説明

筋萎縮性側索硬化症(ALS)又はALSに起因する疾患の新規治療剤

下記の式(式中の各記号は明細書記載のものと同義である。)で示されるピラゾロン誘導体の用法、用量並びに投与期間に特徴を有する、筋萎縮性側索硬化症(ALS)又はALSに起因する症状の治療及び/又は進行抑制のための薬剤を提供する。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筋萎縮性側索硬化症(以下、ALSと記すこともある。)又はALSに起因する症状の治療及び/又は進行を抑制するための薬剤に関する。
【背景技術】
【0002】
運動ニューロン疾患の一つであるALSは、手の脱力、手指の運動障害及び上肢の線維束攣縮などの初期症状から、筋萎縮・筋力低下、球麻痺や筋肉の線維束攣縮を経由し、呼吸不全に至る難病である。ALSは、発症部位により上肢型、球型、下肢型及び混合型に分けられ、いずれの型でも症状の進行とともに全身の筋群が侵される。
【0003】
ALSの病因はまだ十分に解明されていないが、主な病因として、(1)自己免疫説(Caチャンネルに対する自己抗体の出現)、(2)興奮性アミノ酸過剰・中毒説(細胞外グルタミン酸の増加とグルタミン酸の運搬障害)、(3)酸化的ストレス障害説(Cu/Zn superoxide dismutase(SOD)遺伝子異常とフリーラジカルによる神経細胞障害)、(4)細胞骨格障害説(運動神経細胞への neurofilament の蓄積や封入体の出現)、(5)神経栄養因子の欠損などが仮説として提唱されている。
【0004】
現在、ALSの病勢進展の抑制に効果がある医薬品としては、グルタミン酸作動性神経におけるグルタミン酸伝達を抑制するリルゾール(riluzole)が承認されているにすぎない。しかしながら、リルゾールについては、有効性が確認できないという報告もあり、評価が一定していない。
【0005】
また、上述したとおり、ALSは最終的には呼吸不全に至る深刻な疾患であるが、この呼吸機能の低下に有効な医薬についてはこれまで報告されていない。例えば、ALSの治療に用いられ得る薬物として検討が進められているBDNF(非特許文献1)、RhIGF−1(非特許文献2)、ギャバペンチン(非特許文献3、4)およびN−アセチルシステイン(非特許文献5)については、呼吸機能の低下を抑制できないことが知られている。
【0006】
ところで、下式(I)
【0007】
【化1】

【0008】
(式中、R1は水素原子、アリール、炭素数1〜5のアルキル又は総炭素数3〜6のアルコキシカルボニルアルキルを表し、R2は、水素原子、アリールオキシ、アリールチオ、炭素数1〜5のアルキル又は炭素数1〜3のヒドロキシアルキルを表し、あるいは、R1及びR2は、共同して炭素数3〜5のアルキレンを表し、R3は水素原子、炭素数1〜5のアルキル、炭素数5〜7のシクロアルキル、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル、ベンジル、ナフチル又はフェニル、又は炭素数1〜5のアルコキシ、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル、総炭素数2〜5のアルコキシカルボニル、炭素数1〜3のアルキルチオ、炭素数1〜4のアルキルアミノ、総炭素数2〜8のジアルキルアミノ、ハロゲン原子、トリフルオロメチル、カルボキシル、シアノ、水酸基、ニトロ、アミノ、及びアセトアミドからなる群から選ばれる同一若しくは異なる1〜3個の置換基で置換されたフェニルを表す。)
で示されるピラゾロン誘導体については、医薬の用途として、脳機能正常化作用(特許文献1参照)、過酸化脂質生成抑制作用(特許文献1参照)、抗潰瘍作用(特許文献2参照)、血糖上昇抑制作用(特許文献3参照)、眼疾患予防・治療剤(特許文献4参照)及び筋萎縮性側索硬化症治療剤(特許文献5参照)等が知られている。
【0009】
しかしながら、これらの各刊行物には、上記ピラゾロン誘導体がALS治療に有用であることは、示唆ないし教示されているものの、患者に対する投与形態、投与量及び投与回数等は具体的に開示されていない。さらに、また、3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オンがALS患者の呼吸機能低下を抑制する効果を有することは報告されていない。
【0010】
一般に医薬品の効能追加の承認には新たな臨床試験において最適な投与方法を確認する必要がある。また、投与方法の変更によっては従来知られていなかった副作用発現等の可能性も検討する必要があり、当業者が最適な投与方法を予測することは困難である。
【0011】
【非特許文献1】The BDNF Study Group(PhaseIII), Neurology., 52, 1427(1999)
【非特許文献2】Lai EC, et.al., Neurology., 49, 1621(1997)
【非特許文献3】Miller RG, et.al., Neurology., 47, 1383(1996)
【非特許文献4】Miller RG, et.al., Neurology., 56, 843(2001)
【非特許文献5】Louwerse ES, et.al., Arch Neurol., 52, 559(1995)
【特許文献1】欧州特許公開公報第208874号公報
【特許文献2】特開平3-215425号公報
【特許文献3】特開平3-215426号公報
【特許文献4】特開平07-025765号公報
【特許文献5】国際公開公報WO02/34264号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の課題は、新たなALS又はALSに起因する症状の治療及び/又は進行を抑制するための薬剤を提供することにある。また、ALS治療の必要な患者に対し、副作用等の発現を最小限にしながら、治療上有効な量のピラゾロン誘導体を投与する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は上記の課題を解決すべく鋭意努力した結果、2001年6月以来、脳保護剤(一般名「エダラボン」、商品名「ラジカット」:三菱ウェルファーマ株式会社製造・販売)として上市されている医薬組成物が、その用法、用量並びに投与期間を変更することによりALS又はALSに起因する症状の治療及び/又は進行抑制に有用であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施例2の「ラジカット注30mg」1日2アンプル投与の第1期投与前〜第6期投与終了時の患者12名分の動脈血二酸化炭素分圧(PaCO)の変化を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明は、以下の薬剤に関する。
