説明

簡易チェックゲート

【課題】既設あるいは新設の水路内に配置して、簡易な構成で製作費を廉価にするとともに、維持管理費も廉価にできる簡易チェックゲートを提供すること。
【解決手段】チェックゲート10は、水路1に水平方向に配設する回転軸12と、回転軸12に支持されて回転可能なゲート本体11を備えて構成する。ゲート本体11は、ゲート本体11を第1の位置P1にあるときに、水路底部1a側に延設する第1のアーム部111と水路表面1b側に延設する第2のアーム部112とを備えている。第1のアーム部111の長さを第2のアーム部112の長さの略半分の長さに形成して、ゲート本体11を略垂直方向に傾けた状態で、第1のアーム部111にかかる水圧PLと第2のアーム部112にかかる水圧PUとを略同一にする。ゲート本体11を第1の位置にあるときに、第1のアーム部111の先端と水路底部1aとの間に隙間Sを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水路内に配置されて水流を堰上げしたり水流を開放したりする簡易チェックゲートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から建設された農業水利施設は、その耐用年数を経過して老朽化が進み、また周辺環境の変化により改修が進められている。しかし部分的な管水路化や水路粗度の改善等によって水路の水位が低下し従前の分水機能が得られない等の問題が生じている地区がある。水路の分水位を保持するため、これまでにも、各種のチェックゲートが開発されてきた。しかしこれ等のチェックゲートは、昇降式ゲートであれ、回転式ゲートであれ、門柱や戸当りまたは水密板等を有し、その規模が大きく複雑に構成されていたから、開閉機器の保守管理対策や将来の塗装等に要する費用が大きくなって受益者の管理コストを膨らませる要素が多く農業経営を圧迫することになっていた。そのため、安価で維持管理がし易い簡易な構成のチェックゲートが要望されていた。
【0003】
特許文献1に示す回転ゲートは、これ等の課題を解決するために発明されたもので、回転ゲートは、上下方向に配置される回転軸に回転可能な扉体を備えている。扉体は回転軸を中心に回転されて、水流に対して直交する位置にあるときに水流が堰上げられ、直交する位置から回転することによって水流が開放されて、下流に向かって流れることになる。これによって、門柱を削除した安価なゲートとして提供されていた。
【0004】
また、図6に示す回転ゲート20は、ゲート本体21とゲート支持アーム22を介して回転軸23とを連結するように配置したものであり、回転軸23を中心にして回転するゲート本体21は、水流に対して上下方向に回転するように構成されている。このゲート本体21は、下部に半円状部分211と半円状部分211の上部に配置された平板状の羽根部212とを有して形成されている。半円状部分211と羽根部212の側面は、水路側壁27に埋設された戸当り板28と水密状態を維持するために、ゴム部材29が装着されている。
【0005】
また、ゲート本体21が水流を堰上げしている状態、つまり羽根部212が垂直方向に位置している状態では、半円状部分211の下部が、水路底部に配置された敷居金具25に当接している。半円状部分211の下端部に敷居金具25に当接可能な弾性水密部材26が装着されている。つまり、ゲート本体21は、水路底部と水密状態にあり、水路底部からは水流が流れないようにしている。そして、水位が高くなると、羽根部212に作用する水圧が大きくなり、安定バランスを欠いて自動的に回転軸23を中心に回転して羽根部212を水平方向にしてゲート本体21を開放することになる。この回転ゲート20においても、門柱をなくして景観をよくし、簡易な構造で安価に構成できる効果を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−159125公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、水路に設置して分水位を確保するチェックゲートでは、水量が少ない場合には水を堰上げて高くし、水量が多い場合には水を流すようにチェックゲートの位置を設定する必要がある。この際、流れの速い水路では、偏流による波立ちが大きくなることから左右均等な流況となることが望ましい。
