説明

立体視可能な印刷物

【課題】 本発明は、両眼視差を用いた立体視が可能な印刷物に関するもので、極めて単純で安価に形成可能であって、特別な道具や複雑な装置を用いることなく裸眼立体視が可能な印刷物に関する。
【解決手段】 光輝性材料を含むインキによる盛り上がりを有する画線を用い、画線面積率の差異で第1の画像を、画線角度の差異で第2の画像を形成する。第1の画像と第2の画像は同一図柄で構成され、対を成す図柄同士は所定距離ずらして形成する。光源、印刷物及び観察者の位置関係によって、右目(左目)は拡散反射光が支配的な観察角度領域にあり、左目(右目)は正反射が支配的な観察角度領域に入る場合、右目(左目)には第1の画像が、左目(右目)には第2の画像がそれぞれ絶縁表示されることとなり、両眼視差に基づく立体視が成立する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両眼視差を用いた立体視が可能な印刷物に関するもので、極めて単純で安価に形成可能であって、特別な道具や複雑な装置を用いることなく裸眼立体視が可能な印刷物に関する。
【背景技術】
【0002】
文字や図形等の図象が、立体的に浮き上がって見える立体画像は、通常の平面的な画像に比べて、よりリアルな表現が可能であり、アナグリフや偏光方式の立体映像は、映画館や博覧会、アミューズメントパーク等で利用されるに至っている。また、用紙やカードに立体画像を形成した印刷物の例としては、レンチキュラーやホログラム等を貼付したものが公知である。これらは、外観意匠性の高い印刷物であるだけでなく、複製が困難であることから、偽造防止効果にも優れる。
【0003】
両眼視差を用いた立体視とは、人間の両目が右目と左目で左右に約60mmから70mm離れていることで、実際の三次元空間において立体物や観察者までの距離の異なる対象を観察した場合に生じている、左右の目における観察画像の違いを利用して、観察者の脳内でだけ成立する擬似的な立体画像を生成するものであり、平面上に形成されている画像であっても、右目と左目でわずかに異なった画像を絶縁して見せることで観察者の脳内で奥行き感を生じさせる。そして、観察者が認識する画像は、本来、平面の画像の中に存在しない立体画像となる。仮に、右目で見る画像を画像1、左目で見る画像を画像2とすると、印刷物の中には、画像1と画像2しか存在していないにも関わらず、立体視を行う観察者には、三番目の画像ともいうべき立体画像が認識される。
【0004】
公知の代表的な立体視可能な印刷物は、古典的な技術としてステレオグラムやアナグリフに始まり、偏光方式を用いて形成されるもの、パララックスバリアやレンチキュラーレンズを重ね合わせるもの、比較的新しい技術としては、ホログラムを用いて形成されるもの等が存在する。上記の技術のうち、裸眼立体視可能な印刷物は、特別な眼鏡を必要とするアナグリフ方式と偏光方式を除いたものであり、すなわち、ステレオグラム、パララックスバリア形成体、レンチキュラー形成体又はホログラム等である。
【0005】
ただし、公知の裸眼立体視可能な印刷物は、いずれもそれぞれに問題点を抱えている。ステレオグラムは、安価に形成可能であるものの、二つの画像を別々に並べて形成するため、画像としての見栄えが悪く、結像を認識するのに多少の訓練を必要とする。パララックスバリアやレンチキュラー系の技術は、裸眼立体視を容易に実現することができるものの、バリア効果やレンズ効果を機能させるには、特定の透明基材が必要となるだけでなく、印刷物自体に一定の厚みが必要であり、製造工程が複雑になるという問題がある。ホログラムについては、自然な裸眼立体視を実現することができるものの、工程や加工方法が極めて複雑であって、高価であるという問題がある。いずれにしても、現状では、安価で容易に大量生産可能であり、かつ、印刷物として流通可能な裸眼立体視可能な印刷物は存在せず、その提案が待望されていた。
【0006】
そこで、このような現状をかんがみて、本願出願人は、従来、偽造防止技術として用いられてきた特殊な画線構成と材料の組み合わせで形成される偽造防止用印刷技術を、立体視に特化させて改良して形成した、オフセット印刷方式によって容易で安価に形成可能であって、観察者は、訓練の必要なく裸眼立体視可能な立体画像形成体を提案している(特許文献1および特許文献2参照)。
【0007】
これらは、立体画像形成体に光が入射した場合に、拡散反射光が支配的な観察角度と正反射光が支配的な観察角度が生じ、それぞれの観察角度では、観察することができる色彩が大きく変化する現象を利用したもので、特定の角度で観察した場合に左右の目においてそれぞれ別の画像が絶縁表示され、両眼視差を利用した立体視が可能となる。
【0008】
この立体画像形成体は、商業印刷の分野で一般的に用いられている印刷材料と印刷機を用いることで、通常の印刷物とほとんど変わらない難易度で、かつ、安価に大量生産することが可能であり、基材となる用紙を除く厚さは、1〜2μm以内に収まり、一般に流通している印刷物と何ら厚さも違わないにもかかわらず、適切な観察角度で観察することによって、容易に裸眼立体視を成立させることが可能であり、これまでの裸眼立体視可能な印刷物が抱えていた問題点の多くを解決した印刷物であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−39921
【特許文献2】特願2008−32943
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、従来技術の立体画像形成体は、それまでの課題の多くを解決した裸眼立体視可能な印刷物であったが、立体視を成立させるために正反射光が支配的な観察角度において観察者に視認させる画像の形成には、透明な色材を用いる必要があり、この透明な色材は、不透明な色材や着色された色材に比べて脱刷管理や正確な濃度管理等が難しく、品質管理上の問題が生じていた。
【0011】
また、従来技術の立体画像形成体は、立体視を成立させるために形成する右目用画像と左目用画像は、別々の印刷層に異なる反射特性を有する別々の色材によって形成する必要があり、少なくとも二種類、多い場合には、三種類以上の色材を使用しなければならないという問題があった。汎用的な商業用印刷ユニットは、四つの印刷胴で構成される場合が多く、そのような印刷機械を用いて前述の立体画像を形成する場合、立体画像形成のために必要となる印刷胴を除くと、使用可能な印刷胴は、一つか二つしか残らない。一つの商品としてのパッケージを考えると、立体画像のみで印刷物を形成して完成する例はほとんどなく、多くの場合、その他の背景画像や地紋にあたるデコレーション部や説明文等を必要とする。以上のように、立体画像の形成に複数の色材を必要とすることは、商品デザイン上の制約が生じる場合があり、ワンパスで商品を仕上げることが不可能となる懸念があった。
【0012】
本発明は、前述の立体画像形成体が抱えていた課題を解決するものであり、透明な色材を使用することなく、かつ、一つの色材だけで、前述の立体画像形成体とほぼ同様な原理で裸眼立体視を実現することができる印刷物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明における立体視可能な印刷物は、基材上の少なくとも一部に印刷領域を有し、印刷領域に、二つの画像を備えて成る立体視可能な印刷物において、画像は、複数の画像要素が隣接されて成り、複数の画像要素は、それぞれ異なる画線群から構成されており、画線群は、基材と異なる色の光輝性材料を含むインキによって、盛り上がりのある形状で、特定の面積率の画線を特定の角度に複数配列して成り、複数の画像要素は、第1の角度を有した画線を第1の面積率で複数配列した第1の画線群から成る第1の画像要素と、第1の角度を有した画線を第1の面積率と異なる第2の面積率で複数配列した第2の画線群から成る第2の画像要素と、第1の角度とは異なる第2の角度を有した画線を第2の面積率で複数配列した第3の画線群から成る第3の画像要素と、第2の角度を有した画線を第1の面積率で複数配列した第4の画線群から成る第4の画像要素とを備え、少なくとも二つの画像は、少なくとも第1の画像及び第2の画像から成り、第1の画像は、画像部と背景部から成り、第2の画像は、画像部と背景部から成り、第1の画像の画像部は、第2の画像要素と第3の画像要素から成り、第1の画像の背景部は、第1の画像要素と第4の画像要素から成り、第2の画像の画像部は、第3の画像要素と第4の画像要素から成り、第2の画像の背景部は、第1の画像要素と第2の画像要素から成り、第1の画像要素は、第1の画像及び第2の画像の共有の背景部と成り、第3の画像要素は、第1の画像及び第2の画像の共有の画像部と成り、第1の画像におけると第2の画像における画像部は、少なくとも一つの対を成す同一の図柄を備え、第1の画像中と第2の画像内に備えられた一つの対を成す図柄同士は、各々の画像部の中心を左右方向に所定距離ずらして形成され、観察者の一方の目を正反射光が支配的な観察角度領域に置き、他方の目を拡散反射光が支配的な観察角度領域に置いて観察した場合、第1の画像と第2の画像が絶縁表示され、両眼視差により立体画像を視認することができることを特徴とする。
【0014】
本発明における立体視可能な印刷物は、第1の画像中の図柄と対を成す第2の画像中の図柄の中心と、該第2の画像中の図柄と対を成す第1の画像中の図柄の中心とをずらして形成する所定距離は、1mm以上65mm以下であることを特徴とする。
【0015】
