説明

管用テーパタップ

【課題】ねじ立て加工を容易化する管用テーパタップを提供する。
【解決手段】管状部材における下穴の表層部にテーパめねじを切削加工するための切れ刃22がテーパ円筒面上に設けられたタップ部14を有する管用テーパタップ10であって、下穴径より小さい径寸法を有する円筒状のガイド部16をタップ部14の先端側に備えたものであることから、手立て作業によるねじ立て加工等に際して、簡単に下穴に対して真っ直ぐにねじ加工することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管用テーパタップに関し、特に、ねじ立て加工を容易化するための改良に関する。
【背景技術】
【0002】
管状部材における下穴の表層部にテーパめねじを切削加工するための切れ刃がテーパ円筒面上に設けられたタップ部を有する管用テーパタップが知られている。例えば、特許文献1に記載された管用テーパねじ用タップがそれである。このような管用テーパタップは、例えば水道管、ガス管、油圧配管等の管状(パイプ状)部材の内周面におけるテーパめねじの加工に用いられるものであり、ガスや液体が漏れないようにハンドタップ等に比べて高い精度が要求される。また、テーパめねじを切削加工するための切れ刃による切削加工では、その食付き部ばかりでなく完全山部でも切削が行われるため、ハンドタップ等によるねじ加工に比べて切削トルクが格段に大きく、例えば2倍以上であることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公昭53−38956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前述したような従来の管用テーパタップでは、そのねじ立て加工に熟練を要するという問題があった。すなわち、前記管用テーパタップは通常、食付き山数が例えば2.5山程度と少なく、また上述のように切削トルクがハンドタップ等と比べると格段に大きいため、例えば手立て作業によるねじ立て加工を行う際、下穴に対して真っ直ぐにねじ加工できなかったり、タップの刃先をチッピングさせる等の不具合が発生するおそれがあった。このため、ねじ立て加工を容易化する管用テーパタップの開発が求められていた。
【0005】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、ねじ立て加工を容易化する管用テーパタップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
斯かる目的を達成するために、本発明の要旨とするところは、管状部材における下穴の表層部にテーパめねじを切削加工するための切れ刃がテーパ円筒面上に設けられたタップ部を有する管用テーパタップであって、前記下穴径より小さい径寸法を有する円筒状のガイド部を前記タップ部の先端側に備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
このようにすれば、管状部材における下穴の表層部にテーパめねじを切削加工するための切れ刃がテーパ円筒面上に設けられたタップ部を有する管用テーパタップであって、前記下穴径より小さい径寸法を有する円筒状のガイド部を前記タップ部の先端側に備えたものであることから、手立て作業によるねじ立て加工等に際して、簡単に下穴に対して真っ直ぐにねじ加工することができる。すなわち、ねじ立て加工を容易化する管用テーパタップを提供することができる。
【0008】
ここで、好適には、前記タップ部は、粉末高速度鋼から成るものである。このようにすれば、前記切れ刃のチッピングを好適に抑制できると共に耐摩耗性を向上させることができる。
【0009】
また、好適には、前記タップ部は、表面にコーティング処理が施されたものである。このようにすれば、切削くずの流れを良くして切削トルクを更に低減させることができる。
【0010】
また、好適には、前記ガイド部の軸方向寸法L3は、前記タップ部の基準径をDとしてL3≧1.0Dである。このようにすれば、手立て作業によるねじ立て加工等に際して、更に簡単に下穴に対して真っ直ぐにねじ加工することができる。
【0011】
また、好適には、前記ガイド部の外周面には、そのガイド部の先端面からタップ側端部まで軸方向に延伸する溝部が掘設されたものである。このようにすれば、切削くずの流れを良くして切削トルクを更に低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施例である管用テーパタップの構成を説明する図であり、軸心に垂直な方向から見た様子を示す正面図である。