【0008】
回転軸に対して、扉体を水平方向に回転する特許文献1のタイプでは、中間開度におけるチェックゲート位置が流水中で斜めに置かれることになるため、左右の流れに偏流が生じることになる。チェックゲートによって生じる偏流は下流で波立ちを大きくすることになる。また、この回転式ゲートでは、水深に比べて幅が広い水路においては、長いアームの片持梁構造となるため、ゲート本体を強度よく設定する必要があることとから、コストを高くすることになっていた。また、この回転ゲートは、水路底部や水路側壁に対して水密構造とするため、構造が複雑で高価な構成となっていた。さらに、この回転ゲートは、水路底部に対して水密性を備えているから、水路底部に溜まった土砂等が堆積して上流側において排土管理作業を増やすこととなっていた。
【0009】
また、図6に示す回転ゲート20は、回転ゲート20が水路側壁27との間で水密性を維持するために、戸当り板28を埋設することから、水路側壁27に戸当り板28を埋設するための大きな工事を施工しなければならない。このため、工事費を大幅に増やすこととなっていた。さらに、ゲート本体21の弾性水密部材26が敷居金具25に当接するから、弾性水密部材26や敷居金具25をも設置しなければならずゲート製作費をさらに高くして、やはり、コストの上昇につながっていた。しかも土砂等の堆積もあり排土管理作業も増やさなければならなかった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の課題を解決するものであり、簡易な構成で安価に構成でき、しかも、ゲート付近で土砂等を堆積しない簡易チェックゲートを提供することを目的とする。
【0011】
このために、本発明に係る簡易チェックゲートは、以下のように構成するものである。すなわち、
請求項1記載の発明では、水路内に配設して、水流に対して回動可能に形成される簡易チェックゲートであって、前記水路に対して前記水路の幅方向に沿って配設される回転軸と、前記回転軸に支持されたゲート本体と、を備え、前記ゲート本体は、前記水流に対して直交する方向に立設して前記水流を堰上げする第1の位置と、前記水流に対して平行する方向に傾倒して前記水流を上流側から下流側に流す第2の位置とを回転可能に配設され、前記第1の位置において、前記回転軸を中心にして、水圧の高くかかる前記ゲート本体の水路底部側の回転モーメントと水圧の低くかかる前記ゲート本体の水路表面側の回転モーメントとが略同一になるように、前記回転軸の位置が、前記ゲート本体の中心位置より前記水路底部側寄りに配設されていることを特徴とするものである。
【0012】
請求項2記載の発明は、請求項1の発明に係るものであって、前記ゲート本体が、前記第1の位置にある際に、前記ゲート本体の下端部と前記水路底部との間に隙間を有して配設されていることを特徴としている。
【0013】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2の発明に係るものであって、前記ゲート本体は、前記第1の位置にある際の前記回転軸から前記水路底部側に向かって延設する第1のアーム部と前記第1のアーム部と反対の方向に向かって延設する第2のアーム部とを備え、前記第1のアーム部が前記第2のアーム部より略半分の長さに形成されていることを特徴としている。
【0014】
請求項4記載の発明は、請求項1,2又は3記載の発明に係るものであって、前記ゲート本体は、水路側壁との間に隙間を有して配設されていることを特徴としている。
【0015】