本発明における立体視可能な印刷物は、基材上の少なくとも一部に印刷領域を有し、印刷領域に二つの画像を備えて成る立体視可能な印刷物において、前述の画像は、複数の画像要素が隣接されて成り、複数の画像要素は、それぞれ異なる画線群から構成されており、画線群は、基材と異なる色の光輝性材料を含むインキによって、盛り上がりのある形状で、特定の面積率の画線を特定の角度に複数配列して成り、複数の画像要素は、第1の角度を有した画線を第1の面積率で複数配列した第1の画線群から成る第1の画像要素と、第1の角度を有した画線を第1の面積率と異なる第2の面積率で複数配列した第2の画線群から成る第2の画像要素と、第1の角度とは異なる第2の角度を有した画線を第2の面積率で複数配列した第3の画線群から成る第3の画像要素と、第2の角度を有した画線を第1の面積率で複数配列した第4の画線群から成る第4の画像要素とを備え、少なくとも二つの画像は、少なくとも第1の画像及び第2の画像から成り、第1の画像は、画像部と背景部から成り、第2の画像は、画像部と背景部から成り、第1の画像の画像部は、第2の画像要素と第3の画像要素から成り、第1の画像の背景部は、第1の画像要素と第4の画像要素から成り、第2の画像の画像部は、第3の画像要素と第4の画像要素から成り、第2の画像の背景部は、第1の画像要素と第2の画像要素から成り、第1の画像要素は、第1の画像及び第2の画像の共有の背景部と成り、第3の画像要素は、第1の画像及び第2の画像の共有の画像部と成り、第1の画像における画像部と第2の画像における画像部は、少なくとも一つの対を成す略同一の図柄を備え、第1の画像中と第2の画像内に備えられた一つの対を成す図柄同士は、各々の画像部の中心を合わせて形成されるか又は各々の画像部の中心を左右方向に所定距離ずらして形成され、観察者の一方の目を正反射光が支配的な観察角度領域に置き、他方の目を拡散反射光が支配的な観察角度領域に置いて観察した場合、第1の画像と第2の画像が絶縁表示され、両眼視差により立体画像を視認することができることを特徴とする。
【0016】
本発明における立体視可能な印刷物は、第1の画像中の図柄と対を成す第2の画像中の図柄の中心と、第2の画像中の図柄と対を成す第1の画像中の図柄の中心とを合わせて形成するか、又はずらして形成する場合の所定距離は、1mm以上65mm以下であることを特徴とする。
【0017】
本発明における立体視可能な印刷物は、複数の画像要素において、第1の画像及び第2の画像の階調の数をnとした場合、画像要素の数は、nで形成されることを特徴とする。
【0018】
本発明の立体視可能な印刷物における特定の面積率は、100%を除く30%以上であることを特徴とする。
【0019】
本発明の立体視可能な印刷物における特定の面積率は、画線群を構成する画線における画線幅の太細若しくは画線の粗密のいずれか又はその両方によって形成されることを特徴とする。
【0020】
本発明における立体視可能な印刷物は、第1の画像の画像部における面積率と第1の画像部の背景部における面積率の差が、5%以上30%以下であることを特徴とする。
【0021】
本発明の立体視可能な印刷物における第1の角度と第2の角度の差は、15度以上90度以下であることを特徴とする。
【0022】
本発明の立体視可能な印刷物における画線群を構成する画線におけるピッチは、10μm以上1mm以下であることを特徴とする。
【0023】
本発明の立体視可能な印刷物における光輝性材料を含むインキによる画線の盛り上がりの高さは、2μm以上10μm以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明の立体視可能な印刷物は、従来の立体画像形成体のように透明な色材を使用することなく、基材の制約を受けないで裸眼立体視可能な印刷物を形成することができる。
【0025】
本発明の立体視可能な印刷物は、従来の立体画像形成体のように少なくとも二種類以上の色材を使用することなく、単一の色材を使用するだけで裸眼立体視可能な印刷物を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施の形態に係る本発明の立体視可能な印刷物の図である。
【図2】本発明の実施に形態に係る印刷領域を構成する四種類の画像要素の図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る第1の画像の図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る第2の画像の図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る第1の画像と第2の画像に含まれる星画像の位置関係を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る立体視可能な印刷物に光が入射した場合に生じる各観察角度領域を示す図である。
【図7】(a)は、本発明の実施の形態に係る観察角度領域Eの図である。(b)は、観察角度領域Eにおいて視認される第1の画像の図である。
【図8】(a)は、本発明の実施の形態に係る観察角度領域Fの図である。(b)は、観察角度領域Fにおいて視認される第2の画像の図である。
【図9】本発明の実施の形態に係る画線幅の異なる画線に対して光を入射して、受光角度を変化させながらL*、a*、b*を取得している図である。
【図10】本発明の実施の形態に係る画線幅の異なる画線に対して光を入射して、受光角度を変化させながら取得したL*、a*、b*を示すグラフである。
【図11】本発明の実施の形態に係る画線幅の異なる画線の、受光角度別のお互いの色差ΔEを示すグラフである。
【図12】本発明の実施の形態に係る画線角度の異なる画線に対して光を入射して、受光角度を変化させながらL*、a*、b*を取得している図である。
【図13】本発明の実施の形態に係る画線角度の異なる画線に対して光を入射して、受光角度を変化させながら取得したL*、a*、b*を示すグラフである。
【図14】本発明の実施の形態に係る画線角度の異なる画線の、受光角度別のお互いの色差ΔEを示すグラフである。
【図15】本発明の実施の形態に係る本発明の立体視可能な印刷物の印刷領域が有している四種類の画像要素の図である。
【図16】本発明の実施の形態に係る画線幅及び画線角度の異なる4つの画線の、1つの画線を基準にした場合の受光角度別の色差ΔEを示すグラフである。
【図17】本発明の実施の形態に係る立体視が成立する二つの観察角度の図である。
【図18】本発明の実施の形態に係る星画像が遠くあるように認識される原理の図である。
【図19】本発明の実施の形態に係る星画像が近くにあるように認識される原理の図である。
【図20】本発明の実施の形態に係る印刷画像を立体視した場合の各星画像の遠近感を示す図である。
【図21】本発明の実施例1に係る本発明の立体視可能な印刷物の図である。
【図22】本発明の実施例1に係る印刷領域を構成する四種類の画像要素の図である。
【図23】(a)は、本発明の実施例1に係る第1の画像の図であり、(b)は、本発明の実施例1に係る第2の画像の図である。
【図24】本発明の実施例1に係る第1の画像と第2の画像に含まれる星画像の位置関係の図である。
【図25】本発明の実施例1に係る印刷物を観察した場合の各星画像の遠近感を示す図である。
【図26】本発明の実施例2に係る本発明の立体視可能な印刷物の図である。
【図27】本発明の実施例2に係る印刷領域を構成する四種類の画像要素の図である。
【図28】(a)は、本発明の実施例2に係る第1の画像の図であり、(b)は、本発明の実施例2に係る第2の画像の図である。
【図29】本発明の実施例2に係る第1の画像と第2の画像の立方体の位置関係を示す図である。
【図30】(a)は、本発明の実施例2に係る印刷物を15a視点で観察した場合の二つのXY平面の遠近感の図である。(b)は、本発明の実施例2に係る印刷物を15b視点で観察した場合の二つのXY平面の遠近感を示す図である。
【図31】(a)は、本発明の実施例2に係る印刷物を15a視点で観察した場合の立方体の図である。(b)は、本発明の実施例2に係る印刷物を15b視点で観察した場合の立方体の図である。
【図32】本発明の実施例3に係る本発明の立体視可能な印刷物の図である。
【図33】本発明の実施例3に係る印刷領域を構成する九種類の画像要素の図である。
【図34】(a)は、本発明の実施例3に係る第1の画像の図であり、(b)は、本発明の実施例3に係る第2の画像の図である。
【図35】本発明の実施例3に係る第1の画像と第2の画像の基画像の撮影状況を示す図である。
【図36】本発明の実施例3に係る第1の画像と第2の画像の鳳凰の像の位置関係を示す図である。
【図37】本発明の実施例3に係る印刷物を15b視点で観察した場合に認識される立体画像の図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照して説明する。しかしながら、本発明は、以下に述べる実施するための形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲記載における技術的思想の範囲内であれば、その他のいろいろな実施の形態が含まれる。
【0028】
次に、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る本発明の立体視可能な印刷物の図である。図2は、本発明の実施に形態に係る印刷領域を構成する四種類の画像要素の図である。図3は、本発明の実施の形態に係る第1の画像の図である。図4は、本発明の実施の形態に係る第2の画像の図である。図5は、本発明の実施の形態に係る第1の画像と第2の画像に含まれる星画像の位置関係を示す図である。図6は、本発明の実施の形態に係る立体視可能な印刷物に光が入射した場合に生じる各観察角度領域を示す図である。図7(a)は、本発明の実施の形態に係る観察角度領域Eの図であり、(b)は、観察角度領域Eにおいて視認される第1の画像の図である。図8(a)は、本発明の実施の形態に係る観察角度領域Fの図であり、(b)は、観察角度領域Fにおいて視認される第2の画像の図である。図9は、本発明の実施の形態に係る画線幅の異なる画線に対して光を入射して、受光角度を変化させながらL*、a*、b*を取得している図である。図10は、本発明の実施の形態に係る画線幅の異なる画線に対して光を入射して、受光角度を変化させながら取得したL*、a*、b*を示すグラフである。図11は、本発明の実施の形態に係る画線幅の異なる画線の、受光角度別のお互いの色差ΔEを示すグラフである。図12は、本発明の実施の形態に係る画線角度の異なる画線に対して光を入射して、受光角度を変化させながらL*、a*、b*を取得している図である。図13は、本発明の実施の形態に係る画線角度の異なる画線に対して光を入射して、受光角度を変化させながら取得したL*、a*、b*を示すグラフである。図14は、本発明の実施の形態に係る画線角度の異なる画線の、受光角度別のお互いの色差ΔEを示すグラフである。図15は、本発明の実施の形態に係る本発明の立体視可能な印刷物の印刷領域が有している四種類の画像要素の図である。図16は、本発明の実施の形態に係る画線幅及び画線角度の異なる4つの画線の、1つの画線を基準にした場合の受光角度別の色差ΔEを示すグラフである。