立体画像表示装置
【課題】上下左右から立体画像を鑑賞できるインテグラルイメージング方式に用いるマイクロレンズアレイは、製造方法に由来する、特性バラツキと価格が高いという問題がある。
【解決手段】互いに異なる視点の複数の原画像を合成した合成画像と、前記合成画像上に配置された第1のレンティキュラレンズと、前記第1のレンティキュラレンズ上に配置された第2のレンティキュラレンズとを有し、前記第2のレンティキュラレンズの焦点距離は、前記第1のレンティキュラレンズの焦点距離よりも長く、前記第1のレンティキュラレンズを構成する半円筒状レンズの長手方向と、前記第2のレンティキュラレンズを構成する半円筒状レンズの長手方向とが異なる立体画像表示装置である。
【解決手段】互いに異なる視点の複数の原画像を合成した合成画像と、前記合成画像上に配置された第1のレンティキュラレンズと、前記第1のレンティキュラレンズ上に配置された第2のレンティキュラレンズとを有し、前記第2のレンティキュラレンズの焦点距離は、前記第1のレンティキュラレンズの焦点距離よりも長く、前記第1のレンティキュラレンズを構成する半円筒状レンズの長手方向と、前記第2のレンティキュラレンズを構成する半円筒状レンズの長手方向とが異なる立体画像表示装置である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、視差を利用した立体画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
立体情報を正確に人に認識させることができれば、臨場感や認識精度が向上する。図8に示すように、人は、比較的に近い場所にある物体の立体感を、右目と左目で見える画像の違いにより認識している。この右目と左目で見える画像の違いは立体視差と呼ばれ、従来からこの特性を利用し、右目と左目に2つの視点の異なる画像(立体視差のある画像)を投影することにより、人に立体的な認識を与えられることが知られていた。
【0003】
しかしながら、立体画像を普及させるためには、鑑賞する際に不便であったり、疲労があったりしてはならない。したがって、メガネなどの特殊な器具を用いる方法は、特殊用途を除いて採用が難しい。これらの器具を用いずに立体画像を得るためには、右目と左目で異なる画像が見えるように工夫する必要がある。
【0004】
図9は、本発明における画像と観察者の位置関係を説明するものである。700は立体画像の表示手段であり、YZ平面上にあるとする。観察者は、X軸方向に離れた鑑賞位置701から立体画像表示手段700を見るとする。観察者の右目の位置は701aであり、左目の位置は701bであり、XY平面上にあるとする。右目と左目の位置では画像を見る角度(視線角度)が異なるため、この視線角度に応じて異なる画像を表示することができれば、立体画像を表示することができる。
【0005】
図10は、パララックスバリア方式による視線角度によって異なる画像を表示する方法である。左右の目の配置方向(図のY軸と平行な方向)と垂直方向(図のZ軸と平行な方向)に細いスリット上のバリア800を設けると、その隙間を通る角度の画像のみが見えるようになる。そこで、左目から見える部分(図中のL)に左目で見た画像を分割して配置し、右目から見える部分(図中のR)に右目で見た画像を分割して配置すると、左右の目に立体視差のある画像を見せることができる。この方法は、バリアにより画像が暗くなる問題があったが、円筒状のレンズをZ軸と平行に並べたレンティキュラレンズ900を用いる方法(図11)により改善されている。このレンティキュラ方式も、視線角度によって異なる画像が見えるようにして立体画像を形成する。これらの方法は、画像を鑑賞する位置(頭と画像の位置関係)が制限されるということが課題であったが、図11に示すように水平方向(Y軸方向)に多数の視点における画像を配置し、多数の視線角度に対応させることにより、この制限を緩和することができる。
【0006】
この多数の視点における画像を用いる方法は、立体画像に対して鑑賞位置が横(図のY軸方向)に動く場合には対応ができるが、鑑賞位置に対して立体画像が回転(X軸に対する回転)する場合は立体画像が形成されない。
【0007】
このような画像に対して、鑑賞位置が回転した場合でも立体画像が鑑賞できる方法として、インテグラルイメージング方式がある。これは、図12に示すような微小なレンズ(マイクロレンズ)1000を縦横に並べたマイクロレンズアレイを用いるものである。円筒状レンズではなく、軸対象レンズを用いる為、全ての方向の視線角度に応じて、異なる画像が見えるようにできる。その為、視線が回転した場合でも立体画像を形成することができる。このように、インテグラルイメージング方式は、立体画像と鑑賞位置の関係の制約を改善でき、立体画像の普及に大きく貢献する方法である。しかしながら、インテグラルイメージング方式に用いる微小レンズが並んだマイクロレンズアレイは、その作製方法の特性によって、レンティキュラレンズに比べて均一で面積を大きくするのが困難である。マイクロレンズアレイの作製方法としては、金型を用いて成型する方法と、インクジェット装置などにより樹脂を吐出し、マイクロレンズを形成していく方法がある(特許文献1)。
