説明

筐体の密閉性検査装置

【課題】開口部の形状が複雑な筐体であっても、十分な密閉性を得て密閉性の検査ができるとともに、検査装置の製造コストの低減と製造納期の短縮。
【解決手段】本発明に係る筐体の密閉性検査装置は、開口部を備えた筐体の密閉性を検査する装置において、前記開口部から前記筐体の内部空間に挿入し得る第1および第2プレートと、前記2枚のプレートの外周縁部において前記2枚のプレート間に挟まれた状態で配設された弾性部材と、前記第1プレートと第2プレートの隙間を縮小して前記弾性部材を押圧することによって前記弾性部材を弾性変形させて前記2枚のプレートの外周縁から外側へ膨出させて前記筐体の内壁面に密着させる押圧手段と、前記膨出させた弾性部材によって密閉された前記筐体の内部空間内の流体を減圧もしくは加圧する圧力制御手段と、前記筐体の内部空間内の圧力変化を計測する圧力計測手段とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防水機能を備えた無線機等の各種の機器の筐体における防水性や密閉性の評価検査に使用する密閉性検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
前述したような筐体の密閉性検査の方法としては、検査対象の筐体の開口部を密閉手段で閉じて、筐体の内部空間を密閉状態にして、前記内部空間を所定の圧力に減圧もしくは加圧して、時間の経過による前記内部空間の圧力変化を測定して、圧力の変化が所定の基準より少ない場合には密閉性が十分であると評価し、所定の基準より大きい場合には密閉性が不十分であると評価することが行われている。
このような密閉性の検査方法の従来例が特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−12008号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、図8に示した例のような開口部901を備えた筐体900の密閉性を検査する場合には、前記筐体900の前記開口部901に、パッキン500を挟んでプレート状の密閉手段200を押しつけて、前記開口部901を密閉状態にしてから、前記密閉手段200に設けられた減圧配管600を真空ポンプ(図示は省略。)に接続して、前記筐体900の内部空間を減圧する必要が有る。
この場合、前記筐体900の前記開口部901と前記密閉手段200との当接部分は十分な密閉性が要求されるため、前記パッキン500が用いられている。前記開口部901が、図8に示したように仮想的な平面に接するような形状である場合には、密閉手段200は前記仮想的な平面と同じような平面とすればよいので、密閉性が得られやすい。
特許文献1に開示された検査方法においては、検査対象のオイルパンの開口部が仮想的な平面に接する形状であるので、密閉手段としてのベッドの方も前記仮想的な平面と同じ平面としてある。
【0005】
しかし、図9に示した例の筐体910のように、開口部911に段差や凹凸構造912があると、プレート等の密閉手段210側の当接部分を、前記凹凸構造912に応じた構造に成形する必要が有るが、そのような場合には、パッキン510を挟み込んでも、前記凹凸構造912の当接部分における密閉性が低下するという問題が発生する。
特に、前記開口部911に鋭角状の凹凸構造912がある場合には、パッキン510が前記凹凸構造912の細部までは密着しないので、十分な密閉性を得ることは困難である。
また、検査対象の筐体の開口部の形状に合わせてプレート等の密閉手段を作成しなければならないので、密閉手段の製造コストと製造納期がかかるという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、開口部の形状が複雑な筐体であっても、十分な密閉性を得て密閉性の検査ができるとともに、検査装置の製造コストの低減と製造納期の短縮を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に係る筐体の密閉性検査装置は、
開口部を備えた筐体の密閉性を検査する装置において、
前記開口部から前記筐体の内部空間に挿入し得る第1および第2プレートと、
前記2枚のプレートの外周縁部において前記2枚のプレート間に挟まれた状態で配設された弾性部材と、
前記第1プレートと第2プレートの隙間を縮小して前記弾性部材を押圧することによって前記弾性部材を弾性変形させて前記2枚のプレートの外周縁から外側へ膨出させて前記筐体の内壁面に密着させる押圧手段と、