図17は、本発明の実施の形態に係る立体視が成立する二つの観察角度の図である。図18は、本発明の実施の形態に係る星画像が遠くあるように認識される原理の図である。図19は、本発明の実施の形態に係る星画像が近くにあるように認識される原理の図である。図20は、本発明の実施の形態に係る印刷画像を立体視した場合の各星画像の遠近感を示す図である。図21は、本発明の実施例1に係る本発明の立体視可能な印刷物の図である。図22は、本発明の実施例1に係る印刷領域を構成する四種類の画像要素の図である。図23(a)は、本発明の実施例1に係る第1の画像の図であり、(b)は、本発明の実施例1に係る第2の画像の図である。図24は、本発明の実施例1に係る第1の画像と第2の画像に含まれる星画像の位置関係の図である。図25は、本発明の実施例1に係る印刷物を観察した場合の各星画像の遠近感を示す図である。図26は、本発明の実施例2に係る本発明の立体視可能な印刷物の図である。図27は、本発明の実施例2に係る印刷領域を構成する四種類の画像要素の図である。図28(a)は、本発明の実施例2に係る第1の画像の図であり、(b)は、本発明の実施例2に係る第2の画像の図である。図29は、本発明の実施例2に係る第1の画像と第2の画像の立方体の位置関係を示す図である。図30(a)は、本発明の実施例2に係る印刷物を15a視点で観察した場合の二つのXY平面の遠近感を示す図であり、(b)は、本発明の実施例2に係る印刷物を15b視点で観察した場合の二つのXY平面の遠近感を示す図である。図31(a)は、本発明の実施例2に係る印刷物を15a視点で観察した場合の立方体の図であり、(b)は、本発明の実施例2に係る印刷物を15b視点で観察した場合の立方体の図である。図32は、本発明の実施例3に係る本発明の立体視可能な印刷物の図である。図33は、本発明の実施例3に係る印刷領域を構成する九種類の画像要素の図である。図34(a)は、本発明の実施例3に係る第1の画像の図であり、(b)は、本発明の実施例3に係る第2の画像の図である。図35は、本発明の実施例3に係る第1の画像と第2の画像の基画像の撮影状況を示す図である。図36は、本発明の実施例3に係る第1の画像と第2の画像の鳳凰の像の位置関係を示す図である。図37は、本発明の実施例3に係る印刷物を15b視点で観察した場合に認識される立体画像の図である。
【0029】
図1に示す立体視可能な印刷物(1)は、基材(2)上の少なくとも一部に印刷領域(3)を有しており、印刷領域(3)は、複数の画像要素を隣接することで形成されている。画像要素同士は、それぞれ異なる画線群から構成されており、各画線群は、光輝性材料を含むインキによって、盛り上がりのある形状で、特定の面積率の画線を特定の角度に複数配列して成る。
【0030】
ここで言う「画線」とは、点線や破線の分断線、直線、曲線及び波線のことであり、如何なる画線形状で構成しても本発明の技術思想に含まれる。「特定の面積率」とは、印刷領域の一定面積中に占める画線群の割合のことであり、面積率の差異は、画線の太細による画線幅の差異のみで形成しても良く、画線の粗密、いわゆる画線密度の差異をもって形成しても良く、この両方を用いて形成しても良い。
【0031】
印刷領域(3)に形成される複数の画像要素において、第1の画像及び第2の画像の階調の数をnとした場合、画像要素の数は、n種類で形成される。つまり、白黒の二階調で画像を形成する場合、画像要素の数は、2の2乗である四種類となり、三階調で画像を形成する場合、画像要素の数は、3の2乗である九種類となる。これは、四階調以上でも同じことがいえる。
【0032】
また、画像を二階調で形成する場合、画像要素の数が四種類となる説明は、前述したところであるが、面積率の種類及び画線角度の種類は、階調の数と同じ数で構成され、四種類の画像要素の場合、階調の数と同じ二種類の面積率と二種類の画線角度の組み合わせによって、異なる四種類の構成要素が形成される。つまり、二種類の面積率として、面積率Aと面積率Bがあり、二種類の画線角度として、画線角度Aと画線角度Bがあり、四種類の構成要素としては、一つが面積率Aと画線角度Aの組み合わせ、一つが面積率Aと画線角度Bの組み合わせ、一つが面積率Bと画線角度Aの組み合わせ、一つが面積率Bと画線角度Bの組み合わせとなる。さらに、画像を三階調で形成する場合、三種類の面積率と三種類の画線角度の組み合わせによって、異なる九種類の構成要素が形成される。これは、四階調以上でも同じことがいえる。
【0033】
本発明を実施するための形態においては、画像は二階調、画像要素は四種類、各画像要素が異なる画線群から成り、各画線群が複数の画線を平行に配列して構成される場合を例に挙げて説明する。
【0034】
図2に示すように、印刷領域(3)は、第1の画像要素(4)、第2の画像要素(5)、第3の画像要素(6)及び第4の画像要素(7)の四種類の画像要素によって形成されて成る。四種類の画像要素を構成している各々四種類の画線群は、面積率又は画線角度が異なる画線の集合によって構成されている。すなわち、第1の画像要素(4)は、第1の角度(水平方向(0度))を有した画線を第1の面積率で複数平行に配列して成る画線群で構成され、第2の画像要素(5)は、第1の角度(水平方向(0度))を有した画線を第1の面積率よりも大きい第2の面積率で複数平行に配列して成る画線群で構成され、第3の画像要素(6)は、第1の角度(水平方向(0度))とは異なる第2の角度(垂直方向(90度))を有した画線を第2の面積率で複数平行に配列して成る画線群で構成され、第4の画像要素は、第2の角度(垂直方向(90度))を有した画線を第1の面積率で複数の平行に配列して成る画線群で構成されている。いずれの画線群も、画線群を構成している画線の画線ピッチは、すべて同じとする。また、四種類の画像要素(4、5、6、7)も互いに隣接しているが、重なり合うことなく印刷領域(3)内に収まっている。なお、図2中の四種類の画像要素(4、5、6、7)は、いずれも四角形の枠を備えているように図示しているが、四角形の枠については、それぞれの画像要素の印刷領域(3)内での位置関係を示すために印刷領域(3)の外枠を図示したもので、各画像要素中に実際に存在するものではない。
【0035】
ここで、四種類の画像要素(4、5、6、7)と第1の画像(8)及び第2の画像(9)の関係について図3及び図4を用いて説明する。関係を明確にするため、四種類の画像要素(4、5、6、7)のそれぞれを濃淡で塗り分けたと仮定して説明するが、実際の印刷物においては、濃淡による塗り分けは行なわない。
【0036】
印刷領域(3)を形成する四種類の画像要素(4、5、6、7)において、例えば、面積率に応じて濃淡を塗り分けた場合、すなわち、第1の面積率で構成されている画像要素を淡く塗り、第2の面積率で構成された画像要素を濃く塗った場合、図3に示すように第1の画像要素(4)と第4の画像要素(7)は淡くなり背景部が形成され、第2の画像要素(5)と第3の画像要素(6)は濃くなり、三つの図柄(10a、11a、12a)から成る画像部が形成され、背景部と画像部とで第1の画像(8)と成る。なお、本発明を実施するための形態においては、三つの星の図柄によって画像部が形成される例で説明をするが、画像部は、少なくとも一つの図柄によって形成しても良い。面積率の差異によって形成された第1の画像(8)が、特定の観察条件によって視認することができる原理については、後述する色差ΔEに基づいて説明する。
【0037】
また、印刷領域(3)を形成する四種類の画像要素(4、5、6、7)において、例えば、画線角度に応じて濃淡を塗り分けた場合、すなわち、第1の角度(水平方向(0度))で構成されている画像要素を淡く塗り、第2の角度(垂直方向(90度))で構成された画像要素を濃く塗った場合、図4に示すように第1の画像要素(4)と第2の画像要素(5)は淡くなり背景部が形成され、第3の画像要素(6)と第4の画像要素(7)は濃くなり、三つの図柄(10b、11b、12b)から成る画像部が形成され、背景部と画像部とで第2の画像(9)と成る。なお、本発明を実施するための形態においては、三つの星の図柄によって画像部が形成される例で説明をするが、画像部は、少なくとも一つの図柄によって形成しても良い。画線角度の違いによって形成された第2の画像(9)が特定の観察条件によって視認することができる原理については、後述する色差ΔEに基づいて説明する。
【0038】
このように、第1の画像(8)の画像部及び背景部と、第2の画像(9)の画像部及び背景部は、四種類の画像要素(4、5、6、7)の組み合わせによって形成されるが、第1の画像要素(4)は、第1の画像(8)と第2の画像(9)の共有の背景部と成り、第3の画像要素(6)は、第1の画像(8)と第2の画像(9)の共有の画像部と成る。
【0039】
図5は、第1の画像(8)中の三つの図柄(10a、11a、12a)と第2の画像(9)中の三つの図柄(10b、11b、12b)の位置を示したものである。第1の画像(8)中の図柄(10a)と第2の画像(9)中の図柄(10b)、第1の画像(8)中の図柄(11a)と第2の画像(9)中の図柄(11b)及び第1の画像(8)中の図柄(12a)と第2の画像(9)中の図柄(12b)は、それぞれ対を成している。第1の画像(8)中の図柄(10a)と第2の画像(9)中の図柄(10b)の位置と大きさは同じであるが、第1の画像(8)の図柄(11a、12a)と第2の画像(9)中の図柄(11b、12b)の位置は、それぞれ左右方向にわずかに異なっている。ここで言う左右方向とは、立体視可能な印刷物(1)を観察する観察者の左目と右目を結んだラインと平行なライン上のことである。言い換えるならば、第1の画像(8)の図柄(11a、12a)と第2の画像(9)中の図柄(11b、12b)の位置を、それぞれ基材(2)の下辺に対して左右方向にわずかに異ならせた場合、観察者は、基材(2)の下辺と自分の両目を結んだラインを平行にして観察することとなる。
【0040】
図柄の大きさについては、図柄(11a)と図柄(11b)は同じであり、図柄(12a)と図柄(12b)も同じであるが、図柄(11a)を基準にすると図柄(11b)は、左方向に位相を変えて形成されており、図柄(12a)を基準にすると図柄(12b)は、右方向に位相を変えて形成されている。
【0041】
