説明

立体画像再撮影装置、立体画像奥行き変換装置およびそのプログラム

【課題】撮影装置に奥行きを制御するためのレンズを設けることなく、撮影装置で撮影した画像を用いて、立体画像の再生像の奥行き制御を行うことが可能な立体画像再撮影装置を提供する。
【解決手段】立体画像再撮影装置2は、要素画像群を表示する要素画像群表示部21aと、当該要素画像群表示部21aの表示面に開口部を平面状に複数配列した表示開口群21bとを備える表示手段21と、開口部を平面状に複数配列した撮影開口群22aと、要素画像群を撮影する要素画像群撮影部22bとを備える撮影手段22とを、所定距離を隔てて対面させ、表示手段21と前記撮影手段22との間に、要素画像が立体画像として表示される際の奥行きを制御する奥行き制御レンズLを備えていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インテグラル方式による立体画像表示方式において、再生される立体画像の奥行きを制御した画像を生成する立体画像再撮影装置、立体画像奥行き変換装置およびそのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、任意の視点から自由に立体画像を視聴することが可能な立体画像表示方式の一つとして、平面状に配列された凸レンズ群あるいはピンホール群を利用したインテグラルフォトグラフィ(Integral Photography:以下IP)方式が知られている。
【0003】
ここで、図6を参照して、IP方式の概念について説明する。IP方式は、図6(a)に示すように、撮影時において、フィルム(撮影面)11bの前面(被写体T側)に多数のピンホールまたは凸レンズからなる撮影開口群(例えば、レンズアレイ)11aを備え、フィルム11bに、ピンホールまたは凸レンズの大きさ、数に応じた縮小された被写体Tの倒立像(要素画像)からなる要素画像群t1を撮影する。そして、そのフィルム11bを写真に現像したのち、図6(b)に示すように、写真(表示面)31aの背面から拡散光により写真31aを照射することで、図6(a)の撮影開口群11aと同一の構成である表示開口群31bを通して像(再生像T)を再生する。このとき、図6(a)においてフィルム(撮影面)11bに撮影される被写体Tからの光の経路と、図6(b)において写真(表示面)31aから発せられた光の経路とは、同じ経路となるため、表示開口群31bと再生像Tとの距離は、撮影開口群11aと被写体Tとの距離と同一(距離L)となる。
しかし、この構成のままでは、凸形状の被写体が、再生像において凹形状として再生される等、凹凸が反転する、いわゆる逆視現象が発生する。
【0004】
この問題を解決する第1の方法として、IP方式で生成された立体像を再撮影し、その撮影された画像を表示する手法が開示されている(非特許文献1参照)。
この手法は、図7(a)に示すように、図6で説明したIP方式と同様に被写体Tを撮影し、図7(b)に示すように、その撮影された第1要素画像群t1を表示する。そして、さらに、図7(b)に示すように、その表示された第1要素画像群t1と表示開口群21bによって再生された像を第2要素画像群t2として再撮影する。そして、図7(c)に示すように、再撮影された画像(第2要素画像群t2)を表示することで、被写体Tの凹凸の反転が2度行われることになり、観察方向から見て、表示面より奥に被写体Tと同一の凹凸形状を持つ像(再生像T)を再生することができる。
【0005】
このとき、本手法では、図7(b)に示すように、2回目の撮影を行う多数のピンホールまたは凸レンズからなる第2の撮影開口群22aと、1回目の表示を行う第1の表示開口群21bとの距離(L)を調整することで、図7(c)に示した再生像の位置を、距離(L)に等しい距離(L=−L)分だけ移動させることができる。
【0006】
また、前記問題を解決する第2の方法として、倒立像である要素画像を予め点対象の画像に変換する手法が開示されている(特許文献1、非特許文献2参照)。
この手法は、図8に示すように、要素画像を点対象変換することで、倒立した要素画像を正立した画像に変換するものである。具体的には、図9に示すように、撮影開口群を構成するレンズを屈折率分布レンズ(GRINレンズGL)とし、GRINレンズGLの長さを蛇行する光路の周期Pの3/4倍とすることで、倒立した要素画像を正立した画像に変換することができる。
【0007】
そして、図10(a)に示すように、フィルム(撮影面)11bの前面(被写体T側)に多数のGRINレンズからなる第1の撮影開口群(GRINレンズアレイ)11Gaを備えることで、正立した複数の要素画像からなる要素画像群t1を撮影する。そして、図10(b)に示すように、写真(表示面)31aに正立した要素画像(要素画像群t1)を表示させることで、第2の表示開口群31bを通して奥行きが反転していない像(再生像T)を再生することができる。
【0008】
また、本手法においては、図11(a)に示すように、図10(a)で示した第1の撮影開口群(GRINレンズアレイ)11Gaの撮影面11bとは反対側(被写体T側)に大口径凸レンズ(奥行き制御レンズL)を配置して、被写体を撮影する。なお、この状態では、図11(b)に示すように、要素画像群t1の各要素画像が被写体Tに対して180度回転した状態となるため、図11(c)に示すように、表示面全体を180度回転させることで、被写体Tと同一の向きとなる像(再生像Tx)を再生することができる。そして、本手法では、大口径凸レンズ(奥行き制御レンズL)の位置(L、L)を調整することで、再生像の位置(奥行き)を制御することができる。
【特許文献1】特開平10−150675号公報(段落0026〜0038、図7)
【非特許文献1】H.E.Ives, ”Optical properties of a Lippmann lenticulated sheet”, J.Opt.Soc.Am.21, pp.171-176(1931).
