説明

立体映像撮影用カメラ調整補助装置

【課題】簡単な調整作業により、調整者の能力や撮影環境及び機材の電気的特性の変化に左右されず、より客観的で正確なカメラ調整を可能とする。
【解決手段】フレームメモリ14L及び14Rは、動画像信号である左目用映像信号及び右目用映像信号を、遅延器16L及び16Rからの読み出し制御信号に基づいて、互いに同期して読み出す。フレームミキサ20は、フレームメモリ14L及び14Rから読み出された左目用映像信号及び右目用映像信号を1水平走査期間内で交互に切り替え、その切り替え時点で分割点を示すOSD信号を合成して出力する。分割点の位置はポジションカウンタ19からの信号により設定される。フレームミキサ20から出力された映像信号は、モニタ装置2に供給される。これにより、一つのモニタ画面に、左目画像の左半分の画像部分と、右目画像の右半分の画像部分とが分割線を境にして分割して表示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は立体映像撮影用カメラ調整補助装置に係り、特に2台の立体映像撮影用カメラを、相対的な誤差が最小となるように調整するために用いる立体映像撮影用カメラ調整補助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
立体動画像を表示する場合、例えば、2台以上のカメラを用いて多視点で撮影した動画像を合成させ、その合成動画像を1台のモニタ装置に供給したり、あるいは、複数台のプロジェクタを用いて1枚のスクリーンに投影させることで、立体動画像を表示させる。
【0003】
このモニタ装置もしくはスクリーン上に立体動画像を表示させる場合、視聴者に立体動画像をより自然に見せる(長時間視聴する場合に疲労感を感じさせないような立体動画像を見せる)ためには、撮影時に使用する複数台のカメラ間の各種の調整項目を同じに調整する必要がある。上記の調整項目には、(1)同じ高さに設定するための垂直方向の位置合わせ、(2)明るさ、(3)ホワイトバランス、(4)カラーバランス、(5)ズーミングなどの倍率などがある。
【0004】
一方、立体画像撮影時の映像の位置あわせのために、右目用の映像を画面の右半分に、左目用の映像を画面の左半分に表示すると共に、それぞれの映像の中心位置を案内標にて表示し、それらを合わせることによって、右目用と左目用に2つの映像の高さ方向のずれをなくすようにした立体撮影像位置決め装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−322725号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の特許文献1記載の立体撮影像位置決め装置は、1台のビデオカメラのビューファインダーの一画面の左右半分ずつに、それぞれ左目と右目の映像を表示する構成であるため、2台のカメラからそれぞれ左目用映像信号と右目用映像信号とを別々に出力し、それらを合成する構成の立体映像表示システムには適用することができない。
【0007】
なお、2台のカメラのそれぞれに付随しているビューファインダー又はモニタ装置などで、それぞれ左目用映像信号と右目用映像信号とを別々に見てカメラの調整を行う方法も考えられる。しかし、この方法では、表示させる2つのビューファインダー又はモニタ装置の明るさ、ホワイトバランス、カラーバランスなどを予め調整しておく必要があり、それらの特性ばらつきの調整も配慮する必要があり、調整作業が複雑で面倒である。
【0008】
また、2台のカメラとモニタ装置との間に入力セレクタを挿入し、その入力セレクタを切り替えながらモニタ装置に表示される各カメラの画像を個別に見てカメラの調整を行う方法も考えられる。しかし、この方法では、モニタ装置の特性ばらつきの配慮は不要であるが、画面全体が切り替わるため、調整者が画像を記憶する必要があり、調整者の能力の影響を受け易く客観的で正確な調整が困難である。また、一般的な入力セレクタは立体動画像を合成する機能は持たないため、調整時には入力セレクタをモニタ装置に接続し、立体動画像作成時は入力セレクタに替えて立体画像編集器をモニタ装置と接続変更する必要がある。
【0009】
更に、2台のカメラ、あるいは2台のカメラからの映像信号を録画再生する録画再生機器の調整ボリュームを全て同じ設定に固定しておく方法も考えられる。しかし、この方法では、撮影環境の変化・電気的特性の変化・機材の光学的変化の影響を受けるという問題がある。
【0010】
