説明

簡易型濾過器

【課題】フィルタ製の袋体の封止される開口部を袋体の前後の面に止着する支持体の引き出しに伴わせて開放できるようにした簡易型濾過器を提供する。
【解決手段】袋体2の開口部5が設けられる面部2a,2bの上縁部に沿って固定片12を止着し、その一方、支持体3の吊設片7の下端部7aをこの袋体2の面部2a,2bに接着し、且つ該吊設片7若しくは係止片8の上端部7a,8aを切断可能な接続片部14を介して前記固定片12に接続し、使用に当って前記係止片8の下端部8bを引き出す操作によって前記袋体2の開口部5を封止する接合部6を破り、これを開封させると共に、更なる係止片8の引き出しによって前記接続片部14を切断し、支持片3の自由な伸長を許して係止片8をカップ容器に掛け止めセットできるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使い捨てに係る簡易型濾過器に関する。
【背景技術】
【0002】
使い捨てに係る簡易型の濾過器は、レギュラーコーヒーを抽出する濾過器として広く一般に普及しており、これについては様々な形態のものが提案されており、実用化されている。
この使い捨ての簡易型の濾過器(以下、単に「濾過器」という。)は、基本的な構造としてフィルタ製の袋、一般にはプラスチック製乃至紙製のフィルタ、更には不織布からなるフィルタで形成する袋体と、この袋体をコーヒーカップ等の容器に装着し支持する厚紙等のシート状素材によって成形される支持体と、から作られ、中でも最も簡略化した濾過器は、上記袋体の表面に厚紙から打ち抜き形成した支持体を直接止着して形成したものとなっている。
【0003】
この濾過器は、例えばコーヒー用の濾過器の場合、上記フィルタ製の袋体に予め所定量のコーヒー粉末(被抽出物)が封入し、使用する場合には、先ず最初に袋体の上部を切り開いて開口させ、この状態で上記支持体を使ってコーヒーカップ等の容器の縁に掛け止めてセットし、そうした後に前記開放した袋体の開口部から湯を注ぎ込んで袋の内部でコーヒー成分の抽出を行い、抽出したコーヒー液(抽出液)を袋体で濾過しながら直接容器に受けてそのまま飲料することができるものとなっている。
【0004】
この様な簡易型の濾過器にあって、最も簡略化したものの一つに袋体を前後向き合う2面から形成して偏平な袋に作り、この前後の面にそれぞれ支持体を止着して形成したものがある。
この偏平な袋体からなる濾過器の一つは、使用に際して先ずコーヒー粉末を封入した袋体の上端部、つまり前後の面の上部を千切り取って袋を開口させるもので、この開口作業の後に前後の面に止着する支持体を前後方向に引き出し、伸ばしてその先端に設けるそれぞれの係止片をカップ容器の縁に掛け止めて湯の注ぎ込みに備えるようにしたもの、つまり、セットするようにしたものである。これについては、例えば特許文献1や2に記載される濾過器がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−230143号公報。
【特許文献2】特開2010−110335号公報。
【0006】
上記特許文献1に記載の濾過器は、使用に際して先ず袋本体2の上部を千切り取って開封し開口部8を形成し、次に袋本体2の前後の矩形面2a,2b(前後の面)に取付けた掛止部材3,3(支持体)の各係止片12,12を引き出し、この引き出しによって袋本体2の面部2a,2bに止着する貼着部11,11からアーム部5,5を引き起し、この引き起こしによって上記係止片12,12を前後に引き伸ばし、カップ30の縁に掛け止めることによってセットする、ものになっている。
【0007】
また、特許文献2に記載の濾過器は、前記特許文献1に記載の濾過器とその構造を略同様にするものであり、使用に際しては抽出用バッグ2(袋本体)の前後の面に止着する支持シート3(支持体)の先端部12(係止片)を引き出し、これに伴わせて上部境界線13,14を折り曲げて中間部8,9を逆V字型に引き伸ばし、この引き伸ばしによって上記先端部12をカップの縁に掛け止め、支持するようにしてある。
しかし、上記の構造からこの濾過器は、支持シート3の引き伸ばしによって袋本体の開口部を広げることにはなっているが、開口部をどの様にして開封するかについては説明が一切されていない。従って、この濾過器では予め千切る等して開封されることを前提にしたものとなっており、その後の使用操作について説明されたものとなっている。
【0008】
この2つの濾過器は、いずれも袋本体の前後の面に備える支持体(掛止部材、支持シート)をその先端に設ける係止片(先端部)を引き出し、これをカップの縁に掛け止めるようにしたものであり、またこの引き伸ばしによって袋本体の予め開放した開口部をそのまま開放した状態に維持するようにしたものであり、簡単な構造の中でカップ容器に対するセットを可能にし、コーヒーの抽出に使用できるものになっている。
【0009】
しかしながら、上記既提案に係るそれぞれの濾過器は、上記した構造からこれを使用する利用者において、取扱い方を間違えることがあり、損壊する等して使用不能にすることがあった。その原因の一つは、支持体を引き伸ばすことによって袋体が自動的に開封されるものとの思い込みが働くことにより支持体を損傷してしまうことである。
この濾過器は、使用する場合、前後の支持体を前後方向に引き出し、カップの縁に掛け止めることによってセットすることになるが、このことから使用時には支持体を引き出せば、自動的にセット可能な状態になるとの思い込みから、予めして置かなければならない袋体の開封作業がされないまま支持体が引っ張られると言う欠点があったのである。つまり、使用時に行き成り支持体を引き伸ばしてそのままセット作業に入ろうとすることによって開口しない袋体を無理に引っ張り、開封させようとして支持体に過度の負担を掛けて引き千切ってしまう問題があったのである。
【0010】
