説明

筆記具

【課題】 硬くて脆く、寸法精度の出しにくい陶器や磁器で成形した軸筒やキャップの外筒をプラスチックや金属で成形された他の部品と正確、かつ確実に固定することが可能な筆記具を提供する。
【解決手段】 陶磁器製の軸筒1両端部の外周面を研磨して研磨切欠き部11,11を形成し、軸筒内に配置された連結筒2の尾端部を軸筒の尾端に装着される尾冠3に螺着し、軸筒両端の研磨切欠き部に円環状の挟圧部材4,5をそれぞれはめ込むように配置し、尾冠を連結筒にねじ込むことにより挟圧部材が軸筒を挟圧保持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筆記具本体の軸筒やキャップの外筒が陶器や磁器で成形された筆記具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
筆記具は、本来の筆記機能の他に外観形状や軸筒などの材質の質感などの意匠的要素が重要視される商品である。ことに万年筆は高級感が強調されることがあり、通常はプラスチックやステンレスなどの金属で成形される軸筒やキャップの外筒などを木材や象牙などの天然素材で成形することがあるが、軸筒やキャップの外筒を表面に美しい意匠模様などが施された陶器や磁器で成形すると、美しくて重厚感があり、筆記具の高級感を極めて強く醸し出すことができる。
【特許文献1】特開2005−88319号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
プラスチックやステンレスなどの金属で成形される軸筒やキャップの外筒は寸法精度よく成形することができ、ねじ溝の加工なども容易であるが、焼き物である陶器や磁器は長さや外径や内径の寸法などを精度よく成形することは困難である。また、硬くて脆いためにねじ溝などを成形することは困難であり、したがって、陶器や磁器で成形された軸筒やキャップの外筒をプラスチックや金属で成形された他の部品、例えば尾冠や内筒などと直接接続して固定することはほとんど不可能である。
【0004】
そこで本発明は、硬くて脆く、寸法精度の出しにくい陶器や磁器で成形した軸筒やキャップの外筒をプラスチックや金属で成形された他の部品と正確、かつ確実に固定することが可能な筆記具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる目的を達成するために、請求項1の発明は、筆記具の軸筒が陶磁器製の円筒からなり、この軸筒の両端部の外周面を研磨して研磨周面と研磨段面を有する研磨切欠き部を形成し、軸筒内に、先端に大先が連結される連結筒を配置し、この連結筒の尾端部を軸筒の尾端に装着される尾冠に螺着し、軸筒両端の研磨切欠き部に円環状の挟圧部材をそれぞれはめ込むように配置し、尾冠を連結筒にねじ込むことにより挟圧部材が軸筒を挟圧保持するようにする。また、請求項2のように、この挟圧部材を尾冠および連結筒とそれぞれ一体に成形してもよい。
【0006】
請求項3の発明は、筆記具のキャップの外筒が陶磁器製の円筒からなり、この外筒の両端縁の外周面を研磨して研磨周面と研磨段面を有する研磨切欠き部を形成し、この外筒の頂部に装着される頭冠に螺着される内筒を外筒内に配置し、外筒両端の研磨切欠き部に円環状の挟圧部材をそれぞれはめ込むように配置し、頭冠を内筒にねじ込むことにより挟圧部材が外筒を挟圧保持するようにする。また、請求項4のように、この挟圧部材を頭冠および内筒とそれぞれ一体に成形してもよい。
【発明の効果】
【0007】
このように、硬くて脆い陶磁器製の軸筒やキャップの外筒の両端縁を研磨して切欠き部を形成するので、切欠き部の研磨周面と研磨段面を寸法精度よく形成することができる。そして、この切欠き部に円環状の挟圧部材をそれぞれはめ込むようにして配置し、尾冠と連結筒、あるいは頭冠と内筒をねじ込むことにより、挟圧部材が軸筒や外筒を挟圧保持するので、陶器や磁器で成形した軸筒やキャップの外筒をプラスチックや金属で成形された他の部品と正確、かつ確実に固定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に図面に基づいて発明を実施するための最良の形態を説明する。図1は請求項1の実施例を示すが、円筒状の軸筒1内に連結筒2が配置されている。連結筒2の先端部は軸筒1の先端開口から突出しており、連結筒2の先端開口に大先6が着脱可能に連結されいる。連結筒2内にはインキカートリッジ(図示せず)が収容され、インキカートリッジ内のインキがペン芯62を介してペン先61に供給されて筆記に供される。軸筒1の尾端には連結筒2に螺着された尾冠3が装着されている。
【0009】
軸筒1は磁器や陶器からなるが、例えば有名な有田焼の磁器が使用され、表面には美しい模様などが施されている。このため、加工前の円筒状の素材は長さ、外径や内径寸法はばらつきがあって真円度もよくないが、図2に示すように、先ず2点鎖線で示す除去部分15をカットして軸筒1の全長を定寸にし、次に軸筒1両端の外周面を研磨して研磨切欠き部11、11を形成する。これにより、研磨切欠き部11には真円度および寸法精度のよい研磨周面12と研磨段部13が形成される。ちなみに、研磨前の外径はφ16.5mmであったが、研磨周面12の外径はφ15.0mm、長さが1.5mmである。
【0010】
