筐体の取り付け構造
【課題】防振性を維持しつつ、コンパクトに取り付けることができる筐体の取り付け構造を提供する。
【解決手段】ポンプユニット用筐体106は、底板部123を有し、モーター及びポンプはポンプユニット用筐体106の中心よりも下の高さの位置にあって回転軸が水平方向に向く姿勢で設置された筐体の取り付け構造において、取り付け金具3は底板部123側に面する底面対向部と垂直壁又は垂直支持部材側に面する被固定部材側部を有し、取り付け金具3の底面対向部は軸を有する締結部材を介して底板部123側に固定され、底板部123と取り付け金具3の底面対向部との間に振動伝播阻害部材が介在され、前記振動伝播阻害部材の一方の面は底板部123の一部又は全部と接し、前記振動伝播阻害部材の他方の面は取り付け金具3の底面対向部の一部又は全部と接し、取り付け金具3の被固定部材側部は直接的に垂直壁又は垂直支持部材側と接している構造とする。
【解決手段】ポンプユニット用筐体106は、底板部123を有し、モーター及びポンプはポンプユニット用筐体106の中心よりも下の高さの位置にあって回転軸が水平方向に向く姿勢で設置された筐体の取り付け構造において、取り付け金具3は底板部123側に面する底面対向部と垂直壁又は垂直支持部材側に面する被固定部材側部を有し、取り付け金具3の底面対向部は軸を有する締結部材を介して底板部123側に固定され、底板部123と取り付け金具3の底面対向部との間に振動伝播阻害部材が介在され、前記振動伝播阻害部材の一方の面は底板部123の一部又は全部と接し、前記振動伝播阻害部材の他方の面は取り付け金具3の底面対向部の一部又は全部と接し、取り付け金具3の被固定部材側部は直接的に垂直壁又は垂直支持部材側と接している構造とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はモーター及びモーターによって駆動されるポンプを有する筐体を、取り付け金具を介して垂直壁又は垂直支持部材に縦姿勢で取り付ける場合の筐体の取り付け構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、熱源機は、一般家庭に用いられる家庭用熱源機や商業施設等に用いられる業務用熱源機に分類される。家庭用熱源機では、主に、家庭用熱源機本体に循環ポンプ等の振動を発する振動源が内蔵されている。
そして、家庭用熱源機は、床に据え付けられたり、家の壁面に取り付けられたりして設置されている。例えば、家の壁面に設置する場合、壁面に家庭用熱源機の筐体と一体となった壁掛け金具を取り付けて、ボルトによって固定されている。なお、壁掛け金具は、溶接やビス締結等の剛的な手段で家庭用熱源機の筐体と一体的に取り付けられている。しかし、この取り付け方法では、稼働時において、振動源の振動が壁面に伝わり、振動により騒音が発生する。
【0003】
そこで、近年、壁掛け金具と壁面との間に防振ゴムを介在させて、振動の壁面への伝播を抑制しようという試みがなされている(例えば、特許文献1)。
【0004】
従来技術の構成では、筐体の上辺側と下辺側に取り付け金具が設けられ、当該取り付け金具を介して筐体が壁に縦姿勢で取り付けられる。
従来技術の構成では、上辺側の取り付け金具の一部が溶接等によって直接筐体に固定されている。また、上辺側の取り付け金具の他の部分が壁面に面し、ネジ等で固定されている。そして、上辺側の取り付け金具と壁面との間に前記した防振ゴムがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−292331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、壁に取り付けるタイプの熱源機は、その構造上、筐体が壁面から出っ張ることは避けられない。そして、出っ張り量が大きい(壁面からの突出長さが長い)と、なにかと邪魔になる。
そこで、壁に取り付けるタイプの熱源機は、一般に極力厚さが薄くなるように設計され、壁からの出っ張り量が小さくなるように配慮されている。
【0007】
しかしながら、従来技術の取り付け構造を用いると、壁面と熱源機との間に防振ゴムが介在されているので、壁からの出っ張り量を小さくする点で限界があった。即ち、防振ゴムの防振性能は、その厚さによって左右される。具体的には、防振ゴムは、その厚さが厚いと防振性能が高く、薄い場合は防振性能が劣る。
そのため、十分な防振効果を発揮させるためには、防振ゴムの厚さを厚くしなければならない。
しかし、その一方で、熱源機の壁からの出っ張り量を小さくするためには、防振ゴムの厚さを薄くしなければならない。
【0008】
このように、壁に取り付けるタイプの熱源機に使用する防振ゴムは、防振効果を発揮させるためには厚くする必要があり、熱源機の壁からの出っ張り量を小さくするためには薄くする必要があるという二律背反する性能が要求される。
【0009】
また、従来技術の構成によると、筐体内部のレイアウトによっても、防振ゴムの厚さを厚くしなければならない場合がある。
即ち、モーターとポンプが筐体の下部に設置されているレイアウトの熱源機や、モーターの回転軸が水平方向に設置されているレイアウトの熱源機では、従来技術の位置に設けられた防振ゴムでは制振効果を発揮しにくく、防振ゴムの厚さをさらに厚くしなければならない。
【0010】
具体的には、モーターとポンプが筐体の下部に設置されているレイアウトの熱源機では、振動発生源が筐体の下部にある。これに対して従来技術の防振構造では、防振ゴムが筐体の上部にあり、振動発生源から遠い。そのため、従来技術によると、十分に防振効果を発現しにくい。
また、モーターやポンプは、回転軸の軸線に対して垂直方向に振動が発生する。即ち、モーターやポンプは、回転軸の軸線方向には振動が生じない。そのため、モーターの回転軸が水平方向に設置されているレイアウトの熱源機では、振動は上下方向と左右方向に発生し、壁に対して遠近方向には振動が小さい。
しかしながら、従来技術の防振構造では、筐体と壁面との間に防振ゴムが介在しているため、壁面に対して遠近方向の振動を防ぐ機能が高いが、上下方向に対する防振効果は低い。
そのため、上記したレイアウトの熱源機に従来技術の防振構造を適用する場合には、防振ゴムの厚さをさらに厚くしなければならず、壁からの出っ張り量がさらに増えてしまう不具合があった。
【0011】
また、従来技術の防振構造によると、筐体と壁の距離が大きくなるため、壁から離れた位置に重量物が取り付けられることとなり、壁に大きなモーメントが掛かる。そのため、取り付ける壁は相当の剛性を有するものでなければならない。即ち、壁の剛性が不足する場合には、壁に直接熱源機を取り付けることができない。それ故に、壁の表面に補強桟等を設け、当該補強桟に熱源機を取り付ける構造を余儀なくされ、壁からの出っ張り量がさらに増加してしまう不具合があった。
【0012】
一方、商業施設等の業務用熱源機は、熱源機本体と、循環ポンプ等の振動を発する振動源を内蔵するポンプユニット等がそれぞれ別の筐体に取り付けられ、接続されている。
しかし、ポンプユニットにおいても、家庭用熱源機同様、床に据え付けられたり、壁に取り付けられたりしていた。即ち、家庭用熱源機同様の課題を有していた。
【0013】
そこで、本発明は、上記した問題点を解決するものであり、防振性を維持しつつ、コンパクトに取り付けることができる筐体の取り付け構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記した課題を解決するための請求項1に記載の発明は、モーター及びモーターによって駆動されるポンプを有する筐体を、取り付け金具を介して垂直壁又は垂直支持部材に縦姿勢で取り付ける場合の筐体の取り付け構造であって、前記筐体は、略直方体又は立方体であって底板を有し、モーター及びポンプは筐体の中心よりも下の高さの位置にあって回転軸が水平方向に向く姿勢で設置された筐体の取り付け構造において、取り付け金具は筐体の底板側に面する底面対向部と垂直壁又は垂直支持部材側に面する被固定部材側部を有し、取り付け金具の底面対向部は軸を有する締結部材を介して筐体の底板側に固定され、筐体の底板と取り付け金具の底面対向部との間に振動伝播阻害部材が介在され、前記振動伝播阻害部材の一方の面は筐体の底板の一部又は全部と接し、前記振動伝播阻害部材の他方の面は取り付け金具の底面対向部の一部又は全部と接し、取り付け金具の被固定部材側部は直接的に垂直壁又は垂直支持部材側と接していることを特徴とする筐体の取り付け構造である。
【0015】
ここでいう「縦姿勢」とは、筐体の底板が水平面に対して平行となる姿勢を表す。
ここでいう「垂直支持部材」とは、筐体を取り付けた際に筐体の姿勢が天地方向に対して直交する方向となる支持部材を表し、垂直支持部材の設置方向は問わない。
【0016】
かかる構成によれば、筐体の底板と取り付け金具の底面対向部との間に振動伝播阻害部材が介在されている。即ち、垂直壁又は垂直支持部材に縦姿勢で取り付ける場合に、振動伝播阻害部材を介在することによる、筐体の垂直壁又は垂直支持部材から出っ張り量(垂直壁又は垂直支持部材からの突出長さ)が増加することがない。即ち、従来の機器寸法を変えることなく、主にモーター及びポンプから発される振動を低減することができる。