本発明は、以上の点に鑑みなされたもので、簡単な調整作業により、調整者の能力や撮影環境及び機材の電気的特性の変化に左右されず、より客観的で正確なカメラ調整が可能な立体映像撮影用カメラ調整補助装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上記の目的を達成するため、第1のカメラから入力される左目用映像信号を書き込んだ後、第1の読み出し制御信号に基づいて読み出し出力する第1の記憶手段と、第2のカメラから入力される右目用映像信号を書き込んだ後、第2の読み出し制御信号に基づいて読み出し出力する第2の記憶手段と、第1及び第2の読み出し制御信号を、第1の記憶手段から読み出される左目用映像信号の読み出しタイミングと、第2の記憶手段から読み出される右目用映像信号の読み出しタイミングとが、相対的に任意のタイミングずれるように生成する読み出し制御信号生成手段と、第1の記憶手段から読み出し出力された左目用映像信号及び第2の記憶手段から読み出し出力された右目用映像信号のうち、1水平走査期間内で一方の映像信号から他方の映像信号に切り替えて出力する切り替え手段と、切り替え手段により切り替え出力された左目用映像信号又は右目用映像信号の1水平走査期間分の信号を記憶して出力する第3の記憶手段と、第3の記憶手段から出力された左目用映像信号又は右目用映像信号に、それらの映像信号の切り替え位置である分割点を表示させるオンスクリーンディスプレイ信号を、切り替え手段の切り替えタイミングの時点で合成して外部へ出力する分割点合成手段とを有することを特徴とする。
【0012】
また、上記の目的を達成するため、本発明は、上記切り替え手段による1水平走査期間内の切り替えタイミングを任意の切り替えタイミングに制御する切り替え制御信号を生成する切り替え制御信号生成手段を更に有することを特徴とする。
【0013】
更に、上記の目的を達成するため、本発明は、左目用画像であることを示す第1のマーカを表示させる第1のマーカ信号を、第1の記憶手段から読み出し出力された左目用映像信号に合成して出力する第1のマーカ合成手段と、右目用画像であることを示す第2のマーカを表示させる第2のマーカ信号を、第2の記憶手段から読み出し出力された右目用映像信号に合成して出力する第2のマーカ合成手段と、第1のマーカ信号が合成された左目用映像信号と、第2のマーカ信号が合成された右目用映像信号とを、任意に設定したフレーム期間毎に交互に出力する選択手段と、分割点合成手段から出力される左目用映像信号又は右目用映像信号と、選択手段から出力される左目用映像信号又は右目用映像信号とのうち、いずれか一方の信号を選択出力する出力切替手段とを更に有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、簡単な調整作業により、調整者の能力や撮影環境及び機材の電気的特性の変化に左右されず、より客観的で正確なカメラ調整を行わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の立体映像撮影用カメラ調整補助装置を備えた立体映像表示システムの一例のシステム構成図である。
【図2】本発明の立体映像撮影用カメラ調整補助装置の一実施の形態のブロック図である。
【図3】図2中の点線で囲んだ部分の一実施の形態の詳細ブロック図である。
【図4】フレームシーケンシャルモード時のモニタ画面の一例を示す図である。
【図5】分割モード時のモニタ画面の第1の例を示す図である。
【図6】分割モード時のモニタ画面の第2の例を示す図である。
【図7】分割モード時のモニタ画面の第3の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明の実施の形態について図面と共に説明する。
【0017】
図1は、本発明になる立体映像撮影用カメラ調整補助装置を備えた立体映像表示システムの一例のシステム構成図を示す。この立体映像表示システム100は、それぞれ同一の被写体を撮影する左目用カメラ1L及び右目用カメラ1Rと、立体画像を表示するモニタ装置2と、カメラ1L及び1Rとモニタ装置2との間に設けられた本発明の立体映像撮影用カメラ調整補助装置10とから構成される。
【0018】
左目用カメラ1Lは、あたかも人間の左目で見たような視差角で被写体を撮影して左目用映像信号を出力する。右目用カメラ1Rは、あたかも人間の右目で見たような視差角で上記の被写体を撮影して右目用映像信号を出力する。カメラ1L及び1Rは、それぞれ明るさ、ホワイトバランス、カラーバランスなどの調整機能を有しており、また、互いに独立してその撮影方向などが制御可能な構成とされている。
【0019】