1.下記一般式(I)
【0016】
【化2】

【0017】
(式中、R1は水素原子、アリール、炭素数1〜5のアルキル又は総炭素数3〜6のアルコキシカルボニルアルキルを表し、R2は、水素原子、アリールオキシ、アリールチオ、炭素数1〜5のアルキル又は炭素数1〜3のヒドロキシアルキルを表し、あるいは、R1及びR2は、共同して炭素数3〜5のアルキレンを表し、R3は水素原子、炭素数1〜5のアルキル、炭素数5〜7のシクロアルキル、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル、ベンジル、ナフチル又はフェニル、又は炭素数1〜5のアルコキシ、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル、総炭素数2〜5のアルコキシカルボニル、炭素数1〜3のアルキルチオ、炭素数1〜4のアルキルアミノ、総炭素数2〜8のジアルキルアミノ、ハロゲン原子、トリフルオロメチル、カルボキシル、シアノ、水酸基、ニトロ、アミノ、及びアセトアミドからなる群から選ばれる同一若しくは異なる1〜3個の置換基で置換されたフェニルを表す。)
で示されるピラゾロン誘導体、若しくは生理学的に許容される塩、又はそれらの水和物、若しくは溶媒和物を有効成分とする筋萎縮性側索硬化症又は筋萎縮性側索硬化症に起因する症状の治療及び/又は進行の抑制に用いるための薬剤であって、治療及び/又は進行を抑制する期間中に1日以上の休薬期間を1回又は2回以上設ける薬剤。
2.ピラゾロン誘導体が3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オンである1に記載の薬剤。
3.約7日〜約14日間の投薬期間後に休薬期間を設けることを特徴とする1又は2に記載の薬剤。
4.2回目以降の投薬期間が約5日〜約14日間である1〜3のいずれかに記載の薬剤。
5.休薬期間が約14日〜約16日間である1〜4のいずれかに記載の薬剤。
6.投薬期間及び休薬期間が14日間である1〜5のいずれかに記載の薬剤。
7.14日間の初回投薬期間後に14日間の休薬期間を設けた後に以下の投薬期間及び休薬期間を繰り返す1又は2に記載の薬剤。
投薬期間:週5日を2週間、次いで、休薬期間:14日間
8.1日あたりの投与量が、有効成分がピラゾロン誘導体の場合にはピラゾロン誘導体約15〜約240mg、ピラゾロン誘導体の生理的に許容される塩又はピラゾロン誘導体若しくはその塩の水和物若しくは溶媒和物の場合にはピラゾロン誘導体約15〜約240mg相当量である1〜7のいずれかに記載の薬剤。
9.1日あたりの投与量が、有効成分がピラゾロン誘導体の場合にはピラゾロン誘導体約60mg、ピラゾロン誘導体の生理的に許容される塩又はピラゾロン誘導体若しくはその塩の水和物若しくは溶媒和物の場合にはピラゾロン誘導体約60mg相当量である1〜8のいずれかに記載の薬剤。
10.1日1回投与である1〜9のいずれかに記載の薬剤。
11.投与が持続的投与である1〜10のいずれかに記載の薬剤。
12.持続的投与が点滴による静脈内投与である11に記載の薬剤。
13.点滴による静脈内投与における投与速度が1分あたり、ピラゾロン誘導体又はピラゾロン誘導体相当量約0.5〜約1mgである12に記載の薬剤。
14.持続的投与が、1分あたりのピラゾロン誘導体又はピラゾロン誘導体相当量投与量を約0.5〜約1mgとする点滴による静脈内投与と実質的に同等である投与形態である11に記載の薬剤。
15.筋萎縮性側索硬化症に起因する症状が呼吸機能の低下、音声言語障害、嚥下障害、又は手足の運動障害である1〜14のいずれかに記載の薬剤。
16.筋萎縮性側索硬化症又は筋萎縮性側索硬化症に起因する症状の治療及び/又は進行の抑制が筋萎縮性側索硬化症における呼吸機能の低下の抑制である1〜14のいずれかに記載の薬剤。
17.下記一般式(I)
【0018】
【化3】

【0019】
(式中、R1は水素原子、アリール、炭素数1〜5のアルキル又は総炭素数3〜6のアルコキシカルボニルアルキルを表し、R2は、水素原子、アリールオキシ、アリールチオ、炭素数1〜5のアルキル又は炭素数1〜3のヒドロキシアルキルを表し、あるいは、R1及びR2は、共同して炭素数3〜5のアルキレンを表し、R3は水素原子、炭素数1〜5のアルキル、炭素数5〜7のシクロアルキル、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル、ベンジル、ナフチル又はフェニル、又は炭素数1〜5のアルコキシ、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル、総炭素数2〜5のアルコキシカルボニル、炭素数1〜3のアルキルチオ、炭素数1〜4のアルキルアミノ、総炭素数2〜8のジアルキルアミノ、ハロゲン原子、トリフルオロメチル、カルボキシル、シアノ、水酸基、ニトロ、アミノ、及びアセトアミドからなる群から選ばれる同一若しくは異なる1〜3個の置換基で置換されたフェニルを表す。)
で示されるピラゾロン誘導体、若しくは生理学的に許容される塩、又はそれらの水和物、若しくは溶媒和物を有効成分とする筋萎縮性側索硬化症又は筋萎縮性側索硬化症に起因する症状の治療及び/又は進行の抑制に用いるための投与方法であって、治療及び/又は進行を抑制する期間中に1日以上の休薬期間を1回又は2回以上設ける投与方法。
18.ピラゾロン誘導体が3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オンである17に記載の投与方法。
19.約7日〜約14日間の投薬期間後に休薬期間を設けることを特徴とする17又は18に記載の投与方法。