請求項5記載の発明は、請求項1,2,3又は4の発明に係るものであって、前記ゲート本体は、前記水流の水圧を受ける面又はその反対側の面のいずれか一方の面を平面状に形成し、いずれか他方の面を突状湾曲面に形成していることを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明によれば、ゲート本体は、水平方向に配置された回転軸に対して回転可能に配置されている。また、ゲート本体は、立設して水流を堰上げする第1の位置と、水平方向に回転して水流を流す第2の位置との間を回転移動する。ゲート本体には第1の位置にあるときに、水流の深さによってゲート本体の各部位にかかる水圧が異なる。回転軸をゲート本体の中心より水圧の高くかかる水路底部側に配設することによって、回転軸を中心に回転するゲート本体の回転モーメントのバランスをとる。つまり、ゲート本体が第1の位置にあるとき、ゲート本体の回転軸より下方の水路底部側にある部位は、単位面積あたりの水圧が大きいことから、水圧を受ける面積を少なくし、ゲート本体の回転軸より上方の水路表面側にある部位は、単位面積あたりの水圧が小さいことから、水圧を受ける面積を大きくする。これによって、ゲート本体における回転軸の下方にある水路底部側の水流に沿って回転する回転モーメントと、ゲート本体における回転軸の上方にある水路表面側の水流に沿って回転する回転モーメントとの差を略同一にすることができ、ゲート本体の回転する回転モーメントのバランスをよくすることができる。したがって、ゲート本体の回転時、ゲート本体を回転するトルクを小さくできるから、ゲート本体を人力等の小さい力によって回転することができる。そのため、高価な駆動機構を設けることなく、簡易チェックゲートを安価な費用で製作することができる。
【0017】
また、請求項2記載の発明によれば、ゲート本体が水流を堰上げする第1の位置にあるときに、ゲート本体部の下端と水路底部との間に隙間を形成している。つまり、水流が堰上げされている状態において、土砂等が、ゲート本体の下方において、上流側から下流側に流れることとなって、土砂が簡易チェックゲート前で堆積することがない。したがって、上流側において、排土管理を増やすことがなく維持管理費を少なくして受益者負担を軽減させることができる。さらに、ゲート本体が、水流を堰上げする第1の位置にある状態において、水密を保つために設置する従来の敷居金具25や戸当り板28、あるいは半円状部分211に装着する弾性水密部材26やゴム部材29を設置することがないから、製作費や設置作業も容易で安価な費用で簡易チェックゲートを製作することができる。
【0018】
請求項3記載の発明によれば、ゲート本体は、ゲート本体が水流を堰上げする第1の位置にあるときの、回転軸から水路底部側に向かって延設する第1のアーム部と、第1のアーム部と反対の方向に向かって延設する第2のアーム部とを備えている。そして、第1のアーム部を第2のアーム部の長さの略半分の長さに形成している。これによって、水流が堰上げされた状態では、短い長さの第1のアーム部側には高い水圧を受け、長い長さの第2のアーム部側には低い水圧を受けることになり、水圧を受ける部位のバランスをよくしている。これにより、第1のアーム部が水流に沿って回転する回転モーメントと第2のアーム部が水流に沿って回転する回転モーメントが略同一となる。回転モーメントのバランスをよくすることによって、ゲート本体を開閉する際の回転力を小さくすることができ、例えば、人力で回転軸を回転させても容易に行うことができる。
【0019】
請求項4の発明によれば、この簡易チェックゲートは、上流側の水流を堰上げするためにあるから、ゲート本体は水路側壁との間で水密性を必要とするものではない。そのため、ゲート本体と水路側壁との間に隙間を有して構成されている。したがって、特に既設の水路にチェックゲートを設置する際、ゲート本体を開閉する際に、水密性を維持するための戸当りを水路側壁に埋設する必要はない。そのため、簡易チェックゲートを配設するための施工費を大幅に削減することができる。
【0020】
請求項5の発明によれば、ゲート本体は、水流の水圧を受ける面又はその反対側の面のいずれか一方の面を平面状に形成し、いずれか他方の面を突状湾曲面に形成することによって、ゲート本体の突状湾曲する方向に向く揚力を得ることができる。このことにより、ゲート本体が樹脂材や木材等で形成されて、その重量を軽く形成している場合、あるいは鋼材等で形成されてその重量が重い場合等、その状況に応じて突出する湾曲面の位置を変えることによって、回転軸を中心とする回転モーメントのバランスを調整してゲート本体の揺動を押さえ、また、開閉機の操作動力を小さく調節することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明のチェックゲートを示す全体構成図である