このように、基材(2)上の少なくとも一部に印刷領域(3)を有しており、印刷領域(3)は、大きさが同一で左右方向の位相が異なっている第1の画像(8)と第2の画像(9)を有し、第1の画像(7)と第2の画像(8)は、異なる画線群によって形成された画像要素によって構成され、画線群は、盛り上がりを有し、光輝性を有する画線の集合によって形成されている。以上が、本発明の立体視可能な印刷物の構成である。
【0042】
次に、本発明の立体視可能な印刷物が、特定の観察角度で観察する観察者に対して立体視可能となる原理について説明する。
【0043】
図6に示すように、立体視可能な印刷物(1)に光源(13)を入射した場合、正反射光と拡散反射光の占める割合によって各観察角度領域が区分けされる。つまり、−45度の角度から光源(13)を入射した場合、45度±5度の角度に正反射光の量に対して拡散反射光の量が絶対的に多い、正反射光が支配的な観察角度領域が生じる。この観察角度領域を観察角度領域Gとする。また、観察角度領域Gの隣り合った領域0度から40度及び50度から80度は、正反射光と拡散反射光がほぼ同じ程度の強さで混ざり合った観察角度領域となる。この観察角度領域を観察角度領域Fとする。また、それ以外の観察角度領域は、正反射光の量に対して拡散反射光の量が絶対的に多い拡散反射光が支配的な観察角度領域が生じる。この観察角度領域を観察角度領域Eとする。
【0044】
また、それぞれの観察角度領域の広さ(角度範囲)については、制御することが可能である。一例として、観察角度領域Gや観察角度領域Fを拡大したい場合には、印刷基材に平滑度の低い用紙を用いたり、画線の盛り上がりを大きくしたりすることによって可能となる。なお、本発明の立体視可能な印刷物(1)においては、観察角度領域Gや観察角度領域Fが狭いことが好ましい。これは、後記する原理にしたがって立体視を行う場合、観察角度領域Gや観察角度領域Fが広い場合には、立体視を安定して行うことが相対的に難しくなるためである。この理由については後記する。
【0045】
図7(a)に示すように、本発明の立体視可能な印刷物(1)を観察者が観察角度領域Eに視点をおいて観察した場合、印刷領域(3)中に見える画像を図7(b)に示す。観察角度領域Eは、正反射光の存在割合が極めて低い角度領域であることから、盛り上がりを有する画線角度の異なりが可視化される要素がなく、画線の面積率の差異によって形成された色彩の差が強く認識される。よって、観察角度領域Eにおいて観察者が印刷領域(3)中に視認する画像は、面積率の違いを強調した画像である第1の画像(8)のみとなり、画線角度の違いによって形成されている第2の画像(9)は視認されない。
【0046】
また、図8(a)に示すように、本発明の立体視可能な印刷物(1)を観察者が観察角度領域Fに視点をおいて観察した場合、印刷領域(3)中に見える画像を図8(b)に示す。観察角度領域Fは、正反射光が比較的多く存在する角度領域であることから、盛り上がりを有する画線角度の異なりが入射する光の角度に応じて可視化されるとともに、画線の面積率の差異によって形成された色彩の差は、正反射光が入射することによって光輝性材料が光を反射し、画線全体の明度が相対的に上昇することで目視上、小さく認識される。よって、観察角度領域Fにおいて観察者が印刷領域(3)中に視認する画像は、画線角度の違いを強調した画像である第2の画像(9)のみとなり、面積率の違いによって形成されている第1の画像(8)は視認されない。
【0047】
観察角度領域Eにおいては、観察者が印刷領域(3)中に視認する画像が第1の画像(8)のみとなり、観察角度領域Fにおいては、観察者が印刷領域(3)中に視認する画像が第2の画像(9)のみとなる効果について以下に説明する。なお、ここでは、面積率の差異を画線の太細による画線幅の差異によって形成する場合で説明する。ただし、画線幅及び画線ピッチについては、各観察角度領域における視認可能な画像の説明を行なうための一例である。
【0048】
まず、ピッチが同じで画線幅の異なる二つの画線群の色彩が各観察角度領域でどのように変化するかを説明する。図9(a)に示すピッチ0.4mmで画線幅が0.15mmの画線角度90度(垂直方向)の画線を平行に配列した画線群(31a)と、図9(b)に示すピッチ0.4mmで画線幅が0.20mmの画線角度90度(垂直方向)の画線を平行に配列した画線群(31b)に対して、画線と直交する方向から−45°の角度で光源(13)から光を入射し、受光角度−20°から80°までのL*、a*、b*を測定した。L*、a*、b*の値は、変角分光測色システムGCMS−4型〔村上色彩技術研究所製〕を使用して測定した。画線群(31a)におけるL*、a*、b*の値を、それぞれL1*、a1*、b1*とし、画線群(31b)におけるL*、a*、b*の値を、それぞれL2*、a2*、b2*とする。また、いずれの画線群(31a、31b)も画線の盛り上がりの高さは10μmである。
【0049】
測定の結果は、図10のグラフに示すとおりであり、画線幅の異なる二つの画線群(31a)及び画線群(31b)のL1*、a1*、b1*及びL2*、a2*、b2*は、いずれの受光角度においても波形としては相似であり、その差もほぼ一定な関係となっていることがわかる。また、画線群(31a)のL1*、a1*、b1*を基準として、画線群(31b)のL2*、a2*、b2*の色差ΔEを算出した結果を図11のグラフに示す。このグラフから、画線幅の異なる画線群(31a、31b)の色差ΔEは、観察角度領域Eから観察角度領域Fまでの間はほぼ一定の値を保ち、観察角度領域Gにおいて、わずかに上昇する程度の変化であることがわかる。よって、画線幅の異なる画線群の組み合わせを用いて形成する第1の画像(8)は、画像を形成する二つの画像要素がいずれの観察角度領域においても、ほぼ変わらずに異なる色として認識されるために、一定の視認性を保っていることがわかる。
【0050】
続いて、ピッチが同じで画線角度の異なる二つの画線群の色彩が各観察角度領域で、どのように変化するかを説明する。図12(a)に示すピッチ0.4mmで画線幅が0.15mmの画線角度90度(垂直方向)の画線を平行に配列した画線群(32a)と、図12(b)に示すピッチ0.4mmで画線幅が0.15mmの画線角度0度(水平方向)の画線を平行に配列した画線群(32b)に対して、画線と平行となる方向から−45°の角度で光源13からの光を入射し、受光角度−20°から80°までのL*、a*、b*を測定した。L*、a*、b*の値は、変角分光測色システムGCMS−4型〔村上色彩技術研究所製〕を使用して測定した。画線群(32a)におけるL*、a*、b*の値を、それぞれL1*´、a1*´、b1*´とし、画線群(32b)におけるL*、a*、b*の値を、それぞれL2*´、a2*´、b2*´とする。また、いずれの画線群(32a、32b)も画線の盛り上がりの高さは10μmである。
【0051】
測定の結果は、図13のグラフに示すとおりであり、画線幅の異なる二つの画線群(32a)及び画線群(32b)のL1*´、a1*´、b1*´及びL2*´、a2*´、b2*´は、特定の受光角度において波形が異なる領域を有し、その差も大きな値となっていることがわかる。また、画線群(32a)のL1*´、a1*´、b1*´を基準として画線群(32b)のL2*´、a2*´、b2*´の色差ΔEを算出した結果を図14のグラフに示す。このグラフから、画線角度の異なる画線群(32a、32b)の色差ΔEは、観察角度領域Eや観察角度領域Gにおける色差に比べて、観察角度領域Fにおいて大きな差を生じることがわかる。よって、画線角度の異なる画線群の組み合わせを用いて形成する第2の画像(9)は、画像を形成する二つの画像要素が観察角度領域Fにおいて全く異なる色として変化するために、視認性が急激に向上することがわかる。
【0052】
続いて、本発明の立体視可能な印刷物(1)を形成している、画線幅と画線角度がそれぞれ異なる四種類の画線群の色が各観察角度領域において如何に変化し、それぞれが組み合わさって形成されている印刷領域(3)の画像が如何に観察者に認識されるかを、色差ΔEを用いて説明する。
【0053】
図15(a)から図15(d)に、本発明の立体視可能な印刷物(1)の印刷領域(3)が有している四種類の画像要素を示す。(a)は、第1の画像要素(4)であり、第1の画像要素(4)の画線群は、ピッチ0.4mm、画線幅0.15mmの0度(水平方向)の画線を平行に配列して構成している。(b)は、第2の画像要素(5)であり、第2の画像要素(5)の画線群は、ピッチ0.4mmで画線幅0.20mmの0度(水平方向)の画線を平行に配列して構成している。(c)は、第3の画像要素(6)であり、第3の画像要素(6)の画線群は、ピッチ0.4mmで画線幅0.20mmの90度(垂直方向)の画線を平行に配列して構成している。(d)は、第4の画像要素(7)であり、第4の画像要素(7)は、ピッチ0.4mmで画線幅0.15mmの90度(垂直方向)の画線を平行に配列して構成している。いずれの画線群も画線の盛り上がりの高さは10μmである。また、図15(e)に、面積率(画線太細)及び画線角度の差異に応じた画像要素と、それに応じた視認画像の一覧を示す。
【0054】
この四種類の画像要素における各画線群のL*、a*、b*値を前述した手順に沿って測定した。それぞれのL*、a*、b*値から、第4の画像要素(7)を形成する画線群のL*、a*、b*値を基準にして、色差ΔEを算出して受光角度別にプロットした結果を図16のグラフに示す。
【0055】
第4の画像要素(7)を形成する画線群のL*、a*、b*値を基準にして、第3の要素(6)を形成する画線群のL*、a*、b*値との色差ΔEをプロットしたのが折れ線(33)であり、第1の要素(4)を形成する画線群のL*、a*、b*値との色差ΔEをプロットしたのが折れ線(34)であり、第2の要素(5)を形成する画線群のL*、a*、b*値との色差ΔEをプロットしたのが折れ線(35)である。
【0056】
図16のグラフから、観察角度領域E(受光角度0°以下)においては、折れ線(34)のΔEは、2以下であるのに対して、折れ線(33)及び折れ線(35)のΔEは、7以上であり、かつ、同程度の値となっている。このことから、第4の画像要素(7)と第1の画像要素(4)がほぼ同じ色として認識されるが、第2の画像要素(5)と第3の画像要素(6)は、第4の画像要素(7)と第1の画像要素(4)とは異なる色として認識されることとなり、かつ、第4の画像要素(7)と第1の画像要素(4)は、同じ色として認識されることとなる。よって、観察角度領域Eにおいては、画線幅の太細によって形成された第1の画像(8)が可視化されることとなり、この領域において強く視認されることとなる。
