説明

粘着シートの粘着剤層表面に凹凸を形成するための剥離シート

【課題】気泡抱き込み防止性と貼り直し性に優れ、且つ粘着性の低下が起こらない粘着シートを製造するための剥離シートの提供。
【解決手段】粘着シートの粘着剤層表面に凹凸を形成するための剥離シートであって、粘着剤層と接触する上側の水平な基準面に対して上方に突出する凸部が二次元的に連続して備えられると共に、該凸部により囲繞された所定形状の凹部が二次元的に繰り返し形成され、該凹部の底面には、前記基準面に対して下方に凹む数多くの微小凹部が形成されてなり、前記剥離シート上面において、前記基準面において前記凸部が占める面積は、前記凸部が占める面積と前記凹部が占める面積との合計の面積に対して40乃至60%であり、前記凸部の高さは7乃至35μmであり、前記微小凹部は、前記凹部当たり平均で5乃至1000個形成され、その深さは3乃至15μmであり、その横断面の長径は3乃至15μmである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複数回貼り直しが可能であり、且つ、貼付面に空気を巻き込まずに被着体に貼ることができる粘着シートを得るために用いられる、粘着シートの粘着剤層表面に特定の立体構造を形成することができる剥離シートに関する。
更に本発明は、該剥離シートを備えた粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
粘着シートは、一般に、基材に粘着剤を塗布乾燥させた後、剥離シートを貼り合わせる方法、或いは、剥離シートに粘着剤を塗布乾燥させた後、基材シートを貼り合わせる方法、などの方法により作製される。
この粘着シートは、粘着剤層の表面が平滑な面であると、被着体に貼付した際に空気の逃げ道がないことから、空気を巻き込みやすく、すなわち気泡ができやすく、このため、接着性の不良並びに見栄えの悪さという問題が生じる。
【0003】
この問題を改善する方法として、粘着剤層表面に凹凸を設けて、貼付の際、空気の抜け道を形成するべく、剥離シートの表面を非平滑化した各種の粘着フィルムが提案されている。
例えば貼付時の微細な気泡の抱き込み、所謂「ふくれ」の防止を図ったものとして、例えば、独立した多数の小凸部を有する粘着層を有する粘着加工シートが提案されている(特許文献1及び2)。
また該粘着加工シートは、上述の「ふくれ」の防止だけでなく、軽く貼り付けた場合には粘着層の前記小凸部の先端のみが他の物体に密着しているため密着面積が小となり、このため貼り直しが可能であるとしている。そして、物体に強く押し付ければ不意に外れなくなり、或いは、貼付後、所定時間が経過すると、小凸部が塑性変形して密着面積が増加し、強固な粘着力が発生するとしている。
【0004】
また粘着フィルム本体と剥離フィルムから構成される粘着加工フィルムにおいて、粘着フィルム本体の粘着面側に格子状等の所定パターンをもって連続する細凹溝を設けたものが提案されている(特許文献3)。
さらに、接着界面で流体を流出させる微細溝を接着剤表面に形成するための、相互に接続している多数の線状隆起部により構成される微細エンボスパターンを有する剥離ライナーが提案されている(特許文献4)。
【特許文献1】実登2503717号公報
【特許文献2】実登2587198号公報
【特許文献3】特開平7−138541号公報
【特許文献4】特開2006−70273号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
また、特許文献1又は2に記載の粘着加工シートは、貼付時の「ふくれ」の防止だけでなく、例えばある種のプラスチックに貼付した場合に起こり得る、プラスチックから発生したガスによる「ふくれ」をも防止できるとしている。すなわち、所定時間が経過しても「ふくれ」を解消するための連通隙間が生じていることとなり、粘着剤表面全体で被着体に密着していることにならず、粘着力の低下につながるという問題を有している。
【0006】