【非特許文献2】F.Okano,J.Arai,H.Hoshino and I.Yuyama, ”Three-dimensional video system based on integral photography”, Opt.Eng.,38,1072-1077(1999)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記した第1の方法は、再生像の凹凸が反転することなく、さらに、1回目の表示を行う第1の表示開口群と、2回目の撮影を行う第2の撮影開口群との距離を調整することで、再生像の位置を調整することができる。この第1の方法においては、遠方の被写体の再生像をより近くに再生することで画像の演出効果を高めたいという要望がある。しかし、この第1の方法では、再生像の位置が奥行き方向に平行移動するだけであるため、無限遠に存在する被写体の再生像は無限遠に再生されてしまう。このため、遠方の被写体の再生像をより近くに再生したいという要望を十分に満足することができないという問題がある。
【0010】
これに対し、前記した第2の方法は、無限遠に被写体が存在する場合であっても、大口径凸レンズの位置を調整することで、再生像をより近くに再現することができる点で優れている。しかし、第2の方法は、第1の撮影開口群の被写体側に奥行き制御レンズ等の光学系を配置し、その光学系と撮影開口群(GRINレンズアレイ)との間に、再生像を調整するための距離を確保する必要がある。このため、本方法を採用した撮影装置は、少なくともその距離を確保した大きさとなる。しかし、撮影装置は、屋外等、場所を変えて撮影を行うものであるため、さらなる小型・軽量化が望まれている。
【0011】
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、撮影装置に奥行きを制御するためのレンズを設けることなく、撮影装置で撮影した画像を用いて、立体画像の再生像の奥行き制御を行うことが可能な立体画像再撮影装置、立体画像奥行き変換装置およびそのプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、前記目的を達成するために創案されたものであり、まず、請求項1に記載の立体画像再撮影装置は、立体画像として表示されたときに、被写体の凹凸が反転した再生像となる複数の要素画像からなる要素画像群を、さらに当該凹凸が反転した再生像となる画像として、再撮影する立体画像再撮影装置であって、要素画像群表示部と、表示開口群と、撮影開口群と、要素画像群撮影部とを備え、前記表示開口群と前記撮影開口群との間に奥行き制御レンズを備える構成とした。
【0013】
かかる構成において、立体画像再撮影装置は、要素画像群表示部によって、事前に撮影された複数の要素画像(要素画像群)を表示する。そして、この要素画像の位置に対応して、要素画像群表示部の表示面側にピンホールまたはレンズである開口部を平面状に複数配列して設けた表示開口群によって、表示面から発光された要素画像の光を通過させる。また、立体画像再撮影装置は、撮影手段において、撮影面側にピンホールまたはレンズである開口部を平面状に複数配列して設けた撮影開口群によって要素画像の光を通過させ集光させることで、要素画像群撮影部によってその要素画像(要素画像群)を撮影する。これによって、撮影された要素画像は、再生時に被写体と同じ方向および凹凸を示す画像となる。なお、表示開口群、撮影開口群における開口部には、ピンホールや凸レンズ、あるいは光軸方向に複数の凸レンズからなるレンズ系を用いることができる。
このように、立体画像再撮影装置は、事前に撮影された凹凸が反転した再生像となる要素画像を再撮影することで、さらに当該凹凸が反転することになり、被写体と同一の凹凸形状となる立体画像を表示するための画像となる。
【0014】
さらに、立体画像再撮影装置は、表示開口群と撮影開口群との間に奥行き制御レンズを備えることで、表示開口群によって再生される再生像の位置を奥行き制御レンズの光軸方向に移動させることができる。そして、立体画像再撮影装置は、この奥行き制御レンズを通過した光を撮影手段で撮影することで、その撮影された画像は、奥行きが奥行き制御レンズの光軸方向に移動したものとなる。これによって、この立体画像再撮影装置で再撮影された画像を、通常の立体画像表示装置により再生することで、実際の被写体の位置とは異なる(奥行きが制御された)位置に生成され視認されることになる。例えば、奥行き制御レンズとして、凸レンズを用いることで、立体画像再撮影装置によって撮影された画像は、実際の被写体の位置よりも手前に再生像を結像させる画像となる。
【0015】
また、請求項2に記載の立体画像再撮影装置は、前記奥行き制御レンズが凸レンズであって、当該凸レンズを前記表示開口群に当接して配置する構成とした。
【0016】
かかる構成において、立体画像再撮影装置は、奥行き制御レンズとしての凸レンズを表示開口群に当接して配置することで、立体画像再撮影装置で再撮影された画像は、凸レンズ(より正確には凸レンズの主点)の位置から、凸レンズの焦点距離までの間に被写体の位置が制御された画像となる。なお、凸レンズを表示開口群から離して配置した場合、凸レンズの焦点距離と被写体の位置によっては、被写体を再生像として再生できない場合があるが、凸レンズを表示開口群に当接することで、被写体の位置に関係なく、被写体の再生像が再生されることになる。
【0017】
さらに、請求項3に記載の立体画像奥行き変換装置は、立体画像として表示されたときに、被写体の凹凸が反転した再生像となる複数の要素画像からなる第1要素画像群から、前記再生像の凹凸をさらに反転させるとともに、奥行きを変化させた第2要素画像群を生成する立体画像奥行き変換装置であって、分配手段と、第1要素画像光波変換手段と、奥行き変換手段と、第2要素画像光波変換手段と、加算手段とを備える構成とした。
