説明

粒子状吸水剤の製造方法

【課題】吸水膨潤時であっても形状を保持し、加圧下吸水倍率や吸水速度に優れ、機械的な衝撃や摩擦等の外力が加わっても微粉末の再生が少ない吸水剤の製造方法、更に、幅広い用途で吸水速度に優れる吸水剤の製造方法を提供することである。
【解決手段】ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂粉末及び水性液とを混合して粒子状凝集物とし、当該粒子状凝集物を乾燥して得られる吸水性樹脂造粒物からなる粒子状吸水剤の製造方法であって、上記吸水性樹脂粉末100重量部に対して、カルボキシル基と反応しうる官能基を有する高分子粉末又は無機粉末から選ばれる反応性粒子10〜200重量部と水性液30〜300重量部とを混合し、かつ、混合後に110〜250℃で乾燥することを特徴とする、粒子状吸水剤の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸水性樹脂を主成分とする粒子状吸水剤の製造方法に関する。更に詳しくは、吸水性樹脂粉末、反応性粒子及び水性液を混合後、乾燥して得られる粒子状吸水剤の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自重の数十倍から数百倍の水を吸収する吸水性樹脂が開発され、生理用品や紙オムツ等の衛生材料分野をはじめとして農園芸用分野、鮮度保持用途等の食品分野、結露防止や保冷材等の産業分野等、吸水や保水を必要とする用途に種々の吸水性樹脂が使用されてきている。このような吸水性樹脂としては、例えば、デンプン−アクリルニトリルグラフト重合体の加水分解物、デンプン−アクリル酸グラフト重合体の中和物、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体のケン化物、アクリロニトリル共重合体若しくはアクリルアミド共重合体の加水分解物、又はこれらの架橋体、逆相懸濁重合によって得られた自己架橋型ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸部分中和物架橋体等が知られている。用いられる用途に応じて、吸水性樹脂に要求される性能は異なるが、衛生材料向けの吸水性樹脂に望まれる特性としては、水性液体に接した際の、高い加圧下の吸水倍率、速い吸水速度、大きい通液性等が挙げられる。しかしながら、これらの特性間の関係を必ずしも、正の相関を示さず、同時にこれらの特性を改良することは困難であった。
【0003】
そこで、吸水性樹脂の吸水速度を高める試みとして、例えば、表面積を大きくするために、粒径を小さくしたり、顆粒状にしたり或いはリン片状にしたりする試みがなされている。ところが、一般に吸水性樹脂が小さな粒子径に形成される場合には、水性液体との接触により吸水性樹脂粒子は、いわゆる“ママコ”を形成し、吸水速度が低下する。吸水性樹脂が造粒物に形成される場合には、水性液体と接触することで造粒物自体が個々に“ママコ”の状態に変化するという現象が起り吸水速度がかえって低下する。吸水性樹脂が薄片に形成される場合には、その吸水速度は改良されるが、ゲルブロッキングを誘発するために、吸水速度は充分でなく、更に吸水性樹脂を薄片に形成することは、製造される吸水性樹脂は必然的にかさばり、より大きな輸送及び貯蔵設備を要するために不経済である。又、吸水性樹脂の表面近傍の分子鎖を架橋させ、表面層の架橋密度を上げることによりママコの生成を防止し吸水速度の向上を図る技術も提案されている(特許文献1〜6)。これらの技術によって吸水速度の改善はある程度なされた。しかしながら、これら吸水性樹脂は、目的とする最適な粒子径よりも細かい微粒子をかなりの割合で含んでいるのが実情であった。そのため、このような吸水性樹脂を使用した場合でも、十分な吸水速度が得られず、ゲルブロッキングに伴う通液性の低下が生じた。これらの問題を解決するために、以下に述べるような吸水性樹脂の造粒方法が提案されている。例えば、吸水性樹脂微粉末の表面近傍の分子鎖を架橋させて、造粒する方法(特許文献7〜9)、水又は水に水溶性高分子や無機粉末等を併用したバインダーで造粒する方法(特許文献10〜15)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭57−44627号公報
【特許文献2】特開昭58−42602号公報
【特許文献3】特公昭60−18690号公報
【特許文献4】特開昭58−180233号公報
【特許文献5】特開昭59−62665号公報
【特許文献6】特開昭61−16903号公報
【特許文献7】特開平4−21434号公報
【特許文献8】特開平4−21435号公報
【特許文献9】特開平4−21436号公報
【特許文献10】特開平11−106514号公報
【特許文献11】特開平3−501493号公報
【特許文献12】特開平3−501494号公報
【特許文献13】特開平3−126730号公報
【特許文献14】特開平2−284927号公報
【特許文献15】特開平7−90108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献で開示されている方法では、造粒物の強度が十分でなく、造粒物に機械的な衝撃や摩擦力、工場でのラインや輸送中の振動等の外力が加わることで、造粒物の一部が壊れて微粉末が再生し、そのために、十分な吸収性能が得られないという問題がある。又、造粒強度が低く、吸水膨潤時に細かいゲルが再生しゲルブロッキングが起こるため、加圧下の吸水倍率の低く、吸水速度の低いものしか得られないという課題がある。
【0006】
従来、吸水速度の測定において、紙オムツ等の衛生材料の用途が主流であったため、その被吸収液として、生理食塩水(例えば0.9重量%前後の塩化ナトリウム水溶液)や各種組成の人工尿で主に吸水倍率が評価され、例えば、生理食塩水を用いたVortex吸水速度法等によって規定されていた。しかしながら、Vortex吸水速度が優れた吸水剤であっても、吸水速度は被吸収液の塩濃度や被吸収液と吸水剤との接触様態の影響を受けるため、衛生材料以外の用途において、実際に使用される用途や使用形態によって、十分な吸水速度が得られているとは言い難い。
【0007】
本発明の目的は、吸水膨潤時にも形状を保持し、加圧下吸水倍率と吸水速度に優れ、機械的な衝撃や摩擦力等の外力が加わっても微粉末の再生が少ない粒子状吸水剤の製造方法を提供することである。
更に本発明の目的は、幅広い用途において、吸水速度に優れる粒子状吸水剤の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の吸水剤の製造方法は、以下の通りである。
【0009】
ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂粉末及び水性液とを混合して粒子状凝集物とし、当該粒子状凝集物を乾燥して得られる吸水性樹脂造粒物からなる粒子状吸水剤の製造方法であって、上記吸水性樹脂粉末100重量部に対して、カルボキシル基と反応しうる官能基を有する高分子粉末又は無機粉末から選ばれる反応性粒子10〜200重量部と水性液30〜300重量部とを混合し、かつ、混合後に110〜250℃で乾燥する、粒子状吸水剤の製造方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、吸水膨潤時にも形状を保持し、加圧下吸水倍率と吸水速度に優れ、機械的な衝撃や摩擦力等の外力が加わっても微粉末の再生が少ない粒子状吸水剤の製造方法を提供できる。更に、本発明の製造方法で得られる粒子状吸水剤は、吸水液の塩濃度や吸液時の液の撹拌によらず、吸水速度が速いという特徴を有するため、生理用品や紙オムツ等の衛生材料分野だけでなく、医療用品等の医療分野、土壌保水剤等の農園芸用分野、鮮度保持用途等の食品分野、結露防止材や保冷材等の産業分野等の幅広い分野で好ましく使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、吸水性樹脂の物性のひとつであるAAP(加圧下吸水倍率)を測定する装置を示す概略図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係る粒子状吸水剤の製造方法について詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更、実施し得る。具体的には、本発明は下記の各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても、本発明の技術的範囲に含まれる。
【0013】
〔1〕用語の定義
(1−1)「粒子状吸水剤」
本発明における「粒子状吸水剤」とは、吸水性樹脂を主成分とする水性液の吸収ゲル化剤を意味し、粒子状のものをいう。当該粒子状吸水剤は、被吸収液として水を含むものを吸収する際に使用される。尚、上記被吸収液としては、水を含めばよく、その形状(固体、液体、気体)や組成・構成(水単独或いは水との混合物)について特に問われないが、尿、特に人尿が該当する。
