説明

管路内を進行する推進機構の推進方法、及び、流体供給装置

【課題】粘性や弾性に富んだ管路内を推進する推進機構に好適に採用可能であって、高い粘性及び弾性に起因する管路の内壁面の纏わり付きや巻き込み等、壁面が推進機構の推進を妨げることを確実に防止可能な推進機構の推進方法、及び該方法に好適な流体供給装置を提供する。
【解決手段】駆動体の一部を管路の内壁面と密着状態とし、他部を非密着状態とし、両状態を繰り返して管路内を一方向に進行する推進機構の推進方法であって、密着状態にある駆動体の一部よりも進行方向側又は進行方向逆側の内壁面に向けて流体を噴射する態様とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、推進機構に関し、特に管路内を進行する推進機構に好適な推進方法、及び該推進方法に好適な流体供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、管路の一例として、例えば生体の大腸を検査するに際しては、先端部に撮像部や照明部を搭載した内視鏡を挿入し、大腸内の内視鏡から接続されたケーブルを外部から操作することにより、複雑に湾曲する大腸内をくまなく検査する手法がとられている。しかしながら、大腸は、例えばS状結腸や横行結腸に代表されるように、複雑に湾曲するとともに、下方に弛んだ部位が存在するため、外部から内視鏡を操作して上記結腸を通過させるためには、相当な時間と熟練を要し、検査が効率的に行えないという問題があった。
そこで、近年においては内視鏡を始めとする検査装置の管路内における推進を補助する推進機構の開発が進められており、外部からの操作を要せずに管路内を能動的に推進可能な推進機構が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−240713号公報
【特許文献2】特表2009−513250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された推進機構は、駆動部としての複数の伸縮体を管路の延長方向に沿って連続して順に駆動することにより、駆動部の外周面と密着する管路の内周面との間に生じる摩擦力を得て、管路内を推進する構成である。また、特許文献2に開示された推進機構は、袋状に形成された複数のトロイドを同一方向に回転動作させることにより、トロイドの外周面と密着する管路の内周面との間に生じる摩擦力を得て、管路内を推進する構成である。上記各特許文献に記載された推進装置は、共に管路を能動的に推進し、内視鏡等の検査機器の推進を補助する点で共通するものではあるが、上記装置の構成では、大腸などの複雑に入り組んだ管路内を効率的に推進できるとは言い難い。
【0005】
即ち、例えば大腸等、一部の管路の内壁面は、粘性及び弾性が極めて高く、さらには延長方向に沿って無数のヒダが形成されているため、例えば特許文献1に開示された推進機構を大腸内に挿入して、複数の伸縮体を連続して駆動した場合、一部の伸縮体の伸縮時において、他の複数の収縮体の外周面に大腸の内壁面が纏わり付いた状態となり、さらに無数のヒダの引っ掛かりにより大腸自体が伸縮動作に追従して延長方向に伸縮するように動くため、相対的に大腸内を進行し難いという不都合が生じる。
また、特許文献2に開示された推進機構にあっては、袋状に形成された複数のトロイドを回転動作させる構成であるため、トロイドの進行方向逆側に存在する大腸の内壁面がトロイドの回転によって巻き込まれた状態となり易く、進行が困難となる場合や、進行と後退を繰り返して巻き込みを回避しながら進行する必要が生じるという不都合が存在する。
【0006】
本発明は、上述した大腸に代表されるような粘性や弾性に富んだ管路内を推進する推進機構に好適に採用可能であって、高い粘性及び弾性に起因する管路の内壁面の纏わり付きや巻き込み等、壁面が推進機構の推進を妨げることを確実に防止可能な推進機構の推進方法、及び該方法に好適な流体供給装置を提供することを目的とする。
【0007】
上記課題を解決するための推進方法に係る発明として、駆動体の一部を管路の内壁面と密着状態とし、他部を非密着状態とし、両状態を繰り返して管路内を一方向に進行する推進機構の推進方法であって、密着状態にある駆動体の一部よりも進行方向側又は進行方向逆側の内壁面に向けて流体を噴射する態様とした。
本態様に係る推進方法によれば、密着状態にある駆動体の一部よりも進行方向側又は進行方向逆側の内壁面に向けて流体が噴射されることにより、内壁面と密着状態にある駆動体以外の駆動体の周囲に存在する内壁面が離間する方向に拡大するため、推進に必要な駆動体の一部における密着状態を確保しつつ、駆動体の他部における非密着状態を確実に確保できる。即ち、推進機構の進行を阻害する内壁面との摩擦を低減するとともに、内壁面の巻き込みを確実に防止することが可能となる。
また、他の推進方法として、駆動体を管路の半径方向外側に膨張する伸縮体として、当該伸縮体の膨張開始とともに膨張を開始した伸縮体よりも進行方向側又は進行方向逆側の内壁面に向けて流体を噴射する態様とした。