前記膨出させた弾性部材によって密閉された前記筐体の内部空間内の流体を減圧もしくは加圧する圧力制御手段と、
前記筐体の内部空間内の圧力変化を計測する圧力計測手段と
を備えている。
請求項2では、
押圧された弾性部材が前記2枚の周縁から内側へ変形することを規制する規制手段を備えている。
請求項3では、
開口部を備えた筐体の密閉性を検査する装置において、
前記筐体を内部空間に挿入し得る箱状の容器と、
前記容器の開口した1面を封止する第1プレートと、
この第1プレートに重ねて配設された第2プレートと、
前記2枚のプレートにそれぞれ設けられた、前記筐体を挿入し得る挿入孔の内周縁部において前記2枚のプレート間に挟まれた状態で配設された弾性部材と、
前記第1プレートと第2プレートの隙間を縮小して前記弾性部材を押圧することによって前記弾性部材を弾性変形させて前記挿入孔の内周縁から内側へ膨出させて前記筐体の外壁面に密着させる押圧手段と、
前記膨出させた弾性部材によって密閉された前記容器の内部空間内の流体を減圧もしくは加圧する圧力制御手段と、
前記内部空間内の圧力変化を計測する圧力計測手段と
を備えている。
請求項4では、
押圧された弾性部材が前記挿入孔の内周縁から外側へ変形することを規制する規制手段を備えている。
請求項5では、
前記圧力計測手段は、所定の圧力に到達してから所定の時間が経過した時点まで計測するタイマを備え、前記所定の時間経過後の圧力を計測するように構成されている。
請求項6では、
前記圧力制御手段は、前記筐体の内部空間の気体を減圧する減圧ポンプと減圧配管とを含み、
前記圧力計測手段は、前記減圧配管中の圧力変換を計測するように構成されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の請求項1にかかる筐体の密閉性検査装置によれば、
筐体の内部空間に第1および第2プレートを挿入し、前記2枚のプレートの外周縁部において前記2枚のプレート間に挟まれた状態で配設された弾性部材と、前記第1プレートと第2プレートの隙間を縮小することによって、前記2枚のプレートの外周縁部において前記2枚のプレート間に挟まれた状態で配設された弾性部材を押圧して、前記弾性部材を外側へ膨出させて前記筐体の内壁面に密着させて、前記筐体の内部空間内の流体を減圧もしくは加圧するので、前記筐体の開口部に凹凸形状があって複雑な形状をしている場合でも、前記内壁面に確実に密着させることができ、適正な密閉状態が得られるか否かを検査することができる。
また、2枚のプレートの形状は、検査対象の筐体の内壁面の形状に合わせて作成するので、製造コストが低減されるとともに製造納期が短縮できる。
また、筐体を内部空間に挿入し得る箱状の容器の開口した1面を2枚のプレートで封止し、前記2枚のプレート間に挟まれた状態で配設された弾性部材を押圧することによって弾性変形させて内側へ膨出させて前記筐体の外壁面に密着させ、密閉性を検査してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明にかかる筐体の密閉性検査装置の外形図である。
【図2】検査対象とする筐体の概略を示した断面図である。
【図3】検査対象とする筐体を用いた電子機器の概略を示した断面図である。
【図4】前記筐体の密閉性検査装置の要部の断面図である。
【図5】前記筐体の密閉性検査装置の要部の断面図である。
【図6】前記筐体の密閉性検査装置の要部の断面図である。
【図7】実施例2の筐体の密閉性検査装置の要部の断面図である。
【図8】従来例の検査装置による簡単な形状の筐体の密閉性検査を説明する説明図である。
【図9】従来例の検査装置による複雑な形状の筐体の密閉性検査を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明にかかる筐体の密閉性検査装置を実施するための形態を、図1、2、3、4を参照して説明する。
図1に示した密閉性検査装置1は、
図2に示したような筐体をセットするための保持手段2を備え、前記保持手段2は、2枚のプレート31、32を備えた密閉手段3と、前記密閉手段3が配設された基台21と、前記密閉手段3にセットされた筐体を上から押さえて筐体の浮き上がり等の動きを規制するための昇降可能な保持機構22とを備えている
前記筐体は、図2に示したように、防水型の電子機器等の筐体のように防水機能を要する筐体9であり、例えば、図3に示した中間シャーシ92等の別の構成部材を挿入するための開口部91を備えるとともに、操作ボタン等が配設される表パネル93を備えており、基本的な形状としてはほぼ箱状の筐体となっている。この場合には、前記表パネル93が筒状の筐体の底に対応している。
