説明

竪型鋳造機

【課題】金型を型締め位置から型開閉位置に移動させる竪型鋳造機において、装置全体の小型化を図ると共に、押湯を行うことができるようにしてそのメンテナンス性も優れたものにする。
【解決手段】並設された型締め装置と型開閉装置との間を金型が往復動する構成とされ、該金型には、型締め装置に設けられた押圧手段によって下方に押し下げられて溶湯を押湯する加圧ロッド40と、押し下げられた加圧ロッド40を上方に戻すための復帰シリンダ43が設けられ、該復帰シリンダ43と加圧ロッド40が可動型の上面から上方に一体的に取り外しできるようにユニット取付板42を介して可動型の天板63に着脱可能に取り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、型締めの方向が上下方向である竪型鋳造機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の竪型鋳造機としては、下記特許文献1のように、押圧シリンダによって押圧ピンを上下に摺動自在とし、該押圧ピンでキャビティ内の溶湯を押湯するようにしたものが公知である。即ち、下記特許文献1の竪型鋳造機では、下面に可動型が取り付けられて型開閉シリンダによって上下するトッププレート上に押圧シリンダを設け、該押圧シリンダのピストンロッドに押圧ピンを取り付けて上下動可能とし、該押圧ピンの下端部を下降させることで溶湯を押湯してキャビティ全体に溶湯が確実に行き渡るようにしている。
【0003】
その一方、下記特許文献2のように、型開閉装置と金型を型締め位置から型開閉位置に移動させる構成についても公知である。即ち、該特許文献2の竪型鋳造機では、金型を型開閉装置と共に台車に載せて型開閉位置から水平に移動させて型締め装置に送り込んで射出、型締めを行い、その後、再び型開閉位置まで戻して型開きを行うようにしている。
【0004】
しかしながら、後者の竪型鋳造機は型開閉装置を台車に載せる構造であるので装置全体が複雑大型化し、設備費が高くなるという問題がある。更に、後者の竪型鋳造機に前者のような押圧ピンの構造を採用することも困難である。即ち、型開閉装置をスライドさせる構造であるので、押圧ピンを型締め装置に設けることはできない。また、押圧ピンを仮に型開閉装置に設けると、型開閉装置と共に押圧ピンの構造も移動させる必要があり、装置全体が更に複雑大型化することになって事実上不可能である。
【0005】
そこで、型開閉装置を移動させずに型締め装置の隣に設置して金型のみを台車で移動させることが考えられる。このように金型のみを移動させるようにすると移動機構が小型簡素化され、装置全体の複雑大型化を避けることができる。しかしながら、押湯を行うための押湯ロッド(押圧ピン)が型締め装置と金型に分断されることになる。即ち、押湯ロッドが型締め装置側の押圧ロッドと金型側の加圧ロッドとに上下分離した構造となり、そのため、押圧ロッドで押し下げられた加圧ロッドを元の位置まで上昇させるための復帰シリンダが必要となる。該復帰シリンダは加圧ロッドと共に可動型内に設けられることになるが、復帰シリンダと加圧ロッドは可動部分であるので、修理、交換等のメンテナンスが必要であり、メンテナンス性に優れた構造が求められることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭63−140747号公報
【特許文献2】実開平1−80253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
それゆえに本発明は上記従来の問題点に鑑みてなされ、金型を型締め位置から型開閉位置に移動させる竪型鋳造機において、装置全体の小型化を図ると共に、押湯を行うことができるようにしてそのメンテナンス性も優れたものにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記課題を解決すべくなされたものであって、本発明に係る竪型鋳造機は、並設された型締め装置と型開閉装置との間を金型が往復動する構成とされ、該金型には、型締め装置に設けられた押圧手段によって下方に押し下げられて溶湯を押湯する加圧ロッドと、押し下げられた加圧ロッドを上方に戻すための復帰シリンダが設けられ、該復帰シリンダと加圧ロッドが可動型の上面から上方に一体的に取り外しできるようにユニット取付部材を介して可動型に着脱可能に取り付けられていることを特徴とする。
【0009】
