説明

管内面補修バンド

【課題】筒胴部材の伸縮部の伸縮可撓性を維持しながら内径方向の外力により縮径することを防ぐ管内面補修バンドを提供すること。
【解決手段】挿口管1と受口管2との内面にそれぞれ密封状に当接する密封部8,8’、及び、両口管1,2の相対位置若しくは相対移動に追従する伸縮代を有する伸縮部9を備えた筒胴部材5と、伸縮部9の内面に当接して管軸方向の少なくとも一部に渡り配設された保持部材12と、両口管1,2に対する内径方向の外力に抗して伸縮部9に当接する該保持部材12を支持する支持部材7と、からなり、伸縮部9は、管軸方向に沿って径方向の凹凸面を交互に有する蛇腹状に形成されており、保持部材12と当接する伸縮部9の内径方向の凸面9eは、管軸方向に沿って直線状に延びる直線面に形成されており、保持部材12は、支持部材7の外面に当接して支持部材7を保持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一方の流体管と他方の流体管とが接続された管継手において、前記両方の流体管の内面に周方向に亘り密封状に架設される管内面補修バンドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の管内面補修バンドは、凹凸形状の縦断面形状からなる可撓構造を有した環状体(筒胴部材)と、環状体を加圧して管本体の内壁に固定する固定板(支持部材)との間に、環状体の凹凸形状と係合する凸凹部を有した補強プレートを介在させ、固定板の加圧によって環状体とともに管本体の内壁に補強プレートを固定している。(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−179555号公報(第5頁、第2図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1にあっては、環状体と固定板との間に補強プレートを介在させており、環状体の凹凸形状に補強プレートの凸凹部を係合させるため、環状体と補強プレートとの係合部分は伸縮可撓性が損失してしまうという問題がある。
【0005】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、筒胴部材の伸縮部の伸縮可撓性を維持しながら内径方向の外力により縮径することを防ぐ管内面補修バンドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明の管内面補修バンドは、
一方の流体管と他方の流体管とが接続された管継手において、前記両方の流体管の内面に周方向に亘り密封状に架設される管内面補修バンドであって、
前記両方の流体管の内面にそれぞれ密封状に当接する各密封部、及び該各密封部の間に管軸方向に介設され、前記両方の流体管の相対位置若しくは相対移動に追従する伸縮代を有する伸縮部を少なくとも備えた筒胴部材と、
前記伸縮部の内面に当接して管軸方向の少なくとも一部に渡り配設された保持部材と、
前記流体管に対する内径方向の外力に抗して前記保持部材を介して該伸縮部を支持する支持部材と、からなり、
前記伸縮部は、管軸方向に沿って径方向の凹凸面を交互に有する蛇腹状に形成されており、前記保持部材と当接する該伸縮部の内径方向の凸面は、管軸方向に沿って直線状に延びる直線面に形成されており、
前記保持部材は、前記支持部材の外面に当接して該支持部材を保持することを特徴としている。
この特徴によれば、互いに接続された流体管の相対位置若しくは相対移動に追従する筒胴部材の伸縮部の少なくとも一部が、保持部材を介して支持部材により内径方向の外力に対し支持されており、管軸方向の伸縮代を有し比較的強度の低い伸縮部が、内径方向の外力により縮径されずに径寸法を維持できるため、流体管内の流路を確保できるばかりか、密封部に対しても内径方向の外力の影響を与えず、密封部による流体管の密封状態を維持できる。また、伸縮部が凹凸面を有する蛇腹状に形成されることで、伸縮代を容易に構成できるばかりか、保持部材が、管軸方向に沿って直線状に延びる直線面に形成された伸縮部の凸面と当接することで、保持部材と伸縮部との当接領域を拡げることができ、保持部材を介して支持部材により伸縮部を安定的に支持できる。さらに、支持部材の外面は、保持部材の内面に当接して保持されるので、軸方向移動が抑止され、支持部材による支持が安定する。
