箒
【課題】穂体に、接着剤を塗布することなく清掃に必要なしなやかさを保持させることにより、箒の構成及び製造を簡略化する。
【解決手段】箒の穂体20を、多数の繊維21を扁平に並べ、間に弾性樹脂板25を挟んで二つに折り重ねることにより、穂先が広がった形に形成し、その基端部にカバー22を介して柄23を取り付け、上記弾性樹脂板25は、その基端部側板部分25Aを上記カバー22の内部に位置させて該カバ22ーにステープル33で穂体20と共に固定し、先端部側板部分25Bは、該カバー22から穂先側に延出させて弾性変形可能とし、この先端部側板部分25Bの弾性力で穂体20に清掃に必要なしなやかさを付与させる。
【解決手段】箒の穂体20を、多数の繊維21を扁平に並べ、間に弾性樹脂板25を挟んで二つに折り重ねることにより、穂先が広がった形に形成し、その基端部にカバー22を介して柄23を取り付け、上記弾性樹脂板25は、その基端部側板部分25Aを上記カバー22の内部に位置させて該カバ22ーにステープル33で穂体20と共に固定し、先端部側板部分25Bは、該カバー22から穂先側に延出させて弾性変形可能とし、この先端部側板部分25Bの弾性力で穂体20に清掃に必要なしなやかさを付与させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床や庭などを掃き掃除するための箒に関するものである。
【背景技術】
【0002】
床や庭などを掃き掃除するための箒として、従来より、図8に示すように、椰子の葉脈などの植物繊維や合成樹脂繊維等からなる多数の繊維2を扁平に束ね、穂先の幅が広い略台形の形に形成した穂体1と、該穂体1の基端部にカバー3を介して取り付けられた柄4とからなるものが公知である。
【0003】
この種の箒は、通常、次のようにして形成されている。即ち、図9に示すように多数の繊維2を扁平なプレート状に並べ、これらの繊維2を、図10に示すように長さ方向の中央位置Sにおいて針金5で少数本ずつ束ねたあと、この繊維プレートを、図11に示すように、中央位置Sを折り目にして二つに折り重ねると共に、ミシン糸6で折り重ねた状態に止着することにより、台形状をした上記穂体1を形成する。次に、図8に示すように、上記穂体1の基端部をカバー3の内部に挿入し、ステープル8で固定する。また、このままでは繊維2が柔軟すぎて穂体1の腰が弱く、清掃に適さないことが多いため、該穂体1の上記ミシン掛けした糸6の周辺部分に接着剤9を塗布し、繊維同士を相互に接着して固めることにより、清掃に必要なしなやかさを持たせるようにしている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の箒は、このようにして形成されているため、製造にかなりの手間と時間とを必要とする。特に、扁平に並べた繊維2を針金5で束ねる工程と、接着剤9を塗布する工程とが煩雑であり、中でも、接着剤を塗布する工程は、その後の乾燥工程を必要とするため、その分時間がかかってコストアップにつながることになる。従って、これらの工程のうち、少なくとも接着剤を塗布する工程を省略することができれば、その分箒の製造が容易になるだけでなく、それに関連して接着剤などの材料が不要で、その塗布部を形成する必要もなくなるため、箒の構成も簡略化されることになる。
【0005】
そこで本発明の目的は、清掃に必要なしなやかさを接着剤を塗布することなく保持させることにより、箒の構成及び製造を簡略化することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の箒は、多数の繊維を扁平に並べて二つに折り重ね、穂先側が次第に広がった略台形の形に形成された穂体と、該穂体の内部に挟み込まれて該穂体に清掃に必要なしなやかさを与える弾性樹脂板と、これらの穂体と弾性樹脂板とを相互に止着する止着手段と、上記穂体の基端部に取り付けられたカバーと、該カバーに取り付けられた柄とを含み、上記弾性樹脂板は、上記穂体の基端部寄りの位置に配設されていて、該弾性樹脂板の基端部側板部分が上記カバーの内部に位置して該カバーに穂体と共に固定され、先端部側板部分は該カバーから穂先側に延出して弾性変形可能であり、上記止着手段は、上記弾性樹脂板の先端部側板部分の位置で該弾性樹脂板と穂体とを相互に止着していることを特徴とするものである。
