説明

粒子状物質の分離・分級方法及び装置

【課題】 粒子状物質の荷電を長時間安定して行い、分離・分級を効果的に行うことができる粒子状物質の分離・分級方法とその装置を提供する。
【解決手段】 被処理空間中の粒子状物質を分離・分級する装置において、光電子放出材3と、該光電子放出材に紫外線及び/又は放射線を照射する照射源1と、微粒子濃度を100万個/ft3以下にする除塵手段12とを有する光電子を発生させる清浄空間Aと、該清浄空間Aで発生した光電子を分離・分級するする粒子状物質19を含有する被処理空間20に供給する供給手段9と、光電子により荷電された粒子状物質21を分級する、不用な微細な微粒子の捕捉除去を行う捕集電極23、不用な比較的大きな微粒子の除去を行う細孔24、及び、一定の粒径に揃った微粒子の取出口25からなる分級部Eとを有することとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子状物質の荷電技術に係り、特に、光電子放出材より発生させた光電子(負イオン)により粒子状物質を荷電し、荷電した粒子状物質の分離・分級方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光電子放出材に、紫外線及び/又は放射線を照射することにより発生する光電子や、該光電子による微粒子の荷電及びその利用については、本発明者の多数の提案であり、次の通りである。
1)本発明者らが気体清浄化関係において提案したものの内、本発明と特に関連性を有するものは、
特公平3−5859号、特公平6−34941号、特公平6−74909号、特公平6−74910号、特公平7−121369号、特公平8−211号、特公平8−10616号、特公平8−22393号各公報
2)測定関係において提案したものは、
特公平6−25731号、特開平2−47536号各公報
3)分離・分級関係において提案したものは、
特開平3−42057号公報
4)荷電条件や光電子放出材関係において提案したものは、
特願平2−303557号、特公平6−74908号公報、特公平7−93098号公報、特許第2598730号明細書等がある。
【0003】
次に、従来の光電子放出材を用いる技術の改善点について、先ず空気清浄器を例に説明する。
図4は、空気清浄器を示している。空気清浄器は、紫外線ランプ1、紫外線透過窓2、光電子放出材3、電場設定のための電極4、帯電微粒子捕集材5により構成されている。微粒子を含有する空気6が空気清浄器に入ると空気6中の微粒子は、紫外線照射を受けた光電子放出材3から放出される光電子7により荷電され、帯電微粒子捕集材5にて捕集され、出口8では清浄空気となる。
9は、処理空気6を空気清浄器に導入するためのファンを示す。
ところで、上記のように、光電子放出材3を被処理空気の流路中に設置した場合、処理空気中の条件によっては、空気中の不純物(例、微粒子、有機物質)が光電子放出材に付着し、長時間運転により性能低下をもたらし、改善の余地があった。
【0004】
次に、半導体工場において、処理物(ウェハ)をイオン注入等を行う減圧処理室に搬入、搬出するための予備室、すなわちロードロック室における空気清浄を、図5に示した基本構成図を用いて説明する。図5において、減圧処理室26は、ゲートバルブ27を介して、ロードロック室28に接続されている。ロードロック室28内の処理物であるウェハ29は、ウェハ支持台30にセットされ、ゲートバルブ27を介して減圧処理室26へ移送される。
ロードロック室28では、(1)ウェハの搬入の際、(2)圧力変動、例えば真空ポンプ31でロードロック室28を大気圧から減圧にする際、(3)ウェハ29を取リ出す(減圧をリークする)際にロードロック室28への窒素ガスやアルゴンガス等の導入による該室28からの微粒子(粒子状物質)の舞い上がりなどによって微粒子19が発生する。該微粒子19は、主に光電子放出材3、電場形成用電極4、紫外線ランプ1及びウェハ上方に設置された帯電微粒子捕集電極5より成る微粒子の荷電・捕集部で荷電・捕集(除去)される。
【0005】
光電子放出材(Au)3は、紫外線ランプ1の上に薄膜状(5nm)で付加されている。