特許文献3に記載の記粘着加工フィルムは、前記細凹溝の相互間隔を3mm〜20mm、前記細凹溝の幅寸法Wを0.1mm〜2.0mmと、いずれも比較的大きい相互間隔及
び寸法に設定されている。このため、前記粘着加工フィルムの貼り直し性が良好でなく、また微細な気泡を抱き込むことがある。さらに、粘着加工フィルムを貼付後にも該細凹溝が平滑化されず視認されるなどの見栄えの問題や、また、被着体との接触面積が少なくなることから粘着力の低下につながるなどの問題を有している。
【0007】
また特許文献4に記載の剥離ライナーは、剥離ライナー表面の総面積に対して、該ライナー表面に設けられた線状隆起部により規定されるランド部の面積割合を特定の数値範囲(60〜97%)とすることにより、空気等の抜け性の向上を図っているが、特に貼付直後に複数回の貼り直しを容易にする点等については改良の余地があった。
【0008】
このように、粘着剤層表面に凹溝や小凸部などを設けることにより、粘着シートの貼付時に気泡の巻き込みを防止したり、また、貼付直後に複数回の貼り直しができ、所定時間後には強い粘着力が発現する、所謂「貼り直し性」を良好なものに改善する方法として多くの提案がなされてきたが、粘着シートを貼付する際に微細な気泡であると抜けにくいものがあること、貼付時後の粘着面の外観が損なわれるもの、或いは、粘着力自体の低下につながるなどの問題があった。
【0009】
本発明は上記問題点を鑑みてなされたものであり、気泡抱き込み防止性(気泡抜け性)と貼り直し性に優れ、且つ、粘着性の低下が起こらない、粘着シートを提供するための剥離シートを提供する。詳細には、粘着シートを目的とする位置から外れた箇所に貼付した場合においても簡単に貼り直しが可能であり、貼付時に気泡を抱き込んで「ふくれ」を形成することがなく、且つ、貼付した粘着シートに被着体に対する接着性が良好な粘着剤層を形成するための、粘着剤層と接触する面に凹凸を有する剥離シートに関する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、表面に凹凸を有する剥離シートにおいて、凹部が二次元的に繰り返し所定の形状で形成されるように凸部を形成し、該凸部で囲まれた凹部の底面に数多くの微小凹部を設けるという構成により、粘着シートの基材上面に設けられた粘着剤層表面に該剥離シートを重ね、圧着する際の空気の抱き込みを改善できることを見出した。さらに、該剥離シートを粘着剤層表面に圧着した際、粘着剤層表面に剥離シート凸部、凹部及び微小凹部が転写され、表面に凹部、凸部及び微小凸部を有する粘着剤層を形成することにより、該粘着シートを被着面に貼付する際に起こる空気の巻き込みという問題、該粘着シートの被着面への貼り直し性の改善、さらには粘着力低下を解消できることを見出し、本発明を完成させた。
【0011】
すなわち本発明は、粘着シートの粘着剤層表面に凹凸を形成するための剥離シートであって、該剥離シートの上面には、粘着剤層と接触する上側の水平な基準面に対して上方に突出する凸部が二次元的に連続して備えられるとともに、該凸部により囲繞された所定形状の凹部が二次元的に繰り返し形成され、そして、該凹部の底面には、前記基準面に対して下方に凹む数多くの微小凹部が形成されてなり、前記剥離シート上面において、前記基準面において前記凸部が占める面積は、前記凸部が占める面積と前記凹部が占める面積との合計の面積に対して40乃至60%であり、前記凸部の高さは7乃至35μmであり、前記微小凹部は、前記凹部当たり平均で5乃至1000個形成され、その深さは3乃至15μmであり、その横断面の長径は3乃至15μmであることを特徴とする、剥離シートに関する。
【0012】
上記剥離シートにおいて、記微小凹部は、その深さが3μm乃至10μmであり、その横断面の長径は3乃至10μmであることが好ましい。
また前記凹部とその隣の凹部との間の凸部の幅が10μm乃至500μmであることが好ましい。
【0013】
そして、前記凸部が格子状に二次元的に連続して形成される場合には、該凸部により囲繞された略四角形の凹部は長さ17.2μm乃至1720μmの長辺を有することが好ましい。