【0007】
本発明においては、上記弾性樹脂板の先端部側板部分に、該弾性樹脂板の弾性力を調整するための調整孔が複数形成されていることが望ましい。
また、本発明において好ましくは、上記弾性樹脂板の基端部に相対する一対の幅決め用突起が形成されていて、両幅決め用突起間に上記穂体の基端部を介在させることにより、これらの幅決め用突起で該基端部の幅が規定されていることである。
あるいは、上記弾性樹脂板の基端部の上記穂体の折曲部に内側から当接する部分に、該穂体に食い込んで繊維の位置ずれを防止する複数の位置ずれ防止用突起が形成されていても良い。
【0008】
本発明において、上記止着手段は、ミシン掛けされた止着糸からなってなっても良く、あるいは、上記穂体の左右両側面の相対する位置に配設された一対の止着帯からなっていて、一方の第1止着帯に複数の係止孔が設けられ、他方の第2止着帯に、上記穂体と弾性樹脂板とを貫いて上記第1止着帯の係止孔に係止する複数の係止用突起が設けられていても良い。
【発明の効果】
【0009】
本発明の箒においては、穂体の内部に挟み込んだ弾性樹脂板によって清掃に必要なしなやかさが与えられるため、従来の箒のように接着剤を塗布して繊維同士を固める必要がない。特に、上記弾性樹脂板の基端部側板部分を上記カバーの内部に位置させて該カバーに固定し、先端部側板部分を該カバーから穂先側に延出させて弾性変形させるようにしたことにより、カバーに対する穂体の固定と、穂体に対するしなやかさの付与とを、この一枚の弾性樹脂板をうまく利用して効果的に実現させることができる。
また、繊維を接着剤で接着した従来の箒は、清掃を繰り返す間に接着力が低下して繊維同士が次第に分離していくため、すぐに腰が弱くなって必要なしなやかさが失われるが、本発明の箒は接着剤を使用していないため、このような問題がなく、耐久性に勝れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1は本発明に係る箒の一実施形態を示すもので、この箒は、図2の分解図からも分かるように、椰子の葉脈や箒草等の植物繊維かあるいは合成樹脂繊維などの繊維21によって形成された穂体20と、この穂体20の基端部20aに中空のカバー22を介して取り付けられた柄23とからなっている。
【0011】
上記穂体20は、多数の繊維21を扁平に並べて矩形の繊維プレートを形成し、この繊維プレートを、長さ方向の中央部を折曲部として二つに折り重ねると共に、該折曲部側(基端部20a側)から穂先側(先端部20b側)に向けて穂体20の前後方向幅Wを次第に広げることにより、穂先の広がった略台形の形に形成したもので、該穂体20の基端部20aには、図4からも分かるように、上記繊維プレートを折り重ねる際に該穂体20の内部に弾性樹脂板25が挟み込まれ、この弾性樹脂板25と穂体20とが、ミシン掛けされた止着糸28からなる止着手段26によって相互に止着されている。
【0012】
上記弾性樹脂板25は、繊維21の腰を強めて穂体20に清掃に必要なしなやかさを付与するためのもので、合成樹脂によって薄板状に形成され、その形状は、図3から明らかなように、上記穂体20の基端部20a周辺の形状及び寸法に合わせて略台形状に形成されている。この弾性樹脂板25の基端部25aには、その幅方向の両端の相対する位置に一対の幅決め用突起27,27が形成され、これらの幅決め用突起27,27と弾性樹脂板25の真っ直ぐな基端縁25cとで形成された凹部30内に、上記穂体20の折曲された基端部20aが介在している。そして、上記両幅決め用突起27,27で両側から挟まれることにより、該基端部20aの前後方向幅が規定されている。この構成により、従来の箒のように穂体20の基端部20aを針金で結束してその幅を規定するといった面倒な作業を行うことなく、該基端部を必要な幅に簡単に保つことができる。
【0013】
上記幅決め用突起27は、弾性樹脂板25の前辺25d及び後辺25eに沿って斜め上向きに延出する主体部27aと、該主体部27aの先端から弾性樹脂板25の内側に向けて互いに相対向するように延出する内向延出部27bとからなるもので、該内向延出部27bが、上記穂体20の基端部20aに外側から係止することにより、該基端部27aが上記凹部30から抜け出すのが防止されている。