【特許文献1】特開2003−279893号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図13に金型を用いたマイクロレンズアレイの作製方法を示す。まず、作製したいマイクロレンズの形状を転写した金属の金型1100を作製する。そして、その金型1100に透明樹脂1101を充填し成型する。金型から樹脂を取り出すとマイクロレンズアレイ1102を得ることができる。このように、必要なマイクロレンズアレイに対応するサイズや特性の金型が必要である。この金型を作るためには、マイクロレンズの一つ一つに対応するくぼみを、バイトや放電加工などで、一個ずつ加工して行く必要がある。このように加工工数が多い為、加工に膨大な時間が必要であり、加工中にバイトが磨耗したり、加工機の移動を繰り返して加工したりする為、ばらつきが生じやすい。したがって、均一な特性のマイクロレンズを配置することが難しく、非常に高価な金型となる。
【0009】
また、インクジェット装置でマイクロレンズを形成する方法は、高価な金型は不要であるが、マイクロレンズの1個ずつを、それぞれ液体を吐出しながら形成していくため、マイクロレンズの形状が安定しにくい。そのため、マイクロレンズアレイの特性が不均一になりやすい。このように、マイクロレンズアレイが不均一であると、視線角度によって見えるべき画像の精度が悪化し、精細な立体画像が形成できないという問題がある。
【0010】
一方、レンティキュラレンズも、金型を用いて成型されるが、マイクロレンズアレイとは異なり、バイトを押し当てて、1方向に動かすことで、一つの円筒状レンズに対応する転写形状を作製することができる。加工工数が少なくなる為、マイクロレンズアレイの金型に比べ加工に必要な時間も少なくバラツキが少なくなる。したがって、均一な特性で安価に作製することができる。
【0011】
本発明は、マイクロレンズアレイを用いずに、安価で、大面積、均一な特性が得られるレンティキュラレンズを用いて、視線と立体画像が回転をした場合でも立体画像を得る立体画像表示装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決する為に、本発明の立体画像表示装置は、互いに異なる視点の複数の原画像を合成した合成画像と、前記合成画像上に配置された第1のレンティキュラレンズと、前記第1のレンティキュラレンズ上に配置された第2のレンティキュラレンズとを有し、前記第2のレンティキュラレンズの焦点距離は、前記第1のレンティキュラレンズの焦点距離よりも長く、前記第1のレンティキュラレンズを構成する半円筒状レンズの長手方向と、前記第2のレンティキュラレンズを構成する半円筒状レンズの長手方向とが異なる立体画像表示装置である。
【0013】
このような構成とすることで、均一な特性で安価なレンティキュラレンズを用いることができる。また、立体画像表示装置に対する鑑賞位置が回転した場合においても、立体画像を表示することができる。なお、立体画像表示装置に対する鑑賞位置の回転角度と、2つのレンティキュラレンズを構成する各半円筒状のレンズの長手方向のなす角度とは一致する必要はない。立体画像表示装置に対する任意の回転角度の鑑賞位置に対応して、第1と第2のレンティキュラレンズを通して見える画像が変化する為、適切な合成画像を準備することにより、任意の回転角度で立体画像を鑑賞できるようになる。また、第2のレンティキュラレンズの焦点距離を第1のレンティキュラレンズの焦点距離よりも長くすることにより、第1のレンティキュラレンズと第2のレンティキュラレンズの焦点位置を合わせ、鮮明な立体画像を得ることができるようになる。
【0014】
さらに、前記第1のレンティキュラレンズを構成する半円筒状レンズの長手方向と、前記第2のレンティキュラレンズを構成する半円筒状レンズの長手方向とのなす角度は90度であることが好ましい。このような構成にすることにより、各視線角度によって投影する原画像を、長方形又は正方形にすることができ、異なる視点の原画像の合成が容易となる。
【0015】