【0007】
本発明の管内面補修バンドは、
前記筒胴部材は、前記各密封部の間に前記伸縮部と並び介設され、前記伸縮代を有さない支持部を備えていることを特徴としている。
この特徴によれば、各密封部の間に、伸縮代を有さず伸縮部よりも強度の高い支持部が、伸縮部と並び介設されているため、筒胴部材全体の伸縮性及び支持強度の設計自由度が高まる。
【0008】
本発明の管内面補修バンドは、
前記保持部材の内面に、前記支持部材の前記伸縮部に対する管軸方向の移動を規制する規制部が設けられていることを特徴としている。
この特徴によれば、支持部材が、保持部材の内面に設けた規制部により伸縮部に対する移動を規制されているため、支持部材が、流体管の相対移動に追従移動する伸縮部に対し移動すること無く、伸縮部の径方向の支持状態を保つことができる。
【0009】
本発明の管内面補修バンドは、
前記伸縮部は、管軸方向に沿って径方向の凹凸面を交互に有する蛇腹状に形成されており、前記保持部材に、前記伸縮部の凹凸面に嵌合する嵌合部が設けられていることを特徴としている。
この特徴によれば、保持部材の嵌合部が伸縮部の凹凸面と嵌合しているため、保持部材が、流体管に追従して伸縮する伸縮部から外れてしまうことが無い。
【0010】
本発明の管内面補修バンドは、
前記各密封部の内面に、該各密封部を前記流体管の内面にそれぞれ密封状に当接させる固定部材が設けられていることを特徴としている。
この特徴によれば、各密封部の内面に固定部材が設けられていることで、密封部による流体管の密封状態を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施例における管内面補修バンドを示す側断面図である。
【図2】本発明の変形例1における管内面補修バンドを示す側断面図である。
【図3】本発明の変形例2における管内面補修バンドを示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係る管内面補修バンドを実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例】
【0013】
実施例に係る管内面補修バンド4につき、図1を参照して説明する。
【0014】
図1に示されるように、これら本実施例における一方の流体管である挿口管1と他方の流体管である受口管2とは、例えば、地中に埋設される上水道用の、コンクリート、鉄筋コンクリート、石綿、ダクタイル鋳鉄、その他鋳鉄、鋼、塩化ビニール、ポリエチレン若しくはポリオレフィン製等からなる既設に地中に埋設された流体管であって、受口管2の管軸方向側の端部は、受口管2の他の箇所よりも拡径した受口部2aが形成されているとともに、挿口管1の管軸方向側の端部は、受口部2aに挿入可能な挿口部1aが形成されている。挿口管1及び受口管2が金属製の流体管の場合、これら挿口管1の内周面1bと受口管2の内周面2bとには、挿口管1及び受口管2内を流れる流体からの防錆を行う防錆処理として、モルタルや防錆塗料によって図示しないコーティング層が形成されている。尚、本実施例では流体管内の流体は上水であるが、流体管の内部を流れる流体は必ずしも上水に限らず、例えば工業用水や下水等の他、ガスやガスと液体との気液混合体であっても構わない。
【0015】
本実施例では、挿口管1及び受口管2が別段の部材を介さず接続されるとともに、両口部1a,2aの対向面を水密にシールするシール部材3が受口部2aの内周面と挿口部1aの外周面との間隙に周方向に亘って押圧保持され、この間隙が密封状に閉塞される。尚、挿口管1及び受口管2がダクタイル鋳鉄製等の流体管の場合、挿口管の外周面には図示しない押輪を配設し、この押輪と受口部とを図示しないボルトナットにより連結することで、シール部材3が両口部の間隙に周方向に亘って押圧保持され、この間隙が密封状に閉塞されるようにしてもよい。
【0016】
これら挿口管1と受口管2とは、主に図示しない管軸方向の移動を所定長さ許容されて接続する伸縮可撓性を有する管継手によって接続されており、両口部1a,2aは、シール部材3によって密封性を維持しながら伸縮、曲げ、回転等の動きを吸収されて接続されている。また、上記した態様で既設に接続された挿口管1と受口管2とは、これ等の管1,2が埋設されている周辺地盤の経年的な不等沈下などの影響により、両管1,2同士が歪み若しくは曲がった態様で接続された状態となる場合がある。