【0014】
また、上記弾性樹脂板25には、該樹脂板の長さの約半分以上を占める先端部側板部分25Bに、該板部分25Bの弾力性を調整することによって穂体20のしなやかさを調整する複数の調整孔32が形成されている。これらの調整孔32は、該弾性樹脂板25の基端部25a側から先端部25b側に向けて細長く延びる長孔であって、穂体20の幅Wの広がりに合わせて孔相互間の間隔が次第に先広がりをなすように傾斜させた状態で横並びに配設されており、これらの調整孔32を横切る位置に上記止着手段26が設けられている。
【0015】
上記カバー22は、合成樹脂によって扁平な三角形状に形成され、下面に開口部を有しており、この開口部を通じて穂体20の上端部を該カバー22の内部に挿入し、該カバー22の側面から複数のステープル33を打設することにより、このステープル33でこれらの穂体20とカバー22とが相互に固定されている。このとき、上記弾性樹脂板25の基端部側板部分25Aは、上記カバー22の内部に位置し、上記ステープル33によって穂体20と一緒に上記カバー22に固定されている。従って、この基端部側板部分25Aは、穂体20をカバー22に固定するための芯材として機能することになる。
【0016】
一方、上記弾性樹脂板25の先端部側板部分25Bは、上記カバー22から穂先側に延出し、清掃時に弾性変形可能となっており、この先端部側板部分25Bの弾性力によって穂体20の腰の強さが調整され、清掃に必要なしなやかさが付与されるものである。
上記カバー22の基端部には、パイプ状をした中空の柄取付部22aが形成され、この柄取付部22a内に柄23の先端を差し込んでステープル等で固定することにより、上記柄23が取り付けられている。
【0017】
上記構成を有する箒は、従来の箒と同様にして床や庭などの清掃を行うものであるが、上記穂体20の内部に弾性樹脂板25を挟み込み、この弾性樹脂板25の弾性力によって穂体20に清掃に必要な腰の強さとしなやかさとを付与させているため、そのしなやかさは、接着剤を塗布して繊維21同士を固めた構成の従来の箒に比べ、穂体20の幅全体にわたって平均的かつ安定して発揮され、使用性に勝れる。しかも、上記弾性樹脂板25の基端部側板部分25Aを上記カバー22の内部に位置させて該カバー22に固定し、先端部側板部分25Bを該カバー22から穂先側に延出させて弾性変形させるようにしたことにより、上記カバー22に対する穂体20の固定と、穂体20に対するしなやかさの付与とを、この一枚の弾性樹脂板25をうまく利用して効果的に実現させることができるものである。
また、繊維21を接着剤で接着した従来の箒は、清掃を繰り返す間に接着力が低下して繊維同士が次第に分離していくため、すぐに腰が弱くなってしなやかさが失われるが、上述した箒は、接着剤を使用することなく、弾性樹脂板25を使用してしなやかさを付与させているため、このような従来の箒に特有の欠点が解消され、耐久性にも勝れる。
【0018】
図5には、弾性樹脂板の第2構成例が示されている。この第2構成例の弾性樹脂板25は、図3に示す第1構成例の弾性樹脂板25と違い、基端縁25cに複数の位置ずれ防止用突起34を一定間隔で有している。この位置ずれ防止用突起34は、穂体20の折曲部にその内側から食い込むことによって繊維21を複数本ずつ区分し、それらの繊維21の位置ずれを防止するもので、従来の箒のように針金で繊維21を複数本ずつ束ねた場合と同様の効果をもたらすものである。
上記位置ずれ防止用突起34は、均一な断面形状を有する直棒状のもであっても、先が尖っていても、先が鈎形に曲がっていても良い。
【0019】
図6には上記弾性樹脂板25の第3構成例が示されている。この第3構成例の弾性樹脂板25は、幅決め用突起27の形態が図3に示す第1構成例の弾性樹脂板25と違っている。即ち、この第3構成例の弾性樹脂板25に形成された幅決め用突起27は、該弾性樹脂板25の前辺25d及び後辺25eに沿って真っ直ぐに延出する主体部27aのみからなっていて、内側に折れ曲がった内向延出部27b(図3参照)を有していない。
なお、この弾性樹脂板25においても、上記第2構成例の弾性樹脂板25に形成されているような位置ずれ防止用突起34を設けることができる。