【0014】
又、本発明の粒子状吸水剤は、その他の化合物を含んでもよいが、吸水特性の観点から、粒子状吸水剤中に吸水性樹脂を好ましくは30重量%以上、より好ましくは50重量%以上、更に好ましくは70重量%以上、特に好ましくは85重量%以上含有することが好ましい。
【0015】
(1−2)「吸水性樹脂」
本発明における「吸水性樹脂」とは、水膨潤性水不溶性の高分子ゲル化剤を意味する。尚、「水膨潤性」とは、ERT441.2−02で規定するCRC(無加圧下吸水倍率)が5[g/g]以上であることをいい、「水不溶性」とは、ERT470.2−02で規定するExt(水可溶分)が0〜50重量%であることをいう。
【0016】
当該吸水性樹脂は、その用途に応じて適宜設計可能であり、特に限定されるものではないが、カルボキシル基を含有する不飽和単量体を架橋重合させた、親水性架橋重合体であることが好ましい。又、吸水性樹脂は全量(100重量%)が重合体に限定されず、上記のCRC(無加圧下吸水倍率)及びExt(水可溶分)を維持する範囲内において、添加剤等を含んだ組成物であってもよい。更に、表面架橋の有無は問わず、形状についても特に限定されず、シート状、繊維状、粉末状、フィルム状、ゲル状等であってもよく、これらを吸水性樹脂と総称する。尚、本発明においては、表面架橋前の粉末状の吸水性樹脂を特に「吸水性樹脂粉末」と称する。
【0017】
(1−3)「ポリアクリル酸(塩)」
本発明における「ポリアクリル酸(塩)」とは、任意にグラフト成分を含み、繰り返し単位として、アクリル酸及び/又はその塩(以下、「アクリル酸(塩)」と称する)を主成分とする重合体を意味する。具体的には、架橋剤を除く単量体として、アクリル酸(塩)を好ましくは30〜100モル%含む重合体をいう。
【0018】
(1−4)「EDANA」及び「ERT」
「EDANA」は欧州不織布工業会(European Disposables and Nonwovens Assoiations)の略称であり、「ERT」は欧州標準(ほぼ世界標準)である吸水性樹脂の測定方法(EDANA Recommended Test Metods)の略称である。本発明では、特に断りのない限り、粒子状吸水剤について、ERT原本(公知文献:2002年改訂)に準拠して測定した。
【0019】
(a)「CRC」(ERT441.1−02)
「CRC」はCentrifuge Retention Capacity(遠心分離保持容量)の略称であり、吸水性樹脂(粒子状吸水剤)の無加圧下吸水倍率(以下、「吸水倍率」と称することもある。)を意味する。具体的には、不織布袋中の吸水性樹脂(粒子状吸水剤)0.200gを大過剰の0.9重量%塩化ナトリウム水溶液に30分間浸漬(自由膨潤)させた後、遠心分離機で水切りした後の吸水倍率(単位;[g/g])である。
【0020】
(b)「AAP」(ERT442.2−02)
「AAP」はAbsorbency Against Pressureの略称であり、吸水性樹脂(粒子状吸水剤)の加圧下吸水倍率を意味する。具体的には、吸水性樹脂(粒子状吸水剤)0.900gを大過剰の0.9重量%塩化ナトリウム水溶液に対して、2.06kPa(0.3psi)の荷重下で1時間膨潤させた後の吸水倍率(単位;[g/g])である。尚、ERT442.2−02では、「Absorption Under Pressure」と表記されているが、AAPと実質的に同一内容である。又、荷重条件を4.83kPa(0.7psi)に変更して測定することもある。
【0021】
(c)「Ext」(ERT470.2−02)
「Ext」はExtractablesの略称であり、吸水性樹脂(粒子状吸水剤)の水可溶分(水可溶成分量)を意味する。具体的には、吸水性樹脂(粒子状吸水剤)1.000gを0.9重量%の塩化ナトリウム水溶液200mLに添加し、500rpmで16時間攪拌した後の溶解ポリマー量(単位;重量%)である。溶解ポリマー量の測定はpH滴定で行う。
【0022】
(d)「PSD」(ERT420.2−02)
「PSD」はParticle Size Distributionの略称であり、篩分級により測定される吸水性樹脂(粒子状吸水剤)の粒度分布を意味する。又、吸水性樹脂(粒子状吸水剤)の重量平均粒子径(D50)及び粒子径分布幅は欧州特許第0349240明細書7頁25〜43行に記載された「(1) Average Particle Diameter and Distribution of Particle Diameter」と同様の方法で測定する。
【0023】
(e)「Moisture Content」(ERT430.2−02)
「Moisture Content」は吸水性樹脂(粒子状吸水剤)の含水率を意味する。具体的には、吸水性樹脂(粒子状吸水剤)1gを105℃で3時間乾燥した際の乾燥減量から算出した値(単位;重量%)である。尚、本発明では乾燥温度を180℃に変更し、測定は1サンプルに付き5回行い、その平均値を採用した。
【0024】
(1−5)「吸水速度」
本発明における「吸水速度」とは、(1)スターラーで攪拌している0.9重量%の塩化ナトリウム水溶液(生理食塩水)50mL中に、吸水性樹脂(粒子状吸水剤)2.000gを投入し、攪拌による渦が消えるまでの時間(単位;秒)(Vortex法;吸水速度(a))と、(2)脱イオン水200mL中に、吸水性樹脂(粒子状吸水剤)2.000gを投入し、静置状態で液面が吸水性樹脂で置き換わるまでの時間(単位;秒)(吸水速度(b))を意味する。
【0025】
(1−6)その他
本明細書において、範囲を示す「X〜Y」は「X以上Y以下」を意味する。又、重量の単位である「t(トン)」は「Metric ton(メトリック トン)」を意味し、「重量」と「質量」、「重量%」と「質量%」、「重量部」と「質量部」は同義語として扱う。又、特に注釈のない限り、「ppm」は「重量ppm」又は「質量ppm」を意味する。更に、「〜酸(塩)」は「〜酸及び/又はその塩」を意味し、「(メタ)アクリル」は「アクリル及び/又はメタクリル」を意味する。
【0026】
〔2〕吸水性樹脂粉末の製造方法
本発明に係る粒子状吸水剤の製造に使用される吸水性樹脂粉末は、公知の吸水性樹脂であり、中でもカルボキシル基を有するものが好ましく、アクリル酸(塩)を主成分とする親水性単量体を重合することによって得られる。以下、吸水性樹脂粉末の製造方法について述べる。
【0027】
(2−1)重合工程
本工程は、アクリル酸(塩)系単量体を主成分とする水溶液を重合して、含水ゲル状架橋重合体を得る工程である。
【0028】
(単量体)
本発明に係る粒子状吸水剤の製造に使用される吸水性樹脂粉末は、アクリル酸(塩)を主成分として含む親水性単量体を、通常、水溶液状態で重合し、その後、乾燥、粉砕、分級等の各操作を行うことによって得られる。上記アクリル酸(塩)としては、アクリル酸が10〜40モル%及びアクリル酸塩が60〜90モル%(但し、両者の合計は100モル%とする)であるものが好ましく使用される。又、上記アクリル酸塩としては、アクリル酸のアルカリ金属塩、アンモニウム塩又はアミン塩等が挙げられる。尚、アクリル酸塩を得るための中和操作は、単量体で行ってもよいし、重合中又は重合後に行ってもよい。
【0029】
又、上記親水性単量体を水溶液状態(以下、「単量体水溶液」と称する)で使用する場合、単量体水溶液中の単量体濃度としては、特に限定されないが、10〜70重量%が好ましく、20〜40重量%がより好ましい。尚、下記水溶液重合又は逆相懸濁重合を行う場合には、水以外の溶媒を必要に応じて併用することができる。その場合、併用する溶媒の種類は特に限定されない。
【0030】
本発明において、アクリル酸(塩)を主成分として使用する際、アクリル酸(塩)以外の単量体を必要に応じて併用することもできる。かような単量体としては、特に限定されないが、例えば、メタクリル酸、マレイン酸、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルエタンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルプロパンスルホン酸等のアニオン性不飽和単量体(塩);(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、N−アクリロイルピペリジン、N−アクリロイルピロリジン等のノニオン性の親水基含有不飽和単量体;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド及びこれらの四級塩等のカチオン性不飽和単量体等が挙げられる。これらのアクリル酸(塩)以外の単量体は、一又は二以上の単量体を併用することができる。尚、当該単量体を使用する場合、その使用量は、主成分として用いるアクリル酸(塩)との合計量に対して、好ましくは30モル%以下、より好ましくは10モル%以下である。