本態様によれば、内壁面と密着状態にある伸縮体以外の伸縮体の周囲に存在する内壁面が離間する方向に拡大するため、推進に必要な伸縮体の一部における密着状態を確保しつつ、伸縮体の他部における非密着状態を確実に確保できる。
また、他の推進方法として、駆動体を管路の延長方向に沿って回転する袋体として、当該袋体の回転中に袋体よりも進行方向逆側の内壁面に向けて流体を噴射する態様とした。
本態様によれば、進行方向逆側に存在する内壁面が袋体から離間する方向に拡大するため、内壁面と密着状態にある袋体以外の袋体の周囲に内壁面が纏わり付くことを防止でき、袋体の回転により壁面が巻き込まれることを確実に防止できる。
また、上記課題を解決するための流体供給装置の態様として、管状体と、当該管状体内に挿通され、一端部が管状体の周面に形成された供給孔と接続されるチューブと、チューブの他端部と接続され、チューブ内に流体を供給する流体供給源と、管状体の外周面における供給孔と対応する位置に被着された流体噴射カバーとを備え、流体噴射カバーにおける推進機構の進行方向側又は進行方向逆側の端部がチューブ内に供給された流体の圧力により開放可能に被着された構成とした。
本構成によれば、流体供給源からチューブ内に供給された流体が、流体噴射カバーにおける推進機構の進行方向側又は進行方向逆側の端部から噴射されることから、内壁面と密着状態にある駆動体以外の駆動体の周囲に存在する内壁面を離間する方向に拡大させることができる。
なお、本明細書における管路とは、流体の噴射により拡大し得る内壁面を有するものであれば、その種類は問わない。例えば、口腔、咽頭、食道、胃、小腸、大腸等の概ね管状な空間を有する臓器の他、軟性部材により製造されたパイプ等の工業製品等をも含む。また、管路の内壁面は必ずしも粘性や弾性を有するものでなくともよい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】推進機構の一例を示す概略図である。
【図2】コネクトチューブ,流体噴射カバーを示す径方向断面図である。
【図3】推進方法の一例を示す模式図である。
【図4】他の形態に係る推進機構を示す概略断面図である。
【0009】
以下、発明の実施形態を通じて本発明を詳説するが、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明される特徴の組み合わせのすべてが発明の解決手段に必須であるとは限らず、選択的に採用される構成を含むものである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本発明に係る推進方法及び流体供給装置を好適に適用可能な推進機構の一例を示す概略図である。同図において推進機構10は、矢印に示す方向に向かって推進するものとし、矢印が示す方向と同一方向を前方、逆方向を後方として説明する。
同図において推進機構10は、複数の駆動体として構成された伸縮ユニット10A乃至10Dを管路の延長方向(軸方向)沿って伸縮動作させることによりミミズの移動を模した蠕動運動を行い、内部に挿入された内視鏡等の推進を補助する装置である。同図において推進機構10は、その内部空間に内視鏡の挿入ケーブル、及び、各伸縮ユニット10A乃至10Dを伸縮動作させる空気を供給する駆動用エアチューブ15A乃至15Dを挿入可能なオーバーチューブ12A乃至12Dと、各オーバーチューブ12A乃至12Dの間に接続されたコネクトチューブ13A乃至13Cとを備える。
【0011】
オーバーチューブ12A乃至12D、及び、コネクトチューブ13A乃至13Cは、軸方向に沿って伸縮自在な蛇腹構造を有する両端開口の管状体であって、先端部より順に第1フランジ16A乃至第7フランジ16Gによって接続される。推進機構10の進行方向最前に位置するオーバーチューブ12Aの前端部は、後方が開口したキャップ18の開口部18Aと嵌合して閉塞されている。また、オーバーチューブ12Aの後端部は、オーバーチューブ12Aの外周面を囲繞する環状の第1フランジ16Aの前端部と嵌合している。なお、図示は省略するが、オーバーチューブ12A乃至12D、及び、コネクトチューブ13A乃至13C内に挿入される内視鏡の挿入ケーブルの先端部は、キャップ18の先端部より、前方に突出した状態で保持され、該先端部に搭載された光源及び撮像装置により管路5の内壁面5Aの状態を管路5外に設けられた図外のモニター等に写し出す。
【0012】
オーバーチューブ12A;12Bの間に位置するコネクトチューブ13Aの前端部は、第1フランジ16Aの後端部と嵌合し、コネクトチューブ13Aの後端部は、第2フランジ16Bの前端部と嵌合している。以下、オーバーチューブ12B乃至12D、コネクトチューブ13B;13Cが順に第2フランジ16B乃至第7フランジ16Gによりそれぞれ一体に接続される。なお、各オーバーチューブ12A乃至12D及びコネクトチューブ13A乃至13Cを第1フランジ16A乃至第7フランジ16Gによって個別に接続するものとしたが、単一のチューブによって構成してもよい。
【0013】
上記オーバーチューブ12A乃至12D及びコネクトチューブ13A乃至13Cによって一体に構成された管状の内部空間には、例えばポリ塩化ビニル等の可撓性部材によって形成された破線で示す駆動用エアチューブ15A乃至15D、及び、一点鎖線で示す噴射用エアチューブ20A乃至20Cが挿通される。
