説明

節水コマ

【課題】水道の使用ニーズ等に合わせて吐出水量を簡便に調整し、個々の水使用環境に最適化可能な節水コマを提供する。
【解決手段】水流方向に断面積が徐々に狭められた流路を内部に有する管部材と、該管部材内に配置され、前記管部材の流路の内面形状に対応して水流方向に横断面積が徐々に狭められたノズル部を有し、該ノズル部の外面と前記管部材の流路内面との間に断面積が制御された水流路を形成することにより水量を絞ることが可能な絞り部材とを備えた節水コマであって、前記管部材と前記絞り部材との間に、前記管部材に対する前記絞り部材の前記水流方向における相対位置を変更可能な係合機構を設け、該係合機構による前記相対位置の変更により、前記水量の絞り量を変更可能に構成したことを特徴とする節水コマ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水道の蛇口、トイレのフラッシュバルブ、浴室のシャワー等に取り付けることにより、吐出水量を抑制し、節水作用を発揮する節水コマに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、水道使用量を低減し、水道コストを軽減するために、水道の蛇口等に節水コマを取り付けることが行われている。例えば、特許文献1に記載されるような、貫通孔が穿孔された偏平な円柱状の節水コマや、特許文献2に記載されるような、節水コマを蛇口に取り付けるための取付カバーを備えた節水コマ構造などが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−95985号公報
【特許文献2】特開2007−162400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の節水コマにおいては、吐出水量を抑制することはできても、基本的には、吐出水量を画一的に抑制して節水を実現しているだけであった。本来、蛇口等の吐出水量としては、水使用環境に合わせて最適な量が存在するはずのものであるが、従来の節水コマを用いて、簡便に吐出水量を調整することはできなかった。
【0005】
そこで本発明の課題は、このような現状に鑑み、水道の使用ニーズ等に合わせて吐出水量を簡便に調整し、個々の水使用環境に最適化可能な節水コマを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る節水コマは、水流方向に断面積が徐々に狭められた流路を内部に有する管部材と、該管部材内に配置され、前記管部材の流路の内面形状に対応して水流方向に横断面積が徐々に狭められたノズル部を有し、該ノズル部の外面と前記管部材の流路内面との間に断面積が制御された水流路を形成することにより水量を絞ることが可能な絞り部材とを備えた節水コマであって、前記管部材と前記絞り部材との間に、前記管部材に対する前記絞り部材の前記水流方向における相対位置を変更可能な係合機構を設け、該係合機構による前記相対位置の変更により、前記水量の絞り量を変更可能に構成したことを特徴とするものからなる。
【0007】
上記のように、本発明に係る節水コマには、管部材に対する絞り部材の水流方向における相対位置を変更可能な係合機構が設けられているので、該係合機構を用いて絞り部材の水流方向における相対位置を変更することによって、容易に水量の絞り量を変更することが可能となっている。
【0008】
本発明に係る節水コマにおいては、前記ノズル部の外面と前記管部材の流路内面が錐面に形成されていることが好ましい。たとえば、ノズル部の外面を円錐面に形成し、該円錐面に対向するように、管部材の流路内面をテーパ状に形成することができる。このように、ノズル部の外面と管部材の流路内面が錐面に形成されることにより、絞り部材の相対位置と絞り量の相関関係が単純化され、所望の絞り量を実現するための係合機構の設計が容易となる。
【0009】
本発明に係る節水コマにおいて、前記係合機構が、前記管部材側に形成され、前記水流方向における深さが互いに異なる、前記管部材周方向に複数配置された溝と、前記絞り部材側に設けられ、前記複数の溝のうち選択された溝内に嵌合されて前記相対位置を決める翼部とによって構成されていることが好ましい。このように、本発明の節水コマにおいては、絞り部材の相対位置が、上記翼部が上記複数の溝のうち選択された溝内に嵌合されることにより決定され、このようにして決定された上記相対位置に対応する絞り量が実現される。すなわち、翼部が溝内に嵌合される際に、予め設定された絞り量に対応する溝を選択するだけで、所望の絞り量が得られることになる。
