説明

端子半挿入検知構造

【課題】端子金具の半挿入に起因したコネクタハウジング側のランスの撓み変位量の大小やランスの成形歪みに拘わらず、確実に半挿入の有無を検知することができ、半挿入の検知性能を向上させることができる端子半挿入検知構造を提供すること。
【解決手段】コネクタハウジング21のランス撓み空間24に挿入されるランスチェックピン32の先端部は、基端側に位置する基端側板部41と、基端側板部41の先端から延出すると共に基端側板部41よりも板厚が薄く設定されて基端側板部41の先端に段差41aを形成する先端側板部42と、を備え、先端側板部42の先端面42aは、ランス23の撓み変位量が想定変位量よりも大きい場合にランスチェックピン32のランス撓み空間24への進入を阻止し、基端側板部41の段差41aとなっている面は、ランス23の撓み変位量が想定変位量よりも小さいときにランス23の先端に当接して当該ランスチェックピン32のランス撓み空間24への進入を阻止する端子半挿入検知構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子金具が装着されたコネクタハウジングの前端に半挿入検知用治具を装着して、前記コネクタハウジング内の端子金具が半挿入状態であるか否かを検知する端子半挿入検知構造に関する。
【背景技術】
【0002】
図8は、従来の端子半挿入検知構造を示したものである。
この端子半挿入検知構造は、下記特許文献1に開示されたもので、雌型の端子金具101が装着されたコネクタハウジング111の前端に半挿入検知用治具121を嵌合装着して、コネクタハウジング111内の端子金具101が半挿入状態であるか否かを検知する。
【0003】
コネクタハウジング111は、端子金具101が挿入される端子収容孔112と、端子収容孔112に突出する係止突起113aを備えるランス113と、ランス撓み空間114と、ランス位置チェック用孔115と、を備える。
【0004】
ランス113は、端子金具101の挿入方向(図8の矢印X1方向)に沿ってコネクタハウジング111の基端側から延出した弾性片113bの先端に、係止突起113aを備えた構成である。係止突起113aは、雌型の端子金具101の箱部102の後端の凹部103に係合することで、端子金具101の抜け止めを行う。
【0005】
ランス113は、端子収容孔112への端子金具101の挿入に伴い、係止突起113aが端子収容孔112の外に逃げるように撓み変位した後に、端子金具101が正規位置まで挿入されたときに撓み変位が戻って、係止突起113aにより端子金具101を抜け止め状態とする。
【0006】
ランス撓み空間114は、端子収容孔112の外側に形成されていて、端子金具101の挿入に伴うランス113の撓み変位を許容する。
【0007】
ランス位置チェック用孔115は、コネクタハウジング111の前端側から端子収容孔112の貫通方向に沿ってランス撓み空間114に連通している。
【0008】
コネクタハウジング111の前端に嵌合装着される半挿入検知用治具121は、ランス位置チェック用孔115に挿入されるランスチェックピン122と、導通ピン123と、を備える。ランスチェックピン122の先端部122aは、板厚tが一定の板状である。また、ランスチェックピン122の先端部122aの板厚は、図8では、ランス撓み空間114の高さ寸法hよりも僅かに小さいが、前記高さ寸法hに近い値に設定されている。導通ピン123は、ランスチェックピン122と平行に設けられており、ランスチェックピン122のランス位置チェック用孔115への進入に伴い端子収容孔112に進入する。
【0009】
以上に説明した端子半挿入検知構造では、端子金具101が正規位置に到達して、ランス113により正常に端子金具101が抜け止めされている端子完全挿入状態では、コネクタハウジング111の前端に嵌合装着された半挿入検知用治具121は、図8に示すように、ランスチェックピン122がランス113と干渉せずにランス撓み空間114に挿入され、同時に、導通ピン123が端子金具101の先端に当接して、導通ピン123と端子金具101とが電気的に接続された状態になる。従って、導通ピン123による導通チェックによって、端子金具101が端子完全挿入状態であることが判る。
【0010】
一方、コネクタハウジング111の端子収容孔112に挿入された端子金具101が、正規位置に到達しておらず、ランス113がランス撓み空間114に撓み変位している状態では、コネクタハウジング111の前端に半挿入検知用治具121が嵌合装着されたとき、ランスチェックピン122の先端がランス113の先端に衝突して、ランスチェックピン122のランス位置チェック用孔115への進入が途中で止まってしまう。
【0011】
