)から室内空気吹出口(9)を連絡する室内側空気流路(10)には、前記エバボレータ(6)と前記室内送風機(2)とを配置し、
前記リアパネル(1b)には室外空気吸入口(11)と室外空気吹出口(12)とを配置し、前記仕切壁(7)で仕切られて室外空気吸入口(11)から室外空気吹出口(12)を連絡する室外側空気流路(13)には、前記コンデンサ(5)と前記室外送風機(3)とを配置し、
前記圧縮機(4)で高温高圧に圧縮された冷媒はコンデンサ(5)によって液化し、液化した冷媒はエバボレータ(6)で気化して室内側空気流路(10)を通過する室内空気を冷却する窓用空気調和機において、
前記室内空気吸入口(8)を前記フロントパネル(1a)の側面に縦長に形成し、
前記室内側空気流路(10)内には前記エバポレータ(6)を前記仕切壁(7)と間隔(14)をあけて対向するように配置し、前記エバポレータ(6)の前面側に前記室内送風機(2)を配置すると共に、前記室内送風機(2)の周囲を囲んで前記室内空気吹出口(9)に向かう空気流を作るファンケース(15)を形成し、
該ファンケース(15)は前記室内側空気流路(10)と連通する空気流入口(15a)をエバポレータ(6)の前面にのぞませて配置し、
前記室内空気吹出口(9)を前記フロントパネル(1a)の上面に横長に形成してファンケース(15)の出口(15b)を接続し、
前記室内側空気流路(10)には前記室内空気吸入口(8)から前記間隔(14)に向かう空気流を形成し、前記間隔(14)に送られた空気は前記エバポレータ(6)を通過して前記ファンケース(15)に流入し前記送風ファン(2)によって上方に向けられて前記室内空気吹出口(9)から吹き出すように構成したことを特徴とする窓用空気調和機の送風構造。
【請求項2】
前記室内側空気流路(10)には前記フロントパネル(1a)の側面と前記ファンケース(15)の側面との間に空気流通間隙(10a)を形成し、前記フロントパネル(1a)の側面に設けた前記室内空気吸入口(8)が前記エバポレータ(6)と前記空気流通間隙(10a)と対向することを特徴とする請求項1記載の窓用空気調和機の送風構造。
【請求項3】
前記エバポレータ(6)の側面にU字状の接続パイプ(6a)を設け、前記エバポレータ(6)は前記接続パイプ(6a)が前記室内空気吸入口(8)を向くように前記室内側空気流路(10)内に配置し、前記室内空気吸入口(8)から前記室内側空気流路(10)に流入する空気が前記接続パイプ(6a)の周囲を通過して前記間隔(14)に向かうことを特徴とする請求項1または2に記載の窓用空気調和機の送風構造。
【請求項4】
前記室内側空気流路(10)の下部に仕切板(16)を設けて前記室内側空気流路(10)とは区画された下部空間(17)を形成し、該下部空間(17)内には前記圧縮機(4)と空気調和機の制御基板(18)を配置し、
前記エバポレータ(6)と前記圧縮機(4)を枠体(1)の片側に寄せて配置すると共に、前記下部空間(17)の他側に前記制御基板(18)を配置し、
前記制御基板(18)は前記エバポレータ(6)よりも枠体1前面側で前記フロントパネル(1a)の前面もしくは側面と対向するように配置されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載した窓用空気調和機の送風構造。
【請求項5】
前記ファンケース(15)を前記仕切板(16)より高所に配置し、前記ファンケース(15)の底面と前記仕切板(16)との間に間隙(19)を形成したことを特徴とする請求項4記載の窓用空気調和機の送風構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−180947(P2012−180947A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−42877(P2011−42877)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000003229)株式会社トヨトミ (124)
【Fターム(参考)】