立体映像撮影用カメラ調整補助装置10は、カメラ1L及び1Rの上記の調整機能を同程度に調整することを容易に行わせる補助機能を備えた装置である。そのために、立体映像撮影用カメラ調整補助装置10は、カメラ1Lからの左目用映像信号とカメラ1Rからの右目用映像信号とを入力信号として受け、後述する本発明によるカメラ調整機能のための調整用映像信号を生成して出力する調整用映像信号出力機能を有すると共に、公知の方法で2つの入力信号を立体映像信号に変換して出力する立体映像信号出力機能も有する。
【0020】
モニタ装置2は、例えば液晶表示装置であり、立体映像撮影用カメラ調整補助装置10から出力される立体映像信号又は調整用映像信号を表示する。調整用映像信号による画像は、例えば図1に示すように、カメラ1Lからの左目用映像信号による左目画像3Lと、カメラ1Rからの右目用映像信号による右目画像3Rとが、分割線4により水平方向に2分割された画像である。後述するように、この分割線4は左右に移動可能であり、その移動に伴い、左目画像3Lと右目画像3Rの画像表示面積が変化する。
【0021】
図2は、立体映像撮影用カメラ調整補助装置10の一実施の形態のブロック図を示す。同図に示すように、立体映像撮影用カメラ調整補助装置10は、カメラ1L、1Rから入力端子11L、11Rを介してそれぞれ動画像信号である左目用映像信号、右目用映像信号が入力されるフレームシンクロナイザ12と、マーカ用ミキサ17L及び17Rと、垂直同期信号を計数するカウンタ18と、モニタ画面における分割線の位置を定めるためのポジションカウンタ19と、フレームミキサ20と、公知の方法で立体画像信号を生成する3Dフォーマッタ21と、出力端子22と、操作キーSW1〜SW4と、切替スイッチISW1〜ISW4とより構成される。
【0022】
上記のマーカ用ミキサ17Lは、フレームシンクロナイザ12により同期を取られて出力される左目用映像信号及び右目用映像信号のうち左目用映像信号に、左目用画像であることを示す左目用マーカ(第1のマーカ)を表示させるOSD(オン・スクリーン・ディスプレイ)信号である第1のマーカ信号を合成する。同様に、マーカ用ミキサ17Rは、フレームシンクロナイザ12から出力される右目用映像信号に、右目用画像であることを示す右目用マーカ(第2のマーカ)を表示させるOSD信号である第2のマーカ信号を合成する。
【0023】
また、上記のフレームシンクロナイザ12は、同期分離回路13L及び13Rと、動画像信号である左目用映像信号及び右目用映像信号を一時記憶して出力するフレームメモリ14L及び14Rと、ピクセルクロックなどを計数するカウンタ15L及び15Rと、遅延器16L及び16Rとから構成される。同期分離回路13Lは左目用映像信号から垂直同期信号を分離し、同期分離回路13Rは右目用映像信号から垂直同期信号を分離する。遅延器16L及び16Rは、出力タイミングを調整するために所定時間、入力される垂直同期信号を遅延する。
【0024】
フレームメモリ14Lは第1の記憶手段を、フレームメモリ14Rは第2の記憶手段を構成する。また、カウンタ15L及び15Rと、遅延器16L及び16Rと、操作キーSW3とは、後述するようにフレームメモリ14L及び14Rの各読み出しタイミングを相対的に任意のタイミングずれるように、フレームメモリ14L及び14Rの読み出し制御信号を生成する読み出し制御信号生成手段を構成する。
【0025】
図3は、図2中の点線で囲んだポジションカウンタ19及びフレームミキサ20の一実施の形態の詳細ブロック図を示す。図3中、図2と同一構成部分には同一符号を付してある。図3に示すように、フレームミキサ20は、切り替え手段を構成する切替スイッチISW5と、第3の記憶手段であるラインメモリ25と、分割線を示すOSD信号を発生する分割点合成器26とより構成される。ポジションカウンタ19と、操作キーSW3及びSW4は、切替スイッチISW5による1水平走査期間内の切り替えタイミングを任意の切り替えタイミングに制御する切り替え制御信号を生成する切り替え制御信号生成手段を構成する。
【0026】
本実施の形態の立体映像撮影用カメラ調整補助装置10は、カメラ調整機能のための調整用映像信号を生成して出力する動作モード(以下、調整モードという)と、公知の方法で2つの入力信号を立体映像信号に変換して出力する動作モード(以下、3D合成モード、又は通常モードという)とのうち、いずれか一方のモードで動作する。操作キーSW2は、この調整モード及び3D合成モード(通常モード)のいずれか一方のモードに設定し、その設定モードに応じて切替スイッチISW4を切り替える。
【0027】
