説明

筆記具の把持部材、及び、その把持部材を装着した筆記具

【課題】 従来技術にあっては、金属を筒状にして把持部材とするため、その把持部材の内径が軸筒の軸径によって一定に決まってしまい、多様な軸径に対応できなかった。そして、多様な軸径に対応できないのみならず、ややもすると、軸筒の外径や把持部材の内径の生産時のばらつきにより、軸筒に対して把持部材が緩いものや、或いは、入らないものが出てくる恐れがあった。
【解決手段】 筆記具の軸筒の把持部に装着される把持部材であって、その把持部材を硬質材料から形成すると共に、筒状に形成し、また、その把持部材の前端から後端まで連続して形成されたスリット部を設けたことを特徴とする筆記具の把持部材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筆記具の把持部に装着される把持部材、及び、その把持部材を装着した筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、軸筒の把持部に、金属や硬質樹脂材料などの硬質材料からなる把持部材を装着してなる筆記具はよく知られている。この硬質材料からなる把持部材を用いることによりデザイン性が向上し、金属材料を使用した際には高級感のある把持部材が得られ、また、硬質樹脂材料を使用した際には、エラストマーなどの軟質材料で起こる手油による把持部材の膨潤に強い、色彩に富んだ把持部材が得られる。
このような硬質材料からなる把持部材の一例が、実開平1−132783号公報(特許文献1)に記載されている。
【0003】
前記特許文献1は、ローレット加工が施された金属製の筒部材が開示されている。この筒部材を筆記具の軸筒に装着し、把持部材として用いた際には、表面に形成された端部が角からなる多数の菱状の凸部によって、把持した際の滑り止め効果が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平1−132783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1に記載の従来技術にあっては、金属を筒状にして把持部材とするため、その把持部材の内径が軸筒の軸径によって一定に決まってしまい、多様な軸径に対応できなかった。そして、多様な軸径に対応できないのみならず、ややもすると、軸筒の外径や把持部材の内径の生産時のばらつきにより、軸筒に対して把持部材が緩いものや、或いは、入らないものが出てくる恐れがあった。

【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記問題点を鑑みてなされたものであり、筆記具の軸筒に装着される把持部材であって、その把持部材を硬質材料から形成すると共に、筒状に形成し、また、その把持部材の前端から後端まで連続して形成されたスリット部を設けたことを要旨とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、筆記具の軸筒に装着される把持部材であって、その把持部材を硬質材料から形成すると共に、筒状に形成し、また、その把持部材の前端から後端まで連続して形成されたスリット部を設けたので、多様な軸径に対応することができる筆記具の把持部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1実施例の製品全体の外観図である。
【図2】図1の状態から周方向に180度回転させた際の外観図である。
【図3】図1の状態から周方向に90度右回転させた際の縦断面図である。
【図4】図3における先部材周辺の拡大図である。
【図5】図1のA―A線断面図である。
【図6】図5の一部拡大図である。
【図7】第1実施例の軸筒本体5の外観斜視図である。
【図8】第1実施例の把持部材19の外観斜視図である。
【図9】軸筒本体5への把持部材19の装着方法(装着前)を表す図である。
【図10】第2実施例の製品全体の外観図である。
【図11】図7の状態から周方向に180度回転させた際の外観図である。
【図12】図7の状態から周方向に90度右回転させた際の縦断面図である。
【図13】第2実施例の軸筒本体5の外観斜視図である。
【図14】第2実施例の把持部材19の外観斜視図である。
【図15】第2実施例の変形例の製品全体の外観図である。
【図16】図15の状態から周方向に180度回転させた際の外観図である。
【図17】把持部材19のスリット部の第1変形例である。
【図18】把持部材19のスリット部の第2変形例である。
【図19】把持部材19のスリット部の第3変形例である。
