説明

竹繊維強化材及びその製造方法

【課題】繊維強化型複合材料の強化材(強化繊維に同じ)として最適な形態、性状を有する竹繊維を物理的処理(機械的手段)により効率的に製造する。
【解決手段】竹繊維強化材の製造方法が以下の処理工程を包含する。
(1)採取した竹材の周方向に鉋その他の切削刃を当接し、該竹材の繊維配向と交差する方向に鉋掛け又は削進してゆきフィラメント状の削剥竹繊維を得る削剥処理工程1。
(2)削剥竹繊維を水を用い加圧下で煮沸又は蒸煮する熱水処理工程2(例えば、水に浸漬して加圧下100℃超に加温して煮沸する煮沸処理工程21)。
(3)削剥竹繊維を揉みほぐしながら水洗する揉捻水洗処理工程3。
(4)捻水洗処理後の削剥竹繊維を自然乾燥又は強制乾燥する乾燥処理工程4。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、竹繊維の製造方法に係り、詳しくは、繊維強化プラスチック(FRP)その他の繊維強化型複合材料の強化材として用いられる竹繊維強化材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、採取した竹材から竹繊維を製造し、繊維強化プラスチック(FRP)その他の繊維強化型複合材料の強化材(強化繊維に同じ)として用いることが知られている(例えば、特許文献1、2及び3を参照)。
【特許文献1】特開2005−161850号公報
【特許文献2】特表2005−153160号公報
【特許文献3】特開2003−155677号公報
【0003】
ここでは、強化材としての強度(カーボン繊維に匹敵する)はもとより、焼却が困難なガラス繊維に代えて、麻繊維、竹繊維その他の天然繊維を使用し、繊維強化型複合材料の廃棄処理時の環境負荷を低減する点に利点を求めている。
【0004】
しかしながら、どのような形態の竹繊維を調達できるかという点に問題があり、一概に単繊維であれは強化材として十全であるというわけにもゆかない。単繊維間の結着力を残して利用するためには繊維径が数百μm程度の繊維束鞘や繊維束の繊維形態も考慮されるからである。
【0005】
ところで市場提供されている竹繊維は、一般的には機械的な解繊処理を施すことにより製造されており、概して繊維径が数百μmを超えるミリ単位のものであり、その剛直性が折損等の欠点となる場合があった。
【0006】
本発明者らは、古紙等の繊維含有材料の粗粉砕から解繊までを効率的におこなう解繊装置(粗粉砕装置を含む)や該繊維含有材料を主原料とする複合再生成形物の開発に携わってきた。もちろん、繊維含有材料として竹材も扱ってきている。
【0007】
こうしたなかで、繊維径が数百μm以下、又は数百μmを超えるミリ単位以下であり、かつ、繊維長が数ミリメートル〜百ミリメートルを確保可能に物理的(機械的)に削剥して得られる竹繊維及びその製造技術を要請されきた。本発明者らは、この要請に積極的に対応し、かつ、研究開発を推進してきた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする問題点は、繊維径が数百μm以下、又は数百μmを超えるミリ単位以下で、繊維長が数ミリメートル〜百ミリメートルを確保し、強化繊維として最適な形態を有する削剥竹繊維を物理的処理(機械的手段)により効率的に製造する点にある。そして、繊維強化型複合材料に関する新たな材料開発への寄与を図るものである。
【0009】
本発明はこのような事情に鑑みなされたものであって、上記課題を解消し、繊維強化型複合材料の強化材として、採取した竹材を物理的(機械的)に削剥して所望の繊維径及び繊維長の竹繊維を得ることができる竹繊維強化材及びその製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
課題を解決するために本発明は、繊維強化プラスチック(FRP)その他の繊維強化型複合材料の強化材として用いられる竹繊維強化材において、
採取した竹材の周方向に鉋その他の切削刃を当接し、該竹材の繊維配向と交差する方向に鉋掛け又は削進して得られるフィラメント状の削剥竹繊維からなることを特徴とするものである。
【0011】