連結筒2は例えば真鍮にて略筒状に成形されたものであり、図3に示すように、尾端部の外周に外ねじ溝21が形成され、先端近傍には後向きの挟圧段部22が形成されている。尾端3はアクリル樹脂や真鍮で成形され、中央孔に内ねじ溝31が形成されており、また、前向きの挟圧段部32が形成されている。第1挟圧部材4と第2挟圧部材5は、真鍮にて盆状体の底面に大きな孔が形成された形状をしている。つまり、円環部が断面L字状をした装飾性の強いリング状である。
【0011】
次に組立方法を図3に基づいて説明すると、先ず、第1挟圧部材4と第2挟圧部材5をそれぞれ軸筒1両端の研磨切欠き部11、11にはめ込み、次に尾冠3を第1挟圧部材4の中央の孔を通して軸筒1の尾端開口にはめ込むとともに、大先6が先端開口に接続された連結筒2を第2挟圧部材5の中央の孔を通して軸筒1の先端開口から挿入し、連結筒2の外ねじ溝21を尾冠3のうちねじ溝31にねじ込んで螺合する。これにより第1挟圧部材4は、図4に示すように、尾冠3の挟圧段部32に圧接されて一方の研磨段部13に圧接し、第2挟圧部材5は、図5に示すように、連結筒2の挟圧段部22に圧接されて他方の研磨段部13に圧接する。つまり、第1挟圧部材4と第2挟圧部材5が軸筒1を挟圧保持する。このとき、研磨周面12の真円度がよいので、研磨周面12と第1挟圧部材4および第2挟圧部材5とのクリアランスHは0.005〜0.10mm程度の小さなものでよく、また、挟圧段部32の寸法精度もよいので、正確に、かつ確実に組み付けることができる。
【0012】
もしも、研磨切欠き部11を4形成することなく、軸筒1の端縁に第1挟圧部材4および第2挟圧部材5を被せると,軸筒1の真円度が悪いので、このクリアランスHを大きくとる必要があり、第1挟圧部材4および第2挟圧部材5のリングが軸筒1の表面から外側に向けて大きく突出し、更にはクリアランスである隙間が見えて外観上不都合である。
なお、本実施例では、第1挟圧部材4および第2挟圧部材5を尾冠3および連結筒4と別部品としたが、第1挟圧部材4と尾冠3、および第2挟圧部材5と連結筒2を一体の部品としてもよい。
【0013】
次に図6は請求項4の実施例を示すが、キャップの外筒7は、前記の軸筒1と同じく磁器や陶器からなる筒状体であり、両端に研磨切欠き部71,71が形成されていることも同じである。外筒7内に配置される内筒8は真鍮にて有底筒状に成形され、その頂面にねじ棒82が突設されている。そして、内筒8の開口部には一方の研磨切欠き部71にはめ込むことができる挟圧部81が形成されている。外筒7の頂部に装着される頭冠9の中央孔にはねじ溝92が形成され、その先端には他方の研磨切欠き部71にはめ込むことができる挟圧部81が形成されている。そして、ねじ棒82をねじ溝92にねじ込んで螺合すると内筒8の挟圧部81と頭冠9の挟圧部91で外筒7が挟圧保持されるが、この場合も、軸筒1の場合と同様に、正確、かつ確実に外筒7を保持することができる。
なお、この実施例においては、内筒8および頭冠9にそれぞれ挟圧部81ないし挟圧部91を一体にしたが、図1に示す実施例の場合と同様に、挟圧部81ないし挟圧部91を内筒8および頭冠9と分離してリング状の別部品にしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】請求項1の実施例の一部断面図である。
【図2】軸筒の断面図である。
【図3】請求項1の実施例の分解図である。
【図4】図1A部の拡大図である。
【図5】図1B部の拡大図である。
【図6】請求項4の実施例の断面図である。
【符号の説明】
【0015】
1 軸筒
11 研磨切欠き部
12 研磨周面
13 研磨段部
2 連結筒
21 外ねじ溝
22 挟圧段部
3 尾冠
31 内ねじ溝
32 挟圧段部
4 第1挟圧部材
5 第2挟圧部材
6 大先
7 外筒
71 研磨切欠き部
8 内筒
81 挟圧部
9 頭冠
91 挟圧部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
筆記具の軸筒が陶磁器製の円筒からなり、該軸筒の両端部の外周面が研磨されて研磨周面と研磨段面を有する研磨切欠き部が形成され、該軸筒内に、先端に大先が連結される連結筒が配置され、該連結筒の尾端部は該軸筒の尾端に装着される尾冠に螺着され、該軸筒両端の研磨切欠き部に円環状の挟圧部材がそれぞれはめ込むように配置され、尾冠を連結筒にねじ込むことにより挟圧部材が軸筒を挟圧保持することを特徴とする筆記具。
【請求項2】
前記挟圧部材が尾冠および連結筒とそれぞれ一体に成形されたことを特徴とする請求項1の筆記具。
【請求項3】
筆記具のキャップの外筒が陶磁器製の円筒からなり、該外筒の両端部の外周面が研磨されて研磨周面と研磨段面を有する研磨切欠き部が形成され、該外筒の頂部に装着される頭冠に螺着される内筒が外筒内に配置され、該外筒両端の研磨切欠き部に円環状の挟圧部材がそれぞれはめ込むように配置され、頭冠を内筒にねじ込むことにより挟圧部材が外筒を挟圧保持することを特徴とする筆記具。
【請求項4】
前記挟圧部材が頭冠および内筒とそれぞれ一体に成形されたことを特徴とする請求項3の筆記具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−28941(P2009−28941A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−193064(P2007−193064)
【出願日】平成19年7月25日(2007.7.25)
【出願人】(000002314)セーラー万年筆株式会社 (49)