該構成の竪型鋳造機にあっては、型締め装置と型開閉装置が並設され、その間を金型が移動するように構成されているので、型開閉装置は移動させる必要がなく、金型のみを容易に移動させることができる。また、金型に設けられた加圧ロッドを型締め装置に設けた押圧手段によって押し下げることで、溶湯を押湯することができ、その後、金型に設けられた復帰シリンダで加圧ロッドを元の位置まで上昇させることができる。そして、復帰シリンダと加圧ロッドがユニット取付部材を介して可動型に着脱可能に取り付けられているので、復帰シリンダと加圧ロッドを可動型の上面から上方に一体的に取り外すことができる。従って、可動型を分解することなくその上面から復帰シリンダと加圧ロッドを取り外して、復帰シリンダや加圧ロッドの交換、修理を容易に行うことができる。
【0010】
特に、加圧ロッドの両側に該加圧ロッドと平行に復帰シリンダがそれぞれ配置され、両復帰シリンダのピストンと加圧ロッドを接続する接続部材が設けられ、両復帰シリンダと加圧ロッドと接続部材が一体的に取り外し可能に構成されていることが好ましい。両復帰シリンダの駆動力が接続部材を介して加圧ロッドに付与されるので、加圧ロッドが両側から駆動力を受けて元の位置までスムーズに上昇する。そして、それらの部材を可動型から上方に一体的に取り外すことができるので、復帰シリンダを複数設けていてもそのメンテナンスは簡単である。
【0011】
また、復帰シリンダのピストンと加圧ロッドを接続する接続部材が設けられ、該接続部材が加圧ロッドにネジ止めされ、加圧ロッドの可動型の上面からの突出を防止すべく加圧ロッドの被係止部を上側から係止可能な係止部がユニット取付部材に設けられていることが好ましい。接続部材と加圧ロッドがネジ止めされた構成の場合、万一、繰り返しの使用中にそのネジが緩んだり、あるいは最悪のケースとしてネジが折れたりすると、可動型の上面から加圧ロッドが上方に突出する可能性がある。仮に加圧ロッドが可動型の上面から突出すると、型締め装置と型開閉装置との間で金型を移動させる際に装置や金型に大きなダメージが生じることになる。そのために、加圧ロッドに被係止部を設けると共にユニット取付部材に係止部を設けて、加圧ロッドの被係止部を係止部で上側から係止できるようにしておくことが好ましく、万一使用中にネジが緩んだり破損したりしても、ユニット取付部材の係止部が加圧ロッドの被係止部を上側から係止してその突出を阻止するので、金型の移動が妨げられず、装置や金型の大きな損傷を未然に防止することが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、型開閉装置を移動させずに金型のみを移動させる構成であるので装置全体を小型簡素化でき、加圧ロッドによって押湯することができると共に、その加圧ロッドと復帰シリンダをセットで上方に取り外す構成であるので、それらをメンテナンスする際に金型を分解する必要がなく、メンテナンス性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態における竪型鋳造機を示す概略平面図。
【図2】同実施形態における竪型鋳造機の一部断面を含む概略正面図。
【図3】図2のA−A断面図であって、金型をクランプする前の状態を示す。
【図4】図2のA−A断面図であって、金型をクランプした型閉じの状態を示す。
【図5】図2のA−A断面図であって、型開きして鋳造品を取り出す時の状態を示す。
【図6】同実施形態における竪型鋳造機において可動型の上部構成を下側から見た図。
【図7】図6のB−B断面図。
【図8】図6のC−C断面図。
【図9】同実施形態における竪型鋳造機において溶湯を加圧した状態を示す要部断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態にかかる竪型鋳造機について図1〜図9を参酌しつつ説明する。本実施形態における竪型鋳造機は、ダイカストに適したものであって、図1及び図2に示す如く、一直線状のレール1に沿って型開閉装置3と型締め装置2が所定の間隔をあけて並設されたものである。図1及び図2において左側から順に金型交換位置100、型開閉位置101、型締め位置102であって、型開閉位置101と型締め位置102にそれぞれ型開閉装置3と型締め装置2が配置され、金型4はレール1を走行する台車5に載置されて各位置に移動することができる。通常、金型4は、図2に二点鎖線で示すように型開閉位置101と型締め位置102との間を往復動し、型締め位置102において溶湯が射出され、それが凝固した後に型開閉装置3へと移動し、型開閉位置101において製品が取り出されて再び型締め位置102へと移動する。尚、台車5を移動するための駆動装置については図示が省略されている。