勿論、予め開口部を開放した状態にして開封作業を要しない濾過器もある。しかし、多くの濾過器は、袋本体内にコーヒー等の被抽出物を予め投入し、これの零れ出しを防ぐ上から袋本体の開口部を封止しているのが普通である。従って、この場合には使用に当って先ず開封作業から行うことになるが、上述した様に利用者は開封作業をしないまま直に支持体を引き出し、セット作業に掛かってしまうことがある。このとき、当然のことながら袋本体は開口部がしっかり封止されて拡張しない状態にあるため、支持体だけが引き伸ばされることになり、結果的に無理な力が厚紙等によって成形された支持体に作用して破損してしまうと言った問題が発生したのである。
【0011】
上述した様に、従来の支持体を引き出しカップ容器の縁に掛け止めることによってセットできる構造の濾過器は、構造そのものが簡素であり、製造性に優れ、また使用勝手の点からも便利なものになっているが、更にこのタイプの濾過器において、上記支持体の引き出しに伴わせて封止される袋体の開口部が自動的に開封されることになれば、上記破損の問題も自動的に解消されることになり、利用者にとって更に使用勝手に優れた便利な濾過器となることは言うまでもない。
【0012】
ことに、支持体の引き出しによって袋体の胴部が拡張し、これに伴って開口部が広く開放されて注湯に便利になることに加え、予め封止される袋体の開口部の開封作業が同時に可能となれば、支持体を引き伸ばす一つの作業によって袋体の開封作業と、カップ容器に対する装着作業が同時に行えることになり、極めて便利なものとなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従って、本発明は上述した従来の濾過器における事情、問題点に鑑み、これを改善すべく開発されたものであり、具体的には濾過器を使用する際にこれをカップ容器にセットするため袋体の前後の面に設ける支持体を前後方向へ引き出す操作を利用して袋体の上部に形成する開口部の封止を破り、これを開封することができるようにした簡易型の濾過器を提供しようとするものである。
更に言えば、支持体の引き伸ばし作業によるカップ容器に対するセット作業を利用して袋体上部に設けられる開口部の開封作業を同時に行い、これによって従来別々にしていた2つの作業を単一化し、使用の迅速化と安全な取り扱いが行えるようにしたコーヒー等の濾過に使われる簡易型の濾過器を提供せんとするものである。
【0014】
前述した様に、袋体に直接支持体を止着し、使用時にこの支持体を引き出すことによってカップに対するセットを行うようにした特許文献1,2に記載の濾過器は、使用する際には支持体を引き出すことになっているが、この引き出しによって袋体の開口部を開放する構造にはなっておらず、開口部の開放には、支持体を引き出すこととは別に予め開封作業をすることによって行うものとしている。
【0015】
従来の濾過器における開封作業は、前記特許文献にも説明されるように、指で袋体の一部を千切り取る等して開封することが行われており、支持体を引き出すことによっては開封することはできないものになっている。つまり、支持体の引き出しについて、前記特許文献1に記載の濾過器では、掛止部材3の掛止片12を引き出したとき、袋本体2の矩形面2a,2bの下部に貼り付く貼着部11を基点にしてアーム部5の上端を外に開いて上記掛止片12との間で逆V字状を作ることによって係止片12をカップの縁に掛け止められる構造になっているが、袋本体2に直接止着する上記アーム部5は、引き出される上端が袋本体から離れてしまうことから上記掛止片12をカップに掛け止めることはできても袋本体の上記矩形面2a,2bを引っ張ることはできず、従って、この構造では袋本体2の開口部8を強制的に開封することはできない。
【0016】
また、特許文献2においてもこのことは同様である。これでは支持シート3の先端部12を引き出したとき、これに続く中間部8は袋本体(バッグ本体)に止着する逆T字形部分7の下端の下部境界線10,11を基点にして上端を外に開き、先端部12を引き出す構造になっていることから前記特許文献1の場合と同様に、先端部12の引き出しが開口部に直接的に作用することがなく、従って開口部を強制的に開封することはできないものとなっている。
【0017】
本発明は、この様な実情に鑑み、袋体の前後の面に一体に止着され、備え付けられる支持体を濾過器の使用に当ってカップ容器に対するセットのため前後に引き出すとき、この支持体の引き出しを利用して袋体の開口部を前後開封方向に引っ張り、これによって封止された開口部を強制的に開封することができるようにしたのである。
つまり、本発明は、濾過器の使用に当たって支持体を前後方向へ引き出す操作に連動させて袋体の前後の面を直接引き離し方向に引き出すことができるようにして、支持体のセット作業に併せて袋体の開口部の開封作業が行えるようにした簡易型濾過器を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、上記の目的を達成するため、フィルタを素材にして形成される袋体の前後の面に止着される支持体について、下端部を袋体に止着し上向きに設けられる吊設片と、この吊設片の上端部から折り返す様に下向きに延設される係止片から構成し、濾過器の使用に当って上記支持体を引き出すとき、この操作において引き出される係止片、若しくはこの係止片の引き出しによって引き出される前記吊設片のいずれか、若しくは双方の上端部を前記袋体の前後の面に対して分離可能な状態に接続したことにある。
【0019】
本発明は、このことによって使用に際して上記係止片を引き出したとき、この引き出しに伴わせて前記袋体の前後の面を引き離し方向に引っ張り、この引っ張りによって袋体の上縁部に設けられる開口部を封止する接合部分を破って開封できるようにしたのである。そして更に、この開封の後更なる上記係止片の引っ張りによって前記吊設片若しくは係止片の上端部と袋体の前後の面との前記接続状態を切断し、これにより前記接続によって拘束した吊設片の引き起こしを可能にし、上記係止片の引き伸ばしを自由にしてカップ容器に対する当該係止片の掛け止めを行えるようにしたことにある。