【0017】
このように接続された挿口管1と受口管2との間には、挿口部1aと受口部2aとに渡って架設された本発明の管内面補修バンド4が取り付けられている。管内面補修バンド4は、挿口管1の内周面1bと受口管2の内周面2bとにそれぞれ密封状に当接する密封部8,8’、及び密封部8,8’の間に管軸方向に介設され、両口管1,2の既設の相対位置若しくは、管内面補修バンド4の設置後の相対移動に追従する伸縮代を有する伸縮部9を少なくとも備えた筒胴部材5と、伸縮部9の内面に当接して管軸方向に渡り配設された保持部材12と、両口管1,2に対する内径方向の外力に抗して保持部材12を介して伸縮部9を支持する支持部材7と、から主に構成されている。
【0018】
管内面補修バンド4は、密封部8,8’の内面に、密封部8,8’を両口管1,2の内周面1b、2bに密封状に当接させる固定部材である固定バンド6、6’が設けられており、この固定バンド6、6’によって両口管1,2に渡り固定された状態で取り付けられる。このように密封部8,8’の内面に固定バンド6、6’が設けられていることで、密封部8,8’による両口管1,2の密封状態を安定させることができる。尚、詳しくは、後述にて説明する。
【0019】
これら固定バンド6、支持部材7、保持部材12は、それぞれ図示しない周方向に複数に分割された略円弧状の分割部材から成り、当該分割部材同士をボルト等により緊締することで略円筒形状に構成されており、さらに、管内流体に曝される固定バンド6と支持部材7とは、本実施例ではステンレス製であり、錆び難く且つ筒胴部材5及び保持部材12よりも高い剛性を有している。また、固定バンド6、支持部材7は、例えば周方向に連続した略C字形状で、且つ径方向に拡径手段を有したものでもよいし、ステンレス製だけに限らず、例えば防錆加工を施した鋼製、若しくは筒胴部材よりも剛性の高い樹脂製であってもよい。
【0020】
保持部材12について説明すると、保持部材12は、ゴム材や合成樹脂材等の弾性材によって構成されており、伸縮部9の内面に当接して管軸方向の少なくとも一部に渡って配設されている。また保持部材の内面には、その管軸方向の両端部から規制部13,13’が内径方向に突設されており、この規制部13,13’の間隙に支持部材7を収納配置するための環状溝部11が形成されているので、この環状溝部11内で支持部材7の保持部材に対する移動が規制されている。
【0021】
より詳しくは、管軸方向における支持部材7の幅は、環状溝部11の幅よりも小さく形成されており、すなわち支持部材7の側周縁7a,7a’と規制部13,13’の側周縁13a、13a’とに間隙が形成されているため、支持部材7は、管軸方向の保持部材12の位置に相当する当該間隙内での移動が許容されており、支持部材7の側周縁7a,7a’が規制部13,13’の側周縁13a、13a’へ当接することで管軸方向の保持部材12に対する移動が規制されている。尚、本実施例では、内径方向に突設された規制部13,13’により、これ等の間隙に環状溝部11が形成されているが、例えば、本発明の規制部は、周方向に部分的に、若しくは周方向に所定間隔ごとに点在していてもよい。
【0022】
次に、筒胴部材5について説明すると、筒胴部材5は、ゴム材や合成樹脂材等の弾性材によって構成されており、筒胴部材5の管軸方向の両端部にそれぞれ設けられた密封部8,8’の外周面が、それぞれ挿口管1及び受口管2の内周面1b、2bに密封状に接触するように配設されている。より詳しくは、各密封部8,8’は、管軸方向の先端に、両口管1,2の内周面1b、2bに向けて突出するリップ部8a、8a’を有し、管軸方向の略中央部に突起部8c、8c’を有している。
【0023】
本実施例において密封部8が挿口管1側の内周面1bに位置しており、密封部8’が受口管2側の内周面に位置している。尚、本発明の密封部は、筒胴部材5の管軸方向の両端部の2箇所に設けられているが、例えば、上記した密封部8,8’に加え、筒胴部材5の管軸方向の中央側にもリップ部を有さない別段の密封部を設ける等、3箇所以上の密封部を設けてもよい。更に尚、本実施例の各密封部8a、8a’は、それぞれ管軸方向に2条の突起部8c、8c’を有しているが、この突起部は、1条のみでもよいし、若しくは3条以上の複数条であっても構わない。