更に、調整モードには、左目用映像信号と右目用映像信号とを所定フレーム期間毎に切り替えるフレームシーケンシャルモードと、モニタ画面に分割線を表示すると共に左目用画像と右目用画像とを同時に表示させる分割モードとがある。操作キーSW1は、このフレームシーケンシャルモード及び分割モードのいずれか一方のモードに設定し、その設定モードに応じて切替スイッチISW3を切り替える。
【0028】
また、更に、分割モードには、モニタ画面に表示するフレーム画像を画面内にて移動させずに固定するフレーム固定モードと、画面内にて横方向に移動させるフレーム移動モードとがある。操作キーSW3は、このフレーム固定モード及びフレーム移動モードのいずれか一方のモードに設定し、その設定モードに応じて切替スイッチISW1を切り替える。
【0029】
また、操作キー中の左右キーSW4は、分割モード時にモニタ画面における分割線を左方向又は右方向に移動させるためのキーで、その信号は切替スイッチISW1の一方の端子とポジションカウンタ19とに供給される。ポジションカウンタ19は、分割モード時にモニタ画面における分割線の位置を、ピクセルクロック、垂直同期信号及び水平同期信号に基づいて決定する。
【0030】
また、切替スイッチISW2は、マーカ用ミキサ14Lからのマーカが合成された左目用映像信号及びマーカ用ミキサ14Rからのマーカが合成された右目用映像信号の一方を選択する。切替スイッチISW3は、切替スイッチISW2からの信号、及びフレームミキサ20(具体的には図3の分割点合成器26)の出力信号のうち、どちらか一方の信号を選択する。切替スイッチISW4は、切替スイッチISW3からの信号、及び3Dフォーマッタ21からの立体映像信号のうち、どちらか一方の信号を選択して出力端子22へ出力する。
【0031】
次に、本実施の形態の調整モード時の動作について説明する。
【0032】
まず、フレームシーケンシャルモードについて説明する。このフレームシーケンシャルモードでは、操作キーSW1の操作により切替スイッチISW3が端子3aに接続され、操作キーSW2の操作により切替スイッチISW4が端子4aに接続される。
【0033】
この状態でカメラ1Lから入力端子11Lを介して入力された左目用映像信号は、同期分離回路13Lで水平同期信号及び垂直同期信号が分離され、その分離された水平同期信号及び垂直同期信号に基づいてフレームメモリ14Lに書き込まれる。一方、カメラ1Rから入力端子11Rを介して入力された右目用映像信号は、同期分離回路13Rで水平同期信号及び垂直同期信号が分離され、その分離された水平同期信号及び垂直同期信号に基づいてフレームメモリ14Rに書き込まれる。
【0034】
また、カウンタ15L及び15Rは操作キーSW3の操作により、左目用映像信号の1フレーム分のピクセルクロックをカウントし、そのカウンタ値を遅延器16L及び16Rに供給する。遅延器16L及び16Rは、それぞれカウンタ15L及び15Rからのカウンタ値が所定値になった時点で、左目用映像信号から分離した垂直同期信号に同期してフレームメモリ14Lに記憶されている左目用映像信号とフレームメモリ14Rに記憶されている右目用映像信号とをそれぞれ同時に読み出す。これにより、フレームメモリ14L及び14Rから読み出される左目用映像信号及び右目用映像信号は、互いに同期したものとなる。
【0035】
マーカ用ミキサ17Lは、フレームメモリ14Lから読み出された動画像信号である左目用映像信号に、左目用マーカを示すOSD信号(第1のマーカ信号)を合成し、合成後の左目用映像信号を切替スイッチISW2の端子2aに出力する。これと同時に、マーカ用ミキサ17Rは、フレームメモリ14Rから読み出された動画像信号である右目用映像信号に、右目用マーカを示すOSD信号(第2のマーカ信号)を合成し、合成後の右目用映像信号を切替スイッチISW2の端子2bに出力する。
【0036】
切替スイッチISW2は、カウンタ18が所定カウント値になる毎に出力される切替信号に基づいて端子2a及び2bの切替接続を行い、マーカ信号合成後の左目用映像信号及び右目用映像信号を交互に選択する。ここで、カウンタ18は、遅延器16Lから出力される左目用映像信号から分離及び遅延された垂直同期信号を例えば30個カウントする毎に切替信号を出力するものとする。これにより、切替スイッチISW2は、マーカ信号合成後の左目用映像信号及び右目用映像信号を30フレーム期間毎に交互に選択する。すなわち、カウンタ18と切替スイッチISW2とは任意に設定したフレーム期間(ここでは、30フレーム期間)毎にマーカ信号合成後の左目用映像信号及び右目用映像信号を交互に選択する選択手段を構成する。
【0037】