【0020】
更に詳述すれば、本発明は被抽出物を封入するフィルタ製の袋体と、該袋体の前後の面に止着される支持体とを有し、前記支持体は下端部を前記袋体の前後の面に止着して上端部を引き起こせるようにした吊設片と、該吊設片の上端部から折り返し下向きに延設される係止片とを備え、未使用時には上記両片を前記袋体の前後の面に添わせて偏平にたたまれ、使用時に前記係止片の引き出しによって前記吊設片を引き起こし、立体的に展開しながら伸長させて該係止片をカップ容器の縁に掛け止めて前記袋体をカップ容器の開口部内に吊設状に支持するようにした簡易型濾過器において、
前記袋体は前後の面の上縁部間に開口部を形成して該開口部を予め易開放状態に封止すると共に、該開口部に臨む前後の面の上縁部に沿って固定片を止着し、その一方、前記支持体は前記吊設片若しくは係止片の双方若しくはいずれか一方の上端部を前記固定片に臨ませ該両者を切断可能な状態に接続し、前記使用時における前記係止片の第1次的な引き出し操作によって前記袋体の前後の面の上縁部相互を引き離して前記開口部の封止を破り開封し、また更なる引き出しによる第2次的な伸長操作によって前記吊設片若しくは係止片の上端部と前記固定片との前記接続を切り離して前記吊設片の引き起こしと共に、前記係止片の伸長を可能にして前記カップ容器に対する掛け止めを行うようにした簡易型濾過器を提供することにある(請求項1に記載の発明)。
【0021】
この発明は、濾過器の使用に当って袋体を支える支持体を引き出す作業を利用して予め封止される袋体の開口部を開封するものであり、支持体を使用のため引き伸ばすと言う一つの作業によって、つまり支持体によるカップ容器に対するセット作業を通して予め封止されている袋体の開口部の開封を同時に行うようにしたものである。
【0022】
本発明は支持体の引き起こされる吊設片の上端部、若しくはこの吊設片の上端部に連設される係止片の上端部を、袋体の上端部に近い前後の面に切断が可能な状態に接続し、これにより係止片を引き出したとき、この引き出しに伴わせて袋体の前後の面を前後方向に引っ張り、この引っ張りによって封止された袋体の開口部を引き剥がし、封止状態を破って開口させるようにしたことにある(第1次的引き出し)。
【0023】
そして、本発明は上記袋体の開口部の開封のため作用させた係止片の引き出しを更に続けることによって、係止片若しくは吊設片の上端部と袋体の前後の面との接続部分に作用させてこの接続を切り離し、両片の上記上端部を自由にして吊設片の上端部の引き起こしを可能にし、またこれによって係止片の更なる引き出しを自由にして支持体全体の伸長を図って係止片のカップ容器に対する掛け止めを行い、セットができるようにしたのである(第2次的引き出し)。
【0024】
ここで、前記袋体は前後の面を向き合わせた偏平な袋状にするもので、前後の面が寄り合う上縁部の相互を接合して、ここに予め封止された開口部を形成することになる。そして、内部には予め濾過する所定量の被抽出物、例えばコーヒー粉末等を封入することになる。
上記開口部の封止については、封入されるコーヒー粉末等の被抽出物の零れ出しを防止できる程度の簡易な封止状態であればよく、従って小さな引っ張りによって開封できる脆弱な封止状態であれば足りることになる。このため、例えば接着剤や加熱接着乃至高周波溶着によって前後の面を接合し封止する場合は、前後の面を引き剥がし方向に引っ張ったとき、簡単に或は容易に剥離する程度の接合になる。
【0025】
尚、この袋体の開口部の封止については、後述する様に、袋体と支持体の吊設片乃至係止片の上端部との接続状態と密接な関係があるもので、この両者の間では上記開口部の封止はこれら支持体の吊設片乃至係止片と袋体の前後の面との接続強度に対してより小さな接合力で封止されることになる。
【0026】
ところで、上記袋体の前後の面にそれぞれ止着される支持体は、袋体の前後の面に対して対称状に止着されることになる。この支持体は、例えば偏平な一枚の厚紙(尚、本発明では「厚紙」と記すが、これについては紙質のものに限らず、広く所要の剛性を有した厚紙状のシート状物を含むものとする。)を素材にして打ち抜く方法によって形成することができる。そして、実際の作業ではこの打ち抜きによって前記吊設片と係止片を一枚の厚紙等のシートから連続した状態で切り出し形成することになる。
【0027】
尚、上記係止片については、吊設片の上端部の左右から折り返すように並行させて2片を下向きに延設し、この2片の下端部同士を前記吊設片の下方で連続させ、全体をU字型に形成して係止片自体の強度を高めると共に、上記連続する部分を摘み片にして支持体の引き出し操作時に利用することを可能にする。
【0028】
さて、上記支持体は、吊設片の下端部を袋体の前後の面に接着することによって止め付けられるもので、この吊設片の止め付けにおいて上端部が袋体の開口部に近い位置に臨むように上向きの状態で取り付けることになる。そして、これに併せてこの吊設片の上端部から折り返すように下向きに延設される係止片の上端部を袋体の上端部に臨むようにされる。
【0029】
上記係止片は、支持体をカップ容器の縁に掛け止めるために設けられるものであり、また吊設片はこの係止片と袋体との間を繋いで袋体をカップ容器の開口部の内側に吊り下げ支持するものであり、この両片は使用されるまでは厚紙から切り抜いたままの偏平な状態に置かれ、袋体の前後の面に寄り添わせられる。
【0030】