【0018】
かかる構成において、立体画像奥行き変換装置は、分配手段によって、第1要素画像群の光波を要素画像ごとに分配する。そして、立体画像奥行き変換装置は、第1要素画像光波変換手段によって、要素画像の光波を、仮想のピンホールまたは予め定めた焦点距離を持つレンズである開口部を通した光波に変換する。なお、ここで光波とは、要素画像の光を波動として扱った場合の振幅と位相を複素数で表したものである。
そして、立体画像奥行き変換装置は、奥行き変換手段によって、第1要素画像光波変換手段で変換された光波を、第1要素画像群全体の光を通過させる、予め定めた焦点距離となる仮想の凸レンズを通した光波に変換する。これによって、それぞれの要素画像が変化を受け、その結果、再生立体像の奥行きが変化することになる。
【0019】
また、立体画像奥行き変換装置は、第2要素画像光波変換手段によって、奥行き変換手段で変換された光波を、要素画像ごとに対応する、仮想のピンホールまたは予め定めた焦点距離を持つレンズである開口部を通した光波に変換する。これによって、それぞれの要素画像は、凹凸が反転するとともに、仮想の凸レンズの焦点距離に応じて制御されることになる。
そして、立体画像奥行き変換装置は、加算手段によって、第2要素画像光波変換手段で変換された光波を要素画像の数だけ加算する。これによって、再生像として再生された場合に、被写体の奥行きが制御された画像(第2要素画像群)が生成されることになる。
【0020】
また、請求項4に記載の立体画像奥行き変換プログラムは、立体画像として表示されたときに、被写体の凹凸が反転した再生像となる複数の要素画像からなる第1要素画像群から、前記再生像の凹凸をさらに反転させるとともに、奥行きを変化させた第2要素画像群を生成するために、コンピュータを、分配手段、第1要素画像光波変換手段、奥行き変換手段、第2要素画像光波変換手段、加算手段として機能させる構成とした。
【0021】
かかる構成において、立体画像奥行き変換プログラムは、分配手段によって、第1要素画像群の光波を要素画像ごとに分配する。そして、立体画像奥行き変換プログラムは、第1要素画像光波変換手段によって、要素画像の光波を、仮想のピンホールまたは予め定めた焦点距離を持つレンズである開口部を通した光波に変換する。
そして、立体画像奥行き変換プログラムは、奥行き変換手段によって、第1要素画像光波変換手段で変換された光波を、第1要素画像群全体の光を通過させる、予め定めた焦点距離となる仮想の凸レンズを通した光波に変換する。
【0022】
また、立体画像奥行き変換プログラムは、第2要素画像光波変換手段によって、奥行き変換手段で変換された光波を、要素画像ごとに対応する、仮想のピンホールまたは予め定めた焦点距離を持つレンズである開口部を通した光波に変換する。
そして、立体画像奥行き変換プログラムは、加算手段によって、第2要素画像光波変換手段で変換された光波を要素画像の数だけ加算する。これによって、再生像として再生された場合に、被写体の奥行きが制御された画像(第2要素画像群)が生成される。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、以下に示す優れた効果を奏するものである。
請求項1に記載の発明によれば、被写体を複数の要素画像として撮影した画像を再撮影することで、表示開口群と撮影開口群との間に備えた奥行き制御レンズにより、立体画像を表示するための画像に対して奥行きを制御した画像を生成することができる。これによって、遠方の被写体の再生像をより近くに再生することで画像の演出効果を高めることができる。また、撮影装置や表示装置に奥行きを制御するためのレンズを設ける必要がなく、撮影装置や表示装置の小型・軽量化を図ることができる。
請求項2に記載の発明によれば、奥行き制御レンズとしての凸レンズを表示開口群に当接して配置することで、被写体の位置に関係なく、被写体の再生像を再生することが可能な画像を撮影することができる。
【0024】
請求項3または請求項4に記載の発明によれば、被写体を複数の要素画像として撮影した画像を再撮影した画像を演算により生成することができる。この生成された画像は、被写体の奥行きが制御された画像となるため、遠方の被写体の再生像をより近くに再生することができ、画像の演出効果を高めることができる。また、本発明によれば、奥行きを制御するための光学系を演算によって行うため、装置を小型・軽量化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
[第1実施形態:立体画像再撮影装置]
まず、図1を参照して、本発明の第1実施形態に係る立体画像再撮影装置について説明する。図1は、立体画像再撮影装置の構成を示す概略図である。
図1に示すように、立体画像再撮影装置2は、立体画像撮影装置1において撮影された、被写体を複数の要素画像として撮影した画像(第1要素画像群)を再撮影し、立体画像表示装置3において立体画像として表示される再生像の奥行きを変化させた画像(第2要素画像群)を生成するものである。ここでは、立体画像再撮影装置2は、表示手段21と、撮影手段22と、奥行き制御レンズLとを備えている。
【0026】
表示手段21は、立体画像撮影装置1において撮影された画像(第1要素画像群)を個々の要素画像ごとに倒立した画像として表示するものであって、要素画像群表示部21aと、表示開口群21bとを備えている。
【0027】
要素画像群表示部21aは、立体画像撮影装置1において撮影された画像(第1要素画像群)を表示するものであって、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、CRT(Cathode Ray Tube)等である。
【0028】
