説明

粗骨材の動弾性係数を求める方法、および、コンクリートの乾燥収縮ひずみを予測する方法

【課題】簡易に精度よく、コンクリートの乾燥収縮ひずみを予測することができる方法等を提供する。
【解決手段】(A)最長径が15mm以上の粗骨材の最長径の一端に、超音波伝播時間測定器の発信子を接触させるとともに、該粗骨材の最長径の他端に、該測定器の受信子を接触させた状態で、該粗骨材における超音波の伝播時間を測定する工程と、(B)前記工程で得られた超音波伝播時間の値を用いて、下記(1)式に基づき該粗骨材の動弾性係数を算出する工程とを少なくとも含む、粗骨材の動弾性係数を求める方法を提供する。
=(L/T)・ρ ……(1)
また、前記粗骨材の動弾性係数の値を用いて、下記(2)式から該粗骨材を含むコンクリートの乾燥収縮ひずみの予測値を算出して予測する、コンクリートの乾燥収縮ひずみを予測する方法を提供する。
y=15.2x−1455 ……(2)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粗骨材の動弾性係数を求める方法と、該係数を用いてコンクリートの乾燥収縮ひずみを予測する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートは引張強度が低いため、コンクリートの収縮によりひび割れ(収縮ひび割れ)が発生する場合がある。このひび割れは、コンクリート造建築物の美観を損なうほか、コンクリートの水密性・気密性の低下や鉄筋の腐食などの、建築物の耐久性低下の原因にもなっている。したがって、コンクリートの耐久性を確保するためには、収縮ひび割れを制御することが必要となる。
この収縮ひび割れは、乾燥によって生じるコンクリートの収縮ひずみ(以下「乾燥収縮ひずみ」という。)と高い相関があることが知られている。したがって、コンクリートの収縮ひび割れを制御するためには、乾燥収縮ひずみを知る必要がある。
【0003】
従来、乾燥収縮ひずみは、JIS A 1129−1〜3「モルタル及びコンクリートの長さ変化測定方法」と、附属書A(参考)「モルタル及びコンクリートの乾燥による自由収縮ひずみ試験方法」に準じ、実測していた。
具体的には、工事に用いようとしているコンクリートの配合に従い、100×100×400mmの角柱供試体を作製し、この供試体を20℃で7日間、水中養生した後、温度20±2℃、相対湿度60±5%RHの環境下に置き、乾燥期間6か月後における供試体の乾燥収縮ひずみを実測して求めていた。
【0004】
しかし、この方法では、乾燥収縮ひずみの値が、収縮ひび割れ抑制のために要求される値以下であるか否か判明するまで、6か月もの長期間を要する。したがって、前記JISの方法では、コンクリートの品質管理に時間がかかることが問題であった。
【0005】
そこで、この問題に対処するため、コンクリートの乾燥収縮ひずみを、前記JIS等の試験によらずに、推測することができる予測式が提案されている。
例えば、非特許文献1では、コンクリートの体積、外気に接する表面積、体積表面積比、相対湿度などのパラメータを含む式に、セメントなどの種類の影響を表す修正係数を含む式を乗じてなる下記の提案式(予測式)が提示されている。
【0006】
【数1】

【0007】
しかし、上記の提案式では、粗骨材などのコンクリートの構成材料の特性は、ほとんど考慮されず、非特許文献1の付図2.4中の提案式の図に示すように、その予測精度は必ずしも十分とはいえない(図1の左上の図参照)。
【0008】
また、非特許文献2では、粗骨材の動弾性係数とコンクリートの収縮率(乾燥収縮ひずみ)との間の相関関係が示されている(図2参照)。
しかし、この図2から分かるように、例えば、動弾性係数が15kN/mmの粗骨材を用いたコンクリートの収縮率は、その平均値が約600μであるのに対し、その変動幅は約400μ(±200μ)もあって、平均値に対する変動幅の割合は約7割と大きい。したがって、非特許文献2に記載の相関関係に基づき、粗骨材の動弾性係数を用いてコンクリートの収縮率を予測したとしても、その精度は不十分であると予想され、更なる精度の向上が望まれている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】「鉄筋コンクリート造建築物の収縮ひび割れ制御設計・施工指針(案)・同解説」、日本建築学会編、182頁(提案式)、185頁(付図2.4)、2006年2月発行