ここで、紫外線ランプ1からの放出紫外線が光電子放出材3に照射されると、光電効果により光電子7が発生し、微粒子19は荷電され帯電微粒子21となり、該帯電微粒子21は帯電微粒子捕集電極5に捕集・除去され、ウェハ29の近傍(上方)は微粒子(粒子状物質)が存在しない超清浄な空間が長時間維持され、ウェハへの粒子汚染が防止される。32は空気や窒素ガスの導入口である。
【0006】
上記のように、薄膜状の光電子放出材3を大気と減圧(真空)が繰り返し実施される系内に放置すると、使用条件によっては長時間運転ではランプ上の膜付着力の低下(剥離すると電場形成が不良となるので光電子放出性能が低くなる)や、膜質の変化をもたらし、性能低下するので、改善の余地があった。
一方、このような減圧(真空)装置では、空間内(図5の場合は、紫外線ランプ1の設置場所)にウェハを移動(ハンドリング)するためのロボットを設置する場合が多く、この様な場合には光電子を用いる(本発明者らがすでに提案した)微粒子の荷電・捕集法の適用が困難であった。すなわち、空間の中心部(あるいは、その近く)に、ロボットや反応器などの減圧(真空)装置個有の設備がある場合でも、効果的に微粒子除去できる方式が必要であり、光電子を用いる本方式に改善の余地があった。
【特許文献1】特開平3−42057号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来技術の改善点を解決し、粒子状物質の荷電を長時間安定して行うことができ、荷電した粒子状物質の分離・分級を効果的に行うことができる粒子状物質の分離・分級方法と装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明では、被処理空間中の粒子状物質を分離・分級する方法において、該被処理空間とは別に、微粒子濃度が100万個/ft3以下の清浄空間で光電子放出材に紫外線及び/又は放射線を照射することにより光電子を発生させて、該光電子を前記被処理空間に供給して該被処理空間中の粒子状物質を荷電させ、該荷電された粒子状物質から、不要な微細な微粒子の捕捉除去を行う捕集電極と、不用な比較的大きな微粒子の除去を行う細孔とを用いて、不用な微粒子を除去し、一定の粒径の揃った微粒子を取り出すことを特徴とする粒子状物質の分離・分級方法としたものである。
【0009】
また、本発明では、被処理空間中の粒子状物質を分離・分級する装置において、光電子放出材と、該光電子放出材に紫外線及び/又は放射線を照射する照射源と、微粒子濃度を100万個/ft3以下にする除塵手段とを有する光電子を発生させる清浄空間と、該清浄空間で発生した光電子を、分離・分級する粒子状物質を含有する被処理空間に供給する供給手段と、光電子により荷電された粒子状物質を分級する、不用な微細な微粒子の捕捉除去を行う捕集電極、不用な比較的大きな微粒子の除去を行う細孔、及び、一定の粒径の揃った微粒子の取出口からなる分級部とを有することを特徴とする粒子状物質の分離・分級装置としたものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、次のような効果を奏することができた。
1)光電子放出材に、紫外線及び/又は放射線照射することにより発生させた光電子を用いる粒子状物質の荷電において、被処理空間中の粒子状物質の荷電を、該空間とは別の微粒子濃度が100万個/ft3以下の清浄空間で発生させた光電子を用いて行うことにより、
(1)光電子放出材への汚染物質の付着等による汚染がなくなったので、光電子を用い
る荷電が長時間安定して行えるようになった。
(2)光電子による荷電を、汚染物質濃度が高い分野(用途)においても効率良く行え
るようになった。
即ち、光電子を利用する分野が広がった。
【0011】
2)前記1)における清浄空間において、更に非メタン炭化水素濃度を0.1ppm以下としたことにより、前記1)の効果が更に高まり、実用性が向上した。3)前記1)、2)の光電子放出部の構成材を一体化してユニット化することにより、
(1)任意の場所で粒子状物質の荷電が達成できるので、広用範囲が広がった。
(2)保守、点検が容易となった。
(3)即ち、実用性が向上した。
【0012】