【0031】
更に、上記単量体に、炭酸(水素)塩、二酸化炭素、アゾ化合物、不活性有機溶媒等の各種発泡剤;澱粉・セルロース、澱粉・セルロースの誘導体、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸(塩)、ポリアクリル酸(塩)架橋体等の親水性高分子;各種界面活性剤;次亜燐酸(塩)等の連鎖移動剤等を添加して、重合をすることができる。
【0032】
(内部架橋剤)
本発明における吸水性樹脂粉末は、架橋剤を使用しない自己架橋型であってもよいが、吸水性能の観点から、1分子内に2個以上の重合性不飽和基や反応基を有する内部架橋剤を共重合又は反応させたものが好ましい。
【0033】
当該内部架橋剤としては特に限定されないが、例えば、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチルロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、グリセリンアクリレートメタクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルホスフェート、トリアリルアミン、ポリ(メタ)アリロキシアルカン、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、エチレンジアミン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ポリエチレンイミン、グリシジル(メタ)アクリレート等を挙げられる。これらの内部架橋剤は、一又は二以上の内部架橋剤を併用することができるが、反応性や吸水特性等を考慮すると2個以上の重合性不飽和基を有する内部架橋剤を使用することが好ましい。尚、当該内部架橋剤は、反応系に一括添加でも分割添加でもよい。
【0034】
上記内部架橋剤の使用量は、所望する粒子状吸水剤の物性により適宜決定できるが、内部架橋剤を除く上記単量体に対して、0.001〜5モル%が好ましく、0.005〜2モル%がより好ましく、0.01〜1モル%が更に好ましい。当該内部架橋剤の使用量を上記範囲内とすることで、所望する吸水特性を備えた吸水性樹脂粉末が得られる。
【0035】
(重合開始剤)
本発明において使用される重合開始剤は、重合形態によって適宜選択され、特に限定されないが、例えば、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、t−ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化水素、2,2’−アゾビス(2−アミノジプロパン)二塩酸塩等のラジカル重合開始剤や、これらの重合開始剤の分解を促進する還元剤を併用したレドックス系重合開始剤等が挙げられる。当該還元剤としては特に限定されないが、例えば、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム等の亜硫酸(塩);L−アスコルビン酸(塩);第一鉄塩等の還元性金属塩;アミン類等が挙げられる。
【0036】
上記重合開始剤の使用量は、所望する粒子状吸水剤の物性により適宜決定できるが、上記単量体に対して、0.0001〜1モル%が好ましく、0.0005〜0.5モル%がより好ましい。当該重合開始剤の使用量を上記範囲内とすることで、吸水性樹脂粉末中の残存モノマーや水可溶分を所望する範囲とすることができる。尚、上記重合開始剤を使用する代わりに、放射線、電子線、紫外線等の活性エネルギー線を反応系に照射することで重合反応を行ってもよい。
【0037】
(重合方法)
本発明における吸水性樹脂粉末の製造方法において、適用される重合方法として、特に限定されないが、例えば、噴霧重合、液滴重合、バルク重合、沈殿重合、水溶液重合、逆相懸濁重合等が挙げられる。中でも、得られる粒子状吸水剤の性能や重合制御の容易さ等の観点から、上記親水性単量体を水溶液とする水溶液重合又は逆相懸濁重合が好ましい。
【0038】
尚、本発明における「水溶液重合」とは、分散溶媒を用いずに単量体水溶液を重合する方法をいい、米国特許第4625001号、同第4873299号、同第4286082号、同第4973632号、同第4985518号、同第5124416号、同第5250640号、同第5264495号、同第5145906号、同第5380808号等の米国特許や、欧州特許第0811636号、同第0955086号、同第0922717号等の欧州特許に開示されている方法が適用される。
【0039】
又、本発明における「逆相懸濁重合」とは、単量体水溶液を疎水性有機溶剤中に懸濁させて重合する方法をいい、米国特許第4093776号、同第4367323号、同第4446261号、同第4683274号、同第5244735号等の米国特許に開示されている方法が適用される。
【0040】
本発明において、上述の重合工程における反応温度は、特に限定されないが、20〜90℃が好ましい。又、反応時間についても特に限定されず、親水性単量体や重合開始剤の種類や量、反応温度等に応じて、適宜決定すればよい。
【0041】
(2−2)その他の工程
上記重合工程を経て得られた含水ゲル状架橋重合体は、乾燥(乾燥工程)した後、必要により、粉砕(粉砕工程)、分級(分級工程)を行うことで、本発明の粒子状吸水剤に用いられる吸水性樹脂粉末が得られる。尚、上述した乾燥工程、粉砕工程及び分級工程は、〔3〕粒子状吸水剤の製造方法で述べる各工程の内容が適用される。
【0042】
(吸水性樹脂粉末)
本発明で用いられる吸水性樹脂粉末としては、上記操作を経て得られたものであればよく、特に限定されないが、例えば、粒子径が150μm未満の微粉末のみから構成される吸水性樹脂、粒子径が850μm未満の大きな粒子と上記微粉末との混合物から構成される吸水性樹脂、粒子径が150μm以上850μm未満の粒子から構成される吸水性樹脂等が挙げられる。又、上述した微粉末は、製造工程(分級工程)で分級されたものであっても良いし、高吸水速度等を目的とする場合、意図的に粉砕又は重合条件を調整して微粉末のみを製造したものであっても良い。又、微粉末の形状としては、造粒強度の観点から、逆相懸濁重合で得られる球形状よりも水溶液重合で得られる不定形状が好ましい。更に、本発明における吸水性樹脂粉末について、表面架橋の有無は問わない。
【0043】
本発明においては、吸水性樹脂粉末として、粒子径が150μm未満の微粉末のみで構成される吸水性樹脂を用いることが好ましく、当該微粉末の重量平均粒子径(D50)は10〜150μmが好ましい。又、粒子径150μm未満の粒子を好ましくは70重量%以上、より好ましくは90重量%以上含有していることが好ましい。
【0044】
〔3〕粒子状吸水剤の製造方法
本発明に係る製造方法で得られる粒子状吸水剤は、上記〔2〕で得られた吸水性樹脂粉末に反応性粒子及び水性液とを混合(混合工程)し、得られた粒子状凝集物を乾燥して(乾燥工程)吸水性樹脂造粒物とし、その後、必要に応じて、粉砕、分級(粉砕・分級工程)することで得られる。以下、粒子状吸水剤の製造方法について述べる。
【0045】
(3−1)混合工程
本工程は、上記〔2〕で得られた吸水性樹脂粉末に反応性粒子及び水性液とを混合して、粒子状凝集物を得る工程である。
【0046】
(反応性粒子)
本発明で用いられる「反応性粒子」とは、カルボキシル基と反応しうる官能基を有する、高分子粉末又は無機粉末から選ばれる、室温において微粒子状の化合物をいう。
【0047】
上記反応性粒子は、その表面にカルボキシル基と反応して、エステル結合、アミド結合又はイオン結合を形成しうる官能基を2個以上有することが好ましい。かような官能基を有する反応性粒子は、吸水性樹脂粉末の表面近傍に存在するカルボキシル基と架橋反応を起こし、粒子間架橋が形成される。この粒子間架橋によって、粒子状凝集物内部に空隙が適度に形成される。この空隙が毛細管として作用するため、被吸収液を素早く吸収することができ、優れた吸水速度が達成できる。更に、この粒子間架橋によって、造粒強度が向上し、膨潤時のゲル保形性が向上する。
【0048】
本発明において、上述したカルボキシル基と反応して、エステル結合、アミド結合又はイオン結合を形成しうる官能基としては、特に限定されないが、例えば、ヒドロキシル基、アミノ基、シクロカーボネート基、オキサゾリジノン基、イミダゾリジノン基、環状ウレタン基、環状尿素基、オキセタン基等を挙げることができる。
【0049】