【0010】
また、本発明の節水コマにおいて、前記複数の溝は、同一の深さの複数の溝の複数組からなり、前記翼部は、同一の深さの複数の溝に同時に嵌合されることが好ましい。例えば、上記複数の溝が、管部材の周方向に互いに120度の角度をなす同一の深さの3つの溝の5組からなり、上記翼部が、管部材の周方向に互いに120度の角度をなす3つの翼から形成されることにより、翼部を形成する3つの翼が、同一の深さの3つの溝に同時に嵌合可能となる。このように、同一の深さの溝の個数が3以上である場合には、翼部の溝への嵌合状態が安定し、水流が激しいような場合にも、翼部が管部材の内部で振動して溝から脱落するようなことが防止される。
【0011】
さらに、前記管部材には、前記複数の溝に対応した位置に、前記水量の絞り量に対応した目盛または符号が付されていることが好ましい。例えば、目盛または符号を、非水溶性の塗料もしくは立体形状、またはそれらの両方によって付することにより、節水コマを長期間使用した後においても目盛または符号が視認しやすくなり、絞り量を再設定する作業が容易化する。
【0012】
本発明に係る節水コマにおいて、前記水流方向が、鉛直方向下方に向けて設定されることが好ましい。水流方向が鉛直下方に設定されることにより、上記係合機構を介して、管部材と絞り部材とが安定して係合可能となる。とくに、前記係合機構が、前記管部材側に形成され、前記水流方向における深さが互いに異なる、前記管部材周方向に複数配置された溝と、前記絞り部材側に設けられ、前記複数の溝のうち選択された溝内に嵌合されて前記相対位置を決める翼部とによって構成されている場合には、溝内に嵌合された翼部の嵌合状態が解除されにくくなる。
【0013】
また、本発明に係る節水コマにおいて、前記管部材は、前記断面積が徐々に狭められた流路の下流側に、水流方向に断面積が一定または徐々に拡大する流路を有することが好ましい。部材の下流側に、水流方向に断面積が一定または徐々に拡大する流路が設けられることにより、管部材の上流側において水流を絞られた水が、管部材の下流側に設けられた上記流路を流れることによって、水の使用箇所における水勢の緩和が可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る節水コマは、水道の蛇口、トイレのフラッシュバルブ、浴室のシャワー等に設置されることにより、吐出水量の絞り量の簡便な調整が実現可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施態様に係る節水コマを構成する管部材を示す図である。
【図2】本発明の一実施態様に係る節水コマを構成する絞り部材を示す図である。
【図3】図1の管部材と図2の絞り部材を組み合わせた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明の望ましい実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施態様に係る節水コマを構成する管部材1を示しており、(A)は平面図、(B)は正面図、(C)は底面図である。管部材1の上流側(蛇口側)には、水流方向に断面積が徐々に狭められた流路7の内面を形成する円錐面2が形成されている。円錐面2には、同一の深さの3つの溝の5組からなる溝3が形成され、絞り部材との係合機構の一部を構成している。
【0017】
管部材1の最上流側には、溝3のうち最も深さの大きい溝に対応する位置に三角形の符号4が刻印されており、溝3のうち最も深さの小さい溝に対応する位置には円形の符号5が刻印されている。このような符号4、5が管部材1に付されることにより、節水コマの絞り量を調整する際の作業性の向上が図られている。
【0018】
管部材1の下流側には、円錐面6が、水流方向に流路7の断面積が徐々に拡大するように形成されている。管部材1を介して蛇口から吐出される水流は、円錐面6によって水勢が緩和されるので、水の使用点における水はね等を防止することができる。
【0019】