4)上記のような効果を有することにより、夫々の利用分野で特に次の効果が生じた。
(1)清浄気体あるいは清浄空間を得る分野では、
(a)性能が向上し、長時間安定した。
(b)汚染物質濃度が高い分野でも効果的な汚染物質の除去が行えた。
(c)特に、減圧(真空)空間等の密閉空間は、該空間内に光電子発生部の設置が不
要となったことから(また、光電子放出材は大気下の安定系で使用できるで)、
光電子発生が長時間安定して行えた。また、該空間(装置)内に、ロボットや反
応部があっても外部から光電子(負イオン)を導入するので、発生微粒子の荷
電・捕集が効果的に行えた。
【0013】
(2)測定を行う分野では、
(a)測定精度が向上し、長時間安定した。
(b)特に<0.1μmの様な超微粒子の測定精度向上に効果的となった。
(3)分離・分級、表面改質、荷電量の制御を行う分野では、
(a)性能が向上し、長時間安定した。
(b)装置が小型化し、処理容量が増加した。
(c)特に、<0.1μmの様な超微粒子の性能向上に効果的となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、次の3つの知見に基づいてなされたものである。
(1)光電子放出材からの光電子(負イオン)の発生は、光電子放出材の使用環境における微粒子濃度を100万個/ft3以下、好ましくは10万個/ft3以下、より好ましくは1万個/ft3以下で行うと効果的である。
前記微粒子濃度を100万個/ft3以下にすると負イオンの生成が長時間安定して、効果的にできる理由の詳細は不明であるが、次のように考えられる。
(ア) 微粒子濃度が多いと(例えば、外気や室内は1億〜10億個/ft3(0.1μm以上)存在する)、微粒子(粒子状物質)に含まれる光電子放出材に対して有害な汚染物質が、光電子放出材表面に付着し、光電子放出性能を低下させる。
【0015】
(イ) 前記の有害なガス状汚染物質はH.C(高分子量のH.C)と推定される。
光電子による微粒子の荷電は、光電子から負イオンが発生し、該負イオンにより荷電されると推定されている。
ここで、光電子から負イオンの生成は、光電子が電子親和性の大きい水分子や酸素分子との電子付着やクラスタリングにより、O2-(H2O)n、O-(H2O)n、OH-(H2O)n、などの負イオンクラスターを作るためと考えられる。これらの反応を次に示す。
2 + e → O2-
2-+ H2O → O2-(H2O)



2-(H2O)n-1 + H2O → O2-(H2O)n
【0016】
(2)光電子放出材からの光電子の放出は、長時間の使用(あるいは被処理空気量が多い場合)では、使用の雰囲気(環境)の影響を受け、性能が低下する。これは光電子放出材の使用環境における粒子状物質や有機性ガス(非メタン炭化水素、H.C)が光電子放出材の表面に付着することによる。
(3)従って、被処理空気中に粒子やガス状汚染物が高濃度で存在する場合は、予めこれらの汚染物が除去された清浄空間で生成させた負イオンを被処理空間に供給すると効果的、かつ安定な微粒子の荷電が達成される。
(4)光電子を用いる微粒子の荷電・捕集では、光電子放出材、照射源、電極材が必要である。このため、被処理空間が密閉装置であって、該空間内にロボットのような物体を有する場合は、光電子放出材、照射源、電極材の設置は制限を受ける。この様な場合は、該空間(装置)に、外部で生成させた負イオンを導入し、該空間に適宜、電極材を設置することにより、該空間内の発生微粒子は、効果的に荷電され、捕集・除去される。
【0017】
次に、本発明の構成を詳細に説明する。
先ず、粒子状物質(微粒子)の荷電について説明する。
粒子状物質の荷電は、光電子放出材への紫外線及び/又は放射線の照射により放出される光電子により実施される。
光電子放出材は、紫外線又は放射線の照射により光電子を放出するものであれば何れでも良く、光電的な仕事関数が小さなもの程好ましい。効果や経済性の面から、Ba,Sr,Ca,Y,Gd,La,Ce,Nd,Th,Pr,Be,Zr,Fe,Ni,Zn,Cu,Ag,Pt,Cd,Pb,Al,C,Mg,Au,In,Bi,Nb,Si,Ti,Ta,U,B,Eu,Sn,P,Wのいずれか又はこれらの化合物又は合金又は混合物が好ましく、これらは単独で又は二種以上を複合して用いられる。複合材としては、アマルガムの如く物理的な複合材も用いうる。