【0024】
また、管軸方向に密封部8,8’が位置する筒胴部材5の内周面には、両口管1,2の内径方向に向けて開口する溝部8b,8b’が周方向に沿って形成されている。前述した固定バンド6、6’は、溝部8b,8b’にそれぞれ収納配置される。更に固定バンド6、6’は、弾性部材からなる密封部8,8’の自然状態の内径よりも若干大径の外径を成すように組み上げられている。このことにより、密封部8,8’が固定バンド6、6’によって拡径して両口管1,2の内周面1b、2bに押し付けられ、両口管1,2の内周面1b、2bと固定バンド6、6’の外周面との間隙において突起部8c、8c’が弾性変形するようになり、挿口管1の内周面1bと固定バンド6との接続箇所と、受口管2の内周面2bと固定バンド6’との接続箇所と、に架けて密封状に閉塞される。
【0025】
また、リップ部8a、8a’は、自然状態で両口管1,2の内周面1b、2bよりも外径方向に突出しているため、筒胴部材5の配置によって両口管1,2の内周面1b、2bに沿って変形し、更にこのリップ部8a、8a’が管内の流体圧により内周面1b、2bに向けて押圧されるため、筒胴部材5の管軸方向の両端部が隙間なく密封されている。
【0026】
図1に示されるように、筒胴部材5には、管軸方向に所定長さ伸縮可能な伸び代及び縮み代を有する伸縮部9が形成されており、伸縮部9は、密封部8,8’の間に管軸方向に所定間隔離間して複数介設されている。また筒胴部材5は、密封部8,8’の間に伸縮部9と管軸方向に並び介設され、伸縮代を有さない支持部10を備えており、すなわち、筒胴部材5の密封部8,8’の間には、伸縮部9と支持部10とが管軸方向に交互に配設されている。
【0027】
密封部8,8’の間に、伸縮代を有さず伸縮部9よりも強度の高い支持部10が、伸縮部9と並び介設されているため、筒胴部材5全体の伸縮性及び支持強度の設計自由度が高まる。
【0028】
そして、前述したように、支持部材7が、保持部材12に設けた規制部13,13’により保持部材12に対する移動が規制されており、また詳細は後述するが、保持部材12の嵌合部14が、伸縮部9の凹部9bに嵌合しているので伸縮部9に対する移動を規制されており、支持部材7が、両口管1,2の相対移動に追従移動する伸縮部9に対し移動すること無く、伸縮部9の径方向の支持状態を保つことができる。
【0029】
次に伸縮部9について説明する(部分拡大図参照)。この伸縮部9は、管軸方向に沿って径方向の凹凸面を交互に有する蛇腹状に形成されている。これによれば、伸縮部9が凹凸面を有する略蛇腹状に形成されることで、伸縮代を容易に構成できる。
【0030】
より詳しくは伸縮部9の外周側には、外径方向に突設する複数の凸部9a(本実施例では3条)と外径方向に向けて開口する複数の凹部9d(本実施例では2条)とが交互に配設されており、また同様に、伸縮部9の内周側には、内径方向に突設する複数の凸部9c(本実施例では2条)と内径方向に向けて開口する複数の凹部9b(本実施例では3条)とが交互に配設されている。これによって、伸縮部9が凹凸面を有し、側断面視で蛇腹状に形成され、管軸方向の寸法が延長若しくは短縮されて伸縮可能となっている。
【0031】
さらに、この伸縮部9の内周側について説明すると、凸部9cにおける突設表面である凸面9eは、側断面視で管軸方向に直線状に延びる直線面と成っており、当該凸面9eが伸縮部9の周方向に沿って連続している。そのため、保持部材12が、凸部9cの凸面9eと当接することで、保持部材12と伸縮部9との当接領域を拡げることができ、伸縮部9を安定的に支持できる。
【0032】
伸縮部9が伸縮する際には、保持部材12の外周面に対し凸部9cの凸面9eが管軸方向にスムーズに摺動するようになるため、伸縮部9の内周側に設けた保持部材12が伸縮部9を干渉することなく、伸縮部9の伸縮可撓性が損失することがない。特に、保持部材が嵌合部を設けない場合には、凹部9b内に干渉する部材を有さないため、凹部9bの間隙が確保され縮み代を失わない。また、伸縮部9が伸縮する際には、伸縮部9の内周側が縮径するので、伸縮部9の凸面9eが保持部材12の外面に圧接し、伸縮部9を安定的に支持することに寄与することになる。
【0033】