【図20】把持部材19のスリット部の第4変形例である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
作用について説明する。筆記具の軸筒に装着される把持部材であって、その把持部材を硬質材料から形成すると共に、筒状に形成し、また、その把持部材の前端から後端まで連続して形成されたスリット部を設けたので、軸筒への把持部材の装着過程や装着状態において前記スリット部が拡開し、把持部材の径に自由度が生じる。そして、同時に、前記硬質材料からなる把持部材は、その弾性(復元力)により軸筒に合った径での装着が可能となり、結果として、多様な軸径に対応することができる筆記具の把持部材を提供することができる。
【0010】
尚、本発明において、硬質材料とは、金属材料や硬質樹脂材料など、弾性を有する硬質材料を意味する。
前記硬質材料の具体的な例としては、鉄やステンレス鋼、アルミニウム合金、真鍮などの金属材料、また、ポリ塩化ビニル(PVC)やポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリエチレン樹脂(PE)、ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリスチレン樹脂(PS)、アクリロニトリルスチレン樹脂(AS)、アクリロニトリルスチレンブタジエン樹脂(ABS)、メタクリル樹脂(PMMA)、ポリアセタール樹脂(POM)、ポリアミド樹脂(PA)、ポリカーボネート樹脂(PC)、ポリエチレンテレンテレフタレート樹脂(PET)などの硬質樹脂材料が挙げられるが、この例に限らず、弾性(復元力)を有する硬質材料であれば適宜使用することが出来る。
【0011】
本発明の第1実施例を図1〜図9に示し、説明する。尚、以下では、後述の先部材4側を前方と言い、押圧部材15側を後方という。本実施例は、本発明をシャープペンシルに展開した例である。なお、本発明は、シャープペンシルに限らず、ボールペンやマーカーペン、万年筆、筆ペンなど、種々の筆記具に適用することが出来る。
【0012】
軸筒1は、前方にステンレス製のパイプ2と内部に芯保持部材3が圧入固定されている先部材4と、その先部材4の後端に着脱自在に螺着された軸筒本体5とから構成されており、それらによって構成される軸筒1の内部には、芯繰り出し機構6が配置されている。尚、本実施例では、前記先部材4は金属により形成しているが、これに限らず、任意の材料から先部材4を形成することができる。
本実施例の前記芯繰り出し機構6においては、芯Lを把持、開放するためのチャック体7が軸筒1の前方に配置されており、そのチャック体7にはチャック体7の開閉を行うチャックリング8が囲繞した状態で挿着されている。そして、チャック体7の後方には芯Lを収容する芯タンク9が圧入固定されている。その芯タンク9の圧入固定部、すなわち、芯タンク9の前方は、縮径部10となっており、この縮径部10により、芯タンク9の外周面には段部11が形成されている。一方、軸筒本体5の前方内周面にも、段部12が形成されている。前記芯タンク9の段部11と前記軸筒本体5の段部12の間には、芯繰り出し機構6を軸筒1の後方へ付勢する弾撥部材(コイルスプリング)13が張設されている。
前記芯繰り出し機構5の芯タンク9の後端には、消しゴム14と押圧部材15が着脱自在に取り付けられている。符号16は、前記軸筒本体5の上部に取り付けられた金属製のクリップである。このクリップ16は、前記軸筒本体5の後方に形成された凹部17に嵌め込まれている。
【0013】
前記軸筒本体5の前方部には、縮径部(把持部)18が形成されており、その縮径部18には金属製の円筒状の把持部材19が装着されている。尚、本実施例では、前記軸筒本体5は、アクリロニトリルスチレンブタジエン樹脂(ABS)により形成しているが、これに限らず、任意の材料から軸筒本体を形成することができる。
この軸筒本体5の縮径部18について詳述する。縮径部18の表面には、楕円形状の凸部(楕円凸部20)が複数形成されている。より詳細には、この楕円凸部20は、前記縮径部18の周方向に等間隔で6箇所配置されており(楕円凸部群)、更に、その楕円凸部群は、軸筒の軸線方向に等間隔で4箇所配置されている。いずれの楕円凸部20においても、その楕円凸部の側面は、その頂部から軸筒本体5の縮径部に対して前記楕円凸部20の外形が拡大するテーパがかけられており(テーパ部21)、楕円凸部20と軸筒本体5の縮径部18との交差部分は、角部から形成されている(図5、図6)。この楕円凸部20の角部近傍は、頂部近傍と比較して薄肉であることから、外力が加えられると変形しやすい弱部22となっている。このため、把持部材19の装着時に、前記弱部22(角部近傍)が潰され、把持部材19が軸筒本体5に食い込むように固定される。図6は、装着完了時の断面図の一部拡大図であるが、図中の点線部が、変形前の前記弱部22(角部近傍)である。そして、結果として、前記軸筒本体5に対して把持部材19の周方向の回転がより確実に防止されると共に、また、軸線方向のズレの防止となり、確実な把持部材の固定をすることができる。尚、この楕円凸部20と軸筒本体5の縮径部18との交差部分の形状は、前記角部に限らず、種々の形状とすることができる。例えば、軸筒の内径方向に凸の曲面部としても良い。