【0014】
図2(a),(b)は、コネクトチューブ13Aを中心とする径方向断面図である。同図に示すように駆動用エアチューブ15Aは、先端部が第1フランジ16Aまで到達し、第1フランジ16Aに形成された接続口17に嵌入されて接続される。駆動用エアチューブ15Bは、先端部が第3フランジ16Cまで到達し、上記第1フランジ16Aに形成された接続口17と同一構成の図外の接続口に嵌入されて接続される。駆動用エアチューブ15Cは、先端部が第5フランジ16Eまで到達し、前記同様に図外の接続口を介して接続される。駆動用エアチューブ15Dは、先端部が第7フランジ16Gまで到達し、前記同様に図外の接続口を介して接続される。各フランジに形成された接続口は図2の接続口17が示すとおり、フランジの周面に開設された供給孔21と連通している。駆動用エアチューブ15A乃至15Dの後端部は、後述する空気供給源としてのエアコンプレッサ101と、供給バルブ102A乃至102D及び開放バルブ103A乃至103Dを介して接続されており、エアコンプレッサ101から供給された空気は、供給孔21を経て、各伸縮ユニット10A乃至10Dのチャンバー27A乃至27D内に供給される。
【0015】
図2に示すように、噴射用エアチューブ20Aは、先端部が第2フランジ16Bに嵌合するコネクトチューブ13Aの後端部まで到達し、コネクトチューブ13Aの周面に開設された供給孔14に嵌入される。噴射用エアチューブ20Bは、先端部が第4フランジ16Dに嵌合するコネクトチューブ13Bの後端部まで到達し、上記コネクトチューブ13Aに形成された供給孔14と同一構成の図外の接続孔に嵌入される。噴射用エアチューブ20Cは、先端部が第6フランジ16Fに嵌合するコネクトチューブ13Cの後端部まで到達し、上記コネクトチューブ13Aに形成された供給孔14と同一構成の図外の接続孔に嵌入される。
噴射用エアチューブ20A乃至20Cの後端部は、駆動用エアチューブ15A乃至15Dと同様にエアコンプレッサ101と供給バルブ104A乃至104Cを介して接続されており、エアコンプレッサ101から供給された空気は、供給孔14を経由してコネクトチューブ13A乃至13Cの外部に供給される。
【0016】
次に、オーバーチューブ12A乃至12D及びコネクトチューブ13A乃至13Cによって一体に構成された管体の外部の形態について説明する。図1,図2に示すように、オーバーチューブ12A乃至12Dには、弾性体よりなる伸縮体25A乃至25Dが外周面を覆うように被着される。伸縮体25A乃至25Dは、両端開口の略筒状体であって、例えば合成ゴムや天然ゴム等からなる弾性体内に、一方向に延在するガラスロービングやカーボンロービング複数の繊維を内包する。
【0017】
伸縮体25Aは、繊維の延在方向が進行方向と同一方向となる状態で、両端部がキャップ18の外周上に形成された溝部18B、及び、第1フランジ16Aの外周上に形成された溝部19に対応する位置で例えばピアノ線のような固定手段を介して強固に括られる。オーバーチューブ12Aの外周面を覆う伸縮体25Aが設けられることにより、オーバーチューブ12Aの外周面と伸縮体25Aの内周面との間に密閉空間としてのチャンバー27Aが形成され、オーバーチューブ12A、キャップ18、第1フランジ16A及び伸縮体25Aによって駆動体としての伸縮ユニット10Aが構成される。
【0018】
伸縮体25Bは、伸縮体25Aと同様に繊維の延在方向が進行方向と同一方向となる状態で、両端部が第2フランジ16B;第3フランジ16Cの溝部19に対応する位置で括られて強固に固定される。オーバーチューブ12Bを覆う伸縮体25Bが設けられることにより、オーバーチューブ12Bの外周面と伸縮体25Bの内周面との間に密閉空間としてのチャンバー27Bが形成され、オーバーチューブ12B、第2フランジ16B、第3フランジ16C、及び伸縮体25Bによって駆動体としての伸縮ユニット10Bが構成される。
以下同様に、伸縮体25C;25Dは、第4フランジ16D;第5フランジ16E、及び、第6フランジ16F;第7フランジ16Gを介してオーバーチューブ12C;12Dを覆うように固定され、チャンバー27C;27Dを備えた伸縮ユニット10C;10Dとして構成される。つまり、本実施形態に係る推進機構10は、駆動部として構成された複数の伸縮ユニット10A乃至10Dを備えており、該伸縮ユニット10A乃至10Dを連続して駆動させることにより管路5内を推進する機構である。なお、具体的な推進方法については後述する。
【0019】
図1,図2に示すように、コネクトチューブ13A乃至13Cの外周面には、弾性体よりなる流体噴射カバー30A乃至30Cが周囲を覆うように被着される。なお、コネクトチューブ13A乃至13C及び流体噴射カバー30A乃至30Cの構成は同一構成であるので、図2においてはコネクトチューブ13A及び流体噴射カバー30Aを代表として図示している。流体噴射カバー30A乃至30Cは、コネクトチューブ13A乃至13Cと同様に、両端開口の管状体であって、通常時においては、その弾性力によりコネクトチューブ13A乃至13Cの外周面に略密着した状態で被着される。
【0020】
