説明

筆記具及び筆記具の製造方法

【課題】転写加工直後に絵柄と筒体との回転方向及び軸線方向の位置ズレを容易に判別でき、製造工程の作業能率や歩留りが向上する筆記具及び筆記具の製造方法を提供する。
【解決手段】筒体1の外周面に転写位置決め用目印4を視認可能に設け、前記筒体1の外周面に図柄3と転写位置決め用マーク5とを転写加工により設け、前記転写位置決め用目印4と前記転写位置決め用マーク5との周方向及び軸方向の位置を略一致させる。筒体1の外周面にクリップ2を設け、前記クリップ2の内方に前記転写位置決め用目印4と前記転写位置決め用マーク5を位置させる。クリップ2を正面視したとき、クリップ2が前記転写位置決め用目印4と前記転写位置決め用マーク5を隠蔽する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筆記具及び筆記具の製造方法に関する。詳細には、筒体(例えば、軸筒、キャップ等)の外周面に転写加工により図柄を設けた筆記具及び筆記具の製造方法に関する。尚、本発明において、「前」とはクリップの玉部側を指し、「後」とはクリップの取付基部側を指す。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、特許文献1には、軸筒の外面に転写印刷を施すことが開示されている。
【特許文献1】特開2001−113877号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記特許文献1の構造は、軸筒等の筒体の外周面に転写印刷される図柄が、筒体に対して周方向(回転方向)及び軸方向の位置合わせが必要である場合、図柄と筒体との位置ズレを目視により迅速に判別することは困難であるため、製造工程の作業能率が低下するおそれがある。
【0004】
また、クリップ等の別部材を筒体に取り付けた後に、該クリップ等の別部材によって図柄の位置ズレを判別する場合、不良品の検出が遅れ、製造工程の歩留りが低下するおそれがある。
【0005】
本発明は前記従来の問題点を解決するものであって、転写加工直後に図柄と筒体との周方向及び軸方向の位置ズレを容易に判別でき、製造工程の作業能率や歩留りが向上する筆記具及び筆記具の製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の第1の発明は、筒体1の外周面に転写加工により図柄3を設けた筆記具であって、筒体1の外周面に転写位置決め用目印4を視認可能に設け、前記筒体1の外周面に図柄3と転写位置決め用マーク5とを転写加工により設け、前記転写位置決め用目印4と前記転写位置決め用マーク5との周方向及び軸方向の位置を略一致させてなることを要件とする。
【0007】
前記第1の発明の筆記具は、筒体1の外周面に転写位置決め用目印4を視認可能に設け、前記筒体1の外周面に図柄3と転写位置決め用マーク5とを転写加工により設け、前記転写位置決め用目印4と前記転写位置決め用マーク5との周方向及び軸方向の位置を略一致させてなる構成により、製造工程において、転写加工直後(即ち、転写加工後の次の工程に移行する前)に筒体1の外周面に転写加工された図柄3と筒体1との周方向及び軸方向の位置ズレを、転写位置決め用目印4と転写位置決め用マーク5との周方向及び軸方向の位置を目視することにより容易に判別でき、製造工程の作業能率や歩留りが向上し、その結果、周方向及び軸方向の位置ズレのない図柄3を外周面に有する筆記具の筒体1を容易に得る。
【0008】
前記第1の発明で、筒体1の外周面に転写位置決め用目印4を視認可能に設ける構成とは、例えば、筒体1の外周面に転写位置決め用目印4を直接設ける構成、あるいは筒体1を透明性材料により形成し、該透明性の筒体1の内周面に転写位置決め用目印4を設ける構成が挙げられる。前記第1の発明で、転写位置決め用目印4は、例えば、筒体1の外周面または透明性の筒体1の内周面に、一体成形、刻設、穿設、加熱溶融等の手段によって、リブ、孔、凸部、凹部等の形状により得られるか、あるいは、塗料の塗布、印刷等の手段により形成される。前記転写位置決め用マーク5の形状は、円形、楕円形、三角形、四角形、直線形状等、いずれであってもよい。
【0009】
本願の第2の発明は、前記第1の発明の筆記具において、転写位置決め用目印が前記筒体1の射出成形時に形成された凹部或いは孔部であることを要件とする。