また、前記軸筒本体5の縮径部18の前方部には、円周突部23が形成されており、この円周突部23が前記把持部材19を装着する際の乗り越え段部となっている。更に、前記軸筒本体5の縮径部18の後方部は、波形形状に形成されている(軸筒側波形部24)。
【0014】
次に、前記金属からなる円筒状の把持部材19について詳述する。
本実施例の把持部材19は、楕円形状の貫通孔(楕円貫通孔)25が複数形成されており、この楕円貫通孔25の大きさ及び位置は、前記軸筒本体5に形成された楕円凸部20と係合するように、形成されている。
また、前記把持部材19の後端部は、波形形状に形成されており(把持部材側波形部26)、その形状は、前記軸筒側波形部24と対応する形状となっている。
更に、前記把持部材19には、その前端部から後端部に渡り連続したスリット部27が形成されている。このスリット部27は、軸筒の軸線方向と沿うように形成されており、その前端部から後端部まで、幅が均一な直線状に形成されている。
本実施例においては、前記金属製の把持部材19の板厚(厚さ)は、把持部材が弾性を有し、軸筒に対して確実に装着できる弾性(復元力)を有していれば良いが、望ましくは、0.1mm〜2.0mm程度の板厚が良い。その理由は、金属製の把持部材にあっては、0.1mmよりも薄い場合は、弾性が十分に得られず、軸筒に装着した際の固定力が弱くなり、軸筒の周方向に対してガタが生じやすくなってしまう恐れがあり、また、2.0mmよりも厚い場合は、スリット部が拡開しにくく、組立時の効率が低下してしまうためである。尚、金属製の把持部材に限らず、硬質樹脂製の把持部材にあっても、その板厚は、0.1mm〜2.0mm程度が望ましい。その理由は、硬質樹脂製の把持部材にあっては、0.1mmよりも薄い場合は、成形時に樹脂の流動不良が起こりやすく、生産性の低下や外観が損なわれる恐れがあり、また、2.0mmよりも厚い場合は、板厚が厚いことから成形時にヒケなどが生じやすくなり、外観が損なわれる恐れがあるためである。
【0015】
前記把持部材19の軸筒本体5への装着は、冶具を用いて以下のように行う。用いる冶具28は、軸筒本体5の後方に向かってその外径が大きくなるテーパが形成された円筒状の筒体である(図9)。この冶具28の最大外径は、前記軸筒本体5の円周突部23の外形よりも大径に形成されており、また、この冶具28は、軸筒本体5の前方部に着脱可能に形成されている。
前記把持部材19の装着時には、まず、前記冶具28を軸筒本体5の前方部に装着し、その前方部から前記把持部材19を挿入する。すると、前記把持部材19は、前記冶具28により外径方向へ力を受けることとなる。このように、把持部材19の挿入方向への力と共に、外径方向への力も受けるため、前記把持部材19は、スリット部27が拡開されながら、軸筒本体5の後方へ移動せしめられる。そして、把持部材19は、その状態で、前記軸筒本体5の楕円凸部20も乗り越えていき、完全に前記冶具28を乗り越え、通過した際に、把持部材19はその復元力により、装着前の形状に復元し、軸筒本体5の縮径部18の径に合った状態で装着される。尚、この装着完了時には、前記把持部材側波形部24と軸筒側波形部26が当接し、係合した状態となる。
尚、本実施例においては、前記把持部材19が軸筒本体5に装着された際、そのスリット部27の位置が、前記クリップのクリップ本体29と180度対面の位置となるように配置されている。
【0016】
尚、本実施例においては、把持部材19を軸筒本体5の前方から挿入して装着する装着方法を示したが、これに限らず、任意の装着方法を採用することが出来る。例えば、先部材4と軸筒本体5の段部(軸筒本体の縮径部の後端部)での螺合による挟持による装着や軸筒本体5の側面から把持部材を嵌めることによる装着などである。