本発明における反応性粒子として、更に具体的には、上記官能基を有するモノマーとの共重合等によって、その表面に上記官能基が導入された、ナイロン樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂ベンゾグアナミン・メラミン樹脂、ポリエチレン樹脂、超高分子量ポリオレフィン(PE)樹脂、フッ素樹脂、ポリアクリロニトリル(PAN)樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル・スチレン樹脂合成樹脂粒子等の合成樹脂粒子;ポリエチレンイミン、ポリビニルアルコール、多糖類等の水溶性高分子粉末;シランカップリング剤、ポリアミン、ポリアルコール、ポリビニルピロリドン等の高分子粉末、界面活性剤等による表面修飾によって、表面に上記官能基が導入された、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン等の金属酸化物;リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム等の有機酸金属塩;珪藻土、ベントナイト、タルク、カオリン等の粘土;ゼオライト等の水難溶性又は水不溶性無機粉末が挙げられる。中でも、水溶性高分子粉末が好ましく、更に、入手性及び価格の観点から、多糖類が好ましい。
【0050】
本発明で用いられる「多糖類」とは、単糖類反復単位を含む骨格を有するポリマーであり、代表的なものの例示として、以下の化合物が挙げられる。
【0051】
即ち、デンプン、アミロペクチン、アミロース、セルロース、ガラクトマンナン、グルコマンナン、キサンタンガム、カラギーナン、キチン、キトサン及びこれらの変性物等である。更に、具体的例示として、「デンプン」には、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、小麦デンプン、タピオカデンプン、ワキシーコーンデンプン、米デンプン、甘藷デンプン等が含まれる。又、「セルロース」には、木綿、木材由来のパルプ、バクテリアセルロース、リグノセルロース、再生セルロース(セロハンや再生繊維等)、微結晶セルロース等が含まれる。更に、「ガラクトマンナン」には、グアガム、ローカストビーンガム、タラガム、カシアガム等が含まれる。
【0052】
又、本発明で用いられる多糖類は、未変性であっても、置換基等を導入した変性物であってもよい。当該変性物としては、特に限定されないが、例えば、変性デンプン、変性アミロペクチン、変性アミロース、変性セルロース、変性ガラクトマンナン、変性グルコマンナン、変性キサンタンガム、変性カラギーナン等が挙げられる。これらの変性物は、各多糖類のアセチル化処理等のエステル化、カルボキシアルキル化等のエーテル化、リン酸化、酸化、硫酸化、リン酸架橋、アジピン酸架橋、酵素処理及びこれらの組み合わせにより得られる。上記変性によって導入される置換基は1種でもよいし、2種以上でもよい。当該多糖類の置換度は、未変性物の場合は0であり、変性物の場合は吸水性能と価格の観点から、好ましくは2以下、より好ましくは1以下、更に好ましくは0.5以下、特に好ましくは0.25以下である。
【0053】
又、これらの多糖類は、架橋されていてもよい。多糖類の架橋は、公知の任意の方法で行うことができる。例えば、架橋剤を用いて架橋させてもよいし、放射線(ガンマ線、X線又は電子ビーム等)及び/又は熱で架橋させてもよい。尚、架橋剤を用いる場合、架橋剤としては、特に限定されないが、ジメチロールエチレン尿素、ジメチロールジヒドロキシエチレン尿素等の分子内に環状部分を有するN−メチロール化合物;クエン酸トリカルバリル酸、ブタンテトラカルボン酸等のポリカルボン酸;エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル等の多官能性エポキシ化合物;アルミニウムイオン、クロムイオン等の多価金属イオン;アミノ酸、ポリアミン、トリアミン、ジアミン等の多官能性アミン;グルタルアルデヒド、グリオキサール等の多官能性アルデヒド類等が挙げられる。これらの架橋剤は、一又は二以上の架橋剤を併用することができる。又、中でも、入手性や価格の観点から、デンプン、セルロース、これらの変性物が好ましく、未変性のデンプン、未変性のセルロースが特に好ましい。
【0054】
上記反応性粒子の使用量は、吸水性樹脂粉末100重量部に対して、10〜200重量部であり、20〜150重量部がより好ましい。反応性粒子の使用量が200重量部を超える場合、得られる粒子状吸水剤の加圧下吸水倍率や吸水速度等の吸水性能が低下する虞があるため、好ましくない。
【0055】
又、本発明で用いられる反応性粒子の大きさは100μm以下が好ましく、60μm以下がより好ましい。反応性粒子の大きさが100μmより大きい場合、得られる粒子状吸水剤の加圧下吸水倍率や吸水速度等の吸水性能が低下する虞があるため、好ましくない。
【0056】
(水性液)
本発明で用いられる水性液としては、特に限定されないが、例えば、水、水溶性塩類又は親水性有機溶剤を含んだ水性液、少量の架橋剤を含んだ加熱された水性液等が挙げられる。上述した水性液は、造粒強度や得られる粒子状吸水剤の物性の観点から、90重量%以上、好ましくは99重量%以上、より好ましくは99〜100重量%の範囲内が水であることが好ましく、水のみからなることが特に好ましい。
【0057】
又、少量の架橋剤を含んだ水性液を用いる場合、架橋剤として後述する種類や使用量の表面架橋剤を用いることができる。この場合、水可溶分の低減や造粒強度の更なる向上を図ることができる場合がある。
【0058】
上記水性液の使用量は、吸水性樹脂粉末100重量部に対して、30〜300重量部であり、50〜280重量部がより好ましい。水性液の使用量が300重量部を越える場合、造粒物として扱うことが困難となり、更に乾燥コスト等の面で不利となる。一方、水性液の使用量が30重量部未満の場合、造粒強度が不十分となり、最終製品において優れた吸水性能が発揮できない虞がある。更に、混合が不均一になり、造粒物が得られない場合がある。
【0059】
(混合方法)
本発明における吸水性樹脂粉末、反応性粒子及び水性液との混合方法としては特に限定されないが、例えば、反応性粒子を粉末或いは懸濁液、特に水性懸濁液の形態で吸水性樹脂粉末に混合することが挙げられるが、混合性の観点からは、吸水性樹脂粉末と反応性粒子とを予め混合させておき、その後水性液を添加することが好ましい。このように混合することで、得られる粒子状凝集物内部に吸水性樹脂粉末と反応性粒子が均一に存在することになり、粒子状凝集物内部に空隙が適度に形成され、吸水速度に優れた粒子状吸水剤を得ることができる。
【0060】
又、吸水性樹脂粉末、反応性粒子及び水性液との混合に際して、混合前の水性液を加熱しておくことが好ましい。加熱した水性液を用いることで、吸水速度と加圧下吸水倍率に優れた粒子状吸水剤を得ることができる。
【0061】
上記水性液を加熱する場合、その加熱温度としては40℃以上が好ましく、50℃以上がより好ましく、60℃以上が更に好ましく、70℃以上が特に好ましい。尚、加熱温度の上限としては水性液の沸点以下であり、当該沸点は、塩類や他の溶媒の添加、圧力(減圧、加圧)等を変化させて種々調整してもよいが、温度が100℃を超えても大きな変化がないため、通常、100℃以下で行われる。
【0062】
本発明の目的を達成する為に、水性液を予め加熱することに加え、更に吸水性樹脂粉末も加熱することが好ましい。本発明における吸水性樹脂粉末の加熱温度は、40℃以上が好ましく、50℃以上がより好ましい。尚、100℃を超えても大きな変化はないため、通常、100℃以下で行われる。
【0063】
本発明において、吸水性樹脂粉末、反応性粒子及び水性液との混合に際して、高速混合を行うことが好ましい。上記「高速混合」とは、吸水性樹脂粉末と水性液との混合が完了し、粒子状凝集物が生成するまでの時間(以下、「混合時間」と称する)が短時間であることをいう。当該混合時間は、好ましくは3分間以下であり、より好ましくは1分間以下であり、更に好ましくは1〜60秒間である。上記混合時間が3分間を超える場合、吸水性樹脂粉末と水性液との均一な混合が困難となり巨大な凝集物が形成し、本発明の目的とする粒子状凝集物を得ることが出来ない。また、混合完了後に、混合を長時間続けると、粒子状吸水剤の水可溶分の増加や加圧下吸水倍率の低下等、粒子状吸水剤の劣化を生じる場合があるため、好ましくない。
【0064】
上述した高速混合を達成するための必須要件として、攪拌中の吸水性樹脂粉末と反応性粒子との混合物中に加熱した水性液を一気に投入することが挙げられる。即ち、当該水性液を、例えば、噴霧する等の方法で徐々に添加すると、途中で吸水性樹脂粉末が大きな凝集塊となったり、混練されたりして目的とする粒子状凝集物を得ることが出来ない。したがって、加熱した水性液の投入時間としては、60秒以下が好ましく、30秒以下がより好ましく、10秒以下が更に好ましい。
【0065】