また、伸縮部9は、前記実施例の構成と同様に管軸方向に沿って径方向の凹凸面を交互に有する蛇腹状に形成されており、保持部材12に、伸縮部9の凹部9bに嵌合する嵌合部14が設けられている。
【0034】
保持部材12の嵌合部14が伸縮部9の凹部9bと嵌合しているため、保持部材12が、両口管1,2に追従して伸縮する伸縮部9から外れてしまうことが無い。
【0035】
より詳しくは、伸縮部9の凹凸面を構成する凹部9bに嵌合する嵌合部14は、3条有する凹部9bの中で、管軸方向の中央側の凹部9bを除く2条の凹部9bは伸縮可能としたまま、当該中央側の凹部9bのみに嵌合している。すなわち、保持部材12の外周面に1条設けられており、凹部9bに嵌合部14が嵌合することにより、保持部材12の管軸方向の移動が規制され、伸縮部9から外れてしまうことが無い。また、伸縮部9が伸縮する際には、3条の凹部9bに1条の嵌合部14のみが嵌合しており、当該凹部9bを除く凹部9bは伸縮部9が自由に伸縮できるため、伸縮部9と保持部材12とが嵌合することによって伸縮可撓性が損失することがない。つまり、3条の凹部9bの中央側以外は、凹部9bの間隙が確保されるため縮み代が失われない。また、嵌合部14は、凹部9bの径方向の深さ寸法よりも若干小寸に突出しているため、嵌合部14が嵌合した凹部9b内に空隙が残されている。したがって、嵌合部14を凹部9b内に容易に嵌合できるばかりか、保持部材12の外面を伸縮部9の凸面9eに確実に当接させることができる。更に、嵌合部14が嵌合した凹部9b内に形成された前記空隙により、伸縮部9の軸方向の伸縮に伴う径方向の移動代を確保できるため、伸縮部9が伸縮し易い。
【0036】
さらに、支持部16の内面16aと凸部9cの凸面9eとは、側断面視で管軸方向に直線面として面一に成っており、当該直線面が筒胴部材15の周方向に沿って連続しているため、保持部材12が、管軸方向に沿って直線面に形成された伸縮部9の凸部9cと保持部13の一部とに当接されることで、保持部材12と伸縮部9との当接領域を拡げることができ、伸縮部9を安定的に支持できる。
【0037】
尚、本実施例において、嵌合部14が3条の凹部9bの中で、管軸方向の中央に位置する凹部9bに嵌合しているが、凹部9bのいずれの位置に嵌合させてもよい。また、本実施例に限らず、例えば、嵌合部を保持部材12の外面に複数条設け、凹部9bに嵌合させ、伸縮部とより強固な嵌合状態にしてもよいが、その際には嵌合部14の管軸方向の幅を凹部9bの管軸方向の幅より小寸に設定する等、伸縮部9の伸縮可撓性が十分に機能するように伸縮性及び支持強度を適宜設定することができる。
【0038】
また、本実施例において保持部材12の外周面全周に亘って嵌合部14が設けられているが、例えば保持部材12の外周面に周方向に部分的に、若しくは周方向に所定間隔ごとに嵌合部を点在させてもよい。
【0039】
本実施例のように地中に埋設された既設の流体管に管内面補修バンド4を取り付ける際には、上述したように不等沈下等により両口管1,2自体、若しくは管継手部に歪みや曲がりが発生している場合があるが、管内面補修バンド4が伸縮部9によって伸縮可撓性を有しているため、この歪みや曲がりに依り変位した両口管1,2の相対位置に追従して変形することで容易に設置することができる。
【0040】
次に支持部材7を説明すると、支持部材7は、各伸縮部9の内周側に形成した保持部材12の環状溝部11内にそれぞれ収納配置され、伸縮部9を外径方向に向けて支持する部材である。この支持部材7は、保持部材12の自然状態の内径と略同径の外径に形成されており、周方向に複数分割された状態の支持部材7を環状溝部11にそれぞれ収納配置した後、支持部材7を円形状に組み立てることで支持部材7の外周面が保持部材12の内周面に当接する。
【0041】
これにより、周辺地盤の土圧若しくは地下水の水圧により両口管1,2に対し内径方向に負荷される外力に抗し、伸縮部9が撓み内径方向へ変形することを防止することができ、管内部を流れる流体の流下断面を確保し、流れを阻害することがない。尚、両口管1,2に対し内径方向に負荷される外力は、上記した土圧若しくは水圧による外力に限らず、例えば、両口管1,2の上部をその自重で下方向すなわち内径方向に撓ませる重力も含まれ、支持部材7は、前述した両口管1,2の上部を内径方向に撓ませる重力にも抗して保持部材12及び伸縮部9を支持し、伸縮部9が撓み内径方向へ変形することを防止する。