【0020】
また、上記図5及び図6に示す第2及び第3構成例の弾性樹脂板25において、上述したこと以外の構成については、図3に示す第1構成例の弾性樹脂板25と実質的に同じであるため、主要な同一構成部分に第1構成例の弾性樹脂板25に付したものと同じ符号を付してその説明は省略する。
【0021】
図7には、上記穂体20と弾性樹脂板25とを止着する止着手段の第2構成例が示されている。この第2構成例の止着手段26は、合成樹脂からなる一対の細長い止着帯35,36で構成されていて、一方の第1止着帯35には、複数の係止孔37が一定間隔で設けられ、他方の第2止着帯36には、上記係止孔37に係止する係止頭38aを先端に備えた複数の係止用突起38が一定間隔で設けられている。そして、上記一対の止着帯35,36を、穂体20の左右両側面の相対する位置に配置して、第1止着帯35の係止用突起38を、穂体20及び弾性樹脂板25の調整孔32に貫通させると共に、各係止用突起38の係止頭38aを第2止着帯36の係止孔37に嵌合、係止させることにより、これらの止着帯35,36で上記穂体20と弾性樹脂板25とを互いに止着するものである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る箒の側面図である。
【図2】図1の分解図である。
【図3】弾性樹脂板の第1構成例を示す側面図である。
【図4】図3のA−A線での拡大断面図である。
【図5】弾性樹脂板の第2構成例を示す側面図である。
【図6】弾性樹脂板の第3構成例を示す側面図である。
【図7】止着手段の第2構成例を示す側面図である。
【図8】従来の箒の側面図である。
【図9】従来の箒の穂体の製造工程の一つの段階を示す平面図である。
【図10】従来の箒の穂体の製造工程の他の段階を示す平面図である。
【図11】従来の箒の穂体の製造工程の更に他の段階を示す平面図である。
【符号の説明】
【0023】
20 穂体
20a 基端部
21 繊維
22 カバー
23 柄
25 弾性樹脂板
25A 基端部側板部分
25B 先端部側板部分
25a 基端部
26 止着手段
27 幅決め用突起
27a 主体部
27b 内向延出部
28 止着糸
32 調整孔
34 位置ずれ防止用突起
35 第1止着帯
36 第2止着帯
37 係止孔
38 係止用突起
W 幅
【技術分野】
【0001】
本発明は、床や庭などを掃き掃除するための箒に関するものである。
【背景技術】
【0002】
床や庭などを掃き掃除するための箒として、従来より、図8に示すように、椰子の葉脈などの植物繊維や合成樹脂繊維等からなる多数の繊維2を扁平に束ね、穂先の幅が広い略台形の形に形成した穂体1と、該穂体1の基端部にカバー3を介して取り付けられた柄4とからなるものが公知である。
【0003】
この種の箒は、通常、次のようにして形成されている。即ち、図9に示すように多数の繊維2を扁平なプレート状に並べ、これらの繊維2を、図10に示すように長さ方向の中央位置Sにおいて針金5で少数本ずつ束ねたあと、この繊維プレートを、図11に示すように、中央位置Sを折り目にして二つに折り重ねると共に、ミシン糸6で折り重ねた状態に止着することにより、台形状をした上記穂体1を形成する。次に、図8に示すように、上記穂体1の基端部をカバー3の内部に挿入し、ステープル8で固定する。また、このままでは繊維2が柔軟すぎて穂体1の腰が弱く、清掃に適さないことが多いため、該穂体1の上記ミシン掛けした糸6の周辺部分に接着剤9を塗布し、繊維同士を相互に接着して固めることにより、清掃に必要なしなやかさを持たせるようにしている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の箒は、このようにして形成されているため、製造にかなりの手間と時間とを必要とする。特に、扁平に並べた繊維2を針金5で束ねる工程と、接着剤9を塗布する工程とが煩雑であり、中でも、接着剤を塗布する工程は、その後の乾燥工程を必要とするため、その分時間がかかってコストアップにつながることになる。従って、これらの工程のうち、少なくとも接着剤を塗布する工程を省略することができれば、その分箒の製造が容易になるだけでなく、それに関連して接着剤などの材料が不要で、その塗布部を形成する必要もなくなるため、箒の構成も簡略化されることになる。