【図2】図1におけるチェックゲートのゲート本体を示す側面断面図である。
【図3】図2における回転軸の詳細を示す一部正面断面図である。
【図4】図3における回転軸の突出端を示す側面図である。
【図5】図1のチェックゲートが正常に作用している状態を示す作用図である。
【図6】従来の回転ゲートを示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明の簡易チェックゲートの実施形態を図面に基づいて説明する。
【0023】
図1は、簡易チェックゲート(以下、単にチェックゲートともいう)10を水路1内に設置した状態を示すものであり、水路1は、上流側(図1における左側)3から、下流側(図1における右側)5に向かって水が流れている。チェックゲート10は、水路1内に設置されている。チェックゲート10は、上流側3の水位を堰上げするために、水路底部1aと水路表面1bとの間に設置されるとともに、水流に対して回転角度Θ傾けて立設した第1の位置P1と、上流側3の水位を堰上げせずに下流側5に流すために水流に対して平行する水平方向に回転させた第2の位置P2との間を、水路の流量に応じ、あるいは堰上げ要求水位高さに応じて回転移動する。この移動させる操作は、チェックゲート10に接続されて、水路側壁1c上に配置された開閉機9において、人力によって行われる。もちろん駆動機構を設けて、電気的に駆動させることもできる。なお、チェックゲート10の上流側3では、受益地へ水を分水するための分水工7が、水路側壁1cに配置されている。
【0024】
チェックゲート10は、図2に示すように、ゲート本体11と回転軸12とを備えて構成されている。ゲート本体11は回転軸12から両側に延設する2つのアーム部を有して形成されている。一方のアーム部は、ゲート本体11が、図1に示すように、第1の位置P1にある状態において、水路底部1a側に向かう第1のアーム部111であり、他方のアーム部は、水路表面1b側に向かう第2のアーム部112として形成されている。ゲート本体11は、第1のアーム部111及び第2のアーム部112とともに、中空状に形成され、周りを鋼板や樹脂板あるいは木板等で形成している。ゲート本体11の幅方向両端部には、図3に示すように、それぞれ突出端13が形成されている。
【0025】
回転軸12は、実施形態では、図3に示すように、第1のアーム部111におけるゲート本体11の幅方向の端部から第2のアーム部112におけるゲート本体11の幅方向に端部まで沿って貫通して形成されるとともに、角型鋼管で形成されて、両側の突出端13が水路側壁1cに支持されている。つまり、水路側壁1cに、チェックゲート10を支持する分だけ無収縮モルタル14を埋設し、その中に軸固定板15をアンカーボルト17で固着し、軸固定板15から固定軸部16を突出して配置させている。
【0026】
一方、図4に示すように、ゲート本体11の両端から突出して配置された回転軸12の突出端13には、一方にスリット131が形成されている。スリット131はゲート本体11が第2の位置に移動したときに下向きになるように形成され、スリット131が下向きの状態で、突出端13のスリット131を固定軸部16に嵌め込みながら挿入して、固定軸部16と突出端13とを嵌合可能に構成している。
【0027】
第1のアーム部111は、水流の下部側に配置されて高い水圧を受けることから、第2のアーム部112より短く形成されている。つまり、回転軸12は、ゲート本体11が、水流に対して略垂直方向に傾けて立設する第1の位置P1にある状態において、ゲート本体11の中心位置より低い位置に配置されている。第1のアーム部111と第2のアーム部112の長さ比は、第2のアーム部112に対して第1のアーム部111が略半分の長さに形成されている。したがって、回転軸12は、ゲート本体11が第1の位置P1にある状態において、ゲート本体11の上方位置から2/3の位置に配置されることとなる。これによって、第1のアーム部111にかかる水圧PLと第2のアーム部112にかかる水圧PUとが略同一となって、ゲート本体11にかかる水圧のバランスをとることになる。