また、筐体と垂直壁又は垂直支持部材との距離が振動伝播阻害部材の存在により大きくならないため、従来の防振ゴムの設置位置に比べて、垂直壁又は垂直支持部材にかかるモーメントが小さい。そのため、筐体を取り付ける垂直壁又は垂直支持部材は、表面に補強桟等を設ける必要がない。
また、かかる構成によれば、モーター及びポンプは筐体の中心よりも下の高さの位置にあって回転軸が水平方向に向く姿勢で設置されている。即ち、モーターの回転軸を基準として、回転軸の軸方向以外の方向(天地方向及び軸方向と交差する方向)に主に振動する。即ち、従来の防振ゴムの設置位置を採用すると、天地方向の振動に対してあまり防振効果が発揮されない。しかしながら、本発明の構成によると、筐体の底板と取り付け金具の底面対向部との間に振動伝播阻害部材が介在されているので、従来の防振ゴムの設置位置に比べて、特に天地方向の振動の防振効果が高い。
【0017】
請求項2に記載の発明は、振動伝播阻害部材は、取り付け金具内に嵌合されていることを特徴とする請求項1に記載の筐体の取り付け構造である。
【0018】
かかる構成によれば、振動伝播阻害部材は、取り付け金具内に嵌合されている。即ち、筐体に取り付け金具を取り付ける際に、分解することがない。それ故に、取り付け作業が煩わしくない。即ち、作業性が高い。
【0019】
請求項3に記載の発明は、筐体の上部に固定される上部取り付け金具を有し、筐体と上部取り付け金具は、締結部材によって直接取り付けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の筐体の取り付け構造である。
【0020】
かかる構成によれば、筐体の上部に固定される上部取り付け金具を有し、筐体と上部取り付け金具は、締結部材によって直接取り付けられているので、垂直壁又は垂直支持部材に筐体を取り付けた際の姿勢が安定し、従来の防振ゴムを有さない筐体に比べても、美観が損なわれることがない。
【0021】
請求項4に記載の発明は、振動伝播阻害部材は、貫通孔を有しており、前記貫通孔内に締結部材を挿入可能であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の筐体の取り付け構造である。
【0022】
かかる構成によれば、振動伝播阻害部材は、貫通孔を有しており、前記貫通孔内に締結部材を挿入可能であるため、振動伝播阻害部材が横ずれしにくい。即ち、振動伝播阻害部材が破損しにくい。
【0023】
請求項5に記載の発明は、振動伝播阻害部材は、モーター及びポンプの近傍に配されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の筐体の取り付け構造である。
【0024】
ここでいう「近傍」とは、振動伝播阻害部材の底板との接触面からモーターの回転軸までの距離(天地方向の長さ)が、筐体の天地方向の長さの1/3以下の位置であることをいい、筐体の天地方向の長さの1/4以下の位置であることが好ましい。振動伝播阻害部材は、底板を介して対向する位置にモーターが設置されていることが特に好ましい。
【0025】
かかる構成によれば、振動伝播阻害部材は、モーター及びポンプの近傍に配されているため、振動が共鳴し増幅する前に、振動を抑制することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、筐体の底板と取り付け金具の底面対向部との間に振動伝播阻害部材が介在されている。即ち、垂直壁又は垂直支持部材に縦姿勢で取り付ける場合に、振動伝播阻害部材を介在することによる、筐体の垂直壁又は垂直支持部材から出っ張り量(垂直壁又は垂直支持部材からの突出長さ)が増加することがない。即ち、従来の機器寸法を変えることなく、主にモーター及びポンプから発される振動を低減することができる。
また、筐体と垂直壁又は垂直支持部材との距離が振動伝播阻害部材の存在により大きくならないため、従来の防振ゴムの設置位置に比べて、垂直壁又は垂直支持部材にかかるモーメントが小さい。そのため、筐体を取り付ける垂直壁又は垂直支持部材は、表面に補強桟等を設ける必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる給湯ユニットの斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態にかかるポンプユニットを示す正面図である。なお、理解を容易にするため、ポンプユニット用筐体の蓋部を取り外している。
【図3】図2の筐体本体の部分分解図である。
【図4】本発明の第1実施形態にかかるポンプユニット用筐体の斜視図である。
【図5】図2の循環ポンプを示す図であり、ポンプ本体部の部分を透視した一部透視斜視図である。
【図6】図1の連結架台を示す斜視図である。
【図7】図4のポンプユニット用筐体を連結架台に取り付けた状態を示す図であり、ポンプユニット用筐体を透視した一部透視斜視図である。
【図8】図4の振動伝播阻害部材、取り付け金具、締結部材を表す斜視図である。
【図9】図7のポンプユニット用筐体を連結架台に取り付けた状態を示す側面図である。
【図10】図8の振動伝播阻害部材のA−A断面図である。
【図11】図8の振動伝播阻害部材、取り付け金具、締結部材を別の角度から見た斜視図である。
【図12】図8の締結部材の斜視図である。
【図13】図7の上部取り付け金具の斜視図である。
【図14】屈曲部に底板部を載置した状態を示す説明図である。
【図15】ポンプユニット用筐体に取り付け金具を固定する際の状態を示す説明図である。
【図16】ポンプユニット用筐体に取り付け金具を固定した際の状態を示す断面図である。
【図17】ポンプユニット用筐体に上部取り付け金具を固定する際の状態を示す説明図である。
【図18】取り付け金具を連結架台の連結部に固定する際を示す説明図である。
【図19】上部取り付け金具を連結架台の連結部に固定する際を示す説明図である。
【図20】壁面にポンプユニット用筐体を固定した際の状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の特徴たる筐体の取り付け構造は、モーター及びモーターによって駆動されるポンプを有する筐体を、取り付け金具を介して垂直壁又は垂直支持部材に縦姿勢で取り付ける場合に用いられるものである。
そこで、本実施形態では、具体例として、主に商業施設等で業務用として用いられる給湯システムに本発明の取り付け構造を用いた場合について説明する。
以下、本発明の特徴たる取り付け構造に先だって、給湯システムについて説明する。
【0029】
本実施形態の給湯システム100は、図1のように連結架台127に設置されて使用されるものである。給湯システム100は、図1、2のように複数(本実施形態では2台)の熱源機本体102と、モーター及びモーターによって駆動されるポンプを内蔵する循環ポンプ110及び予備用循環ポンプ111等を備えたポンプユニット103とを組み合わせたものであり、これらが配管等を用いて連結されている。そして、熱源機本体102、ポンプユニット103、カラン、シャワー等の出湯器具(図示せず)は、それぞれ各種配管で接続されている。そして、熱源機本体102、ポンプユニット103、出湯器具の各機器を含む間には、循環回路が設けられており、循環回路内で湯水を循環させて、出湯要求(カラン等が操作されること)があるまで湯水を所定温度に維持することが可能な構成とされている。
【0030】
熱源機本体102は、公知のそれと同様のものが採用されており、本実施形態では2台とも同じ機能及び能力を備えた給湯器とされている。具体的には、熱源機本体102は、熱源用筐体105を有し、燃料ガスを燃焼する燃焼部と、一次熱交換器及び二次熱交換器を備えた熱交換部と、送風機とを主要な構成部材として熱源用筐体105に内蔵されている。そして、これら燃焼部、熱交換部、送風機等を制御可能なコントローラが内蔵されている。
【0031】
そして、熱源用筐体105は、図1で示されるように略直方体又は立方体であって(本実施形態では略直方体)、1面が開放された筐体本体105aと、筐体本体105aの開放部を覆う蓋部105bにより構成されている。
【0032】
ポンプユニット103は、ポンプユニット用筐体106を有し、図2で示されるように、ポンプユニット用筐体106(筺体)内に、循環ポンプ110、予備用循環ポンプ111、膨張タンク117等が主要な構成部材として内蔵されている。そして、これらの循環ポンプ110、予備用循環ポンプ111等を制御可能なコントローラ118が内蔵されている。
【0033】
ポンプユニット用筐体106は、図1、3に示されるように、1面が開放された筐体本体106aと、筐体本体106aの開放部を覆う蓋部106bにより構成されている。
ポンプユニット用筐体106は、図1〜3のように底板部123と背面部113と天面部114と左側面部115及び右側面部116によって収納空間132が形成されており、収納空間132は前方(図1の連結架台127に対して対向方向)に延びている。そして、収納空間132内には、循環ポンプ110、予備用循環ポンプ111、膨張タンク117等が主要な構成部材が収納されている。