【0015】
型締め装置2は、レール1の下側に射出装置20を備え、後述するスリーブ72を介して溶湯を射出する。また、上部には図示しない型締めシリンダによって上下する型締めプレート21を備えている。該型締めプレート21は、金型4の出し入れ時には図2の実線のように上方に退避し、型締め時には同図の二点鎖線のように下降して型締めを行う。
【0016】
型開閉装置3は、金型4をクランプするダイクランプ装置30,31を備えている。具体的には、図1に示すように、ダイクランプ装置30,31はレール1の両側に位置してレール1を横断する方向に出退して金型4をクランプ及びその解除を行う。金型4は上側の可動型6と下側の固定型7から構成されるので、図3乃至図5にも示すように可動型6をクランプするための上部ダイクランプ装置30と固定型7をクランプするための下部ダイクランプ装置31を備えている。下部ダイクランプ装置31は位置不動であるが、上部ダイクランプ30は、開閉ガイド軸32にガイドされながら図示しない型開閉シリンダによって上下動するムービングプレート33の下面に取り付けられて該ムービングプレート33と共に上下動する。従って、上部ダイクランプ装置30によって可動型6がクランプされることで、可動型6はムービングプレート33と共に上下動し、これによって型開き動作と型閉じ動作が行われる。
【0017】
図3は金型4がクランプされていない状態を示しており、ムービングプレート33は上方に待機した状態にある。そして、図4のように、ムービングプレート33が下降して上部ダイクランプ装置30と下部ダイクランプ装置31がそれぞれ可動型6と固定型7をクランプする。その状態から図5のようにムービングプレート33が上昇して型開きとなって製品の取り出しが行われる。
【0018】
ここで、金型4は、上述したように可動型6と固定型7から構成され、固定型7は固定ホルダー70と固定ダイス71(下型本体)とを備えていて、それらをスリーブ72が挿通すると共に該スリーブ72の下側にはロケートリング73が配置されている。可動型6は、可動ダイス61と可動ホルダー60と該可動ホルダー60の上側に取り付けられたエジェクターボックス62とを備えている。固定ダイス71と可動ダイス61との間に、製品を鋳造するためのキャビティ8が形成されている。該キャビティ8は図8及び図9においてクロスハッチングが施された部分であり、溶湯はビスケット部10からランナー9を介してキャビティ8へと流れていく。また、エジェクターボックス62は、天板63(かさ板)と側壁64とを備えて、天板63は可動ホルダー60の上面との間に空間を形成するように該上面から所定距離上方に位置し、該天板63が上部ダイクランプ装置30にクランプされる。該天板63の下面にはピン板シリンダ65が取り付けられ、該ピン板シリンダ65によってピン板66が吊り下げ支持されている。該ピン板66の上面には中間ピン67が取り付けられ、該中間ピン67は、トッププレート34に吊り下げ固定された待機ピン35と同軸に位置している。待機ピン35は、ムービングプレート33と天板63の孔を通ってそれらを上下に貫通できるようになっていて、図5のようにムービングプレート33と共に可動型6が上昇してくると、待機ピン35の下端が中間ピン67の上端に当接し、中間ピン67を介してピン板66が下方に押される。ピン板66は、可動ホルダー60から上方に突出している押し出しピン68を下方に押し下げ、該押し出しピン68が製品を押し下げることで可動ダイス61から製品が離反する。尚、押し下げられたピン板66はピン板シリンダ65によって元の位置まで上昇する。
【0019】
次に、押湯するための構造について図6〜図9を参酌しつつ説明する。竪型鋳造機は、型締め位置102において溶湯を押湯(加圧)すべく昇降自在な押湯ロッドを備えている。押湯ロッドは、上下方向の軸線を有していて、型締め装置2に設けられた押圧ロッド22(上部ロッド)と金型4に設けられて押圧ロッド22により押し下げられる加圧ロッド40(下部ロッド)に上下分離した構造である。即ち、型締めプレート21の上面には押圧シリンダ23が取り付けられ、該押圧シリンダ23のピストン(図示省略)に、図8及び図9に二点鎖線にて示す押圧ロッド22が取り付けられていて、押圧シリンダ23のピストンが昇降することによって押圧ロッド22も昇降する。押圧ロッド22の下端部は型締めプレート21の下面から出入し、加圧前においては型締めプレート21の下面と略面一であって下方には突出せず、加圧時には型締めプレート21の下面から所定量下方に突出して図9のように加圧ロッド40の上端面を下方に押す。かかる押圧シリンダ23と押圧ロッド22が、金型4の加圧ロッド40を下方に押し下げるための押圧手段を構成する。