【0028】
実施形態のゲート本体11は、重量の軽い材料で形成され、水路1に立設して配置された際の水路1の上流側面11aを平面状に形成し、下流側面11bを下流側5に突出する湾曲状に形成している。ゲート本体11(第1のアーム部111及び第2のアーム部112)の平面状に形成された部位は、強度の高い板状部材で形成し、湾曲状に形成された部位は、平面状の部位より強度の低い板部材を湾曲させて、水を流れ易くする整流板として形成している。第1のアーム部111と第2のアーム部内には、図3に示すように、第1のアーム部111、第2のアーム部112の空間部を埋めるように、ゲート本体11の幅方向に沿って複数箇所に間隔を有して板部111a(112a)が形成されている。第1のアーム部111と第2のアーム部112の長さ方向の先端面は円弧状に形成されて、水流を流しやすくしている。なお、図3における回転軸12は、第2の位置P2にあるときの断面を示すものであり、二点差線で示した第1のアーム部111又は第2のアーム部112は、ゲート本体11の第1の位置P1にあるときの位置を示している。
【0029】
ゲート本体11は、第1のアーム部111に水圧PLを受けることによって、図1中、ゲート本体11を反時計方向に回転させやすくし、第2のアーム部112に水圧PUを受けることによって、図1中、ゲート本体11を時計方向に回転させやすくしている。第1のアーム部111にかかる水圧PLと第2のアーム部112にかかる水圧PUが略同一であることによって、開閉機9による操作を人力で行ってゲート本体11をいずれかに回転させる際に、小さいトルクで操作することができる。
【0030】
また、ゲート本体11の下流側面11bを湾曲状に形成することによって、水の整流を行うとともに、特にゲート本体11の重量を軽くした場合、つまり樹脂材や木材で形成した場合、ゲート本体11が第2の位置P2にあるときに、ゲート本体11の下流端は、ゲート本体11に作用する揚力がゲート本体11の浮力に打ち勝って、略一定角度に固定されゲート本体11の揺動を少なくしている。
【0031】
この逆に、ゲート本体11が第2の位置P2にあるときに、上面が湾曲面を形成している場合には、ゲート本体11の下流端は揚力と浮力によって持ち上げられることになり、ゲート本体11の回転揺動が激しくなることが実験によって確認されている。この場合には、ゲート本体11が鋼板で形成された鋼製ゲートを含めて、揚力と浮力との合力につり合う巻き上げ機等で水平に維持することが望ましい。
【0032】
また、ゲート本体11の重量を重くした場合、つまり鋼板製のゲート本体11の場合は、ゲート本体11が第2の位置P2にあるときに、ゲート本体11の上面が上方に突出した湾曲面を形成する。つまり、ゲート本体11が第2の位置P2にあるとき、第2のアーム112は、第1のアーム部111より長く形成されているから、第2のアーム部112の自重により、回転軸12を中心に、時計方向に回るモーメントを大きくする。一方、ゲート本体11には、第2のアーム部1を上向きに作用する揚力が働いており、ゲート本体11に反時計方向に回るモーメントが作用している。したがって、ゲート本体11には、大きな時計方向へのモーメントを反時計へのモーメントで軽減することになり、水圧によるモーメントと合わせた合計モーメントを小さくして開閉機9の開閉回転力を小さくすることができる。
【0033】
このチェックゲート10を水路1内に設置する際、ゲート本体11に形成された突出端13を水路側壁1cに配置された固定軸部16に嵌合して水路側壁1cに対して回転可能に取付け、ゲート本体11を水流の流れの方向に対して回転角度Θ傾けて設置する。回転角度Θの最大を略80°に設定する。回転軸12の回転は、駆動機構を設けてもよいが、設備費用を安価にするために、チェックゲート10の突出端13に連結された開閉機9に配置した図示しないレバーを人力で操作する。