流体噴射カバー30Aは、第2フランジ16Bの溝部19を基端として前方に位置する第1フランジ16Aの後端部まで延長する。第2フランジ16Bの溝部19に位置する流体噴射カバー30Aの基端部(後端部)は、接着材等の固定手段により、第2フランジ16Bの溝部19の表面と強固に結合される。一方、流体噴射カバー30Aの自由端部(前端部)は、後端部とは異なり、固定手段を介することなく弾性力のみによって第1フランジ16Aの後端部と略密着した状態とされる。
【0021】
流体噴射カバー30Bは、第4フランジ16Dの溝部19を基端として前方に位置する第3フランジ16Cの後端部まで延長する。上記流体噴射カバー30Aと同様に、第4フランジ16Dの溝部19に位置する流体噴射カバー30Bの基端部は、第4フランジ16Dの溝部19の表面と強固に結合される。一方で、流体噴射カバー30Bの自由端部(前端部)は、固定手段を介することなく弾性力のみによって第3フランジ16Cの後端部と略密着した状態とされる。流体噴射カバー30Cについても同様に、基端部が第6フランジ16Fの溝部19の表面と強固に結合され、自由端部が弾性力によって第5フランジ16Eの後端部と略密着した状態とされる。
なお、各流体噴射カバー30A乃至30Cの自由端部については必ずしも密着した状態とさせる必要はなく、例えば流体噴射カバー30A乃至30Cの基端部から自由端部に亘る周面をテーパ状として、空気が噴射される角度を自在に調整することも可能である。
【0022】
コネクトチューブ13A乃至13Cの外周面に流体噴射カバー30A乃至30Cが設けられたことにより、推進機構10の周囲に存在する管路5の内壁面5Aに向けて流体を供給可能な流体供給装置が構成される。つまり、図2に示すように、本実施形態に係る流体供給装置は、複数の駆動ユニット10A;10B間に設けられたコネクトチューブ13A(13B;13C)、コネクトチューブ13A内に挿通される噴射用エアチューブ20A(20B;20C)、及び、コネクトチューブ13Aの外周面上を覆う流体噴射カバー30A(30B;30C)とを備え、噴射用エアチューブ20Aを介して外部から供給される空気等の流体は、コネクトチューブ13Aに開設された供給孔14を介してコネクトチューブ13Aの外部に流出する。さらに、供給孔14からコネクトチューブ13Aの外部に流出した流体は、コネクトチューブ13Aの外周面及び流体噴射カバー30Aの内周面により形成された流体供給路26を経由して流体噴射カバー30Aの自由端部側より噴射される。
【0023】
つまり、流体の流出方向は、流体噴射カバー30Aの基端部が溝部19の位置において強固に結合されていることにより、流体噴射カバー30Aの自由端側に向かう方向に限定されるため、図2(b)の矢印に示すように、流体供給路26を自由端側に向かって流出する流体は、流体噴射カバー30Aの自由端部を開け広げて開放し、コネクトチューブ13Aよりも前方に存在する管路5の内壁面5Aに向けて噴射される。
このように、流体噴射カバー30Aの基端部を空気の圧力によって開放不能に設け、自由端部を空気の圧力によって開放可能に設けたことにより、自由端部の向きにより空気が噴射される方向(進行方向側又は進行方向逆側)を自在に調整することが可能となる。
【0024】
図2(b)に示すように、流体噴射カバー30Aの自由端側から前方に向けて噴射された流体は、コネクトチューブ13Aの前方に位置する伸縮ユニット10Aを構成する伸縮体25Aの外周面に纏わり付く管路5の内壁面5Aを拡径させるように作用し、内壁面5Aを伸縮体25Aから離間させる方向に押し拡げる。このように、流体供給装置により、内壁面5Aに向けて空気を噴射することによって、推進機構10の円滑な推進を阻害する摩擦力が作用することを効果的に低減することが可能となる。
【0025】
以下、図3を参照して上記流体供給装置が組み込まれた推進機構10の推進方法の一例について説明する。
図3は、推進機構10が備える複数の駆動部としての伸縮ユニット10A乃至10Dの動作及び流体供給装置の動作を示す模式図である。同図に示すように、伸縮ユニット10A乃至10Dを構成する駆動用エアチューブ15A乃至15Dは、制御装置100内に設置されたエアコンプレッサ101と供給バルブ102A乃至102D及び開放バルブ103A乃至103Dを介して接続されている。また、流体供給装置を構成する噴射用エアチューブ20A乃至20Cは、エアコンプレッサ101と供給バルブ104A乃至104Cを介して接続されている。
制御装置100は、図外のキーボード等の入力手段、CPU等の演算手段、ROM,RAM等の記憶手段、及び上述の供給バルブ102A乃至102D、開放バルブ103A乃至103D及び供給バルブ104A乃至104Cに制御信号を出力可能な出力手段を備えており、ROM内に格納された制御プログラムに従って、推進機構10の複数の駆動部を構成する伸縮ユニット10A乃至10Dの動作タイミング、及び、流体供給装置の噴射動作のタイミングを制御する。
【0026】