【図2】図1の管用テーパタップを矢印IIに示す方向から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、説明の便宜上、以下の説明に用いる図面に関して、各部の寸法比等は必ずしも正確には描かれていない。
【実施例】
【0014】
図1は、本発明の一実施例である管用テーパタップ10(以下、単にタップ10という)の構成を説明する図であり、軸心に垂直な方向から見た様子を示す正面図である。また、図2は、斯かるタップ10を軸心方向すなわち図1の矢印IIに示す方向から見た図である。これらの図に示すように、本実施例のタップ10は、共通の軸心を有するシャンク12、タップ部14、及びガイド部16を軸方向に一体に備えている。
【0015】
上記タップ部14は、図2に示すように、管状(パイプ状)部材における下穴の表層部にテーパめねじを切削加工するためのテーパおねじ18がテーパ円筒面上に設けられて成るものである。すなわち、上記タップ部14には、加工すべきテーパめねじと同じテーパ角度、例えば3°35′でテーパおねじ18が設けられていると共に、軸方向に4本の溝部(ストレート溝)20が掘設されて上記テーパおねじ18が分断されることにより、それ等の周方向の端部にすくい角が例えば8°の切れ刃22が形成されている。上記タップ10は、斯かるタップ部14により例えば穴径11.5mmの下穴表層部に例えば3°35′のテーパめねじを切削加工するために用いられる
【0016】
図1に示すように、前記シャンク12は円筒状(円柱状)を成すものであり、その外径d1は例えば11mmである。また、前記タップ部14に備えられたテーパおねじ18の基準径位置Reにおける基準外径Dは例えば13.157mmであり、ねじ部の全長L1は例えば28mm、食付き24の先端から基準径位置Reまでの長さ寸法L2は21±1.34mmである。また、前記タップ部14における食付き24の勾配角は例えば17°30′、その山数は例えば2.5山である。また、上記テーパおねじ18のねじ山の高さhは例えば0.856mm、ピッチPは例えば1.3368mm、ねじ山の角度は例えば55°である。
【0017】
前記タップ部14は、好適には、粉末ハイスすなわち粉末高速度鋼(焼結高速度鋼)から成るものである。また、好適には、その表面に硬質被膜としてTiCNコーティング処理が施されたものである。
【0018】
前記ガイド部16は、加工対象となる下穴径より小さい径寸法(好適には略同径)を有する円筒状の部材が前記タップ部14の先端側に一体に設けられたものである。このガイド部16の軸方向寸法L3(図1を参照)は、好適には、前記タップ部14の基準径位置Reにおける基準外径をDとしてL3≧1.0Dであり、例えば18(1.36D)mmである。また、前記ガイド部16の先端面16aから前記タップ部14までの長さ寸法L4は例えば23mmである。また、そのガイド部16を含む前記タップ10の軸方向全長L5は例えば129mmである。なお、図1に示すように、前記ガイド部16の先端面(先端部)16aには、加工対象となる下穴に挿入し易いように面取加工が施されている。
【0019】
また、図1及び図2に示すように、前記ガイド部16の外周面には、そのガイド部16の先端面16aからタップ側端部16bまで軸方向に延伸する4本の溝部(ストレート溝)26が掘設されたものであり、これら溝部26は、前記タップ部14に形成された溝部20と軌を一にするものである。換言すれば、前記タップ部14に形成された溝部20と前記ガイド部16に形成された溝部26とは、軸方向に連続するように形成されたものである。
【0020】
以上のように構成されたタップ10は、例えば手立て作業によるねじ切り加工に用いられる。すなわち、前記シャンク12の取付部28に所定のタップ回しが取り付けられ、そのタップ回しを介して手作業により前記シャンク12が軸心まわりに回転させられつつ、予め設けられた下穴内に前記タップ部14がねじ込まれることにより、そのタップ部14に設けられた前記切れ刃22(テーパおねじ18)によりその下穴の表層部にテーパめねじが切削加工される。ここで、本実施例においては、前記タップ部14の先端側に、加工対象となる下穴径と略同径の円筒状のガイド部16が設けられていることから、前記タップ部14によるめねじの切削加工に際して先ずそのガイド部16が下穴に挿入させられることで、そのガイド部16の軸心すなわちタップ10の軸心と下穴の軸心とが一致させられ、その下穴に対して真っ直ぐにねじ加工することができる。また、前記ガイド部16の軸方向寸法L3は、前記タップ部の基準径をDとしてL3≧1.0Dであり、手立て作業によるねじ立て加工等に際して、簡単に下穴に対して真っ直ぐにねじ加工することができるように構成されている。なお、このガイド部16の軸方向寸法L3が1.0Dより小さい場合には、そのガイド部16の軸心すなわちタップ10の軸心と下穴の軸心とを好適に一致させられないおそれがある。