【0018】
例えば、化合物としては酸化物、ほう化物、炭化物があり、酸化物にはBaO,SrO,CaO,Y25,Gd23,Nd23,ThO2,ZrO2,Fe23,ZnO,CuO,Ag2O,La23,PtO,PbO,Al23,MgO,In23,BiO,NbO,BeOなどがあり、またほう化物には、YB6,GdB6,LaB5,NdB6,CeB6,EuB6,PrB6,ZrB2などがあり、さらに炭化物としては、UC,ZrC,TaC,TiC,NbC,WCなどがある。
また、合金としては黄銅、青銅、リン青銅、AgとMgとの合金(Mgが2〜20wt%)、CuとBeとの合金(Beが1〜10wt%)及びBaとAlとの合金を用いることができ、上記AgとMgとの合金、CuとBeとの合金及びBaとAlとの合金が好ましい。酸化物は金属表面のみを空気中で加熱したり、或いは薬品で酸化することによっても得ることができる。
【0019】
さらに他の方法としては使用前に加熱し、表面に酸化層を形成して長期にわたって安定な酸化層を得ることもできる。この例としてはMgとAgとの合金を水蒸気中で300〜400℃の温度の条件下でその表面に酸化膜を形成させることができ、この酸化薄膜は長期間にわたって安定なものである。
これらの物質は、バルク状(固体状、板状)で、また適宜の母材(支持体)へ付加して使用できる(特許第2877449号公報)。例えば、紫外線透過性物質の表面又は該表面近傍に付加する(特公平7−93098号公報)。
付加の方法は、紫外線又は放射線の照射により光電子が放出されれば何れでも良い。
例えば、ガラス板上へコーティングして使用する方法、他の例として板状物質表面近傍へ埋込んで使用する方法や板状物質上に付加し更にその上に別の材料をコーティングして使用する方法、紫外線透過性物質と光電子を放出する物質を混合して用いる方法等がある。また、付加は、薄膜状に付加する方法、網状、線状、粒状、島状、帯状に付加する方法等適宜用いることが出来る。
【0020】
光電子を放出する材料の付加の方法は、適宜の材料の表面に周知の方法でコーティング、あるいは付着させて作ることができる。例えば、イオンプレーティング法、スパッタリング法、蒸着法、CVD法、メッキによる方法、塗布による方法、スタンプ印刷による方法、スクリーン印刷による方法を適宜用いることができる。
薄膜の厚さは、紫外線又は放射線照射により光電子が放出される厚さであれば良く、5Å〜5,000Å、通常20Å〜500Åが一般的である。母材の使用形状は、板状、プリーツ状、円筒状、棒状、線状、網状等、があり表面の形状を適宜凹凸状とし使用することが出来る。また、凸部の先端を先鋭状あるいは球面状とすることも出来る(特公平6−74908号公報)。
形状を網状のような気体通過性とし、光電子放出材の裏面から気体を導入して表面に負イオンを発生させる形態は、電極が弱くて良いことから、適用先、装置種類によっては好ましい(特開平7−57643号)。
【0021】
母材への薄膜の付加は、本発明者が既に提案したように、1種類又は2種類以上の材料を1層又は多層重ねて用いることができる。すなわち、薄膜を適宜複数(複合)で使用し、2重構造あるいはそれ以上の多重構造とすることができる(特許第2877487号公報)。
これらの最適な形状や紫外線又は放射線の照射により光電子を放出する材料の種類や付加法、薄膜厚は、装置の種類、規模、形状、光電子放出材の種類、母材の種類、後述電場の強さ、かけ方、効果、経済性等で適宜予備試験を行い決めることが出来る。
前記光電子放出材を母材に付加して使用する場合の母材は、前記した紫外線透過性物質の他にセラミック、粘土、周知の金属材がある。また、後述の光源の表面に上記光電子放出材を被覆(光源と光電子放出材を一体化)して行うこともできる(特開平4−243540号公報)。
【0022】
前記光電子放出材は、後述光触媒と一体化して用いると光電子放出材がセルフクリーニング、即ち、汚染物質が付着しても除去されるので好ましい(特開平9−294919号公報)。