【0020】
型締め装置2の押圧ロッド22によって押し下げられる加圧ロッド40は可動型6の内部に設けられている。加圧ロッド40の取付構造について説明すると、エジェクターボックス62の天板63の略中央には図6のようにメンテナンス用開口部41が上下に貫通して形成されている。該メンテナンス用開口部41は、略矩形具体的には略長方形状の主部41aと、該主部41aの短辺側の壁面から天板63の側面まで達する連通部41bと、主部41aの長辺側の壁面からL字状に伸びる延長部41cとから構成されている。そして、メンテナンス用開口部41の主部41aの大部分を上側から覆うようにして天板63にユニット取付板42(ユニット取付部材)が取り付けられている。該ユニット取付板42は、略長方形状であってその上面が天板63の上面と略面一となるようにして天板63に上側からボルト80によりネジ止めされている。該ユニット取付板42の略中央には略矩形の押圧用開口部42aが上下に貫通して形成されており、該押圧用開口部42aを加圧ロッド40が挿通している。加圧ロッド40は、図8に示す加圧前の状態ではその上端面が天板63の上面(可動型6の上面)と略面一あるいはそれより僅かに下方に位置していて上方には突出せず、図9に示す加圧時には押圧ロッド22によって天板63の上面から所定量下方に押し下げられる。
【0021】
また、ユニット取付板42には、押し下げられた加圧ロッド40を元の高さまで戻すための復帰シリンダ43が取り付けられている。該復帰シリンダ43はそのピストンロッド43aの先端が下側を向くようにしてユニット取付板42の下面に取り付けられている。より詳細には、復帰シリンダ43は加圧ロッド40を中心としてその両側に左右対称に配置されていて加圧ロッド40と平行となっている。そして、両復帰シリンダ43のピストンロッド43aを左右に連結するように接続板44(接続部材)が設けられている。該接続板44は、両復帰シリンダ43のピストンロッド43aの先端即ち下端にそれぞれボルト43bを下側から螺着することによって両ピストンロッド43aに連結されて、両ピストンロッド43aを水平方向に架橋するように連結一体化している。尚、復帰シリンダ43は油圧制御の構造であって、両復帰シリンダ43には油圧配管45,46がそれぞれ水平方向に着脱可能に接続されている。一方の油圧配管45は、メンテナンス用開口部41の連通部41bの下方に位置していて該連通部41bを上方に通過可能である。他方の油圧配管46は、メンテナンス用開口部41の延長部41cの下方に位置すると共に該延長部41cに合わせてL字継ぎ手46aを介してL字状に形成され、復帰シリンダ43側の部分が延長部41cを介して天板63から上方に持ち上げられるようになっている。
【0022】
また、図6及び図8のように、ユニット取付板42の下面にはガイドピン47が合計四本取り付けられている。該ガイドピン47は可動ホルダー60の上面まで達していて、その先端部47aが可動ホルダー60の凹部60aに係合することで水平方向の位置決めがなされると共に、ユニット取付板42と可動ホルダー60で上下に狭持されている。該ガイドピン47が接続板44を上下に貫通していて接続板44の上下動のガイドとなっている。尚、接続板44の下面にはガイドブッシュ48が取り付けられ、ガイドピン47の中途部にはストッパー部47bが設けられていて、図9のように加圧時においてガイドブッシュ48が上方からストッパー部47bに当接して、接続板44のそれ以上の下降が阻止されるようになっている。また、図7に示すように、接続板44が上方に戻ったことを検知するためのリミットスイッチ49がユニット取付板42に上側から設けられている。
【0023】