【0057】
図16のグラフから、観察角度領域F(受光角度20°±20以下)においては、折れ線(33)のΔEは、11以下であるのに対して、折れ線(34)及び折れ線(35)のΔEは、それを大きく上回っており、ΔEは、最大で60を超えている。このことから、第4の画像要素(7)と第3の画像要素(6)が色として異なるとは認識され、第1の画像要素(4)と第2の画像要素(5)が、第4の画像要素(7)と第3の画像要素(6)に対して全く違う色として認識され、かつ、第1の画像要素(4)と第2の画像要素(5)は、同じ色として視認される。ただし、第4の画像要素(7)を基準とした第3の画像要素(6)の色差は、第1の画像要素(4)及び第2の画像要素(5)の色差と比較して相対的に小さいために、第4の画像要素(7)と第3の画像要素(6)が同じ色に、第1の画像要素(4)と第2の画像要素は、異なった色として認識されることとなる。よって、観察角度領域Eにおいては、画線角度の差異によって形成された第2の画像(9)が強く視認されることとなる。
【0058】
なお、観察角度領域Gにおいては、第1の画像(8)がやや強く認識されるか、又は第1の画像(8)と第2の画像(9)が混ざり合って認識される。ただし、観察角度領域Gは、極めて狭い角度領域しか存在せず、また観察角度領域Fに挟まれていることから、観察者の主観としては、観察角度領域Fが連続して存在しているように感じられる。
【0059】
以上が、本発明の立体視可能な印刷物(1)が、印刷領域(3)を面積率と画線角度の異なる画線群で形成することによって、特定の観察角度領域で観察した場合、異なる第1の画像(8)と第2の画像(9)が変化して視認される効果である。ただし、前述の説明においては、第1の画像(8)と第2の画像(9)が観察角度によって切り替わって観察される効果を明瞭に説明するために、あえて第2の画像(9)の視野角度が比較的広い(観察角度領域Fが広い)例で説明している。後述するが、本発明において、第2の画像(9)の視野角度は、狭いほうが好ましい。
【0060】
以上のように、本発明の立体視可能な印刷物(1)は、印刷領域(3)を面積率と画線角度の異なる画線群で形成することによって、特定の観察角度領域で観察した場合、異なる第1の画像(8)と第2の画像(9)が視認される効果を有している。この効果を利用することで、特定の観察角度に観察者の視点がある場合に限り、立体視が成立する。ここで言う特定の観察角度とは、図17の15a及び15bに示すように右目のみ、あるいは左目のみが観察角度領域E内にあり、もう一方の目のみが観察角度領域F内にある場合である。この二つの観察角度にある場合、観察者の右目と左目には、第1の画像(8)と、第2の画像(9)がそれぞれ絶縁して表示されることになり、第1の画像(8)と第2の画像(9)の間にある左右の画像の位相差によって両眼視差を利用した立体視が成立する。
【0061】
図17における観察者の視点(15b)を例として、左目には第1の画像(8)が、右目には第2の画像(9)がそれぞれ別々に視認された場合に、観察者に認識される立体感について説明する。図18(a)に示す画像中の左上の図柄(12a、12b)を、観察者の視点(15b)で観察した場合に生じる奥行き感について図18(b)に示す。右目には、第2の画像(9)の図柄(12b)が視認され、左目には、第1の画像(8)の図柄(12a)が視認されるため、右目と図柄(12b)をつなぐ直線と左目と図柄(12a)をつなぐ直線は、B−B´上で交わる。この場合、印刷物とその画像は、A−A´上に存在しているにも関わらず、観察者には、画像左上の図柄(12a、12b)の図柄がB−B´の位置にある図柄(12c)として認識される。
【0062】
また、図19(a)に示す画像中の右の図柄(11a、11b)を、観察者の視点(15b)で観察した場合に生じる奥行き感について図19(b)に示す。右目には、第2の画像(9)の図柄(11b)が視認され、左目には、第1の画像(8)の図柄(11a)が視認されるため、右目と図柄(11b)をつなぐ直線と左目と図柄(11a)をつなぐ直線は、C−C´上で交わる。この場合、印刷物とその画像は、A−A´上に存在しているにも関わらず、観察者には、画像右の図柄(11a、11b)の図柄がC−C´の位置にある図柄(11c)として認識される。
【0063】
図20(a)に示すように、立体視可能な印刷物(1)を観察者の視点(15b)で観察した場合、本来、立体視可能な印刷物(1)に形成されている図柄(10a、10b、11a、11b、12a、12b)は、A−A´上に存在しているが、図18(b)で示した図柄(12c)の視認状態及び図19(b)で示した図柄(11c)の視認状態となることから、図20(b)に示すように、左上の図柄(12a、12b)は、A−A´を基準としたときの観察者の視点(15b)より奥側であるB−B´上に図柄(12c)があると認識され、右の図柄(11a、11b)は、A−A´を基準としたときの観察者の視点(15b)より手前であるC−C´上に図柄(11c)があると認識される。なお、左下の図柄(10a、10b)については、同じ位置に形成されていることから、本来、立体視可能な印刷物(1)に形成されている図柄が存在するA−A´上に存在していると認識される。以上が本発明の立体視可能な印刷物(1)が立体感を生じさせる原理である。
【0064】
また、観察者の視点(15a)で観察した場合は、観察者の視点(15b)で観察した場合と比べ、左上の図柄(12a、12b)と右の図柄(11a、11b)の奥行き方向の位置関係が逆転する。つまり、左上の図柄(12a、12b)が手前側に認識され、右の図柄(11a、11b)が奥側に認識される。
【0065】
本発明の立体視可能な印刷物(1)を構成している画線は、基材(2)と異なる色を有し、かつ、光輝性を有する必要がある。これは、観察角度領域Fにおいて第2の画像を可視化させるために、入射する光を強く反射する効果を有している必要があるためである。光輝性を付与するための手段としては、画線を市販されている金、銀インキ等のメタリックインキを用いて形成しても良く、透明を除く任意の色材とともに光輝性材料を混合したインキを用いて形成しても良い。光輝性材料は、アルミニウム粉末、銅粉末、亜鉛粉末、錫粉末、真鍮粉末又はリン化鉄等のメタリック系顔料に加え、鱗片状マイカ顔料、鱗片状金属顔料、ガラスフレーク顔料及びコレステリック液晶顔料等の顔料を含む。
【0066】
また、本発明の立体視可能な印刷物(1)を構成している画線は、盛り上がりを有する必要がある。盛り上がりがない場合には、観察角度領域Fにおいて入射する光を反射できなくなり、第2の画像が可視化しないためである。画線の盛り上がりの高さは、2μm以上10μm以下に形成する。画線を2μmより低い盛り上がりで形成した場合、観察角度領域Fにおいて出現する第2の画像の視認性が極めて低くなるか又は第2の画像が全く出現しなくなるため、画線の盛り上がりは、2μm以上の高さで形成するのが良い。また、10μmより高い場合盛り上がりで形成した場合、立体視自体は可能なものの、立体視に適切な角度の見極めが困難となる。これは、画線の盛り上がりが10μmより高い場合、観察角度領域Gや観察角度領域Fの領域が広くなり、第2の画像を観察することができる角度範囲が広くなる。観察角度領域Gや観察角度領域Fの領域が広くなると、印刷物と観察者の距離が極めて近い場合を除き、観察者の右目と左目の両方が観察角度領域Gや観察角度領域Fの中に収まってしまう。この状態から、片目のみを観察角度領域Eに意図的に入れるためは、適切な観察角度を保ったまま印刷物と両眼を近づけていく必要がある。この方法は、一般的な印刷物の観察方法とはかけ離れていることから、不慣れな利用者には、極めて敷居が高い行為となってしまう。そのため、画線の盛り上がりは、10μmより低く形成するのが良い。
【0067】
本発明においては、観察角度領域Gや観察角度領域Fの領域を意図的に狭くなるように設計している。これは、自然な観察距離で本発明の立体視可能な印刷物(1)に光を入射させた場合、観察角度領域Gや観察角度領域Fの領域には、観察者の片目だけしか入らないことを意図しているためである。この片目のみが観察角度領域Gや観察角度領域Fの領域に入る場合、もう一方の目は、自動的に観察角度領域Eの中に入ることになり、容易に立体視が成立する。よって、本発明を2μm以上10μm以下の画線の高さで設計した場合には、観察者は、本発明の立体視の原理を理解していなくても、印刷物を光に対して少し傾けて観察するだけで立体画像を視認することができる。
【0068】
2μm以上10μm以下の高さの盛りのある画線を形成する方法としては、凸版印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、凹版印刷、スクリーン印刷方式等の印刷で形成する方法や、UV乾燥方式のインキジェットプリンタを用いる方法等が挙げられる。
【0069】
また、本発明の立体視可能な印刷物(1)の基材(2)については、平滑度が高いことが望ましく、特にコート紙、アート紙に代表される塗工紙又はプラスチックカード等の基材は、最適である。平滑度が低い基材(2)の上に形成した場合には、前述の観察角度領域Gや観察角度領域Fの領域が広くなってしまうためである。
【0070】
本発明の立体視可能な印刷物(1)の印刷領域において、面積率は、100%を除く30%を越える範囲であることが望ましい。これは、観察角度領域Fにおける第2の画像の視認性を高く保ち、かつ、第1の画像の消失効果を高めるためであり、面積率が30%以下でもこれらの効果を得ることは可能なものの、30%以上の画線群と比較するとその効果は劣るためである。
【0071】