図3(a)に示すように、推進機構10の管路5内における推進は、制御装置100が各伸縮ユニット10A乃至10Dに空気が供給されていない初期状態から、供給バルブ102Aを開放状態とし、エアコンプレッサ101からの空気を駆動用エアチューブ15Aを介して第1の伸縮ユニット10Aに送り込む。第1の伸縮ユニット10A内に空気が送り込まれると、空気は第1フランジ16Aに形成された接続口17を経由してチャンバー27A内に流れ込む。空気がチャンバー27A内に流れ込むと、伸縮ユニット10Aを構成する伸縮体25Aは、複数の繊維により軸方向への膨張が拘束されていることにより、径方向外側に拡径するとともに、軸方向に沿って収縮するように膨張する。そして、膨張した伸縮体25Aの外表面は、管路5を径方向外側に拡径しながら内壁面5Aと密着した状態となり、伸縮体25Aと内壁面5Aとの間に推進に必要な摩擦力が生じる。
【0027】
また、制御装置100は、空気の供給から所定時間経過後に密着状態にある伸縮体25A内の空気を放出し、伸長状態に復帰させる。具体的には、開放バルブ103Aを開放状態とし、チャンバー27A内に供給された空気を大気に放出することにより、収縮状態にある伸縮体25Aを徐々に伸長させる。伸縮体25Aが伸長状態に復帰することにより内壁面5Aとの密着状態が解除される。
【0028】
また、図3(a)に示すように、制御装置100は、伸縮体25A内の空気放出時期よりも前又は略同時期に第2の伸縮ユニット10Bを構成する伸縮体25Bの膨張を開始する。具体的には、供給バルブ102Bを開放状態とし、エアコンプレッサ101からの空気を駆動用エアチューブ15Bを介して第2の伸縮ユニット10Bのチャンバー27B内に送り込むことにより、伸縮体25Bを膨張させ、軸方向に収縮させる。伸縮体25Bは、軸方向への収縮に伴って、その外表面が径方向外側に拡径し、図3(b)に示すように、伸縮体25Aと同様に内壁面5Aと密着した状態となる。また、制御装置100は、空気の供給から所定時間経過後に密着状態にある伸縮体25B内の空気を放出し、伸長状態に復帰させる。なお、伸長状態への復帰については、伸縮体25Aについての制御と同様であるので説明を省略する。
【0029】
さらに、図2(b)に特に示すように、制御装置100は、伸縮体25Bの膨張開始に対応(同時期又は膨張開始より僅かに前、或いは、後)して流体供給装置を構成する噴射用エアチューブ20Aに空気を供給し、空気が放出されて伸長動作を開始している伸縮体25Aの方向に向けて流体の一例としての空気を噴射する。具体的には、制御装置100は、供給バルブ104Aを開状態としてエアコンプレッサ101からの空気を噴射用エアチューブ20Aを介して流体供給路26内に送り込む。流体供給路26内に送り込まれた空気は、矢印に示すとおり、流体噴射カバー30Aの自由端部より前方に位置する伸縮体25Aの方向に噴射される。そして、伸縮体25Aの方向に空気が噴射されると、既に空気の放出が開始されて伸長動作の過程にある伸縮体25Aの外表面に纏わり付こうとする管路5の内壁面5Aが、空気の圧力により径方向外側に拡径され、離間した状態となり、伸縮体25Aの外表面に纏わり付くことが阻止される。
【0030】
続いて制御装置100は、図3(b)に示すとおり、伸縮体25Bの空気放出時期よりも前又は略同時期に第3の伸縮ユニット10Cを構成する伸縮体25Cの膨張を開始する。伸縮体25Cの膨張については、前述の伸縮体25A;25Bについての制御と同様であるので、説明を省略する。
【0031】
制御装置100は、伸縮体25Cの膨張開始に対応して流体供給装置を構成する噴射用エアチューブ20Bに空気を供給し、既に空気が放出されて伸長動作を開始している伸縮体25Bの方向に向けて空気を噴射する。
具体的には、制御装置100は、供給バルブ104Bを開状態としてエアコンプレッサ101からの空気を噴射用エアチューブ20Bを介して流体供給路26内に送り込み、空気を流体噴射カバー30Bの自由端部より前方に位置する伸縮体25Bの方向に噴射する。伸縮体25Bの方向に空気が噴射されると、前記同様に、既に空気の放出が開始されて伸長動作の過程にある伸縮体25Bの外表面に纏わり付こうとする管路5の内壁面5Aが、空気の圧力により径方向外側に拡径され、離間した状態となるため、伸縮体25Bの外表面に纏わり付くことが阻止される。
【0032】
以降、図3(c),(d)に示すように、引き続き伸縮体25Cの伸長動作及び伸縮体25Dの収縮動作が連続して繰り返され、図3(d)に示す状態となった後に、図3(a)に示す状態に復帰する。なお、制御装置100は前記同様に伸縮体25Dの膨張開始(収縮動作)に対応して流体供給装置を構成する噴射用エアチューブ20Cに空気を供給し、既に空気が放出されて伸長動作を開始している伸縮体25Cの方向に向けて空気を噴射し、伸縮体25Cの外表面に纏わり付こうとする管路5の内壁面5Aを空気の圧力により径方向外側に拡径し、離間した状態とする。
【0033】
以上説明したとおり、本実施例に係る推進機構10は、駆動部としての伸縮ユニット10A乃至10Dを駆動することにより、より詳細にはチャンバー27A乃至27D内に空気を供給することによって伸縮体25A乃至25Dを径方向外側に膨張させて、その外表面を管路5の内壁面5Aと密着させるとともに、蛇腹構造を有するオーバーチューブ12A乃至12Dを収縮動作させる構成である。