従って、ランスチェックピン122のランス位置チェック用孔115への進入が不足して、導通ピン123と端子金具101との接触が得られなくなることで、端子金具101が半挿入状態であることが検知される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平7−161429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところで、コネクタハウジング111におけるランス113の先端部の位置は、端子金具101が端子完全挿入状態であるにも拘わらず、成形歪み等で、僅かにランス撓み空間114側に撓んでいる場合がある。
【0014】
そのため、図8に示したように、先端部122aの板厚tが、ランス撓み空間114の高さ寸法hに略等しく設定されていると、先端部122aがランス撓み空間114に進入する際に、成形歪み等でランス撓み空間114側に垂れているランス113の先端部に、先端部122aの上端角部122bが干渉して、ランスチェックピン122の挿入が阻止され、端子金具101が半挿入状態であると誤検出されてしまう場合がある。
【0015】
そこで、実際は、先端部122aの板厚は、図8に破線で示すように、ランス113の成形歪み分を見越して、ランス撓み空間114の高さ寸法hよりも一定以上小さい板厚t1に設定される。
【0016】
一方、端子金具101の半挿入に起因したランス113のランス撓み空間114側への撓み変位量も、端子金具101の寸法誤差等により、変動が生じる。そのため、先端部122aの実際の板厚t1と高さ寸法hとの差が大きく、且つ、端子金具101の半挿入に起因したランスの撓み変位量が小さい場合には、先端部122aがランス113の先端に干渉せずにランス撓み空間114に進入してしまい、半挿入状態が検知できなくなるおそれがあった。
【0017】
即ち、先端部122aの板厚が一定の従来のランスチェックピン122の構造では、先端部の板厚t1の設定によっては、ランス113の撓み変位量のばらつきや、ランス113の成形歪みの影響で、半挿入の検知性能が低下するおそれがあった。
【0018】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解消することに係り、端子金具の半挿入に起因したコネクタハウジング側のランスの撓み変位量の大小やランスの成形歪みに拘わらず、確実に半挿入の有無を検知することができ、半挿入の検知性能を向上させることができる端子半挿入検知構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の前述した目的は、下記の構成により達成される。
(1)コネクタハウジングは、端子金具が挿入される端子収容孔と、前記端子収容孔に突出する係止突起を備えると共に前記端子収容孔への前記端子金具の挿入に伴い前記係止突起が前記端子収容孔の外に逃げるように撓み変位した後に前記端子金具が正規位置まで挿入されたときに撓み変位が戻って前記係止突起により前記端子金具を抜け止め状態とするランスと、前記ランスの撓み変位を許容するランス撓み空間と、前記コネクタハウジングの前端側から前記端子収容孔の貫通方向に沿って前記ランス撓み空間に連通したランス位置チェック用孔と、を備え、
前記コネクタハウジングの前端に嵌合装着される半挿入検知用治具は、前記ランス位置チェック用孔から前記ランス撓み空間に挿入されるランスチェックピンと、該ランスチェックピンと平行に設けられて、前記ランスチェックピンのランス位置チェック用孔への進入に伴い前記端子収容孔に進入する導通ピンとを備え、
前記端子金具が正規位置に到達しておらず、前記ランスが前記ランス撓み空間に撓み変位している状態では、前記ランスチェックピンのランス位置チェック用孔への進入が不足して、前記導通ピンと前記端子金具との接触が得られなくなることで、前記端子金具が半挿入状態であることを検知する端子半挿入検知構造であって、
前記ランス撓み空間に挿入される前記ランスチェックピンの先端部は、基端側に位置する基端側板部と、前記基端側板部の先端から延出すると共に前記基端側板部よりも板厚が薄く設定されて前記基端側板部の先端に段差を形成する先端側板部と、を備え、
前記先端側板部の先端面は、前記端子金具の半挿入に起因した前記ランスの前記ランス撓み空間への撓み変位量が想定変位量よりも大きい場合に前記ランスの先端に当接して当該ランスチェックピンのランス撓み空間への進入を阻止し、
前記基端側板部の先端の段差となっている面は、前記端子金具の半挿入に起因した前記ランスの前記ランス撓み空間への撓み変位量が想定変位量よりも小さい場合に前記ランスの先端に当接して当該ランスチェックピンのランス撓み空間への進入を阻止することを特徴とする端子半挿入検知構造。
【0020】