また、背面部113と左側面部115と右側面部116は、図3のように下端部が内側(収納空間132側)に折れ曲がっており、その折れ曲がった屈曲部133に底板部123が載置されている。底板部123には、図4のように組み立て完成時に背面部113の屈曲部133aと重なった位置に固定受け孔135が複数(本実施形態では3つ)設けられている。また、背面部113の屈曲部133aには、前記固定受け孔135に対応する位置に貫通孔136が設けられている。
一方、背面部113の上部位置には、公知の締結要素と係合可能な締結受け孔138が複数(本実施形態では3つ)設けられている。
【0034】
循環ポンプ110は、図2で示されるように、筐体本体106aの底板部123に取り付け具130を介して接続されている。循環ポンプ110の種類は、モーター及びモーターによって駆動されるポンプを内蔵していれば、特に限定されるものではなく、例えば渦巻きポンプなどが採用できる。ここで、この循環ポンプ110は、図5で示されるように、外形略円柱状のポンプ本体部125に脚部126が一体に取り付けられた状態となっている。
【0035】
予備用循環ポンプ111は、循環ポンプ110と同一のポンプが採用可能であり、循環ポンプ110と同様、ポンプ本体部125に脚部126が一体に取り付けられた構成となっている。この予備用循環ポンプ111は、臨時用のポンプとなっており、メンテナンス時や、主だって使用される循環ポンプ110の故障時に使用されるポンプとなっている。この予備用循環ポンプ111も主だって使用される循環ポンプ110と同様に、取り付け具130を介して筐体本体106aの底板部123に接続されている。
【0036】
ここで、本実施形態では、図2で示されるように、循環ポンプ110と予備用循環ポンプ111とが、それぞれの取り付け具130,130の上方で連結部材131によって接続され、実質的に一体となっている。
また、循環ポンプ110と予備用循環ポンプ111のモーター及びポンプは、ポンプユニット用筐体106の中心よりも下の高さの位置にあり、回転軸が水平方向(図2の紙面に対して手前奥方向)に向く姿勢で設置されている。即ち、回転軸の軸線方向には振動が生じにくく、主に回転軸の軸方向以外の方向(天地方向及び軸方向と交差する方向)に振動する。
なお、この予備用循環ポンプ111は臨時用のポンプとして使用するだけでなく、給湯システム100の通常の動作時において、循環ポンプ110と交互に使用してもよい。即ち、本実施形態の給湯システム100では、循環ポンプ110と予備用循環ポンプ111とを交互に使用するローテーション運転が実施可能となっている。
【0037】
筐体本体106aの略中央に位置する膨張タンク117は、湯水の温度変化に起因した体積の膨張に伴う圧力上昇、又は体積の収縮に伴う圧力低下を抑制する密閉型のタンクである。
【0038】
筐体本体106aの上部に位置するコントローラ118は、ポンプユニット103に設けられており、給湯システム100の各機器を集約的に制御可能な制御装置(図示せず)と電気的に接続されている。即ち、コントローラ118は、制御装置と信号の送受信を行って、ポンプユニット103を制御するものである。
【0039】
続いて、連結架台127の説明に移る。
連結架台127は、図6のように複数の架台単体120を連結(本実施形態では3台が連結)したものである。なお、ここで言う「連結」とは、複数の架台単体120を実際に連結したことと、複数の架台単体120を連結したものと実質的に同一の大きさに形成したことの両方を意味する。
【0040】
連結架台127は、図6のように施工現場の床に載置される基礎部121と、その基礎部121に対してほぼ直交方向に立設するように接合された立設部122と、その立設部122を補助的に支持する支持部128と、立設部122間を連結する連結部129とによって構成されている。そして、熱源用筐体105及びポンプユニット用筐体106は、この架台単体120の立設部122の高さ方向中央より上部側(上段側)に固定される。具体的には、連結部129に取り付け金具3又は公知の取り付け金具を介して、熱源用筐体105及びポンプユニット用筐体106を固定する。即ち、本実施形態の給湯システム100では、図1のように1又は複数(本実施形態では2台)の熱源用筐体105と1又は複数(本実施形態では1台)のポンプユニット用筐体106とを並設して固定する構成としている。
また、立設部122の上端部及び中間部に位置する連結部129a、129bには、図6のように、それぞれ公知の締結要素と係合可能な締結受け孔137が複数設けられている。
【0041】
ところで、本実施形態で用いる給湯システム100では、熱源用筐体105とポンプユニット用筐体106の規格は、ほぼ決まっている。即ち、意匠性の観点から、連結架台127に設置した際に、熱源用筐体105の蓋部105bとポンプユニット用筐体106の蓋部106bの前面は面一になるように形成されている。
当該給湯システム100に、従来の防振構造と同様の手法をもって、連結架台127と取り付け金具との間に防振ゴムを取り付けると、ポンプユニット用筐体106の前面(蓋部)が熱源用筐体105の前面(蓋部)に対して、突出するという不具合があった。即ち、統一感が得られず、意匠性が損なわれる恐れがあった。
そこで、発明者らは、熱源用筐体105及び/又はポンプユニット用筐体106と連結架台127との取り付け構造を開発した。
【0042】
以下、本発明の特徴たる筐体の取り付け構造1について説明する。本実施形態では、具体例として、ポンプユニット用筐体106と連結架台127との取り付け構造について説明する。なお、以下の説明において、特に断りの無い限り、図7の姿勢を基準に説明する。
本実施形態の筐体の取り付け構造1は、図7のようにポンプユニット用筐体106の下部に用いられている。また、当該取り付け構造1は、図8のように振動伝播阻害部材2と、取り付け金具3と、締結部材5と、を用いて、ポンプユニット用筐体106と連結架台127を接続している。そして、当該取り付け構造1は、図9のように、ポンプユニット用筐体106を、取り付け金具3を介して連結架台127の連結部129bにポンプユニット用筐体106が縦姿勢になるように取り付けられている。
なお、ポンプユニット用筐体106の上部と連結架台127は、公知の取り付け金具(以下、上部取り付け金具30ともいう)を用いて取り付けられる。
以下、各構成部材について説明する。
【0043】
振動伝播阻害部材2は、略円筒状であり、図10のように断面形状が略「I」字状の部材である。振動伝播阻害部材2の材質は、振動を吸収できるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、ゴム製又は樹脂製のものや、バネ等の弾性体が採用できる。加工容易の観点から、ウレタンゴムなどが特に好ましい。
振動伝播阻害部材2は、図10のように、図面の上方から順に、筐体側張出部7と、本体部6と、固定側張出部8とを有している。そして、振動伝播阻害部材2は、中央に振動伝播阻害部材2全体を上下方向に貫通した貫通孔18を有している。貫通孔18の開口形状は、円形となっている。
本体部6は、円筒状の部位であり、本体部6の内径(貫通孔18の開口径)は、後述する締結部材5の大径部27(図12参照)の外径とほぼ等しい。本体部6の高さ(上下方向の長さ)は、取り付け金具3の底面対向部10(図11参照)の厚みよりもやや大きい。
筐体側張出部7は、円筒状の部位である。そして、筐体側張出部7の外径は本体部6の外径よりも大きい。即ち、筐体側張出部7は、本体部6から外側方向に張り出している。
固定側張出部8は、円筒状の部位である。また、固定側張出部8の外径は、本体部6の外径よりも大きく、筐体側張出部7の外径よりも小さい。即ち、固定側張出部8は、本体部6から外側方向に張り出している。
【0044】
取り付け金具3に目を移すと、取り付け金具3は、図8のように一枚の鋼板を折り曲げ加工によって形成されており、側面から見て逆「L」字状となっている。取り付け金具3は、図8、図11のように底面対向部10と被固定部材側部11とを有する。
底面対向部10は、図8のように略長方形状の部位であり、長手方向に等間隔に複数(本実施形態では3つ)の底面側貫通孔12を有している。底面側貫通孔12は、円形の開口を有しており、その内部に振動伝播阻害部材2の本体部6を挿入可能となっている。底面対向部10の厚みは、振動伝播阻害部材2の本体部6の高さ(筐体側張出部7と固定側張出部8間の距離)よりやや薄い。
被固定部材側部11は、図11のように略長方形状の部位であり、長手方向に等間隔に複数(本実施形態では2つ)の固定側貫通孔13を有している。本実施形態では、被固定部材側部11の両端部に固定側貫通孔13が配されており、その内側に位置調整孔20が長手方向に複数(本実施形態では4つ)配されている。位置調整孔20は、長手方向に直交する方向に長径を有した楕円形の長孔となっている。
【0045】
振動伝播阻害部材2と取り付け金具3は、使用時には、取り付け金具3の底面側貫通孔12内に振動伝播阻害部材2の本体部6が嵌合されており、実質的に不可分一体となっている。
【0046】