そして、図3に示すように、推進機構10は、複数の伸縮ユニット10A乃至10Dうち、一部の伸縮ユニットを駆動して伸縮体の外表面を内壁面5Aと密着させ、他の伸縮ユニットの伸縮体を非密着状態とする動作を、前方から後方に向かって順次連続して実行するとともに、伸縮ユニットの密着状態から非密着状態への変位又は非密着状態から密着状態への変位に伴って、伸長動作又は収縮動作を連続して繰り返すことにより、管路5内を推進する構成である。推進機構10が密着状態と非密着状態、及び、伸長動作と収縮動作を連続して繰り返すことにより、各伸縮体25A乃至25Dと接する内壁面5Aが前方から後方へ向かって徐々に送出されるので、推進機構10は、相対的に管路5内を一方向に推進することが可能となる。
【0034】
また、推進機構10に適用される流体供給装置は、一部の伸縮ユニットの動作開始に対応して流体の一例としての空気を内壁面5Aに向けて噴射し、密着状態にある一部の伸縮ユニットよりも前方に位置する他の伸縮ユニットに内壁面5Aが纏わり付いた状態となることを確実に阻止できる。換言すれば推進機構10の推進を阻害する要因となる内壁面5Aの纏わり付きに起因する摩擦抵抗を確実に低減でき、内壁面5Aの粘性及び弾性が高い場合や、内壁面5Aに無数のヒダ等が形成されている管路5内を進行する推進機構10の推進動作を安定して実行させることが可能となる。
【0035】
上記実施形態においては、流体供給装置から噴射される空気を密着状態にある伸縮ユニットよりも前方に向けて噴射する構成としたが、後方に向けて空気を噴射する構成とすることも容易に可能である。即ち、流体噴射カバー30A乃至30Cのコネクトチューブ13A乃至13Cに対する取り付け向き、換言すれば基端部と自由端部の向きを変更すれば、密着状態にある伸縮ユニットの後方に向けて空気を噴射することが可能である。
また、流体供給装置の取り付け位置は、上記実施形態に限られるものではなく、例えばキャップ18と伸縮ユニット10Aとの間、或いは、キャップ18よりも前方、さらには伸縮ユニット10Dの後方に設けた構成としてもよい。また、複数の伸縮ユニットの動作パターンは図3の例に限られるものではなく、ROMに格納された動作プログラムによって自在に変更することが可能である。例えば、第1の伸縮ユニット10Aから第4の伸縮ユニット10Dまでを前方から順に駆動して、全ての伸縮ユニットを密着状態かつ収縮状態とした後に、第4の伸縮ユニット10Dを除く第1の伸縮ユニット10A乃至第3の伸縮ユニット10Cから空気を放出して、第1の伸縮ユニット10A乃至第3の伸縮ユニット10Cまでを同時に非密着状態かつ伸長状態とするパターンや、全ての伸縮ユニットを密着状態かつ収縮状態とした後に、第1の伸縮ユニット10A乃至第3の伸縮ユニット10Cまでを順に非密着状態かつ伸長状態とするパターン等が挙げられる。
【0036】
また、上記実施形態においては、複数の伸縮ユニット10A乃至10Dを駆動することにより、管路5の内壁面5Aとの間に生じる摩擦力により、管路5に対して相対的に一方向に推進させる例を示したが、推進機構10の適用法は、これに限られるものではない。例えば、推進機構10内に挿通された内視鏡等のケーブルを管路5の外部において推進不能に保持すれば、推進機構10に対して管路5を相対的に管路5の外部方向に手繰る動作を実行させることも可能である。当該動作は、例えば、S状結腸や横行結腸等、下方に弛んだ部位を通過させる際に有効な動作であり、推進機構10を上記結腸の入り口まで推進させた後に推進機構10を推進不能に保持して下方に弛んだ結腸を外部方向に手繰り寄せることにより、推進機構10に対して結腸を構成する内壁面5Aを通過させることが可能となる。
【0037】
以下、図4を参照して、他の形態に係る推進方法、及び、流体供給装置を好適に適用可能な他の形態に係る推進機構80について説明する。図4は、推進機構80を示す概略断面図である。同図において上記実施形態と同一の構成については同一符号を用い、場合によってその説明を省略する。
【0038】
同図に示すように、本実施形態に係る推進機構80は、内視鏡等の装置を挿入可能な内部空間を有する機構本体部50と、内部に機構本体部50を収容可能なキャビティを有し、機構本体部50によって駆動される駆動部としての袋体60、及び、機構本体部50内に組み込まれた流体供給装置を構成する挿管チューブ70、挿管チューブ70内に挿通された噴射用エアチューブ20A;20B、及び、噴射用エアチューブ20Aの外周面を覆う流体噴射カバー30Aを備える。
【0039】
機構本体部50は、両端が開口した中空の円筒体であって、内壁面51によって形成された管状の内部空間内に、図外の内視鏡等の挿入ケーブル、及び、噴射用エアチューブ20Aが収容された挿管チューブ70が挿入される。また、内壁面51及び外壁面52との間に形成された中空部50A内には、内壁面51の円周上を回転自在に嵌入された回転軸部55が設けられる。回転軸部55は、内壁面51よりも僅かに大径な内径を有する筒状体であって、機構本体部50の内壁面51と例えば図外の軸受けを介して回転自在に接続される。回転軸部55の後方には図外のモーター等の駆動源が設けられ、回転軸部55が伝達機構を介して駆動源によって回転動作される。
【0040】