この様にしてなる上記支持体は、前記吊設片の下端部を袋体に止着する際に、併せて上記吊設片の上端部、若しくはこれに接続する上記係止片の上端部のいずれかを、若しくは双方をこの袋体の前後の面に対して切り離し可能な状態に接続される。この接続によって上記吊設片が係止片の引き出しによって引き出されるとき、これらの上端部が直ちに袋体の前後の面から離れないようにされ、これによって上記吊設片は一時的に上端部の引き起こしが阻止されることになる。
【0031】
上記袋体と支持体との接続状態は、使用時における係止片の引き出しに際して最終的には引き離されて係止片の上端部が袋体の表面から離れ、所定の長さに伸び出すことになるが、前記袋体の開口部の封止が破られて開封されるまでは、この接続状態は維持されることになる。
そのため、係止片は最初の引き出し時には、前記接続によって袋体に止め付けられる上端部が基点となってその下端部だけが引き起こされ、片の長さ分だけ袋体の表面から延び出すことになる。そして、この状態において当該係止片が更に引き出されると、この引き出しによって開口部の封止が破られ、開口部が開放することになるのである(第1次的な引き出し)。
【0032】
そうした所で、この開口部の開放後に、更に係止片が引き出されて開口部の開口幅が最大となって限界に達したとき、この引き出しの力が吊設片乃至係止片の上端部と前記袋体との接続部分に集中することになり、その結果、これを契機に接続部分を切断して吊設片の上端部の起き上がりを許し、係止片の伸び出しを可能にすることになるのである(第2次的な引き出し)。
従って、この伸長によって吊設片に接続する係止片は、カップ容器の縁まで引き出しが可能になり、掛け止められることになる。
【0033】
以上のことから、本発明によれば、袋体の封止された開口部を予め開封して置かなくとも、セットのため袋体の前後の支持体を前後方向に引き出す操作によって、上記開口部を開口させることができ、これに併せて、同時に支持体を引き伸ばしてカップ容器に対する装着をそのまま行うことができることから、単独の支持体の引き出し作業によって袋体の開封作業とカップ容器に対するセット作業が同時に行うことができるのである。
【0034】
次に、本発明は前記の発明において、前記袋体の前後の面の上縁部に臨んで止着される固定片と前記支持体の吊設片又は係止片の上端部とを引っ張りにより切断を可能にする接続片部によって接続したことを特徴とする簡易型濾過器を提供することにある(請求項2に記載の発明)。
【0035】
この発明は、固定片と支持体を接続する手段が両者を一体に接続する接続片部であるとするもので、この接続片部とすることによって支持体と固定片を一体に形成しながら両者の接続を実現したものである。
【0036】
また本発明は、上記の如く構成される発明において、前記支持体の吊設片又は係止片の上端部から延長部を設けて該延長部と上記吊設片又は係止片の上端部との間に切り込み部を設けて固定片を形成すると共に、該切り込み部に一部切り残しを設けて前記吊設片又は係止片の上端部と前記固定片とを接続する切断可能な接続片部を形成するようにしたことを特徴とする簡易型濾過器を提供することにある(請求項3に記載の発明)。
【0037】
この発明は、袋体の前後の面の上端部に止着する固定片について、支持体の吊設片若しくは係止片のいずれかの上端部に延長部を設けてこの延長部を固定片にする場合を示したものであり、更に上記延長部との間に切り込みを設けて固定片との境界を形成すると共に該切り込みの一部を切り残して切断可能な接続片部を形成するようにしたものである。
【0038】
この発明によると、支持体を打ち抜き形成する際に支持体の吊設片、係止片の形成に併せて固定片を一体に形成することができることであり、従って袋体に対する支持体の止着に併せて固定片の止着を同時に行うことができるものとなる。そして同時に、この支持体と固定片との接続片部の形成を同時にすることができることから製造性を高めることができるものであり、しかも、上記接続片部は厚紙に対する切り込み時に切り残し幅を調整することによって切断の強度を任意に設定できることから開口部の開封力との間に所要の強度差を設定する上で極めて都合が良いものとなる。
【0039】
また本発明は、上記記載の簡易型濾過器において、前記袋体の前後の面の上縁部に臨んで止着される固定片は上記前後の面の上縁部に沿って左右横方向に延長して補強縁部を形成したことを特徴とする簡易型濾過器を提供することにある(請求項4に記載の発明)。
【0040】
この発明は、固定片に補強縁部を一体に設けることによって開口される袋体の上縁部に沿って補強部を設けて開放時における開放姿勢の保持を図ることができる。その一方、前記第2次的引っ張り操作時に支持体から固定片に作用する力をこの補強片部を介して開口部の全体に波及させ、封止部分全体の破壊に繋げるものであり、これによって迅速な開放を誘導することができる。
【0041】
また、この補強片部は、開口部に沿って止着することによって開口部が部分的に引き伸ばされて全体の開放が妨げられるのを防止し、効率的な開放状態を作る一方、開放状態の限界を作って次なる第2次的引っ張り操作に変換する時期を早期に達成させる効果をもたらすことになる。
【0042】
また本発明は、上記記載の簡易型濾過器において、前記固定片は左右の補強縁部の端部に袋体の前後の面の側縁に沿って延長する側部補強縁部を形成したことを特徴とする簡易型濾過器を提供することにある(請求項5に記載の発明)。
【0043】
この発明は、固定片の左右の補強縁部に続けて側部補強縁部を設けて袋体の前後の面の両側部に沿ってこれを止着し、袋体の強度、剛性を図ったものであり、これにより使用時における袋体の開放状態を補強し、湯の注ぎ込みに備えるようにしたものである。尚、これら補強縁部は固定片の成形と共に形成されるものであり、支持体と同質の厚紙を以て成形されることになる。
【0044】
また、本発明は上記記載の簡易型濾過器において、袋体の前後の面の上縁部に沿って止着される固定片と支持体の吊設片若しくは係止片のいずれかの上端部とを切断可能な薄片で接続したことを特徴とする簡易型濾過器を提供することにある(請求項6に記載の発明)。