ここでいう「実質的に不可分一体」とは、2以上の部材が一体となって組み合わされているが、変形や破壊を加えない限り、取り外し不可能な状態であることを表す。
【0047】
締結部材5に目を移すと、締結部材5は、図12のように、図面の上方から順に頭部21と軸部22とを有している。
頭部21は、図12の上方から順に頭部本体25と、フランジ部26によって形成されている。
頭部本体25は、円板状となっており、頭部本体25の天面には、ドライバー等に係合可能な締結穴が形成されている。
フランジ部26は、円板状の部位である。フランジ部26の外径は、振動伝播阻害部材2の固定側張出部8の外径にほぼ等しい。即ち、図9のように組み立てた際に、フランジ部26は、振動伝播阻害部材2の固定側張出部8(図10参照)に当接する。また、頭部本体25とフランジ部26の側面は、壁部を介して段状に連続している。即ち、フランジ部26は、頭部本体25の基端(図12の下端)から外側方向に張り出している。
軸部22に目を移すと、軸部22は、図12のように図面上方から順に大径部27と小径部28を有している。
大径部27は、円柱状の部位であり、その外径は、取り付け金具3の底面側貫通孔12の開口径とほぼ等しい。
小径部28は、円柱状の部位であり、その外径は、取り付け金具3の底面側貫通孔12の開口径よりも小さい。また、端部付近には、ネジ溝(図示しない)が設けられており、ポンプユニット用筐体106の底板部123の固定受け孔135(図3参照)と係合可能となっている。そして、大径部27と小径部28の側面は壁部を介して段状に連続している。
また、フランジ部26の外径は、大径部27の外径に比べて大きく、フランジ部26と大径部27の側面は、壁部を介して段状に連続している。
【0048】
ここで、ポンプユニット用筐体106の上部と連結架台127との上部取り付け金具30について説明する。
本実施形態に用いる上部取り付け金具30は、図13のように一枚の鋼板を折り曲げ加工によって形成されている。上部取り付け金具30は、筐体側固定部31と壁側固定部32とを有する。
筐体側固定部31は、図13のように略長方形状の部位であり、長手方向に複数(本実施形態では5つ)の筐体側貫通孔35を有している。筐体側貫通孔35は、円形の開口を有しており、その内部にネジ等の公知の締結要素を挿入可能となっている。
壁側固定部32は、図13のように略長方形状の部位であり、長手方向に等間隔に複数(本実施形態では4つ)の固定側貫通孔36を有している。固定側貫通孔36は、円形の開口を有しており、その内部にネジ等の公知の締結要素を挿入可能となっている。
筐体側固定部31と壁側固定部32は、壁部33を介して段状に連続している。
以上が各部材の構成の説明である。
【0049】
続いて、筐体の取り付け構造1の取り付け手順に沿って、取り付け構造の各部材の位置関係、特に振動伝播阻害部材2と取り付け金具3と筐体の底板部123の位置関係について、主に図14〜図19を参照しながら説明する。
【0050】
まず、図15のように、背面部113と左側面部115と右側面部116の屈曲部133上に底板部123が載置する。この時、図14のように、底板部123の固定受け孔135と屈曲部133の貫通孔136は、連続しており、その中心軸同士が一致している。
【0051】
次に、図15のように振動伝播阻害部材2と一体となった取り付け金具3を締結部材5によって取り付ける。この時、振動伝播阻害部材2の貫通孔18内に締結部材5が挿入されている。また、図16のように背面部113の屈曲部133の下面は、振動伝播阻害部材2の筐体側張出部7の上面と接触している。
締結部材5のフランジ部26は、振動伝播阻害部材2の固定側張出部8の下面と当接している。即ち、締結部材5と底板部123の固定受け孔135の締結力によって、振動伝播阻害部材2は押しつけられている。
また、振動伝播阻害部材2の本体部6が、取り付け金具3の底面側貫通孔12内に嵌っている。そして、振動伝播阻害部材2の筐体側張出部7と固定側張出部8によって、取り付け金具3の上下方向の動きを規制している。
そして、振動伝播阻害部材2は、ポンプユニット用筐体106の内部に配された循環ポンプ110及び予備用循環ポンプ111(図2参照)の近傍に配されている。
ここでいう「近傍」とは、振動伝播阻害部材2の底板部123との接触面から循環ポンプ110又は予備用循環ポンプ111内に配されたモーターの回転軸までの距離(天地方向の長さ)が、ポンプユニット用筐体106の上下方向(天地方向)の長さの1/3以下の位置であることをいい、ポンプユニット用筐体106の上下方向(天地方向)の長さの1/4以下の位置であることが好ましい。振動伝播阻害部材2は、底板部123を介して対向する位置に予備用循環ポンプ111のモーターが設置されていることが特に好ましい。
【0052】
また、上部取り付け金具30を用いて、ポンプユニット用筐体106の上部を固定する。具体的には、図17のようにポンプユニット用筐体106の背面部113にネジ等の締結要素で上部取り付け金具30を固定する。この時、上部取り付け金具30の筐体側固定部31は、ポンプユニット用筐体106の背面部113に密着している。
【0053】
次に、図18のように連結架台127に取り付け金具3を取り付ける。この時、連結架台127の連結部129bにネジ等の公知の締結要素によって取り付けられている。被固定部材側部11は、連結部129bと接触している。
【0054】
また、図19のように連結架台127に上部取り付け金具30を取り付ける。具体的には、図19のように上部取り付け金具30の壁側固定部32をネジ等の締結要素で連結架台127の連結部129aに固定する。この時、上部取り付け金具30の壁側固定部32は、連結架台127の連結部129aに密着している。
ポンプユニット用筐体106の上部は、直接、背面部113及び連結部129aに接触する上部取り付け金具30を使用するため、ポンプユニット用筐体106と連結架台127との接合強度が大きく、ポンプユニット用筐体106の姿勢が安定しやすい。
【0055】
本実施形態の取り付け構造1によれば、ポンプユニット用筐体106の底板部123と取り付け金具3の底面対向部10との間に振動伝播阻害部材2が介在されている。即ち、連結架台127の連結部129に取り付ける場合に、振動伝播阻害部材2を介在することによる、ポンプユニット用筐体106の連結架台127から出っ張り量が増加することがない。即ち、従来の機器寸法を変えることなく、主にモーター及びポンプから発される振動を低減することができる。
【0056】
上記した実施形態では、業務用の給湯ユニットのポンプユニット用筐体106を連結架台127に取り付けた場合について記載したが、本発明はこれに限定されるものではなく、被固定壁は、種類を問わない。即ち、図20のように連結架台127の代わりに壁(垂直壁)に取り付けてもよい。
【0057】
上記した実施形態では、業務用の給湯ユニットのポンプユニット用筐体106を連結架台127に取り付けた場合について記載したが、本発明はこれに限定されるものではなく、家庭用の給湯ユニットでもよい。また、ポンプユニット103と熱源機本体102が別体のものでなくてもよい。
【0058】
上記した実施形態では、振動伝播阻害部材2の形状が略円筒状のものを用いたが、本発明はこれに限定されるものではなく、振動伝播阻害部材2の形状は問わない。
【符号の説明】
【0059】
1 筐体の取り付け構造
2 振動伝播阻害部材
3 取り付け金具
5 締結部材
10 底面対向部
11 被固定部材側部
18 貫通孔
22 軸部
30 上部取り付け金具
106 ポンプユニット用筐体
110 循環ポンプ
111 予備用循環ポンプ
123 底板部(底板)
129 連結部(垂直支持部材)
【技術分野】
【0001】
本発明はモーター及びモーターによって駆動されるポンプを有する筐体を、取り付け金具を介して垂直壁又は垂直支持部材に縦姿勢で取り付ける場合の筐体の取り付け構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、熱源機は、一般家庭に用いられる家庭用熱源機や商業施設等に用いられる業務用熱源機に分類される。家庭用熱源機では、主に、家庭用熱源機本体に循環ポンプ等の振動を発する振動源が内蔵されている。
そして、家庭用熱源機は、床に据え付けられたり、家の壁面に取り付けられたりして設置されている。例えば、家の壁面に設置する場合、壁面に家庭用熱源機の筐体と一体となった壁掛け金具を取り付けて、ボルトによって固定されている。なお、壁掛け金具は、溶接やビス締結等の剛的な手段で家庭用熱源機の筐体と一体的に取り付けられている。しかし、この取り付け方法では、稼働時において、振動源の振動が壁面に伝わり、振動により騒音が発生する。
【0003】
そこで、近年、壁掛け金具と壁面との間に防振ゴムを介在させて、振動の壁面への伝播を抑制しようという試みがなされている(例えば、特許文献1)。
【0004】
従来技術の構成では、筐体の上辺側と下辺側に取り付け金具が設けられ、当該取り付け金具を介して筐体が壁に縦姿勢で取り付けられる。