上記(1)の構成によれば、コネクタハウジングの前端側からランス撓み空間に挿入されるランスチェックピンの先端部は、一様な厚さではなく、板厚の異なる基端側板部と先端側板部とから構成されている。
【0021】
そして、板厚の薄い先端側板部の先端面は、端子金具の半挿入に起因したランスのランス撓み空間への撓み変位量が想定変位量よりも大きい場合にランスの先端に当接して当該ランスチェックピンのランス撓み空間への進入を阻止する。また、先端側板部と比して板厚の厚い基端側板部の先端の段差となっている面は、端子金具の半挿入に起因したランスのランス撓み空間への撓み変位量が想定変位量よりも小さい場合にランスの先端に当接して当該ランスチェックピンのランス撓み空間への進入を阻止する。
【0022】
従って、基端側板部の板厚を、ランスの成形歪み等よるランス撓み空間側への垂れを考慮して設定しておけば、端子金具の半挿入に起因したコネクタハウジング側のランスの撓み変位量の大小やランスの成形歪みに拘わらず、確実に半挿入の有無を検知することができ、半挿入の検知性能を向上させることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明による端子半挿入検知構造によれば、コネクタハウジングの前端側からランス撓み空間に挿入されるランスチェックピンの先端部は、板厚の異なる基端側板部と先端側板部とから構成されている。そして、板厚の薄い先端側板部の先端面は、端子金具の半挿入に起因したランスのランス撓み空間への撓み変位量が想定変位量よりも大きい場合にランスの先端に当接して当該ランスチェックピンのランス撓み空間への進入を阻止する。
【0024】
また、先端側板部と比して板厚の厚い基端側板部の先端の段差となっている面は、端子金具の半挿入に起因したランスのランス撓み空間への撓み変位量が想定変位量よりも小さい場合にランスの先端に当接して当該ランスチェックピンのランス撓み空間への進入を阻止する。
【0025】
従って、基端側板部の板厚を、ランスの成形歪み等よるランス撓み空間側への垂れを考慮して設定しておけば、端子金具の半挿入に起因したコネクタハウジング側のランスの撓み変位量の大小やランスの成形歪みに拘わらず、確実に半挿入の有無を検知することができ、半挿入の検知性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る端子半挿入検知構造で端子金具の装着状態が検知されるコネクタハウジングにおいて、端子金具が完全挿入状態である場合の端子収容孔の後面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】図2に示した半挿入検知用治具の拡大縦断面図である。
【図4】図2に示した端子収容孔に対して端子金具が半挿入状態になっており、且つ、端子金具の半挿入によってランスがランス撓み空間側へ大きく撓み変位している状態における端子収容孔の後面図である。
【図5】図4のB−B断面図である。
【図6】図2に示した端子収容孔に対して端子金具が半挿入状態になっており、且つ、端子金具の半挿入によってランスがランス撓み空間側へ小さく撓み変位している状態における端子収容孔の後面図である。
【図7】図6のC−C断面図である。
【図8】従来の端子半挿入検知構造の概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に係る端子半挿入検知構造の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0028】
図1〜図7は本発明に係る端子半挿入検知構造の一実施形態を示したもので、図1は本発明に係る端子半挿入検知構造で端子金具の装着状態が検知されるコネクタハウジングにおいて、端子金具が完全挿入状態である場合の端子収容孔の後面図、図2は図1のA−A断面図、図3は図2に示した半挿入検知用治具の拡大縦断面図、図4は図2に示した端子収容孔に対して端子金具が半挿入状態になっており、且つ、端子金具の半挿入によってランスがランス撓み空間側へ大きく撓み変位している状態における端子収容孔の後面図である。また、図5は図4のB−B断面図、図6は図2に示した端子収容孔に対して端子金具が半挿入状態になっており、且つ、端子金具の半挿入によってランスがランス撓み空間側へ小さく撓み変位している状態における端子収容孔の後面図、図7は図6のC−C断面図である。
【0029】
この一実施形態の端子半挿入検知構造は、図1及び図2に示すように、雌型の端子金具11が装着されたコネクタハウジング21の前端に半挿入検知用治具31を嵌合装着して、コネクタハウジング21内の端子金具11が半挿入状態であるか否かを検知する。
【0030】