また、観察角度領域Eにおいて可視化する第1の画像については、面積率の差異を用いて形成する必要があるが、前述したとおり、面積率の差異を画線の太細による画線幅の差異のみで形成する必要はなく、画線の粗密、いわゆる画線密度の差異をもって形成しても良く、この両方を用いて形成しても何ら問題はない。ただし、各画線群の画線幅や画線の密度については、面積率に換算して5%以上30%以下に留めることが望ましい。画線間の面積率の差異が5%以下の場合、観察角度領域Fにおける第2の画像の視認性は、良好であるものの、観察角度領域Eにおける第1の画像の視認性が低くなりすぎて容易に観察できなくなるためであり、同様に30%以上の場合には、観察角度領域Eにおいて第1の画像は容易に視認可能なものの、観察角度領域Fにおいて第1の画像が消失しきらず、第1の画像と第2の画像が混ざり合って視認されてしまうためである。立体視を容易に成立させるためには、第1の画像と第2の画像の視認性は可能な限り近づける必要があることから、印刷領域中の画線は、面積率に換算して5%以上30%以下の差異に留めることが望ましい。
【0072】
第2の画像を形成するための画線角度の差異については、15度以上90度以下で形成することが望ましい。画線角度の差異が15度以下の場合には、観察角度領域Fにおける第2の画像の視認性が低くなりすぎるためである。
【0073】
各画線群の画線のピッチについては、10μm(0.01mm)以上1mm以下で形成することが望ましい。10μm以下で画線ピッチを形成するには、印刷に関して安価で安定した連続製造手段が存在しないこと、1mm以上で画線ピッチを形成すると解像度の低いデザインにしか対応できなくなるだけでなく、画線の角度の差も容易に目視上捉えられることから、立体視を行った場合、第1の画像と第2の画像間の画線角度の差異によって視野の闘争(ハレーション)が生じて安定した立体視が望めない可能性が高くなるためである。実施の形態及び後述する実施例1から実施例3においては、各画像要素における画線のピッチを一定にし、画線幅を異ならせることで、各画線要素を構成する画線群の面積率に差異を生じさせているが、これに限定されるものではなく、画線幅を同一にし、ピッチに規則性を持たせることで面積率に差異を生じさせても良い。ピッチに規則性を持たせるとは、ピッチを徐々に大きくしたり徐々に小さくしたり、またその組み合わせのことである。
【0074】
第1の画像と第2の画像は、同一の画像及び/又は略同一の画像を含んで構成する。「略同一の画像」とは、立体物や三次元の風景に対して、カメラの撮影角度を両眼の位置程度ずらして撮影した写真や画像、両目の位置程度ずらして観察される画像を画像処理ソフト等によって描画して作製した画像のことをいう。本実施の形態においては、左上の図柄(12a、12b)及び右の図柄(11a、11b)、左下の図柄(10a、10b)が同一の画像にあたる。
【0075】
同一の画像のうち、左上の図柄(12a)と対を成す左上の図柄(12b)及び右の図柄(11a)と対を成す右上の図柄(11b)は、各々の図柄の中心を左右方向に所定距離ずらして遠近感を生み出している。この左右方向の所定距離は、一般的な人間の両目間の距離である65mm以下に留めなければならない。また、万人がそれと感じる適当な遠近感を生み出すためには、1mm以上の所定距離で形成する必要があるため、左右方向にずらす所定距離は、1mm以上65mm以下で形成する。ただし、この左右方向の位相の差が大きければ大きいほど立体画像中の遠近感は大きくなるが、目の焦点距離と立体画像中の遠近感が異なるという矛盾も一層強くなるため、本発明においては、20mm以下に留めることがより好ましい。
【0076】
また、左上の図柄(12a)と対を成す左上の図柄(12b)及び右の図柄(11a)と対を成す右上の図柄(11b)が後記する実施例3のように略同一の画像である場合は、左上の図柄(12a)と対を成す左上の図柄(12b)及び右の図柄(11a)と対を成す右上の図柄(11b)は、各々の図柄の中心を合わせて形成しても良い。これは、もともとの画像が略同一であるため、画像の中心を合わせることで必然的に画像が左右方向にずれることとなり、遠近感を生み出すためである。
【0077】
また、本実施の形態においては、画像が二階調の場合で説明したため、画像要素は四種類であったが、三階調の場合の画像要素は九種類となり、九種類の画像要素における各面積率及び各画線角度が三種類ずつであることは、前述したとおりである。その場合の面積率は、表現したい画像の階調(色の濃さ)に応じて、濃い色を表現したい場合には面積率を高く形成し、淡い色を表現したい場合には低く形成する。画線角度は、濃い色を表現したい場合には、第2の画像の背景部を形成する画線角度より角度を大きくし、淡い色を表現したい場合には背景部を形成する角度に近い角度で形成する。
【0078】
以下、前述の発明を実施するための最良の形態にしたがって、具体的に作製した立体視可能な印刷物の実施例について詳細に説明するが、本発明は、この実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0079】
図21に本実施例1における立体視可能な印刷物(1´)を示す。一般的なコート紙である基材(2´)上に、UVスクリーン印刷用の銀インキ(ミラシーン ウォールステンホルム社製)を用い、UVスクリーン印刷によって、盛り上がりを有し、かつ、光輝性を有する複数の画線から成る画線群によって印刷領域(3´)を形成している。本実施例1における盛り上がりを有する画線の高さは、10μmである。また、印刷領域(3´)は、30mm×30mmの角がやや丸くなった正方形を成している。
【0080】
本実施例1における複数の画像要素は、四種類であり、四種類の画像要素とは、図22に示す第1の画像要素(4´)、第2の画像要素(5´)、第3の画像要素(6´)、第4の画像要素(7´)である。第1の画像要素(4´)は、ピッチ0.30mm、画線幅0.15mm、画線角度−15度の複数の画線を平行に配列して構成し、第2の画像要素(5´)は、ピッチ0.30mm、画線幅0.20mm、画線角度−15度の複数の画線を平行に配列して構成し、第3の画像要素(6´)は、ピッチ0.30mm、画線幅0.20mm、画線角度15度の複数の画線を平行に配列して構成し、第4の画像要素(7´)は、ピッチ0.30mm、画線幅0.15mm、画線角度15度の複数の画線を平行に配列して構成している。なお、図22中の画像要素(4´、5´、6´、7´)は、いずれも四角形の枠を備えているように図示しているが、四角形の枠についてはそれぞれの画像要素の印刷領域(3´)内での位置関係を示すために印刷領域(3´)の外枠を図示したもので、各画像要素中に実際に存在するものではない。
【0081】
印刷領域(3´)を形成する四種類の画像要素(4´、5´、6´、7´)は、画線幅0.20mmの画線と、画線幅0.15mmの画線で濃淡を付けたと仮定すると、第1の画像要素(4´)と第4の画像要素(7´)は淡くなり背景部が形成され、第2の画像要素(5´)と第3の画像要素(6´)は濃くなり、三つの図柄、本実施例1では、三つの星(10a´、11a´、12a´)から成る画像部が形成され、背景部と画像部とで図23(a)に示す第1の画像(8´)と成る。
【0082】
また、印刷領域(3´)を形成する四種類の画像要素(4´、5´、6´、7´)は、画線角度−15度の画線と、画線角度15度の画線で濃淡を付けたと仮定すると、第1の画像要素(4´)と第2の画像要素(5´)は淡くなり背景部が形成され、第3の画像要素(6´)と第4の画像要素(7´)は濃くなり、三つの図柄、本実施例1では、三つの星(10b´、11b´、12b´)から成る画像部が形成され、背景部と画像部とで図23(b)に示す第2の画像(9´)と成る。
【0083】
このように、第1の画像(8´)の画像部及び背景部と、第2の画像(9´)の画像部及び背景部は、四種類の画像要素(4´、5´、6´、7´)の組み合わせによって形成されるが、第1の画像要素(4´)は、第1の画像(8´)と第2の画像(9´)における共有の背景部と成り、第3の画像要素(6´)は、第1の画像(8´)と第2の画像(9´)における共有の画像部と成る。
【0084】
図24は、第1の画像(8´)中の三つの星(10a´、11a´、12a´)と第2の画像(9´)中の三つの星(10b´、11b´、12b´)の位置を示したものである。第1の画像(8´)中の星(10a´)と第2の画像(9´)中の星(10b´)の位置と大きさは、同じであるが、第1の画像(8´)中の星(11a´、12a´)と第2の画像(9´)中の星(11b´、12b´)の位置は、実施の形態同様にそれぞれ左右方向にわずかに異なっている。星の大きさについては、星(11a´)と星(11b´)は同じであり、星(12a´)と星(12b´)も同じであるが、星(11a´)を基準にすると、星(11b´)は、左方向に3mm位相を変えて形成され、星(12a´)を基準にすると、星(12b´)は、3mm右方向に位相を変えて形成されている。
【0085】
よって、図25(a)に示すように、本発明の立体視可能な印刷物(1´)を実施の形態で示した観察者の視点(15b)で観察した場合は、印刷物(1´)自体はA−A´上に存在しているにもかかわらず、図25(b)に示すように、左上の星(12a´、12b´)は、B−B´上の星(12c´)に、右の星(11a´、11b´)は、C−C´上の星(11c´)に、左下の星(10a´、10b´)は、印刷物が存在するA−A´上に存在していると認識された。また、観察者の視点(15a)で観察した場合には、左上の星(12a´、12b´)と右の星(11a´、11b´)の奥行き方向の位置関係は逆転して認識された。以上のように、本発明の立体視可能な印刷物(1´)を特定の角度で観察した場合には、印刷領域(3´)中の画像が遠近感を伴って観察することができることを確認することができた。
【実施例2】
【0086】
本実施例2では、第1の画像と第2の画像が、本実施例1のように同一な画像を備えるのではなく、略同一の画像を備えている場合について説明する。図26に本実施例2における立体視可能な印刷物(1´´)を示す。一般的なコート紙である基材(2´´)上に、UVフレキソ印刷用の銀インキ(UVフレキソシルバー T&K TOKA社製)を用いて、UVフレキソ印刷によって盛り上がりを有し、かつ、光輝性を有する複数の画線から成る画線群によって印刷領域(3´´)を形成している。本実施例2における盛り上がりを有する画線の高さは、3μmである。また、印刷領域(3´´)は30mm×30mmの角が、やや丸くなった正方形を成している。
【0087】