【非特許文献2】HENG SALPISOTH、外3名、「簡易測定可能な方法を用いた粗骨材弾性係数とコンクリートの収縮率の関係」、土木学会第65回年次学術講演会(平成22年9月)、日本土木学会、V−284、p.567−568
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明は、コンクリートの乾燥収縮ひずみを、簡易に精度よく予測することができる方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、最長径が特定の長さ以上の粗骨材を、平面加工等の端部の処理を行うことなく、そのまま用いて求めた動弾性係数と、該粗骨材を用いたコンクリートの乾燥収縮ひずみとの間に、良好な直線関係があること等を見い出し、本発明を完成した。
【0012】
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[4]を提供する。
[1]下記の(A)工程および(B)工程を少なくとも含む、粗骨材の動弾性係数を求める方法。
(A)最長径が15mm以上の粗骨材の最長径の一端に、超音波伝播時間測定器の発信子を接触させるとともに、該粗骨材の最長径の他端に、該測定器の受信子を接触させた状態で、該粗骨材における超音波の伝播時間を測定する工程
(B)前記(A)工程で得られた超音波伝播時間の値を用いて、下記(1)式に基づき該粗骨材の動弾性係数を算出する工程
=(L/T)・ρ ……(1)
(式中、Eは動弾性係数を表し、Lは粗骨材の最長径を表し、Tは超音波伝播時間を表し、ρはJIS A 1110に準拠して求めた粗骨材の絶乾密度を表す。)
前記[1]の方法によれば、超音波伝播時間の測定誤差(変動)を小さくすることができ、粗骨材の動弾性係数を精度よく求めることができる。また、粗骨材の動弾性係数を求める従来の方法では、粗骨材と同一産地の原石からコアドリルを用いて抜き取った円柱コアを用意し、超音波伝播時間測定器を用いて測定することが一般的であった。これに対し、[1]の方法では、前記のとおり、既に加工済みである粗骨材そのものを用いているため、該作業が不要になり試験の手間を簡素化することができる。
[2]前記(A)工程において、超音波の伝播時間の測定に供する粗骨材の個数が10個以上である、前記[1]に記載の粗骨材の動弾性係数を求める方法。
測定に供する粗骨材の個数を10個以上とすることにより、超音波伝播時間の測定誤差を、より小さくすることができる。
【0013】
[3]前記粗骨材の動弾性係数の値を用いて、下記(2)式から該粗骨材を含むコンクリートの乾燥収縮ひずみの予測値を算出して予測する、コンクリートの乾燥収縮ひずみを予測する方法。
y=15.2x−1455 ……(2)
(式中、yは乾燥期間26週におけるコンクリートの乾燥収縮ひずみ(×10−6)を表し、xは粗骨材の動弾性係数(kN/mm)を表す。)
前記[3]の方法によれば、コンクリートの乾燥収縮ひずみを精度よく予測することができる。
[4]前記粗骨材が火成岩または堆積岩である場合において、該粗骨材の動弾性係数を用いて、下記(3)式から該粗骨材を含むコンクリートの乾燥収縮ひずみの予測値を算出して予測する、コンクリートの乾燥収縮ひずみを予測する方法。
y=ax−b ……(3)
(式中、yは乾燥期間26週におけるコンクリートの乾燥収縮ひずみ(×10−6)を、xは粗骨材の動弾性係数(kN/mm)を表す。また、aは、粗骨材が火成岩の場合は11.536、堆積岩の場合は21.195であり、bは、粗骨材が火成岩の場合は1201.6、堆積岩の場合は1812.2である。)
前記[4]の方法によれば、粗骨材が火成岩や堆積岩の場合において、コンクリートの乾燥収縮ひずみの予測精度を、より高くすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の方法によれば、粗骨材の動弾性係数を、精度よく簡易に求めることができる。また、本発明の予測方法によれば、コンクリートの乾燥収縮ひずみを、精度よく予測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】非特許文献1に掲載されている、コンクリートの乾燥収縮ひずみの提案式(予測式)を用いて算出した予測値と、実測値との関係を示す図である(左上の図)。