又、上記とは逆に、攪拌中の加熱した水性液中に吸水性樹脂粉末と反応性粒子との混合物を投入する方法でも本発明の目的を達成することができる。この場合、吸水性樹脂粉末と反応性粒子との混合物の投入時間としては、60秒以下が好ましく、30秒以下がより好ましく、10秒以下が更に好ましい。
【0066】
更に、吸水性樹脂粉末と反応性粒子との混合物と、加熱した水性液とを同時に一気に混合する方法でも本発明の目的を達成することができる。この場合、両原料の投入時間が、60秒以下が好ましく、30秒以下がより好ましく、10秒以下が更に好ましい。又、上述した各原料が連続的に同時に投入され、高速混合されることで、粒子状凝集物が連続的に製造される場合もある。
【0067】
(混合装置)
本発明において、吸水性樹脂粉末、反応性粒子及び水性液を混合するに際し、用いられる混合装置としては、上述した高速混合ができれば、特に限定されないが、容器固定型混合機、中でも機械攪拌型混合機が好ましい。当該混合機として、具体的には、例えば、タービュライザー(ホソカワミクロン社製)、レーディゲミキサー(レーディゲ社製)及びモルタルミキサー(西日本試験機社製)等が挙げられる。又、バッチ式混合機でも連続式混合機でもよいが、安定した性能が達成できる点でバッチ式混合機が好ましい。
【0068】
(粒子状凝集物)
本発明において、「粒子状凝集物」とは、複数の吸水性樹脂粉末よりなり、かつ、凝集物の粒子径が好ましくは20mm以下、より好ましくは0.3〜10mm、更に好ましくは0.3〜5mmのものをいう。尚、本発明において、粒子状凝集物の含水率は10重量%以上であり、当該粒子状凝集物を乾燥することで、含水率が10重量%以下の吸水性樹脂造粒物が得られる。尚、粒子状凝集物であることは、光学顕微鏡等によって個々の粒子が形状を保ったまま複数個集まり凝集している事実や、吸液時に複数の不連続粒子として膨潤する事実で確認することができる。
【0069】
(3−2)乾燥工程
本工程は、上記ポリアクリル酸系吸水性樹脂粉末、反応性粒子及び水性液とを混合して得られた粒子状凝集物を乾燥して、吸水性樹脂造粒物を得る工程である。尚、粒子状凝集物を乾燥することでより強固に一体化されるため、造粒強度が向上する。
【0070】
(乾燥方法)
本発明において、粒子状凝集物の乾燥方法は特に限定されず、通常の乾燥機又は加熱炉が広く用いられる。又、乾燥温度としては、比較的高温であることが好ましく、具体的には110〜250℃、好ましくは110〜200℃、より好ましくは120〜180℃である。上記の温度範囲で乾燥することで、吸水性樹脂粉末と反応性粒子が反応し、その結果、加圧下吸水倍率や吸水速度に優れた粒子状吸水剤が得られるため、好ましい。
【0071】
又、乾燥時間としては、物性の観点から一定時間以上行うことが好ましく、具体的には5分〜10時間の範囲内であり、乾燥後の固形分として90重量%以上となるように設定される。又、当該乾燥は、上記で得られた粒子状凝集物のみに対して行ってもよいし、上述した水溶液重合又は逆相懸濁重合で得られた乾燥前の含水ゲル状架橋重合体と一緒に乾燥してもよい。尚、吸水性樹脂粉末の製造方法における乾燥工程にも、上述した条件が好ましく適用される。
【0072】
(3−3)粉砕・分級工程
本工程は、上記操作で得られた吸水性樹脂造粒物を必要に応じて粉砕、分級して粒子状吸水剤を得る工程である。尚、乾燥後の吸水性樹脂造粒物が所望する範囲内の粒度を有する場合には、粉砕、分級を行わず、そのまま粒子状吸水剤とする。
【0073】
(粒子状吸水剤の粒度)
粉砕後の粒子状吸水剤の重量平均粒子径は、200〜800μmが好ましい。本発明では、180μm以下(重量平均粒子径としては、例えば、100μm以下)の吸水性樹脂粉末を、重量平均粒子径200〜800μmに造粒して複合化することが好ましい。
【0074】
(3−4)その他の工程
以下に掲げる工程は、任意であり、必要に応じて行うことができる。
【0075】
(表面架橋工程)
本発明の製造方法で得られる粒子状吸水剤は、従来から知られている表面架橋処理を施すことで、衛生材料向けにより好適な粒子状吸水剤とすることができる。尚、「表面架橋」とは、吸水性樹脂の表面層(表面近傍:吸水性樹脂表面から通常数10μm前後)に更に架橋密度の高い部分を設けることであり、粒子表面でのラジカル開始剤等によるラジカル架橋反応、粒子表面での単量体の重合反応、又は、表面架橋剤との架橋反応等で形成することができる。
【0076】
このような表面架橋剤として、例えば、オキサゾリン化合物、ビニルエーテル化合物、エポキシ化合物、オキセタン化合物、多価アルコール化合物、ポリアミドポリアミン−エピハロ付加物、ヒドロキシアクリルアミド化合物、オキサゾリジノン化合物、ビス又はポリ−オキサゾリジノン化合物、2−オキソテトラヒドロ−1,3−オキサゾリジン化合物、アルキレンカーボネート化合物、アルミニウム等の多価金属イオン等が挙げられる。これらの表面架橋剤は、一又は二以上の表面架橋剤を併用することができる。又、有機酸や無機酸等を併用してもよい。更に、吸水性樹脂の表面でモノマーの重合を行うことで表面架橋としてもよい。
【0077】
更に具体的な表面架橋剤として、(ジ、トリ、テトラ、ポリ)エチレングリコール、(ジ、ポリ)プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、(ポリ)グリセリン、2−ブテン−1,4−ジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ジ又はトリエタノールアミン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の多価アルコール化合物;(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ジ、ポリ)グリセロールポリグリシジルエーテル、(ジ、ポリ)プロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリシドール等のエポキシ化合物;1,2−エチレンビスオキサゾリン等の多価オキサゾリン化合物;1,3−ジオキソラン−2−オン等のアルキレンカーボネート化合物;硫酸アルミニウム等の多価金属化合物、ポリアミドポリアミン−エピハロヒドリン付加物等が挙げられる。
【0078】
これらの中でも、吸水倍率と加圧下吸水倍率の優れた粒子状吸水剤を得るために、低温で含水率を保ったまま架橋反応を進行させることが好ましく、その場合の表面架橋剤としては、エポキシ化合物、ポリアミドポリアミン−エピハロ付加物、アルミニウム等の多価金属イオンが好ましく、その他、有機酸及び/又は無機酸との併用、粒子状吸水剤表面でモノマーの重合を行うことが好ましい。
【0079】
特に、ポリアミドポリアミン−エピハロヒドリン付加物として、Hercules社が販売するKymene557LX、Kymene557H、Kymene plus、星光PMC社が販売するWS4002、WS4020、WS4010、WS4046等が好ましく使用される。
【0080】
上記表面架橋剤の使用量としては、粒子状吸水剤100重量部に対して、0.005〜10重量部が好ましく、0.005〜5重量部がより好ましく、0.01〜3重量部が更に好ましい。上記表面架橋剤の使用量が0.005重量部未満の場合、加圧下吸水倍率が低下する場合がある。又、表面架橋剤の使用量が10重量部を超える場合、吸水倍率が極端に低下する場合があるため、好ましくない。
【0081】
本発明において、粒子状吸水剤と表面架橋剤とを混合するに際し、使用される溶媒としては水が好ましい。この場合、水の使用量としては、粒子状吸水剤100重量部に対して、水1〜10重量部が好ましい。水の使用量を当該範囲内とすることで、粒子状吸水剤の表面に表面架橋剤水溶液が十分に浸透し、適切な厚み及び密度を有する多層的な表面架橋層が形成される。
【0082】
又、粒子状吸水剤と表面架橋剤とを混合するに際し、必要に応じて、溶媒として親水性有機溶媒を用いてもよい。当該親水性有機溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、t−ブチルアルコール等の低級アルコール類;アセトン等のケトン類;ジオキサン、テトラヒドロフラン、アルコキシポリエチレングリコール等のエーテル類;N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類等が挙げられる。当該親水性有機溶媒の使用量としては、粒子状吸水剤の種類や粒子径等にもよるが、粒子状吸水剤の固形分100重量部に対して、20重量部以下が好ましく、0.1〜10重量部がより好ましい。
【0083】
又、本発明の粒子状吸水剤と表面架橋剤との混合方法については、特に限定されないが、水及び/又は親水性有機溶媒に溶解させた表面架橋剤を、粒子状吸水剤に直接、噴霧又は滴下して混合する方法が好ましい。
【0084】