さらに、前記第1のレンティキュラレンズを構成する半円筒状レンズのピッチと、前記第2のレンティキュラレンズを構成する半円筒状レンズのピッチとが異なることが好ましい。このように、レンティキュラレンズ構成する半円筒状レンズのピッチを異ならせることにより、焦点距離の異なるレンズによって生じる画角の違いを補正することができる。また、ピッチが同じで、焦点距離の異なるレンティキュラレンズを作製するためには、レンズの曲率を変える必要があるが、焦点距離によっては、レンズ形状の作製が困難になる。ピッチを変えることにより、加工が容易なレンズ形状を選択することが可能となる。これにより、いずれの方向から見ても、鮮明な立体画像を表示する立体画像表示装置を得ることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、均一で安価なレンティキュラレンズを用いて、いずれの方向から見ても、ゆがみの少ない大面積の立体画像を表示する立体画像表示装置を容易に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(実施の形態1)
本実施の形態の構成を図1に示す。100は、異なる視点からの原画像を合成した合成画像であり、101は第1のレンティキュラレンズ、102は第2のレンティキュラレンズである。第1のレンティキュラレンズ101は、合成画像100に焦点が合うように各レンズの曲率を設定し、第2のレンティキュラレンズ102は、第1のレンティキュラレンズ101を通して合成画像100に焦点が合うように、各レンズの曲率を設定した。このように焦点距離を変えることで、レンティキュラレンズを積層しても、鮮明な画像を得ることができる。図1では、各部品は個別に記載されているが、実際には、合成画像と積層したレンティキュラレンズとは密着している。なお、各層の間に透明な樹脂や接着剤を充填しても、その材料の屈折率に合わせて、レンティキュラレンズの焦点距離を設計すれば、同様の効果が得られる。
【0018】
次に、異なる視点の画像を合成する方法について説明する。図2は、レンズにおける焦点距離と入射角度と結像位置の関係を示したものである。θは入射角度であり、この視線角度から見た場合、結像位置Aの画像が見えるようになる。この結像位置は焦点距離fと入射角度θによって決まり、中央から、f×tanθ離れた位置となる。焦点距離が異なると同じ視線角度から見ても、見える画像が異なる。すなわち、本発明の構成では、第1のレンティキュラレンズと第2のレンティキュラレンズの焦点距離が異なるため、異なる視点の画像を合成する際にレンティキュラレンズの焦点距離に合わせて、合成する必要がある。
【0019】
図3、図4に立体とその立体を観察する異なる視点の位置関係を示す。300は、鑑賞対象の立体であり、301は、その立体を観察する視点が配置されている平面である。ここで説明は、簡単のために平面で示したが、曲面上に観察する視点を配置してもよい。図4は、301上の観察する視点の配置をX軸の正方向から原点を見る向きを示したものである。P(1、1)〜P(m、n)は立体を観察する視点の位置を示しており、m×n個の異なる視点から立体300を観察する。d1は、図のY軸方向の視点の間隔、d2は図のZ軸方向の視点の間隔である。立体300と観察する視点が配置されている平面301の距離Lとが十分に離れているとする。Y軸方向に視点が一つ移動すると、視点角度はd1/L、Z軸方向に視点が一つ移動すると、視点角度はd2/L変化する。このとき、第1のレンティキュラレンズは、焦点距離がf1で、Z軸方向に平行に並べられているとすると、結像位置は、f1×tan(d1/L)移動する。第2のレンティキュラレンズは、焦点距離がf2で、Y軸方向に平行に並べられているとすると、結像位置は、f2×tan(d2/L)移動する。各視点の位置から立体を観察した画像は、実際にカメラなどを配置して、撮影することができる。また、立体の数値モデル構築し、各視点から見た原画像を計算によって求めることも可能である。このようにして作製した各視点位置から立体を観察した原画像をレンティキュラレンズのピッチと視点数に合わせて分割し、結像位置に配置するように、合成を行う。第1のレンティキュラレンズは、ピッチ1/αインチで、Y軸方向に並べられており、第2のレンティキュラレンズは、ピッチ1/βインチで、Z軸方向に並べたものとすると、1/αインチ×1/βインチの中に、m×n視点分の画像の一部を合成したものを並べることになる。図5は、1/αインチ×1/βインチの合成画像の一部である。図中のQ(1、1)〜Q(m、n)は、視点P(1、1)〜P(m、n)から観察した画像の一部である。レンズを通して結像するため、各視点の配置と上下左右を逆に配置し、各画像も上下左右を逆に配置する必要がある。
【0020】
以下に具体的に行った実施例を示す。
【実施例】
【0021】
(実施例1)