従来技術の構成では、上辺側の取り付け金具の一部が溶接等によって直接筐体に固定されている。また、上辺側の取り付け金具の他の部分が壁面に面し、ネジ等で固定されている。そして、上辺側の取り付け金具と壁面との間に前記した防振ゴムがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−292331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、壁に取り付けるタイプの熱源機は、その構造上、筐体が壁面から出っ張ることは避けられない。そして、出っ張り量が大きい(壁面からの突出長さが長い)と、なにかと邪魔になる。
そこで、壁に取り付けるタイプの熱源機は、一般に極力厚さが薄くなるように設計され、壁からの出っ張り量が小さくなるように配慮されている。
【0007】
しかしながら、従来技術の取り付け構造を用いると、壁面と熱源機との間に防振ゴムが介在されているので、壁からの出っ張り量を小さくする点で限界があった。即ち、防振ゴムの防振性能は、その厚さによって左右される。具体的には、防振ゴムは、その厚さが厚いと防振性能が高く、薄い場合は防振性能が劣る。
そのため、十分な防振効果を発揮させるためには、防振ゴムの厚さを厚くしなければならない。
しかし、その一方で、熱源機の壁からの出っ張り量を小さくするためには、防振ゴムの厚さを薄くしなければならない。
【0008】
このように、壁に取り付けるタイプの熱源機に使用する防振ゴムは、防振効果を発揮させるためには厚くする必要があり、熱源機の壁からの出っ張り量を小さくするためには薄くする必要があるという二律背反する性能が要求される。
【0009】
また、従来技術の構成によると、筐体内部のレイアウトによっても、防振ゴムの厚さを厚くしなければならない場合がある。
即ち、モーターとポンプが筐体の下部に設置されているレイアウトの熱源機や、モーターの回転軸が水平方向に設置されているレイアウトの熱源機では、従来技術の位置に設けられた防振ゴムでは制振効果を発揮しにくく、防振ゴムの厚さをさらに厚くしなければならない。
【0010】
具体的には、モーターとポンプが筐体の下部に設置されているレイアウトの熱源機では、振動発生源が筐体の下部にある。これに対して従来技術の防振構造では、防振ゴムが筐体の上部にあり、振動発生源から遠い。そのため、従来技術によると、十分に防振効果を発現しにくい。
また、モーターやポンプは、回転軸の軸線に対して垂直方向に振動が発生する。即ち、モーターやポンプは、回転軸の軸線方向には振動が生じない。そのため、モーターの回転軸が水平方向に設置されているレイアウトの熱源機では、振動は上下方向と左右方向に発生し、壁に対して遠近方向には振動が小さい。
しかしながら、従来技術の防振構造では、筐体と壁面との間に防振ゴムが介在しているため、壁面に対して遠近方向の振動を防ぐ機能が高いが、上下方向に対する防振効果は低い。
そのため、上記したレイアウトの熱源機に従来技術の防振構造を適用する場合には、防振ゴムの厚さをさらに厚くしなければならず、壁からの出っ張り量がさらに増えてしまう不具合があった。
【0011】
また、従来技術の防振構造によると、筐体と壁の距離が大きくなるため、壁から離れた位置に重量物が取り付けられることとなり、壁に大きなモーメントが掛かる。そのため、取り付ける壁は相当の剛性を有するものでなければならない。即ち、壁の剛性が不足する場合には、壁に直接熱源機を取り付けることができない。それ故に、壁の表面に補強桟等を設け、当該補強桟に熱源機を取り付ける構造を余儀なくされ、壁からの出っ張り量がさらに増加してしまう不具合があった。
【0012】
一方、商業施設等の業務用熱源機は、熱源機本体と、循環ポンプ等の振動を発する振動源を内蔵するポンプユニット等がそれぞれ別の筐体に取り付けられ、接続されている。
しかし、ポンプユニットにおいても、家庭用熱源機同様、床に据え付けられたり、壁に取り付けられたりしていた。即ち、家庭用熱源機同様の課題を有していた。
【0013】
そこで、本発明は、上記した問題点を解決するものであり、防振性を維持しつつ、コンパクトに取り付けることができる筐体の取り付け構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記した課題を解決するための請求項1に記載の発明は、モーター及びモーターによって駆動されるポンプを有する筐体を、取り付け金具を介して垂直壁又は垂直支持部材に縦姿勢で取り付ける場合の筐体の取り付け構造であって、前記筐体は、略直方体又は立方体であって底板を有し、モーター及びポンプは筐体の中心よりも下の高さの位置にあって回転軸が水平方向に向く姿勢で設置された筐体の取り付け構造において、取り付け金具は筐体の底板側に面する底面対向部と垂直壁又は垂直支持部材側に面する被固定部材側部を有し、取り付け金具の底面対向部は軸を有する締結部材を介して筐体の底板側に固定され、筐体の底板と取り付け金具の底面対向部との間に振動伝播阻害部材が介在され、前記振動伝播阻害部材の一方の面は筐体の底板の一部又は全部と接し、前記振動伝播阻害部材の他方の面は取り付け金具の底面対向部の一部又は全部と接し、取り付け金具の被固定部材側部は直接的に垂直壁又は垂直支持部材側と接していることを特徴とする筐体の取り付け構造である。
【0015】
ここでいう「縦姿勢」とは、筐体の底板が水平面に対して平行となる姿勢を表す。
ここでいう「垂直支持部材」とは、筐体を取り付けた際に筐体の姿勢が天地方向に対して直交する方向となる支持部材を表し、垂直支持部材の設置方向は問わない。
【0016】
かかる構成によれば、筐体の底板と取り付け金具の底面対向部との間に振動伝播阻害部材が介在されている。即ち、垂直壁又は垂直支持部材に縦姿勢で取り付ける場合に、振動伝播阻害部材を介在することによる、筐体の垂直壁又は垂直支持部材から出っ張り量(垂直壁又は垂直支持部材からの突出長さ)が増加することがない。即ち、従来の機器寸法を変えることなく、主にモーター及びポンプから発される振動を低減することができる。
また、筐体と垂直壁又は垂直支持部材との距離が振動伝播阻害部材の存在により大きくならないため、従来の防振ゴムの設置位置に比べて、垂直壁又は垂直支持部材にかかるモーメントが小さい。そのため、筐体を取り付ける垂直壁又は垂直支持部材は、表面に補強桟等を設ける必要がない。
また、かかる構成によれば、モーター及びポンプは筐体の中心よりも下の高さの位置にあって回転軸が水平方向に向く姿勢で設置されている。即ち、モーターの回転軸を基準として、回転軸の軸方向以外の方向(天地方向及び軸方向と交差する方向)に主に振動する。即ち、従来の防振ゴムの設置位置を採用すると、天地方向の振動に対してあまり防振効果が発揮されない。しかしながら、本発明の構成によると、筐体の底板と取り付け金具の底面対向部との間に振動伝播阻害部材が介在されているので、従来の防振ゴムの設置位置に比べて、特に天地方向の振動の防振効果が高い。
【0017】
請求項2に記載の発明は、振動伝播阻害部材は、取り付け金具内に嵌合されていることを特徴とする請求項1に記載の筐体の取り付け構造である。
【0018】
かかる構成によれば、振動伝播阻害部材は、取り付け金具内に嵌合されている。即ち、筐体に取り付け金具を取り付ける際に、分解することがない。それ故に、取り付け作業が煩わしくない。即ち、作業性が高い。
【0019】
請求項3に記載の発明は、筐体の上部に固定される上部取り付け金具を有し、筐体と上部取り付け金具は、締結部材によって直接取り付けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の筐体の取り付け構造である。
【0020】
かかる構成によれば、筐体の上部に固定される上部取り付け金具を有し、筐体と上部取り付け金具は、締結部材によって直接取り付けられているので、垂直壁又は垂直支持部材に筐体を取り付けた際の姿勢が安定し、従来の防振ゴムを有さない筐体に比べても、美観が損なわれることがない。
【0021】
請求項4に記載の発明は、振動伝播阻害部材は、貫通孔を有しており、前記貫通孔内に締結部材を挿入可能であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の筐体の取り付け構造である。
【0022】
かかる構成によれば、振動伝播阻害部材は、貫通孔を有しており、前記貫通孔内に締結部材を挿入可能であるため、振動伝播阻害部材が横ずれしにくい。即ち、振動伝播阻害部材が破損しにくい。
【0023】
請求項5に記載の発明は、振動伝播阻害部材は、モーター及びポンプの近傍に配されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の筐体の取り付け構造である。
【0024】
ここでいう「近傍」とは、振動伝播阻害部材の底板との接触面からモーターの回転軸までの距離(天地方向の長さ)が、筐体の天地方向の長さの1/3以下の位置であることをいい、筐体の天地方向の長さの1/4以下の位置であることが好ましい。振動伝播阻害部材は、底板を介して対向する位置にモーターが設置されていることが特に好ましい。
【0025】