回転軸部55の中央部には、軸方向に沿って延在するウォームギア部55Aが形成される。当該ウォームギア部55Aの歯車は、外壁面52側に配設された駆動ローラー52Aの周囲に形成された歯車とかみ合った状態とされ、回転軸部55の回転動作によってウォームギア部55Aと噛み合う駆動ローラー52Aが一方向に回転する。また、外壁面52には、上記駆動ローラー52Aの他、進行方向前方に配設された従動ローラー52B、進行方向後方に配設された従動ローラー52Cが図外の軸受けを介して配設されており、駆動ローラー52A及び各従動ローラー52B;52Cが、後述する袋体60の外表面60Bと圧接し、袋体60を一方向に回転動作させる。
【0041】
機構本体部50の内壁面51によって形成された管状の内部空間内に挿入される挿管チューブ70は、前述の実施形態におけるコネクトチューブ13A乃至13Cに相当する部材であって、両端開口の管状体である。なお、本実施形態における挿管チューブ70には蛇腹構造を採用する必要はない。挿管チューブ70は、内壁面51によって形成された管状の内部空間の延長方向に沿って延在し、その先端部70Aが機構本体部50の先端部よりも前方側に露出する。また、後端部70Bについても同様に機構本体部50の後端部より後方側に露出する。挿管チューブ70における機構本体部50の先端部よりも前方側及び後方側に露出する先端部70A及び後端部70Bには、外部と連通する供給孔14が開設される。また、供給孔14と対応する位置には、上記実施形態と同様の構成を備えた流体噴射カバー30A;30Bが設けられる。流体噴射カバー30Aは、挿管チューブ70の外周面上において、その後端部が基端部として強固に結合され、その前端部が自由端部として弾性力によって挿管チューブ70と密着している。よって、供給孔14に接続された噴射用エアチューブ20Aを介して空気が供給された場合、当該空気は流体噴射カバー30Aの自由端部を開放し、前方側に噴射される。
【0042】
流体噴射カバー30Bは、挿管チューブ70の外周面上において、その前端部が基端部として強固に結合され、その後端部が自由端部として弾性力によって挿管チューブ70と密着している。よって、供給孔14に接続された噴射用エアチューブ20Bを介して空気が供給された場合、当該空気は流体噴射カバー30Bの自由端部より後方側に噴射される。流体噴射カバー30A又は流体噴射カバー30Bのいずれから空気が噴射されるかは、推進機構80の進行方向によって異なる。例えば、進行方向が図の矢印で示す方向である場合には、流体噴射カバー30Bから進行方向の逆側、即ち、図示の後方側へ向かって空気が噴射される。
一方、進行方向が矢印で示す方向と逆方向である場合は、流体噴射カバー30Aから進行方向の逆側、即ち、図示の前方側へ向かって空気が噴射される。このように、流体噴射カバー30A;30Bから推進機構80の進行方向逆側に向けて空気を噴射することにより、後述の駆動部としての袋体60の動作を妨げる内壁面5Aの纏わり付きを効果的に防止することが可能となる。なお、噴射用エアチューブ20A;20Bの後端部は、前述の実施形態と同様に図外のエアコンプレッサと供給バルブを介して接続されており、制御装置の処理によって噴射のタイミングや方向が適宜制御される。また、挿管チューブ70内には、噴射用エアチューブ20A;20Bの他図外の内視鏡等の挿入ケーブルが挿通されており、挿入ケーブルの先端部は、挿管チューブ70の先端部70Aより前方側に露出し、内壁面5Aの様子をモニターすることが可能である。
【0043】
次に、管路5の内壁面5Aと密着する駆動部としての袋体60の構造について説明する。袋体60は、管路5の延長方向に沿って扁平した中空の円筒体であって、気密空間62内に例えば生理食塩水やジェル状の流体が封入されている。袋体60の気密空間62内には、袋体60の内表面60Aを円周方向に囲繞するように設けられたローラー保持管64が設けられる。ローラー保持管64は、円周方向に沿って複数の従動ローラー66A乃至66Dを有する管状体である。
【0044】
従動ローラー66Aは、袋体60の最前部に設けられたローラーであって、外周面が、袋体60の内表面60Aを挟んで前述の従動ローラー52Bと対向する。従動ローラー66Bは、袋体60の最後部に設けられたローラーであって、袋体60の内表面60Aを挟んで前述の従動ローラー52Cと対向する。一対の従動ローラー66C;66Dは、ローラー保持管64の中央付近において所定の間隔を以って配設されるローラーである。従動ローラー66C;66Dは、前述の駆動ローラー52Aを前後方向から挟み込むように配設され、袋体60の内表面60Aを挟んで駆動ローラー52Aと対向する。つまり、袋体60の内表面60A及び外表面60Bは、互いに対向する駆動ローラー52A、各従動ローラー52B;52C及び66A乃至66Dによって挟み込まれた状態で圧接しており、回転軸部55の回転によって駆動ローラー52Aが一方向に回転すると、袋体60は、例えば矢印で示す方向に回転動作する。
【0045】