本実施例は、第1のレンティキュラレンズとして、円筒状レンズがZ軸と平行に配置されたピッチが1/20インチ、焦点距離2mmのアクリル製のレンティキュラレンズを用いた。また、第2のレンティキュラレンズとしては、円筒状レンズがY軸と平行にピッチが1/20インチで焦点距離が、4mmのアクリル製のレンティキュラレンズを用いた。このとき、第2のレンティキュラレンズの厚さを調整し、第1のレンティキュラレンズと焦点位置が一致するようにした。CCDカメラを30mm間隔で縦(Z軸方向)8個、横(Y軸方向)16個並べることにより、8視点×16視点の位置から観察した画像を取り込み、合成した。図6に合成した画像の一部を示す。図は、縦と横のレンティキュラレンズの一つ分に対応し、それぞれの四角が、一つの視点から切り出した画像の一部である。カメラの間隔と等間隔で撮影したが、第1のレンティキュラレンズと第2のレンティキュラレンズの焦点距離が異なるので、画像の配置を変化させた。この2次元画像をインクジェットプリンターで印刷した。その上に、第1レンティキュラレンズと第2のレンティキュラレンズが直角になるように配置し、立体画像表示装置の作製を行った。
【0022】
このようにして、作製した立体画像表示装置は、鑑賞位置が立体画像表示装置に対して任意の角度で回転した場合においても、常に立体画像として鑑賞することができた。
【0023】
なお、本実施例では、64個のCCDカメラを用いて、各視点からみた画像を作成し、8視点×16視点の画像として用いたが、この方法に限る必要は無く、各画像の間を補完して合成したり、縦と横のカメラの数を変えて合成したりしても同様の効果が得られる。また、レンティキュラレンズとしてはアクリル樹脂を用いたが、この限りではなく、透明な材質であれば、用いることができる。
【0024】
(実施例2)
本実施例は、第1のレンティキュラレンズとしてY軸と平行に円筒状レンズを配置し、ピッチが1/20インチで、焦点距離が2mmのアクリル製のレンティキュラレンズを用いた。また、第2のレンティキュラレンズとしては、Z軸と平行に円筒状レンズが配置され、ピッチが1/10インチ、焦点距離が4mmのアクリル製のレンティキュラレンズを用いた。コンピューター上で3次元モデルを作製し、視点変換することで、縦(Z軸方向)10視点(24mmピッチ)×横(Y軸方向)20視点(12mmピッチ)の原画像を作り出した。それを分割して並べて、合成画像を作成した。図7に合成した画像の一部を示す。図は、縦と横のレンティキュラレンズの一つ分に対応し、それぞれの四角が、一つの視点から切り出した画像の一部である。縦と横の視点の移動量を変化させ、一つの視点から切り出す画像の形が正方形になるようにした。横方向の画像を取り出す第2のレンティキュラレンズの焦点距離が、第1のレンティキュラレンズの焦点距離に比べて2倍であるので、立体画像を鑑賞できる角度間隔は縦と横とで同じとなる。作成した合成画像をインクジェットプリンターにより印刷し、その上に、第1レンティキュラレンズと第2のレンティキュラレンズとが直角になるように配置し、立体画像表示装置の作製を行った。
【0025】
本実施例で示したように、第1と第2のレンティキュラシートを構成する半円筒状レンズのピッチを変えることで、立体画像を鑑賞できる角度間隔を縦と横とで同じにすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明の立体画像表示装置は、広告や娯楽、医療、遠隔操作など、立体画像を利用して、人に情報を提供する表示装置として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の立体画像表示装置の構成図
【図2】レンズの焦点距離と結像位置の説明図
【図3】立体とその立体を観察する異なる視点との位置関係の説明図
【図4】立体とその立体を観察する異なる視点との位置関係の説明図
【図5】合成画像を説明する説明図
【図6】実施例1の合成画像を説明する説明図
【図7】実施例2の合成画像を説明する説明図
【図8】立体視差の説明図
【図9】本発明の立体画像表示装置と鑑賞位置との関係を説明する説明図
【図10】パララックスバリア方式の説明図
【図11】レンティキュラ方式の説明図
【図12】マイクロレンズアレイの説明図
【図13】マイクロレンズアレイの作製方法を説明する説明図
【符号の説明】
【0028】
100 異なる視点の原画像を合成した合成画像
101 第1のレンティキュラレンズ
102 第2のレンティキュラレンズ
【技術分野】
【0001】
本発明は、視差を利用した立体画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
立体情報を正確に人に認識させることができれば、臨場感や認識精度が向上する。図8に示すように、人は、比較的に近い場所にある物体の立体感を、右目と左目で見える画像の違いにより認識している。この右目と左目で見える画像の違いは立体視差と呼ばれ、従来からこの特性を利用し、右目と左目に2つの視点の異なる画像(立体視差のある画像)を投影することにより、人に立体的な認識を与えられることが知られていた。
【0003】
