説明

簡易屋根構造物

【課題】設置する現場において比較的容易な加工を施すことにより、屋根の奥行き寸法を自在に調整することができる簡易屋根構造物を提供する。
【解決手段】屋根材43はその前後端部41、42が主梁2の前後端部21、22よりもそれぞれ前後に張出された長さで形成されると共に、該屋根材43の裏面には、前後方向に延びる補助梁5が前記主梁2の前後端部21、22よりも前後に張出された長さで取付けられ、該補助梁5が主梁2間に架け渡された横梁3に支持されているので、主梁3の前後方向の長さ以上であれば、屋根材43の前後方向の長さにかかわらず、当該主梁3に屋根材43を取付けることができる。したがって、一種類の主梁3を用意しておけば、当該主梁3に、前後方向の長さの異なる複数種類の屋根材43を施工現場に応じて適宜選択して取付けることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自転車置場、カーポート、バス停留所、渡り廊下、地下道の入口、公園等の休憩所などに用いられる組立式の簡易屋根構造物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、カーポート、バス停、シェルターなど簡易屋根構造物の屋根材取付け構造については、例えば特許文献1には、適宜間隔に立設した支柱の上端側間に屋根をかけ渡してなる屋根付自転車置場において、支柱上端側に傾斜を付けて屋根受け支持部材が設けられているとともに、この屋根受け支持部材上に、屋根受けが、屋根の張り出し方向に沿って支持位置の変更可能な取付手段で取付けられ、さらに前記屋根受け上に屋根が取付けられていることを特徴とする屋根の支柱支持位置の変更可能な屋根付自転車置場である簡易屋根構造物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−32329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、かかる従来の簡易屋根構造物においては、屋根の張り出し方向に沿って屋根を前後に移動させて屋根の位置を変更できるものの、屋根の奥行き寸法自体を変更することはできない構造であった。
【0005】
本発明は、前記の如き課題を解消し、設置する現場において比較的容易な加工を施すことにより、屋根の奥行き寸法を自在に調整することができる簡易屋根構造物を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は次のような構成としている。
すなわち本発明に係る簡易屋根構造物は、地表に立設された複数の支柱と、この支柱の上端に前後方向に突出されて該支柱と側面視T字形を形成するように取付けられた主梁と、この主梁間に架け渡された横梁と、該横梁を介して前記主梁に支持された屋根材とを備え、前記屋根材はその前後端部が前記主梁の前後端部よりもそれぞれ前後に張出された長さで形成されると共に、該屋根材の裏面には、前後方向に延びる補助梁が前記主梁の前後端部よりも前後に張出された長さで取付けられ、該補助梁が主梁間に架け渡された横梁に支持されていることを特徴とするものである。
【0007】
また、本発明に係る簡易屋根構造物の施工方法は、前記簡易屋根構造物の施工方法であって、主梁から張出している屋根材の前端部又は後端部のいずれか一方、もしくは前端部及び後端部の両方において、主梁に至らない長さで横方向に沿って切断することにより、屋根材の前後方向の長さを調整して前記簡易屋根構造物を施工することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る簡易屋根構造物によれば、屋根材はその前後端部が主梁の前後端部よりもそれぞれ前後に張出された長さで形成されると共に、該屋根材の裏面には、前後方向に延びる補助梁が前記主梁の前後端部よりも前後に張出された長さで取付けられ、該補助梁が主梁間に架け渡された横梁に支持されているので、主梁の前後方向の長さ以上であれば、屋根材の前後方向の長さにかかわらず、当該主梁に屋根材を取付けることができる。したがって、一種類の主梁を用意しておけば、当該主梁に、前後方向の長さの異なる複数種類の屋根材を施工現場に応じて適宜選択して取付けることができる。
【0009】
また本発明に係る簡易屋根構造物の施工方法によれば、施工現場において、屋根の奥行きを短くしなければならない状況が起きた場合は、主梁から張出している屋根材の前端部又は後端部のいずれか一方、もしくは前端部及び後端部の両方において、主梁に至らない長さで横方向に沿って切断することにより、屋根材の前後方向の長さを調整することができるので、施工性が極めて向上する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る簡易屋根構造物の実施の一形態を示す、(イ)は斜視図、(ロ)は側面図である。
【図2】本発明に係る簡易屋根構造物の一部分解斜視図である。
【図3】図1におけるA−A断面拡大図である。
【図4】本発明に係る簡易屋根構造物に用いられる補助梁の、(イ)は正面図、(ロ)は左側面の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照し、具体的に説明する。
