説明

筒状体収納用トレイ

【課題】平板状のトレイに孔の形状、間隔を工夫することによって、トレイの所定面積に対して最大限のスパークプラグなどの筒状体を収納できるようにする。
【解決手段】長方形の平板に縦横の列状に孔を設け、大径部を有する筒状体をこの孔に嵌入させ、この大径部で支持させるようにして収納する筒状体収納用トレイ1であって、隣接する孔が、大径部を表面位置で支持する直孔11と、大径部を表面よりも沈めて支持する段付き孔12とが縦横いずれの方向にも交互になるように配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、つばを有する筒状体を収納し、搬送するための平板状のトレイに関する。
【背景技術】
【0002】
ガソリンエンジン用のスパークプラグやディーゼルエンジン用のグロープラグ等は、本体が破損しやすいセラミックス焼結体で、形状は中間につばを有する筒状体である。スパークプラグの一例を図6により説明する。(a)は完成品のスパークプラグ9を示し、91は点火用の電線の接続されるターミナルナット、92は中心電極、93は絶縁碍子、94は絶縁碍子93の下半分にかぶせる金属製のシェル、95はシェル94の先端部分に設けられたリーチと称するねじ部、96はアース電極である。ターミナルナット91と中心電極92とは絶縁碍子93の内部で導通しており、シェル94およびアース電極96はエンジンのシリンダにねじ込まれてアースしているので、中心電極92とアース電極96との間でスパークが発生し、エンジン内の混合ガスに点火するのである。一方、スパークプラグの製造段階では第1の工程で中心電極92を内部に収めて絶縁碍子93を焼成し、次の工程でこれにシェル94をかぶせて完成品とするので、工程間で図6(b)に示す状態の半製品9aを搬送することも必要である。こうした半製品9aあるいは完成品のスパークプラグ9の搬送には、孔のあいた平板状のトレイに1個ずつ挿入したものを何枚か重ねてコンテナに収納し、トラックあるいは船舶で行うのが一般的である。なお、スパークプラグの寸法は世界的に統一されている。
【0003】
特許文献1には、スパークプラグを製造する際の加熱工程で碍子をセットするのに用いるトレイが記載されている。図7は特許文献1に記載のトレイの平面図、図8は断面図で、1はトレイの本体、12はその表面を貫通して形成された段付き孔、2はこのトレイに収納する筒状体である。スパークプラグの半製品あるいは完成品はいずれも図6に示すように中間に大径部を有する形状であり、この大径部が段付き孔の段に載置されるように収納すれば倒れたりせずに安定して搬送することができる。しかし特に焼成前の半製品の場合、工業用ロボット等でトレイに植えつけたり取り出したりする際に筒状体同士が接触すると大径部が損傷して不良品となってしまうので、孔の間隔を小さくすることができず、所定の面積のトレイに対して十分な数量を収納できないという問題点があった。
【特許文献1】特開2005−132691号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、孔の形状、間隔を工夫することによって、トレイの所定面積に対して最大限の筒状体を収納できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の本発明は、長方形の平板に縦横の列状に孔を設け、大径部を有する筒状体をこの孔に嵌入させ、この大径部で支持させるようにして収納する筒状体収納用トレイであって、隣接する孔が、大径部を表面位置で支持する直孔と、大径部を表面よりも沈めて支持する段付き孔とが縦横いずれの方向にも交互になるように配置されていることを特徴とする筒状体収納用トレイである。
【0006】
請求項2に記載の本発明は、前記の段付き孔が、厚み方向に中間を小径とし、上下を大径として、トレイ全体を上下対称としたものである請求項1に記載の筒状体収納用トレイである。
請求項3に記載の本発明は、長方形の平板に縦横の列状に孔を設け、大径部を有する筒状体をこの孔に嵌入させ、この大径部で支持させるようにして収納する筒状体収納用トレイであって、隣接する孔が、一端側を大径とし、他端側を小径とした段付き孔が縦横いずれの方向にも交互に逆向きになるように配置されていることを特徴とする筒状体収納用トレイである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、トレイの孔の芯間距離を8〜10%程度近づけることができるので、収納個数を逆に8〜10%程度増加させることができ、こわれやすい部品の搬送効率が向上してコストが低減されるという、すぐれた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の実施例を図面により説明する。図1は、実施例のトレイの平面図、図2はその厚み方向の部分断面図で、1は長方形平板のトレイ、11、12はその表面を貫通して縦横の列状に設けられた孔であって、11は単純な直孔、12は段付き孔である。直孔および段付き孔の細い方の孔の径は収納する筒状体の小径部に対応し、段付き孔の大きい方の孔径は筒状体の大径部に対応する。トレイの材質は樹脂、セラミックス、金属等で、使用目的により適宜選択する。