【0021】
このように、本実施例によれば、管状部材における下穴の表層部にテーパめねじを切削加工するための切れ刃22がテーパ円筒面上に設けられたタップ部14を有する管用テーパタップ10であって、前記下穴径より小さい径寸法を有する円筒状のガイド部16を前記タップ部14の先端側に備えたものであることから、手立て作業によるねじ立て加工等に際して、簡単に下穴に対して真っ直ぐにねじ加工することができる。すなわち、ねじ立て加工を容易化する管用テーパタップ10を提供することができる。
【0022】
また、前記タップ部14は、粉末高速度鋼から成るものであるため、前記切れ刃22のチッピングを好適に抑制できると共に耐摩耗性を向上させることができる。
【0023】
また、前記タップ部14は、表面にTiCNコーティング処理が施されたものであるため、切削くずの流れを良くして切削トルクを更に低減させることができる。
【0024】
また、前記ガイド部16の軸方向寸法L3は、前記タップ部14の基準径位置の外径寸法をDとしてL3≧1.0Dであるため、手立て作業によるねじ立て加工等に際して、更に簡単に下穴に対して真っ直ぐにねじ加工することができる。
【0025】
また、前記ガイド部16の外周面には、そのガイド部16の先端面16aからタップ側端部16bまで軸方向に延伸する溝部26が掘設されたものであるため、切削くずの流れを良くして切削トルクを更に低減させることができる。
【0026】
以上、本発明の好適な実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、更に別の態様においても実施される。
【0027】
例えば、前述の実施例において、前記タップ10は、手立て作業によるねじ切り加工に用いられるものであったが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば所定の機械に取り付けられてねじ切り加工を行う管用テーパタップにも好適に適用される。また、表面に施されるコーティングはTiCNに限定されるものではなく、例えばTiN・TiCrNやTiAlN等、切りくずの流れをよくして切削トルクを更に低減するものであればその種類を問わない。
【0028】
また、前述の実施例において、前記ガイド部16には先端面16aからタップ側端部16bまで軸方向に延伸するストレート溝としての溝部26が掘設されたものであったが、例えば前記タップ部14に形成された溝部20がスパイラル溝である場合等においては、同様にスパイラル溝が前記ガイド部16の外周面に形成されたものであってもよい。また、斯かる溝部26は4本には限定されず、3本以下乃至5本以上の溝部が形成されたものであってもよい。
【0029】
その他、一々例示はしないが、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が加えられて実施されるものである。
【符号の説明】
【0030】
10:管用テーパタップ
14:タップ部
16:ガイド部
16a:先端面
16b:タップ側端部
22:切れ刃
26:溝部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状部材における下穴の表層部にテーパめねじを切削加工するための切れ刃がテーパ円筒面上に設けられたタップ部を有する管用テーパタップであって、
前記下穴径より小さい径寸法を有する円筒状のガイド部を前記タップ部の先端側に備えたものであることを特徴とする管用テーパタップ。
【請求項2】
前記タップ部は、粉末高速度鋼から成るものである請求項1に記載の管用テーパタップ。
【請求項3】
前記タップ部は、表面にコーティング処理が施されたものである請求項1又は2に記載の管用テーパタップ。
【請求項4】
前記ガイド部の軸方向寸法L3は、前記タップ部の基準径をDとしてL3≧1.0Dである請求項1から3の何れか1項に記載の管用テーパタップ。
【請求項5】
前記ガイド部の外周面には、該ガイド部の先端面からタップ側端部まで軸方向に延伸する溝部が掘設されたものである請求項1から4の何れか1項に記載の管用テーパタップ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2010−214517(P2010−214517A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−63580(P2009−63580)
【出願日】平成21年3月16日(2009.3.16)
【出願人】(000103367)オーエスジー株式会社 (180)