【0045】
この発明は、袋体の前後の面に止着される固定片と支持体の吊設片若しくは係止片のいずれかの上端部との接続を薄片を以て接続する場合を示したものである。ここでは、固定片と支持体の一体的な形成によって両者間を接続片部によって予め連続した状態で成形する他に、別体となる薄片によって接続する場合のあることを説明するものであり、この薄片は開口部の開封の後、第2次的な引き伸ばし操作によって切り離され、吊設片乃至係止片の引き伸ばしを許すことになる。
【0046】
また、本発明は上記記載の簡易型濾過器において、前記袋体は前後の面の上縁部を接合して封止すると共に、該封止した上縁部に沿って前後の面を上下に切り分ける切り分け線を形成し、前記支持体の係止片の第1次的の引き出しによって上記切り分け線を引き破ることにより袋体の開口部を開放することを特徴とした簡易型濾過器を提供することにある(請求項7に記載の発明)。
【0047】
この発明は、袋体の開口部の封止状態を切り分け線の切断によって開封するようにしたものである。袋体の開口部を前後の面の接合によって封止する一方、この封止部分を避けて前後の面の上部に面を上下に切り分ける切り分け線を形成することにより、支持体の引き出し操作によってこの切り分け線を引き破り、袋体の上部を開放して開口部を開封するようにしたものである。
上記切り分け線は、ミシン線として形成することができる。この場合において、開封を容易にするために切れ分け線の接続部分を狭く細くして、係止片の引っ張り力が作用したとき容易に破断し、開封するようにするとよい。
【発明の効果】
【0048】
本発明濾過器は、上述の如く構成されるもので、支持体の係止片の引き出しにより封止した袋体の開口部を開封することができ、また更なる引き出しによって支持体の係止片と共に吊設片の引き起こしを通して支持体全体の引き伸ばしを図ることができるものであり、これによって、袋体の開封とこの袋体をカップ容器に掛け止めセットする作業を一連の行為によって行うことができるものとなっている。従って、従来の濾過器において求められた袋体の開口部の開封作業を別の作業として行うことなくこれを省略することができ、使用を更に便利なものとすることができる。
【0049】
そして又、本発明濾過器は、上述の如く支持体の引き出しによって袋体の開口部の開封を行うことができることから、前記従来の濾過器のように開封されない開口部を開封しようとして限度を超えて無理に支持体を引き出すことがなくなるので、支持体が切断されるような損傷を受けることがなく、したがって、使用不能になる等の問題もなく安全に使用できる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明に係る簡易型濾過器の正面図である。
【図2】本発明に係る簡易型濾過器の斜視図である。
【図3】使用に備えて支持体を引き出すと共に、この引き出しによって袋本体の開口部の封止を破り開放した状態を示した斜視図である。
【図4】袋体と袋体の前後の面に止着される支持体との関係を説明する未使用時における要部の拡大中央縦断側面である。
【図5】支持体の係止片を引き出すことによって袋体の前後の面が前後離反する方向に引き離され、これに伴って袋体の開口部の封止部分に引き剥がしの力が作用する状態を説明する要部の拡大中央縦断側面である。
【図6】支持体の係止片の引き出しによって袋体の前後の面が引っ張りを受けて開口部を封止する接合が剥離し、開封した状態を説明する要部の拡大中央縦断側面である。
【図7】図6の状態から支持体の係止片が更に引き出されて袋体の前後の面に止着した固定片と支持体の係止片とを接続する接続片部が切り離され、これにより吊設片の起き上がりと共に係止片が更に伸ばされてカップ容器の縁に係止可能になった状態を説明する要部の拡大中央縦断側面である。
【図8】本発明に係る簡易型濾過器をカップ容器に掛止めセットした使用状態を説明する斜視図である。
【図9】本発明の他の実施形態を示す要部の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
図面の図1〜図8は、本発明に係る簡易型濾過器をコーヒーの濾過器として実施した一実施形態を示したものである。以下、この図面に基づき本発明を説明し、その特徴とするところを明らかにする。
図面の符号1は、本発明に係る簡易型の濾過器、即ち、コーヒーの濾過器であり、2はこのコーヒーの濾過器1の袋体、3は使用に際して袋体2をコーヒーカップである容器4の縁に掛け止め支持する支持体である。
【0052】
袋体2は、ここでは合成樹脂製の不織布からなるフィルタを素材にしてやや縦長長方形状の偏平な袋に形成し、この袋体の上縁部に予め閉ざされる開口部5を形成する(尚、図1,2において開口部5は未開封状態にあり、図示されない。)。
【0053】
袋体2を更に説明すると、成形時には上記開口部5となる上縁部分を開放した状態で成形し、この開放部分を通して予め所定量の被抽出物、ここではコーヒー粉末Cを投入してその後袋体2の前後の面2a,2bの上縁部同士を接着し、封止する。
ここにおける封止は、前後の面2a,2bの上縁部同士を接面し、縁部に沿って線状に接合6することによって行っており、この接合6によって開口部5を封止している。そして、この線状に接合することで後述する前後の面2a,2bを引き離し方向に引っ張ったとき、簡単に剥離し、上記開口部5が開封するようにしている。
【0054】
尚、開口部5を封止する接合部6については、袋体の上縁部に沿って線状に接合する場合の他、破線状に接合するものであってもよい。要するに、ここでは開口部5を閉じて封入する被抽出物の零れ出しが防げることと、開封時には小さな引っ張り力で破られるものであればよく、この様な範囲で自由に選択することができる。