【0034】
また、ゲート本体11の第1のアーム部111と水路底部1a面との間に隙間Sを有して配置する。この隙間Sは、土砂等が流れる程度とし、チェックゲート10の上流側3付近に土砂等が堆積することを防止している。
【0035】
次に、チェックゲート10の作用について説明する。
【0036】
図1に示すように、ゲート本体11は、第1の位置P1にあるとき、回転軸12の回りを回転して、水路1の流れる方向に対して回転角度略80°に傾いた状態で設定されている。水路1を最大流量が流下する場合は、回転角度Θを0としても、分水工7からの分水は可能となる。水路1の流量が減少して水位が下がった場合は、分水が不可能となる。この際、チェックゲート10の上流側3では、堰上げられた水を貯留して次第に水位を高くすることになる。つまり、流量が最大流量に比べて非常に少ない場合は、ゲート本体11の回転角度を略80°まで立設させる。水位が、回転角度略80°傾いたゲート本体11の第2のアーム部112より高く維持され、図5に示すように、上流側3の水は第2のアーム部112を越えて、第2のアーム部112の上方から下流側5に流れ落ちる。この状態がチェックゲート10としての正常な状態となる。このような状態であれば、上流側3の表面に浮遊している浮遊物は水とともに下流側5に流れる。チェックゲート10の上流側3で貯留された水は、分水工7から、例えば、個々の田圃に供給される。
【0037】
チェックゲート10には、上流側3の水流により第1のアーム部111に水圧PLがかかり、第2のアーム部112に水圧PUがかかっている。
【0038】
流量が最小流量より多い中間的な流量の場合は、その流量に応じて回転軸12を回転させゲート本体11を回転角度略80°から回転角度0°(第2の位置P2)の範囲で設定して、回転軸12を回転移動し、固定維持する。この回転軸12の回転は、人力によるものでもよく、また駆動機構を介して操作するものであってもよい。回転軸12の回転操作は、ゲート本体11にかかる水圧のうち、第2のアーム部112にかかる水圧PUで押圧されるとともに、第1のアーム部111に加わる水圧PLに対抗する力以上で回転させるだけであるから、人力で操作しても容易に行うことができる。
【0039】
ゲート本体11が第1の位置P1から、これを開放して第2の位置P2に達するまで、上流側3からの水は下流側5に向かって徐々に流れ出し、ゲート本体11が第2の位置P2に達すると、堰上げ状態は解消されて下流側5に向かって流れる。再度堰上げが必要になれば、ゲート本体11を、図5中、反時計方向に回転させ、流量に応じた回転角度の位置で停止させる。
【0040】
上述のように、実施形態のチェックゲート10によれば、回転軸12を、ゲート本体11にかかる水圧のバランスの取れた位置に配置していることから、ゲート本体11の回転操作に要する回転トルクが小さいので、回転軸12を人力で回転操作しても、容易に行うことができる。
【0041】
また、ゲート本体11は、上流側3の水流を堰上げできるようにすることが目的であって、水密性を要求することではないことから、ゲート本体11に係る戸当り板や、敷居金具或いは弾性水密部材を設置することなく、水流に対して回転角度を略80°から回転角度0°の範囲の必要な位置で止めることができる。したがって、従来、回転ゲートを設置する位置の周りの水路側壁1c全体に埋設された戸当り板や水路底部1aに配置されていた敷居金具あるいは回転ゲートに配置されていた弾性水密部材等を設置する費用が削除できて、安価な費用でチェックゲート10を製作できる。
【0042】
さらに、ゲート本体11の水流に対する回転角度80°の位置(第1の位置P1)において、第1のアーム部111の先端部位と水路底部1aとの間に隙間Sを有しているから、水路底部1aに流れた土砂等は、チェックゲート10を潜って下流側5に流れ去ることになる。また、流下浮遊物はチェックゲート10を越えて流下する。そのため、チェックゲート10の上流側3付近に土砂や塵芥等が滞留することがない。したがって、上流側3付近での塵芥除去や排土管理を増やすことがないから、維持管理費も削減できて、受益者の負担が軽減されることになる。