フレームシーケンシャルモードでは、前述したように、切替スイッチISW3が端子3aに接続され、切替スイッチISW4が端子4aに接続されているので、切替スイッチISW2により30フレーム期間毎に交互に選択されたマーカ信号合成後の左目用映像信号及び右目用映像信号は、切替スイッチISW3及びISW4を通して出力端子22へ出力され、モニタ装置2に供給される。すなわち、切替スイッチISW3及びISW4は出力切替手段を構成する。
【0038】
図4は、フレームシーケンシャルモード時のモニタ画面の一例を示す。図4(A)は、左目用映像信号による左目画像30Lに左目用マーカ31Lが表示されているモニタ画面を示す。図4(B)は、右目用映像信号による右目画像30Rに右目用マーカ31Rが表示されているモニタ画面を示す。これらのモニタ画面は、前述したように30フレーム期間毎に切り替わる。しかし、左目用マーカ31Lと右目用マーカ31Rの画面内の位置が異なるため、調整者は現在のモニタ画面が左目画像を表示しているのか、右目画像を表示しているのかの識別が可能である。
【0039】
そして、調整者は、30フレーム期間毎に交互に切り替え表示されるこれら2つのモニタ画像を比較し、どちらか一方のモニタ画像を基準にして他方のモニタ画像を出力しているカメラ1L又は1Rの輝度やカラーバランスを調整することができ、また、カメラの向き(下向きか上向きか)を調整することができる。上記の調整は手動により行えるが自動により行うことも可能である。
【0040】
次に、分割モード時の動作について説明する。この分割モードでは、操作キーSW1の操作により切替スイッチISW3が端子3bに接続され、操作キーSW2の操作により切替スイッチISW4が端子4aに接続される。また、分割モードのときは、操作キーSW3が操作される。
【0041】
この状態で、上記のフレームシーケンシャルモードと同様にして、フレームメモリ14L及び14Rは、動画像信号である左目用映像信号及び右目用映像信号を、遅延器16L及び16Rからの読み出し制御信号に基づいて、互いに同期して読み出す。フレームミキサ20は、フレームメモリ14L及び14Rから読み出された左目用映像信号及び右目用映像信号を1水平走査期間内で切り替え、その切り替え時点で分割点を示すOSD信号を合成して出力する。分割点の位置はポジションカウンタ19からの信号により設定される。
【0042】
すなわち、図3に示すように、フレームミキサ20は、切替スイッチISW5、ラインメモリ25及び分割点合成器26からなる。切替スイッチISW5はポジションカウンタ19からの切り替え制御信号により切替制御され、端子5aに供給されるフレームメモリ14Lから読み出された左目用映像信号と、端子5bに供給されるフレームメモリ14Rから読み出された右目用映像信号とのうち、一方の映像信号を1水平走査期間内で切替出力する。
【0043】
ポジションカウンタ19は、左目用映像信号のピクセルクロック、水平同期信号、垂直同期信号、左右キーSW4及び操作キーSW3からの信号に基づいた、1ライン上の切替タイミングで切替制御信号を出力する。切替スイッチISW5により切り替えられる右目用映像信号及び左目用映像信号は、ラインメモリ25に供給されて1ライン分の信号が一時記憶された後、ピクセルクロックに同期して読み出される。
【0044】
分割点合成器26は、ラインメモリ25から読み出された1ライン分の右目用映像信号又は左目用映像信号の切替タイミングの時点(切替スイッチISW5の1ライン毎の切替時点)で、分割点を示すOSD信号を合成して出力する分割点合成手段を構成する。ここで、上記の切り替えタイミングの時点は1フレーム期間内の各ラインで同じであるため、合成される分割点の画素位置は各ラインにおいて同じであり、モニタ画面では後述するように縦1本線の分割線として見える。
【0045】
分割モードでは、前述したように、切替スイッチISW3が端子3bに接続され、切替スイッチISW4が端子4aに接続されているので、フレームミキサ20(分割点合成器26)から出力された分割点合成後の左目用映像信号又は右目用映像信号は、切替スイッチISW3及びISW4を通して出力端子22へ出力され、モニタ装置2に供給される。
【0046】
図5は、分割モード時のモニタ画面の第1の例を示す。図5(A)は、左目用映像信号による左目画像30Lが表示されているモニタ画面を示す。図5(B)は、右目用映像信号による右目画像30Rが表示されているモニタ画面を示す。分割モード時には、図5(C)に示すように、一つのモニタ画面に、これらの左目画像30Lの左半分の画像部分32Lと、右目画像30Rの右半分の画像部分32Rとが分割線34を境にして分割して表示される。
【0047】