また、その製造方法であって、以下の処理工程を包含することを特徴することを特徴とするものである。
【0012】
(1)採取した竹材の周方向に鉋その他の切削刃を当接し、該竹材の繊維配向と交差する方向に鉋掛け又は削進してゆきフィラメント状の削剥竹繊維を得る削剥処理工程。
【0013】
(2)削剥竹繊維を水を用い加圧下で煮沸又は蒸煮する熱水処理工程。
【0014】
(3)削剥竹繊維を揉みほぐしながら水洗する揉捻水洗処理工程。
【0015】
(4)上記(2)および/または(3)の処理工程を経た削剥竹繊維を自然乾燥又は強制乾燥する乾燥処理工程。
【発明の効果】
【0016】
本発明は以上の構成よりなるものであり、採取した竹材を機械的に削剥することにより、繊維強化型複合材料の強化材として至適な繊維径及び繊維長の削剥竹繊維を得ることができる。しかも、熱水処理および/または揉捻水洗処理を施すので、繊維表面に剛直性の原因となる付着物(重繊維)が残存することを極力排除できる。とりわけ、繊維強化プラスチック(FRP)の強化材として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明を実施するための最良形態は、上記構成において、至適な削剥竹繊維は、1ミリメートル以下の断面径で、数ミリメートル〜百ミリメートルの繊維長からなる単繊維又は分断された繊維束(維管束鞘ないしは維管束に同じ)である。
【0018】
また、揉捻水洗処理工程と熱水処理工程の先後を問わない場合がある。また、熱水処理工程を省略し、揉捻水洗処理工程のみを経て乾燥処理工程へ移行する場合がある。揉捻水洗処理の度合い(処理効果)によって繊維表面について所望の清浄度が確保されれば問題ないからである。
【実施例】
【0019】
本発明の一実施例について添付図面を参照して以下説明する。
【0020】
(実施例1)
図1は、処理工程のフロー図である。
【0021】
図示するように、本発明は繊維強化プラスチック(FRP)その他の繊維強化型複合材料の強化材として用いられる竹繊維強化材の製造方法であり、(1)削剥処理工程、(2)熱水処理工程、(3)揉捻水洗処理工程、及び(4)乾燥処理工程の各処理工程を包含するものである。
【0022】
(1)削剥処理工程は、採取した竹材の周方向に鉋その他の切削刃を当接し、該竹材の繊維配向と交差する方向に鉋掛け又は削進してゆきフィラメント状の削剥竹繊維を得る機械的な処理をおこなうものである。
【0023】
至適な削剥竹繊維は、1ミリメートル以下の断面径で、数ミリメートル〜百ミリメートルの繊維長からなる単繊維又は分断された繊維束(維管束鞘ないしは維管束に同じ)からなるものである。
【0024】
(2)熱水処理工程は、煮沸処理(21)であって、削剥竹繊維を水に浸漬して加圧下100℃超に加温して煮沸する処理をおこなうものである。
【0025】
好適な煮沸処理条件は、加圧下100〜135℃の熱湯中で1〜20分間煮沸するものとされる。
【0026】
(3)揉捻水洗処理工程は、煮沸処理後、100℃以下になるまで放冷した削剥竹繊維を揉みほぐしながら水洗する処理をおこなうものである。
【0027】
(4)乾燥処理工程は、揉捻水洗処理後の削剥竹繊維を自然乾燥又は強制乾燥する処理をおこなうものである。
【0028】
(実施例2)
図2は、他の選択的な処理工程のフロー図である。
【0029】
図示するように、(1)削剥処理工程、(2)熱水処理工程、(3)揉捻水洗処理工程、及び(4)乾燥処理工程の各処理工程を包含するものである。なお、(2)熱水処理工程と(3)揉捻水洗処理工程の先後は問わない。
【0030】
ここで、熱水処理工程は、煮沸処理(21)又は蒸煮処理(22)を選択可能とするものであり、熱水処理工程における煮沸処理条件は、加圧下100〜135℃の熱湯中で1〜20分間煮沸するものである。
【0031】
また、蒸煮処理条件はが、加圧下100〜135℃の湯気中で1〜20分間蒸煮するものである。
【0032】
さらに、揉捻水洗処理工程を経ておこなう場合の熱水処理工程を、電磁波加熱処理工程に代替してもよい。
【0033】
