説明

筋力トレーニング用具

【課題】 本発明は、筋の動的収縮の1サイクル中の荷重変化が小さく、不使用時には折り畳め、収納や運搬が容易な筋力トレーニング用具を提供することを目的とする。
【解決手段】 前記筋力トレーニング用具は、面状に形成され、各々独立した2つのベース材と、面状に形成され、一方の面内で前記2つのベース材の端部と接続される基材と、面状に形成され、対向する二つの端部および前記端部から離間した二つの位置が各々前記2つのベース材の面上に接続される連結部材とで構成され、前記2つのベース材には、各々のベース材内に独立した2以上の変形自在な密閉容器が取付けられ、同一ベース材に取付けられた前記密閉容器は、流体が移動するための経路で連結され、かつ少なくともいずれかの前記密閉容器に1以上の流体注入口が設けられることを特徴とする筋力トレーニング用具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筋の動的収縮を伴う筋力トレーニング用具に関するものであって、特に持ち運びが可能なほど軽量で、かつ不使用時の収納性に優れた筋力トレーニング用具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、筋力トレーニング用具としては据付型のトレーニングマシンが一般的であり、例えば特許文献1には比較的簡易な構造のトレーニングマシンが開示されている。また、持ち運びが可能な簡易型のトレーニング用具としては、弾性体を上下肢で挟み込むもの(例えば特許文献2)や、上下肢を剛体に拘束し、剛体を内外方向に押圧するもの(例えば特許文献3)が提案されている。また、チューブやダンベルなども使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3151954号公報
【特許文献2】実用新案登録第3139627号公報
【特許文献3】実用新案登録第3151248号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のトレーニングマシンは使用者の体重を利用して負荷を加えるので、下肢を開くときと閉じるときで負荷の大きさが異なり、さらに膝や股関節にも負担がかかるという課題を有していた。負荷の大きさを整えるために流体シリンダー等を用いると、トレーニングマシンは重くなり持ち運びは困難であった。
【0005】
特許文献2のトレーニング用具は、弾性体を下肢に挟んで使用するもので、弾性体の圧縮量により連続的に負荷が変化するうえ下肢を閉じる方向にのみ負荷がかかるもので、内転筋群は鍛えられるが外転筋群は鍛えられないという課題を有していた。また、特許文献3のトレーニング用具は、剛体で下肢を固定するので内転筋群、外転筋群ともに負荷をかけることができるが、筋の動的伸縮を伴わないトレーニング(アイソメトリック運動)となり、動作中に発揮される筋力のトレーニング効果を得にくいものであった。
【0006】
チューブは、特許文献2のトレーニング用具と同様に、チューブの伸び量により連続的に負荷が変化するうえチューブを伸ばす方向のみに負荷がかかるものである。さらにダンベルは関節の角度により負荷の大きさが変化するものである。このため、従来の軽量トレーニング用具は筋の動的収縮の1サイクル(例えば股関節の開閉運動であれば、下肢を閉じた初期位置から下肢を開き、再び初期位置に閉じるまでの工程)中に加わる負荷の変動が大きく、筋力トレーニング効率が低いという課題を有していた。
【0007】
本発明は、かかる課題を解決し、軽量で持ち運びが容易な筋の動的収縮を伴う筋力トレーニング用具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の筋力トレーニング用具は、面状に形成され、各々独立した2つのベース材と、面状に形成され、一方の面内で2つのベース材の端部と接続される基材と、面状に形成され、対向する二つの端部および前記端部から離間した二つの位置が各々前記2つのベース材の面上で接続される連結部材とで構成され、2つのベース材には、各々のベース材内に独立した2以上の変形自在な密閉容器が取付けられ、同一ベース材に取付けられた密閉容器は、流体が移動するための経路で連結され、かつ少なくともいずれかの密閉容器に1以上の流体注入口13が設けられたことを特徴とする筋力トレーニング用具である。
【0009】
好ましくは、筋の動的収縮の1サイクル中の荷重の変化が小さくなるように、本発明の筋力トレーニング用具の2つのベース材は、鏡面対象形である筋力トレーニング用具である。