かかる接続板44に加圧ロッド40が上側からネジ止めされている。図8及び図9のように加圧ロッド40の上部は複数のパーツから構成されており、加圧ロッド40は、加圧ロッド40の大部分を構成している主軸50の上部に形成された鍔部を上下から挟み込む上部リング51と下部リング52を備えると共に、上部リング51の上側に位置する上部エンド部材53を備えており、該上部エンド部材53の上面が加圧ロッド40の上端面となっている。一方、接続板44の略中央にはロッド挿通孔44aが上下に貫通して形成されており、該ロッド挿通孔44aを加圧ロッド40の主軸50が隙間を有して挿通している。そして、図8のように、接続板44の上面におけるロッド挿通孔44aの開口縁部に、下部リング52を介して上部リング51が上側からボルト81でネジ止めされており、更にその上部リング51の上面に上部エンド部材53が上側からボルト82でネジ止めされている。即ち、主軸50はロッド挿通孔44aよりも細く、上部リング51や下部リング52はロッド挿通孔44aよりも太く形成されている。
【0024】
更に、上部エンド部材53の周面には側方に突出する抜け止めフランジ53a(被係止部)が形成されており、該抜け止めフランジ53aを上側から係止して加圧ロッド40の上方への抜けを防止するための抜け止め板54(係止部材)がユニット取付板42に上側からボルト83によってネジ止めされている。該抜け止め板54は例えば平面視略矩形であってその中央には貫通孔が形成されており、該貫通孔から上部エンド部材53の上面即ち加圧ロッド40の上端面が表出している。
【0025】
一方、加圧ロッド40の下部も複数のパーツから構成されている。主軸50の下端部にはアダプター55が同軸状に接続され、主軸50の下部外周面とアダプター55の外周面を覆うように筒状の加圧ホルダー56が装着されている。該加圧ホルダー56は可動ホルダー60と摺動する部分をその上部に有し、加圧ホルダー56の下部外周面には、下面が加圧ロッド40の下端面となる有底筒状の湯口エンド部材57が装着され、該湯口エンド部材57の外周面が可動ダイス61に別部材として装着されている筒状の湯押さえ69の内周面と摺動する。また、加圧ホルダー56は主軸50よりも大径となっているが、上述した接続板44のロッド挿通孔44aより若干細く、従って、加圧ホルダー56はロッド挿通孔44aを挿通可能なサイズである。尚、加圧ロッド40には冷却水が流れる冷却パイプ58が通っており、これによって特に湯口近傍が冷却される。更には、ユニット取付板42の押圧用開口部42aは、上部エンド部材53よりも大きく、また、上部リング51や下部リング52よりも大きい。従って、冷却パイプ58に接続されている図示しない冷却水配管を冷却パイプ58から外すと、ユニット取付板42の押圧用開口部42aから上部エンド部材53を抜き、上部リング51や下部リング52と共に主軸50等を押圧用開口部42aから取り外すことができる。
【0026】
以上のように構成された竪型鋳造機は、レール1上の金型交換位置100において台車5に金型4がセットされ、その後は、型締め位置102と型開閉位置101との間を金型4が台車5と共に往復する。金型4が型締め装置2に送られてくると、型締めプレート21が下降して型締めが行われて射出装置20から溶湯が射出され、その後、押圧シリンダ23が作動して押圧ロッド22を下降させる。押圧ロッド22の下端部は加圧ロッド40を押し下げながら図9のように金型4内に所定量進入し、加圧ロッド40の下端部がビスケット部10内に進入して押湯が行われる。尚、図9には加圧ロッド40がスリーブ72内に進入した状態を示しているが、これは押湯の後に更にビスケットを切断する場合であり、このビスケット切断を行わない場合には、加圧ロッド40はスリーブ72内には進入せずに可動ダイス61と固定ダイス71の境界面の高さで停止する。その後、押圧シリンダ23によって押圧ロッド22が元の位置まで上昇し、それと連動して両復帰シリンダ43が作動して接続板44を介して加圧ロッド40を元の位置まで上昇させる。その際、復帰シリンダ43が加圧ロッド40の両側に一対設けられていて且つ対称位置にあるので、加圧ロッド40がスムーズに上昇する。そして、型締めプレート21が上昇して型締めが解除されると、台車5は型締め装置2から型開閉装置3に移動する。
【0027】
図3のように金型4が型開閉装置3に送られてくると、上方に待機していたムービングプレート33が所定位置まで下降して、図4のように上部ダイクランプ装置30と下部ダイクランプ装置31が内側に向けて水平方向に突出して可動型6と固定型7をクランプする。そして、ムービングプレート33が上昇して可動型6を固定型7から上方に離反させ、図5のようにトッププレート34から吊下している待機ピン35がムービングプレート33と天板63を下方に貫通して中間ピン67に当接し、ムービングプレート33の上昇に合わせてピン板66が押し下げられて製品を可動ダイス61から離反させ、型開き動作が終了する。製品の取り出しが終わるとムービングプレート33が下降を開始し、それと同時にピン板シリンダ65が作動してピン板66を元の高さまで上昇させていく。ムービングプレート33が元の高さまで下降して型閉じ動作が終了すると、上部ダイクランプ装置30と下部ダイクランプ装置31が外側に向けて退いてクランプを解除し、金型4は再び型締め装置2へと送られる。
