説明

端子間接続用フレキシブルジョイント

【課題】 機器間の振動が止まると、第1の接続体と第2の接続体との間に生じた変位が自動的に復旧し、作業員による復旧作業を必要としない構造簡易なフレキシブルジョイントを提供する。
【解決手段】 旋回アーム4の一端側を第1の枢軸5により第1の接続体2に枢着し、他端側を第2の枢軸6により第2の接続体3に枢着する。この旋回アーム4と第1の接続体2との間にばね7を介設し、旋回アーム4を第1の接続体2に対して所定の旋回角度位置に復旧可能に保持する。第1の接続体2と第2の接続体3との間を十分な長さの余裕を持つ可撓性導体8で電気的に接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
例えば変電所における遮断器と断路器は、それぞれの端子接続部間が、両端に羽子板状の端子を備えた接続線により接続される。この発明は、このような接続線の端子と機器の端子接続部との間に介設されるもので、2つの機器が地震等により互いに離れる方向に揺動したときに、接続線に引かれて機器が破損することを防止するためのフレキシブルジョイントに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種のフレキシブルジョイントとして、特許文献1に記載されたものが知られている。そのフレキシブルジョイントを図5に示す。フレキシブルジョイント21は、一方の機器の導体B1と、それと離れた図示しない他の機器の導体との間を接続する接続線Wの端子W1との間に介設される。フレキシブルジョイント21は、導体B1に固着される第1の接続体22と、接続線の端子W1に固着され、かつ第1の接続体22に対して相対変位可能に接続される第2の接続体23と、第1の接続体22と第2の接続体23との相対変位に所定の抵抗を付与するばね部材25と、第1の接続体22と第2の接続体23との間を十分な長さの余裕を保持して電気的に接続する可撓性導体26とを具備する。第1の接続体22は、導体B1に固着される基板22aを具備する。第2の接続体23は、端子W1に固着される基板23aを具備する。第1の接続体の基板22aと第2の接続体の基板23aは、互いに間隔を置いて重なるように配置されると共に、一方向に直線的にガイドされて相対変位可能に組み合わされる。可撓性導体26は、屈伸可能に折り曲げられて第1の接続体22と第2の接続体23との間を電気的に接続する。接続線Wが接続する2つの機器間に地震等による所定以上の大きい相対変位が生じると、第1の接続体22と第2の接続体23とが、ばね部材25による抵抗に抗して相対移動することで、機器の破損を防止する。
【特許文献1】特開平9−199252号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来のフレキシブルジョイント21においては、振動が止まっても、いったん生じた第1の接続体22と第2の接続体23との変位は自動的に復旧しないから、作業員による復旧作業を必要とするという問題点がある。
したがって、この発明は、機器間の振動が止まると、第1の接続体と第2の接続体との間に生じた変位が自動的に復旧し、作業員による復旧作業を必要としない構造簡易なフレキシブルジョイントを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するため、この発明においては、旋回アーム4の一端側を第1の枢軸5により第1の接続体2に枢着し、他端側を第2の枢軸6により第2の接続体3に枢着する。この旋回アーム4と第1の接続体2との間にばね7を介設し、旋回アーム4を第1の接続体2に対して所定の旋回角度位置に復旧可能に保持する。第1の接続体2と第2の接続体3との間を十分な長さの余裕を持つ可撓性導体8で電気的に接続する。
【発明の効果】
【0005】
上記構成の本発明に係る端子間接続用フレキシブルジョイントにおいては、接続線Wが接続する2つの機器間に地震等による所定以上の大きい相対変位が生じると、第1の接続体2と第2の接続体3とが、弾性体7に抗して旋回アーム4を旋回させつつ、相対移動することで、機器の破損を防止する。機器間の振動が止まると、第1の接続体2と第2の接続体3との間に生じた変位が弾性体7で自動的に復旧し、作業員による復旧作業を必要としない。
さらに、第1の接続体2を、導体B1及び可撓性導体8に接続される基板9と、その上に固着される軸受部材10とで構成し、旋回アーム4の一端側を第1の枢軸5で軸受部材10に枢着し、弾性体7を弦巻ばねで構成し、それの一端側を旋回アーム4に係止し、中間部を第1の枢軸5に巻き、他端側を軸受部材10に係止する構成とした場合には、旋回アーム4の旋回により大きな変位ストロークをとることができ、しかも、旋回アーム4の原位置への回転付勢を小さな弦巻ばね7で行うため、装置の小型化に貢献できる。
さらに、第1の接続体2の基板9に、支持アーム12を介してシールドリング13を固着する構成とした場合には、一対のシールドリング13間にある充電部のコロナ放電を有効に防止することができる。
さらに、軸受部材10を、接続板部10aと、それの両縁に起立する平行一対の軸受片10bとを有するものとし、接続板部10aに、導体B1及び可撓性導体8を接続し、軸受片10b間に、第1の枢軸5で旋回アーム4の一端部を枢支すると共に第1のストッパピン11を架設し、旋回アーム4が第1のストッパピン11に当接することにより、第2の接続体3と旋回アーム4との常時の相対角度を定める構成とした場合には、第1の接続体2と旋回アーム4の旋回許容範囲を制限する具体的構成のフレキシブルジョイントを提供できる。