【0010】
さらに好ましくは、前記密閉容器のうち少なくとも1つは筋力トレーニング用具の装着者の上肢または下肢の外面に対応する位置に設けられ、少なくとも別の1つは装着者の上肢または下肢の内面に対応する位置に設けられたことを特徴とする、筋力トレーニング用具である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、筋の動的収縮の1サイクル中の荷重変化が小さく、不使用時には折り畳め、収納や運搬が容易な筋力トレーニング用具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の筋力トレーニング用具である。
【図2】本発明の筋力トレーニング用具の使用時模式図である。
【図3】筋力トレーニング用具のベース材である。
【図4】筋力トレーニング用具の基材である。
【図5】本発明の筋力トレーニング用具の使用説明図である。
【図6】従来の据置き型トレーニングマシンである。
【図7】従来の簡易型トレーニング用具である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の筋力トレーニング用具の実施の形態を図1を用いて説明する。本発明の筋力トレーニング用具1は、面状に形成され、各々独立した2つのベース材2a、2bと、面状に形成され、一方の面内で前記2つのベース材2a、2bの端部100と接続される基材3と、面状に形成され、対向する二つの端部121a、121bおよび前記端部から離間した二つの位置120a、120bが各々前記2つのベース材2a、2bの面上に接続される連結部材4とで構成され、前記2つのベース材2a、2bには、各々のベース材内に独立した2以上の変形自在な密閉容器5が取付けられ、同一ベース材に取付けられた前記密閉容器5は、流体が移動するための経路12で連結され、かつ少なくともいずれかの前記密閉容器5に1以上の流体注入口13が設けられたことを特徴とする筋力トレーニング用具である。
【0014】
図2は本発明の筋力トレーニング用具1の組み立て図である。2つのベース材2a、2bの端部100b付近に配置された連結手段11a、11bと、基材の両端付近に配置された連結手段10a、10bとを各々接続し、2つの環状部110、111を形成する。このとき密閉容器5は、2つの環状部が近接する面112、113と遠位で対向する面114、115に配置される。
【0015】
ここでは、大腿用のトレーニング用具を例に説明する。2つの環状部110、111は、ベース材と基材を下肢に巻きつけ、連結手段10a、10bと連結手段11a、11bを接続して作る。このとき、面112と面113に配置された密閉容器は装着者の上肢または下肢の内面に、面114と面115に設けられた密閉容器は装着者の上肢または下肢の外面に置かれている。ここで、上肢または下部の外面とは上肢または下肢の関節を外転または外旋する方向の面を、上肢または下肢の内面とは上肢または下肢の関節を内転または内旋する方向の面をいう。
【0016】
また、前記2以上の変形自在な密閉容器5を取付けられた前記2つのベース材2が鏡面対象形であると、上肢や下肢にかかる負荷が左右で均等になりバランスよく筋力トレーニングを行うことができる。なお、ここでいう鏡面対象とは、2つのベース材の形状が同じで裏表が逆になっていることをいう。
【0017】
図3はベース材2の部品図である。ベース材2は表地と裏地からなり、周囲を補強テープで固着して形成する。端部100b近傍には基材の連結手段10と着脱可能に接続する連結手段11(本実施例では面ファスナー)が固着される。さらに端部100,100b近傍には変形自在な密閉容器5が表地と裏地の間に配置される。前記密閉容器5は密閉容器周辺の表地と裏地を固着して取付けられる。さらに表地には密閉容器5を連結する経路12を通す穴51が設けられ、さらに注入孔に対応する孔52を有している。固着方法としては、縫着や接着が用いられる。
【0018】
本ベース材は大腿用の筋力トレーニング用具に用いるものであり、全長Lは590mm、全幅Bは250mmである。良好な装着感(密着感)を得る為に、ベース材の外形は大腿の外周寸法に合わせて扇状の外形としたが使用する部位にあわせて単純な矩形等を採用可能である。
【0019】