【0028】
以上の動作を繰り返しながら連続的な鋳造を行うのであるが、型開閉装置3は固定配置であって金型4のみを台車5で移動させる構造であるので、装置全体を小型、簡素化することができる。また、万一、使用中に接続板44と加圧ロッド40を連結しているボルト81が緩んだり、最悪のケースとしてボルト81が折れたりしたとしても、抜け止め板54が加圧ロッド40の抜け止めフランジ53aを上側から係止するので、加圧ロッド40が天板63から上方に突出するおそれがない。特に、作業性を考慮してボルト81が加圧ロッド40の軸線方向に沿う構成としているので、ボルト81が緩むと加圧ロッド40が上下にがたつきやすいが、抜け止め板54を設けているので加圧ロッド40の上方への突出を確実に阻止することができる。
【0029】
そして、型開閉位置101とは別に金型交換位置100を設けているので、定期的あるいは不定期に金型4のメンテナンスを行う際には、金型4を金型交換位置100に移動させて行うことができる。金型交換位置100においては上方が開放空間となっているので、上方からメンテナンス作業を容易に行うことができる。このメンテナンスにおいては、ユニット取付板42がエジェクターボックス62の天板63に取り付けられているので、上方から容易にユニット取付板42の着脱作業を行うことができる。ユニット取付板42を固定しているボルト80を緩めてユニット取付板42を天板63から上方に取り外すことができるが、それと共に加圧ロッド40と両復帰シリンダ43をセットで上方に引き抜くようにして取り外すことができる。即ち、ユニット取付板42に直接的あるいは間接的に取り付けられている部材全てを一纏めにして、天板63のメンテナンス用開口部41から上方に取り外すことができる。従って、接続板44や四本のガイドピン47、リミットスイッチ49も加圧ロッド40や復帰シリンダ43と共に上方に取り外すことができる。尚、復帰シリンダ43の外周面に接続されている油圧配管45,46については、まず一方の油圧配管45は復帰シリンダ43に接続された状態のままでメンテナンス用開口部41の連通部41bから上方に持ち上げて、天板63の上方において復帰シリンダ43から外す。また、他方の油圧配管46については、L字継ぎ手46aを支点として油圧配管46を少しの角度回転させるようにしながら、復帰シリンダ43に接続された状態のままでメンテナンス用開口部41の延長部41cから上方に持ち上げて、復帰シリンダ43との接続を外す。このように加圧ロッド40の関係部品を天板63から上方にまとめて取り外すことができるので、金型4を分解する手間がなくなり、楽にメンテナンスを行うことができる。
【0030】
更に、そのように加圧ロッド40や復帰シリンダ43を一つのユニットとして取り外した後に、加圧ロッド40を交換したい場合には次のように行う。即ち、ユニット取付板42から抜け止め板54を取り外し、ユニット取付板42の押圧用開口部42aから上部エンド部材53を固定しているボルト82を緩めて上部エンド部材53を取り出す。上部エンド部材53を外すと接続板44に上部リング51等を固定しているボルト81が露出するので、押圧用開口部42aからボルト81を緩めて接続板44と加圧ロッド40との連結を解除する。そして、図示しない冷却水配管を冷却パイプ58から外して、接続板44のロッド挿通孔44aを通過させながら加圧ロッド40を上方に抜き上げることができる。このように、復帰シリンダ43等をユニット取付板42から取り外すことなく、加圧ロッド40のみを取り外して修理、交換することができ、メンテナンス性に優れている。
【0031】
尚、本実施形態では、復帰シリンダ43を一対設けたが、個数は任意であって三つ以上でも一つでもよい。また、復帰シリンダ43を下向きに配置して接続板44を介して加圧ロッド40を上方に引き上げるように構成したが、復帰シリンダ43を上向きに配置して加圧ロッド40を上方に押し上げるように構成してもよい。但し、復帰シリンダ43を下向き配置とすればユニット取付板42の下面に取り付けることができてユニット全体の構造をシンプルにすることができる。また更に、復帰シリンダ43のピストンロッド43aに接続板44をボルト43bによって締結一体化しているが、ピストンロッド43aの先端にフランジとなる部分を設けて該部分で接続板44を吊り下げ支持するように構成し、押圧ロッド22によって押し下げられた加圧ロッド40を接続板44で元の位置まで引き上げるようにしてもよい。