【0042】
以上のように管内面補修バンド4が挿口管1と受口管2との内周面1b、2bに渡って、且つ密封状に閉塞して取り付けられている。次に、挿口管1と受口管2とに管軸方向に相対移動しようとする外力が働いた際の管内面補修バンド4について説明する。
【0043】
挿口管1と受口管2とを管軸方向に相対移動させようとする外力が働いた際には、筒胴部材5の管軸方向の両端に位置する各固定バンド6、6’が挿口管1と受口管2とにそれぞれ連動して移動するようになる。上述したように筒胴部材5は、密封部8,8’においてそれぞれ両口管1,2の内周面1b、2bに固定バンド6、6’によって押し付けられているため、固定バンド6、6’がそれぞれ相対移動することによって筒胴部材5を伸縮させる力が作用する。より詳しくは、筒胴部材5の伸縮部9が引き伸ばされたり、押し縮められたりすることで両口管1,2の相対移動を伸縮部9の伸縮代の寸法分許容しているとともに、伸縮部9の内周側に設けた保持部材12が、この伸縮部9の管軸方向の伸縮に干渉することなく伸縮自由度を確保できる。このように、両口管1,2の相対移動に伸縮部9が保持部材12の外周面に対し摺動するように追従して伸縮するため、両口管1,2の内周面1b、2bに当接している固定バンド6、6’及び密封部8,8’に掛かる負荷が緩和されるため密封性が維持される。
【0044】
このことにより、両口管1,2の内部流体が外部へ漏れ出すことがなく、また両口管1,2の内部に流体が浸入することがない。また、両口管1,2に対する内径方向の外力が働いた際には、支持部10によって外圧に対抗するようになっており、保持部材12の外周面が肉薄の伸縮部9の内周面に当接し、支持部材7の外周面が保持部材12の内周面に当接していることにより、外圧で伸縮部9が筒胴部材5の内径方向に変形することを防止される。
【0045】
以上説明したように、本発明の管内面補修バンド4は、挿口管1と受口管2との内面にそれぞれ密封状に当接する密封部8,8’、及び密封部8,8’の間に管軸方向に介設され、両口管1,2の相対位置若しくは相対移動に追従する伸縮代を有する伸縮部9を少なくとも備えた筒胴部材5と、伸縮部9の内面に当接して管軸方向の少なくとも一部に渡り配設された保持部材12と、両口管1,2に対する内径方向の外力に抗して保持部材12を介して伸縮部9を支持する支持部材7と、からなり、伸縮部9は、管軸方向に沿って径方向の凹凸面を交互に有する蛇腹状に形成されており、保持部材12と当接する伸縮部9の内径方向の凸面9eは、管軸方向に沿って直線状に延びる直線面に形成されており、保持部材12は、支持部材7の外面に当接して支持部材7を保持する。保持部材12の内周面に当接して支持する互いに接続された両口管1,2の相対位置若しくは相対移動に追従する筒胴部材5の伸縮部9が、保持部材12を介して支持部材7により内径方向の外力に対し支持されており、管軸方向の伸縮代を有し比較的強度の低い伸縮部9が、内径方向の外力により縮径されずに径寸法を維持できるため、両口管1,2内の流路を確保できるばかりか、密封部8,8’に対しても内径方向の外力の影響を与えず、密封部8,8’による両口管1,2の密封状態を維持できる。また、伸縮部9が凹凸面を有する蛇腹状に形成されることで、伸縮代を容易に構成できるばかりか、保持部材12が、管軸方向に沿って直線状に延びる直線面に形成された伸縮部9の凸面9eと当接することで、保持部材12と伸縮部9との当接領域を拡げることができ、保持部材12を介して支持部材7により伸縮部9を安定的に支持できる。さらに、支持部材7の外面は、保持部材12の内面に当接して保持されるので、軸方向移動が抑止され、支持部材7による支持が安定する。
【0046】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0047】
例えば、前記実施例では、管軸方向に伸縮部9と支持部とが交互に複数配置されているが、これに限られず、例えば、本発明の変形例1として、図2に示すように、伸縮部が密封部8,8’以外の略全面に配置されてもよいし、あるいは、本発明の変形例2として、図3に示すように、筒胴部材の管軸方向の中央部に保持部材12及び支持部材7を配置し、その保持部材12、支持部材7と密封部8,8’以外には伸縮部が配置されてもよく、様々な態様で筒胴部材を構成してもよい。