光電子放出材への紫外線又は放射線照射による光電子の発生は、光電子放出材(負極)と、後述の電極(正極)間に電場(電界)を形成して行うと、光電子放出材からの光電子発生が効果的に起こる。
また、気体の流し方の適正化、例えば光電子放出材を網状とし、光電子放出材に直交して気体を流す方式を用いると、光電子発生が効果的に起こる。
【0023】
電場の形成方法(構造)としては、荷電部の形状、構造、適用分野、装置の種類或いは期待する効果(精度)等によって適宜選択することが出来る。電場の強さは、光電子放出材や母材への付加の種類等で適宜決めることが出来、このことについては本発明者の別の発明がある。電場の強さは、一般に0.1V/cm〜2kV/cmである。
電場形成用の電極材料とその構造は、周知の荷電装置において使用されるものが使用できる。例えば電極材料としてタングステン、Cu−Zn、SUSの板状、線状、網状、棒線の形状がある。
また、本発明者がすでに提案したように、電極材が後述光触媒を含有することができる(特願平8−231290号)。このような構成は、光電子放出材に付着し悪影響を及ぼすガス状汚染物質、特にH.Cを前記光触媒により分解・処理することから好ましい。
【0024】
次に、紫外線又は放射線の照射について述べれば、その照射源は照射により、上記光電子放出材からの光電子の放出作用を発揮するものであれば何れでも良い。
紫外線源は、通常、水銀灯、水素放電管、キセノン放電管、ライマン放電管などを適宜使用出来る。光源の例としては、殺菌ランプ、ブラックライト、蛍光ケミカルランプ、UV−B紫外線ランプ、キセノンランプがある。
放射線としては、α線、β線、γ線などが用いられ、照射手段としてコバルト60、セシウム137、ストロンチウム90などの放射性同位元素、又は原子炉内で生成する放射性廃棄物及びこれに適当な処理加工した放射性物質を線源として用いることができる。
【0025】
次に、前記した光電子放出材から光電子の発生を行う、微粒子濃度が100万個/ft3以下の清浄空間について説明する。
該清浄空間は、微粒子濃度を100万個/ft3以下、より好ましくは該微粒子濃度の低減化とともにH.C濃度を0.1ppm以下とすること(微粒子濃度と、H.C濃度の低減下)である。
本発明における微粒子除去は、光電子放出材の使用環境(雰囲気)を、微粒子濃度:100万個/ft3以下にできるものであれば何れでも良い。このような除塵方式としては、周知のフィルタ方式や本発明者がすでに提案した光電子を用いる方式がある。
例えば、フィルタとしては中性能除塵フィルタ、HEPAフィルタ、ULPAフィルタ、静電フィルタがある。
光電子を用いる方式は、前記の光電子放出材を用いる方式である(例、特公平3−5859号、特公平6−34941号、特公平6−74909号、特公平6−74910号各公報)。
【0026】
本発明のH.C除去は、光電子放出材に付着し、悪影響を及ぼすH.Cを除去できるものであれば何れでも良い。
本発明で用いることができるH.C除去方式には、吸着材、吸収材、光触媒を用いる方式がある。好適な除去方式は、本発明の利用先によって存在するH.Cの種類や濃度が異なることや、例えば空気中のH.Cが数100種以上の成分の混合物であること、光電子放出材の種類、使用条件等によって影響を受けるH.Cが異なることなど、不明な点が多いが、本発明者はこれを鋭意検討した結果、非メタン炭化水素濃度を指標として0.1ppm以下、好ましくは0.01ppm以下まで、前述捕集・除去方式により、除去すれば効果的であることを発見し、本発明に至ったものである。即ち、通常の外気、室内、クリーンルーム内の非メタン炭化水素の濃度は、1〜1.5ppmであり、これを0.1ppm、好ましくは0.01ppmまで除去を行う。
【0027】
H.C除去方式は、本発明者らがすでに提案した吸着材、吸収材、あるいは光触媒(例、特公平7−96939号、特許番号:第2582706号、特開平8−261536号、特開平8−303827号、特開平10−15330号、特開平7−256089号、特開平9−205046号各公報)があり、適宜単独、あるいは複数組み合せて用いることができる。
次に、前記のそれぞれについて説明する。