表示開口群21bは、要素画像群表示部21aで表示される各要素画像の位置に対応して、当該要素画像から凹凸の反転した像を生成させるものであって、複数の開口部21b,21b,…,21bを、要素画像群表示部21aの表示面に平面状に複数配列して構成されている。なお、開口部21b,21b,…,21bは、ピンホールまたは凸レンズであって、ここでは、単一の凸レンズを用いることとしている。この表示開口群21bを通過した光は、後記する奥行き制御レンズLに入射される。
【0029】
撮影手段22は、奥行き制御レンズLから入射された光を受光し、個々の要素画像ごとに撮影するものであって、撮影開口群22aと、要素画像群撮影部22bとを備えている。
【0030】
撮影開口群22aは、奥行き制御レンズLから入射された光を集光させるものであって、複数の開口部22a,22a,…,22aを、後記する要素画像群撮影部22bの撮影面に平面状に複数配列して構成されている。なお、開口部22a,22a,…,22aは、ピンホールまたは凸レンズであって、ここでは、凸レンズを用いることとしている。この撮影開口群22aを通過した光は、要素画像群撮影部22bに入射される。
【0031】
要素画像群撮影部22bは、撮影開口群22aを通過し集光した光を受光し、撮影するものであって、CCD(Charge Coupled Device:光電変換素子)、写真用フィルム等である。この要素画像群撮影部22bでは、撮影開口群22aの開口部22a,22a,…,22aに対応した数の要素画像(第2要素画像群)が撮影されることになる。この要素画像群撮影部22bで撮影された要素画像群(第2要素画像群)が、立体画像表示装置3において表示されることで、立体画像として被写体が再生されることになる。この際、表示開口群21bによって生成された立体像(凹凸が反転)が、再度、立体画像表示装置3によって凹凸が反転して再生されるので、結果として奥行きの凹凸が正しく再現される。
【0032】
奥行き制御レンズLは、表示手段21と撮影手段22との間に配置され、要素画像群撮影部22bの撮影面において撮影される要素画像が立体画像として表示される際の奥行きを制御するものである。この奥行き制御レンズLには、凸レンズを用いることができ、少なくとも表示手段21や撮影手段22よりも大きい径を持つレンズとする。
この奥行き制御レンズLは、入射光を屈折させるため、表示手段21で表示された要素画像群の光は、奥行き制御レンズLの屈折率、曲率半径等に応じて屈折されて、撮影手段22で撮影されることになる。すなわち、撮影手段22の撮影面において撮影される個々の要素画像は、奥行き制御レンズLの光軸方向にずれて撮影される。これによって、撮影手段22で撮影された要素画像群を、立体画像表示装置3において表示すると、実際の被写体位置よりも手前に生成され視認されることになる。例えば、奥行き制御レンズLの屈折率が同じである場合は、当該奥行き制御レンズLの位置をより表示手段21側に位置させることで、立体画像として表示される再生像の位置をより観察方向手前側に再生させることができる。なお、奥行き制御レンズLによって立体画像の奥行きを制御する手法については、図2を参照して、後で詳細に説明を行うことにする。
【0033】
このように立体画像再撮影装置2を構成することで、立体画像を表示するための画像(要素画像群)から、奥行きを制御した画像を生成することができる。また、この構成によれば、立体画像撮影装置1に奥行き制御レンズを備える必要がないため、立体画像撮影装置1を小型・軽量化することが可能となる。
【0034】
〔奥行き制御方法の詳細〕
次に、図2を参照して、図1で説明した立体画像再撮影装置2を用いた、立体画像の奥行き制御方法について説明する。図2は、本発明における立体画像の奥行き制御方法を説明するための模式図であって、(a)は被写体撮影時、(b)は再撮影時、(c)は立体画像表示時をそれぞれ示している。
【0035】
また、ここでは、図2(a)に示すように、凸レンズを平面状に複数配列した撮影開口群11aと、その撮影開口群11aを通過した光を受光し、撮影する要素画像群撮影部11bとを備えた立体画像撮影装置1が、被写体Tを画像(第1要素画像群t1)として撮影するものとする。
また、図2(b)に示すように、立体画像再撮影装置2は、図2(a)で撮影された画像(第1要素画像群t1)と表示開口群21bによって再生された像とを再撮影することで、奥行き制御を行った画像(第2要素画像群t2)を生成するものとする。
さらに、図2(c)に示すように、図2(b)で生成された第2要素画像群t2を表示する要素画像群表示部31aと、凸レンズを平面状に複数配列した表示開口群31bとを備えた立体画像表示装置3が、第2要素画像群t2を立体画像として提示するものとする。
【0036】
以下、立体画像の奥行き制御方法について、被写体Tを撮影し、立体画像として再生するまでの手順と合わせて説明を行うことにする。なお、この手順は、撮影と表示とを1つのステップとしたときに、2回の撮影・表示ステップにより行われる。
〔第1撮影ステップ〕
まず、図2(a)に示すように、立体画像撮影装置1は、第1の撮影開口群11aである凸レンズの主点から、距離Lだけ離れた被写体Tを、第1要素画像群t1として撮影する。
【0037】
〔第1表示ステップ〕
そして、図2(b)に示すように、立体画像再撮影装置2は、立体画像撮影装置1で撮影された画像(第1要素画像群t1)を表示する。このとき、立体画像再撮影装置2の第1の要素画像群表示部21aで表示される第1要素画像群t1は、奥行き制御レンズLが存在しない場合、第1の表示開口群21bの主点から距離Lだけ離れた位置に再生像Tを結像する画像となる。
【0038】
〔第2撮影ステップ〕
そして、立体画像再撮影装置2は、第1の表示開口群21bと第2の撮影開口群22aとの間に設けた奥行き制御レンズLを通過した光を、第2要素画像群t2として撮影する。なお、第2要素画像群t2は、奥行き制御レンズLを通過した画像であるため、前記した第1表示ステップにおいて再生される再生像Tよりも手前に結像する画像(再生像T)となる。
