説明

筐体の扉用持出し回転型ヒンジ

【課題】開放された扉が内部の物品の出し入れ操作の障害とらない、構造簡易な筐体のヒンジを提供する。
【解決手段】筐体の固定枠体1の開口前面1a側を開閉する扉2を固定枠体1に開閉自在に支持するためのヒンジ101は、固定枠体1に固着されるベース板3と、扉2に固着される支持板4と、ベース板3と支持板4との間を連結する水平面上回転自在のリンク6,8,11,15とを具備する。扉2が開くにしたがって、第1及び第2のリンク6,8が、ベース板3から前方へ起立回動し、扉2をそれの回転軸と共に筐体1の前方へせり出させる。扉2が全開位置にあるとき、筐体1の開口の前面1a側が広く開放されるので、物品の出し入れ作業が円滑に行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、本発明は自動販売機等の筐体の扉に使用されるヒンジに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般の自動販売機等では、固定枠体に取り付けたベース板の先端部に扉の基端部を単一軸構成のピボット型ヒンジによって連結している。しかしながら、このように扉の回転中心が固定枠体に近接した位置関係にあるヒンジでは、隣に同様の自販機等が設置されている場合には、扉を大きく開放したときに隣接の自販機等に扉が衝突する干渉事故の問題が指摘されている。この干渉事故を避けようとすると、今度は十分に扉を開放することができないため、ディスプレイや金銭収納用引き出し等の引き出し操作に障害となってしまう。
そこで、扉の回転中心が固定枠体の開口部前面側に持ち出されるため、扉が隣接の自販機等に衝突する干渉事故が発生せず、また、開放された扉が引き出し等の出し入れ操作の障害となることもない自販機等の持出し回転型ヒンジが提案されている(例えば特許文献1参照)。
このヒンジは、ベース板の先端部に固定歯車を固着し、アーム板の基端部の第1軸ピンを固定歯車の垂直軸孔に嵌挿し、アーム板に支持させた中間歯車を固定歯車に噛み合わせ、第1リンクの先端部を第2軸ピンで扉に連結し、第1リンクの基端部に固着した第3軸ピンをアーム板の軸受孔に嵌挿し、第3軸ピンに固設した回転軸歯車を固定歯車の反対側において中間歯車に噛み合わせ、第2リンクの基端部を第4軸ピンによってアーム板の先端部に連結し、第2リンクの先端部を第5軸ピンによって扉に連結したものである。
しかしながら、このヒンジは、機構が複雑で、比較的高価なものとなるという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−252338号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、この発明の目的は、扉の回転中心が固定枠体の開口部前面側に持ち出されるため、開放された扉が内部の物品の出し入れ操作の障害となることがない自販機等の筐体の持出し回転型ヒンジで、構造が比較的簡単で安価に得られるもの提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下、添付図面の符号を参照して説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
上記課題を解決するため、この出願に係る発明のヒンジ101は、固定枠体1の開口前面1a側を開閉する扉2を固定枠体1に開閉自在に支持するためのヒンジであって;固定枠体1に固着される水平のベース板3と;扉2に固着される水平の支持板4と;前記ベース板3上に第1固定軸5により基端側が枢支される第1のリンク6と;前記ベース板3上に第2固定軸7により第1固定軸5の後方に間隔を置いて基端側が枢支される第2のリンク8と;前記支持板4上に第3固定軸9により基端側が枢支され先端側が第1可動軸10により前記第1のリンク6の先端部に枢支される第3のリンク11と;前記支持板4上に第4固定軸12により前記第3固定軸9の横外方向に間隔を置いて基端側が枢支され、先端側が第2可動軸13により前記第2のリンク8の先端部に枢支され、中間部が第3可動軸14により前記第1のリンク6の中間部に枢支される第4のリンク15とを具備し;扉2が開くにしたがって全開位置まで前記第1及び第2のリンク6,8がベース板3から前方へ延出するように回動する。
【発明の効果】
【0006】
この出願に係る発明のヒンジによれば、リンク6,8が前方へ延出するように回動して、扉2が横外方向へ移動することにより、扉2の回転中心が固定枠体1の開口部前方に持ち出されるため、開放された扉2が筐体内部の物品の出し入れ操作の障害となることがない。また、構造が比較的簡単で比較的安価に得られるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】扉が閉鎖状態にあるときの本発明に係るヒンジの平面図である。
【図2】図1のヒンジの側面図である。
【図3】扉が開放途上にあるときの図1のヒンジの平面図である。
【図4】扉が全開状態にあるときの図1のヒンジの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図面を参照してこの発明の実施の形態を説明する。