【0005】
そこで本発明の目的は、清掃に必要なしなやかさを接着剤を塗布することなく保持させることにより、箒の構成及び製造を簡略化することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の箒は、多数の繊維を扁平に並べて二つに折り重ね、穂先側が次第に広がった略台形の形に形成された穂体と、該穂体の内部に挟み込まれて該穂体に清掃に必要なしなやかさを与える弾性樹脂板と、これらの穂体と弾性樹脂板とを相互に止着する止着手段と、上記穂体の基端部に取り付けられたカバーと、該カバーに取り付けられた柄とを含み、上記弾性樹脂板は、上記穂体の基端部寄りの位置に配設されていて、該弾性樹脂板の基端部側板部分が上記カバーの内部に位置して該カバーに穂体と共に固定され、先端部側板部分は該カバーから穂先側に延出して弾性変形可能であり、上記止着手段は、上記弾性樹脂板の先端部側板部分の位置で該弾性樹脂板と穂体とを相互に止着していることを特徴とするものである。
【0007】
本発明においては、上記弾性樹脂板の先端部側板部分に、該弾性樹脂板の弾性力を調整するための調整孔が複数形成されていることが望ましい。
また、本発明において好ましくは、上記弾性樹脂板の基端部に相対する一対の幅決め用突起が形成されていて、両幅決め用突起間に上記穂体の基端部を介在させることにより、これらの幅決め用突起で該基端部の幅が規定されていることである。
あるいは、上記弾性樹脂板の基端部の上記穂体の折曲部に内側から当接する部分に、該穂体に食い込んで繊維の位置ずれを防止する複数の位置ずれ防止用突起が形成されていても良い。
【0008】
本発明において、上記止着手段は、ミシン掛けされた止着糸からなってなっても良く、あるいは、上記穂体の左右両側面の相対する位置に配設された一対の止着帯からなっていて、一方の第1止着帯に複数の係止孔が設けられ、他方の第2止着帯に、上記穂体と弾性樹脂板とを貫いて上記第1止着帯の係止孔に係止する複数の係止用突起が設けられていても良い。
【発明の効果】
【0009】
本発明の箒においては、穂体の内部に挟み込んだ弾性樹脂板によって清掃に必要なしなやかさが与えられるため、従来の箒のように接着剤を塗布して繊維同士を固める必要がない。特に、上記弾性樹脂板の基端部側板部分を上記カバーの内部に位置させて該カバーに固定し、先端部側板部分を該カバーから穂先側に延出させて弾性変形させるようにしたことにより、カバーに対する穂体の固定と、穂体に対するしなやかさの付与とを、この一枚の弾性樹脂板をうまく利用して効果的に実現させることができる。
また、繊維を接着剤で接着した従来の箒は、清掃を繰り返す間に接着力が低下して繊維同士が次第に分離していくため、すぐに腰が弱くなって必要なしなやかさが失われるが、本発明の箒は接着剤を使用していないため、このような問題がなく、耐久性に勝れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1は本発明に係る箒の一実施形態を示すもので、この箒は、図2の分解図からも分かるように、椰子の葉脈や箒草等の植物繊維かあるいは合成樹脂繊維などの繊維21によって形成された穂体20と、この穂体20の基端部20aに中空のカバー22を介して取り付けられた柄23とからなっている。
【0011】
上記穂体20は、多数の繊維21を扁平に並べて矩形の繊維プレートを形成し、この繊維プレートを、長さ方向の中央部を折曲部として二つに折り重ねると共に、該折曲部側(基端部20a側)から穂先側(先端部20b側)に向けて穂体20の前後方向幅Wを次第に広げることにより、穂先の広がった略台形の形に形成したもので、該穂体20の基端部20aには、図4からも分かるように、上記繊維プレートを折り重ねる際に該穂体20の内部に弾性樹脂板25が挟み込まれ、この弾性樹脂板25と穂体20とが、ミシン掛けされた止着糸28からなる止着手段26によって相互に止着されている。
【0012】