ここで、奥行き制御レンズLの主点から、第1表示ステップにおいて再生される再生像Tまでの距離をL、奥行き制御レンズLの主点から、第2要素画像群t2により再生される再生像Tまでの距離をL、奥行き制御レンズLの焦点距離をfとすると、各L、Lおよびfは、以下の式(1)の関係を満たすことになる。
【0039】
【数1】

【0040】
すなわち、奥行き制御レンズLから、第2要素画像群t2により再生される再生像Tまでの距離Lは、以下の式(2)により示すことができる。
【0041】
【数2】

【0042】
また、第1表示ステップにおいて第1要素画像群t1により再生される再生像Tの位置と、第2要素画像群t2により再生される再生像Tの位置との差Lは、以下の式(3)により示すことができる。
【0043】
【数3】

【0044】
〔第2表示ステップ〕
そして、図2(c)に示すように、立体画像表示装置3は、立体画像再撮影装置2で撮影された画像(第2要素画像群t2)を表示する。このとき、図2(b)において、第1の表示開口群21bと第2の撮影開口群22aとの距離(L)を調整することで、図2(c)に示した再生像Tの位置を、距離(L)に応じた距離(L)分だけ観察方向手前に移動させることができる。すなわち、観察方向から見て被写体の再生像は、実際に撮影した被写体の位置から、以下の式(4)に示した距離(L)だけ手前に表示されることになる。
【0045】
【数4】

【0046】
以上説明したように、立体画像再撮影装置2において、立体画像撮影装置1で撮影された画像(第1要素画像群t1)と表示開口群21bによって再生された像とを再撮影することで、図7に示した従来の方法に比べて、より大きく奥行きを制御することができる。また、図11に示した従来の方法に比べて、立体画像撮影装置1に奥行き制御レンズを設ける必要がないため、立体画像撮影装置1の構成を簡略化することができる。
【0047】
なお、図2(b)において、奥行き制御レンズLの主点から、第1表示ステップにおいて再生される再生像Tまでの距離Lが、奥行き制御レンズLの焦点距離fと等しくなった場合、前記式(2)に示すように、奥行き制御レンズLから、第2要素画像群t2により再生される再生像Tまでの距離Lは無限遠(∞)となり、奥行き制御ができないことになる。この場合、第1表示ステップにおける奥行き制御レンズLの主点から、再生像Tまでの距離Lが、奥行き制御レンズLの焦点距離fと等しくならないように、奥行き制御レンズLの位置を調整することで回避することができる。
【0048】
(奥行き制御方法の好適例)
次に、図3を参照して、図2で説明した奥行き制御レンズLの焦点距離fに影響されることなく、再生像の奥行きを制御することが可能な奥行き制御方法について説明を行う。図3は、本発明における好適な立体画像の奥行き制御方法を説明するための模式図であって、(a)は被写体撮影時、(b)は再撮影時、(c)は立体画像表示時をそれぞれ示している。なお、図3の立体画像再撮影装置2Bは、図3(b)において、奥行き制御レンズLが第1の表示開口群21bに当接して配置されていることが、図2における立体画像再撮影装置2の構成と異なっている。なお、立体画像撮影装置1および立体画像表示装置3は、それぞれ図2と同様のものである。
【0049】
以下、立体画像の奥行き制御方法について、図2で説明したステップと同様、撮影と表示とを1つのステップとした2回の撮影・表示ステップについてその手順を順に説明する。
〔第1撮影ステップ〕
まず、図3(a)に示すように、立体画像撮影装置1は第1の撮影開口群11aを介して被写体を第1要素画像群として撮影する。このとき、被写体の位置は、立体画像撮影装置1に最も近づいた位置である第1の撮影開口群11aの位置Tから、最も離れた位置である無限遠Tまで存在する可能性がある。
【0050】
〔第1表示ステップ〕
そして、図3(b)に示すように、立体画像再撮影装置2Bは、立体画像撮影装置1で撮影された画像(第1要素画像群)を表示する。
ここで、図3(b)に示すように、立体画像再撮影装置2Bは、奥行き制御レンズLを第1の表示開口群21bに当接していることから、前記した図2(b)において、第1の表示開口群21bから、その表示開口群21bにより再生される再生像Tまでの距離Lと、奥行き制御レンズLから、その奥行き制御レンズLを介して再生される再生像Tまでの距離Lは、等しい距離であるとみなすことができる。
【0051】
これは、距離L(すなわち、距離L)が、第1の表示開口群21bの直前から無限遠まで変化すると、前記式(2)により、奥行き制御レンズLから、その奥行き制御レンズLを介して再生される再生像Tまでの距離Lは、“0”から焦点距離fまで変化することを示している。
【0052】
〔第2撮影ステップ〕
そこで、図3(b)に示すように、立体画像再撮影装置2Bは、第1表示ステップで表示された画像を、奥行き制御レンズLを介して第2要素画像群として撮影することで、その撮影された第2要素画像群は、奥行き制御レンズLの主点(距離“0”)から、焦点距離fまでに再生可能な画像となる。
【0053】
〔第2表示ステップ〕
そして、図3(c)に示すように、立体画像表示装置3は、立体画像再撮影装置2Bで撮影された画像を表示する。
これによって、図3(a)において第1の撮影開口群11a上に位置していた被写体の再生像は、図3(c)において第2の表示開口群31bから観測方向手前の位置に再生される。このとき、第2の表示開口群31bから再生像までの距離は、図3(b)における第2の撮影開口群22aから奥行き制御レンズLまでの距離LI,0と等しくなる。
【0054】