つまり、本実施形態における推進機構80は、駆動部としての袋体60が一方向に向かって回転動作することによって、管路5内を一方向に進行可能な機構であって、より詳細には、袋体60の外表面60Bが仮想線で示す一部の区間(密着区間)において管路5の内壁面5Aと密着した状態で対向することにより推進に必要な摩擦力を得るとともに、その他の区間(非密着区間)において内壁面5Aとの密着が解除されて非密着状態となり、当該外表面60Bの密着状態と非密着状態とを繰り返すことにより管路5内を進行する機構である。
【0046】
以下、推進機構80の推進方法について説明する。例えば、図4(a)に示す推進機構80の袋体60が、矢印方向に回転中であり、管路5内を矢印で示す一方向に進行しているとすると、挿管チューブ70の外周面に設けられた流体噴射カバー30Bの自由端部から、密着状態にある袋体60の外表面60Bの後方に向けて連続的又は断続的に空気が噴射される。密着状態にある外表面60Bの後方に向けて空気が噴射されると、密着状態にある外表面60Bよりも後方に存在する内壁面5Aは、空気の圧力により径方向外側に拡径し、外表面60Bから離間した状態となり、内壁面5Aの巻き込みが確実に防止される。
【0047】
つまり、図4(b)の仮想線に示すように、進行方向逆側における袋体60の外表面60B、より詳細には内壁面5Aとの密着状態が解除されるべき仮想線で示す反転区間においては、その粘性によって内壁面5Aが纏わり付き、内壁面5Aが、機構本体部50側に反転しようとする外表面60Bの動きに追従して機構本体部50側に巻き込まれた状態となり易く、袋体60の回転動作に対して推進機構80の進行方向と逆方向の負荷が加わることとなり、円滑な推進が阻害される。しかしながら、上述のように推進機構80の進行に際して、進行方向逆方向側、より詳細には密着状態にある外表面60Bよりも後方に向けて空気を噴射すれば、反転区間において巻き込まれようとする内壁面5Aを外表面60Bから確実に離間させることが可能となり、密着区間以外の反転区間を含む非密着区間において、内壁面5Aが纏わり付き、円滑な推進を阻害する内壁面5Aの巻き込みが生じることを確実に防止できる。なお、推進機構80が矢印方向とは逆方向に推進する場合においては、流体噴射カバー30Aの自由端部から空気を噴射すればよいことは言うまでもない。
【0048】
以上複数の実施形態を通じて説明した推進機構の推進方法、及び、当該方法において好適に採用できる流体供給装置によれば、推進対象となる管路の壁面の粘性や弾性が高い場合であっても推進機構の円滑な進行を妨げる不要な摩擦力や巻き込みを確実に低減、或いは、防止することができ、管路に挿入される内視鏡などの推進を極めて効率的に行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0049】
10;80 推進機構、10A〜10D 伸縮ユニット、
12A〜12D オーバーチューブ、13A〜13C コネクトチューブ、
15A〜15D 駆動用エアチューブ、16A〜16G 第1フランジ〜第7フランジ、
18 キャップ、20A〜20C 噴射用エアチューブ、25A〜25D 伸縮体、
27A〜27D チャンバー、30A〜30C 流体噴射カバー、
50 機構本体部、52A 駆動ローラー、55 回転軸部、60 袋体、
70 挿管チューブ、100 制御装置、101 エアコンプレッサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動体の一部を管路の内壁面と密着状態とし、他部を非密着状態とし、両状態を繰り返して管路内を一方向に進行する推進機構の推進方法であって、密着状態にある駆動体の一部よりも進行方向側又は進行方向逆側の内壁面に向けて流体を噴射することを特徴とする推進方法。
【請求項2】
前記駆動体が管路の半径方向外側に膨張する伸縮体であって、当該伸縮体の膨張開始とともに、該膨張を開始した伸縮体よりも進行方向側又は進行方向逆側の内壁面に向けて流体を噴射することを特徴とする請求項1記載の推進方法。
【請求項3】
前記駆動体が管路の延長方向に沿って回転する袋体であって、当該袋体の回転中に袋体よりも進行方向逆側の内壁面に向けて流体を噴射することを特徴とする請求項1記載の推進方法。
【請求項4】
駆動体の一部を管路の内壁面と密着状態とし、他部を非密着状態とし、両状態を繰り返して管路内を一方向に進行する推進機構に搭載される流体供給装置であって、
管状体と、
当該管状体内に挿通され、一端部が前記管状体の周面に形成された供給孔と接続されるチューブと、
前記チューブの他端部と接続され、チューブ内に流体を供給する流体供給源と、
前記管状体の外周面における前記供給孔と対応する位置に被着された流体噴射カバーとを備え、
前記流体噴射カバーにおける前記推進機構の進行方向側又は進行方向逆側の端部が前記チューブ内に供給された流体の圧力により開放可能に被着されたことを特徴とする流体供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−52188(P2013−52188A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−194070(P2011−194070)
【出願日】平成23年9月6日(2011.9.6)
【出願人】(599011687)学校法人 中央大学 (110)
【Fターム(参考)】