前記密閉性検査装置1は、前記筐体9における前記開口部91以外のピンホールやクラックの有無を確認するために、前記筐体9の内部空間の密閉性を検査するものである。
【0011】
前記筐体9を電子機器の筐体として使用する場合には、図3に示したように、
前記中間シャーシ92は、例えば、1面側には電子回路はスイッチ等の電子部品94が配設されており、他面側は、例えばバッテリー等の電源部95を収納するように構成されている。
前記中間シャーシ92の外周縁に形成されたパッキン装着部99には、弾性部材で構成された環状のパッキン96が装着されており、前記パッキン96を装着した状態で前記中間シャーシ92を、前記筐体9の内部空間に押しこむことにより、前記パッキン96は、前記筐体9の内壁面97に密着して防水性が確保されるように構成されている。このとき、前記電子部品94は、前記筐体9の内壁面と前記中間シャーシ92とで閉じられた空間Sに配置されるように構成されている。
【0012】
前記電子部品94のうちのスイッチ等の操作部品は、前記筐体9の表パネル93の外側から操作し得るように配設されているとともに、防水性のシート材等により防水性が確保されるような構造になっている。
このようにして、前記電子部品94は、防水性が確保された空間S内に配置されることになり、正常に動作することができる。
前記筐体9に前記中間シャーシ92を嵌め込んだ後、さらに、裏パネル98を被せて、ボルトなどで固定することによって、電子機器の筐体が構成される。
【実施例1】
【0013】
つぎに、図1、2、3、4を参照して、本発明にかかる筐体の密閉性検査装置の実施例1を説明する。
図1に示したように、
実施例1の筐体の密閉性検査装置1は、前記筐体を所定の検査位置に位置決めして保持する保持手段2を備え、この保持手段2は、第1プレート31と第2プレート32からなる2枚のプレートを備えた密閉手段3と、前記密閉手段3が配設された基台21と、前記密閉手段3にセットされた筐体を上から押さえて動きを規制する昇降可能な保持機構22とを備えている。
【0014】
前記密閉手段3は、要部の断面を示した図4に示したように、下側の固定プレート31と、上側の可動プレート32とを備えている。前記2枚のプレート31、32の外形は、2枚ともほぼ同じ外形に成形されており、前記外形は、図2に示した前記筐体9の内部空間Sに挿入し得るように、前記筐体9の内壁面97で囲まれた前記内部空間Sの断面形状より少し小さな形状に成形されている。
前記2枚のプレート31、32の外形は、前記筐体9の内部空間Sの断面形状とほぼ同じ形状、すなわち、図3に示した前記中間シャーシ92の前記パッキン装着部99の外形とほぼ同じ外形に成形されている。
前記中間シャーシ92の前記パッキン装着部99が、図示したように、例えば側面視で傾斜部を持った形状である場合には、前記2枚のプレート31、32の外形も、前記同様に傾斜部を持った形状とする。
【0015】
前記2枚のプレート31、32は少しの隙間Dを持たせて配設されている。そして、駆動機構4によって、前記可動プレート32を前記固定プレート31に対して相対的に昇降させることによって、前記隙間Dを拡大・縮小するように構成されている。
前記2枚のプレート31、32の外周縁には弾性部材装着部33が形成され、この弾性部材装着部33には弾性部材で構成されたリング状の弾性部材5が装着されている。
前記2枚のプレート31、32の外周に形成されている弾性部材装着部33の外形は、前記中間シャーシ92の前記パッキン装着部99の外形とほぼ同じ外形に成形されている。前記中間シャーシ92の前記パッキン装着部99が、例えば側面視で傾斜部を持った形状である場合には、前記弾性部材装着部33の外形も、前記同様に傾斜部を持った形状とする。
このように、前記弾性部材装着部33の外形を、前記パッキン装着部99の外形とほぼ同じ外形とすることによって、図3のように、前記中間シャーシ92を装着した状態での前記パッキン96が、前記筐体9の内壁面97に密着する状態と同等の状態で、前記弾性部材5が前記筐体9の内壁面97に密着することができるので、実際の完成状態の筐体9に要求される条件と同じ条件で密閉性を検査することができる。
また、図3のように、前記中間シャーシ92を装着した状態で、前記パッキン96が前記筐体9に密着する内壁面97は、密閉性を確保するために十分に平滑状態に成形されているので、前記密閉性検査装置1を用いた検査においても、十分に平滑状態に成形されている前記内壁面97を利用して検査することができるのである。