粒子状吸水剤と表面架橋剤とを混合する際に用いられる混合装置としては、両者を均一に、かつ確実に混合することができる大きな混合力を備えている装置が望ましい。上記混合装置としては、例えば、円筒型混合機、二重壁円錐型混合機、V字型混合機、リボン型混合機、スクリュー型混合機、流動型炉ロータリーディスク型混合機、気流型混合機、双腕型ニーダー、内部混合機、粉砕型ニーダー、回転式混合機、スクリュー型押出機、タービュライザー等が挙げられる。
【0085】
本発明において、粒子状吸水剤と表面架橋剤との混合物は、架橋反応を促進するために必要により、加熱しても良い。当該加熱温度としては20〜250℃が好ましく、30〜200℃がより好ましく、50〜170℃が更に好ましい。又、加熱時間は1分間〜2時間が好ましく、5分間〜1時間がより好ましく、10〜30分間が更に好ましい。加熱温度と加熱時間の組み合わせとしては、70〜120℃で3分間〜1時間が好ましく、130〜170℃で1〜30分がより好ましい。
【0086】
(添加工程)
上述した粒子状凝集物、吸水性樹脂造粒物や粒子状吸水剤に、消毒剤、抗菌剤、香料、各種の無機粉末、発泡剤、顔料、染料、親水性短繊維、肥料、酸化剤、還元剤、水、塩類等を添加して、種々の機能を付与させることもできる。本発明の粒子状吸水剤は、従来公知の各種吸水性樹脂の用途に適用できるが、微粉が少なく粒度分布もシャープな上、加圧下での吸水特性や吸水速度に優れているため、これらの性能を重視される紙オムツや生理用ナプキン、失禁パット等の吸収体を含む衛生材料等の吸収性物品に好適に使用できる。
【0087】
〔4〕粒子状吸水剤の物性
(4−1)CRC(加圧下吸水倍率)
本発明の製造方法により得られる粒子状吸水剤は、CRC(無加圧下吸水倍率)が好ましくは5〜60[g/g]、より好ましくは10〜55[g/g]、更に好ましくは15〜50[g/g]である。本発明の粒子状吸水剤のCRC(無加圧下吸水倍率)を上記範囲内とすることで、紙オムツ等の衛生材料に用いる際に水性液を吸収し保持する性能に優れるため、更に粒子状吸水剤の使用量を少なくすることができるため、好ましい。
【0088】
(4−2)AAP(加圧下吸水倍率)
本発明の製造方法により得られる粒子状吸水剤は、AAP(加圧下吸水倍率)が好ましくは5〜45[g/g]、より好ましくは10〜40[g/g]、更に好ましくは15〜35[g/g]である。本発明の粒子状吸水剤のAAP(加圧下吸水倍率)を上記範囲内とすることで、紙オムツ等の衛生材料に用いる際に水性液を吸収し保持する性能に優れるため、好ましい。
【0089】
(4−3)吸水速度(a)
本発明の製造方法により得られる粒子状吸水剤は、吸水速度(a)が好ましくは60秒以下、より好ましくは50秒以下、更に好ましくは40秒以下、特に好ましくは30秒以下である。本発明の粒子状吸水剤の吸水速度(a)を上記範囲内とすることで、紙オムツ等の衛生材料に用いる際に水性液を吸収する速さに優れるため、好ましい。
【0090】
(4−4)吸水速度(b)
本発明の製造方法により得られる粒子状吸水剤は、吸水速度(b)が好ましくは100秒以下、より好ましくは90秒以下、更に好ましくは80秒以下、特に好ましくは70秒以下である。本発明の粒子状吸水剤の吸水速度(b)を上記範囲内とすることで、紙オムツ等の衛生材料に用いる際に水性液を吸収する速さに優れるため、好ましい。
【0091】
〔5〕実施例
以下、実施例及び比較例に従って本発明を説明するが、本発明はこれらに限定され解釈されるものではない。又、本発明の特許請求の範囲や実施例に記載した諸物性は、特に記載のない限り、室温(20〜25℃)、湿度50±5RH%の条件下で、EDANA法及び以下の測定法に従って求めた。更に、実施例及び比較例に提示される電気機器は、200V又は100Vで、かつ、60Hzの条件下で使用した。尚、便宜上、「リットル」を「L」、「重量%」を「wt%」と記すことがある。
【0092】
(5−1)CRC(無加圧下吸水倍率)
CRC(無加圧下吸水倍率)の測定は、ERT441.2−02に準じて行った。
【0093】
即ち、粒子状吸水剤0.2gを秤量し、不職布製の袋(60×60mm)に均一に入れヒートシールした後、25±3℃に調温した0.9重量%の塩化ナトリウム水溶液500mL中に浸漬した。60分経過後、袋を引き上げ、遠心分離機(株式会社コクサン社製遠心機、形式;H−122)を用いて、250Gで3分間、水切りを行った。その後、袋の重量W1[g]を測定した。同様の操作を、粒子状吸水剤を入れずに行い、そのときの袋の重量W2[g]を測定した。次式に従ってCRC(無加圧下吸水倍率)を算出した。
【0094】
【数1】

【0095】
(5−2)AAP(加圧下吸水倍率)
AAP(加圧下吸水倍率)の測定は、ERT442.2−02に準じて行った。以下、図1を参照しながら測定方法を説明する。
【0096】
即ち、20〜25℃(室温)、相対湿度50±5RH%の雰囲気下で、粒子状吸水剤0.900gを、ステンレス製の金網101(目開き38μm、400メッシュ)を融着させたプラスチック製の支持円筒100(内径60mm)中に散布した。
【0097】
次に、粒子状吸水剤に対して、2.06kPa(0.3psi)の荷重を均一に加えられるピストン103及び錘104をこの順序で載せ、測定装置一式の重量W3[g]を測定した。尚、ピストン及び錘と支持円筒との隙間はなく、かつ、上下の動きが妨げられないように外径が60mmより僅かに小さいものであった。
【0098】
次に、ペトリ皿105(直径150mm)中にガラスフィルター106(直径90mm/細孔径100〜120μm;株式会社相互理化学硝子製作所製)を置き、20〜25℃に調温した0.9重量%の塩化ナトリウム水溶液108をガラスフィルターの上面と同じ高さとなるまで注いだ。その後、濾紙107(直径90mm、保留粒子径5μm、厚さ0.26mm;ADVANTEC東洋株式会社製、品名JIS P 3801、No.2)1枚をガラスフィルター上に載せ、濾紙全体が濡れるようにし、かつ、過剰の0.9重量%の塩化ナトリウム水溶液を取り除いた。続いて、上記測定装置一式を濾紙107上に載せ、0.9重量%の塩化ナトリウム水溶液を粒子状吸水剤に吸収させた。
【0099】
1時間経過後、上記測定装置一式の重量W4[g]を測定し、次式に従ってAAP(加圧下吸水倍率)を算出した。
【0100】
【数2】

【0101】
(5−3)含水率
粒子状吸水剤1.00gを底面の直径が約50mmのアルミカップに量り取り、総重量(粒子状吸水剤及びアルミカップ)W5[g]を測定した。
【0102】
次に、当該粒子状吸水剤が入ったアルミカップを雰囲気温度180℃のオーブン中に静置し粒子状吸水剤を乾燥させた。3時間経過後、上記アルミカップを取り出し、デシケーター中で室温まで冷却した。その後、乾燥後の総重量W6[g]を測定し、次式に従って含水率[重量%]を算出した。
【0103】
【数3】

【0104】
(5−4)粒子径150μm未満の重量百分率、重量平均粒子径(D50)及び粒度分布の対数標準偏差(σζ)
粒子径150μm未満の重量百分率とは、目開き150μmのJIS標準篩を通過する粒子の、粒子状吸水剤全体に対する割合をいう。即ち、粒子状吸水剤10.00gを、目開き850μm、600μm、300μm、150μmのJIS標準篩(The IIDA TESTING SIEVE;内径80mm/JIS Z8801−1(2000))又はJIS標準篩に相当する篩で分級し、篩ごとの重量を測定することで、粒子径150μm未満の重量百分率を求めた。
【0105】
重量平均粒子径(D50)の測定は、国際公開第2004/069404号に開示された方法に準じて行った。即ち、上記の分級操作で得られた各粒度の残留百分率Rを対数確率紙にプロットし、このグラフからR=50重量%に相当する粒子径を重量平均粒子径(D50)として読み取った。
【0106】
又、粒度分布の対数標準偏差(σζ)は次式に従って算出した。当該粒度分布の対数標準偏差(σζ)はその値が小さいほど粒度分布が狭いことを意味する。
【0107】
【数4】

【0108】
ここで、X1はR=84.1重量%、X2はR=15.9重量%に相当する粒子径である。
【0109】
(5−5)吸水速度(a)
吸水速度(a)の測定は、JIS K 7224(1996)「高吸水性樹脂の吸水速度試験方法」に準じて行った。
【0110】
即ち、0.9重量%の塩化ナトリウム水溶液(生理食塩水)1000重量部に、食品添加物である食用青色1号(CAS番号;3844−45−9)0.02重量部を添加、溶解し、液温を30.0±0.1℃に調整した。次に、容量100mLのガラス製ビーカー(胴径55mm、高さ70mm;JIS R−3503に準拠したもの。例えば、相互理化学硝子製作所製のビーカー)に当該生理食塩水50mLを量り取り、テフロン(登録商標)製マグネット式撹拌子(長さ40mm、中心部直径8mm、端部直径7mm;例えば、相互理化学硝子製作所製S型)を用いて600rpmで撹拌した。続いて、当該攪拌中の生理食塩水に粒子状吸水剤2.00g(2.000±0.005g)を投入した時点を起点として、攪拌による渦が消え、攪拌子が見えなくなる時点を終点として、時間を測定し、吸水速度(a)[秒]とした。