軸筒本体5への固定が確実になされれば、把持部材19の軸筒本体5への装着方法は問わないが、本実施例のように、軸筒本体5の円周突部23を乗り越えさせる装着方法の場合には、先部材4と軸筒本体5の段部での螺合による装着の場合と比べ、先部材4の螺合部の緩みが解消されたものとなっている。より詳細には、本実施例のように金属製の先部材4と金属製の把持部材19を用いた場合、把持部材19を先部材4と軸筒本体5とで挟みこんでも、金属同士のため喰いつかない。更には、金属同士の場合、振動が伝わりやすいため、長期間の使用や落下時の振動により先部材4が緩んでしまう恐れがある。本実施例の構成及び装着方法の場合には、その先部材4の螺合部の緩みが解消されている。
また、本実施例のように、軸筒本体5の前方から把持部材19を装着する場合には、軸筒本体5の側面から把持部材19を嵌めることによる装着の場合と比べ、形成できるスリット部27の幅の範囲が広くなる。より詳細には、軸筒本体5の側面から把持部材19を嵌める場合には、軸径以上にスリット部27を拡開しなければならないため、形成できるスリット部27の幅が限られてしまう。スリット部27の幅が狭い場合、装着時のスリット部27の拡開量が大きくなり、十分な復元力が得られない為である。一方、本実施例の装着方法の場合には、装着時の把持部材19の内径を一時的に軸径以上にすることで把持部材19を組み立てることができ、スリット部27の幅を軸径以上にする必要がない。よって、本実施例の装着方法の場合には、形成できるスリット部27の幅の範囲が広くなるのである。
【0017】
以上のように、本実施例の把持部材19においては、軸筒本体5への把持部材19の装着過程において、前記把持部材19のスリット部27が拡開し、また、その把持部材19の弾性(復元力)により軸筒本体5の把持部に適合した状態での装着が可能となっている。そして、前記把持部材19には、その前方から後方にかけて連続してスリット部27が形成されていることから、そのスリット部27により、把持部材19の拡開の程度が変化可能となり、多様な軸径に対応することができる把持部材19となっているのである。
【0018】
この他、本実施例においては、前述のように軸筒に形成した楕円凸部20と把持部材19の楕円貫通孔25とを係合させたので、その楕円形状や、楕円の配列による手触りの変化を楽しむことが出来るものともなっている。
また、本実施例のように、軸筒本体に形成した凸部と把持部材に形成した貫通孔と係合する場合には、単に、凸部を有さない軸筒の縮径部に対して貫通孔を有する把持部材を装着する場合と比較し、長時間筆記具を使用した際の手の痛みを軽減する事ができる。同時に、凸部と貫通孔との係合により、把持部材の軸筒に対する周方向への回転や軸筒の軸線方向へのズレも防止されている。尚、このズレの防止は、周方向については、前述の軸筒側波形部24と把持部材側波形部26との係合によってもなされている。
さらに、本実施例のように、把持部材が金属材料で形成され、軸筒本体が樹脂材料で形成されている場合には、前述したその軸筒本体側の凸部、及び、把持部材側の貫通孔の形状による手触りの変化だけでなく、材質の相違による異なる感触を楽しむことも可能となっている。
【0019】
次に、本発明の第2実施例を図10〜図14に示し、説明する。第2実施例は、スリット部を曲線で形成し、前端から後端にかけてそのスリット部の幅(スリット幅)を変化させた把持部材の例である。尚、以下では、第1実施例と同様の構成に関する説明は省略する。
【0020】
本実施例においても軸筒本体5の前方部には、縮径部(把持部)18が形成されている。おり、その縮径部18には金属製の円筒状の把持部材19が装着されている。
本実施例においては、前記軸筒本体5の縮径部18の表面に、軸線方向に長さを有すると共に後方が縮径している変形楕円凸部30が複数形成されている。この変形楕円凸部30は、軸筒本体5の縮径部18の周方向に、90度毎に3箇所形成されており、その中央に位置する変形楕円凸部30は、クリップのクリップ本体29と対向する位置に形成されている。また、前記縮径部18のクリップのクリップ本体29の方向には、後述の把持部材19のスリット部35と対応する形状の凸部32が形成されている。この凸部32は、前記縮径部(把持部)の軸線方向の中央よりも前方が最細部33となっており、その最細部33の前後方向に向かって徐々に太くなる形状となっている(図13)。
前記変形楕円凸部30と凸部32は、第1実施例と同様に、いずれもその頂部から軸筒本体5の縮径部18に対して前記楕円凸部20の外形が拡大するテーパがかけられており(テーパ部34)、楕円凸部20と軸筒本体5の縮径部18との交差部分は、角部から形成されている。この楕円凸部20の角部近傍が弱部となっており、把持部材19の装着時に、前記弱部(角部近傍)が潰され、把持部材19が軸筒本体5に食い込むように固定される。そして、結果として、前記軸筒本体5に対して把持部材19の周方向の回転がより確実に防止されると共に、また、軸線方向のズレの防止となり、確実な把持部材19の固定をすることができる。勿論、この楕円凸部20と軸筒本体5の縮径部18との交差部分の形状は、前記角部に限らず、軸筒本体5の内径方向に凸の曲面部としても良い。