20.2回目以降の投薬期間が約5日〜約14日間である17〜19のいずれかに記載の投与方法。
21.休薬期間が約14日〜約16日間である17〜20のいずれかに記載の投与方法。
22.投薬期間及び休薬期間が14日間である17〜21のいずれかに記載の投与方法。
23.14日間の初回投薬期間後に14日間の休薬期間を設けた後に以下の投薬期間及び休薬期間を繰り返す17又は18に記載の投与方法。
投薬期間:週5日を2週間、次いで、休薬期間:14日間
24.1日あたりの投与量が、有効成分がピラゾロン誘導体の場合にはピラゾロン誘導体約15〜約240mg、ピラゾロン誘導体の生理的に許容される塩又はピラゾロン誘導体若しくはその塩の水和物若しくは溶媒和物の場合にはピラゾロン誘導体約15〜約240mg相当量である17〜23のいずれかに記載の投与方法。
25.1日あたりの投与量が、有効成分がピラゾロン誘導体の場合にはピラゾロン誘導体約60mg、ピラゾロン誘導体の生理的に許容される塩又はピラゾロン誘導体若しくはその塩の水和物若しくは溶媒和物の場合にはピラゾロン誘導体約60mg相当量である17〜24のいずれかに記載の投与方法。
26.1日1回投与である17〜25のいずれかに記載の投与方法。
27.投与が持続的投与である17〜26のいずれかに記載の投与方法。
28.持続的投与が点滴による静脈内投与である27に記載の投与方法。
29.点滴による静脈内投与における投与速度が1分あたり、ピラゾロン誘導体又はピラゾロン誘導体相当量約0.5〜約1mgである28に記載の投与方法。
30.持続的投与が、1分あたりのピラゾロン誘導体又はピラゾロン誘導体相当量投与量を約0.5〜約1mgとする点滴による静脈内投与と実質的に同等である投与形態である27に記載の投与方法。
31.筋萎縮性側索硬化症に起因する症状が呼吸機能の低下、音声言語障害、嚥下障害、又は手足の運動障害である17〜30のいずれかに記載の投与方法。
32.筋萎縮性側索硬化症又は筋萎縮性側索硬化症に起因する症状の治療及び/又は進行の抑制が筋萎縮性側索硬化症における呼吸機能の低下の抑制である17〜30のいずれかに記載の投与方法。
【0020】
本発明の有効成分である前記式(I)のピラゾロン誘導体は、合目的な任意の方法により合成することができ、好ましい合成方法の例としては欧州特許公開公報第208874号公報に記載されている製造方法が挙げられる。
【0021】
本発明の有効成分としては、遊離形態の前記式(I)のピラゾロン誘導体若しくは前記式(I)のピラゾロン誘導体の任意の生理的に許容される塩、又はそれらの任意の水和物若しくは溶媒和物を用いることもできる。
【0022】
なお、該ピラゾロン誘導体には欧州特許公開公報第208874号公報に示されるような互変異性体(下式(I’)又は(I”))が存在するが、本発明の薬剤の有効成分には、これらの異性体のすべてが包含されることはいうまでもない。
【0023】
【化4】

【0024】
前記式(I)において、R1の定義におけるアリール基としては、フェニル基並びにメチル基、ブチル基、メトキシ基、ブトキシ基、塩素原子及び水酸基等の置換基で置換されたフェニル基等が挙げられる。
【0025】
R1、R2及びR3の定義における炭素数1〜5のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基等が挙げられる。
【0026】
R1の定義における総炭素数3〜6のアルコキシカルボニルアルキル基としては、メトキシカルボニルメチル基、エトキシカルボニルメチル基、プロポキシカルボニルメチル基、メトキシカルボニルエチル基、メトキシカルボニルプロピル基等が挙げられる。
【0027】
R1及びR2の定義における炭素数3〜5のアルキレン基としては、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、メチルトリメチレン基、エチルトリメチレン基、ジメチルトリメチレン基、メチルテトラメチレン基等が挙げられる。
【0028】
R2の定義におけるアリールオキシ基としては、フエノキシ基、p-メチルフエノキシ基、p-メトキシフエノキシ基、p-クロロフエノキシ基、p-ヒドロキシフエノキシ基等が挙げられ、アリールチオ基としては、フェニルチオ基、p-メチルフェニルチオ基、p-メトキシフェニルチオ基、p-クロロフェニルチオ基、p-ヒドロキシフェニルチオ基等が挙げられる。
【0029】
1及びR2の炭素数3〜5のアルキレン基としては、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、メチルトリメチレン基、エチルトリメチレン基、ジメチルトリメチレン基、及びメチルテトラメチレン基等が挙げられる。
【0030】
R2及びR3の定義における炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基としては、ヒドロキシメチル基、2-ヒドロキシエチル基、3-ヒドロキシプロピル基等が挙げられる。R3の定義における炭素数5〜7のシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等が挙げられる。
【0031】
R3の定義において、フェニル基の置換基における炭素数1〜5のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基等が挙げられ、総炭素数2〜5のアルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基等が挙げられ、炭素数1〜3のアルキルチオ基としては、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基等が挙げられ、炭素数1〜4のアルキルアミノ基としては、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、ブチルアミノ基等が挙げられ、総炭素数2〜8のジアルキルアミノ基としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基等が挙げられる。
【0032】
本発明で用いる式(I)の化合物の具体例としては、例えば、以下に示す化合物が挙げられ、3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オンを好ましい例として挙げることができる。