本実施例2における複数の画像要素は、四種類であり、四種類の画像要素とは、図27に示す第1の画像要素(4´´)、第2の画像要素(5´´)、第3の画像要素(6´´)、第4の画像要素(7´´)である。第1の画像要素(4´´)は、ピッチ0.12mm、画線幅0.04mm、画線角度0度の複数の画線を平行に配列して構成し、第2の画像要素(5´´)は、ピッチ0.12mm、画線幅0.07mm、画線角度0度の複数の画線を平行に配列して構成し、第3の画像要素(6´´)は、ピッチ0.12mm、画線幅0.07mm、画線角度90度(垂直方向)の複数の画線を平行に配列して構成し、第4の画像要素(7´´)は、ピッチ0.12mm、画線幅0.04mm、画線角度90度の複数の画線を平行に配列して構成している。なお、図27中の画像要素(4´´、5´´、6´´、7´´)は、いずれも四角形の枠を備えているように図示しているが、四角形の枠については、それぞれの画像要素の印刷領域(3´´)内での位置関係を示すために印刷領域(3´´)の外枠を図示したもので、各画像要素中に実際に存在するものではない。
【0088】
印刷領域(3´´)を形成する四種類の画像要素(4´´、5´´、6´´、7´´)は、画線幅0.04mmの画線と、画線幅0.07mmの画線で濃淡を付けたと仮定すると、第1の画像要素(4´´)と第4の画像要素(7´´)は淡くなり背景部が形成され、第2の画像要素(5´´)と第3の画像要素(6´´)は濃くなり、一つの図柄、本実施例2では、立方体(16a)から成る画像部が形成され、背景部と画像部とで、図28(a)に示す第1の画像(8´´)となる。
【0089】
また、印刷領域(3´´)を形成する四種類の画像要素(4´´、5´´、6´´、7´´)は、画線角度0度の画線と、画線角度90度の画線で濃淡を付けたと仮定すると、第1の画像要素(4´´)と第2の画像要素(5´´)は淡くなり背景部が形成され、第3の画像要素(6´´)と第4の画像要素(7´´)は濃くなり、一つの図柄、本実施例2では、立方体(16b)から成る画像部が形成され、背景部と画像部とで、図28(b)に示す第2の画像(9´´)となる。
【0090】
このように、第1の画像(8´´)の画像部及び背景部と、第2の画像(9´´)の画像部及び背景部は、四種類の画像要素(4´´、5´´、6´´、7´´)の組み合わせによって形成されるが、第1の画像要素(4´´)は、第1の画像(8´´)と第2の画像(9´´)における共有の背景部と成り、第3の画像要素(6´´)は、第1の画像(8´´)と第2の画像(9´´)における共有の画像部と成る。
【0091】
図29は、印刷領域(3´´)中の第1の画像(8´´)中の破線で示す立方体(16a)と第2の画像(9´´)中の淡い実線で示す立方体(16b)の形と位置関係を示したものである。本実施例2において、この二つの立方体(16a、16b)は、略同一な画像である。二つの立方体(16a、16a、)には、XY平面と平行な面として、立方体(16a)は、XY面(17a、18a)を備え、立方体(16b)は、XY面(17b、18b)を備えている。それぞれのXY平面(17a、18a、17b、18b)の大きさ自体は同一であるものの、左右の位相が異なっており、XY平面(17a)を基準にすると、XY平面(17b)は、右に2mm、XY平面(18a)を基準にすると、XY平面(18b)は、左に2mmずれており、それに伴ってそれぞれのXY平面をつないでいるZ軸方向の直線の角度も立方体(16a)と立方体(16b)間ではわずかに異なっており、結果として立方体(16a)と立方体(16b)とは、完全に同一な画像ではない構成となっている。なお、立体視が成立した場合には、立方体(16a)と立方体(16b)の中間に位置する実線でしめす立方体(16c)となって認識されることとなる。XY平面(17a)とXY平面(17b)は、融合して新たなXY平面(17c)となり、XY平面(18a)とXY平面(18b)は、融合して新たなXY平面(18c)となる。
【0092】
図30(a)に示すように、本発明の立体視可能な印刷物(1´´)を観察者の視点(15a)で観察した場合は、印刷物(1´´)自体はA−A´上に存在しているにもかかわらず、XY平面(18c)は、B−B´上に、XY平面(17c)は、C−C´上に存在していると認識された。逆に、図30(b)に示すように、本発明の立体視可能な印刷物(1´´)を観察者の視点(15b)で観察した場合には、XY平面(18c)は、B−B´上に、XY平面(17c)は、C−C´上に存在していると認識された。また、それに伴って、図31(a)に示すように観察者の視点(15a)で認識される立方体(16c)は、二つのXY平面のうちXY平面(17c)が手前にあるように感じられることから、立方体を上から見下ろしたような画像として認識され、逆に、図31(b)に示すように、観察者の視点(15b)で認識される立方体(16c)は、二つのXY平面のうちXY平面(18c)が手前にあるように感じられることから、立方体を下から見上げたような画像として認識された。以上のように本発明の立体視可能な印刷物(1´´)を特定の角度で観察した場合には、印刷領域(3´´)中の画像が遠近感を伴って観察することができるだけでなく、観察角度までもが変化したように認識することができることを確認することができた。
【実施例3】
【0093】
本実施例3では、第1の画像と第2の画像が、立体物をカメラで撮影した写真を加工することによって作製した略同一な画像であって、その画像が2値画像でなく多階調を備えている例について記載する。図32に本実施例3における立体視可能な印刷物(1´´´)を示す。一般的なコート紙である基材(2´´´)上に、UVフレキソ印刷用の銀インキ(UVフレキソシルバー T&K TOKA社製)を用いてUVフレキソ印刷によって、盛り上がりを有し、かつ、光輝性を有する複数の画線から成る画線群によって印刷領域(3´´´)を形成している。本実施例3における盛り上がりを有する画線の高さは3μmである。また、印刷領域(3´´´)は、幅50mm×高さ60mmの正方形を成している。
【0094】
本実施例3における複数の画像要素は、九種類であり、九種類の画像要素とは、図33に示す第1の画像要素(19)、第2の画像要素(20)、第3の画像要素(21)、第4の画像要素(22)、第5の画像要素(23)、第6の画像要素(24)、第7の画像要素(25)、第8の画像要素(26)、第9の画像要素(27)である。第1の画像要素(19)は、ピッチ0.12mm、画線幅0.04mm、画線角度90度の複数の画線を平行に配列して構成し、第2の画像要素(20)は、ピッチ0.12mm、画線幅0.06mm、画線角度90度の複数の画線を平行に配列して構成し、第3の画像要素(21)は、ピッチ0.12mm、画線幅0.08mm、画線角度90度の複数の画線を平行に配列して構成し、第4の画像要素(22)は、ピッチ0.12mm、画線幅0.04mm、画線角度45度の複数の画線を平行に配列して構成し、第5の画像要素(23)は、ピッチ0.12mm、画線幅0.06mm、画線角度45度の複数の画線を平行に配列して構成し、第6の画像要素(24)は、ピッチ0.12mm、画線幅0.08mm、画線角度45度の複数の画線を平行に配列して構成し、第7の画像要素(25)は、ピッチ0.12mm、画線幅0.04mm、画線角度0度の複数の画線を平行に配列して構成し、第8の画像要素(26)は、ピッチ0.12mm、画線幅0.06mm、画線角度0度の複数の画線を平行に配列して構成し、第9の画像要素(27)は、ピッチ0.12mm、画線幅0.08mm、画線角度0度の複数の画線を平行に配列して構成している。なお、図33中のすべての画像要素(19、20、21、22、23、24、25、26、27)は、いずれも四角形の枠を備えているように図示しているが、四角形の枠についてはそれぞれの画像要素の印刷領域(3´´´)内での位置関係を示すために印刷領域(3´´´)の外枠を図示したもので、各画像要素中に実際に存在するものではない。
【0095】
印刷領域(3´´´)を形成する九種類の画像要素において、画線幅0.04mmの画線と、画線幅0.06mmと、画線幅0.08mmの画線幅に応じて順に淡・中・濃の濃淡を付けたと仮定すると、第1の画像要素(19)と第4の画像要素(22)と第7の画像要素(25)は淡くなり背景部が形成され、第2の画像要素(20)と第5の画像要素(23)と第8の画像要素(26)は濃くなり第一の階調と成るとともに、第3の画像要素(21)と第6の画像要素(24)と第9の画像要素(27)はさらに濃くなり第二の階調と成り、一つの図柄、本実施例3では、鳳凰の像(28a)から成る画像部が形成され、背景部と画像部とで、図34(a)に示す第1の画像(8´´´)となる。
【0096】
また、印刷領域(3´´´)を形成する九種類の画像要素は、画線角度90度の画線と、画線角度45度の画線と、画線角度0度の画線で順に淡・中・濃の濃淡を付けたと仮定すると、第1の画像要素(19)と第2の画像要素(20)と第3の画像要素(21)は淡くなり背景部が形成され、第4の画像要素(22)と第5の画像要素(23)と第6の画像要素(24)は濃くなり第一の階調と成るとともに、第7の画像要素(25)と第8の画像要素(26)と第9の画像要素(27)はさらに濃くなり第二の階調と成り、一つの図柄、本実施例3では、鳳凰の像(28b)から成る画像部が形成され、背景部と画像部とで、図34(b)に示す第2の画像(9´´´)となる。
【0097】
このように、第1の画像(8´´´)の画像部及び背景部と、第2の画像(9´´´)の画像部及び背景部は、九種類の画像要素(19、20、21、22、23、24、25、26、27)の組み合わせによって形成されるが、第7の画像要素(25)は、第1の画像(8´´´)と第2の画像(9´´´)における共有の背景部と成り、第5の画像要素(23)は、第1の画像(8´´´)と第2の画像(9´´´)における共有の画像部のる第一の階調の部分と成り、第3の画像要素(21)は、第1の画像(8´´´)と第2の画像(9´´´)における共有の画像部のる第二の階調の部分と成る。
【0098】