上記弾性樹脂板25は、繊維21の腰を強めて穂体20に清掃に必要なしなやかさを付与するためのもので、合成樹脂によって薄板状に形成され、その形状は、図3から明らかなように、上記穂体20の基端部20a周辺の形状及び寸法に合わせて略台形状に形成されている。この弾性樹脂板25の基端部25aには、その幅方向の両端の相対する位置に一対の幅決め用突起27,27が形成され、これらの幅決め用突起27,27と弾性樹脂板25の真っ直ぐな基端縁25cとで形成された凹部30内に、上記穂体20の折曲された基端部20aが介在している。そして、上記両幅決め用突起27,27で両側から挟まれることにより、該基端部20aの前後方向幅が規定されている。この構成により、従来の箒のように穂体20の基端部20aを針金で結束してその幅を規定するといった面倒な作業を行うことなく、該基端部を必要な幅に簡単に保つことができる。
【0013】
上記幅決め用突起27は、弾性樹脂板25の前辺25d及び後辺25eに沿って斜め上向きに延出する主体部27aと、該主体部27aの先端から弾性樹脂板25の内側に向けて互いに相対向するように延出する内向延出部27bとからなるもので、該内向延出部27bが、上記穂体20の基端部20aに外側から係止することにより、該基端部27aが上記凹部30から抜け出すのが防止されている。
【0014】
また、上記弾性樹脂板25には、該樹脂板の長さの約半分以上を占める先端部側板部分25Bに、該板部分25Bの弾力性を調整することによって穂体20のしなやかさを調整する複数の調整孔32が形成されている。これらの調整孔32は、該弾性樹脂板25の基端部25a側から先端部25b側に向けて細長く延びる長孔であって、穂体20の幅Wの広がりに合わせて孔相互間の間隔が次第に先広がりをなすように傾斜させた状態で横並びに配設されており、これらの調整孔32を横切る位置に上記止着手段26が設けられている。
【0015】
上記カバー22は、合成樹脂によって扁平な三角形状に形成され、下面に開口部を有しており、この開口部を通じて穂体20の上端部を該カバー22の内部に挿入し、該カバー22の側面から複数のステープル33を打設することにより、このステープル33でこれらの穂体20とカバー22とが相互に固定されている。このとき、上記弾性樹脂板25の基端部側板部分25Aは、上記カバー22の内部に位置し、上記ステープル33によって穂体20と一緒に上記カバー22に固定されている。従って、この基端部側板部分25Aは、穂体20をカバー22に固定するための芯材として機能することになる。
【0016】
一方、上記弾性樹脂板25の先端部側板部分25Bは、上記カバー22から穂先側に延出し、清掃時に弾性変形可能となっており、この先端部側板部分25Bの弾性力によって穂体20の腰の強さが調整され、清掃に必要なしなやかさが付与されるものである。
上記カバー22の基端部には、パイプ状をした中空の柄取付部22aが形成され、この柄取付部22a内に柄23の先端を差し込んでステープル等で固定することにより、上記柄23が取り付けられている。
【0017】
上記構成を有する箒は、従来の箒と同様にして床や庭などの清掃を行うものであるが、上記穂体20の内部に弾性樹脂板25を挟み込み、この弾性樹脂板25の弾性力によって穂体20に清掃に必要な腰の強さとしなやかさとを付与させているため、そのしなやかさは、接着剤を塗布して繊維21同士を固めた構成の従来の箒に比べ、穂体20の幅全体にわたって平均的かつ安定して発揮され、使用性に勝れる。しかも、上記弾性樹脂板25の基端部側板部分25Aを上記カバー22の内部に位置させて該カバー22に固定し、先端部側板部分25Bを該カバー22から穂先側に延出させて弾性変形させるようにしたことにより、上記カバー22に対する穂体20の固定と、穂体20に対するしなやかさの付与とを、この一枚の弾性樹脂板25をうまく利用して効果的に実現させることができるものである。
また、繊維21を接着剤で接着した従来の箒は、清掃を繰り返す間に接着力が低下して繊維同士が次第に分離していくため、すぐに腰が弱くなってしなやかさが失われるが、上述した箒は、接着剤を使用することなく、弾性樹脂板25を使用してしなやかさを付与させているため、このような従来の箒に特有の欠点が解消され、耐久性にも勝れる。
【0018】