吸着材、吸収材は、H.Cを吸着又は吸収するものであり、吸着材としては、活性炭、シリカゲル、合成ゼオライト、モレキュラシーブ、高分子化合物(例えば、スチレン系重合体、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体)、ガラス、フッ素化合物、イオン交換体などを用いる。
【0028】
ガラス材としては、酸化物ガラス系、例えばケイ酸塩ガラス、リン酸塩ガラスが一般的である。ケイ酸塩ガラスとしては特にホウケイ酸ガラス(主要成分:Na2O−B23−SiO2)が、成形が容易で吸着効果が高く、かつ安価であることから好ましい。
フッ素化合物としては、四フッ化樹脂、四−六フッ化樹脂、PFA樹脂、三フッ化エチレン樹脂、四フッ化エチレン−エチレン共重合体、フッ化ビニリデン樹脂、フッ化ビニル樹脂、フッ化黒鉛、テフロン(登録商標)などがある。
ガラス及びフッ素化合物の使用形状は、フィルタ状、繊維状、網状、球状、ペレット状、格子状、棒状、プリーツ状などがある。一般にフィルタ状が吸着効果が大きいので好ましい。フィルタ状で用いる場合の成形法の例として、フッ素化合物樹脂をバインダとして用い、繊維状のガラス材をフィルタ状に固めて用いる方法がある。このようなフィルタ状で用いると、H.Cの除去性能に除塵性能が加わるので、構成が簡素になり好ましい。
【0029】
イオン交換体は、適宜の手段で製造した粒状、ビーズ状、繊維状、フィルタ状などの種々の形状のものを使用できる。通常、圧力損失が少ないこと、捕集速度が早いことなどから、繊維状(フィルタ状)のイオン交換繊維が好ましい。
これは天然繊維もしくは合成繊維又は、これらの混合体等の支持体表面に陽イオン交換体もしくは陰イオン交換体、又は陽イオン交換基と陰イオン交換基を併有するイオン交換体を支持させたものであり、その方法としては繊維状の支持体に直接支持させてもよく、織物状、編物状又は植毛状の形態にしたのち、これに支持させることもできる。いずれにしても最終的にイオン交換体を支持した繊維となっていればよい。
次に、H.C吸収材(H.Cとの反応剤)について説明する。H.C吸収材は、H.Cと反応し、固定化できるものであれば、何でも使用できる。一般には、H2SO4共存でCr6−との反応、H227共存でのI25との反応を用いることができ、前者は低分子量のH.C、後者は高分子量H.Cに有効で適宜に用いることができる。用いる方法としては、ガラスビーズやアルミナ表面にこれらの試薬剤を含浸させて反応させることができる。
【0030】
光触媒としては、紫外線照射によってその表面が光触媒作用を発揮し、H.Cを無害化成分に分解・除去するものが使用できる。
通常、半導体材料が効果的であり、容易に入手出来、加工性も良いことから好ましい。効果や経済性の面から、Se,Ge,Si,Ti,Zn,Cu,Al,Sn,Ga,In,P,As,Sb,C,Cd,S,Te,Ni,Fe,Co,Ag,Mo,Sr,W,Cr,Ba,Pbのいずれか、又はこれらの化合物、又は合金、又は酸化物が好ましく、これらは単独で、また2種類以上を複合して用いる。
例えば、元素としてはSi,Ge,Se、化合物としてはAlP,AlAs,GaP,AlSb,GaAs,InP,GaSb,InAs,InSb,CdS,CdSe,ZnS,MoS2,WTe2,Cr2Te3,MoTe,Cu2S,WS2、酸化物としてはTiO2,Bi23,CuO,Cu2 O,ZnO,MoO3,InO3,Ag2O,PbO,SrTiO3,BaTiO3,Co34,Fe23,NiOなどがある。
【0031】
光触媒の固定化は、適宜の材料(母材)に蒸着法、スパッタリング法、焼結法、ゾル−ゲル法、塗布による方法、焼付け塗装による方法など、周知の付加方法を適宜用いることができる。付加の形状は、薄膜状、線状、網状、帯状、くし状、島状などを後述母材などにより適宜に選択し、用いることができる。
上記TiやZnは、例えば板状Tiを酸化することにより、光触媒とすることができるので、装置の種類によっては好適に使用できる。