しかしながら、立体画像を普及させるためには、鑑賞する際に不便であったり、疲労があったりしてはならない。したがって、メガネなどの特殊な器具を用いる方法は、特殊用途を除いて採用が難しい。これらの器具を用いずに立体画像を得るためには、右目と左目で異なる画像が見えるように工夫する必要がある。
【0004】
図9は、本発明における画像と観察者の位置関係を説明するものである。700は立体画像の表示手段であり、YZ平面上にあるとする。観察者は、X軸方向に離れた鑑賞位置701から立体画像表示手段700を見るとする。観察者の右目の位置は701aであり、左目の位置は701bであり、XY平面上にあるとする。右目と左目の位置では画像を見る角度(視線角度)が異なるため、この視線角度に応じて異なる画像を表示することができれば、立体画像を表示することができる。
【0005】
図10は、パララックスバリア方式による視線角度によって異なる画像を表示する方法である。左右の目の配置方向(図のY軸と平行な方向)と垂直方向(図のZ軸と平行な方向)に細いスリット上のバリア800を設けると、その隙間を通る角度の画像のみが見えるようになる。そこで、左目から見える部分(図中のL)に左目で見た画像を分割して配置し、右目から見える部分(図中のR)に右目で見た画像を分割して配置すると、左右の目に立体視差のある画像を見せることができる。この方法は、バリアにより画像が暗くなる問題があったが、円筒状のレンズをZ軸と平行に並べたレンティキュラレンズ900を用いる方法(図11)により改善されている。このレンティキュラ方式も、視線角度によって異なる画像が見えるようにして立体画像を形成する。これらの方法は、画像を鑑賞する位置(頭と画像の位置関係)が制限されるということが課題であったが、図11に示すように水平方向(Y軸方向)に多数の視点における画像を配置し、多数の視線角度に対応させることにより、この制限を緩和することができる。
【0006】
この多数の視点における画像を用いる方法は、立体画像に対して鑑賞位置が横(図のY軸方向)に動く場合には対応ができるが、鑑賞位置に対して立体画像が回転(X軸に対する回転)する場合は立体画像が形成されない。
【0007】
このような画像に対して、鑑賞位置が回転した場合でも立体画像が鑑賞できる方法として、インテグラルイメージング方式がある。これは、図12に示すような微小なレンズ(マイクロレンズ)1000を縦横に並べたマイクロレンズアレイを用いるものである。円筒状レンズではなく、軸対象レンズを用いる為、全ての方向の視線角度に応じて、異なる画像が見えるようにできる。その為、視線が回転した場合でも立体画像を形成することができる。このように、インテグラルイメージング方式は、立体画像と鑑賞位置の関係の制約を改善でき、立体画像の普及に大きく貢献する方法である。しかしながら、インテグラルイメージング方式に用いる微小レンズが並んだマイクロレンズアレイは、その作製方法の特性によって、レンティキュラレンズに比べて均一で面積を大きくするのが困難である。マイクロレンズアレイの作製方法としては、金型を用いて成型する方法と、インクジェット装置などにより樹脂を吐出し、マイクロレンズを形成していく方法がある(特許文献1)。
【特許文献1】特開2003−279893号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図13に金型を用いたマイクロレンズアレイの作製方法を示す。まず、作製したいマイクロレンズの形状を転写した金属の金型1100を作製する。そして、その金型1100に透明樹脂1101を充填し成型する。金型から樹脂を取り出すとマイクロレンズアレイ1102を得ることができる。このように、必要なマイクロレンズアレイに対応するサイズや特性の金型が必要である。この金型を作るためには、マイクロレンズの一つ一つに対応するくぼみを、バイトや放電加工などで、一個ずつ加工して行く必要がある。このように加工工数が多い為、加工に膨大な時間が必要であり、加工中にバイトが磨耗したり、加工機の移動を繰り返して加工したりする為、ばらつきが生じやすい。したがって、均一な特性のマイクロレンズを配置することが難しく、非常に高価な金型となる。
【0009】
また、インクジェット装置でマイクロレンズを形成する方法は、高価な金型は不要であるが、マイクロレンズの1個ずつを、それぞれ液体を吐出しながら形成していくため、マイクロレンズの形状が安定しにくい。そのため、マイクロレンズアレイの特性が不均一になりやすい。このように、マイクロレンズアレイが不均一であると、視線角度によって見えるべき画像の精度が悪化し、精細な立体画像が形成できないという問題がある。
【0010】
一方、レンティキュラレンズも、金型を用いて成型されるが、マイクロレンズアレイとは異なり、バイトを押し当てて、1方向に動かすことで、一つの円筒状レンズに対応する転写形状を作製することができる。加工工数が少なくなる為、マイクロレンズアレイの金型に比べ加工に必要な時間も少なくバラツキが少なくなる。したがって、均一な特性で安価に作製することができる。