図2は、本発明の一実施態様に係る節水コマを構成する絞り部材11を示しており、(A)は平面図、(B)は正面図、(C)は底面図である。絞り部材11は、先端が丸みを帯びた部分円錐体からなるノズル部12と、相互に120度の角度をなすように、放射状に配置された3つの翼からなる翼部13とで構成されている。ノズル部12と翼部13とは、別体に形成した部材を接合してもよいが、一体成形することが好ましい。
【0020】
図3は、図1の管部材と図2の絞り部材を組み合わせた状態を示しており、(A)は平面図、(B)は正面図、(C)は底面図である。図3の(A)〜(C)においては、管部材1は、水道の蛇口等(図示略)の内部にねじ込み等によって固定されており、絞り部材11の翼部13が、符号4に対応して配置された溝、すなわち、管部材1の溝3のうち最も深さの大きい溝内に嵌め合わせられている。このように、図3においては、図1の管部材と図2の絞り部材を組み合わせることにより、節水コマの絞り量が最大となるように設定されている。
【0021】
また、図3の下方は鉛直下方を示しており、水道の蛇口等に固定された管部材1は、絞り部材11に働く重力および絞り部材11が水流から受ける抵抗力の双方を支えている。このように、絞り部材11の変位は、鉛直方向においては管部材1との係合によって規制され、水平方向においては溝3との嵌合によって規制されており、水の使用時においても、絞り部材11は所定の位置に保持されている。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明に係る節水コマを、水道の蛇口、トイレのフラッシュバルブ、浴室のシャワー等に取り付けることにより、吐出水量を抑制して節水することが可能となり、水道使用コストの低減等が実現される。
【符号の説明】
【0023】
1 管部材
2、6 円錐面
3 溝
4、5 符号
7 流路
11 絞り部材
12 ノズル部
13 翼部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水流方向に断面積が徐々に狭められた流路を内部に有する管部材と、該管部材内に配置され、前記管部材の流路の内面形状に対応して水流方向に横断面積が徐々に狭められたノズル部を有し、該ノズル部の外面と前記管部材の流路内面との間に断面積が制御された水流路を形成することにより水量を絞ることが可能な絞り部材とを備えた節水コマであって、前記管部材と前記絞り部材との間に、前記管部材に対する前記絞り部材の前記水流方向における相対位置を変更可能な係合機構を設け、該係合機構による前記相対位置の変更により、前記水量の絞り量を変更可能に構成したことを特徴とする節水コマ。
【請求項2】
前記ノズル部の外面と前記管部材の流路内面が錐面に形成されている、請求項1に記載の節水コマ。
【請求項3】
前記係合機構が、前記管部材側に形成され、前記水流方向における深さが互いに異なる、前記管部材周方向に複数配置された溝と、前記絞り部材側に設けられ、前記複数の溝のうち選択された溝内に嵌合されて前記相対位置を決める翼部とによって構成されている、請求項1または2に記載の節水コマ。
【請求項4】
前記複数の溝は、同一の深さの複数の溝の複数組からなり、前記翼部は、同一の深さの複数の溝に同時に嵌合される、前記水流方向に同一の長さを有する複数の翼からなる、請求項3に記載の節水コマ。
【請求項5】
前記管部材には、前記複数の溝に対応した位置に、前記水量の絞り量に対応した目盛または符号が付されている、請求項3または4に記載の節水コマ。
【請求項6】
前記水流方向が、鉛直方向下方に向けて設定される、請求項1〜5のいずれかに記載の節水コマ。
【請求項7】
前記管部材は、前記断面積が徐々に狭められた流路の下流側に、水流方向に断面積が一定または徐々に拡大する流路を有する、請求項1〜6のいずれかに記載の節水コマ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−242371(P2010−242371A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−92073(P2009−92073)
【出願日】平成21年4月6日(2009.4.6)
【出願人】(300071731)株式会社ヴィクトリー (8)
【出願人】(594023744)荒川金属株式会社 (8)
【Fターム(参考)】