かかる構成によれば、振動伝播阻害部材は、モーター及びポンプの近傍に配されているため、振動が共鳴し増幅する前に、振動を抑制することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、筐体の底板と取り付け金具の底面対向部との間に振動伝播阻害部材が介在されている。即ち、垂直壁又は垂直支持部材に縦姿勢で取り付ける場合に、振動伝播阻害部材を介在することによる、筐体の垂直壁又は垂直支持部材から出っ張り量(垂直壁又は垂直支持部材からの突出長さ)が増加することがない。即ち、従来の機器寸法を変えることなく、主にモーター及びポンプから発される振動を低減することができる。
また、筐体と垂直壁又は垂直支持部材との距離が振動伝播阻害部材の存在により大きくならないため、従来の防振ゴムの設置位置に比べて、垂直壁又は垂直支持部材にかかるモーメントが小さい。そのため、筐体を取り付ける垂直壁又は垂直支持部材は、表面に補強桟等を設ける必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる給湯ユニットの斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態にかかるポンプユニットを示す正面図である。なお、理解を容易にするため、ポンプユニット用筐体の蓋部を取り外している。
【図3】図2の筐体本体の部分分解図である。
【図4】本発明の第1実施形態にかかるポンプユニット用筐体の斜視図である。
【図5】図2の循環ポンプを示す図であり、ポンプ本体部の部分を透視した一部透視斜視図である。
【図6】図1の連結架台を示す斜視図である。
【図7】図4のポンプユニット用筐体を連結架台に取り付けた状態を示す図であり、ポンプユニット用筐体を透視した一部透視斜視図である。
【図8】図4の振動伝播阻害部材、取り付け金具、締結部材を表す斜視図である。
【図9】図7のポンプユニット用筐体を連結架台に取り付けた状態を示す側面図である。
【図10】図8の振動伝播阻害部材のA−A断面図である。
【図11】図8の振動伝播阻害部材、取り付け金具、締結部材を別の角度から見た斜視図である。
【図12】図8の締結部材の斜視図である。
【図13】図7の上部取り付け金具の斜視図である。
【図14】屈曲部に底板部を載置した状態を示す説明図である。
【図15】ポンプユニット用筐体に取り付け金具を固定する際の状態を示す説明図である。
【図16】ポンプユニット用筐体に取り付け金具を固定した際の状態を示す断面図である。
【図17】ポンプユニット用筐体に上部取り付け金具を固定する際の状態を示す説明図である。
【図18】取り付け金具を連結架台の連結部に固定する際を示す説明図である。
【図19】上部取り付け金具を連結架台の連結部に固定する際を示す説明図である。
【図20】壁面にポンプユニット用筐体を固定した際の状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の特徴たる筐体の取り付け構造は、モーター及びモーターによって駆動されるポンプを有する筐体を、取り付け金具を介して垂直壁又は垂直支持部材に縦姿勢で取り付ける場合に用いられるものである。
そこで、本実施形態では、具体例として、主に商業施設等で業務用として用いられる給湯システムに本発明の取り付け構造を用いた場合について説明する。
以下、本発明の特徴たる取り付け構造に先だって、給湯システムについて説明する。
【0029】
本実施形態の給湯システム100は、図1のように連結架台127に設置されて使用されるものである。給湯システム100は、図1、2のように複数(本実施形態では2台)の熱源機本体102と、モーター及びモーターによって駆動されるポンプを内蔵する循環ポンプ110及び予備用循環ポンプ111等を備えたポンプユニット103とを組み合わせたものであり、これらが配管等を用いて連結されている。そして、熱源機本体102、ポンプユニット103、カラン、シャワー等の出湯器具(図示せず)は、それぞれ各種配管で接続されている。そして、熱源機本体102、ポンプユニット103、出湯器具の各機器を含む間には、循環回路が設けられており、循環回路内で湯水を循環させて、出湯要求(カラン等が操作されること)があるまで湯水を所定温度に維持することが可能な構成とされている。
【0030】
熱源機本体102は、公知のそれと同様のものが採用されており、本実施形態では2台とも同じ機能及び能力を備えた給湯器とされている。具体的には、熱源機本体102は、熱源用筐体105を有し、燃料ガスを燃焼する燃焼部と、一次熱交換器及び二次熱交換器を備えた熱交換部と、送風機とを主要な構成部材として熱源用筐体105に内蔵されている。そして、これら燃焼部、熱交換部、送風機等を制御可能なコントローラが内蔵されている。
【0031】
そして、熱源用筐体105は、図1で示されるように略直方体又は立方体であって(本実施形態では略直方体)、1面が開放された筐体本体105aと、筐体本体105aの開放部を覆う蓋部105bにより構成されている。
【0032】
ポンプユニット103は、ポンプユニット用筐体106を有し、図2で示されるように、ポンプユニット用筐体106(筺体)内に、循環ポンプ110、予備用循環ポンプ111、膨張タンク117等が主要な構成部材として内蔵されている。そして、これらの循環ポンプ110、予備用循環ポンプ111等を制御可能なコントローラ118が内蔵されている。
【0033】
ポンプユニット用筐体106は、図1、3に示されるように、1面が開放された筐体本体106aと、筐体本体106aの開放部を覆う蓋部106bにより構成されている。
ポンプユニット用筐体106は、図1〜3のように底板部123と背面部113と天面部114と左側面部115及び右側面部116によって収納空間132が形成されており、収納空間132は前方(図1の連結架台127に対して対向方向)に延びている。そして、収納空間132内には、循環ポンプ110、予備用循環ポンプ111、膨張タンク117等が主要な構成部材が収納されている。
また、背面部113と左側面部115と右側面部116は、図3のように下端部が内側(収納空間132側)に折れ曲がっており、その折れ曲がった屈曲部133に底板部123が載置されている。底板部123には、図4のように組み立て完成時に背面部113の屈曲部133aと重なった位置に固定受け孔135が複数(本実施形態では3つ)設けられている。また、背面部113の屈曲部133aには、前記固定受け孔135に対応する位置に貫通孔136が設けられている。
一方、背面部113の上部位置には、公知の締結要素と係合可能な締結受け孔138が複数(本実施形態では3つ)設けられている。
【0034】
循環ポンプ110は、図2で示されるように、筐体本体106aの底板部123に取り付け具130を介して接続されている。循環ポンプ110の種類は、モーター及びモーターによって駆動されるポンプを内蔵していれば、特に限定されるものではなく、例えば渦巻きポンプなどが採用できる。ここで、この循環ポンプ110は、図5で示されるように、外形略円柱状のポンプ本体部125に脚部126が一体に取り付けられた状態となっている。
【0035】
予備用循環ポンプ111は、循環ポンプ110と同一のポンプが採用可能であり、循環ポンプ110と同様、ポンプ本体部125に脚部126が一体に取り付けられた構成となっている。この予備用循環ポンプ111は、臨時用のポンプとなっており、メンテナンス時や、主だって使用される循環ポンプ110の故障時に使用されるポンプとなっている。この予備用循環ポンプ111も主だって使用される循環ポンプ110と同様に、取り付け具130を介して筐体本体106aの底板部123に接続されている。
【0036】
ここで、本実施形態では、図2で示されるように、循環ポンプ110と予備用循環ポンプ111とが、それぞれの取り付け具130,130の上方で連結部材131によって接続され、実質的に一体となっている。
また、循環ポンプ110と予備用循環ポンプ111のモーター及びポンプは、ポンプユニット用筐体106の中心よりも下の高さの位置にあり、回転軸が水平方向(図2の紙面に対して手前奥方向)に向く姿勢で設置されている。即ち、回転軸の軸線方向には振動が生じにくく、主に回転軸の軸方向以外の方向(天地方向及び軸方向と交差する方向)に振動する。
なお、この予備用循環ポンプ111は臨時用のポンプとして使用するだけでなく、給湯システム100の通常の動作時において、循環ポンプ110と交互に使用してもよい。即ち、本実施形態の給湯システム100では、循環ポンプ110と予備用循環ポンプ111とを交互に使用するローテーション運転が実施可能となっている。
【0037】
筐体本体106aの略中央に位置する膨張タンク117は、湯水の温度変化に起因した体積の膨張に伴う圧力上昇、又は体積の収縮に伴う圧力低下を抑制する密閉型のタンクである。
【0038】
筐体本体106aの上部に位置するコントローラ118は、ポンプユニット103に設けられており、給湯システム100の各機器を集約的に制御可能な制御装置(図示せず)と電気的に接続されている。即ち、コントローラ118は、制御装置と信号の送受信を行って、ポンプユニット103を制御するものである。
【0039】
続いて、連結架台127の説明に移る。