図1ないし図4において、ヒンジ101は、筐体の固定枠体1の開口前面1a側を開閉する扉2を固定枠体1に開閉自在に支持するためのヒンジであって、扉2の上下部の2か所に対称に装着される。ヒンジ101は、固定枠体1に固着される固定ブラケットのベース板3と、扉2に固着される可動ブラケットの支持板4と、ベース板3と支持板4との間を連結する水平面上回転自在の第1ないし第4のリンク6,8,11とを具備する。扉2は、図1に示す閉鎖状態において、当接面2aが固定枠体1の開口前面1aに重なる。
【0009】
第1リンク6は、第1固定軸5により、基端側においてベース板3に枢支される。第1リンク6は、第1固定軸5の後方に間隔を置いて位置する第2固定軸7により、基端側においてベース板3に枢支される。
【0010】
第3リンク11は、第3固定軸9により、基端側において支持板4に枢支され、先端部において第1可動軸10により、第1リンク6に枢支される。
【0011】
第4リンク15は、第3固定軸9の横外方向に間隔を置いて位置する第4固定軸12により、基端側において支持板4に枢支され、先端部において第2可動軸13により、第2リンク8に枢支され、また中間部において、第3可動軸14により、第1リンク6の中間部に枢支される。
【0012】
図1,2に示すように、扉2の閉鎖状態において、第2固定軸7・第2可動軸13間、第1可動軸10・第3可動軸14間及び第3固定軸9・第4固定軸12間をそれぞれ結ぶ直線が、固定枠体1の開口前面1aと平行に配置される。扉2が開くにしたがって、第1及び第2のリンク6,8が、ベース板3から前方へ起立回動し、扉2をそれの回転軸と共に筐体1の前方へせり出させる。扉2が図4に示す全開位置に達するとき、第3リンク11の側縁11aと第4リンク15の側縁15aとが当接し、リンク6,8,11,15の回転が止まる。
【0013】
扉2が全開位置にあるとき、筐体1の開口の前面1a側が広く開放されるので、物品の出し入れ作業が円滑に行われる。
【0014】
ストッパレバー16は、中間部において第1可動軸10により枢支され、ばね17により反時計方向に回転付勢される。ストッパレバー16は、側縁16aと、係合凹部16bと、操作部16cとを具備する。側縁16aは、図1に示す扉2の閉鎖位置から図4に示す扉2の全開位置の直前位置まで、第2可動軸13に摺接する。係合凹部16bは、ストッパレバー16の先端側に設けられ、図4に示す扉2の全開位置において、第2可動軸13に係合し、第1可動軸10と第2可動軸13との間を固定する。操作部16cは、係合凹部16bの係合を解除するためのもので、ストッパレバー16の基端側に設けられる。ストッパレバー16が第1可動軸10と第2可動軸13との間に介在することにより、扉2は全開位置でロックされる。このロックを解除するには、操作部16cを押し、ストッパレバー16を時計方向へ回転させることによって、係合凹部16bと第2可動軸13との係合を解除する。これで、扉2を閉じることができる。
【符号の説明】
【0015】
1 固定枠体
1a 開口前面
2 扉
2a 当接面
3 ベース板
4 支持板
5 第1固定軸
6 第1リンク
7 第2固定軸
8 第2リンク
9 第3固定軸
10 第1可動軸
11 第3リンク
11a 側縁
12 第4固定軸
13 第2可動軸
14 第3可動軸
15 第4リンク
15a 側縁
16 ストッパレバー
16a 側縁
16b 係合凹部
16c 操作部
17 ばね
101 ヒンジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定枠体1の開口前面1a側を開閉する扉2を固定枠体1に開閉自在に支持するためのヒンジであって;固定枠体1に固着される水平のベース板3と;扉2に固着される水平の支持板4と;前記ベース板3上に第1固定軸5により基端側が枢支される第1のリンク6と;前記ベース板3上に第2固定軸7により第1固定軸5の後方に間隔を置いて基端側が枢支される第2のリンク8と;前記支持板4上に第3固定軸9により基端側が枢支され先端側が第1可動軸10により前記第1のリンク6の先端部に枢支される第3のリンク11と;前記支持板4上に第4固定軸12により前記第3固定軸9の横外方向に間隔を置いて基端側が枢支され、先端側が第2可動軸13により前記第2のリンク8の先端部に枢支され、中間部が第3可動軸14により前記第1のリンク6の中間部に枢支される第4のリンク15とを具備し;扉2が開くにしたがって全開位置まで前記第1及び第2のリンク6,8がベース板3から前方へ延出するように回動することを特徴とする筐体の扉用持出し回転型ヒンジ。
【請求項2】
前記第1可動軸10により枢支さればねにより一方向に回転付勢されるストッパレバー16をさらに具備し、このストッパレバー16は、前記第2可動軸13に摺接する側縁16aと、前記扉の全開位置において第2可動軸13に係合して第1可動軸10と第2可動軸13との間を固定する係合凹部16bとを具備することを特徴とする請求項1に記載の筐体の扉用持出し回転型ヒンジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−104268(P2013−104268A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−250464(P2011−250464)
【出願日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【出願人】(000108708)タキゲン製造株式会社 (256)