【0043】
さらに、上流側3の堰上げられた水は、第1のアーム部111の下方と、第2のアーム部112の上方の両方から流下することにより、水流の落下や跳水による騒音を小さくすることができる。
【0044】
なお、本発明のチェックゲート10は、上述の形態に限定するものではない。例えば、第1のアーム部111が、第2のアーム部112より短いものであれば、第1のアーム部111を第2のアーム部112の略半分の長さでなくてもよい。
【0045】
また、固定軸部16と突出端13とを逆に形成してもよい。つまり、固定軸部16を角型鋼板で形成して固定軸部16にスリットを形成し、回転軸12の突出端13を円柱状又は円筒状に形成して固定軸部16のスリットに挿入可能として、回転軸12を回転可能に構成してもよい。
【0046】
また、ゲート本体11が第1の位置P1にあるときの、ゲート本体11の上流側面11aを湾曲状に形成し、下流側面11bを平面状に形成してもよい。
【0047】
さらに、第2のアーム部112の先端にワイヤ又はロープあるいは連結棒の一端を装着し、他端を、例えば、巻き上げ機に連結して、ゲート本体11が水平状態の第2の位置P2にあるときに、ゲート本体11の揺動を防止するようにしてもよい。
【0048】
また、ゲート本体11の第1の位置を、水流に対する回転角度Θを80°に設定するのでなく、例えば、90°に設定して、垂直状態にしてもよい。
【符号の説明】
【0049】
1、水路
1a、水路底部
10、チェックゲート
11、ゲート本体
111、第1のアーム部
112、第2のアーム部
12、回転軸
13、突出端
16、固定軸部
P1、第1の位置
P2、第2の位置
PL、水圧
PU、水圧
S、隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水路内に配設して、水流に対して回動可能に形成される簡易チェックゲートであって、
前記水路に対して前記水路の幅方向に沿って配設される回転軸と、前記回転軸に支持されたゲート本体と、を備え、
前記ゲート本体は、前記水流に対して直交する方向に立設して前記水流を堰上げする第1の位置と、前記水流に対して平行する方向に傾倒して前記水流を上流側から下流側に流す第2の位置とを回転可能に配設され、
前記第1の位置において、前記回転軸を中心にして、水圧の高くかかる前記ゲート本体の水路底部側の回転モーメントと水圧の低くかかる前記ゲート本体の水路表面側の回転モーメントとが略同一になるように、前記回転軸の位置が、前記ゲート本体の中心位置より前記水路底部側寄りに配設されていることを特徴とする簡易チェックゲート。
【請求項2】
前記ゲート本体が、前記第1の位置にある際に、前記ゲート本体の下端部と前記水路底部との間に隙間を有して配設されていることを特徴とする請求項1記載の簡易チェックゲート。
【請求項3】
前記ゲート本体は、前記第1の位置にある際の前記回転軸から前記水路底部側に向かって延設する第1のアーム部と前記第1のアーム部と反対の方向に向かって延設する第2のアーム部とを備え、前記第1のアーム部が前記第2のアーム部より略半分の長さに形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の簡易チェックゲート。
【請求項4】
前記ゲート本体は、水路側壁との間に隙間を有して配設されていることを特徴とする請求項1,2又は3記載の簡易チェックゲート。
【請求項5】
前記ゲート本体は、前記水流の水圧を受ける面又はその反対側の面のいずれか一方の面を平面状に形成し、いずれか他方の面を突状湾曲面に形成していることを特徴とする請求項1,2,3又は4記載の簡易チェックゲート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−185183(P2010−185183A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−28644(P2009−28644)
【出願日】平成21年2月10日(2009.2.10)
【出願人】(597142505)NTCコンサルタンツ株式会社 (4)