Pは簡易屋根構造物であって、1は下部が地中に埋設されて、左右方向に適宜間隔をおいて地表に立設された3本の支柱、2は各々の支柱1の上端に保持金具Kを介して前後方向に突出されて前記支柱1と側面視T字形を形成するように取付けられた主梁、3は主梁2の前端、後端及び中央に左右方向に架け渡して取付けられた横梁であって、左側の主梁2と中央の主梁2の間及び中央の主梁2と右側の主梁2の間にそれぞれ3本ずつ配置されている。4は横梁3を介して主梁2に支持された屋根材であり、該屋根材4はその前後端部41、42が前記主梁2の前後端部21、22よりもそれぞれ前後に張出された長さで形成されると共に、前記屋根材4の前後方向の長さに対応して、その屋根材4の裏面には、主梁2の前後端部21、22よりも前後に張出された長さで、前後方向に延びる補助梁5が取付けられ、該補助梁5が主梁2間に架け渡された横梁3に支持されている。本実施形態においては、横梁3に補助梁5が左右方向に6本配並設されている。
【0012】
支柱1は断面円形の鋼管を適宜長さに切断して作製され、その上端部には、保持金具Kを介して主梁2を取付けるためのボルト孔が側面11を貫通して穿設され、支柱1側壁の適宜箇所に取付具61を介して縦樋6が取付られている。支柱1の材質は前記した鋼管に限るものではなく、アルミ合金押出型材等であってもよいが、強度的に安定でコストの安い鋼管が好適に用いられる。
【0013】
主梁2は円形の鋼管を適宜長さに切断して作製され、主梁2の中央部を保持すると共に支柱1の上端部をも保持する保持金具Kを介して支柱1上端に取付けるためのボルト孔が主梁2の側壁を貫通して穿設されている。そして、主梁2の前端部21上面と後端部22上面と中央部23上面とには、それぞれ横梁3を取着するためのL字型受け金具K1がそれぞれ取付けられている。尚、主梁2の材質は強度的に安定でコストの安い鋼管が好適に用いられる。
【0014】
横梁3は、アルミ合金押出形材からなる管体が適宜長さに切断される等して作製されたものであって、外形が縦長の略矩形となされ、そしてその内部は仕切壁31によって上下に仕切られて、二個の筒状部32が上下に形成されているものである。そして横梁3の正面から背面に横方向に通孔が貫通され、その通孔とL字型受け金具K1とにボルトを挿通して締着され、主梁2の上下方向に穿設された取付孔とL字型受け具K1とに別のボルトを挿通して締着され、横梁3と主梁2とが固定されている。
【0015】
また横梁3は、補助梁5と交差する位置において、該横梁3の上方の筒状部32を形成する上面壁33及び左右の側壁34、35の上部がそれぞれ一部切り欠かれて、前記仕切壁31を底面とする切欠き部36が形成されて、後述するように、該切欠き部36に補助梁5が載置され、ネジN止めされるようになされている。
【0016】
横梁3間に架け渡された屋根材4は、5個の並設された前後方向に長い長方形状の合成樹脂製の屋根板材43からなるものであって、各屋根板材43の前後左右の各辺にはアルミ合金型材が取付けられるようになされている。具体的には、屋根板材43の左右の長辺側は、前記補助梁5によって、その端部を下側から受け止められ、また長辺側押え枠材44によって、その端部を上側から押えられてなり、補助梁5上に屋根板材43の左右端部を載置し、その上に長辺側押え枠材44を載置した後、タッピングビス等のネジNを長手方向に間隔をあけて複数箇所で螺入して、補助梁5と長辺側押え枠材44とを固定し、屋根板材43の左右端部を前後方向に挟みつけている。また屋根板材43の前後の短辺側は、前側枠材45及び後側枠材46とによって、その端部が下側から受け止められ、また短辺側押え枠材47によって、その端部を上側から押えられてなり、補助梁5の前後端にタッピングビス等のネジで固定された前側枠材45と後側枠材46上に屋根板材43の前後端部を載置し、その上に短辺側押え枠材47を載置した後、タッピングビス等のネジを長手方向に間隔をあけて複数箇所で螺入して、前側枠材45及び後側枠材46と短辺側押え枠材47とを固定し、屋根板材43の前後端部を左右方向に沿って上下方向に挟みつけている。
【0017】
より詳細には、補助梁5は、横長の断面略矩形の管状部51の下面が左右に水平方向に延設された延設部52を備え、管状部51の上面側の両肩部には上向きに開口した蟻溝53が形成され、また管状部51の上面中央部には前後方向に延びる2個の突設片54が間隔をあけて上方に向けて突設されている。そして、前記蟻溝53には断面が軌道のレール状に形成されたパッキン材55が、そのくびれ部が前記蟻溝53の開口縁に係止される様に挿入されている。
【0018】
また長辺側押え枠材44は、補助梁5の蟻溝53と対向する位置に、下向きに開口した蟻溝441が2個形成され、補助梁5のパッキン材55と同形のパッキン材442が、そのくびれ部が蟻溝441の開口縁に係止される様に挿入され、また下面中央部には前後方向に延びる2個の嵌合片443が間隔をあけて下方に向けて突設されており、該嵌合片443を補助梁5の突設片54に嵌合させるようになされている。
【0019】