【0048】
また例えば、前記実施例では、両口管1,2に対する内径方向の外力に抗して伸縮部9を支持する保持部材13が、管軸方向に支持部を介して複数配置された全ての伸縮部9の管軸方向に渡り配設されているが、例えば保持部材及び支持部材は、複数配置された伸縮部のうち一部の伸縮部のみを支持するように配設されてもよい。また、本実施例では保持部材12及び支持部材7は、各々の伸縮部9の管軸方向の全部に渡り配設されているが、例えば保持部材12及び支持部材は、各々の伸縮部の管軸方向の一部のみに渡り配設されてもよいし、若しくは上記したように伸縮部が密封部8,8’以外の略全面に配置されている場合、当該伸縮部の管軸方向の一部のみに渡り配設されても構わない。
【0049】
また、伸縮部9に蛇腹状に形成される凹凸面(凹部、凸部)の数は、前記実施例に限らず、伸縮部の所望の伸縮幅に合わせて適宜設定できる。さらに、前記実施例では、伸縮部9に蛇腹状に形成される凹凸面は管軸に直交方向に設けられていたが、例えば管軸に対して斜め方向に凹凸面を形成してもよい。
【0050】
また、前記実施例の嵌合部14が伸縮部9の凹部9bに嵌合されていたが、これに限らず、例えば嵌合部としての凹部が伸縮部9の凸部9cに嵌合されてもよい。
【0051】
また例えば、本発明で使用する流体管の断面形状は円形のみ成らず、例えば矩形状あるいは楕円形状であってもよく、筒胴部材や支持部材はその断面形状に合わせたものを使用することは言うまでもない。
【符号の説明】
【0052】
1 挿口管(流体管)
2 受口管(流体管)
4 管内面補修バンド
5 筒胴部材
6,6’ 固定バンド(固定部材)
7 支持部材
8,8’ 密封部
9 伸縮部
9a 凸部
9b 凹部
9c 凸部
9d 凹部
9e 凸面
10 支持部
11 環状溝部
12 保持部材
13,13’ 規制部
14 嵌合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の流体管と他方の流体管とが接続された管継手において、前記両方の流体管の内面に周方向に亘り密封状に架設される管内面補修バンドであって、
前記両方の流体管の内面にそれぞれ密封状に当接する各密封部、及び該各密封部の間に管軸方向に介設され、前記両方の流体管の相対位置若しくは相対移動に追従する伸縮代を有する伸縮部を少なくとも備えた筒胴部材と、
前記伸縮部の内面に当接して管軸方向の少なくとも一部に渡り配設された保持部材と、
前記流体管に対する内径方向の外力に抗して前記保持部材を介して該伸縮部を支持する支持部材と、からなり、
前記伸縮部は、管軸方向に沿って径方向の凹凸面を交互に有する蛇腹状に形成されており、前記保持部材と当接する該伸縮部の内径方向の凸面は、管軸方向に沿って直線状に延びる直線面に形成されており、
前記保持部材は、前記支持部材の外面に当接して該支持部材を保持することを特徴とする管内面補修バンド。
【請求項2】
前記筒胴部材は、前記各密封部の間に前記伸縮部と並び介設され、前記伸縮代を有さない支持部を備えていることを特徴とする請求項1に記載の管内面補修バンド。
【請求項3】
前記保持部材の内面に、前記支持部材の前記伸縮部に対する管軸方向の移動を規制する規制部が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の管内面補修バンド。
【請求項4】
前記伸縮部は、管軸方向に沿って径方向の凹凸面を交互に有する蛇腹状に形成されており、前記保持部材に、前記伸縮部の凹凸面に嵌合する嵌合部が設けられていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の管内面補修バンド。
【請求項5】
前記各密封部の内面に、該各密封部を前記流体管の内面にそれぞれ密封状に当接させる固定部材が設けられていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の管内面補修バンド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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