尚、本実施例においても、前記軸筒本体5の縮径部18の前方部には、円周突部23が形成されている。
【0021】
本実施例における金属製の円筒状の把持部材19について詳述する。
本実施例の把持部材19は、軸筒本体5に形成された前記変形楕円凸部30と対応する大きさ、及び、位置の変形楕円貫通孔31が複数形成されている。
そして、この把持部材19には、その前端部から後端部に渡り連続したスリット部35が形成されている。本実施例においては、このスリット部35は、把持部材19の長手方向の中央よりも前方が最細部36となっており、その最細部36の前後方向に向かって徐々に太くなる形状となっている(図14)。軸筒本体5の軸径に対するこのスリット部35の幅の最細部から最太部37の割合は、5%〜50%となるように形成しているが、その割合は、任意に変更することができる。望ましいのは、本実施例の5%〜50%である。その理由は、5%より小さい場合は、スリット部が拡開しづらく、組立に時間を要してしまうためであり、また、50%より大きい場合は、把持部材の弾性が得られず、把持部材が固定できなくなってしまうためである。
【0022】
軸筒本体5への把持部材19の装着方法は、第1実施例と同様に把持部材19を軸筒本体5の前方から挿入して装着するが、この方法に限らず、任意の方法で装着することが出来る。
本実施例の把持部材19の場合も、軸筒本体5への把持部材19の装着過程において、前記把持部材19のスリット部35が拡開し、また、その把持部材19の弾性(復元力)により軸筒本体5の把持部に適合した状態での装着が可能となっている。そして、前記把持部材19には、その前方から後方にかけて連続してスリット部35が形成されていることから、そのスリット部35により、把持部材19の拡開の程度が変化可能となり、多様な軸径に対応することができる把持部材19となっている。
【0023】
本実施例の場合には、前記把持部材18のスリット部35が、その軸線方向の位置により異なる幅を有していることから、筆記具のデザインの幅も広げることができる。
また、同時に、前記スリット部35の幅は、前端部よりも後端部の方を太く形成していることから、把持部材19を軸筒本体5の前方から挿入して装着した場合に懸念される、把持部材19の後端部による軸筒本体5の損傷の可能性を軽減することができる。
この他にも、本実施例にあっては、把持部材19の貫通孔及び軸筒本体5の凸部を、その前方が大径の変形楕円形状としていることから、デザイン性に加え、把持時の滑り止め効果や感触の相違による興趣性を向上させることができる。一般に、把持時には、把持部の前方に指先が振れた状態で把持することが多いため、その指先が触れやすい把持部の前方に変形楕円形状の大径部が形成されていることで、把持がしやすく、また、滑り止めにもなる。
【0024】
尚、図15、図16に示すように、本実施例の軸筒本体5の変形楕円凸部30と凸部32の頂部部分には、軸筒本体の周方向に平行な溝部38を複数形成しても良い(第2実施例の変形例)。溝部38を形成することで、筆記具を把持した際の滑り止め効果が向上する。この溝部の幅や間隔は、任意に定めることが出来る。
【0025】
以上のように、第1実施例、第2実施例を構成したが、この他にも、スリット形状は種々の形状とすることができる。その変形例を以下に示すが、いずれの場合にも多様な軸径に対応することができる把持部材が得られる。
図17は、スリット部の形状の第1変形例である。スリット部39の幅がその前方と後方で異なっており、本変形例においては、後方部におけるスリット幅が広くなっている。このように前方と後方でスリット幅が異なる事により、組み立ての際に把持部材19の前後が認識しやすくなり、組み立て時に誤った方向から把持部材を組み立てることを防ぐことが出来る。
また、図18は、スリット部の形状の第2変形例である。スリット部40の形状が、波形形状となっており、その幅は前端部から後端部にかけて同一に形成されている。このように構成することで、デザイン性が向上する。
更に、図19は、スリット部の形状の第3変形例である。本変形例でも、把持部材19の前端部から後端部にかけて連続してスリット部41が形成されているが、把持部材の中央付近で、その周方向に長さを有する階段状の形状となっている。このように構成することで、装着後に把持部材が外れてしまうことを確実に防ぐことが出来る。把持部材の外径方向に外力が加わった場合でも、その力が、階段状の段部42部分で留められ、スリット部全体に伝達されにくくなっているためである。