【0010】
前記第2の発明の筆記具は、転写位置決め用目印4を成形用樹脂の射出成形により形成するため、容易に均一なものを得ることができる。
【0011】
本願の第3の発明は、前記代又は大の発明の筆記具において、前記転写位置決め用マーク5が軸心に対して直角に形成された直線であることを要件とする。それにより、前記第3の発明の筆記具は、前記転写位置決め用目印4と前記転写位置決め用マーク5との位置関係を目視で確認することにより容易に転写加工の良否を判定することができる。
【0012】
本願の第4の発明の筆記具の製造方法は、筒体1に転写位置決め用目印4を外部より視認可能に設けた後、前記筒体1の外周面に図柄3と転写位置決め用マーク5とを転写加工により設け、その後、前記転写位置決め用目印4と前記転写位置決め用マーク5との周方向及び軸方向の位置ズレを目視により判別することにより、製造工程において、転写加工直後に筒体1の外周面に転写加工された図柄3と筒体1との周方向及び軸方向の位置ズレを容易に判別でき、製造工程の作業能率や歩留りが向上し、その結果、周方向及び軸方向の位置ズレのない図柄3を外周面に有する筆記具の筒体1を容易に得る。
【0013】
本願の第5の発明は、前記第4の発明において、前記転写位置決め用目印4と転写位置決め用マーク5との周方向及び軸方向の位置ズレを目視により判別した後、筒体1の外面にクリップ2を取り付け、前記クリップ2が、クリップ2を正面視したときに前記転写位置決め用目印4と前記転写位置決め用マーク5を隠蔽してなることを要件とする。前記第5の発明の筆記具の製造方法により、図柄3の見栄えが損なわれるおそれがない。
【0014】
尚、本発明で筒体1とは、例えば、一端にペン先を備えた軸筒、または、軸筒のペン先側に着脱自在のキャップ等の筆記用部品が挙げられる。尚、本発明で、図柄3とは、例えば、絵、模様、文字、記号、図形等が挙げられる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の筆記具は、転写加工直後に図柄と筒体との周方向及び軸方向の位置ズレを容易に判別でき、製造工程の作業能率や歩留りが向上する。
【0016】
本発明の筆記具の製造方法は、転写加工直後に図柄と筒体との周方向及び軸方向の位置ズレを容易に判別でき、製造工程の作業能率や歩留りが向上する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態の転写加工前の筒体の正面図である。
【図2】本発明の実施の形態の転写加工後の筒体の正面図である。
【図3】本発明の実施の形態の転写加工後の筒体において転写フィルムが周方向(回転方向)にずれている状態の正面図である。
【図4】本発明の実施の形態の転写加工後の筒体において転写フィルムが軸方向にずれている状態の正面図である。
【図5】本発明の実施の形態の筒体にクリップを取り付けた状態の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の筆記具の実施の形態を図1乃至図5に示す。
本実施の形態の筆記具は、筒体1と、該筒体1の後端部に取り付けられるクリップ2とを備える。前記クリップ2は、筒体の後端部に設けたクリップ取り付け凹部11に取り付けられる。前記筒体1が、筆記具の軸筒またはキャップを構成する。
【0019】
・筒体
前記筒体1は、合成樹脂の射出成形により得られる円筒状の部材である。前記合成樹脂は、例えば、ポリカーボネイト、ポリプロピレン等が挙げられる。
【0020】
前記筒体1には、転写位置決め用目印4が外部より視認可能に設けられる。前記転写位置決め用目印4は、筒体1を合成樹脂により射出成形したときに同時に形成される。
【0021】
さらに、前記筒体1の外周面には、転写加工(具体的には転写フィルムを用いた熱転写加工)により図柄3及び転写位置決め用マーク5が印刷される。前記図柄3は、絵、模様、文字、記号、図形等からなる。前記転写位置決め用マーク5は、図柄3の後方に設けられる。転写加工後に前記転写位置決め用目印4と前記転写位置決め用マーク5とは、周方向及び軸方向の位置が略一致している。
【0022】
・クリップ