3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン、
3-メチル-1-(2-メチルフェニル)-2-ピラゾリン-5-オン、
3-メチル-1-(3-メチルフェニル)-2-ピラゾリン-5-オン、
3-メチル-1-(4-メチルフェニル)-2-ピラゾリン-5-オン、
3-メチル-1-(3,4-ジメチルフェニル)-2-ピラゾリン-5-オン、
1-(4-エチルフェニル)-3-メチル-2-ピラゾリン-5-オン、
3-メチル-1-(4-プロピルフェニル)-2-ピラゾリン-5-オン、
1-(4-ブチルフェニル)-3-メチル-2-ピラゾリン-5-オン、
1-(3-トリフルオロメチルフェニル)-3-メチル-2-ピラゾリン-5-オン、
1-(4-トリフルオロメチルフェニル)-3-メチル-2-ピラゾリン-5-オン、
1-(2-メトキシフェニル)-3-メチル-2-ピラゾリン-5-オン、
1-(3-メトキシフェニル)-3-メチル-2-ピラゾリン-5-オン、
1-(4-メトキシフェニル)-3-メチル-2-ピラゾリン-5-オン、
1-(3,4-ジメトキシフェニル)-3-メチル-2-ピラゾリン-5-オン、
1-(4-エトキシフェニル)-3-メチル-2-ピラゾリン-5-オン、
3-メチル-1-(4-プロポキシフェニル)-2-ピラゾリン-5-オン、
1-(4-ブトキシフェニル)-3-メチル-2-ピラゾリン-5-オン、
1-(2-クロロフェニル)-3-メチル-2-ピラゾリン-5-オン、
1-(3-クロロフェニル)-3-メチル-2-ピラゾリン-5-オン、
1-(4-クロロフェニル)-3-メチル-2-ピラゾリン-5-オン、
1-(3,4-ジクロロフェニル)-3-メチル-2-ピラゾリン-5-オン、
1-(4-ブロモフェニル)-3-メチル-2-ピラゾリン-5-オン、
1-(4-フルオロフェニル)-3-メチル-2-ピラゾリン-5-オン、
1-(3-クロロ-4-メチルフェニル)-3-メチル-2-ピラゾリン-5-オン、
1-(3-メチルチオフェニル)-3-メチル-2-ピラゾリン-5-オン、
1-(4-メチルチオフェニル)-3-メチル-2-ピラゾリン-5-オン、
4-(3-メチル-5-オキソ-2-ピラゾリン-1-イル)安息香酸、
1-(4-エトキシカルボニルフェニル)-3-メチル-2-ピラゾリン-5-オン、
1-(4-ニトロフェニル)-3-メチル-2-ピラゾリン-5-オン、
3-エチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン、
1-フェニル-3-プロピル-2-ピラゾリン-5-オン、
1,3-ジフェニル-2-ピラゾリン-5-オン、
3-フェニル-1-(p-トリル)-2-ピラゾリン-5-オン、
1-(4-メトキシフェニル)-3-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン、
1-(4-クロロフェニル)-3-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン、
3,4-ジメチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン、
4-イソブチル-3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン、
4-(2-ヒドロキシエチル)-3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン、
3-メチル-4-フェノキシ-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン、
3-メチル-4-フェニルチオ-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン、
2,3a,4,5,6,7-ヘキサヒドロ-2-フェニルインダゾール-3-オン、
3-(エトキシカルボニルメチル)-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン、
1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン、3-メチル-2-ピラゾリン-5-オン、
1,3-ジメチル-2-ピラゾリン-5-オン、
1-エチル-3-メチル-2-ピラゾリン-5-オン、
1-ブチル-3-メチル-2-ピラゾリン-5-オン、
1-(2-ヒドロキエチル)-3-メチル-2-ピラゾリン-5-オン、
1-シクロヘキシル-3-メチル-2-ピラゾリン-5-オン、
1-ベンジル-3-メチル-2-ピラゾリン-5-オン、
1-(α-ナフチル)-3-メチル-2-ピラゾリン-5-オン、
1-メチル-3-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン、
3-メチル-1-(4-メチルフェニル)-2-ピラゾリン-5-オン、
1-(4-ブチルフェニル)-3-メチル-2-ピラゾリン-5-オン、
1-(4-メトキシフェニル)-3-メチル-2-ピラゾリン-5-オン、
1-(4-ブトキシフェニル)-3-メチル-2-ピラゾリン-5-オン、
1-(4-クロロフェニル)-3-メチル-2-ピラゾリン-5-オン、
1-(4-ヒドロキシフェニル)-3-メチル-2-ピラゾリン-5-オン、
1-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-3-メチル-2-ピラゾリン-5-オン、
1-(2-ヒドロキシフェニル)-3-メチル-2-ピラゾリン-5-オン、
1-(3-ヒドロキシフェニル)-3-メチル-2-ピラゾリン-5-オン、
1-(4-ヒドロキシフェニル)-3-メチル-2-ピラゾリン-5-オン、
1-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-3-メチル-2-ピラゾリン-5-オン、
1-(4-ヒドロキシフェニル)-3-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン、