また、図3(a)において無限遠に存在する被写体の再生像は、図3(c)において第2の表示開口群31bから観測方向奥の位置に再生される。このとき、第2の表示開口群31bから再生像までの距離は、図3(b)における第2の撮影開口群22aから奥行き制御レンズLを介して再生される再生像までの距離LI,∞と等しくなる。
【0055】
以上説明したように、立体画像再撮影装置2Bにおいて、奥行き制御レンズLを第1の表示開口群21bに当接して配置することで、距離“0”から無限遠までに存在する被写体の再生像を、奥行き制御レンズLの焦点距離f内で再生することができる。
なお、ここでは、立体画像再撮影装置2,2Bは、奥行き制御レンズL等のレンズ系により再生像の奥行き制御を行ったが、本発明は、光学系と等価な演算回路等によって奥行き制御を行うこととしてもよい。
【0056】
[第2実施形態:立体画像奥行き変換装置]
次に、図4を参照して、本発明の第2実施形態に係る立体画像奥行き変換装置について説明する。図4は、立体画像奥行き変換装置の構成を示すブロック構成図である。また、立体画像奥行き変換装置4は、図3に示した立体画像再撮影装置2Bと等価な装置とし、適宜図5を参照することとする。また、立体画像奥行き変換装置4に入力される要素画像群(第1要素画像群)は、立体画像撮影装置1(図1参照)において、CCD等によって撮影された映像信号である。
【0057】
図4に示すように、立体画像奥行き変換装置4は、第1実施形態で説明した立体画像再撮影装置2Bにおける光学系による処理を演算により行うものである。ここでは、立体画像奥行き変換装置4は、分配手段41と、要素画像分の要素画像変換手段42、奥行き変換手段43および要素画像再生手段44と、加算手段45とを備えている。
【0058】
分配手段41は、入力された映像信号を要素画像単位に分割するものである。ここで、分配手段41は、入力された映像信号における要素画像群表示部21aの表示面に表示される第1要素画像群t1のm番目の要素画像の光波(gs,m(xs,m,ys,m))を、m番目の要素画像に予め対応付けられている要素画像変換手段42に出力する。なお、ここで、光波とは、映像信号を光の波動として扱った場合の振幅と位相を複素数で表したものである。
【0059】
要素画像変換手段(第1要素画像光波変換手段)42は、要素画像の光波を、予め定めた焦点距離となる要素レンズ(仮想のピンホールまたはレンズ)を通した際の光波に変換するものである。ここでは、要素画像変換手段42は、光波計算手段42aと、位相シフト手段42bとを備えている。
【0060】
光波計算手段42aは、要素画像の光波をフレネル近似することで、要素レンズ(仮想のピンホールまたはレンズ)に入射する光波を演算するものである。すなわち、光波計算手段42aは、第1の表示開口群21bのm番目の開口部(要素レンズ等)に到達する光波に相当する信号として、一般的なフレネル近似を用いて、以下の式(5)により要素画像ごとの光波(Ri,m(xo,m,yo,m))を演算する。
【0061】
【数5】

【0062】
ここで、xs,m、xo,mは、それぞれ画像全体(第1要素画像群)におけるm番目の要素画像の中心のx座標、表示開口群21bのm番目の開口部の光軸中心からのx座標である。また、ys,m、yo,mは、それぞれ画像全体(第1要素画像群)におけるm番目の要素画像の中心のy座標、表示開口群21bのm番目の開口部の光軸中心からのy座標である。また、fは第1の表示開口群21bの開口部(要素レンズ)の焦点距離、kは波数2π/λ(λは波長)である。
この要素画像ごとの光波(Ri,m(xo,m,yo,m))は、位相シフト手段42bに出力される。
【0063】
位相シフト手段42bは、光波計算手段42aから入力された要素画像の光波(Ri,m(xo,m,yo,m))から、位相を仮想の要素レンズに相当する位相分だけシフトさせた光波を演算するものである。すなわち、位相シフト手段42bは、以下の式(6)に示すように、要素レンズに相当する位相分だけ光波(Ri,m(xo,m,yo,m))をシフトさせることで、要素レンズから出射する光波に相当する信号(光波Ro,m(xo,m,yo,m))を演算する。
【0064】
【数6】

【0065】
この要素画像ごとの光波(Ro,m(xo,m,yo,m))は、奥行き変換手段43に出力される。
【0066】
奥行き変換手段43は、要素画像変換手段42で変換された光波を、予め定めた焦点距離となる仮想の奥行き制御レンズL(凸レンズ)を通した際の光波に変換するものである。ここでは、奥行き変換手段43は、位相シフト手段43aと、再分配手段43bとを備えている。
【0067】
位相シフト手段43aは、要素画像変換手段42で変換された光波の位相を仮想の凸レンズに相当する位相分だけシフトさせた光波を演算するものである。すなわち、位相シフト手段43aは、以下の(7)式に示すように、奥行き制御レンズLに相当する位相分だけ光波(Ro,m(xo,m,yo,m))をシフトさせることで、奥行き制御レンズLから出射する光波に相当する信号(光波Rd,m(xo,m,yo,m))を演算する。
【0068】
【数7】

【0069】
ここで、x,yは奥行き制御レンズLの光学中心からの距離である。また、第1の表示開口群21bの開口部(要素レンズ)のピッチをPとすると、x=xo,m+mP、y=yo,m+mPの関係が成り立つ。
この位相シフト手段43aで演算された要素画像ごとの光波(Rd,m(xo,m,yo,m))は、再分配手段43bに出力される。
【0070】
再分配手段43bは、位相シフト手段43aから入力された要素画像ごとの光波(Rd,m(xo,m,yo,m))から、第2の撮影開口群22aの開口部(要素レンズ)に入射する光波を演算するものである。前記した位相シフト手段43aで演算された光波(Rd,m(xo,m,yo,m))は、m番目の要素レンズに到達するだけではなく、周辺の要素レンズにも到達することになる。そこで、再分配手段43bは、位相シフト手段43aから入力された要素画像ごとの光波(Rd,m(xo,m,yo,m))が、第2の撮影開口群22aの開口部(要素レンズ)に分配された結果となるn番目の要素レンズに到達した光波(Rp,n,m(xp,n,yp,n))を、一般的なフレネル近似を用いて、以下の式(8)により演算する。