【0055】
一方、前記支持体3は、所要の剛性を有したやゝ厚手の板紙を素材にしてこれを切抜くことによって形成してあり、ここでは、図1に示したように略方形の板厚紙を切抜くことによって支持体3の全体を一体的に形成している。
この支持体3は、図示するように中央部に吊設片7を置いてこの吊設片7を囲むように係止片8を設けており、この両片を一体に連続した状態で形成している。
【0056】
更に詳述すると、上記吊設片7は、縦長にしてやや幅広の帯状に形成し、その上端部7aの左右側部から下向きに折返すように左右に係止片8,8を延設しており、更にここではこの係止片8,8の下端部同士をを繋いでU字型に形成し、連結部分を摘み片9としている。そして、上記吊設片7の下端部7bには左右の側部から袋体2に対する止着を安定させるための固定補助片10,10を延設し、また上端部7aに近い両側部分にカップ容器4の縁を挟むための挟持片11,11を延設している。
【0057】
吊設片7を中心とした固定補助片10と挟持片11は、図示するように前記U字型に形成される係止片8の内側に納められる形態で形成され、更にこの吊設片7と係止片8の上部に同じ厚紙から切り出す固定片12が形成される。
【0058】
固定片12は、ここでは吊設片7、係止片8の上端を延長する延長部分として形成してあり、この延長部分を切り分ける切り込み13によってそれぞれの上端部7a,8aと区画し、更にこの切り分けに当って切り残し部分を設けて吊設片7、係止片8と固定片12とを接続する接続片部14,14を設けている。
【0059】
上記接続片部14は、後述するように支持体3を引き伸ばすときに所要の引っ張り力が作用したとき、この力を受けて自動的に切断されるように片の幅、長さが選択され、接続の強度が決められる。ここでは左右の係止片8,8の上端部8a,8aに当る2個所に接続片部14を設けているが、強度の設定の上で片の幅や長さの選択と共に、例えば吊設片7の上端部7aに第3の接続片部を加える等その数を増減変更することがある。
【0060】
尚、上記固定片12は、ここでは袋体2の剛性を補強する補強手段にも使われている。そのため、この固定片12の両側を延長して補強縁部12a,12aを形成し、袋体2の前後の面2a,2bの上縁部に沿ってこれを一体に止着するようにしている。そして、更にここではこの補強縁部12a,12aの各端部から下向きに側部補強縁部12b,12bを垂下延長して門形に形成し、これを前後の面2a,2bの側部に沿って止着して袋体2を補強しており、使用時に湯が注がれたときに袋体2が拡張した一定の形状を維持できるようにしている。
【0061】
さて、厚紙を切り抜くことによって形成される支持体3は、袋体2の前後の面2a,2bに対してそれぞれ寄り添い接面した状態で取付けられる。この取付において、支持体3は、吊設片7の下端部7bと、これより左右に派生させた固定補助片10,10を袋体2の面2a(2b)に接着し、この固定部分を基点にして上端部7aを引き起こせるように取付ける(尚、図1,2において、符号イが示す破線の囲みは吊設片7の下端部7aと固定補助片10の接着の範囲を示している。)。
その一方、前記接続片部14,15により接続される固定片12を同じく袋体2の面2a(2b)に接着して取付け、これによって下端部7bと上端部7aを袋体に止め付けて長さの中間部分が面2a(2b)から離れた状態で止着するようにしてある。
【0062】
一方、係止片8は、上記吊設片7の止着に従って止着され、上端部8aを接続片部14を介して固定片12に接続することによって前後の面2a,2bに止め付けられ、又これによって接続片部14を基点にしてその下端部8b、つまり摘み片9を引き出せるようにしてある。
【0063】
ところで、上記支持体3の取り付けは、図示するように袋体2の前後の面2a,2bの上縁部に沿って固定片12が添うように止着し、これによって固定片12が開口部5を封止する接合部6に近接するようにしてある。
この接合部6に対する固定片12の近接は、支持体3の引き出しの際の引っ張り力を効率的に接合部6に作用させ、これを引き破って開封し易くするためである。尚、ここでは接合部6が上縁部に沿って線状に形成されることからこの上縁部に接近させて形成するが、接合部6が上縁部を離れて設けられる場合は、これに伴って固定片12の接着位置が変ることになる。
【0064】
上記の如く構成してなる本発明の濾過器は、同種の濾過器と同様に、袋体2に予め被抽出物、ここではコーヒー粉末を投入し、開口部5を接合封止してこの状態で気密性に優れるアルミ製の包装袋等に収納して保管乃至運搬に供されることになる。
そして、使用に当っては包装袋から取り出した後、袋体2の前後の面2a,2bの支持体3,3を引き出し、カップ容器4に対するセット作業に掛かることになる。このとき、前記従来の濾過器では支持体の引き出しの前に、袋体の開口部を開封することになり、その後セットのため支持体を引き伸ばす作業に入ることになるが、本発明の濾過器にあっては、包装袋から取り出した後、そのまま前後の支持体3,3を引き出す作業から開始することになる。
【0065】
図4〜図7は、この使用時における作業と、この作業に伴う袋体2の開口部5の開封、及び支持体3,3の引き出しによる伸長状態を要部の拡大縦断側面図を以て説明した説明図である。次に、これらの図面に従って使用時の取扱いについて説明することにする。
【0066】
図4は、未使用状態にある本発明の濾過器1を示している。この状態における袋体2は前後の面2a,2bの上縁部同士を接面させ、この縁部に沿って線状に形成する接合部6によって開口部5を封止している。このとき、袋体2の内部には所定量のコーヒー粉末Cが封入され、又前後の面2a,2bの支持体3,3は厚紙から切り出したままの偏平な状態にあって袋体2の両面に寄り添うことになる。
【0067】