1-(4-ヒドロキシメチルフェニル)-3-メチル-2-ピラゾリン-5-オン、
1-(4-アミノフェニル)-3-メチル-2-ピラゾリン-5-オン、
1-(4-メチルアミノフェニル)-3-メチル-2-ピラゾリン-5-オン、
1-(4-エチルアミノフェニル)-3-メチル-2-ピラゾリン-5-オン、
1-(4-ブチルアミノフェニル)-3-メチル-2-ピラゾリン-5-オン、
1-(4-ジメチルアミノフェニル)-3-メチル-2-ピラゾリン-5-オン、
1-(アセトアミドフェニル)-3-メチル-2-ピラゾリン-5-オン、
1-(4-シアノフェニル)-3-メチル-2-ピラゾリン-5-オン。
【0033】
前記式(I)のピラゾロン誘導体の塩としては、酸付加塩又は塩基付加塩を用いることができる。例えば、塩酸塩、硫酸塩、臭化水素酸塩、若しくはリン酸塩などの鉱酸塩;メタンスルホン酸塩、パラトルエンスルホン酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩、リンゴ酸塩、若しくはフマル酸塩などの有機酸塩;ナトリウム塩、カリウム塩、若しくはマグネシウム塩などの金属塩;アンモニウム塩;又は、エタノールアミン若しくは2-アミノ-2-メチル-1-プロパノールなどの有機アミン塩などを用いることができるが、生理的に許容されるものであれば塩の種類は特に限定されることはない。
【0034】
本発明の薬剤の有効成分である前記式(I)の化合物又はその塩の1種又は2種以上をそのまま患者に投与してもよいが、好ましくは、有効成分と薬理学的及び製剤学的に許容しうる添加物を加え、当業者に周知な形態の製剤として提供されるべきである。
【0035】
薬理学的及び製剤学的に許容しうる添加物としては、例えば、賦形剤、崩壊剤ないし崩壊補助剤、結合剤、滑沢剤、コーティング剤、色素、希釈剤、基剤、溶解剤ないし溶解補助剤、等張化剤、pH調節剤、安定化剤、噴射剤、及び粘着剤等を用いることができる。経口投与に適する製剤の例としては、例えば、錠剤、カプセル剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、液剤、又はシロップ剤等を挙げることができ、非経口投与に適する製剤としては、例えば、注射剤、点滴剤、貼付剤又は坐剤などを挙げることができる。
【0036】
経口投与に適する製剤には、添加物として、例えば、ブドウ糖、乳糖、D-マンニトール、デンプン、又は結晶セルロース等の賦形剤;カルボキシメチルセルロース、デンプン、又はカルボキシメチルセルロースカルシウム等の崩壊剤又は崩壊補助剤;ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、又はゼラチン等の結合剤;ステアリン酸マグネシウム又はタルク等の滑沢剤;ヒドロキシプロピルメチルセルロース、白糖、ポリエチレングリコール又は酸化チタン等のコーティング剤;ワセリン、流動パラフィン、ポリエチレングリコール、ゼラチン、カオリン、グリセリン、精製水、又はハードファット等の基剤を用いることができる。
【0037】
注射あるいは点滴用に適する製剤には、注射用蒸留水、生理食塩水、プロピレングリコール等の水性あるいは用時溶解型注射剤を構成しうる溶解剤又は溶解補助剤;ブドウ糖、塩化ナトリウム、D-マンニトール、グリセリン等の等張化剤;無機酸、有機酸、無機塩基又は有機塩基等のpH調節剤等の製剤用添加物を用いることができる。
【0038】
なお、上記の式(I)の化合物を有効成分とする脳保護剤(注射剤)が、すでに臨床において使用されているので(一般名「エダラボン」、商品名「ラジカット」:三菱ウェルファーマ株式会社製造・販売)、本発明の薬剤及び投与方法に使用するピラゾロン誘導体として、上記市販製剤をそのまま用いることができる。
【0039】
一般に人体に何らかの疾患が発見された場合、医師により適切な治療が行われる。薬物治療も治療の一つであるが、薬物治療においては疾患が治癒するまでの間、薬物が投与され続けることが一般的である。これに対し、本発明の薬剤及び投与方法は薬物治療期間中に1日以上の休薬期間を1又は2回以上設ける、すなわち、投薬期間及び休薬期間を1単位としてこれを2回以上繰り返すことに特徴がある。ここで、投薬期間及び休薬期間を2回以上繰り返すと、その最後は必ず休薬期間となるが、最後の休薬期間を設けることは必須ではない。すなわち、例えば投薬期間及び休薬期間を2回繰り返す場合、「投薬期間、休薬期間、投薬期間、休薬期間」となるが、最後の休薬期間を設けない、「投薬期間、休薬期間、投薬期間」も本発明に包含される。また、本発明において、休薬期間とは薬物投与を行わない期間のことである。
【0040】
投薬期間及び休薬期間はそれぞれ1日以上であれば、特に制限はなく、患者の状態を観察しながら好ましい期間を選択することが出来る。また、それぞれの期間は同じでも良いし、異なっていても良い。さらに、1回目の投薬期間及び休薬期間と2回目以降の投薬期間及び休薬期間もそれぞれ同じであっても良く、異なっていても良い。例えば、1日投薬、1日休薬、1日投薬、1日休薬としても良く、1日投薬、2日間休薬、3日間投薬、4日間休薬としても良い。
【0041】
ここで、初回の投薬期間の好ましい日数としては、例えば1日〜約14日間、具体的には1日、2日間、5日間、7日間、10日間及び14日間を挙げることができ、1日、2日間、5日間、7日間及び14日間が好ましく、7日間及び14日間がより好ましく、14日間がさらにより好ましい。2回目以降の投与期間の好ましい日数としては、例えば1日〜約14日間、具体的には1日、2日間、5日間、7日間、10日間及び14日間を挙げることができ、1日、2日間、5日間、7日間及び14日間が好ましく、5日間及び14日間がより好ましく、14日間がさらにより好ましい。休薬期間の好ましい日数としては、例えば1日〜約16日間、具体的には1日、2日間、7日間、9日間、14日間及び16日間を挙げることができ、2日間、14日間及び16日間が好ましく、14日間及び16日間がより好ましく、14日間がさらにより好ましい。投薬期間及び休薬期間の組合せとして特に好ましい組合せとしては、14日間の初回投薬期間後に14日間の休薬期間を設けた後に、以下の投薬期間及び休薬期間を繰り返す組合せを挙げることができる。
投薬期間:週5日を2週間、次いで休薬期間:14日間。