【0071】
【数8】

【0072】
ここで、xp,n、yp,nは、それぞれn番目の撮影開口群22aの開口部(要素レンズ)の光学中心からのx座標、y座標である。また、Lは奥行き制御レンズLと第2の撮影開口群22aとの距離である。
この撮影開口群22aの開口部ごとの光波(Rp,n,m(xp,n,yp,n))は、要素画像再生手段44に出力される。
【0073】
要素画像再生手段(第2要素画像光波変換手段)44は、奥行き変換手段43で変換された光波を、予め定めた焦点距離となる要素レンズ(仮想のピンホールまたはレンズ)を通した際の光波に変換するものである。ここでは、要素画像再生手段44は、位相シフト手段44aと、光波計算手段44bとを備えている。
【0074】
位相シフト手段44aは、奥行き変換手段43で変換された光波(Rp,n,m(xp,n,yp,n))から、位相を仮想の要素レンズに相当する位相分だけシフトさせた光波を演算するものである。すなわち、位相シフト手段44aは、以下の式(9)に示すように、要素レンズに相当する位相分だけ光波(Rp,n,m(xp,n,yp,n))をシフトさせることで、要素レンズから出射する光波に相当する信号(光波Rr,n,m(xo,m,yo,m))を演算する。
【0075】
【数9】

【0076】
ここで、fは第2の撮影開口群22aの開口部(要素レンズ)の焦点距離である。
この要素レンズごとの光波(Rr,n,m(xp,n,yp,n))は、光波計算手段44bに出力される。
【0077】
光波計算手段44bは、要素レンズごとの光波をフレネル近似することで、要素レンズ(仮想のピンホールまたはレンズ)から出射し、要素画像群撮影部22bの撮影面に到達する光波を演算するものである。すなわち、光波計算手段44bは、以下の式(10)により、n番目の要素レンズから出射されて要素画像群撮影部22bの撮影面に到達する光波(Re,n,m(xe,n,ye,n))を演算する。
【0078】
【数10】

【0079】
ここで、xe,n、ye,nは、それぞれ要素画像の中心からのx座標、y座標である。この光波計算手段44bで演算された光波(Re,n,m(xe,n,ye,n))は、加算手段45に出力される。
【0080】
加算手段45は、要素画像再生手段44から出力された要素画像ごとの光波から、その光波電力の総和を演算することで、奥行き変換処理が施された映像信号、すなわち、第2要素画像群t2となる映像信号を生成するものである。
ところで、要素画像再生手段44から出力される要素画像群撮影部22bの撮影面に到達する光波(Re,n,m(xe,n,ye,n))の電力は、光の振幅の2乗で表すことができる。また、第1要素画像群t1の各要素画像として発せられた光波は、インコヒーレント(波長や位相が一定ではない)であるため、光波の位相は無相関であるとみなすことができる。
【0081】
そこで、加算手段45は、第1要素画像群t1の各要素画像(−M〜M)として発せられた光波の電力の総和を、以下の式(11)により演算することで、第2要素画像群t2の一つの要素画像(式(11)ではn番目の要素画像)の電力を求め、その電力に比例した映像信号を出力する。
【0082】
【数11】

【0083】
これによって、立体画像奥行き変換装置4は、図3に示した立体画像再撮影装置2Bと等価で、演算により、立体画像として表示される再生像の奥行きを変化させた画像(第2要素画像群)を生成することができる。
なお、本発明は、この構成に限定されるものではない。例えば、ここでは、立体画像奥行き変換装置4は、図5に示したように、奥行き制御レンズLを第1の表示開口群21bに当接して配置した立体画像再撮影装置2Bと等価な装置として実現したが、図1に示した立体画像再撮影装置2と等価な装置として実現することも可能である。
この場合、奥行き変換手段43に、要素画像変換手段42(位相シフト手段42b)から出力された光波をフレネル近似して、奥行き制御レンズLに入射する光波を演算するフレネル近似手段(図示せず)を、位相シフト手段43aの前段に設ければよい。
【0084】
また、ここでは、要素レンズを凸レンズとして計算する例を示したが、ピンホールの場合は、位相シフト関数(位相シフト手段42bおよび44a)を省略することができる。この場合、焦点距離fおよびfは、ピンホールとそれぞれに対応する要素画像との距離となる。
【0085】
また、立体画像奥行き変換装置4は、前記した各手段を演算回路によって実現することも可能であるし、中央処理装置(CPU:Central Processing Unit)、主記憶装置(RAM:Random Access Memory)等を備えた一般的なコンピュータを、前記した各手段として機能させるプログラム(立体画像奥行き変換プログラム)により動作させることで実現することも可能である。
以上説明したように、本発明は、第1表示ステップから第2撮影ステップまでの処理を、光学系ではなく演算により行うことで、立体画像再撮影装置2、2Bにおける効果に加え、装置構成を小型化することができる効果を奏することになる。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明の第1実施形態に係る立体画像再撮影装置の構成を示す概略図である。
【図2】本発明における立体画像の奥行き制御方法を説明するための模式図であって、(a)は立体画像撮影装置における被写体撮影時、(b)は立体画像再撮影装置における再撮影時、(c)は立体画像表示装置における立体画像表示時を示している。