光触媒の固定化の例として、光触媒を母材として、周知の導電性材料、例えばSUS、Cu−Zn、Al、又はセラミック、フッ素樹脂、ガラスあるいはガラス状物質の表面へコーティングしたり、光触媒を板状、線状、網状、膜あるいは繊維状などの適宜の材料にコーティングしたり、あるいは包み、又は挟み込んで固定して用いてもよい。例として、ゾルゲル法によるガラス板への二酸化チタンのコーティングがある。光触媒は、粉体状のままでも用いることが出来るが、焼結、蒸着、スパッタリングなどの周知の方法で適宜の形状にして用いることができる。
【0032】
また、光触媒作用の向上のために、上記光触媒にPt,Ag,Pd,RuO2,Co34の様な物質を加えて使用することも出来る。該物質の添加は、光触媒作用が促進されるので好ましい。これらは、一種類又は複数組合せて用いることができる。通常、添加量は、光触媒に対して、0.01〜10重量%であり、適宜添加物質の種類や要求性能などにより、予備試験行い適正濃度を選択することができる。
添加の方法は、含浸法、光還元法、スパッタ蒸着法、混練法など周知手段を適宜用いることができる。
光触媒は、前記のように光電子放出用の電極材の少なくとも一部に付加、あるいは導電性材料と一体化して用いることができる。次に例を挙げると、SUS材へ網状あるいは島状に光触媒を付加(SUSが正極)するか、セラミックへ膜状に光触媒を付加し、目のあらい網状のSUS材で挟み込む(SUSが正極)ことによる。
【0033】
前記のようにして発生した光電子(負イオン)を、被処理空間に供給する供給手段としては、ファンを用いた強制対流、あるいは熱を用いる自然対流があるが、好ましくは、前記の光電子を発生する清浄空間への入口側、又は出口側にファンを配備して強制的に送気するのが良い。
前記の光電子を放出させるための各構成材は、後述の実施例のごとく一体化(ユニット化)し用いると好都合である。
即ち、ユニットは、荷電させたい任意の場所に該ユニットを設置することにより、簡便に帯電した粒子状物質が得られる。
【実施例】
【0034】
次に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0035】
実施例1
図1は、微粒子の分級装置を示す。
図1は、微粒子分級器10における微粒子の分級を示す説明図である。図1において、Bは、本発明の清浄空間Aで光電子7を発生する荷電装置(ユニット)、Eは該荷電装置Bで荷電された帯電(荷電)微粒子の分級を行う帯電微粒子分級部を示す。
微粒子は、予め混合・調整器18にて攪拌混合されている。微粒子は、混合・調整器18に空気17を導入することにより、導入空気に同伴され、予めインパクタ(図示されていない)等により1μm以上の大きい粒子が除去され、本発明の荷電装置Bを有する微粒子分級器20に導入される。
該導入空気中に含まれる微粒子(粒子状物質)19は、分級器20の側面に設置された微粒子濃度が10万個/ft3以下の清浄空間Aで発生させた光電子7により荷電される。
即ち、該清浄空間Aは、空気導入用のファン9、微粒子濃度を10万個/ft3以下とするための除塵フィルタ12より得られる。ここでは、光電子放出材3への紫外線ランプ1からの紫外線の照射により、光電子7が放出される。次いで、該光電子7は、分級器20内へ導入され、これにより分級器20中の微粒子19は荷電され、帯電微粒子(荷電を有する微粒子)21となる。
該帯電微粒子21は、帯電微粒子分級部Eにおいて分級され、一定の粒径に揃った微粒子がガス排出口22より得られる。
該分級部Eでは、上流の微粒子の荷電装置Bで、発生させた光電子により微粒子が効率良く荷電されるので、電極や電場等を適宜設けることにより粒径の揃った微粒子が効果的に得られる。
【0036】
本例の帯電微粒子分級部Eは、主に不用な微細な微粒子の捕捉除去を行う捕集電極23、不用な比較的大きな微粒子の除去を行う細孔(弱い電場がかかっており、一定の流速でガス吸引を行うことで不用な微粒子が除去される)24、一定の粒径に揃った微粒子の取出口25により構成されている。
上流の荷電装置Bで発生した光電子により荷電された幅広い粒径分布を有する帯電粒子群21は、先ず不用な微細な微粒子が捕集電極23で除去され、次いで不用な比較的大きな微粒子は一定流速でガス吸引されている細孔24で除去され、一定の粒径に揃った微粒子が取出口25に集まり、ガス排出口22より取り出される。