【0042】
有効成分の1日あたりの投与量は患者の年齢や状態などの条件に応じて適宜選択可能である。一般的には成人に対して、遊離形態のピラゾロン誘導体の量(有効成分がピラゾロン誘導体の場合にはピラゾロン誘導体の量、有効成分がピラゾロン誘導体の生理的に許容される塩、又はピラゾロン誘導体若しくはその生理的に許容される塩の水和物若しくは溶媒和物の場合にはピラゾロン誘導体相当の量)として約15〜約240mgであることが好ましく、約30mg〜約60mgであることがより好ましく、約60mgであることがさらにより好ましい。
【0043】
投薬期間中の1日あたりの投与回数に制限はなく、患者の状態を観察しながら好ましい回数を選択することができる。しかし、患者の負担等を考え3回、2回及び1回が好ましく、1回がより好ましい。
【0044】
有効成分を投与するにあたっては、その投与経路は特に限定されず、経口的または非経口的に投与することができる。さらに、ボーラス(bolus)投与及び持続的投与が可能であるが、持続的投与が好ましい。持続的投与とする場合、点滴による静脈内投与、経皮投与、舌下錠を用いた経口投与並びに徐放化製剤を用いた経口及び直腸内投与等が挙げられるが、点滴による静脈内投与が好ましい。注射によるボーラス(bolus)投与や点滴による静脈内投与を行う場合には、例えば、特開昭63-132833号公報に記載された注射剤などを用いることが好適である。
【0045】
点滴による静脈内投与とする場合、その投与速度は遊離形態のピラゾロン誘導体の量、約0.5〜約1mg/分とすることが望ましく、時間に換算すると約15〜約480分、好ましくは約30〜約120分、より好ましくは約30〜約60分、さらにより好ましくは約60分である。
【0046】
1分あたりの遊離形態のピラゾロン誘導体投与量を約0.5〜約1mgとする点滴による静脈内投与と実質的に同等である投与形態とは、薬物動態学的に実質的に同等であれば良い。具体例を挙げると、投与されたピラゾロン誘導体(生理学的に許容される塩並びにそれらの水和物及び溶媒和物を含む。)の血漿中遊離形態のピラゾロン誘導体未変化体濃度の経時変化が実質的に同等であると認められる投与形態である。この様な投与形態としては、例えば、経皮投与、舌下錠を用いた経口投与並びに徐放化製剤を用いた経口及び直腸内投与等が挙げられる。
【0047】
ALSに起因する症状としては、例えば、呼吸機能の低下、音声言語障害、嚥下障害、又は手足の運動障害などの臨床症状を挙げることができ、本発明においては呼吸機能の低下を好ましい例として挙げることができる。この用語は、上記の定義に合致するかぎり最も広義に解釈されるべきであり、疾患名の異同に拘泥して解釈されるべきではない。
なお、ALSに相当する疾患であるか否かは熟練した医師ならば容易に診断可能である。
【0048】
また、ALS又はALSに起因する症状の治療及び/又は進行の抑制の好適例としては筋萎縮性側索硬化症における呼吸機能の低下の抑制を挙げることができる。
【実施例】
【0049】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例に限定されることはない。
【0050】
実施例1 ALSFRS-R(Revised ALS Functional Rating Scale、参考文献;脳神経,53(4):346-355,2001)による投与半年後の有効性評価
【0051】
(30mg群)
ALS患者5名に、「ラジカット注30mg」(エダラボン30mg含有、製造販売;三菱ウェルファーマ(株))1アンプルを1日1回、1回に30分間をかけて静脈内投与することを14日間連日して行なった(第1期投与)。第1期終了後2週間の観察(休薬)期間を置いた後、同様の静脈内投与を10日間(土日祝日は未投与)行なった(第2期投与)。以後、第2期投与と同様の措置を4回繰り返した(第3-6期投与)。
【0052】
(60mg群)
ALS患者14名に、前述の「ラジカット注30mg」2アンプルを1日1回、1回に60分間をかけて静脈内投与することを14日間連日して行なった(第1期投与)。第1期終了後2週間の観察(休薬)期間を置いた後、同様の静脈内投与を10日間(土日祝日は未投与)行なった(第2期投与)。以後、第2期投与と同様の措置を4回繰り返した(第3-6期投与)。
【0053】
<ALSFRS-R>
a) 累積差に基づく評価方法
ALSFRS-Rについて「薬剤投与前」と「薬剤投与期」の推移の比較に基づいて、「第1期投与前」(☆)を基点とし、以下のように患者毎に評価を行った。
【0054】
【表1】

【0055】
1)各差を求める
投与前の差=(☆第1期投与前)―(各投与開始前)
投与期の差=(各期投与前)―(☆第1期投与前)
2)1)で求めた各差の合計を求める
投与前の差の合計(Aとする)
A=(☆−1))+(☆−2))+(☆−3))+(☆−4))+(☆−5))+(☆−6))
投与期の差の合計(Bとする)
B=(i−☆)+(ii−☆)+(iii−☆)+(iv−☆)+(v−☆)+(vi−☆)
3)各差の平均を求める
2)で求めた各差の合計の平均を算出し各々の累積差とした(投与前は1)〜6)、投与期はi〜viと共に「6時点」であることから6で割る)。
投与前差の累積=A/6
投与期差の累積=B/6
4)各累積差の比率を求める
3)で求めた各平均から投与前の累積差(A/6)と投与期の累積差(B/6)の比を下記の式)から算出した。
(式)投与期の累積差/投与前の累積差×100
すなわち、[累積差の比率(%)=(B/6)/(A/6)×100]として算出した。
5)判定基準
4)で求めた「累積差の比率」を以下のような判定基準に基づき有効性評価を行った。
比率が50%以下を「抑制」、:比率が50%より大きくかつ100%より小さいものを「やや抑制」、比率が100%以上を「不変」と判定した。
【0056】
b) 累積差に基づく判定
症例毎のALSFRS-Rの累積差に基づく判定を投与群毎に集計した結果を表2に示した。抑制率(「抑制」の割合)は30mg群で20%(1例/5例中)、60mg群で50%(7例/14例中)であった。
【0057】
【表2】

【0058】
これらの結果より、本発明の薬剤及び投与方法に、筋萎縮性側索硬化症の進展評価尺度を示すALSFRS-Rの低下を抑える効果が認められることが明らかである。