連結架台127は、図6のように複数の架台単体120を連結(本実施形態では3台が連結)したものである。なお、ここで言う「連結」とは、複数の架台単体120を実際に連結したことと、複数の架台単体120を連結したものと実質的に同一の大きさに形成したことの両方を意味する。
【0040】
連結架台127は、図6のように施工現場の床に載置される基礎部121と、その基礎部121に対してほぼ直交方向に立設するように接合された立設部122と、その立設部122を補助的に支持する支持部128と、立設部122間を連結する連結部129とによって構成されている。そして、熱源用筐体105及びポンプユニット用筐体106は、この架台単体120の立設部122の高さ方向中央より上部側(上段側)に固定される。具体的には、連結部129に取り付け金具3又は公知の取り付け金具を介して、熱源用筐体105及びポンプユニット用筐体106を固定する。即ち、本実施形態の給湯システム100では、図1のように1又は複数(本実施形態では2台)の熱源用筐体105と1又は複数(本実施形態では1台)のポンプユニット用筐体106とを並設して固定する構成としている。
また、立設部122の上端部及び中間部に位置する連結部129a、129bには、図6のように、それぞれ公知の締結要素と係合可能な締結受け孔137が複数設けられている。
【0041】
ところで、本実施形態で用いる給湯システム100では、熱源用筐体105とポンプユニット用筐体106の規格は、ほぼ決まっている。即ち、意匠性の観点から、連結架台127に設置した際に、熱源用筐体105の蓋部105bとポンプユニット用筐体106の蓋部106bの前面は面一になるように形成されている。
当該給湯システム100に、従来の防振構造と同様の手法をもって、連結架台127と取り付け金具との間に防振ゴムを取り付けると、ポンプユニット用筐体106の前面(蓋部)が熱源用筐体105の前面(蓋部)に対して、突出するという不具合があった。即ち、統一感が得られず、意匠性が損なわれる恐れがあった。
そこで、発明者らは、熱源用筐体105及び/又はポンプユニット用筐体106と連結架台127との取り付け構造を開発した。
【0042】
以下、本発明の特徴たる筐体の取り付け構造1について説明する。本実施形態では、具体例として、ポンプユニット用筐体106と連結架台127との取り付け構造について説明する。なお、以下の説明において、特に断りの無い限り、図7の姿勢を基準に説明する。
本実施形態の筐体の取り付け構造1は、図7のようにポンプユニット用筐体106の下部に用いられている。また、当該取り付け構造1は、図8のように振動伝播阻害部材2と、取り付け金具3と、締結部材5と、を用いて、ポンプユニット用筐体106と連結架台127を接続している。そして、当該取り付け構造1は、図9のように、ポンプユニット用筐体106を、取り付け金具3を介して連結架台127の連結部129bにポンプユニット用筐体106が縦姿勢になるように取り付けられている。
なお、ポンプユニット用筐体106の上部と連結架台127は、公知の取り付け金具(以下、上部取り付け金具30ともいう)を用いて取り付けられる。
以下、各構成部材について説明する。
【0043】
振動伝播阻害部材2は、略円筒状であり、図10のように断面形状が略「I」字状の部材である。振動伝播阻害部材2の材質は、振動を吸収できるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、ゴム製又は樹脂製のものや、バネ等の弾性体が採用できる。加工容易の観点から、ウレタンゴムなどが特に好ましい。
振動伝播阻害部材2は、図10のように、図面の上方から順に、筐体側張出部7と、本体部6と、固定側張出部8とを有している。そして、振動伝播阻害部材2は、中央に振動伝播阻害部材2全体を上下方向に貫通した貫通孔18を有している。貫通孔18の開口形状は、円形となっている。
本体部6は、円筒状の部位であり、本体部6の内径(貫通孔18の開口径)は、後述する締結部材5の大径部27(図12参照)の外径とほぼ等しい。本体部6の高さ(上下方向の長さ)は、取り付け金具3の底面対向部10(図11参照)の厚みよりもやや大きい。
筐体側張出部7は、円筒状の部位である。そして、筐体側張出部7の外径は本体部6の外径よりも大きい。即ち、筐体側張出部7は、本体部6から外側方向に張り出している。
固定側張出部8は、円筒状の部位である。また、固定側張出部8の外径は、本体部6の外径よりも大きく、筐体側張出部7の外径よりも小さい。即ち、固定側張出部8は、本体部6から外側方向に張り出している。
【0044】
取り付け金具3に目を移すと、取り付け金具3は、図8のように一枚の鋼板を折り曲げ加工によって形成されており、側面から見て逆「L」字状となっている。取り付け金具3は、図8、図11のように底面対向部10と被固定部材側部11とを有する。
底面対向部10は、図8のように略長方形状の部位であり、長手方向に等間隔に複数(本実施形態では3つ)の底面側貫通孔12を有している。底面側貫通孔12は、円形の開口を有しており、その内部に振動伝播阻害部材2の本体部6を挿入可能となっている。底面対向部10の厚みは、振動伝播阻害部材2の本体部6の高さ(筐体側張出部7と固定側張出部8間の距離)よりやや薄い。
被固定部材側部11は、図11のように略長方形状の部位であり、長手方向に等間隔に複数(本実施形態では2つ)の固定側貫通孔13を有している。本実施形態では、被固定部材側部11の両端部に固定側貫通孔13が配されており、その内側に位置調整孔20が長手方向に複数(本実施形態では4つ)配されている。位置調整孔20は、長手方向に直交する方向に長径を有した楕円形の長孔となっている。
【0045】
振動伝播阻害部材2と取り付け金具3は、使用時には、取り付け金具3の底面側貫通孔12内に振動伝播阻害部材2の本体部6が嵌合されており、実質的に不可分一体となっている。
【0046】
ここでいう「実質的に不可分一体」とは、2以上の部材が一体となって組み合わされているが、変形や破壊を加えない限り、取り外し不可能な状態であることを表す。
【0047】
締結部材5に目を移すと、締結部材5は、図12のように、図面の上方から順に頭部21と軸部22とを有している。
頭部21は、図12の上方から順に頭部本体25と、フランジ部26によって形成されている。
頭部本体25は、円板状となっており、頭部本体25の天面には、ドライバー等に係合可能な締結穴が形成されている。
フランジ部26は、円板状の部位である。フランジ部26の外径は、振動伝播阻害部材2の固定側張出部8の外径にほぼ等しい。即ち、図9のように組み立てた際に、フランジ部26は、振動伝播阻害部材2の固定側張出部8(図10参照)に当接する。また、頭部本体25とフランジ部26の側面は、壁部を介して段状に連続している。即ち、フランジ部26は、頭部本体25の基端(図12の下端)から外側方向に張り出している。
軸部22に目を移すと、軸部22は、図12のように図面上方から順に大径部27と小径部28を有している。
大径部27は、円柱状の部位であり、その外径は、取り付け金具3の底面側貫通孔12の開口径とほぼ等しい。
小径部28は、円柱状の部位であり、その外径は、取り付け金具3の底面側貫通孔12の開口径よりも小さい。また、端部付近には、ネジ溝(図示しない)が設けられており、ポンプユニット用筐体106の底板部123の固定受け孔135(図3参照)と係合可能となっている。そして、大径部27と小径部28の側面は壁部を介して段状に連続している。
また、フランジ部26の外径は、大径部27の外径に比べて大きく、フランジ部26と大径部27の側面は、壁部を介して段状に連続している。
【0048】
ここで、ポンプユニット用筐体106の上部と連結架台127との上部取り付け金具30について説明する。
本実施形態に用いる上部取り付け金具30は、図13のように一枚の鋼板を折り曲げ加工によって形成されている。上部取り付け金具30は、筐体側固定部31と壁側固定部32とを有する。
筐体側固定部31は、図13のように略長方形状の部位であり、長手方向に複数(本実施形態では5つ)の筐体側貫通孔35を有している。筐体側貫通孔35は、円形の開口を有しており、その内部にネジ等の公知の締結要素を挿入可能となっている。
壁側固定部32は、図13のように略長方形状の部位であり、長手方向に等間隔に複数(本実施形態では4つ)の固定側貫通孔36を有している。固定側貫通孔36は、円形の開口を有しており、その内部にネジ等の公知の締結要素を挿入可能となっている。
筐体側固定部31と壁側固定部32は、壁部33を介して段状に連続している。
以上が各部材の構成の説明である。
【0049】
続いて、筐体の取り付け構造1の取り付け手順に沿って、取り付け構造の各部材の位置関係、特に振動伝播阻害部材2と取り付け金具3と筐体の底板部123の位置関係について、主に図14〜図19を参照しながら説明する。
【0050】
まず、図15のように、背面部113と左側面部115と右側面部116の屈曲部133上に底板部123が載置する。この時、図14のように、底板部123の固定受け孔135と屈曲部133の貫通孔136は、連続しており、その中心軸同士が一致している。