【0032】
また、抜け止め板54の形状、構造も適宜設計変更可能であって、上述したような略矩形ではなく環状としもよく、複数の部材から構成してもよい。また、抜け止め板54で抜け止めフランジ53aを全周に亘って係止するのではなく、周方向に間隔をあけた複数箇所を係止するようにしてもよく、各箇所毎に抜け止め板54を設けてもよい。抜け止めフランジ53aも全周ではなく部分的に形成されていてもよい。更に、被係止部としての抜け止めフランジ53aを係止する係止部として抜け止め板54を設けたが、板状のものには限られない。また、ユニット取付板42とは別体構成の係止部材ではなく、ユニット取付板42に係止部が一体的に形成されていてもよい。同様に、被係止部としての抜け止めフランジ53aを加圧ロッド40に一体的に形成していたが、被係止部を別部材の構成としてもよい。
【符号の説明】
【0033】
1 レール
2 型締め装置
3 型開閉装置
4 金型
5 台車
6 可動型
7 固定型
8 キャビティ
9 ランナー
10 ビスケット部
20 射出装置
21 型締めプレート
22 押圧ロッド(押圧手段)
23 押圧シリンダ(押圧手段)
30 上部ダイクランプ装置
31 下部ダイクランプ装置
32 開閉ガイド軸
33 ムービングプレート
34 トッププレート
35 待機ピン
40 加圧ロッド
41 メンテナンス用開口部
41a 主部
41b 連通部
41c 延長部
42 ユニット取付板(ユニット取付部材)
42a 押圧用開口部
43 復帰シリンダ
43a ピストンロッド
43b ボルト
44 接続板(接続部材)
44a ロッド挿通孔
45 油圧配管
46 油圧配管
46a L字継ぎ手
47 ガイドピン
47a 先端部
47b ストッパー部
48 ガイドブッシュ
49 リミットスイッチ
50 主軸
51 上部リング
52 下部リング
53 上部エンド部材
53a 抜け止めフランジ
54 抜け止め板
55 アダプター
56 加圧ホルダー
57 湯口エンド部材
58 冷却パイプ
60 可動ホルダー
60a 凹部
61 可動ダイス
62 エジェクターボックス
63 天板
64 側壁
65 ピン板シリンダ
66 ピン板
67 中間ピン
68 押し出しピン
69 湯押さえ
70 固定ホルダー
71 固定ダイス
72 スリーブ
73 ロケートリング
80 ボルト
81 ボルト
82 ボルト(ネジ)
83 ボルト
100 金型交換位置
101 型開閉位置
102 型締め位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
並設された型締め装置と型開閉装置との間を金型が往復動する構成とされ、該金型には、型締め装置に設けられた押圧手段によって下方に押し下げられて溶湯を押湯する加圧ロッドと、押し下げられた加圧ロッドを上方に戻すための復帰シリンダが設けられ、該復帰シリンダと加圧ロッドが可動型の上面から上方に一体的に取り外しできるようにユニット取付部材を介して可動型に着脱可能に取り付けられていることを特徴とする竪型鋳造機。
【請求項2】
加圧ロッドの両側に該加圧ロッドと平行に復帰シリンダがそれぞれ配置され、両復帰シリンダのピストンと加圧ロッドを接続する接続部材が設けられ、両復帰シリンダと加圧ロッドと接続部材が一体的に取り外し可能に構成されている請求項1記載の竪型鋳造機。
【請求項3】
復帰シリンダのピストンと加圧ロッドを接続する接続部材が設けられ、該接続部材が加圧ロッドにネジ止めされ、加圧ロッドの可動型の上面からの突出を防止すべく加圧ロッドの被係止部を上側から係止可能な係止部がユニット取付部材に設けられている請求項1記載の竪型鋳造機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−194404(P2011−194404A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−60424(P2010−60424)
【出願日】平成22年3月17日(2010.3.17)
【出願人】(000006943)リョービ株式会社 (471)