第1の画像(8´´´)の鳳凰の像(28a)と、第2の画像(9´´´)の鳳凰の像(28b)は、図35に示すように、真の立体物である鳳凰の銅像(29)を左側のカメラ(30a)と右側のカメラ(30b)を用いて撮影した写真を加工した画像である。両カメラ(30a、30b)ともに鳳凰の銅像(29)が完全にカメラのフレーム内に収まるだけの距離を等しく取り、カメラ(30a)とカメラ(30b)は両眼の距離にあたる65mm左右に離して撮影した。画像の加工には一般的な画像処理ソフトを使用し、第1の画像(8´´´)及び第2の画像(9´´´)ともに背景を含めて3階調に処理をした。図36は、印刷領域(3´´´)中の第1の画像(8´´´)中の鳳凰の像(28a)と第2の画像(9´´´)中の鳳凰の像(28b)の形と位置関係を示したものである。本実施例において、この二つの鳳凰の像(28a、28b)が略同一な画像である。二つの鳳凰の像(28a、28b)は、それぞれの画像の中心を一致させて配置している。
【0099】
図37に示すように、本発明の立体視可能な印刷物(1´´´)を実施の形態で示した観察者の視点(15b)で観察した場合は、二つの鳳凰の像(28a、28b)が融合した立体的な鳳凰の像(28c)が認識され、また、印刷物(1´´´)自体はA−A´上に存在しているにもかかわらず、鳳凰の腹の部分はA−A´よりも手前に、鳳凰の尾の部分はA−A´よりも奥側に、存在しているかのように認識することができた。
【符号の説明】
【0100】
1、1´、1´´、1´´´ 立体視可能な印刷物
2、2´、2´´、2´´´ 基材
3、3´、3´´、3´´´ 印刷領域
4、4´、4´´ 第1の画像要素
5、5´、5´´ 第2の画像要素
6、6´、6´´ 第3の画像要素
7、7´、7´´ 第4の画像要素
8、8´、8´´、8´´´ 第1の画像
9、9´、9´´、9´´´ 第2の画像
10a、10b、10c 図柄
10a´、10b´、10c´ 星
11a、11b、11c 図柄
11a´、11b´、11c´ 星
12a、12b、12c、 図柄
12a´、12b´、12c´ 星
13 光源
14 視点
15a、15b 観察者の視点
16a、16b、16c 立方体
17a、17b、17c 立方体のXY面に平行な面
18a、18b、18c 立方体のXY面に平行な面
19 第1の画像要素
20 第2の画像要素
21 第3の画像要素
22 第4の画像要素
23 第5の画像要素
24 第6の画像要素
25 第7の画像要素
26 第8の画像要素
27 第9の画像要素
28a、28b、28c 鳳凰の像
29 鳳凰の銅像
30a、30b カメラ
31a 盛り上がりのある細い画線
31b 盛り上がりのある太い画線
32a 盛り上がりのある垂直画線
32b 盛り上がりのある水平画線
33、34、35 第4の画像要素を基準にした場合の各画像要素の色差を表す折れ線
L1*、a1*、b1* 画線群31aのL*、a*、b*
L2*、a2*、b2* 画線群31bのL*、a*、b*
L1*´、a1*´、b1*´ 画線群32aのL*、a*、b*
L2*´、a2*´、b2*´ 画線群32bのL*、a*、b*

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上の少なくとも一部に印刷領域を有し、前記印刷領域に、二つの画像を備えて成る立体視可能な印刷物において、
前記画像は、複数の画像要素が隣接されて成り、
前記複数の画像要素は、それぞれ異なる画線群から構成されており、前記画線群は、前記基材と異なる色の光輝性材料を含むインキによって、盛り上がりのある形状で、特定の面積率の画線を特定の角度に複数配列して成り、
前記複数の画像要素は、第1の角度を有した画線を第1の面積率で複数配列した第1の画線群から成る第1の画像要素と、第1の角度を有した画線を第1の面積率と異なる第2の面積率で複数配列した第2の画線群から成る第2の画像要素と、前記第1の角度とは異なる第2の角度を有した画線を前記第2の面積率で複数配列した第3の画線群から成る第3の画像要素と、前記第2の角度を有した画線を前記第1の面積率で複数配列した第4の画線群から成る第4の画像要素とを備え、
前記少なくとも二つの画像は、少なくとも第1の画像及び第2の画像から成り、前記第1の画像は、画像部と背景部から成り、前記第2の画像は、画像部と背景部から成り、
前記第1の画像の画像部は、前記第2の画像要素と前記第3の画像要素から成り、前記第1の画像の背景部は、前記第1の画像要素と前記第4の画像要素から成り、前記第2の画像の画像部は、前記第3の画像要素と前記第4の画像要素から成り、前記第2の画像の背景部は、前記第1の画像要素と前記第2の画像要素から成り、
前記第1の画像要素は、前記第1の画像及び前記第2の画像の共有の背景部と成り、前記第3の画像要素は、前記第1の画像及び前記第2の画像の共有の画像部と成り、
前記第1の画像における画像部と前記第2の画像における画像部は、少なくとも一つの対を成す同一の図柄を備え、
前記第1の画像中と前記第2の画像内に備えられた前記一つの対を成す図柄同士は、各々の画像部の中心を左右方向に所定距離ずらして形成され、
観察者の一方の目を正反射光が支配的な観察角度領域に置き、他方の目を拡散反射光が支配的な観察角度領域に置いて観察した場合、前記第1の画像と前記第2の画像が絶縁表示され、両眼視差により立体画像を視認することができることを特徴とする立体視可能な印刷物。
【請求項2】
前記第1の画像中の図柄と対を成す前記第2の画像中の図柄の中心と、該第2の画像中の図柄と対を成す前記第1の画像中の図柄の中心とをずらして形成する前記所定距離は、1mm以上65mm以下であることを特徴とする請求項1記載の立体視可能な印刷物。
【請求項3】
基材上の少なくとも一部に印刷領域を有し、前記印刷領域に、二つの画像を備えて成る立体視可能な印刷物において、
前記画像は、複数の画像要素が隣接されて成り、
前記複数の画像要素は、それぞれ異なる画線群から構成されており、前記画線群は、光輝性材料を含むインキによって、盛り上がりのある形状で、特定の面積率の画線を特定の角度に複数配列して成り、
前記複数の画像要素は、第1の角度を有した画線を第1の面積率で複数配列した第1の画線群から成る第1の画像要素と、第1の角度を有した画線を第1の面積率と異なる第2の面積率で複数配列した第2の画線群から成る第2の画像要素と、前記第1の角度とは異なる第2の角度を有した画線を前記第2の面積率で複数配列した第3の画線群から成る第3の画像要素と、前記第2の角度を有した画線を前記第1の面積率で複数配列した第4の画線群から成る第4の画像要素とを備え、
前記少なくとも二つの画像は、少なくとも第1の画像及び第2の画像から成り、前記第1の画像は、画像部と背景部から成り、前記第2の画像は、画像部と背景部から成り、
前記第1の画像の画像部は、前記第2の画像要素と前記第3の画像要素から成り、前記第1の画像の背景部は、前記第1の画像要素と前記第4の画像要素から成り、前記第2の画像の画像部は、前記第3の画像要素と前記第4の画像要素から成り、前記第2の画像の背景部は、前記第1の画像要素と前記第2の画像要素から成り、
前記第1の画像要素は、前記第1の画像及び前記第2の画像の共有の背景部と成り、前記第3の画像要素は、前記第1の画像及び前記第2の画像の共有の画像部と成り、
前記第1の画像における画像部と前記第2の画像における画像部は、少なくとも一つの対を成す略同一の図柄を備え
前記第1の画像中と前記第2の画像内に備えられた前記一つの対を成す図柄同士は、各々の図柄の中心を合わせて形成されるか又は各々の図柄の中心を左右方向に所定距離ずらして形成され、
観察者の一方の目を正反射光が支配的な観察角度領域に置き、他方の目を拡散反射光が支配的な観察角度領域に置いて観察した場合、前記第1の画像と前記第2の画像が絶縁表示され、両眼視差により立体画像を視認することができることを特徴とする立体視可能な印刷物。
【請求項4】
前記第1の画像中の図柄と対を成す前記第2の画像中の図柄の中心と、該第2の画像中の図柄と対を成す前記第1の画像中の図柄の中心とを合わせて形成するか、又はずらして形成する場合の前記所定距離は、1mm以上65mm以下であることを特徴とする請求項3の立体視可能な印刷物。
【請求項5】
前記複数の画像要素において、前記第1の画像及び前記第2の画像の階調の数をnとした場合、前記画像要素の数は、n種類で形成されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の立体視可能な印刷物。
【請求項6】
前記特定の面積率は、100%を除く30%以上であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の立体視可能な印刷物。
【請求項7】
前記第1の面積率と前記第2の面積率の差異は、前記画線群を構成する前記画線における画線幅の太細、画線の粗密のいずれか、又はその両方によって形成されることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の立体視可能な印刷物。
【請求項8】
前記第1の画像の画像部における面積率と前記第1の画像の背景部における面積率の差は、5%以上30%以下であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の立体視可能な印刷物。
【請求項9】
前記第1の角度と前記第2の角度の差は、15度以上90度以下であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の立体視可能な印刷物。
【請求項10】
前記画線群を構成する前記画線におけるピッチは、10μm以上1mm以下であることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載の立体視可能な印刷物。
【請求項11】
前記光輝性材料を含むインキによる画線の盛り上がりの高さは、2μm以上10μm以下であることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか一項に記載の立体視可能な印刷物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【公開番号】特開2010−264658(P2010−264658A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−117836(P2009−117836)
【出願日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【出願人】(303017679)独立行政法人 国立印刷局 (471)
【Fターム(参考)】