この図5(C)に示す左目画像部分32Lと右目画像部分32Rとを合成した全体画像は、同一の被写体を撮影しているので一つの被写体画像となるはずであるが、本来の被写体画像より左右が縮んだ画像となっている。このときの撮影は、図5(E)に示すように、被写体5が、左目用カメラ1Lと右目用カメラ1Rとの輻輳点Pよりも前方にいるときに撮影した場合である。この図5(C)に示す合成画像は、本来の被写体画像とは異なり、調整のために左右で比較したい画像部分が表示できない場合も発生する。
【0048】
そこで、立体映像撮影用カメラ調整補助装置10は、左目画像部分32Lと右目画像部分32Rとのうち、例えば右目画像部分32Rのみを1画素ずつ右方向へ移動させていき、最終的に図5(D)に示すように、分割線34を境界として左目画像部分32Lと比較したい画像部分のある右目画像部分33Rが表示された時点で分割モードを終了する。
【0049】
これにより、左右で比較したい画像部分がモニタ画面に表示されるので、立体映像撮影用カメラ調整補助装置10は、調整者にこのときの左目画像部分32Lと右目画像部分33Rとを同時に比較させ、どちらか一方の画像を基準にして他方の画像を出力しているカメラ1L又は1Rの輝度やカラーバランスを調整させることができ、また、カメラの向き(下向きか上向きか)を調整させることができる。上記の調整は手動により行えるが自動により行うことも可能である。
【0050】
ここで、立体映像撮影用カメラ調整補助装置10は、図2に示した操作キーSW3の1回目の操作により切替スイッチISW1を端子1aに接続し、カウンタ15L及びカウンタ15Rのうち、カウンタ15Lのみが左右キーSW4からの信号を受け付ける状態とし、操作キーSW3の2回目の操作により切替スイッチISW1の接続状態はそのままで、カウンタ15L及び15Rのうち、カウンタ15Rのみが左右キーSW4からの信号を受け付ける状態とする。また、切替スイッチISW1は、操作キーSW3の3回目の操作により元の接続状態である端子1b側に切り替わり、カウンタ15L及び15R共に左右キーSW4からの信号を受け付けない状態とする。
【0051】
従って、図5と共に説明したように、右目画像32Rのみを1画素ずつ右方向へ移動させる場合は、操作キーSW3を2回操作してから左右キーSW4の右方向キーを押すことで、カウンタ15Rから遅延器16Rにコントロール信号を供給し、更に遅延器16Rからの信号によりフレームメモリ14Rの読み出しタイミングを1フレームで1ピクセルクロック単位ずつ遅らせる。
【0052】
図6は、分割モード時のモニタ画面の第2の例を示す。図6(A)は、左目用映像信号による左目画像30Lが表示されているモニタ画面を示す。図6(B)は、右目用映像信号による右目画像30Rが表示されているモニタ画面を示す。分割モード時には、図6(C)に示すように、一つのモニタ画面に、これらの左目画像30Lの左半分の画像35Lと、右目画像30Rの右半分の画像35Rとが分割線36を境にして分割して表示される。
【0053】
この図6(C)に示す左目画像部分35Lと右目画像部分35Rとを合成した全体画像は被写体画像となるはずであるが、本来の被写体画像より左右が伸びた画像となっている。このときの撮影は、図6(E)に示すように、被写体5が、左目用カメラ1Lと右目用カメラ1Rとの輻輳点Pよりも後方にいるときに撮影した場合である。この図6(C)に示す合成画像は、本来の被写体画像とは異なり、調整のために左右で比較したい画像部分が重複して表示され、分割線36を境にした左右画像の比較がしずらい場合も発生する。
【0054】
そこで、立体映像撮影用カメラ調整補助装置10は、左目画像部分35Lと右目画像部分35Rとのうち、例えば右目画像部分35Rのみを1画素ずつ左方向へ移動させていき、最終的に図6(D)に示すように、分割線36を境界として左目画像部分35Lと比較したい画像部分のある右目画像部分37Rが表示された時点で分割モードを終了する。
【0055】
これにより、分割線36を境界として左右で比較したい画像部分がモニタ画面に表示されるので、立体映像撮影用カメラ調整補助装置10は、調整者にこのときの左目画像部分35Lと右目画像部分37Rとを同時に比較させ、どちらか一方の画像を基準にして他方の画像を出力しているカメラ1L又は1Rの輝度やカラーバランスを調整させることができ、また、カメラの向き(下向きか上向きか)を調整させることができる。上記の調整は手動により行えるが自動により行うことも可能である。
【0056】
なお、上記の右目画像部分35Rのみを1画素ずつ左方向へ移動させる場合は、立体映像撮影用カメラ調整補助装置10は、操作キーSW3を2回操作してから左右キーSW4の左方向キーを押すことで、カウンタ15Rから遅延器16Rにコントロール信号を供給し、更に遅延器16Rからの信号によりフレームメモリ14Rの読み出しタイミングを1フレームで1ピクセルクロック単位ずつ進ませる。