【0011】
本発明は、マイクロレンズアレイを用いずに、安価で、大面積、均一な特性が得られるレンティキュラレンズを用いて、視線と立体画像が回転をした場合でも立体画像を得る立体画像表示装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決する為に、本発明の立体画像表示装置は、互いに異なる視点の複数の原画像を合成した合成画像と、前記合成画像上に配置された第1のレンティキュラレンズと、前記第1のレンティキュラレンズ上に配置された第2のレンティキュラレンズとを有し、前記第2のレンティキュラレンズの焦点距離は、前記第1のレンティキュラレンズの焦点距離よりも長く、前記第1のレンティキュラレンズを構成する半円筒状レンズの長手方向と、前記第2のレンティキュラレンズを構成する半円筒状レンズの長手方向とが異なる立体画像表示装置である。
【0013】
このような構成とすることで、均一な特性で安価なレンティキュラレンズを用いることができる。また、立体画像表示装置に対する鑑賞位置が回転した場合においても、立体画像を表示することができる。なお、立体画像表示装置に対する鑑賞位置の回転角度と、2つのレンティキュラレンズを構成する各半円筒状のレンズの長手方向のなす角度とは一致する必要はない。立体画像表示装置に対する任意の回転角度の鑑賞位置に対応して、第1と第2のレンティキュラレンズを通して見える画像が変化する為、適切な合成画像を準備することにより、任意の回転角度で立体画像を鑑賞できるようになる。また、第2のレンティキュラレンズの焦点距離を第1のレンティキュラレンズの焦点距離よりも長くすることにより、第1のレンティキュラレンズと第2のレンティキュラレンズの焦点位置を合わせ、鮮明な立体画像を得ることができるようになる。
【0014】
さらに、前記第1のレンティキュラレンズを構成する半円筒状レンズの長手方向と、前記第2のレンティキュラレンズを構成する半円筒状レンズの長手方向とのなす角度は90度であることが好ましい。このような構成にすることにより、各視線角度によって投影する原画像を、長方形又は正方形にすることができ、異なる視点の原画像の合成が容易となる。
【0015】
さらに、前記第1のレンティキュラレンズを構成する半円筒状レンズのピッチと、前記第2のレンティキュラレンズを構成する半円筒状レンズのピッチとが異なることが好ましい。このように、レンティキュラレンズ構成する半円筒状レンズのピッチを異ならせることにより、焦点距離の異なるレンズによって生じる画角の違いを補正することができる。また、ピッチが同じで、焦点距離の異なるレンティキュラレンズを作製するためには、レンズの曲率を変える必要があるが、焦点距離によっては、レンズ形状の作製が困難になる。ピッチを変えることにより、加工が容易なレンズ形状を選択することが可能となる。これにより、いずれの方向から見ても、鮮明な立体画像を表示する立体画像表示装置を得ることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、均一で安価なレンティキュラレンズを用いて、いずれの方向から見ても、ゆがみの少ない大面積の立体画像を表示する立体画像表示装置を容易に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(実施の形態1)
本実施の形態の構成を図1に示す。100は、異なる視点からの原画像を合成した合成画像であり、101は第1のレンティキュラレンズ、102は第2のレンティキュラレンズである。第1のレンティキュラレンズ101は、合成画像100に焦点が合うように各レンズの曲率を設定し、第2のレンティキュラレンズ102は、第1のレンティキュラレンズ101を通して合成画像100に焦点が合うように、各レンズの曲率を設定した。このように焦点距離を変えることで、レンティキュラレンズを積層しても、鮮明な画像を得ることができる。図1では、各部品は個別に記載されているが、実際には、合成画像と積層したレンティキュラレンズとは密着している。なお、各層の間に透明な樹脂や接着剤を充填しても、その材料の屈折率に合わせて、レンティキュラレンズの焦点距離を設計すれば、同様の効果が得られる。
【0018】
次に、異なる視点の画像を合成する方法について説明する。図2は、レンズにおける焦点距離と入射角度と結像位置の関係を示したものである。θは入射角度であり、この視線角度から見た場合、結像位置Aの画像が見えるようになる。この結像位置は焦点距離fと入射角度θによって決まり、中央から、f×tanθ離れた位置となる。焦点距離が異なると同じ視線角度から見ても、見える画像が異なる。すなわち、本発明の構成では、第1のレンティキュラレンズと第2のレンティキュラレンズの焦点距離が異なるため、異なる視点の画像を合成する際にレンティキュラレンズの焦点距離に合わせて、合成する必要がある。