次に、図5は、上記支持体3の係止片8の自由端となっている下端部8a、ここでは下端部8a,8a同士を繋ぐ摘み片9を前後方向に引き出し、支持体3,3を伸長する作業に入ったところを示している。
この引き出しにおいて、係止片8はその上端部8aを接続片部14,14を以て袋体の前後の面2a,2bに接着する固定片12に接続されていることから、この接続片部14を基点にして前後の面4a,2bを引っ張り、袋体2の胴部を前後に膨らませることになる。このとき、前記接合部6にはこの引張り力が作用し、ここに緊張した状態が作られ、また吊設片7は、図示するように係止片8の引き出しに伴ってその上端部7aを袋体2の面2a,2bから浮き上げることになる。
【0068】
図6は、上記引き出した係止片8の摘み片9を更に引き出して開口部5の接合部6を破り、開封させた状態を示す(図5の状態からここまでの引き出し操作は「第1次的な引き出し操作」である。)。
この開封によって開口部5は前後に大きく開き、同時に袋体2の胴部を拡張させることになる。この開封に当って前記係止片8は、その上端部8aを接続片部14を介して固定片12と接続し、袋体2の前後の面2a,2bに止め付けられた状態にあり、また吊設片7もその上端部7aを袋体に止め付けた状態に置かれる。
【0069】
次に、図7は、上記係止片8の引き出しが更に続けられた結果、接続片部14が切断して係止片8の上端部8aと共に吊設片7の上端部7aが固定片12から離れ、支持体3の引き出しが自由になった状態を説明したものである(第2次的な引き出し操作)。
接続片部14は、袋体2の開口部5が開放して限界幅に達したとき、係止片8の引き出し力がこの接続片部14に集中することによって破断し、係止片7乃至吊設片8の上端部8a,7aを固定片12から釈放することになる。
【0070】
尚、開口部5の開放は、袋体2の前後の面2a,2bに添わせた固定片12、その補強片部12a,12aによって上縁部を補強し、張りを持たせてあることから全体の形状として略矩形状に開放し、前後の広がりが制限されるようにしてある。このため、ここではある程度開放した状態で限界に達し、この時点を以て係止片8の引っ張りが接続片部14に集中するようにして、無用に支持体3が引き伸ばされるのを防止するようにしてある。
図面において、符号6aは接合部6の剥離跡を示し、14aは接続片部14の切断跡を示している。
【0071】
図3は、上記の操作を通して濾過器1をカップ容器4に対してセット可能な状態に展開した姿を示している。この状態における袋体2は、胴部の拡張と共に補強片部12aに形成する折り曲げ腺15,15で折り曲げられ、偏平な前後の面2a,2bを断面コの字形にして袋体2の胴部を矩形の筒型にする。そして、側部補強片部12b,12bを胴部の拡張する側面に添わせて拡張状態を支えるものとなる。
【0072】
従って、上記本発明の濾過器1によれば、その使用において前後の支持体3の係止片8を引き出すと、この引き伸ばしを通して袋体2の開口部5の開放が行われることになり、個別の開放操作をすることなくそのままカップ容器4に対するセットが可能となる。
そして、支持体3の引き出しによって最初に袋体の開口部5が開放することからそれ以上無理に支持体を引っ張ることがなくなり、従って支持体が引き千切られるようなことがなくなり、破損すると言った問題が未然に防止されることになる。
【0073】
既に述べたように、支持体の引き出しによってカップに対するセットを行うタイプの濾過器は、使用者において支持体の引き出しによって全てのセット作業ができるものとの思い込みから、開口部を開放するため強く引き出し、これによって支持体を無理に強く引き出して切断したり、袋体を破ったりすることがあったが、本発明の濾過器は支持体の引き出しによって開口部が自動的に開放されることから、必要以上に強く引き出すようなことがなく、従ってこの様なことを原因にして損傷するのを未然に防止することができるのである。
【0074】
次に、図9は、袋体2の上部に形成する開口部5、及び固定片12を含む支持体3についての他の実施形態を示したものである。
ここに示す濾過器1は、フィルタ製の袋体2を前記同様に前後の面2a,2bによって縦長の袋に形成し、その内部に被抽出物としてのコーヒー粉末を投入した後、前後の面2a,2bの上縁部相互を貼り合せて封止し、その一方、この閉じた上縁部に沿って前後の面2a,2bの全幅に亘りミシン線からなる切り分け線16を形成したものである。
そして、上記切り分け線16に沿わせて横長の帯状に形成した固定片12を一体に貼り付け、接続片部14,14を介して支持体3を袋体2の前後の面に止着し、併せて吊設片7の下端部7bとこの下端部から左右に延設する固定補助片10,10を袋体2に接着して取り付けたものである(尚、図中の符号イは、接着の範囲を示している。)。
【0075】
この例は、開口部5の封止を接合部6によって行う前記の実施態様に対して、この接合部6を切り分け線16に代えたものである。ここでは支持体3を引き伸ばしたとき第1次的にこの切り分け線16が前後の面2a,2bの緊張によって引き裂かれ、開放し、開口部5を形成することになる。このため上記切り分け線16は切り込みの部分を大きくして接続部分が係止片8の引っ張りによって容易に切断するようにされる。尚、上記切り分け線16は、前後の面2a,2bの両方に形成しても、また一方であっても良い。
【0076】
一方、固定片12は、上記切り分け線16に近接して接着し、支持体3の係止片8が引き出されたとき、その引っ張りがこの切り分け線16に直接作用して切り開きに直結するようにしてある。
上記支持体3の係止片8は、上端部8aを2箇所の接続片部14によって固定片12に接続させてある。接続片部14は、この係止片8の引っ張りによって前記切り分け線16が切り分けられた後、開口部5の開放状態が限度に達したところで前記実施の形態と同様に切断し、係止片8を袋体の前後の面から離し、吊設片7の上端部7aと共に自由にして支持体3の全体の伸び出しを許すことになる。