【図3】本発明における好適な立体画像の奥行き制御方法を説明するための模式図であって、(a)は立体画像撮影装置における被写体撮影時、(b)は立体画像再撮影装置における再撮影時、(c)は立体画像表示装置における立体画像表示時を示している。
【図4】本発明の第2実施形態に係る立体画像奥行き変換装置の構成を示すブロック構成図である。
【図5】本発明における演算により立体画像の奥行きを制御する方法を説明するための模式図である。
【図6】従来のIP方式の概念を説明するための説明図であって、(a)は被写体撮影時、(b)は立体画像表示時を示している。
【図7】従来の立体画像の奥行き制御方法を説明するための模式図であって、(a)は被写体撮影時、(b)は再撮影時、(c)は立体画像表示時を示している。
【図8】従来の奥行きの反転を解消するための要素画像の点対象変換を示す図である。
【図9】従来のGRINレンズを用いた点対称変換を模式的に示す図である。
【図10】従来のGRINレンズアレイを用いたIP方式の概念を説明するための説明図であって、(a)は被写体撮影時、(b)は立体画像表示時を示している。
【図11】従来のGRINレンズアレイを用いた立体画像の奥行き制御方法を説明するための模式図であって、(a)は被写体撮影時、(b)は再撮影時、(c)は立体画像表示時を示している。
【符号の説明】
【0087】
1 立体画像撮影装置
2、2B 立体画像再撮影装置
21 表示手段
21a 要素画像群表示部
21b 表示開口群
22 撮影手段
22a 撮影開口群
22b 要素画像群撮影部
3 立体画像表示装置
4 立体画像奥行き変換装置
41 分配手段
42 要素画像変換手段(第1要素画像光波変換手段)
43 奥行き変換手段
44 要素画像再生手段(第2要素画像光波変換手段)
45 加算手段
L 奥行き制御レンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
立体画像として表示されたときに、被写体の凹凸が反転した再生像となる複数の要素画像からなる要素画像群を、さらに当該凹凸が反転した再生像となる画像として、再撮影する立体画像再撮影装置であって、
前記要素画像群を表示する要素画像群表示部と、
この要素画像群表示部で表示される各要素画像の位置に対応した複数のピンホールまたはレンズである開口部を、前記要素画像群表示部の表示面側に平面状に配列した表示開口群と、
この表示開口群と対面する位置に設けた、複数のピンホールまたはレンズである開口部を平面状に配列した撮影開口群と、
この撮影開口群を撮影面側に設けるとともに、前記要素画像群を撮影する要素画像群撮影部とを備え、
前記表示開口群と前記撮影開口群との間に、前記要素画像群撮影部において撮影される要素画像が立体画像として表示される際の奥行きを制御する奥行き制御レンズを備えていることを特徴とする立体画像再撮影装置。
【請求項2】
前記奥行き制御レンズは凸レンズであって、当該凸レンズを前記表示開口群に当接して配置することを特徴とする請求項1に記載の立体画像再撮影装置。
【請求項3】
立体画像として表示されたときに、被写体の凹凸が反転した再生像となる複数の要素画像からなる第1要素画像群から、前記再生像の凹凸をさらに反転させるとともに、奥行きを変化させた第2要素画像群を生成する立体画像奥行き変換装置であって、
前記第1要素画像群の光波を前記要素画像ごとに分配する分配手段と、
この分配手段で分配された要素画像の光波を、仮想のピンホールまたは予め定めた焦点距離を持つレンズである開口部を通した光波に変換する第1要素画像光波変換手段と、
この第1要素画像光波変換手段で変換された光波を、前記第1要素画像群全体の光を通過させる、予め定めた焦点距離となる仮想の凸レンズを通した光波に変換する奥行き変換手段と、
この奥行き変換手段で変換された光波を、前記要素画像ごとに対応する、仮想のピンホールまたは予め定めた焦点距離を持つレンズである開口部を通した光波に変換する第2要素画像光波変換手段と、
この第2要素画像光波変換手段で変換された光波を、前記要素画像の数だけ加算することで、前記第2要素画像群を生成する加算手段と、
を備えていることを特徴とする立体画像奥行き変換装置。
【請求項4】
立体画像として表示されたときに、被写体の凹凸が反転した再生像となる複数の要素画像からなる第1要素画像群から、前記再生像の凹凸をさらに反転させるとともに、奥行きを変化させた第2要素画像群を生成するために、コンピュータを、
前記第1要素画像群の光波を前記要素画像ごとに分配する分配手段、
この分配手段で分配された要素画像の光波を、仮想のピンホールまたは予め定めた焦点距離を持つレンズである開口部を通した光波に変換する第1要素画像光波変換手段、
この第1要素画像光波変換手段で変換された光波を、前記第1要素画像群全体の光を通過させる、予め定めた焦点距離となる仮想の凸レンズを通した光波に変換することで、前記要素画像の奥行きを変化させる奥行き変換手段、
この奥行き変換手段で変換された光波を、前記要素画像ごとに対応する、仮想のピンホールまたは予め定めた焦点距離を持つレンズである開口部を通した光波に変換する第2要素画像光波変換手段、
この第2要素画像光波変換手段で変換された光波を、前記要素画像の数だけ加算することで、前記第2要素画像群を生成する加算手段、
として機能させることを特徴とする立体画像奥行き変換プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−114483(P2007−114483A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−305750(P2005−305750)
【出願日】平成17年10月20日(2005.10.20)
【出願人】(000004352)日本放送協会 (2,206)
【Fターム(参考)】