なお、熱水処理工程を省略し、揉捻水洗処理工程のみを経て乾燥処理工程へ移行する場合がある。揉捻水洗処理の度合い(処理効果)によって繊維表面について所望の清浄度が確保されれば問題ないからである。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、繊維強化型複合材料の強化材として至適な繊維形態の竹繊維を得るものであり、特に繊維強化プラスチック(FRP)の強化材として有用な繊維形態(性状を含む)を実現可能とするものであり、斯界の要請に応え、しかも新たな材料開発に寄与する開発技術として有用であり、産業上有益である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】処理工程を示すフロー図である。
【図2】他の選択的な処理工程を示すフロー図である。
【符号の説明】
【0036】
1 削剥処理工程
2 熱水処理工程
21 煮沸処理工程
22 蒸煮処理工程
3 揉捻水洗処理工程
4 乾燥処理工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維強化プラスチック(FRP)その他の繊維強化型複合材料の強化材として用いられる竹繊維強化材において、
採取した竹材の周方向に鉋その他の切削刃を当接し、該竹材の繊維配向と交差する方向に鉋掛け又は削進して得られるフィラメント状の削剥竹繊維からなることを特徴とする竹繊維強化材。
【請求項2】
削剥竹繊維が、1ミリメートル以下の繊維径で、数ミリメートル〜百ミリメートルの繊維長からなる単繊維又は分断された繊維束(維管束鞘ないしは維管束に同じ)からなるものである請求項1記載の竹繊維強化材。
【請求項3】
竹繊維の製造方法において、
繊維強化プラスチック(FRP)その他の繊維強化型複合材料の強化材として用いられる竹繊維強化材の製造方法であって、以下の処理工程を包含することを特徴とする竹繊維強化材の製造方法。
(1)採取した竹材の周方向に鉋その他の切削刃を当接し、該竹材の繊維配向と交差する方向に鉋掛け又は削進してゆきフィラメント状の削剥竹繊維を得る削剥処理工程。
(2)削剥竹繊維を水を用い加圧下で煮沸又は蒸煮する熱水処理工程。
(3)削剥竹繊維を揉みほぐしながら水洗する揉捻水洗処理工程。
(4)上記揉捻水洗処理工程を経た削剥竹繊維を自然乾燥又は強制乾燥する乾燥処理工程。
【請求項4】
竹繊維の製造方法において、
繊維強化プラスチック(FRP)その他の繊維強化型複合材料の強化材として用いられる竹繊維強化材の製造方法であって、以下の処理工程を包含することを特徴とする竹繊維強化材の製造方法。
(1)採取した竹材の周方向に鉋その他の切削刃を当接し、該竹材の繊維配向と交差する方向に鉋掛け又は削進してゆきフィラメント状の削剥竹繊維を得る削剥処理工程。
(2)削剥竹繊維を揉みほぐしながら水洗する揉捻水洗処理工程。
(3)削剥竹繊維を水を用い加圧下で煮沸又は蒸煮する熱水処理工程。
(4)上記(2)および/または(3)の処理工程を経た削剥竹繊維を自然乾燥又は強制乾燥する乾燥処理工程。
【請求項5】
削剥竹繊維が、1ミリメートル以下の繊維径で、数ミリメートル〜百ミリメートルの繊維長からなる単繊維又は分断された繊維束(維管束鞘ないしは維管束に同じ)からなるものである請求項3又は4記載の竹繊維強化材の製造方法。
【請求項6】
熱水処理工程における煮沸処理条件が、加圧下100〜135℃の熱湯中で1〜20分間煮沸するものである請求項3乃至5のいずれか1項記載の竹繊維強化材の製造方法。
【請求項7】
熱水処理工程における蒸煮処理条件が、加圧下100〜135℃の湯気中で1〜20分間蒸煮するものである請求項3乃至5のいずれか1項記載の竹繊維強化材の製造方法。
【請求項8】
揉捻水洗処理工程を経ておこなう場合の熱水処理工程を、電磁波加熱処理工程に代替した請求項6又は7記載の竹繊維強化材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−174723(P2008−174723A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−297406(P2007−297406)
【出願日】平成19年11月16日(2007.11.16)
【出願人】(595067718)西日本技術開発有限会社 (5)
【Fターム(参考)】