さらに、旋回アーム4を、平行一対のアーム板4aで構成し、第1の枢軸5が貫通する位置と第2の枢軸6が貫通する位置との間に第2のストッパピン4bを突出させ、第2の接続体3を、接続板部3aと起立片3bとを有するものとし、接続線Wと可撓性導体8を接続板部3aに接続し、起立片3b間に旋回アーム4を第2の枢軸6で枢着し、起立片3bの端縁が第2のストッパピン4bに当接することで第2の接続体3と旋回アーム4との常時の相対角度を定める構成とした場合には第2の接続体3に対する旋回アーム4の旋回許容範囲を制限する具体的構成のフレキシブルジョイントを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
図面を参照してこの発明の実施の形態を説明する。図1は本発明のフレキシブルジョイントの正面図、図2は本発明のフレキシブルジョイントの側面図、図3は常態から変位したフレキシブルジョイントの正面図、図4は機器との関係を示すフレキシブルジョイントの正面図である。
【0007】
図4において、2つの離れた位置にある断路器Dと遮断器Bの端子接続部である導体D1,B1間は、接続線Wにより接続される。接続線Wは、両端に羽子板状の接続用の端子W1, W2を備える。一方の端子W2は、断路器Dの導体D1にボルト、ナットで固着され、他方の端子W1は、本発明に係るフレキシブルジョイント1を介して遮断器Bの導体B1に接続される。
【0008】
フレキシブルジョイント1は、図1ないし図3に示すように、導体B1に固着される第1の接続体2と、接続線Wの端子W1に固着される第2の接続体3とを有する。第1の接続体2と第2の接続体3とは、旋回アーム4により所定の範囲で相対変位可能に接続される。旋回アーム4は、一端部において第1の枢軸5により第1の接続体2に枢着され、他端部において第2の枢軸6により第2の接続体3に枢着される。旋回アーム4と第1の接続体2との間には、ばね7が介設される。ばね7により、第1の接続体2に対して旋回アーム4が所定の旋回角度位置に弾性的に保持され、これにより、常時第2の接続体3が第1の接続体2に対して接近位置に復旧可能に保持される。第1の接続体2と第2の接続体3との間は、十分な長さの余裕を有する可撓性導体8により電気的に接続される。
【0009】
第1の接続体2は、基板9と、この基板9上に固着される軸受部材10とを具備する。基板9は、導体B1上に、可撓性導体8の一端側を挟んで固着される。軸受部材10は、導体B1と可撓性導体8の端部に重ねて固着される接続板部10aと、この接続板部10aの対向する両端縁から直角に起立する平行一対の軸受片10bとを有する。この軸受片10b間に、旋回アーム4の一端部が、第1の枢軸5により枢着される。また、軸受片10b上の第1の枢軸5と離れた位置に、第1のストッパピン11が架設される。
【0010】
第1の接続体2の基板9には、支持アーム12を介して図2において左右一対の導電性のシールドリング13が固着される。シールドリング13は、第1の接続体2、旋回アーム4、第2の接続体3及び可撓性導体8を相互間に挟むように、第1の枢軸5の両端側に相対向して配置される。シールドリング13は環状で、旋回アーム4、第2の接続体3及び可撓性導体8の移動範囲を包囲する形状であり、一対間にある充電部のコロナ放電を防止する。
【0011】
旋回アーム4は、平行一対のアーム板4aを第2のストッパピン4bとばね受けピン4cで結合してなる。第2のストッパピン4bは、第1の枢軸5が貫通する位置と第2の枢軸6が貫通する位置との間の第2の枢軸6寄りの位置においてアーム板4aの外側面から突出し、第2の接続体3に当接可能である。ばね受けピン4cは、第2のストッパピン4bと第1の枢軸5との間に位置してアーム板4a間に架設される。
【0012】
第2の接続体3は、接続線Wの接続用の端子W1及び可撓性導体8の他端側が固着される接続板部3aと、この接続板部3aの対向する両端縁から直角に起立する平行一対の起立片3bとを有する。起立片3b間に、旋回アーム4の他端部が、第2の枢軸6により枢着される。起立片3bの端縁が、第2のストッパピン4bに当接することにより、第2の接続体3と旋回アーム4との一方の回動限界が定められる。
【0013】
ばね7は、弦巻ばねからなり、一端側が旋回アーム4のばね受けピン4cに係止され、中間部が第1の枢軸5に巻回され、他端側が軸受部材10のばね受けピン10cに係止される。
【0014】
図1に示すように、旋回アーム4は、常時、弦巻ばね7により、第1の枢軸5を中心に反時計方向に回転付勢され、第1のストッパピン11に当接した状態にある。地震等により、図4に示す機器B,D間が所定距離以上離れると、接続線Wが緊張するが、第2の接続体3が図1において右方へ引かれ、図3に示すように、旋回アーム4が弦巻ばね7に抗して時計方向へ回転することにより、引っ張り力が第1の接続体2に及ぶのを防止する。旋回アーム4の時計方向への回転は、その一端側のストッパ部4dが軸受部材10の接続板部10aに当接する位置で止められる。
【産業上の利用可能性】
【0015】