【0016】
図4に示したように、前記駆動機構4は、例えばエアーシリンダ等の駆動手段に昇降駆動されるシャフト41を備えており、前記シャフト4の上端は前記基台21と前記固定プレート31とを貫通する孔を通って前記可動プレート32に固定されている。前記固定プレート31は、前記基台21に固定されており、昇降することはない。
【0017】
つぎに、図4を参照して、前記密閉手段3の詳細を説明する。
前記可動プレート32は、前記固定プレート31の上側に隙間Dをもって重ねるように配設されている。2枚のプレート31、32の外周縁には、前記弾性部材5を装着するための前記弾性部材装着部33が形成されている。この弾性部材装着部33は、前記2枚のプレート31、32のいずれに設けられていてもよく、両方にわたって設けられていてもよいが、ここに装着される弾性部材5が押圧されて弾性変形するときに内側に膨出して変形することを規制するための規制手段34が形成されていることが好ましい。この規制手段34は、例えば外周壁35を持った段差36で構成することができる。
【0018】
前記可動プレート32の上面に開口した吸引口61は、減圧配管62を用いて、減圧ポンプ63と接続されており、前記減圧ポンプ63を作動させることによって、前記筐体9の内部空間を減圧するように構成されている。そして、前記減圧配管62には、配管中の圧力変化を計測するための圧力計測手段64が備えられている。
前記吸引口61、前記減圧配管62、前記減圧ポンプ63によって、圧力制御手段6を構成している。
【0019】
7は制御装置であり、前記駆動手段4の昇降駆動と、前記減圧ポンプ63のオン/オフ制御と、所定の圧力に減圧した時点から所定の検査時間が経過した後の圧力変化を計測して、圧力変化が規定の基準値以内であれば検査合格と判定し、圧力変化が規定の基準値を越えて変化した場合には検査不合格と判定して、これらの判定結果を出力もしくは表示するように構成されている。
【0020】
図5は、図4に示した密閉性検査装置1の前記密閉手段3に、検査対象の筐体9をセットした状態の、要部の断面図を示している。
なお、図5においては、図1に示した前記保持機構22は下降して前記筐体9を上から押さえた状態になっているが、図示は省略している。
この状態では、前記可動プレート32は、図4と同じように、上昇位置にあるので前記弾性部材5は押圧されておらず、前記弾性部材5の外周面は、前記筐体9の内壁面97に密着した状態ではない。
【0021】
図6は、図5に示した状態から、前記可動プレート32を下降させた状態の断面図を示している。
なお、図6においても前記保持機構22の図示は省略している。
この状態では、前記可動プレート32は、前記駆動手段4による下降駆動されて下降位置にあるので、前記2枚のプレート31、32間の隙間Dは縮小され、前記弾性部材5は前記2枚のプレート31、32間で押圧される。
2枚のプレート31、32の間で上下方向に押圧された弾性部材5は横方向に弾性変形して膨出しようとするが、前記弾性部材5の内側は前記規制手段34の前記外壁面35によって内側への膨出が阻止されているので、外側へのみ弾性変形して膨出する。
したがって、前記弾性部材5の外周面は、前記筐体9の内壁面97に密着した状態となる。
【0022】
この状態では、前記筐体9の内面と、前記弾性部材5と、前記可動プレート32とで囲まれた空間Sは密閉空間となる。
しかも、前記弾性部材5の外周面は、膨出することによって、前記筐体9の内壁面97と十分に強い圧力で密着状態となるので、十分な密閉性が確保される。
【0023】
続いて、本発明にかかる筐体の密閉性検査装置1を用いて筐体の密閉性の検査を行う手順を説明する。
まず、図4に示した2枚のプレート31、32を備えた密閉手段3に、図5のように筐体9の開口部91を下側にして被せる。
なお、前記筐体9は、予め、表パネルに設けられた操作ボタン用の孔などを、防水シート等を用いて封止して、開口部61以外の部分の気密状態を確保しておく。
【0024】
つぎに、筐体9のセットが完了した時点で、検査スタートスイッチ等を押すと、前記制御装置7からの駆動信号に基づいて、前記保持機構22が降下して前記筐体9を押さえ、さらに、前記駆動手段4が作動して前記シャフト41を引き下げる。これによって、前記シャフト41に固定された前記可動プレート32は下降して、前記2枚のプレート間の隙間Dを縮小する。前記隙間Dによって押圧された弾性部材5は外側へ膨出して、前記筐体9の内壁面97に密着して、前記筐体9の内部空間Sは気密状態となる。