【0059】
実施例2 %FVC及びPaCOによる投与半年後の有効性評価
%FVC(percent-predicted forced vital capacity)とは%予想努力性肺活量の事であり、ALS患者の客観的な呼吸機能評価法として通常用いられている指標である(ALS治療ガイドライン2002)。また、The BDNF Study Group(PhaseIII), Neurology., 52, 1427(1999)によれば、ALS患者の%FVC低下率は6ヶ月間で13.8%(プラセボ群)である。
【0060】
(30mg群)
ALS患者4名に、前述の「ラジカット注30mg」1アンプルを1日1回、1回に30分間をかけて静脈内投与することを14日間連日して行なった(第1期投与)。第1期終了後2週間の観察(休薬)期間を置いた後、同様の静脈内投与を10日間(土日祝日は未投与)行なった(第2期投与)。以後、第2期投与と同様の措置を4回繰り返した(第3-6期投与)。
【0061】
Chestac−11(チェスト株式会社)を使用して各患者毎に行なったところ、第1期投与前と第6期投与終了時との%FVCの低下率は、平均9.3%であった。
【0062】
(60mg群)
ALS患者12名に、「ラジカット注30mg」(エダラボン30mg含有)2アンプルを1日1回、1回に60分間をかけて静脈内投与することを14日間連日して行なった(第1期投与)。第1期終了後2週間の観察(休薬)期間を置いた後、同様の静脈内投与を10日間(土日祝日は未投与)行なった(第2期投与)。以後、第2期投与と同様の措置を4回繰り返した(第3−6期投与)。
【0063】
30mg群と同様にChestac−11(チェスト株式会社)を使用して各患者毎に行なったところ、第1期投与前と第6期投与終了時との%FVCの低下率は、平均4.5%であった。また、動脈血二酸化炭素分圧(PaCO)を測定した。PaCOの測定は、血液ガス分析装置(バイエルメディカル製バイエル850)を使用して各患者毎に行なった。第1期投与前と第6期投与終了後とのPaCOは、ほぼ同じ値を示した。この間の患者12名分のPaCOの変化を図1に示す。
【0064】
上記の結果から、「ラジカット注30mg」の投与により、ALS患者の%FVCの低下及びPaCO上昇がともに顕著に抑制され、呼吸機能が維持されたことがわかる。
【0065】
実施例3 投与半年後の安全性評価
実施例2の患者における臨床検査項目を測定した。
【0066】
(測定方法)
大型多項目自動分析装置(日立製Automatic Analizer 7600-020s)を用いて、薬剤投与前後における下記の各検査項目を測定した。以下に示した投与前後の値(平均値)から明かなように、本発明の薬剤における投与方法においてエダラボンの投与後に臨床検査値が異常に上昇することは無く、安全性上問題が無いことが明かとなった。
【0067】
【表3】

【産業上の利用分野】
【0068】
本発明の薬剤及び投与方法はALS又はALSに起因する症状の治療及び/又は進行抑制に有用である。本発明の薬剤及び投与方法によれば、投与回数や来院回数の減少が可能であり、患者の入院による束縛を軽減し患者の負担を軽減することが可能である。
【0069】
なお本出願は、2004年2月9日付で出願された日本特許出願、特願2004−032420号及び特願2004−032421号に基づいており、その全体が引用により援用される。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)
【化1】


(式中、R1は水素原子、アリール、炭素数1〜5のアルキル又は総炭素数3〜6のアルコキシカルボニルアルキルを表し、R2は、水素原子、アリールオキシ、アリールチオ、炭素数1〜5のアルキル又は炭素数1〜3のヒドロキシアルキルを表し、あるいは、R1及びR2は、共同して炭素数3〜5のアルキレンを表し、R3は水素原子、炭素数1〜5のアルキル、炭素数5〜7のシクロアルキル、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル、ベンジル、ナフチル又はフェニル、又は炭素数1〜5のアルコキシ、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル、総炭素数2〜5のアルコキシカルボニル、炭素数1〜3のアルキルチオ、炭素数1〜4のアルキルアミノ、総炭素数2〜8のジアルキルアミノ、ハロゲン原子、トリフルオロメチル、カルボキシル、シアノ、水酸基、ニトロ、アミノ、及びアセトアミドからなる群から選ばれる同一若しくは異なる1〜3個の置換基で置換されたフェニルを表す。)
で示されるピラゾロン誘導体、若しくは生理学的に許容される塩、又はそれらの水和物、若しくは溶媒和物を有効成分とする筋萎縮性側索硬化症又は筋萎縮性側索硬化症に起因する症状の治療及び/又は進行の抑制に用いるための薬剤であって、治療及び/又は進行を抑制する期間中に1日以上の休薬期間を1回又は2回以上設ける薬剤。
【請求項2】
ピラゾロン誘導体が3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オンである請求項1に記載の薬剤。
【請求項3】
約7日〜約14日間の投薬期間後に休薬期間を設けることを特徴とする請求項1又は2に記載の薬剤。
【請求項4】
2回目以降の投薬期間が約5日〜約14日間である請求項1〜3のいずれかに記載の薬剤。
【請求項5】
休薬期間が約14日〜約16日間である請求項1〜4のいずれかに記載の薬剤。
【請求項6】
投薬期間及び休薬期間が14日間である請求項1〜5のいずれかに記載の薬剤。
【請求項7】
14日間の初回投薬期間後に14日間の休薬期間を設けた後に以下の投薬期間及び休薬期間を繰り返す請求項1又は2に記載の薬剤。
投薬期間:週5日を2週間、次いで、休薬期間:14日間
【請求項8】
1日あたりの投与量が、有効成分がピラゾロン誘導体の場合にはピラゾロン誘導体約15〜約240mg、ピラゾロン誘導体の生理的に許容される塩又はピラゾロン誘導体若しくはその塩の水和物若しくは溶媒和物の場合にはピラゾロン誘導体約15〜約240mg相当量である請求項1〜7のいずれかに記載の薬剤。