前記クリップ2は、金属板の折り曲げ加工或いは樹脂の射出成形により得られる。前記クリップ2は、軸方向に延びるクリップ本体21と、該クリップ本体21の前端部内面に一体に突出形成される玉部と、該クリップ本体21の後端部に連設された取付基部とを備える。
前記筒体1に設けられたクリップ取り付け凹部11に、クリップに連接された取付基部を挿入することにより前記クリップ2が前記筒体1に取付けられる。
【0023】
・製造方法
本実施の形態の筆記具の製造方法を順に説明する。
【0024】
1.転写位置決め用目印の形成(図1参照)
筒体1と転写位置決め用目印4とを合成樹脂の射出成形により一体に形成する。それにより、筒体1に外部より視認可能な転写位置決め用目印4が形成される。詳細には、前記転写位置決め用目印4は、筒体1を合成樹脂により成形したときに同時に形成された四角形状の孔部である。
【0025】
2.図柄及び転写位置決め用マークの形成(図2参照)
次に、前記転写位置決め用目印4を有する筒体1の外周面に、転写加工により図柄3及び転写位置決め用マーク5を設ける。前記転写位置決め用マーク5は、軸線に対して直角に形成された直線である。前記転写位置決め用マーク5は、図柄3の後方に設けられる。 また、前記転写位置決め用目印4と前記転写位置決め用マーク5とが前後方向、及び左右方向に近接して配置される。それにより、前記転写位置決め用目印4と転写位置決め用マーク5との周方向及び軸方向の位置ズレを目視により容易に判別できるとともに、図柄3と筒体1との周方向及び軸方向の位置ズレが大きい筒体1(転写不良品)を後の工程に流すことを回避でき、製造工程の作業能率や歩留り(生産性)が向上する。その結果、周方向及び軸方向の位置ズレのない図柄3を外周面に有する筆記具の筒体1を容易に得る。
【0026】
3.転写加工の良否判定(図3及び図4参照)
本実施例において、前記転写位置決め用目印4と前記転写位置決め用マーク5とが離隔したものを転写不良とする。従って図3及び図4の転写加工済み筒体1は、それぞれ前記転写位置決め用目印4と前記転写位置決め用マーク5とが接触しているため容易に良品と判定することができる。
【0027】
4.クリップの取り付け(図5参照)
次に、転写加工後に良品と判定された筒体1の後端部に設けられたクリップ取り付け凹部11に、クリップ2の取付基部を挿入してクリップ2が取付けられる。それにより、クリップ2を正面視したとき、前記転写位置決め用目印4と前記転写位置決め用マーク5がクリップ2により隠蔽され、外部より視認不能となり、図柄3を有する筒体1の見栄えが損なわれることがない。
【符号の説明】
【0028】
1 筒体
11 クリップ取付け凹部
2 クリップ
21 クリップ本体
3 図柄
4 転写位置決め用目印
5 転写位置決め用マーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒体の外周面に転写加工により図柄を設けた筆記具であって、前記筒体の外周面に転写位置決め用目印を視認可能に設け、図柄と転写位置決め用マークを設けた転写フィルムを前記筒体外周面に転写加工し、前記転写位置決め用目印と前記転写位置決め用マークの周方向及び軸方向の位置を略一致させてなることを特徴とする筆記具。
【請求項2】
前記転写位置決め用目印が前記筒体の射出成形時に形成された凹部或いは孔部であることを特徴とする請求項1に記載の筆記具。
【請求項3】
前記転写位置決め用マークが軸心に対して直角に形成された直線であることを特徴とする請求項1又は2に記載の筆記具。
【請求項4】
筒体の外周面に転写加工により図柄を設ける筆記具の製造方法であって、筒体に転写位置決め用目印を視認可能に設けた後、前記筒体の外周面に図柄と転写位置決め用マークとを転写加工により設け、その後、前記転写位置決め用目印と前記転写位置決め用マークとの周方向及び軸方向の位置ズレを目視により判別する筆記具の製造方法。
【請求項5】
前記転写位置決め用目印と前記転写位置決め用マークとの周方向及び軸方向の位置ズレを目視により判別した後、筒体の外面にクリップを取り付け、前記クリップが、クリップを正面視したとき前記転写位置決め用マークを隠蔽してなる請求項4記載の筆記具の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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