【0019】
図3、図4に立体とその立体を観察する異なる視点の位置関係を示す。300は、鑑賞対象の立体であり、301は、その立体を観察する視点が配置されている平面である。ここで説明は、簡単のために平面で示したが、曲面上に観察する視点を配置してもよい。図4は、301上の観察する視点の配置をX軸の正方向から原点を見る向きを示したものである。P(1、1)〜P(m、n)は立体を観察する視点の位置を示しており、m×n個の異なる視点から立体300を観察する。d1は、図のY軸方向の視点の間隔、d2は図のZ軸方向の視点の間隔である。立体300と観察する視点が配置されている平面301の距離Lとが十分に離れているとする。Y軸方向に視点が一つ移動すると、視点角度はd1/L、Z軸方向に視点が一つ移動すると、視点角度はd2/L変化する。このとき、第1のレンティキュラレンズは、焦点距離がf1で、Z軸方向に平行に並べられているとすると、結像位置は、f1×tan(d1/L)移動する。第2のレンティキュラレンズは、焦点距離がf2で、Y軸方向に平行に並べられているとすると、結像位置は、f2×tan(d2/L)移動する。各視点の位置から立体を観察した画像は、実際にカメラなどを配置して、撮影することができる。また、立体の数値モデル構築し、各視点から見た原画像を計算によって求めることも可能である。このようにして作製した各視点位置から立体を観察した原画像をレンティキュラレンズのピッチと視点数に合わせて分割し、結像位置に配置するように、合成を行う。第1のレンティキュラレンズは、ピッチ1/αインチで、Y軸方向に並べられており、第2のレンティキュラレンズは、ピッチ1/βインチで、Z軸方向に並べたものとすると、1/αインチ×1/βインチの中に、m×n視点分の画像の一部を合成したものを並べることになる。図5は、1/αインチ×1/βインチの合成画像の一部である。図中のQ(1、1)〜Q(m、n)は、視点P(1、1)〜P(m、n)から観察した画像の一部である。レンズを通して結像するため、各視点の配置と上下左右を逆に配置し、各画像も上下左右を逆に配置する必要がある。
【0020】
以下に具体的に行った実施例を示す。
【実施例】
【0021】
(実施例1)
本実施例は、第1のレンティキュラレンズとして、円筒状レンズがZ軸と平行に配置されたピッチが1/20インチ、焦点距離2mmのアクリル製のレンティキュラレンズを用いた。また、第2のレンティキュラレンズとしては、円筒状レンズがY軸と平行にピッチが1/20インチで焦点距離が、4mmのアクリル製のレンティキュラレンズを用いた。このとき、第2のレンティキュラレンズの厚さを調整し、第1のレンティキュラレンズと焦点位置が一致するようにした。CCDカメラを30mm間隔で縦(Z軸方向)8個、横(Y軸方向)16個並べることにより、8視点×16視点の位置から観察した画像を取り込み、合成した。図6に合成した画像の一部を示す。図は、縦と横のレンティキュラレンズの一つ分に対応し、それぞれの四角が、一つの視点から切り出した画像の一部である。カメラの間隔と等間隔で撮影したが、第1のレンティキュラレンズと第2のレンティキュラレンズの焦点距離が異なるので、画像の配置を変化させた。この2次元画像をインクジェットプリンターで印刷した。その上に、第1レンティキュラレンズと第2のレンティキュラレンズが直角になるように配置し、立体画像表示装置の作製を行った。
【0022】
このようにして、作製した立体画像表示装置は、鑑賞位置が立体画像表示装置に対して任意の角度で回転した場合においても、常に立体画像として鑑賞することができた。
【0023】
なお、本実施例では、64個のCCDカメラを用いて、各視点からみた画像を作成し、8視点×16視点の画像として用いたが、この方法に限る必要は無く、各画像の間を補完して合成したり、縦と横のカメラの数を変えて合成したりしても同様の効果が得られる。また、レンティキュラレンズとしてはアクリル樹脂を用いたが、この限りではなく、透明な材質であれば、用いることができる。
【0024】
(実施例2)
本実施例は、第1のレンティキュラレンズとしてY軸と平行に円筒状レンズを配置し、ピッチが1/20インチで、焦点距離が2mmのアクリル製のレンティキュラレンズを用いた。また、第2のレンティキュラレンズとしては、Z軸と平行に円筒状レンズが配置され、ピッチが1/10インチ、焦点距離が4mmのアクリル製のレンティキュラレンズを用いた。コンピューター上で3次元モデルを作製し、視点変換することで、縦(Z軸方向)10視点(24mmピッチ)×横(Y軸方向)20視点(12mmピッチ)の原画像を作り出した。それを分割して並べて、合成画像を作成した。図7に合成した画像の一部を示す。図は、縦と横のレンティキュラレンズの一つ分に対応し、それぞれの四角が、一つの視点から切り出した画像の一部である。縦と横の視点の移動量を変化させ、一つの視点から切り出す画像の形が正方形になるようにした。横方向の画像を取り出す第2のレンティキュラレンズの焦点距離が、第1のレンティキュラレンズの焦点距離に比べて2倍であるので、立体画像を鑑賞できる角度間隔は縦と横とで同じとなる。作成した合成画像をインクジェットプリンターにより印刷し、その上に、第1レンティキュラレンズと第2のレンティキュラレンズとが直角になるように配置し、立体画像表示装置の作製を行った。