【0009】
図3は収納状態における本発明の効果を説明するトレイの部分断面図で、(a)は本発明、(b)は図8に示したような従来のものである。従来のものでは図3(b)に示すように隣接する筒状体の大径部が接近するので孔の間隔を拡げざるを得ないのに対して、本発明の場合は図3(a)に示すように、直孔11に対しては筒状体はその大径部21がトレイ1の表面に載る状態で収納され、段付き孔12に対しては筒状体の大径部21が孔の段の部分に載る状態で収納されるので、隣接する孔の間で大径部21の高さが異なり、収納や取り出しの際に大径部が隣接する大径部に接触することが防止できる。その結果、距離d1をd2よりも小さくすることができる。
【0010】
寸法例を挙げれば、トレイ1の長方形の長辺が435mm、短辺が327.9mm、厚さ10mmで、収納する筒状体の小径部分の径が10.8mm、大径部が13.1mmである。従来のように単純に孔を並べる場合では孔間隔は14.55mm必要であったが、本発明では13.4mmまで近づけることができ、その結果同じ全体寸法のトレイにおいて、より多数の筒状体を収納することができるようになった。
【0011】
なお、コンテナ等にこのトレイを複数枚収納して搬送する場合、上下の段で収納物が接触しないよう間隔を保持する必要があるが、並んでいる収納物の高低が全く同じ状態であれば、高低の状態の異なる場合に比較して段の間隔を小さくすることができる。それには、同じトレイを同じ向きにして重ねればよいが、トレイの裏表を間違えないようにしなければならない。しかし、トレイ全体が上下逆にしても孔の状態が変わらないように設計されていれば、トレイの表裏を注意する必要がない。
【0012】
図4は段付き孔を厚み方向に中間を小径とし、上下を大径の両面段付き孔13として、トレイ全体を上下対称としたものである。上下、つまり表裏を逆にしても孔の状態は変わらない。
また、図5は一端側を大径とし、他端側を小径とした段付き孔12を縦横いずれの方向にも交互に逆向きになるように配置したもので、長手方向に見た孔の列を偶数列とし、トレイ全体を上下対称としたもので、いずれも好ましい実施例である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明実施例のトレイを示す平面図である。
【図2】本発明実施例のトレイの部分断面図である。
【図3】本発明の効果を説明する部分断面図である。
【図4】本発明の望ましい実施例を示すトレイの部分断面図である。
【図5】同じく本発明の望ましい実施例を示すトレイの部分断面図である。
【図6】本発明に係わるスパークプラグの正面図である。
【図7】従来の技術におけるトレイを示す平面図である。
【図8】従来の技術におけるトレイの部分断面図である。
【符号の説明】
【0014】
1 トレイ(本体)
2 筒状体
9、9a スパークプラグ(筒状体)
11 直孔
12 段付き孔
13 両面段付き孔
21 大径部
91 ターミナルナット
92 中心電極
93 絶縁碍子
94 シェル
95 リーチ
96 アース電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長方形の平板に縦横の列状に孔を設け、大径部を有する筒状体をこの孔に嵌入させ、この大径部で支持させるようにして収納する筒状体収納用トレイであって、隣接する孔が、大径部を表面位置で支持する直孔と、大径部を表面よりも沈めて支持する段付き孔とが縦横いずれの方向にも交互になるように配置されていることを特徴とする筒状体収納用トレイ。
【請求項2】
前記の段付き孔が、厚み方向に中間を小径とし、上下を大径として、トレイ全体を上下対称としたものである請求項1に記載の筒状体収納用トレイ。
【請求項3】
長方形の平板に縦横の列状に孔を設け、大径部を有する筒状体をこの孔に嵌入させ、この大径部で支持させるようにして収納する筒状体収納用トレイであって、隣接する孔が、一端側を大径とし、他端側を小径とした段付き孔が縦横いずれの方向にも交互に逆向きになるように配置し、孔の列を偶数として、トレイ全体を上下対称としたことを特徴とする筒状体収納用トレイ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2010−105672(P2010−105672A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−276848(P2008−276848)
【出願日】平成20年10月28日(2008.10.28)
【出願人】(593016444)三和システムエンジニアリング株式会社 (12)
【Fターム(参考)】