【図2】非特許文献2に掲載されている、粗骨材の動弾性係数とコンクリートの収縮率(乾燥収縮ひずみ)との関係を示す図である。
【図3】超音波伝播時間の測定状況を示す図である。
【図4】超音波伝播時間の測定における粗骨材の測定個数と、該測定値の平均値が特定の範囲に含まれる確率との関係を示す図である。
【図5】粗骨材の動弾性係数と、該粗骨材を用いたコンクリートの乾燥収縮ひずみの実測値との関係を示す図である。
【図6】本発明の予測式を用いて算出したコンクリートの乾燥収縮ひずみの予測値と、実測値との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、前記したとおり、(A)粗骨材における超音波伝播時間の測定工程と、(B)粗骨材の動弾性係数の算出工程とを含んでなる、粗骨材の動弾性係数を求める方法と、該係数を用いて、該粗骨材を含むコンクリートの乾燥収縮ひずみを予測する方法である。
以下に、本発明について、粗骨材の動弾性係数を求める方法とコンクリートの乾燥収縮ひずみを予測する方法に分けて、説明する。
【0017】
1.粗骨材の動弾性係数を求める方法
(A)粗骨材における超音波の伝播時間を測定する工程
(i)粗骨材について
該工程において測定に供する粗骨材の最長径は、通常、15mm以上であり、20mm以上が好ましく、25mm超がより好ましい。粗骨材の最長径が15mm未満では、超音波の伝播距離が短いため、超音波伝播時間の測定値の誤差が大きくなる傾向がある。
ここで最長径とは、粗骨材1個がちょうど納まる直方体を考え、この直方体を形成する3種の直行する線(縦線、横線および高さの線)のうち、最長の線およびその線の長さをいう。
【0018】
また、該工程において測定に供する粗骨材の状態は、風乾状態が好ましく、絶乾状態がより好ましい。ここで絶乾状態とは、粗骨材の質量が恒量になるまで乾燥した状態をいう。この粗骨材の状態を含水率で示すと、含水率が2.0質量%以下の粗骨材が好ましく、1.0質量%以下がより好ましく、0.1質量%以下が更に好ましい。該含水率が2.0質量%を超えると、超音波伝播時間の測定値の誤差が大きくなる傾向がある。
【0019】
粗骨材の種類は、特に制限されないが、玄武岩、安山岩、流紋岩、花崗岩、角閃岩、斑レイ岩等の火成岩や、石灰石、硬質砂岩、粘板岩、砂岩、凝灰岩等の堆積岩や、砂利などから選ばれる、少なくとも1種以上が挙げられる。かかる粗骨材は、天然骨材でも再生骨材でもよい。また、前記測定に供する粗骨材は、コンクリートに用いる粗骨材と同一であれば、予測精度が向上するため好ましい。
【0020】
(ii)超音波伝播時間の測定について
該測定では、図3に示すように、粗骨材の最長径の一端に、超音波伝播時間測定器の発信子を接触させるとともに、該粗骨材の最長径の他端に、該測定器の受信子を接触させた状態で、該粗骨材における超音波の伝播時間を測定する。この測定方法では、粗骨材の最長径の両端を平面化する作業が不要となり、該測定の作業時間が、前記従来の方法と比べて、大幅に短縮できる。
超音波伝播時間の測定に供する粗骨材の個数は、10個以上が好ましい。図4に示すように、粗骨材の測定個数が10個以上であれば、該測定値の平均は、粗骨材の母集団の測定値の平均に収束する傾向がある。
【0021】
ここで用いる超音波伝播時間測定器の発信子や受信子の外径は、粗骨材の大きさや、粗骨材の最長径の端部の形状などにもよるが、例えば、粗骨材の最長径の端部が鋭端な場合は、該外径は50mm以下が好ましく、25mm以下がより好ましく、15mm以下が更に好ましい。該外径が50mm以上では、超音波伝播時間の測定値の誤差が大きくなる傾向がある。
超音波伝播時間の測定時の温度は、コンクリートが通常置かれる環境温度、例えば、60℃程度以下なら、該測定値の変動は少なく、特に、制限されることはないが、一般には、10〜40℃の範囲が好ましい。
【0022】
(B)該粗骨材の動弾性係数を算出する工程
該工程において、前記(A)工程で得られた超音波伝播時間を用いて、下記(1)式に基づき該粗骨材の動弾性係数を算出する。
=(L/T)・ρ ……(1)
(式中、Eは動弾性係数を表し、Lは粗骨材の最長径を表し、Tは超音波伝播時間を表し、ρはJIS A 1110に準拠して求めた粗骨材の絶乾密度を表す。)
【0023】
2.コンクリートの乾燥収縮ひずみを予測する方法
(1)粗骨材の種類によらない予測方法