【0077】
この実施の形態における支持体3は、簡素化されており、そのため固定片12を含む全体の形状を前記の実施形態と相違させるが、実質的には機能上同一の働きを有しており、係止片8の引き出しによって袋体2の開口部5を開封し、更には支持体の吊設片7の上端部7aを釈放してその伸び出しを可能にすることでは差が無いものとなっている。
【0078】
ところで、上述の実施形態では支持体3と固定片12との接続を両者の形成を厚紙を切り抜くことによって一体的に形成することから接続片部14の形成によって行うものとしたが、これに限られるものではなく、例えば支持体3と固定片12を別体に形成してこの両者の接続を他の紙片(例えば薄片)の貼り付けによって行っても良い。
勿論、ここにおける紙片の強度は接続片部14の強度に求められるものと同じであり、開口部5を封止する接合部6の接合強度より高く、支持体の係止片8の引っ張り時の切断強度より低いものであることが求められる。また接続する紙片の数や間隔についても接続片部14と同様である。
【0079】
以上、本発明の濾過器をコーヒーの濾過器について説明したが、この濾過器は被抽出物としてコーヒーが選択される他、紅茶や緑茶などの茶葉や、だしの素等を濾過する濾過器としても利用することができることは言うまでもなく、これらは本発明の実施の対象である。
【符号の説明】
【0080】
1 本発明に係る簡易型濾過器
2 袋体
2a,2b 袋体を形成する前後の面
3 支持体
4 容器となるコーヒーカップ
5 袋体の上部に形成される開口部
6 袋体の開口部を封止する接合部
7 支持体の吊設片
7a 吊設片の上端部
7b 吊設片の下端部
8 支持体の係止片
8a 係止片の上端部
8b 係止片の下端部
9 摘み片
10 固定補助片
12 袋体の前後の面に接着し固定される固定片
12a 固定片の側部に延長して設けた補強縁部
12b 側部補強縁部
13 吊設片の上端部並びに係止片の上端部と固定片を区画する切り込み部
14 吊設片の上端部並びに係止片の上端部と固定片とを繋ぐ接続片部
15 補強縁部に設けた折れ曲げ線
16 切り分け線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被抽出物を封入するフィルタ製の袋体と、該袋体の前後の面に止着される支持体とを有し、前記支持体は下端部を前記袋体の前後の面に止着して上端部を引き起こせるようにした吊設片と、該吊設片の上端部から折り返し下向きに延設される係止片とを備え、未使用時には上記両片を前記袋体の前後の面に添わせて偏平にたたまれ、使用時に前記係止片の引き出しによって前記吊設片を引き起こし、立体的に展開しながら伸長させて該係止片をカップ容器の縁に掛け止めて前記袋体をカップ容器の開口部内に吊設状に支持するようにした簡易型濾過器において、
前記袋体は前後の面の上縁部間に開口部を形成して該開口部を予め易開放状態に封止すると共に、該開口部に臨む前後の面の上縁部に沿って固定片を止着し、その一方、前記支持体は前記吊設片若しくは係止片の双方若しくはいずれか一方の上端部を前記固定片に臨ませ該両者を切断可能な状態に接続し、前記使用時における前記係止片の第1次的な引き出し操作によって前記袋体の前後の面の上縁部相互を引き離して前記開口部の封止を破り開封し、また更なる引き出しによる第2次的な伸長操作によって前記吊設片若しくは係止片の上端部と前記固定片との前記接続を切り離して前記吊設片を引き起こすと共に、前記係止片の伸長を可能にして前記カップ容器に対する掛け止めを行うようにしたことを特徴とする簡易型濾過器。
【請求項2】
請求項1に記載の簡易型濾過器において、前記袋体の前後の面の上縁部に臨んで止着される固定片と前記支持体の吊設片又は係止片の上端部とを引っ張りにより切断を可能にする接続片部によって接続したことを特徴とする簡易型濾過器。
【請求項3】
請求項1に記載の簡易型濾過器において、前記支持体の吊設片又は係止片の上端部から延長部を設けて該延長部と上記吊設片又は係止片の上端部との間に切り込み部を設けて固定片を形成すると共に、該切り込み部に一部切り残しを設けて前記吊設片又は係止片の上端部と前記固定片とを接続する切断可能な接続片部を形成するようにしたことを特徴とする簡易型濾過器。
【請求項4】
請求項1乃至3に記載の簡易型濾過器において、前記袋体の前後の面の上縁部に臨んで止着される固定片は上記前後の面の上縁部に沿って左右横方向に延長して補強縁部を形成したことを特徴とする簡易型濾過器。
【請求項5】
請求項4に記載の簡易型濾過器において、前記固定片は左右の補強縁部の端部に袋体の前後の面の側縁に沿って延長する側部補強縁部を形成したことを特徴とする簡易型濾過器。
【請求項6】
請求項1に記載の簡易型濾過器において、袋体の前後の面の上縁部に沿って止着される固定片と支持体の吊設片若しくは係止片のいずれかの上端部とを切断可能な薄片で接続したことを特徴とする簡易型濾過器。
【請求項7】
請求項1乃至6に記載の簡易型濾過器において、前記袋体は前後の面の上縁部を接合して封止すると共に、該封止した上縁部に沿って前後の面を上下に切り分ける切り分け線を形成し、前記支持体の係止片の第1次的の引き出しによって上記切り分け線を引き破ることにより袋体の開口部を開放することを特徴とした簡易型濾過器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−239473(P2012−239473A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−108743(P2011−108743)
【出願日】平成23年5月13日(2011.5.13)
【出願人】(591253401)片岡物産株式会社 (18)
【Fターム(参考)】