【0111】
(5−6)吸水速度(b)
容量200mLのガラス製ビーカー(内径約67mm;JIS R−3503に準拠したもの。例えば、相互理化学硝子製作所製のコードNo.501)を水平台上に静置し、メスシリンダーで量り取った脱イオン水(25±2℃)200mLを入れた。続いて、粒子状吸水剤2.00g(2.000±0.005g)を天秤で計り取り、瞬時に当該脱イオン水に投入した。粒子状吸水剤の投入時を起点とし、ビーカー内の脱イオン水が膨潤ゲルで満たされ、ビーカーを傾けても脱イオン水のしみ出し(流出)が無くなる時点を終点として、時間を測定し、吸水速度(b)[秒]とした。
【0112】
(5−7)機械強度
目開き600μm及び300μmのJIS標準篩(JIS Z−8801に対応)で分級し、粒度調整(粒子径300μm以上600μm未満)した粒子状吸水剤30.0±0.02g及び直径6mmのガラスビーズ10gを、直径6cm、高さ11cmのガラス製容器に入れ、ペイントシェーカー(東洋製機製作所;製品No.488)に取り付け、800[cycle/分](CPM)で振とうした。30分間振とうした後、粒子状吸水剤を取り出し、その粒度分布を測定した。粒子径150μm未満の微粒子発生量を測定し、以下の基準により評価した。
【0113】
◎:150μm未満の微粒子発生量が3重量%未満
○:150μm未満の微粒子発生量が3重量%以上5重量%未満
△:150μm未満の微粒子発生量が5重量%以上10重量%未満
×:150μm未満の微粒子発生量が10重量%以上
(5−8)吸水後のゲル保形性
上記(5−1)のCRC測定を行った後の膨潤ゲルについて、ビニール袋に入れ、その状態を観察した。以下の基準により評価した。
【0114】
◎:吸水後も造粒形態を保っている
○:吸水後、一部の膨潤ゲルに微粒子状のものが確認される
×:吸水後、大部分の膨潤ゲルに微粒状のものが確認される
[製造例1]
容量1Lのポリプロピレン製容器(内径80mm)に、アクリル酸215.2g、ポリエチレングリコールジアクリレート(分子量523)1.78g(0.095モル%)及び1.0重量%のジエチレントリアミン5酢酸・5ナトリウム水溶液1.58gを投入して、混合溶液(I)を作成した。別途、容量500mLのポリプロピレン製容器(内径80mm)に、48.5重量%の水酸化ナトリウム水溶液215.2g及び32℃に調温したイオン交換水209.9gを投入して、混合溶液(II)を作成した。
【0115】
次に、上記容量1Lのポリプロピレン製容器中で混合溶液(I)をマグネチックスターラーで攪拌しながら、混合溶液(II)を開放系で素早く加えて混合し、単量体水溶液(1)を得た。このとき、単量体水溶液(1)の液温は、溶解熱及び中和熱によって約102℃まで上昇していた。
【0116】
続いて、上記単量体水溶液(1)をそのまま静置させ、液温が95℃まで低下するのを待って、3重量%の過硫酸ナトリウム水溶液14.30gを加え、溶液(1)とした。その後、当該溶液(1)を数秒間攪拌し、表面温度が100℃に加熱されたステンレス製バット型重合容器中に開放系で注いだ。尚、当該ステンレス製バット型重合容器は、その大きさが底面250mm×250mm、上面640mm×640mm、高さ50mmの中心断面が台形で上面が開放されている、内面にテフロン(登録商標)を貼りつけた容器であり、当該重合容器の加熱は、ホットプレート(NEO HOTPLATE H1−1000/(株)井内盛栄堂)を用いて行った。
【0117】
上記溶液(1)がバット型重合容器に注がれて間もなく、重合が開始した。当該重合は、水蒸気を発生しながら、バット型重合容器から上方に向かって四方八方に膨張発泡して進行し、その後、バット型重合容器の底面より若干大きなサイズまで収縮した。この重合(膨張・収縮)は約1分間で終了した。重合終了後、4分間重合容器中で保持させ、含水ゲル状架橋重合体(1)として得た。
【0118】
次に、上記操作で得られた含水ゲル状架橋重合体(1)を、ミートチョッパー(ROYAL MEAT CHOPPER VR400K/飯塚工業(株);ダイス径9.5mm)を用いて解砕し、細分化された粒子状含水ゲル状架橋重合体(1)を得た。当該操作における含水ゲル状架橋重合体(1)の投入量は約340[g/min]であり、含水ゲル状架橋重合体(1)の投入と同時に別ラインから脱イオン水を48[g/min]で添加した。尚、解砕後の細粒化された粒子状含水ゲル状架橋重合体(1)の不揮発分は、50〜55重量%であった。
【0119】
続いて、上記粒子状含水ゲル状架橋重合体(1)を、目開き300μm(50メッシュ)の金網上に広げ、180℃で35分間熱風乾燥を行った。次いで、ロールミルを用いて粉砕を行い、その後、目開き850μmのJIS標準篩を用いて分級し、不定形破砕状の吸水性樹脂粉末(A)を得た。得られた吸水性樹脂粉末(A)の重量平均粒子径(D50)は340μm、粒子径150μm未満の吸水性樹脂粉末の割合は15重量%、含水率は6重量%、無加圧下吸水倍率(CRC)は32[g/g]であった。
【0120】
上記の操作で得られた吸水性樹脂粉末(A)について、更に目開き150μmのJIS標準篩を用いて分級し、粒子径が150μm以上850μm未満の吸水性樹脂粉末(A1)と、粒子径が150μm未満の吸水性樹脂粉末(A2)をそれぞれ得た。
【0121】
[実施例1]
製造例1で得られた吸水性樹脂粉末(A2)270gとタピオカデンプン(製品名BK−V/東海製粉製)30gとの混合物を、容量5Lのモルタルミキサー(西日本試験機製作所製)に投入した後、当該モルタルミキサーの攪拌羽根を高速回転(60Hz/100V)させながら、90℃に加熱した熱水300gを一気に添加した。上記混合物及び熱水は10秒間で完全に混合した。尚、上記モルタルミキサーは70℃のウォーターバスで保温した。
【0122】
上記熱水の添加後、高速攪拌を3分間継続して、粒子径が3〜10mmであるゲル状の粒子状凝集物(1)を得た。当該粒子状凝集物(1)はモルタルミキサー内で塊状とならず、バラバラの状態であり、混練されることはなかった。
【0123】
続いて、得られた粒子状凝集物(1)を目開き300μm(50メッシュ)の金網上に拡げて載せ、熱風循環式乾燥機を用いて、150℃で30分間乾燥を行い、吸水性樹脂造粒物(1)を得た。
【0124】
得られた吸水性樹脂造粒物(1)について、製造例1と同様の粉砕、分級操作を行うことで、粒子径が150μm以上850μm未満である粒子状吸水剤(1)を得た。得られた粒子状吸水剤(1)の諸物性を表1に記載する。
【0125】
[実施例2]
実施例1において、吸水性樹脂粉末(A2)210g、タピオカデンプン90gをそれぞれ使用した以外は、実施例1と同様の操作を行い、粒子径が1〜5mmであるゲル状の粒子状凝集物(2)を得た。以後の各操作についても実施例1と同様に行い、粒子状吸水剤(2)を得た。得られた粒子状吸水剤(2)の諸物性を表1に記載する。
【0126】
[実施例3]
実施例1において、吸水性樹脂粉末(A2)150g、タピオカデンプン150gをそれぞれ使用した以外は、実施例1と同様の操作を行い、粒子径が1〜5mmであるゲル状の粒子状凝集物(3)を得た。以後の各操作についても実施例1と同様に行い、粒子状吸水剤(3)を得た。得られた粒子状吸水剤(3)の諸物性を表1に記載する。
【0127】
[実施例4]
実施例1において、吸水性樹脂粉末(A2)120g、タピオカデンプン180gをそれぞれ使用した以外は、実施例1と同様の操作を行い、粒子径が1〜5mmであるゲル状の粒子状凝集物(4)を得た。以後の各操作についても実施例1と同様に行い、粒子状吸水剤(4)を得た。得られた粒子状吸水剤(4)の諸物性を表1に記載する。
【0128】
[比較例1]
実施例1において、吸水性樹脂粉末(A2)300gのみを使用した以外は、実施例1と同様の操作を行い、粒子径が3〜10mmであるゲル状の比較粒子状凝集物(1)を得た。以後の各操作については実施例1と同様に行い、比較粒子状吸水剤(1)を得た。得られた比較粒子状吸水剤(1)の諸物性を表1に記載する。
【0129】
[比較例2]
実施例1において、吸水性樹脂粉末(A2)90g、タピオカデンプン210gをそれぞれ使用した以外は、実施例1と同様の操作を行い、粒子径が1〜5mmであるゲル状の比較粒子状凝集物(2)を得た。以後の各操作については実施例1と同様に行い、比較粒子状吸水剤(2)を得た。得られた比較粒子状吸水剤(2)の諸物性を表1に記載する。
【0130】
[比較例3]
実施例1において、吸水性樹脂粉末(A2)210g、タピオカデンプン90gをそれぞれ使用した以外は、実施例1と同様の操作を行い、粒子径が1〜5mmであるゲル状の比較粒子状凝集物(3)を得た。