【請求項9】
1日あたりの投与量が、有効成分がピラゾロン誘導体の場合にはピラゾロン誘導体約60mg、ピラゾロン誘導体の生理的に許容される塩又はピラゾロン誘導体若しくはその塩の水和物若しくは溶媒和物の場合にはピラゾロン誘導体約60mg相当量である請求項1〜8のいずれかに記載の薬剤。
【請求項10】
1日1回投与である請求項1〜9のいずれかに記載の薬剤。
【請求項11】
投与が持続的投与である請求項1〜10のいずれかに記載の薬剤。
【請求項12】
持続的投与が点滴による静脈内投与である請求項11に記載の薬剤。
【請求項13】
点滴による静脈内投与における投与速度が1分あたり、ピラゾロン誘導体又はピラゾロン誘導体相当量約0.5〜約1mgである請求項12に記載の薬剤。
【請求項14】
持続的投与が、1分あたりのピラゾロン誘導体又はピラゾロン誘導体相当量投与量を約0.5〜約1mgとする点滴による静脈内投与と実質的に同等である投与形態である請求項11に記載の薬剤。
【請求項15】
筋萎縮性側索硬化症に起因する症状が呼吸機能の低下、音声言語障害、嚥下障害、又は手足の運動障害である請求項1〜14のいずれかに記載の薬剤。
【請求項16】
筋萎縮性側索硬化症又は筋萎縮性側索硬化症に起因する症状の治療及び/又は進行の抑制が筋萎縮性側索硬化症における呼吸機能の低下の抑制である請求項1〜14のいずれかに記載の薬剤。
【請求項17】
下記一般式(I)
【化2】


(式中、R1は水素原子、アリール、炭素数1〜5のアルキル又は総炭素数3〜6のアルコキシカルボニルアルキルを表し、R2は、水素原子、アリールオキシ、アリールチオ、炭素数1〜5のアルキル又は炭素数1〜3のヒドロキシアルキルを表し、あるいは、R1及びR2は、共同して炭素数3〜5のアルキレンを表し、R3は水素原子、炭素数1〜5のアルキル、炭素数5〜7のシクロアルキル、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル、ベンジル、ナフチル又はフェニル、又は炭素数1〜5のアルコキシ、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル、総炭素数2〜5のアルコキシカルボニル、炭素数1〜3のアルキルチオ、炭素数1〜4のアルキルアミノ、総炭素数2〜8のジアルキルアミノ、ハロゲン原子、トリフルオロメチル、カルボキシル、シアノ、水酸基、ニトロ、アミノ、及びアセトアミドからなる群から選ばれる同一若しくは異なる1〜3個の置換基で置換されたフェニルを表す。)
で示されるピラゾロン誘導体、若しくは生理学的に許容される塩、又はそれらの水和物、若しくは溶媒和物を有効成分とする筋萎縮性側索硬化症又は筋萎縮性側索硬化症に起因する症状の治療及び/又は進行の抑制に用いるための投与方法であって、治療及び/又は進行を抑制する期間中に1日以上の休薬期間を1回又は2回以上設ける投与方法。
【請求項18】
ピラゾロン誘導体が3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オンである請求項17に記載の投与方法。
【請求項19】
約7日〜約14日間の投薬期間後に休薬期間を設けることを特徴とする請求項17又は18に記載の投与方法。
【請求項20】
2回目以降の投薬期間が約5日〜約14日間である請求項17〜19のいずれかに記載の投与方法。
【請求項21】
休薬期間が約14日〜約16日間である請求項17〜20のいずれかに記載の投与方法。
【請求項22】
投薬期間及び休薬期間が14日間である請求項17〜21のいずれかに記載の投与方法。
【請求項23】
14日間の初回投薬期間後に14日間の休薬期間を設けた後に以下の投薬期間及び休薬期間を繰り返す請求項17又は18に記載の投与方法。
投薬期間:週5日を2週間、次いで、休薬期間:14日間
【請求項24】
1日あたりの投与量が、有効成分がピラゾロン誘導体の場合にはピラゾロン誘導体約15〜約240mg、ピラゾロン誘導体の生理的に許容される塩又はピラゾロン誘導体若しくはその塩の水和物若しくは溶媒和物の場合にはピラゾロン誘導体約15〜約240mg相当量である請求項17〜23のいずれかに記載の投与方法。
【請求項25】
1日あたりの投与量が、有効成分がピラゾロン誘導体の場合にはピラゾロン誘導体約60mg、ピラゾロン誘導体の生理的に許容される塩又はピラゾロン誘導体若しくはその塩の水和物若しくは溶媒和物の場合にはピラゾロン誘導体約60mg相当量である請求項17〜24のいずれかに記載の投与方法。
【請求項26】
1日1回投与である請求項17〜25のいずれかに記載の投与方法。
【請求項27】
投与が持続的投与である請求項17〜26のいずれかに記載の投与方法。
【請求項28】
持続的投与が点滴による静脈内投与である請求項27に記載の投与方法。
【請求項29】
点滴による静脈内投与における投与速度が1分あたり、ピラゾロン誘導体又はピラゾロン誘導体相当量約0.5〜約1mgである請求項28に記載の投与方法。
【請求項30】
持続的投与が、1分あたりのピラゾロン誘導体又はピラゾロン誘導体相当量投与量を約0.5〜約1mgとする点滴による静脈内投与と実質的に同等である投与形態である請求項27に記載の投与方法。
【請求項31】
筋萎縮性側索硬化症に起因する症状が呼吸機能の低下、音声言語障害、嚥下障害、又は手足の運動障害である請求項17〜30のいずれかに記載の投与方法。
【請求項32】
筋萎縮性側索硬化症又は筋萎縮性側索硬化症に起因する症状の治療及び/又は進行の抑制が筋萎縮性側索硬化症における呼吸機能の低下の抑制である請求項17〜30のいずれかに記載の投与方法。


【図1】
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【国際公開番号】WO2005/075434
【国際公開日】平成17年8月18日(2005.8.18)
【発行日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−517808(P2005−517808)
【国際出願番号】PCT/JP2005/001932
【国際出願日】平成17年2月9日(2005.2.9)
【出願人】(000006725)三菱ウェルファーマ株式会社 (92)
【Fターム(参考)】