該方法は、前記粗骨材の動弾性係数を用いて、下記(2)式から該粗骨材を含むコンクリートの乾燥収縮ひずみの予測値を算出して予測する方法である。
y=15.2x−1455 ……(2)
(式中、yは乾燥期間26週におけるコンクリートの乾燥収縮ひずみ(×10−6)を表し、xは粗骨材の動弾性係数(kN/mm)を表す。)
なお、複数個の粗骨材について動弾性係数を求めた場合は、変数xは該係数の平均値を用いる。
【0024】
(2)粗骨材が火成岩または堆積岩である場合の予測方法
該方法は、前記粗骨材が火成岩または堆積岩において、該粗骨材の動弾性係数を用いて、下記(3)式から該粗骨材を含むコンクリートの乾燥収縮ひずみの予測値を算出して予測する方法である。
y=ax−b ……(3)
(式中、yは乾燥期間26週におけるコンクリートの乾燥収縮ひずみ(×10−6)を表し、xは粗骨材の動弾性係数(kN/mm)を表す。また、aは、粗骨材が火成岩の場合は11.536、堆積岩の場合は21.195であり、bは、粗骨材が火成岩の場合は1201.6、堆積岩の場合は1812.2である。)
なお、複数個の粗骨材について動弾性係数を求めた場合は、変数xは該係数の平均値を用いる。
【0025】
(3)本発明の予測方法の対象となるコンクリートの構成材料
本発明の予測方法の対象となるコンクリートにおいて、使用可能なセメントは、特に限定されず、ポルトランドセメント、混合セメントおよびエコセメントなどが挙げられる。また、前記使用可能な細骨材は、天然砂、砕砂、珪砂および再生砂などが挙げられる。また、前記使用可能な混和材(剤)は、減水剤、AE剤、フライアッシュ、高炉スラグ、石灰石微粉末などが挙げられる。
【実施例】
【0026】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
1.粗骨材の最長径について
最長径が、それぞれ、5mm以上で10mm未満、10mm以上で15mm未満、および、15mm以上である細骨材を用いて、超音波伝播時間を測定し動弾性係数の平均、標準偏差および変動係数を求めた。その結果を表1に示す。
【0027】
【表1】

【0028】
表1に示すように、変動係数は、最長径が15mm以上の粗骨材では15.8であり、5mm以上で10mm未満の粗骨材の49.0や、10mm以上で15mm未満の粗骨材の43.0と比べ、格段に小さくなっている。したがって、最長径が15mm以上の粗骨材を超音波伝播時間の測定に用いると、測定誤差は小さくなることが分かる。
【0029】
2.粗骨材の測定個数について
粗骨材における超音波伝播時間の測定において、十分に高い精度を得る上で好ましい粗骨材の測定個数を見い出すための試験を行った。その試験方法を以下に示す。
(i)まず、表2に記載の粗骨材N(堆積岩)の40個について超音波伝播時間を測定し、40種の測定値の平均値(m40)を求めた。
(ii)次に、これらの40種の測定値から、無作為に3種、5種、10種、15種および20種を抽出して、それぞれの平均値(m、m、m10、m15およびm20)を求めた。
(iii)さらに、前記(ii)の操作を合計で1000回繰り返し、得られたm、m、m10、m15およびm20の値(それぞれについて、1000種の値が存在する。)が、前記m40±(m40×10%)の範囲に含まれる確率(割合)を求めた。
(iv)前記(i)〜(iii)の操作を、表1に記載の粗骨材O(堆積岩)および粗骨材B(火成岩)についても行った。これらの結果を図4に示す。
図4から分かるように、粗骨材の測定個数が10個以上であれば、約90%以上の確率で、測定値の平均値は前記の範囲に含まれる。したがって、粗骨材の測定個数は、粗骨材の種類によらず、10個以上が好ましい。
【0030】
3.粗骨材の絶乾密度と動弾性係数について
表2と表3に示す粗骨材A〜Sを用いて、絶乾密度をJIS A 1110に準拠して測定し、また、該粗骨材の動弾性係数を、本発明の方法により求めた。その結果を表2と表3に示す。
【0031】
4.コンクリートの乾燥収縮ひずみの測定
本発明の予測式の予測精度の確認において必要な実測値を得るため、JIS A 1129−2(コンタクトゲージ方法)と附属書A(参考)に準拠して、コンクリートの乾燥収縮ひずみを測定した。