端子金具11は、図1及び図2に示すように、不図示の雄型の端子金具の先端部が嵌合する箱部12と、被覆電線の外部被覆部を固定する被覆加締め片13と、被覆電線の導体部を圧着固定する導体加締め片14とを備えている。
【0031】
また、箱部12の前端には、後述する半挿入検知用治具31の導通ピンが当接する導通チェック面15が設けられている。更に、箱部12の後端には、後述するコネクタハウジング21内のランスが係合するランス係止部16が設けられている。
【0032】
コネクタハウジング21は、図1及び図2に示すように、端子金具11が挿入される端子収容孔22と、ランス23と、ランス撓み空間24と、ランス位置チェック用孔25と、を備える。
【0033】
本実施形態の場合、図2に示すように、コネクタハウジング21の後端(基端)に開放する端子収容孔22の後端側22aは、電線サイズにより大きさが決まり、前端側よりも広口に開口している。
【0034】
更に、端子収容孔22の先端部には、不図示の雄型の端子金具の先端部が挿通される端子挿通口22bと、後述の半挿入検知用治具31の導通ピンが挿通される導通ピン挿通口22cと、が形成されている。
【0035】
ランス23は、端子金具11の挿入方向(図2の矢印X2方向)に沿ってコネクタハウジング21の基端側から延出した弾性片23bと、端子収容孔22に突出するように弾性片23bの先端側に突設された係止突起23aと、を備えた構成である。
【0036】
このランス23は、図4及び図5に示すように、端子収容孔22への端子金具11の挿入に伴い係止突起23aが端子収容孔22の外に逃げるようにランス撓み空間24側に撓み変位して、端子金具11の挿入を許容する。そして、端子金具11が正規位置まで挿入されたときには、図2に示すように、係止突起23aがランス係止部16に係合することで撓み変位が戻って、係止突起23aにより端子金具11を抜け止め状態とする。係止突起23aは、雌型の端子金具11の箱部12の後端のランス係止部16に係合することで、端子金具11の抜け止めを行う。
【0037】
ランス撓み空間24は、端子収容孔22の外側に並走状態に形成されていて、端子金具11の挿入に伴うランス23の撓み変位を許容する。
【0038】
ランス位置チェック用孔25は、コネクタハウジング21の前端側から端子収容孔22の貫通方向に沿ってランス撓み空間24に連通している。
【0039】
半挿入検知用治具31は、図2及び図3に示すように、ランスチェックピン32と、導通ピン33と、を備える。
【0040】
ランスチェックピン32は、ランス位置チェック用孔25に挿入される板状且つ棒状の部材で、端子金具11が正規位置に到達しておらず、図5又は図7に示すように、ランス23がランス撓み空間24に撓み変位している状態では、先端部32aがランス23に突き当たって、ランス位置チェック用孔25への挿入が途中で止まる。また、ランスチェックピン32は、端子金具11が完全挿入状態になっていて、ランス23がランス撓み空間24に撓み変位していない状態では、図2に示すように、ランス位置チェック用孔25に挿通された際に、ランス23の下側のランス撓み空間24に進入するように、長さが設定されている。
【0041】
導通ピン33は、ランスチェックピン32と平行に設けられて、ランスチェックピン32のランス位置チェック用孔25への進入に伴い、端子収容孔22の先端の導通ピン挿通口22cに進入する。
【0042】
この導通ピン33は、図4に示したように、端子金具11が完全挿入状態になっていて、ランスチェックピン32のランス位置チェック用孔25への挿入が正常に完了するときには、端子収容孔22内の端子金具11の導通チェック面15に当接して、端子金具11と電気的に接続状態になる。また、導通ピン33は、図5及び図7に示したように、端子金具11が半挿入状態になっていて、ランス23の撓み変位のために、ランスチェックピン32のランス位置チェック用孔25への挿入が途中で止まる場合には、端子金具11とは非接触の状態となり、端子金具11との導通が得られなくなることで、端子金具11が半挿入状態であることを検知することができる。
【0043】
次に、本実施形態の特徴であるランスチェックピン32の先端部32aの構造について、詳述する。
【0044】
ランスチェックピン32の先端部32aは、図3に示すように、基端側に位置する基端側板部41と、該基端側板部41の先端から延出する先端側板部42と、を備える。
【0045】
先端側板部42は、基端側板部41よりも板厚が薄く設定されていて、基端側板部41の先端のランス23と対向する側に段差41aを形成する。
【0046】
先端側板部42の先端面42aは、図4及び図5に示すように、端子金具11の半挿入に起因したランス23のランス撓み空間24への撓み変位量が想定変位量よりも大きい場合にランス23の先端に当接して、当該ランスチェックピン32のランス撓み空間24への進入を阻止する。