図4は基材3の部品図である。基材3は生地からなり、周囲を補強テープで固着して形成する。基材3の一方の面の両端近傍には、ベース材2の連結手段11と着脱可能に接続できる連結手段10が配置される。また端部から離間した位置で前記2つのベース材2の端部100が接続される(破線55は、端部100が接続される位置の仮想線である)。基材3は上肢や下肢の開閉運動に合うように扇形に設けられ、2つのベース材は装着感を高めるように一方に開くように接続される。
【0020】
本発明の大腿用筋力トレーニング具1の使用例を図5を用いて説明する。ここでは手前が下肢の付け根側で矢印Dが下肢の関節を外転または外旋する方向である。ベース材2と基材3を両下肢の大腿部に巻きつけるようにして各々の連結手段10と11を接続して環状部110、111を作る。環状部110は右足、111は左足に対応する。面112と面114、および面113と面115に配置された前記密閉容器5は各々経路12で連結されており、前記密閉容器5には予め注入口13から流体が注入されている。
【0021】
本使用例では、面114と面115は下肢の外面、面112と面113は下肢の内面に該当し、面112と面114、及び面113と面115に配置される密閉容器5は各々経路12で連結されており、下肢の関節を外転または外旋する方向へ動かすと外面の密閉容器から内面の密閉容器に、下肢の関節を内転または内旋する方向へ動かすと内面の密閉容器から外面の密閉容器に、経路を通して流体が移動する。流体移動時の負荷は大腿部の開閉速度によりすこしは変化するが、運動中の大半はほぼ一定負荷であるから内転筋群と外転筋群のトレーニング効果は高い。経路12は任意の位置に設けられるが、経路12の保護、装着感の転で環状部の外側に配置し、ベース材2と連結部材4の間を通すことが望ましい。
【0022】
本例ではベース材、基材、連結材にはナイロンまたはポリエステルを使用したが、レーヨン、綿、ポリウレタンなども利用可能である。また密閉容器にはポリウレタンを使用したがポリ塩化ビフェニールやオレフィン系EVAなども利用可能である。また、流体には空気を使用したが、求める負荷に応じて気体、液体、固形流動体の利用も可能である。さらには経路に流量調節手段を設けて負荷を調整してもよい。
【0023】
なお、本実施例では大腿用のトレーニング用具について説明したが、それ以外にも太腿の屈曲や伸展、股関節の内外旋、上肢(上腕)、肩、胸部、脹脛等の筋力トレーニング用具に広く利用可能である。
【符号の説明】
【0024】
1 筋力トレーニング用具
2 ベース材
3 基材
4 連結部材
5 密閉容器
10 連結手段
11 連結手段
12 経路
13 注入口
100、100b 端部
101、102 端部
110、111 環状部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筋力トレーニング用具であって、
前記筋力トレーニング用具1は、面状に形成され、各々独立した2つのベース材2a、2bと、
面状に形成され、一方の面内で前記2つのベース材2a、2bの端部100と接続される基材3と、
面状に形成され、対向する二つの端部121a、121bおよび前記端部から離間した二つの位置120a、120bが各々前記2つのベース材2a、2bの面上に接続される連結部材4とで構成され、
前記2つのベース材2a、2bには、各々のベース材内に独立した2以上の変形自在な密閉容器5が取付けられ、
同一ベース材に取付けられた前記密閉容器5は、流体が移動するための経路12で連結され、かつ少なくともいずれかの前記密閉容器5に1以上の流体注入口13が設けられたことを特徴とする筋力トレーニング用具。
【請求項2】
前記2以上の変形自在な密閉容器を取付けられた前記2つのベース材は、鏡面対象形であることを特徴とする請求項1の筋力トレーニング用具。
【請求項3】
前記密閉容器5のうち少なくとも1つは筋力トレーニング用具の装着者の上肢または下肢の外面に対応する位置に設けられ、少なくとも別の1つは装着者の上肢または下肢の内面に対応する位置に設けられたことを特徴とする、請求項1または請求項2の筋力トレーニング用具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−101687(P2011−101687A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−256999(P2009−256999)
【出願日】平成21年11月10日(2009.11.10)
【出願人】(000005935)美津濃株式会社 (239)