説明

籾選別装置

【課題】 種籾とする籾から健全種籾を的確に選別することができ、また食用などの消費用籾を優良籾と屑籾などのように的確かつ効率的に粒状選別することができる籾選別装置を提供する。
【解決手段】 籾選別装置1は、種籾を投入して脱芒処理を施す脱芒部2と、脱芒した種籾を規定網目の選別網面に摺接させて選別する選別部3とで構成される。脱芒部2は固定筒体4内に撹拌回転体5を備える。選別部3は規定網目の選別網面を有する固定筒体6内に掻き上げ回転体8を備えている。掻き上げ回転体8は固定筒体6の内面に接して回転する可撓性板7を有している。脱芒部2の撹拌回転体5と選別部3の掻き上げ回転体8は同一回転軸9による一体回転構成である。選別部3の固定筒体6は、軸周方向にその一部を規定網目の選別網面とし、かつ他の部分を網面の無い滑らかな弧状面である無孔滑面とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種籾として収穫乾燥した種籾から不完全籾粒を排除して健全種籾を得る種籾の粒状選別または食用などの消費用籾の粒状選別のための籾選別装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
種籾として収穫乾燥した種籾には、健全種籾とともに不完全籾粒がかなりの比率で混ざっているので、良質の種籾を得るには不完全籾粒を選別して除去する必要がある。
【0003】
従来、最も信頼性の高い種籾の選別手段として、一定濃度(比重:約1.13)の塩水に種籾を浸して掻き混ぜ、浮き上がった籾粒を除去する塩水選が普及している(特開平8−187464号公報、特開平8−187465号公報または特開平8−192109号公報のいずれも段落「0002」参照)。
【0004】
種籾の塩水選は不完全籾粒を確実に排除できるところから、健全種籾を得るための選別面からみれば卓越した手段ではあるが、高濃度の塩水を用いなければならないので、近時その廃水による環境破壊が問題視されているだけでなく、塩水に浸した種籾を水洗して乾燥しなければならないなど、作業面からみても多くの問題点が指摘されていた。
【0005】
このように、広く行われている種籾の塩水選は、選別機能面で優れているとしても反面で多くの欠点もあるところから、前掲の特開平8−187464号公報、特開平8−187465号公報または特開平8−192109号公報においては、種籾の揺動による比重選別手段をそれぞれ紹介している。
【特許文献1】特開平8−187464号公報
【特許文献2】特開平8−187465号公報
【特許文献3】特開平8−192109号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前掲の特開平8−187464号公報、特開平8−187465号公報または特開平8−192109号公報において紹介している種籾の揺動による比重選別手段は、揺動により比重の小さい籾粒を比重の大きい籾粒の上層に浮上させ、下層の籾粒を健全種籾として分離する選別作用によるところから、下層に沈む籾粒と上層に浮上する籾粒との分離性が不完全であって、とても塩水選に匹敵するような信頼性の高い種籾の選別は到底できないものであった。
【0007】
そこで本発明は、果実が充実して外形状の整っている籾粒が発芽能、生育能、耐細菌性および耐黴性に特にすぐれるとの知見に基づき、種籾を規定網目の選別網面に摺接させて網目を透過する籾粒を排除し、上記選別網面の網目を透過せずに残った籾粒を健全種籾とする種籾の選別と、食用などの消費用籾を優良籾と屑籾などのように的確かつ効率的に粒状選別できる籾選別装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明の請求項1に係る籾選別装置は、種籾または食用などの消費用籾を粒状選別する籾選別装置であって、選別網面を有する固定筒体と、被選別籾を上記固定筒体の内面に摺接させる掻き上げ回転体とを備えてなることを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明の請求項2に係る籾選別装置は、請求項1の構成において、固定筒体は、その軸周方向の略上半部が規定網目の選別網面をなし、かつ略下半部が網面の無い滑らかな弧状面である無孔滑面をなしていることを特徴とするものである。
【0010】
さらに、本発明の請求項3に係る籾選別装置は、請求項1または2の構成において、固定筒体に内蔵された掻き上げ回転体は、固定筒体の内面に接して回転する可撓性板を備えてなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る籾選別装置によれば、種籾とする籾から発芽能、生育能、耐細菌性および耐黴性に特にすぐれた健全種籾を的確に選別することができ、また食用などの消費用籾を優良籾と屑籾などのように的確かつ効率的に粒状選別することができる効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1は本発明による籾選別装置の全体を示す断面図、図2は同上要部の分解斜視図、図3は選別部の分解斜視図、図4は選別部の規定網目の選別網面を有する固定筒体の斜視図、図5は他の構成を示す要部の分解斜視図である。
【0013】
以下種籾の選別を例とし説明する。図1に示すように、本発明に係る籾選別装置1は、種籾を投入して脱芒処理を施す脱芒部2と、脱芒した種籾を規定網目の選別網面に摺接させて選別する選別部3とで構成されている。脱芒部2は筒形の固定筒体4内に撹拌回転体5を備え、選別部3は規定網目の選別網面を有する円筒形の固定筒体内6に掻き上げ回転体8を備えている。この掻き上げ回転体8は、固定筒体内6の内面に接して回転する可撓性板7を備えてなるものである。上記脱芒部2の撹拌回転体5と選別部3の掻き上げ回転体8は同一の回転軸9による一体回転構成である。