【0025】
前記制御装置7は、前記シャフト41が規定量だけ下降したことをリミットスイッチ等で確認すると、下降を停止して、その位置で保持し、続いて、減圧ポンプ63を制御して減圧を開始する。そして、前記圧力計測手段64による圧力計測値を監視して、規定の検査圧力まで減圧したことを確認すると、前記減圧ポンプ63による減圧を停止して、例えば減圧ポンプ63の吸引口の電動三方弁などの弁を閉じて、前記内部空間Sの圧力変化の計測を開始する。そして、タイマに設定された規定の経過時間後における前記圧力計測手段64による圧力変化の計測値を規定の基準値と比較して、前記圧力変化が規定の基準値以内であれば検査合格と判定し、圧力変化が規定の基準値を越えて変化した場合には検査不合格と判定して、これらの判定結果をブザーや合成音等による音声出力もしくは、合否判定ランプ等の点灯により表示する。
【0026】
このようにして、ひとつの筐体の検査が終了した後には、前記弁を開いて減圧配管62内に外気を導入し、前記制御装置7から前記駆動手段4に制御信号を送り、前記可動プレート32を元の位置まで上昇させる。これによって、弾性部材5は元の状態に弾性復元するので、弾性部材5は膨出状態ではなくなり、前記筐体9の内壁面97から離れる。この状態で、前記保持機構22を上昇させて、筐体9を基台21から取り外す。
そして、次の筐体を検査する場合には、上記手順を繰り返す。
【0027】
なお、以上の説明では、2枚のプレートのうち、上側のプレートを可動プレートとしたが、下側のプレートを可動プレートとして、2枚のプレート間の隙間を縮小できる構成とすることもできる。
また、以上の説明では、筐体9の開口部91を下向きにしてセットしたが、前記2枚のプレートを上方から下降させるように支持し、開口部91を上向きにしてセットした筐体9の内部空間に挿入するような筐体の密閉性検査装置の構成としてもよい。
【実施例2】
【0028】
以上の実施例1の説明においては、2枚のプレートに挟まれた弾性部材を、筐体の内部空間に挿入し、前記弾性部材を押圧することによって外側に膨出させ、筐体の内壁面に密着するような構成について説明したが、逆の構成とすることも可能である。
例えば、図7の(A)に示した実施例2の筐体の密閉性検査装置1Bのように、検査対象の筐体9Bの外形より大きな挿入孔33Bを備えた上側のプレート31Bと、前記挿入孔33Bと同じ大きさの挿入孔34Bを備えた下側のプレート32Bを備え、前記下側のプレート32Bは、前記挿入孔33B、34Bの外形より大きな基台プレート21Bに密着されている。
そして、前記2枚のプレート31B、32Bの間に形成された隙間の内周縁側に、弾性部材5Bを配設し、前記2枚のプレート31B、32Bのうちの例えば下側のプレート32Bを上昇させることによって、前記隙間を縮小し、間に挟まれた前記弾性部材5Bを内側に膨出させて、内側に膨出した弾性部材5Bが、前記筐体9Bの外周面に密着するように構成してもよい。
【0029】
続いて、前記膨出させた弾性部材5Bによって密閉された、前記筐体9Bの内部空間SBを減圧して、規定の圧力に達した後に、減圧を停止して、所定の時間が経過するまでの、前記内部空間SB内の圧力変化を計測することによって、前記筐体9Bの密閉性を検査するように構成することもできる。
なお、実施例2の説明においては、圧力制御手段と圧力計測手段とに関する説明は省略した。
【実施例3】
【0030】
図7の(B)に示した実施例3の筐体の密閉性検査装置1Cは、検査対象の筐体9Cより大きな箱21の底を一枚のプレート31Cに置き代え、前記プレート31Cには、前記筐体9Cを挿入し得る挿入孔33Cを設け、前記プレート31Cの下側に重ねて配設した下側プレート32Cにも、前記挿入孔33Cと同等の挿入孔34Cを設け、
前記2枚のプレート31C、32Cの間に形成された隙間の内周縁側に、弾性部材5Cを配設し、前記2枚のプレート31C、32Cのうちの例えば下側のプレート32Cを上昇させることによって、前記隙間を縮小し、間に挟まれた前記弾性部材5Cを内側に膨出させて、内側に膨出した弾性部材5Cが、前記筐体9Cの外周面に密着するように構成してもよい。
この場合には、前記箱21の内部空間SCは前記弾性部材5Cで密閉することができるので、上記同様にして、前記内部空間SCの密閉性の検査を行うことができる。
なお、実施例3の説明においては、圧力制御手段と圧力計測手段とに関する説明は省略した。