【0051】
次に、図15のように振動伝播阻害部材2と一体となった取り付け金具3を締結部材5によって取り付ける。この時、振動伝播阻害部材2の貫通孔18内に締結部材5が挿入されている。また、図16のように背面部113の屈曲部133の下面は、振動伝播阻害部材2の筐体側張出部7の上面と接触している。
締結部材5のフランジ部26は、振動伝播阻害部材2の固定側張出部8の下面と当接している。即ち、締結部材5と底板部123の固定受け孔135の締結力によって、振動伝播阻害部材2は押しつけられている。
また、振動伝播阻害部材2の本体部6が、取り付け金具3の底面側貫通孔12内に嵌っている。そして、振動伝播阻害部材2の筐体側張出部7と固定側張出部8によって、取り付け金具3の上下方向の動きを規制している。
そして、振動伝播阻害部材2は、ポンプユニット用筐体106の内部に配された循環ポンプ110及び予備用循環ポンプ111(図2参照)の近傍に配されている。
ここでいう「近傍」とは、振動伝播阻害部材2の底板部123との接触面から循環ポンプ110又は予備用循環ポンプ111内に配されたモーターの回転軸までの距離(天地方向の長さ)が、ポンプユニット用筐体106の上下方向(天地方向)の長さの1/3以下の位置であることをいい、ポンプユニット用筐体106の上下方向(天地方向)の長さの1/4以下の位置であることが好ましい。振動伝播阻害部材2は、底板部123を介して対向する位置に予備用循環ポンプ111のモーターが設置されていることが特に好ましい。
【0052】
また、上部取り付け金具30を用いて、ポンプユニット用筐体106の上部を固定する。具体的には、図17のようにポンプユニット用筐体106の背面部113にネジ等の締結要素で上部取り付け金具30を固定する。この時、上部取り付け金具30の筐体側固定部31は、ポンプユニット用筐体106の背面部113に密着している。
【0053】
次に、図18のように連結架台127に取り付け金具3を取り付ける。この時、連結架台127の連結部129bにネジ等の公知の締結要素によって取り付けられている。被固定部材側部11は、連結部129bと接触している。
【0054】
また、図19のように連結架台127に上部取り付け金具30を取り付ける。具体的には、図19のように上部取り付け金具30の壁側固定部32をネジ等の締結要素で連結架台127の連結部129aに固定する。この時、上部取り付け金具30の壁側固定部32は、連結架台127の連結部129aに密着している。
ポンプユニット用筐体106の上部は、直接、背面部113及び連結部129aに接触する上部取り付け金具30を使用するため、ポンプユニット用筐体106と連結架台127との接合強度が大きく、ポンプユニット用筐体106の姿勢が安定しやすい。
【0055】
本実施形態の取り付け構造1によれば、ポンプユニット用筐体106の底板部123と取り付け金具3の底面対向部10との間に振動伝播阻害部材2が介在されている。即ち、連結架台127の連結部129に取り付ける場合に、振動伝播阻害部材2を介在することによる、ポンプユニット用筐体106の連結架台127から出っ張り量が増加することがない。即ち、従来の機器寸法を変えることなく、主にモーター及びポンプから発される振動を低減することができる。
【0056】
上記した実施形態では、業務用の給湯ユニットのポンプユニット用筐体106を連結架台127に取り付けた場合について記載したが、本発明はこれに限定されるものではなく、被固定壁は、種類を問わない。即ち、図20のように連結架台127の代わりに壁(垂直壁)に取り付けてもよい。
【0057】
上記した実施形態では、業務用の給湯ユニットのポンプユニット用筐体106を連結架台127に取り付けた場合について記載したが、本発明はこれに限定されるものではなく、家庭用の給湯ユニットでもよい。また、ポンプユニット103と熱源機本体102が別体のものでなくてもよい。
【0058】
上記した実施形態では、振動伝播阻害部材2の形状が略円筒状のものを用いたが、本発明はこれに限定されるものではなく、振動伝播阻害部材2の形状は問わない。
【符号の説明】
【0059】
1 筐体の取り付け構造
2 振動伝播阻害部材
3 取り付け金具
5 締結部材
10 底面対向部
11 被固定部材側部
18 貫通孔
22 軸部
30 上部取り付け金具
106 ポンプユニット用筐体
110 循環ポンプ
111 予備用循環ポンプ
123 底板部(底板)
129 連結部(垂直支持部材)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モーター及びモーターによって駆動されるポンプを有する筐体を、取り付け金具を介して垂直壁又は垂直支持部材に縦姿勢で取り付ける場合の筐体の取り付け構造であって、
前記筐体は、略直方体又は立方体であって底板を有し、モーター及びポンプは筐体の中心よりも下の高さの位置にあって回転軸が水平方向に向く姿勢で設置された筐体の取り付け構造において、
取り付け金具は筐体の底板側に面する底面対向部と垂直壁又は垂直支持部材側に面する被固定部材側部を有し、
取り付け金具の底面対向部は軸を有する締結部材を介して筐体の底板側に固定され、
筐体の底板と取り付け金具の底面対向部との間に振動伝播阻害部材が介在され、前記振動伝播阻害部材の一方の面は筐体の底板の一部又は全部と接し、前記振動伝播阻害部材の他方の面は取り付け金具の底面対向部の一部又は全部と接し、
取り付け金具の被固定部材側部は直接的に垂直壁又は垂直支持部材側と接していることを特徴とする筐体の取り付け構造。
【請求項2】
振動伝播阻害部材は、取り付け金具内に嵌合されていることを特徴とする請求項1に記載の筐体の取り付け構造。
【請求項3】
筐体の上部に固定される上部取り付け金具を有し、
筐体と上部取り付け金具は、締結部材によって直接取り付けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の筐体の取り付け構造。
【請求項4】
振動伝播阻害部材は、貫通孔を有しており、
前記貫通孔内に締結部材を挿入可能であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の筐体の取り付け構造。
【請求項5】
振動伝播阻害部材は、モーター及びポンプの近傍に配されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の筐体の取り付け構造。
【請求項1】
モーター及びモーターによって駆動されるポンプを有する筐体を、取り付け金具を介して垂直壁又は垂直支持部材に縦姿勢で取り付ける場合の筐体の取り付け構造であって、
前記筐体は、略直方体又は立方体であって底板を有し、モーター及びポンプは筐体の中心よりも下の高さの位置にあって回転軸が水平方向に向く姿勢で設置された筐体の取り付け構造において、
取り付け金具は筐体の底板側に面する底面対向部と垂直壁又は垂直支持部材側に面する被固定部材側部を有し、
取り付け金具の底面対向部は軸を有する締結部材を介して筐体の底板側に固定され、
筐体の底板と取り付け金具の底面対向部との間に振動伝播阻害部材が介在され、前記振動伝播阻害部材の一方の面は筐体の底板の一部又は全部と接し、前記振動伝播阻害部材の他方の面は取り付け金具の底面対向部の一部又は全部と接し、
取り付け金具の被固定部材側部は直接的に垂直壁又は垂直支持部材側と接していることを特徴とする筐体の取り付け構造。
【請求項2】
振動伝播阻害部材は、取り付け金具内に嵌合されていることを特徴とする請求項1に記載の筐体の取り付け構造。
【請求項3】
筐体の上部に固定される上部取り付け金具を有し、
筐体と上部取り付け金具は、締結部材によって直接取り付けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の筐体の取り付け構造。
【請求項4】
振動伝播阻害部材は、貫通孔を有しており、
前記貫通孔内に締結部材を挿入可能であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の筐体の取り付け構造。
【請求項5】
振動伝播阻害部材は、モーター及びポンプの近傍に配されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の筐体の取り付け構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2013−2754(P2013−2754A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−135258(P2011−135258)
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【出願人】(000004709)株式会社ノーリツ (1,293)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【出願人】(000004709)株式会社ノーリツ (1,293)
【Fターム(参考)】
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