前記において、除塵フィルタ12は静電フィルタ、光電子放出材3はCu−Zn母材上にAuメッキ、紫外線ランプ1は殺菌ランプ(波長:254nm)、電場形成用電極材4は、網状SUSで電場は50V/cmである。
【0037】
実施例2
実施例1の図1において、光電子放出材3が網状の本発明の清浄空間Aで光電子7を発生する荷電装置Bを図2に示す。
光電子放出材3の形状を網状とし、図2の構成のごとくして空気を通すことにより、光電子放出用の電場の強さを弱くすることができる特徴がある。本例の電場は5V/cmである。
図2において、図1と同一符号は同じ意味を示す。
【0038】
実施例3
実施例1の図1において、本発明の清浄空間Aが微粒子濃度10万個/ft3以下、H.C濃度0.1ppm以下で光電子7を発生させる荷電装置Bを図3に示す。
図3のBにおける15は、繊維状のガラス材をフッ素化合物樹脂をバインダとして用い、フィルタ状に固めたものと、繊維状活性炭の組合せのフィルタである。これは、H.Cの除去と除塵機能を有するフィルタである。
これにより、微粒子濃度1万個/ft3以下、H.C濃度0.1ppm以下が得られる。
図3において、図1、2と同一符号は同じ意味を示す。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の荷電装置を用いる微粒子分級装置の一例を示す概略構成図。
【図2】本発明の荷電装置の光電子発生部の一例を示す概略構成図。
【図3】本発明の荷電装置の光電子発生部の他の例を示す概略構成図。
【図4】従来の空気清浄器の概略構成図。
【図5】従来の半導体工場のロードロック室の清浄化装置の概略構成図。
【符号の説明】
【0040】
1:紫外線ランプ、3:光電子放出材、4:電場形成用電極、5:微粒子捕集材(電極)、7:光電子、9:ファン、12:除塵フィルタ、15:H.C除去と除塵機能を有するフィルタ、17:空気、18:混合・調整器、19:微粒子、20:微粒子分級器、21:帯電微粒子、22:ガス排出口、23:捕集電極、24:細孔、25:取出口、26:減圧処理室、27:ゲートバルブ、28:ロードロック室、29:ウェハ、30:ウェハ支持台、31:真空ポンプ、32、:ガス導入口、A:清浄空間(光電子発生部)、B:荷電装置、E:分級部



【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理空間中の粒子状物質を分離・分級する方法において、該被処理空間とは別に、微粒子濃度が100万個/ft3以下の清浄空間で光電子放出材に紫外線及び/又は放射線を照射することにより光電子を発生させて、該光電子を前記被処理空間に供給して該被処理空間中の粒子状物質を荷電させ、該荷電された粒子状物質から、不要な微細な微粒子の捕捉除去を行う捕集電極と、不用な比較的大きな微粒子の除去を行う細孔とを用いて、不用な微粒子を除去し、一定の粒径の揃った微粒子を取り出すことを特徴とする粒子状物質の分離・分級方法。
【請求項2】
被処理空間中の粒子状物質を分離・分級する装置において、光電子放出材と、該光電子放出材に紫外線及び/又は放射線を照射する照射源と、微粒子濃度を100万個/ft3以下にする除塵手段とを有する光電子を発生させる清浄空間と、該清浄空間で発生した光電子を、分離・分級する粒子状物質を含有する被処理空間に供給する供給手段と、光電子により荷電された粒子状物質を分級する、不用な微細な微粒子の捕捉除去を行う捕集電極、不用な比較的大きな微粒子の除去を行う細孔、及び、一定の粒径の揃った微粒子の取出口からなる分級部とを有することを特徴とする粒子状物質の分離・分級装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2006−314999(P2006−314999A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−173273(P2006−173273)
【出願日】平成18年6月23日(2006.6.23)
【分割の表示】特願平11−208898の分割
【原出願日】平成11年7月23日(1999.7.23)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】