図5には、弾性樹脂板の第2構成例が示されている。この第2構成例の弾性樹脂板25は、図3に示す第1構成例の弾性樹脂板25と違い、基端縁25cに複数の位置ずれ防止用突起34を一定間隔で有している。この位置ずれ防止用突起34は、穂体20の折曲部にその内側から食い込むことによって繊維21を複数本ずつ区分し、それらの繊維21の位置ずれを防止するもので、従来の箒のように針金で繊維21を複数本ずつ束ねた場合と同様の効果をもたらすものである。
上記位置ずれ防止用突起34は、均一な断面形状を有する直棒状のもであっても、先が尖っていても、先が鈎形に曲がっていても良い。
【0019】
図6には上記弾性樹脂板25の第3構成例が示されている。この第3構成例の弾性樹脂板25は、幅決め用突起27の形態が図3に示す第1構成例の弾性樹脂板25と違っている。即ち、この第3構成例の弾性樹脂板25に形成された幅決め用突起27は、該弾性樹脂板25の前辺25d及び後辺25eに沿って真っ直ぐに延出する主体部27aのみからなっていて、内側に折れ曲がった内向延出部27b(図3参照)を有していない。
なお、この弾性樹脂板25においても、上記第2構成例の弾性樹脂板25に形成されているような位置ずれ防止用突起34を設けることができる。
【0020】
また、上記図5及び図6に示す第2及び第3構成例の弾性樹脂板25において、上述したこと以外の構成については、図3に示す第1構成例の弾性樹脂板25と実質的に同じであるため、主要な同一構成部分に第1構成例の弾性樹脂板25に付したものと同じ符号を付してその説明は省略する。
【0021】
図7には、上記穂体20と弾性樹脂板25とを止着する止着手段の第2構成例が示されている。この第2構成例の止着手段26は、合成樹脂からなる一対の細長い止着帯35,36で構成されていて、一方の第1止着帯35には、複数の係止孔37が一定間隔で設けられ、他方の第2止着帯36には、上記係止孔37に係止する係止頭38aを先端に備えた複数の係止用突起38が一定間隔で設けられている。そして、上記一対の止着帯35,36を、穂体20の左右両側面の相対する位置に配置して、第1止着帯35の係止用突起38を、穂体20及び弾性樹脂板25の調整孔32に貫通させると共に、各係止用突起38の係止頭38aを第2止着帯36の係止孔37に嵌合、係止させることにより、これらの止着帯35,36で上記穂体20と弾性樹脂板25とを互いに止着するものである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る箒の側面図である。
【図2】図1の分解図である。
【図3】弾性樹脂板の第1構成例を示す側面図である。
【図4】図3のA−A線での拡大断面図である。
【図5】弾性樹脂板の第2構成例を示す側面図である。
【図6】弾性樹脂板の第3構成例を示す側面図である。
【図7】止着手段の第2構成例を示す側面図である。
【図8】従来の箒の側面図である。
【図9】従来の箒の穂体の製造工程の一つの段階を示す平面図である。
【図10】従来の箒の穂体の製造工程の他の段階を示す平面図である。
【図11】従来の箒の穂体の製造工程の更に他の段階を示す平面図である。
【符号の説明】
【0023】
20 穂体
20a 基端部
21 繊維
22 カバー
23 柄
25 弾性樹脂板
25A 基端部側板部分
25B 先端部側板部分
25a 基端部
26 止着手段
27 幅決め用突起
27a 主体部
27b 内向延出部
28 止着糸
32 調整孔
34 位置ずれ防止用突起
35 第1止着帯
36 第2止着帯
37 係止孔
38 係止用突起
W 幅
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の繊維を扁平に並べて二つに折り重ね、穂先側が次第に広がった略台形の形に形成された穂体と、該穂体の内部に挟み込まれて該穂体に清掃に必要なしなやかさを与える弾性樹脂板と、これらの穂体と弾性樹脂板とを相互に止着する止着手段と、上記穂体の基端部に取り付けられたカバーと、該カバーに取り付けられた柄とを含み、
上記弾性樹脂板は、上記穂体の基端部寄りの位置に配設されていて、該弾性樹脂板の基端部側板部分が上記カバーの内部に位置して該カバーに穂体と共に固定され、先端部側板部分は該カバーから穂先側に延出して弾性変形可能であり、
上記止着手段は、上記弾性樹脂板の先端部側板部分の位置で該弾性樹脂板と穂体とを相互に止着していることを特徴とする箒。