【0057】
図7は、分割モード時のモニタ画面の第3の例を示す。図5及び図6と共に説明した分割モードでは分割線の位置は固定であり、右目画像のみを移動させるようにしている。これに対し、図7に示す分割モードでは、左目画像と右目画像のフレーム位置は固定であるが、分割線の位置を移動させると共に、その分割線の移動に伴い表示画像領域も変更する。
【0058】
図7(A)は、左目用映像信号による左目画像40Lが表示されているモニタ画面を示す。図7(B)は、右目用映像信号による右目画像40Rが表示されているモニタ画面を示す。分割モード時には、図7(C)に示すように、一つのモニタ画面に、これらの左目画像40Lの左半分の画像41Lと、右目画像40Rの右半分の画像41Rとが分割線44を境にして分割して表示される。
【0059】
しかし、この場合、左目用カメラと右目用カメラの輻輳点は被写体に一致していても、それらのカメラの上下方向の向きが異なるため、画像41Lと画像41Rの高さにずれがあり、調整しにくい。
【0060】
そこで、立体映像撮影用カメラ調整補助装置10は図7(C)に示す分割線44を、同図(D)に45で示すように例えば左方向に移動する。このように、分割線だけを移動する場合は、左右キーSW4の操作により図3のポジションカウンタ19から切替スイッチISW5に供給される切り替え制御信号による切替タイミングを調整する。
【0061】
すなわち、1ラインの期間(1水平走査期間)中の1度だけ左右キーSW4の操作に応じたタイミングで切替スイッチISW5を端子5b側に切り替えてラインメモリ25に右目用映像信号を取り込み、1ラインの終わり(水平同期信号にて判断)で切替スイッチISW5を端子5a側に切り替えてラインメモリ25に左目用映像信号を取り込む。これにより、各ライン期間においてラインメモリ25に取り込まれる映像信号が最初は左目用映像信号で、途中から右目用映像信号が取り込まれることになり、また、その切り替えタイミングを所望のフレーム期間毎に任意の設定画素分ずつずらすことにより、分割表示及び分割線の移動が可能になる。
【0062】
なお、この分割線の移動に伴い、左目画像部分が41Lから表示幅が小さな42Lとなると共に、右目画像部分が41Rから表示幅が大きな42Rとなり、分割線45の左右でそれぞれ左目画像部分42Lと右目画像部分42Rとを表示する。この分割線の移動幅は調整者が分割線45の左側の左目画像部分42Lと右側の右目画像部分42Rとの高さずれが確認し易い幅である。
【0063】
このようにして、立体映像撮影用カメラ調整補助装置10は、調整者に図7(D)に示すモニタ画面の例えば左目画像部分42Lに高さが一致するように右目用カメラの撮影方向を下方向に調整させることにより、最終的に図7(E)に示すように、右目画像部分43Rが左目画像部分42Lの高さに一致する。このように、この分割モードでは、より容易にずれ量の確認と調整が可能となる。
【0064】
次に、本実施の形態の3D合成モード(通常モード)時の動作について説明する。このモードでは、操作キーSW2の操作により切替スイッチISW4が端子4bに接続される。これにより、3Dフォーマッタ21で生成された立体映像信号が切替スイッチISW4及び出力端子22を介してモニタ装置へ供給される。
【0065】
3Dフォーマッタ21は、フレームメモリ14Lから読み出された左目用映像信号及びフレームメモリ14Rから読み出された右目用映像信号とを入力信号として受け、公知の方法により立体映像信号を生成する。立体映像信号の生成及び表示方法は本発明の要旨ではないのでその詳細な説明は省略するが、シャッターメガネ方式、偏光方式、メガネを用いない方式などがある。
【0066】
シャッターメガネ方式は、フレーム毎に左目画像と右目画像とを交互に表示すると共に、その表示切替に同期して視聴者がかけているシャッターメガネの左目眼鏡のシャッターと、右目眼鏡のシャッターとを交互にオン/オフさせる。偏光方式は、左目画像と右目画像とをそれぞれの互いに異なる偏光方向の光で2つのスクリーンに別々に投影して表示し、各々の偏光を透過する左目眼鏡と右目眼鏡からなる偏光メガネをかけている視聴者が左目画像と右目画像とを独立に観察し、脳内で合成して立体像を得る。
【0067】
このように、本実施の形態の立体映像撮影用カメラ調整補助装置10によれば、調整モードにおいて、左目画像と右目画像とを交互に又は分割線の左右に同時に表示することで、左目画像と右目画像との相違点(誤差)を調整者の目により感覚的に、かつ、容易に識別させることができるため、左目用カメラと右目用カメラの明るさ、ホワイトバランス、カラーバランス、撮影方向などの各種調整項目について、左目用カメラと右目用カメラとの相対的な誤差を最小限にする調整を、特殊な機材(計測器)を使用することなく、調整者の能力や撮影環境及び機材の電気的特性の変化に左右されず、より客観的で正確に行わせることができる。