図20は、スリット部の形状の第4変形例である。本変形例でも、把持部材19の前端部から後端部にかけて連続してスリット部43が形成されているが、把持部材の中央付近で、S字形状の折り返し部44が形成されている。このように構成することで、装着後に把持部材が外れてしまうことを確実に防ぐことが出来る。把持部材の外径方向に外力が加わった場合でも、S字形状の前記折り返し部44部分同士が交差しひっかかる為、抜け防止対策となる。
【0026】
尚、スリット部の形状の変形例として、いずれも、円筒形の把持部材にスリット部を形成したものを示したが、この形状に限らず、第1実施例や第2実施例で示したように、把持部材に各種形状の貫通孔を形成しても良い。また、その把持部材に対応する形状の貫通孔を軸筒本体に形成することにより、デザインの幅を広げると共に、多様な感触が得られる把持部材が得られる。
また、把持部材には、前記貫通孔の代わりに、凹部や凸部を設けても良く、それらの組み合わせを形成しても良い。金属製の把持部材の場合には、ローレット加工で表面の凹凸部を形成したり、プレス加工により貫通孔や凹凸部を形成したりしても良い。また、硬質樹脂部材からなる把持部材の場合にも同様に、表面の一部或いは全体に凹凸部を形成したり、金型の割り方向に対して貫通孔を形成したりしても良い。いずれの場合にも、デザインの幅を広げると共に、多様な感触が得られる把持部材が得られる。
【0027】
また、以上の第1実施例、第2実施例、及び、スリット部の形状の各種変形例では、いずれも円筒状の把持部材及び軸筒本体を示したが、把持部材及び軸筒本体は円筒状に限定されるものではなく、筒体であれば良い。例えば、前記把持部材及び軸筒本体は、3角形状の筒体や5角形状の筒体、8角形状の筒体など角形状の筒体からなしても良い。いずれの場合においても、その把持部材を硬質材料から形成すると共に、その把持部材の前端から後端まで連続してスリット部を形成することで、多様な軸径に対応することができる把持部材が得られる。
【符号の説明】
【0028】
1 軸筒
2 パイプ
3 芯保持部材
4 先部材
5 軸筒本体
6 芯繰り出し機構
7 チャック体
8 チャックリング
9 芯タンク
10 縮径部
11 段部
12 段部
13 弾撥部材(コイルスプリング)
14 消しゴム
15 押圧部材
16 クリップ
17 凹部
18 縮径部(把持部)
19 把持部材
20 楕円凸部
21 テーパ部
22 弱部
23 円周突部
24 軸筒側波形部
25 楕円貫通孔
26 把持部材側波形部
27 スリット部
28 冶具
29 クリップ本体
30 変形楕円凸部
31 変形楕円貫通孔
32 凸部
33 最細部
34 テーパ部
35 スリット部
36 最細部
37 最太部
38 溝部
39 スリット部
40 スリット部
41 スリット部
42 段部
43 スリット部
44 折り返し部
L 芯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筆記具の軸筒の把持部に装着される把持部材であって、その把持部材を硬質材料から形成すると共に、筒状に形成し、また、その把持部材の前端から後端まで連続して形成されたスリット部を設けたことを特徴とする筆記具の把持部材。
【請求項2】
前記把持部材に、貫通孔、及び/又は、凹部、及び/又は、凸部のうち、少なくとも1種類を形成したことを特徴とする請求項1に記載の筆記具の把持部材。

【請求項3】
前記把持部材を金属材質から形成したことを特徴とする請求項1或いは請求項2に記載の筆記具の把持部材。
【請求項4】
前記把持部材の厚さを、0.1mm〜2.0mmとしたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の筆記具の把持部材。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の前記把持部材を、軸筒の把持部に装着したことを特徴とする筆記具。
【請求項6】
前記軸筒に凸部が形成されると共に、その凸部と係合する貫通孔が前記把持部材に形成されていることを特徴とする請求項5に記載の筆記具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2013−14014(P2013−14014A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−146403(P2011−146403)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(000005511)ぺんてる株式会社 (899)