【請求項2】
上記弾性樹脂板の先端部側板部分に、該弾性樹脂板の弾性力を調整するための調整孔が複数形成されていることを特徴とする請求項1に記載の箒。
【請求項3】
上記弾性樹脂板の基端部に相対する一対の幅決め用突起が形成されていて、両幅決め用突起間に上記穂体の基端部を介在させることにより、これらの幅決め用突起で該基端部の幅が規定されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の箒。
【請求項4】
上記弾性樹脂板の基端部の上記穂体の折曲部に内側から当接する部分に、該穂体に食い込んで繊維の位置ずれを防止する複数の位置ずれ防止用突起が形成されていることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の箒。
【請求項5】
上記止着手段が、ミシン掛けされた止着糸からなることを特徴とする請求項1から4の何れかに記載の箒。
【請求項6】
上記止着手段が、上記穂体の左右両側面の相対する位置に配設された一対の止着帯からなっていて、一方の第1止着帯に複数の係止孔が設けられ、他方の第2止着帯に、上記穂体と弾性樹脂板とを貫いて上記第1止着帯の係止孔に係止する複数の係止用突起が設けられていることを特徴とする請求項1から4の何れかに記載の箒。
【請求項1】
多数の繊維を扁平に並べて二つに折り重ね、穂先側が次第に広がった略台形の形に形成された穂体と、該穂体の内部に挟み込まれて該穂体に清掃に必要なしなやかさを与える弾性樹脂板と、これらの穂体と弾性樹脂板とを相互に止着する止着手段と、上記穂体の基端部に取り付けられたカバーと、該カバーに取り付けられた柄とを含み、
上記弾性樹脂板は、上記穂体の基端部寄りの位置に配設されていて、該弾性樹脂板の基端部側板部分が上記カバーの内部に位置して該カバーに穂体と共に固定され、先端部側板部分は該カバーから穂先側に延出して弾性変形可能であり、
上記止着手段は、上記弾性樹脂板の先端部側板部分の位置で該弾性樹脂板と穂体とを相互に止着していることを特徴とする箒。
【請求項2】
上記弾性樹脂板の先端部側板部分に、該弾性樹脂板の弾性力を調整するための調整孔が複数形成されていることを特徴とする請求項1に記載の箒。
【請求項3】
上記弾性樹脂板の基端部に相対する一対の幅決め用突起が形成されていて、両幅決め用突起間に上記穂体の基端部を介在させることにより、これらの幅決め用突起で該基端部の幅が規定されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の箒。
【請求項4】
上記弾性樹脂板の基端部の上記穂体の折曲部に内側から当接する部分に、該穂体に食い込んで繊維の位置ずれを防止する複数の位置ずれ防止用突起が形成されていることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の箒。
【請求項5】
上記止着手段が、ミシン掛けされた止着糸からなることを特徴とする請求項1から4の何れかに記載の箒。
【請求項6】
上記止着手段が、上記穂体の左右両側面の相対する位置に配設された一対の止着帯からなっていて、一方の第1止着帯に複数の係止孔が設けられ、他方の第2止着帯に、上記穂体と弾性樹脂板とを貫いて上記第1止着帯の係止孔に係止する複数の係止用突起が設けられていることを特徴とする請求項1から4の何れかに記載の箒。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−228778(P2008−228778A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−68702(P2007−68702)
【出願日】平成19年3月16日(2007.3.16)
【出願人】(000101363)アズマ工業株式会社 (33)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月16日(2007.3.16)
【出願人】(000101363)アズマ工業株式会社 (33)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]