【0131】
次いで、比較粒子状凝集物(3)を100℃で30分間乾燥した以外は、実施例1と同様の操作を行い、比較粒子状吸水剤(3)を得た。得られた比較粒子状吸水剤(3)の諸物性を表1に記載する。
【0132】
[実施例5]
実施例1において、吸水性樹脂粉末(A2)210g、タピオカデンプン90gをそれぞれ使用し、更に90℃に加熱した熱水を150g使用した以外は、実施例1と同様の操作を行い、粒子径が1〜5mmであるゲル状の粒子状凝集物(5)を得た。以後の各操作についても実施例1と同様に行い、粒子状吸水剤(5)を得た。得られた粒子状吸水剤(5)の諸物性を表1に記載する。
【0133】
[比較例4]
実施例1において、吸水性樹脂粉末(A2)210g、タピオカデンプン90gをそれぞれ使用し、更に90℃に加熱した熱水を60g使用した以外は、実施例1と同様の操作を行い、粒子径が1〜5mmであるゲル状の比較粒子状凝集物(4)を得た。以後の各操作については実施例1と同様に行い、比較粒子状吸水剤(4)を得た。得られた比較粒子状吸水剤(4)の諸物性を表1に記載する。
【0134】
[実施例6]
実施例1において、吸水性樹脂粉末(A2)210g、タピオカデンプン90gをそれぞれ使用し、更に添加水を未加熱(温度25℃)で使用した以外は、実施例1と同様の操作を行い、粒子径が1〜5mmであるゲル状の粒子状凝集物(6)を得た。以後の各操作についても実施例1と同様に行い、粒子状吸水剤(6)を得た。得られた粒子状吸水剤(6)の諸物性を表1に記載する。
【0135】
[実施例7]
実施例1において、吸水性樹脂粉末(A2)210g、タピオカデンプン90gをそれぞれ使用し、更に添加水150gを未加熱(温度25℃)で使用した以外は、実施例1と同様の操作を行い、粒子径が1〜5mmであるゲル状の粒子状凝集物(7)を得た。以後の各操作についても実施例1と同様に行い、粒子状吸水剤(7)を得た。得られた粒子状吸水剤(7)の諸物性を表1に記載する。
【0136】
[実施例8]
実施例1において、吸水性樹脂粉末(A2)210g、タピオカデンプン90gをそれぞれ使用し、更にタピオカデンプン90gを水300gに分散させた懸濁液(デンプン懸濁液)を未加熱(温度25℃)で使用した以外は、実施例1と同様の操作を行い、粒子径が1〜5mmであるゲル状の粒子状凝集物(8)を得た。以下の各操作についても実施例1と同様に行い、粒子状吸水剤(8)を得た。得られた粒子状吸水剤(8)の諸物性を表1に記載する。
【0137】
[実施例9]
実施例1において、吸水性樹脂粉末(A2)210g、タピオカデンプン90gをそれぞれ使用し、更にタピオカデンプン90gを水150gに分散させた懸濁液(デンプン懸濁液)を未加熱(温度25℃)で使用した以外は、実施例1と同様の操作を行い、粒子径が1〜5mmであるゲル状の粒子状凝集物(9)を得た。以下の各操作についても実施例1と同様に行い、粒子状吸水剤(9)を得た。得られた粒子状吸水剤(9)の諸物性を表1に記載する。
【0138】
[実施例10]
実施例1において、吸水性樹脂粉末(A2)210g、結晶性セルロース(製品名セオラスTG−101/旭化成製)90gをそれぞれ使用した以外は、実施例1と同様の操作を行い、粒子径が1〜5mmであるゲル状の粒子状凝集物(10)を得た。以後の各操作についても実施例1と同様に行い、粒子状吸水剤(10)を得た。得られた粒子状吸水剤(10)の諸物性を表1に記載する。
【0139】
[比較例5]
90℃に加熱した熱水210gを、容量5Lのモルタルミキサー(西日本試験機製作所製)に投入した後、当該モルタルミキサーの撹拌羽根を高速回転(60Hz/100V)させながら、溶性デンプン(関東化学製)90gを添加してデンプン溶液を得た。次いで、製造例1で得られた吸水性樹脂粉末(A2)210gを一気に添加した。上記デンプン溶液と吸水性樹脂粉末(A2)との混合に40秒間要した。尚、上記モルタルミキサーは80℃のウォーターバスで保温した。
【0140】
上記吸水性樹脂粉末(A2)の添加後、高速攪拌を3分間継続したが、一体化した巨大な塊となり、バラバラの粒子状凝集物にはならなかった。更に、目開き300μm(50メッシュ)の金網上に載せて、熱風循環式乾燥機に入れ、150℃で30分間静置させたが、乾燥することができなかった。
【0141】
[比較例6]
比較例5において、吸水性樹脂粉末(A2)270g、溶性デンプン30gをそれぞれ使用した以外は、比較例5と同様の操作を行ったところ、上記デンプン溶液と吸水性樹脂粉末(A2)との混合に40秒間要した。
【0142】
上記吸水性樹脂粉末(A2)の添加後、高速攪拌を3分間継続したが、一体化した巨大な塊となり、バラバラの粒子状凝集物にはならなかった。更に、目開き300μm(50メッシュ)の金網上に載せて、熱風循環式乾燥機に入れ、150℃で30分間静置させたが、乾燥することができなかった。
【0143】
【表1】

【0144】
(まとめ)
上述した実施例・比較例に示したように、粒子状吸水剤及び比較粒子状吸水剤との対比から、本発明に係る製造方法で得られる粒子状吸水剤は、高い加圧下吸水倍率を示す上に、ゲル保形性、機械強度に優れていることが分かる。更に、生理食塩水を用いた吸水速度(a)に加え、静置した脱イオン水を用いた吸水速度(b)も優れていることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0145】
本発明に係る製造方法によって得られる粒子状吸水剤は、その使用条件に関わらず高性能を示すため、農園芸用保水剤、工業用保水剤、吸湿剤、除湿剤、建材等で広く用いられている。特に、紙オムツ、生理用ナプキン等の衛生材料に用いられることが好ましい。
【符号の説明】
【0146】
100 プラスチックの支持円筒
101 ステンレス製400メッシュの金網
102 粒子状吸水剤(膨潤ゲル)
103 ピストン
104 錘
105 ペトリ皿
106 ガラスフィルター
107 濾紙
108 0.90重量%塩化ナトリウム水溶液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂粉末及び水性液とを混合して粒子状凝集物とし、当該粒子状凝集物を乾燥して得られる吸水性樹脂造粒物からなる粒子状吸水剤の製造方法であって、
上記吸水性樹脂粉末100重量部に対して、カルボキシル基と反応しうる官能基を有する高分子粉末又は無機粉末から選ばれる反応性粒子10〜200重量部と水性液30〜300重量部とを混合し、かつ、混合後に110〜250℃で乾燥することを特徴とする、粒子状吸水剤の製造方法。
【請求項2】
上記吸水性樹脂粉末及び反応性粒子とを予め混合した混合物に、更に水性液を添加する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
上記吸水性樹脂粉末に反応性粒子の水分散液を混合する、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
上記吸水性樹脂粉末が、粒子径150μm未満の粒子を70重量%以上含む、請求項1〜3の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
上記反応性粒子が水溶性高分子である、請求項1〜4の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
上記反応性粒子が天然水溶性高分子である、請求項1〜5の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
上記反応性粒子が澱粉、セルロース又はその誘導体から選ばれる、請求項1〜6の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
上記無機粉末が表面に反応性基が修飾された、水難溶性又は水不溶性の無機粉末である、請求項1〜7の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項9】
上記粒子状凝集物の粒子径が20mm以下である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項10】
上記粒子状凝集物を乾燥して得られる吸水性樹脂造粒物を更に粉砕及び分級する、請求項1に記載の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2013−34942(P2013−34942A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−172956(P2011−172956)
【出願日】平成23年8月8日(2011.8.8)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】