【0025】
本実施例で示したように、第1と第2のレンティキュラシートを構成する半円筒状レンズのピッチを変えることで、立体画像を鑑賞できる角度間隔を縦と横とで同じにすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明の立体画像表示装置は、広告や娯楽、医療、遠隔操作など、立体画像を利用して、人に情報を提供する表示装置として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の立体画像表示装置の構成図
【図2】レンズの焦点距離と結像位置の説明図
【図3】立体とその立体を観察する異なる視点との位置関係の説明図
【図4】立体とその立体を観察する異なる視点との位置関係の説明図
【図5】合成画像を説明する説明図
【図6】実施例1の合成画像を説明する説明図
【図7】実施例2の合成画像を説明する説明図
【図8】立体視差の説明図
【図9】本発明の立体画像表示装置と鑑賞位置との関係を説明する説明図
【図10】パララックスバリア方式の説明図
【図11】レンティキュラ方式の説明図
【図12】マイクロレンズアレイの説明図
【図13】マイクロレンズアレイの作製方法を説明する説明図
【符号の説明】
【0028】
100 異なる視点の原画像を合成した合成画像
101 第1のレンティキュラレンズ
102 第2のレンティキュラレンズ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに異なる視点の複数の原画像を合成した合成画像と、
前記合成画像上に配置された第1のレンティキュラレンズと、
前記第1のレンティキュラレンズ上に配置された第2のレンティキュラレンズと、
を有し、
前記第2のレンティキュラレンズの焦点距離は、前記第1のレンティキュラレンズの焦点距離よりも長く、
前記第1のレンティキュラレンズを構成する半円筒状レンズの長手方向と、前記第2のレンティキュラレンズを構成する半円筒状レンズの長手方向とが異なる立体画像表示装置。
【請求項2】
前記第1のレンティキュラレンズを構成する半円筒状レンズの長手方向と、前記第2のレンティキュラレンズを構成する半円筒状レンズの長手方向とのなす角度が90度である請求項1に記載の立体画像表示装置。
【請求項3】
前記第1のレンティキュラレンズを構成する半円筒状レンズのピッチと、前記第2のレンティキュラレンズを構成する半円筒状レンズのピッチとが異なる請求項1に記載の立体画像表示装置。
【請求項1】
互いに異なる視点の複数の原画像を合成した合成画像と、
前記合成画像上に配置された第1のレンティキュラレンズと、
前記第1のレンティキュラレンズ上に配置された第2のレンティキュラレンズと、
を有し、
前記第2のレンティキュラレンズの焦点距離は、前記第1のレンティキュラレンズの焦点距離よりも長く、
前記第1のレンティキュラレンズを構成する半円筒状レンズの長手方向と、前記第2のレンティキュラレンズを構成する半円筒状レンズの長手方向とが異なる立体画像表示装置。
【請求項2】
前記第1のレンティキュラレンズを構成する半円筒状レンズの長手方向と、前記第2のレンティキュラレンズを構成する半円筒状レンズの長手方向とのなす角度が90度である請求項1に記載の立体画像表示装置。
【請求項3】
前記第1のレンティキュラレンズを構成する半円筒状レンズのピッチと、前記第2のレンティキュラレンズを構成する半円筒状レンズのピッチとが異なる請求項1に記載の立体画像表示装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2008−15395(P2008−15395A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−188874(P2006−188874)
【出願日】平成18年7月10日(2006.7.10)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年7月10日(2006.7.10)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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