【0014】
脱芒部2の固定筒体4と選別部3の固定筒体6は、軸方向に連なるように配置されていて、その仕切り面10の下部は連通口11により連通しており、連通口11には開度および開閉自在の手動によるシャッタ12を備えている。脱芒部2の固定筒体4の始端上部には種籾を投入するホッパ13が取り付けられている。このホッパ13は着脱自在であって、梱包時や不使用時には選別部3の下部空間内に収蔵できるようになっている。14は駆動電動機であって、脱芒部2の下部空間内に収蔵されて固定されており、電動機14と脱芒部2の撹拌回転体5と選別部3の掻き上げ回転体8の回転軸9とは、ベルト伝動機構15により連結されている。
【0015】
脱芒部2の固定筒体4内の撹拌回転体5は、筒状部16に多数の撹拌突起部17を設けたものである。図示の固定筒体4は8角筒体であるが必ずしもそれに限らない。選別部3の固定筒体6は、その略上半部が規定網目の選別網面18をなし、略下半部は網面の無い滑らかな弧状面である無孔滑面19をなしている。固定筒体6はその全周面を選別網面18としてもよい。固定筒体内6内の掻き上げ回転体8は、その内面に接して回転する可撓性板7を有していて、回転軸9に2枚の可撓性板7を取り付けたものである。可撓性板7はウレタンゴム板であるが、これはブラシ状のものであってもよい。上記のように無孔滑面19を設けることにより籾粒に過大な摺接や衝撃を加えないですむので、いっそう良好な健全種籾を得ることができる。選別部3の固定筒体6の終端側下部には選別された健全種籾の送り出し樋20を設けてある。
【0016】
選別部3の固定筒体6の選別網面18は、周方向に細長の網目をなしており、その網目の目幅は2.0〜2.5mmの範囲内で選定するが、2.1または2.2が好適である。
【0017】
脱芒部2の固定筒体4は機体に固定されており、選別部3の固定筒体6も脱芒部2と反対側から挿入して機体に固定するが、図5に示すように、仕切り面10に回転軸9を囲むように複数の案内棒21を取り付けておけば、固定筒体6をその案内棒21に沿って挿入することによって的確に位置決めがなされるので、固定筒体6の装着が容易にできる。
【0018】
本発明に係る籾選別装置1は、脱芒部2の撹拌回転体5と選別部3の掻き上げ回転体8が同一の回転軸9による一体回転構成であって、脱芒部2と選別部3が機能上一体構成であるから、脱芒と選別の機能向上と構成の簡素化による利点が大きいものである。
【0019】
本発明に係る籾選別装置1により種籾の選別をするには、ホッパ13に種籾を投入するが、ホッパ13に投入された種籾は脱芒部2の撹拌回転体5による撹拌に伴う固定筒体4との間の衝撃や摩擦作用によって脱芒され、脱芒された種籾は連通口11から選別部3の固定筒体6内に移動する。そして、選別部3の固定筒体6内に移動した種籾は、掻き上げ回転体8により固定筒体6の内面に摺接されるとともに投擲作用も加わるので、種籾に混在している不完全籾粒と塵埃は固定筒体6の選別網面18を透過して排除され、選別網面18を透過せずに残った籾粒が健全種籾として送り出し樋20から取り出される。
【0020】
このように、本発明に係る籾選別装置1によれば、選別部3の固定筒体6の選別網面18から透過しない籾粒を健全籾とするので、選別網面18の目幅を大きく設定するほど信頼性の高い健全種籾を選別することができるが、その反面不完全籾粒として排除される比率が高くなる。しかしながら、排除される籾粒も塩水選のように籾粒を濡らさないので、そのまま食用などの消費用として無駄なく利用することができる。そして、この場合にあっては、選別網面18の網目の目幅は2.5mmを超えてさらに大きく選定してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明による籾選別装置の全体を示す断面図である。
【図2】同上要部の分解斜視図である。
【図3】選別部の分解斜視図である。
【図4】選別部の規定網目の選別網面を有する固定筒体の斜視図である。
【図5】他の構成を示す要部の分解斜視図である。
【符号の説明】
【0022】
1 籾選別装置
2 脱芒部
3 選別部
4 固定筒体
5 撹拌回転体
6 固定筒体
7 可撓性板
8 掻き上げ回転体
9 回転軸
10 仕切り面
11 連通口
12 シャッタ
13 ホッパ
14 駆動電動機
15 ベルト伝動機構
16 筒状部
17 撹拌突起部
18 選別網面
19 無孔滑面
20 健全種籾の送り出し樋
21 案内棒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
種籾または食用などの消費用籾を粒状選別する籾選別装置であって、
選別網面を有する固定筒体と、被選別籾を上記固定筒体の内面に摺接させる掻き上げ回転体とを備えてなることを特徴とする籾選別装置。
【請求項2】
固定筒体は、その軸周方向の略上半部が規定網目の選別網面をなし、かつ略下半部が網面の無い滑らかな弧状面である無孔滑面をなしていることを特徴とする請求項1記載の籾選別装置。
【請求項3】
固定筒体に内蔵された掻き上げ回転体は、固定筒体の内面に接して回転する可撓性板を備えてなることを特徴とする請求項1または2記載の籾選別装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−152351(P2007−152351A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−351534(P2006−351534)
【出願日】平成18年12月27日(2006.12.27)
【分割の表示】特願2004−55504(P2004−55504)の分割
【原出願日】平成16年2月27日(2004.2.27)
【出願人】(000132792)株式会社タイガーカワシマ (48)
【Fターム(参考)】