前記箱21は、特許請求の範囲に記載された箱状の容器に対応し、前記プレート31Cは、特許請求の範囲に記載された第1のプレートに対応し、前記下側プレート32Cは、特許請求の範囲に記載された第2のプレートに対応している。
前記箱21と前記プレート31Cは一体成形したものでもよい。
【0031】
なお、本発明における密閉性の検査とは、防水性の検査、水密性の検査、および気密性の検査を包含する検査である。
したがって、密閉性の検査においては、筐体の検査対象の空間を減圧してもよいが加圧して検査してもよい。また、前記空間の気体を減圧もしくは加圧して検査してもよいが、前記空間に充填した液体を減圧もしくは加圧して検査してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明にかかる密閉性の検査装置は、電子機器の筐体に限らず、精密機械の筐体や、腐食性ガス環境下において用いられる機器の筐体の密閉性の検査に広く応用することができる。
【符号の説明】
【0033】
1 密閉性検査装置
2 保持手段
21 基台
22 保持機構
3 密閉手段
31 固定プレート
32 可動プレート
33 弾性部材装着部
D 隙間
4 駆動機構
5 弾性部材
9 筐体
S 内部空間
91 開口部
97 内壁面
1B 密閉性検査装置
31B 固定プレート
32B 可動プレート
5B 弾性部材
1C 密閉性検査装置
31C 固定プレート
32C 可動プレート
5C 弾性部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を備えた筐体の密閉性を検査する装置において、
前記開口部から前記筐体の内部空間に挿入し得る第1および第2プレートと、
前記2枚のプレートの外周縁部において前記2枚のプレート間に挟まれた状態で配設された弾性部材と、
前記第1プレートと第2プレートの隙間を縮小して前記弾性部材を押圧することによって前記弾性部材を弾性変形させて前記2枚のプレートの外周縁から外側へ膨出させて前記筐体の内壁面に密着させる押圧手段と、
前記膨出させた弾性部材によって密閉された前記筐体の内部空間内の流体を減圧もしくは加圧する圧力制御手段と、
前記筐体の内部空間内の圧力変化を計測する圧力計測手段と
を備えたことを特徴とする筐体の密閉性検査装置。
【請求項2】
押圧された弾性部材が前記2枚の周縁から内側へ変形することを規制する規制手段を備えていることを特徴とする請求項1に記載の筐体の密閉性検査装置。
【請求項3】
開口部を備えた筐体の密閉性を検査する装置において、
前記筐体を内部空間に挿入し得る箱状の容器と、
前記容器の開口した1面を封止する第1プレートと、
この第1プレートに重ねて配設された第2プレートと、
前記2枚のプレートにそれぞれ設けられた、前記筐体を挿入し得る挿入孔の内周縁部において前記2枚のプレート間に挟まれた状態で配設された弾性部材と、
前記第1プレートと第2プレートの隙間を縮小して前記弾性部材を押圧することによって前記弾性部材を弾性変形させて前記挿入孔の内周縁から内側へ膨出させて前記筐体の外壁面に密着させる押圧手段と、
前記膨出させた弾性部材によって密閉された前記容器の内部空間内の流体を減圧もしくは加圧する圧力制御手段と、
前記内部空間内の圧力変化を計測する圧力計測手段と
を備えたことを特徴とする筐体の密閉性検査装置。
【請求項4】
押圧された弾性部材が前記挿入孔の内周縁から外側へ変形することを規制する規制手段を備えていることを特徴とする請求項3に記載の筐体の密閉性検査装置。
【請求項5】
前記圧力計測手段は、所定の圧力に到達してから所定の時間が経過した時点まで計測するタイマを備え、前記所定の時間経過後の圧力を計測するように構成されていることを特徴とする請求項1乃至4に記載の筐体の密閉性検査装置。
【請求項6】
前記圧力制御手段は、前記筐体の内部空間の気体を減圧する減圧ポンプと減圧配管とを含み、
前記圧力計測手段は、前記減圧配管中の圧力変換を計測するように構成されていることを特徴とする請求項1乃至5に記載の筐体の密閉性検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−141168(P2012−141168A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−292475(P2010−292475)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000100746)アイコム株式会社 (273)
【Fターム(参考)】