かように補助梁5と長辺側押え枠材44とを構成することによって、屋根板材43の左右端部を補助梁5のパッキン材55上に載置し、その上に長辺側押え枠材44のパッキン材442を補助梁5のパッキン材55と相対向するように載置すると共に、長辺側押え枠材44の嵌合片443を補助梁5の突設片54に嵌合させた状態で、長辺側押え枠材44の嵌合片443の中央部にネジNを螺入して、ネジNのネジ部が補助梁5の2個の突設片54間に螺入されて、上述の如く、屋根板材43の左右端部が前後方向に沿って上下方向に挟みつけられて固定されている。なお、パッキン材442、55には、一般にパッキンとして用いられる軟質合成樹脂やゴム等が適宜用いられており、屋根板材43がパッキン材442、55によって上下に挟みつけられ固定されているので、屋根板材43が温度変化により膨張・収縮した場合でも、屋根板材43が傷付くことが防止される。
【0020】
保持金具Kは、支柱1と主梁2とを左右から挟んで保持する部分を備えた左右勝手違いの2個の板材からなり、その2個の板材をもって支柱1と主梁2とを左右から挟み、保持金具Kの側面をボルト・ナットで挟着することにより、支柱1の上端部11に主梁2の中央部23を固定している。従って、保持金具Kの内面は、それぞれ支柱1と主梁2の外形である円柱形に当接するように半円形状に形成されると共に、側面視でT字型に形成されている。また、保持金具Kの強度を向上させるため、保持金具Kの支柱1を保持する部分から主梁2を保持する部分にわたり、平担状の補強板部K2が、支柱1及び主梁2とを左右から挟んだ際に、補強板部K2が当接するように一体的に設けられている。
【0021】
当該簡易屋根構造物Pの組立て方について説明する。
まず、3本の支柱1を立設させ、それぞれに主梁2を保持金具Kを用いて固定して、次いで横梁3を3本の主梁2の前端部21、後端部22及び中央部23に左右方向に架け渡して受け金具K1を介して取付ける。その後、横梁3の切欠き部31に補助梁5が載置され、補助梁5の延設部52にネジNを螺入して補助梁5を横梁3の嵌合片443にネジ止めし、補助梁5の前端部56と後端部57とに前側枠材45と後側枠材46とをネジ止めして、屋根板材43の周囲を支持する矩形の升目状体に形成し、5個の屋根板材43をその升目にそれぞれ載置した後、補助梁5の上側に長辺側押え枠材44をネジN止めし、屋根板材43を挟みこんで固定し、次いで前側枠材45と後側枠材46との上側に短辺側押え枠材47をネジ止めして、簡易屋根構造物Pの組立てが完了する。
【0022】
そして設置現場において、屋根材4の奥行き寸法を短くする必要がある場合には、屋根板材43と、補助梁5、長辺側押え枠材44とを、前後(奥行き)方向に所定の寸法に切断し、上述の如く簡易屋根構造物Pを組立てるだけで、屋根材の奥行き寸法を調整することができる。つまり、アルミ合金型材製の補助梁5、長辺側押え枠材44、前側枠材45、後側枠材46、短辺側押え枠材47、及び合成樹脂製の屋根板材43を切断するのみであり、鉄鋼製の主梁2を切断することなく屋根材の奥行き寸法を調整することができるため、鉄鋼製の材料を切断した際に懸念される赤錆の発生等を防止することができ、好ましい。
【符号の説明】
【0023】
1 支柱
11 側面
2 主梁
21 前端部
22 後端部
23 中央部
3 横梁
31 切欠き部
32 筒状部
33 上面壁
34 左側壁
35 右側壁
36 切欠き部
4 屋根材
41 前端部
42 後端部
43 屋根板材
44 長辺側押え枠材
441蟻溝
442パッキン
443嵌合片
45 前側枠材
46 後側枠材
47 短辺側押え枠材
5 補助梁
51 管状部
52 延設部
53 蟻溝
54 突設片
55 パッキン
56 前端部
57 後端部
6 縦樋
61 取付具
K 保持金具
K1 受け金具
K2 補強板部
N ネジ
P 簡易屋根構造物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地表に立設された複数の支柱と、この支柱の上端に前後方向に突出されて該支柱と側面視T字形を形成するように取付けられた主梁と、この主梁間に架け渡された横梁と、該横梁を介して前記主梁に支持された屋根材とを備え、前記屋根材はその前後端部が前記主梁の前後端部よりもそれぞれ前後に張出された長さで形成されると共に、該屋根材の裏面には、前後方向に延びる補助梁が前記主梁の前後端部よりも前後に張出された長さで取付けられ、該補助梁が主梁間に架け渡された横梁に支持されていることを特徴とする簡易屋根構造物。
【請求項2】
前記請求項1に記載の簡易屋根構造物の施工方法であって、主梁から張出している屋根材の前端部又は後端部のいずれか一方、もしくは前端部及び後端部の両方において、主梁に至らない長さで横方向に沿って切断することにより、屋根材の前後方向の長さを調整して前記簡易屋根構造物を施工することを特徴とする簡易屋根構造物の施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−117230(P2012−117230A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−265847(P2010−265847)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(000002462)積水樹脂株式会社 (781)