【0068】
また、本実施の形態の立体映像撮影用カメラ調整補助装置10によれば、調整モードと3D合成モード(通常モード)とを切り替えることができるため、接続機器の変更や機材を追加することなく、1台のモニタ装置2によりカメラの調整のための表示と立体画像の表示とを行わせることができる。
【符号の説明】
【0069】
1L 左目用カメラ
1R 右目用カメラ
2 モニタ装置
10 立体映像撮影用カメラ調整補助装置
12 フレームシンクロナイザ
13L、13R 同期分離回路
14L、14R フレームメモリ
15L、15R、18 カウンタ
17L、17R マーカ用ミキサ
19 ポジションカウンタ
20 フレームミキサ
21 3Dフォーマッタ
25 ラインメモリ
26 分割点合成器
30L、40L 左目画像
30R、40R 右目画像
31L 左目マーカ
31R 右目マーカ
32L、35L、41L、42L 左目画像部分
32R、33R、35R、37R、41R、42R 右目画像部分
34、36、44、45 分割線
SW1、SW2、SW3 操作キー
SW4 左右キー
ISW1〜ISW5 切替スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のカメラから入力される左目用映像信号を書き込んだ後、第1の読み出し制御信号に基づいて読み出し出力する第1の記憶手段と、
第2のカメラから入力される右目用映像信号を書き込んだ後、第2の読み出し制御信号に基づいて読み出し出力する第2の記憶手段と、
前記第1及び第2の読み出し制御信号を、前記第1の記憶手段から読み出される前記左目用映像信号の読み出しタイミングと、前記第2の記憶手段から読み出される前記右目用映像信号の読み出しタイミングとが、相対的に任意のタイミングずれるように生成する読み出し制御信号生成手段と、
前記第1の記憶手段から読み出し出力された前記左目用映像信号及び前記第2の記憶手段から読み出し出力された前記右目用映像信号のうち、1水平走査期間内で一方の映像信号から他方の映像信号に切り替えて出力する切り替え手段と、
前記切り替え手段により切り替え出力された前記左目用映像信号又は前記右目用映像信号の1水平走査期間分の信号を記憶して出力する第3の記憶手段と、
前記第3の記憶手段から出力された前記左目用映像信号又は前記右目用映像信号に、それらの映像信号の切り替え位置である分割点を表示させるオンスクリーンディスプレイ信号を、前記切り替え手段の切り替えタイミングの時点で合成して外部へ出力する分割点合成手段と
を有することを特徴とする立体映像撮影用カメラ調整補助装置。
【請求項2】
前記切り替え手段による1水平走査期間内の切り替えタイミングを任意の切り替えタイミングに制御する切り替え制御信号を生成する切り替え制御信号生成手段を更に有することを特徴とする請求項1記載の立体映像撮影用カメラ調整補助装置。
【請求項3】
左目用画像であることを示す第1のマーカを表示させる第1のマーカ信号を、前記第1の記憶手段から読み出し出力された前記左目用映像信号に合成して出力する第1のマーカ合成手段と、
右目用画像であることを示す第2のマーカを表示させる第2のマーカ信号を、前記第2の記憶手段から読み出し出力された前記右目用映像信号に合成して出力する第2のマーカ合成手段と、
前記第1のマーカ信号が合成された前記左目用映像信号と、前記第2のマーカ信号が合成された前記右目用映像信号とを、任意に設定したフレーム期間毎に交互に出力する選択手段と、
前記分割点合成手段から出力される前記左目用映像信号又は前記右目用映像信号と、前記選択手段から出力される前記左目用映像信号又は前記右目用映像信号とのうち、いずれか一方の信号を選択出力する出力切替手段と
を更に有することを特徴とする請求項1又は2記載の立体映像撮影用カメラ調整補助装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−135252(P2011−135252A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−291876(P2009−291876)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(000004329)日本ビクター株式会社 (3,896)
【Fターム(参考)】