【0047】
基端側板部41の先端の段差41aとなっている面は、図6及び図7に示すように、端子金具11の半挿入に起因したランス23のランス撓み空間24への撓み変位量が想定変位量よりも小さいときにランス23の先端に当接して、当該ランスチェックピン32のランス撓み空間24への進入を阻止する。
【0048】
以上に説明した一実施形態の端子半挿入検知構造では、コネクタハウジング21の前端側からランス撓み空間24に挿入されるランスチェックピン32の先端部32aは、一様な厚さではなく、板厚の異なる基端側板部41と先端側板部42とから構成されている。
【0049】
そして、板厚の薄い先端側板部42の先端面42aは、図5に示すように、端子金具11の半挿入に起因したランス23のランス撓み空間24への撓み変位量が想定変位量よりも大きい場合にランス23の先端に当接して、当該ランスチェックピン32のランス撓み空間24への進入を阻止する。
【0050】
また、先端側板部42と比して板厚の厚い基端側板部41の先端の段差41aとなっている面は、図7に示すように、端子金具11の半挿入に起因したランス23のランス撓み空間24への撓み変位量が想定変位量よりも小さい場合にランス23の先端に当接して、当該ランスチェックピン32のランス撓み空間24への進入を阻止する。
【0051】
従って、基端側板部41の板厚を、ランス23の成形歪み等よるランス撓み空間24側への垂れを考慮して端子金具11の完全挿入状態時のランス23と干渉しないように設定しておけば、端子金具11の半挿入に起因したコネクタハウジング21側のランス23の撓み変位量の大小やランス23の成形歪みに拘わらず、確実に半挿入の有無を検知することができ、半挿入の検知性能を向上させることができる。
【0052】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【符号の説明】
【0053】
11 端子金具
12 箱部
15 導通チェック面
16 ランス係止部
21 コネクタハウジング
22 端子収容孔
22c 導通ピン挿通口
23 ランス
24 ランス撓み空間
25 ランス位置チェック用孔
31 半挿入検知用治具
32 ランスチェックピン
32a 先端部
33 導通ピン
41 基端側板部
41a 段差
42 先端側板部
42a 先端面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コネクタハウジングは、端子金具が挿入される端子収容孔と、前記端子収容孔に突出する係止突起を備えると共に前記端子収容孔への前記端子金具の挿入に伴い前記係止突起が前記端子収容孔の外に逃げるように撓み変位した後に前記端子金具が正規位置まで挿入されたときに撓み変位が戻って前記係止突起により前記端子金具を抜け止め状態とするランスと、前記ランスの撓み変位を許容するランス撓み空間と、前記コネクタハウジングの前端側から前記端子収容孔の貫通方向に沿って前記ランス撓み空間に連通したランス位置チェック用孔と、を備え、
前記コネクタハウジングの前端に嵌合装着される半挿入検知用治具は、前記ランス位置チェック用孔から前記ランス撓み空間に挿入されるランスチェックピンと、該ランスチェックピンと平行に設けられて、前記ランスチェックピンのランス位置チェック用孔への進入に伴い前記端子収容孔に進入する導通ピンとを備え、
前記端子金具が正規位置に到達しておらず、前記ランスが前記ランス撓み空間に撓み変位している状態では、前記ランスチェックピンのランス位置チェック用孔への進入が不足して、前記導通ピンと前記端子金具との接触が得られなくなることで、前記端子金具が半挿入状態であることを検知する端子半挿入検知構造であって、
前記ランス撓み空間に挿入される前記ランスチェックピンの先端部は、基端側に位置する基端側板部と、前記基端側板部の先端から延出すると共に前記基端側板部よりも板厚が薄く設定されて前記基端側板部の先端に段差を形成する先端側板部と、を備え、
前記先端側板部の先端面は、前記端子金具の半挿入に起因した前記ランスの前記ランス撓み空間への撓み変位量が想定変位量よりも大きい場合に前記ランスの先端に当接して当該ランスチェックピンのランス撓み空間への進入を阻止し、
前記基端側板部の先端の段差となっている面は、前記端子金具の半挿入に起因した前記ランスの前記ランス撓み空間への撓み変位量が想定変位量よりも小さい場合に前記ランスの先端に当接して当該ランスチェックピンのランス撓み空間への進入を阻止することを特徴とする端子半挿入検知構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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