この発明に係るフレキシブルジョイントは、例えば変電所における遮断器と断路器の端子接続部間を接続する接続線といずれかの機器の端子接続部との間に介設され、2つの機器が地震等により互いに離れる方向に揺動したときに、接続線に引かれて機器が破損することを防止するために用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明のフレキシブルジョイントの正面図である。
【図2】本発明のフレキシブルジョイントの側面図である。
【図3】常態から変位したフレキシブルジョイントの正面図である。
【図4】機器との関係を示すフレキシブルジョイントの正面図である。
【図5】従来のフレキシブルジョイントの正面図である。
【符号の説明】
【0017】
1 フレキシブルジョイント
2 第1の接続体
3 第2の接続体
3a 接続板部
3b 起立片
4 旋回アーム
4a アーム板
4b 第2のストッパピン
4c ばね受けピン
4d ストッパ部
5 第1の枢軸
6 第2の枢軸
7 弾性体(ばね)、(弦巻ばね)
8 可撓性導体
9 基板
10 軸受部材
10a 接続板部
10b 軸受片
10c ばね受けピン
11 第1のストッパピン
12 支持アーム
13 シールドリング
D 断路器
D1 導体
B 遮断器
B1 導体
W 接続線
W1 接続用の端子
W2 接続用の端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの離れた導体のうちの一方の導体に一端が接続される接続線の他端側の端子と前記他方の導体との間に介設されるフレキシブルジョイントであって;前記他方の導体に固着される第1の接続体と;前記接続線の端子に固着され、かつ前記第1の接続体に対して接近位置と離隔位置の間で相対変位可能に接続される第2の接続体と;一端部において第1の枢軸により前記第1の接続体に枢着され、他端部において第2の枢軸により前記第2の接続体に枢着される旋回アームと;この旋回アームと前記第1の接続体との間に介設され、第1の接続体に対して旋回アームを所定の旋回角度位置において保持することにより、常時前記第2の接続体を第1の接続体に対して前記接近位置に復旧可能に保持する弾性体と;前記第1の接続体と第2の接続体との間を十分な長さの余裕を保持して電気的に接続する可撓性導体とを具備することを特徴とする端子間接続用フレキシブルジョイント。
【請求項2】
前記第1の接続体は、前記他方の導体に固着されると共に前記可撓性導体の一端側が固着される基板と、この基板上に固着される軸受部材とを具備し;前記旋回アームは、一端側において前記第1の枢軸によって前記軸受部材に枢着され;前記弾性体は、一端側が前記旋回アームに係止され、中間部が第1の枢軸に巻回され、他端側が軸受部材に係止される弦巻ばねであることを特徴とする請求項1に記載の端子間接続用フレキシブルジョイント。
【請求項3】
前記第1の接続体の基板に支持アームを介して固着された一対の導電性のシールドリングをさらに具備し、このシールドリングは、第1の接続体、前記旋回アーム、前記第2の接続体及び前記可撓性導体を相互間に挟むように前記第1の枢軸の両端側に相対向して配置され、かつ旋回アーム、第2の接続体及び可撓性導体の移動範囲を包囲する環状に構成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の端子間接続用フレキシブルジョイント。
【請求項4】
前記軸受部材は、前記他方の導体及び前記可撓性導体の他端側が固着される接続板部と、この接続板部の対向する両端縁から直角に起立する平行一対の軸受片とを有し;この軸受片間に、前記旋回アームの一端部が前記第1の枢軸により枢着されると共に、第1の枢軸と離れた位置に第1のストッパピンが架設され;前記旋回アームが前記第1のストッパピンに当接することにより、前記第1の接続体と前記旋回アームとの常時の相対角度が定められることを特徴とする請求項2に記載の端子間接続用フレキシブルジョイント。
【請求項5】
前記旋回アームは、平行一対のアーム板を結合してなり、前記第1の枢軸が貫通する位置と前記第2の枢軸が貫通する位置との間においてアーム板の外側面から突出する第2のストッパピンを有し;前記第2の接続体は、前記接続線の端子及び前記可撓性導体の他端側が固着される接続板部と、この接続板部の対向する両端縁から直角に起立する平行一対の起立片とを有し;この起立片間に前記旋回アームの他端部が前記第2の枢軸により枢着され;前記起立片の端縁が前記第2のストッパピンに当接することにより、前記第2の接続体と前記旋回アームとの常時の相対角度が定められることを特徴とする請求項1又は2に記載の端子間接続用フレキシブルジョイント。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2007−242271(P2007−242271A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−59524(P2006−59524)
【出願日】平成18年3月6日(2006.3.6)
【出願人】(000221616)東日本旅客鉄道株式会社 (833)
【出願人】(000001890)三和テッキ株式会社 (134)
【出願人】(000116873)旭テック株式会社 (144)
【Fターム(参考)】