具体的には、表2と表3に示す粗骨材A〜Sを用いて、表4に示す配合のコンクリート供試体(100×100×400mm)を作製した後、該供試体を材齢7日まで、20℃の水中に浸漬して養生を行った。この養生後、引き続き、供試体を温度20℃、相対湿度60%RHの室内に、乾燥期間26週まで静置して乾燥させた。乾燥後、供試体は、JIS A 1129−2(コンタクトゲージ方法)に準拠して、長さ変化(乾燥収縮ひずみ)を測定した。その結果を表2と表3に示す。
【0032】
【表2】

【0033】
【表3】

【0034】
【表4】

【0035】
5.粗骨材の動弾性係数とコンクリートの乾燥収縮ひずみとの関係
表2に記載の数値を用いて、動弾性係数とコンクリートの乾燥収縮ひずみ(実測値)との関係を図5に示す。図5から分かるように、(2)式は粗骨材の種類によらず全部の粗骨材に適用することができ、その決定係数(R)は0.6513と大きい。また、(3)式は粗骨材が火成岩や堆積岩である場合に適用することができ、その決定係数(R)は、火成岩の場合に0.8582、堆積岩の場合に0.8621と、さらに大きくなっている。したがって、本発明の方法により求めた粗骨材の動弾性係数と、該粗骨材を用いたコンクリートの乾燥収縮ひずみとの間には、明瞭な直線関係が存在していることが分かる。
また、(2)式や(3)式は、コンクリート配合によらず、コンクリートの乾燥収縮ひずみの予測に適用することができる。
【0036】
6.本発明の予測式の予測精度について
表3に記載の動弾性係数を用いて、本発明の予測式(2)式と(3)式に基づき算出したコンクリートの乾燥収縮ひずみの予測値と、実測値の関係を図6に示す(▲:(2)式に基づき予測値を算出した。□、◇:(3)式に基づき予測値を算出した。)。図6から分かるように、本発明の予測式を用いて算出した予測値は、実測値とよく一致している。したがって、本発明の予測式を用いれば、簡易に精度よく、コンクリートの乾燥収縮ひずみを予測することができる。
【符号の説明】
【0037】
1 発信子
2 受信子
3 超音波伝播時間測定器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(A)工程および(B)工程を少なくとも含む、粗骨材の動弾性係数を求める方法。
(A)最長径が15mm以上の粗骨材の最長径の一端に、超音波伝播時間測定器の発信子を接触させるとともに、該粗骨材の最長径の他端に、該測定器の受信子を接触させた状態で、該粗骨材における超音波の伝播時間を測定する工程
(B)前記(A)工程で得られた超音波伝播時間の値を用いて、下記(1)式に基づき該粗骨材の動弾性係数を算出する工程
=(L/T)・ρ ……(1)
(式中、Eは動弾性係数を表し、Lは粗骨材の最長径を表し、Tは超音波伝播時間を表し、ρはJIS A 1110に準拠して求めた粗骨材の絶乾密度を表す。)
【請求項2】
前記(A)工程において、超音波の伝播時間の測定に供する粗骨材の個数が10個以上である、請求項1に記載の粗骨材の動弾性係数を求める方法。
【請求項3】
前記粗骨材の動弾性係数の値を用いて、下記(2)式から該粗骨材を含むコンクリートの乾燥収縮ひずみの予測値を算出して予測する、コンクリートの乾燥収縮ひずみを予測する方法。
y=15.2x−1455 ……(2)
(式中、yは乾燥期間26週におけるコンクリートの乾燥収縮ひずみ(×10−6)を表し、xは粗骨材の動弾性係数(kN/mm)を表す。)
【請求項4】
前記粗骨材が火成岩または堆積岩である場合において、該粗骨材の動弾性係数の値を用いて、下記(3)式から該粗骨材を含むコンクリートの乾燥収縮ひずみの予測値を算出して予測する、コンクリートの乾燥収縮ひずみを予測する方法。
y=ax−b ……(3)
(式中、yは乾燥期間26週におけるコンクリートの乾燥収縮ひずみ(×10−6)を、xは粗骨材の動弾性係数(kN/mm)を表す。また、aは、粗骨材が火成岩の場合は11.536、堆積岩の場合は21.195であり、bは、粗骨材が火成岩の場合は1201.6、堆積岩の場合は1812.2である。)

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−251965(P2012−251965A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−126956(P2011−126956)
【出願日】平成23年6月7日(2011.6.7)
【出願人】(000000240)太平洋セメント株式会社 (1,449)