あるいは、前記凹部が丸形状をなす場合、該凹部と隣の凹部との間隔が80μm乃至1400μmであることが好ましい。
【0014】
また本発明は、基材シート上に形成された粘着剤層の表面に、前記剥離シートを重ね圧着することにより、該剥離シートの凸部、凹部並びに微小凹部の各形状が該粘着剤層表面に転写され、凹部、凸部並びに微小凸部が形成された粘着剤層を有する粘着シートに関する。
前記粘着シートは、前記剥離シートが剥離され貼付された状態で前記微小凸部が経時的に消失し、平滑面に変形するような弾性率を有する粘着剤層を備えていること、特に2×104Pa乃至2×105Paの貯蔵弾性率を備えていることが好ましい。
また、前記粘着剤層が、架橋剤を含まない粘着剤により形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の剥離シートは、剥離シートの上面に二次元的に連続して形成された凸部と、該凸部により囲繞され、所定の形状で二次元的に繰り返し形成された凹部と、該凹部の底面に数多く設けられた微小凹部によって構成される凹凸を粘着シートの粘着剤表面に押圧することにより、所定の形状を有する凹部、凸部並びに微小凸部を粘着剤表面に容易に形成(転写)することができる。
また、本発明の剥離シートは、剥離シートの基材上に形成された上記凹部及び凸部により、粘着シート基材の上面に設けられた粘着剤層と剥離シートを押圧する際、界面において空気の抱き込みが従来に比して少なく、また空気を抱き込んだ場合においても押圧によって容易に空気を押し出すことができる。
【0016】
そして本発明の粘着シートは、前記剥離シートから転写されて粘着剤層に形成された上記凹部及び凸部により、前記粘着シートを被着体に貼付した際、貼付面に気泡を巻き込まずに貼付でき、また気泡を巻き込んだ場合においても容易に気泡を抜いて貼付することができる。
即ち、剥離シートの凸部により粘着剤層の凹部が形成されるが、この凹部に囲繞される粘着剤層の凸部の上面には、剥離シートの微小凹部によってできた微小突起(微小凸部)が形成されている。これが被着体に接触し、粘着剤の流動により経時的にフラット化するが、このとき生成する気泡は粘着剤の流動と共に移動し、周囲の凹部に抜けるので、全体として気泡の生成を防止できる。
さらに、粘着剤層に形成された微小凸部により、前記粘着シートを被着体に貼付した後、目的とする箇所に容易に貼付し直すことができる。
【0017】
本発明の粘着シートは、前記剥離シートが剥離され貼付された状態で前記微小凸部が経時的に消失し、平滑面に変形するような弾性率を有する粘着剤層を備えていることから、時間が経過すると該微小凸部が塑性変形して密着面積が大きくなり、強固な粘着力を発現させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
前述の通り、これまでにも粘着剤層表面に凹溝や小凸部などを設けて、粘着シートの貼付時の気泡巻き込み防止や、貼り直し性の改善を図った種々の方法が提案されてきたが、微細な気泡であると巻き込み防止が十分でなかったり、或いは特に粘着剤層の粘着力の低下が懸念されるなど、従来の方法はこれら問題点を十分満足に克服できるとはいえないと
いう点で課題を残すものであった。
【0019】
本発明者らは、まず、気泡の巻き込み防止のために気泡の抜け穴となる溝等を粘着剤層に形成するに当たり、粘着力を損なわず、気泡の抜け性も良好であるような、粘着剤層の被着体との接着面積について検討した。すなわち、粘着力向上には接着面積が大きいこと、好ましくは粘着剤層全面が被着体と密着すること(粘着剤層に溝等がないこと)が望まれるが、気泡の抜け性を確保するには粘着剤層に形成する溝等の割合を多くして、接着面積を小さくさせた方が好ましい。
そして本発明者らは、これら粘着力と気泡の抜け性の確保を両立させるには、被着体との密着面積を、粘着剤層表面の総面積に対して40乃至60%の範囲内とするのが最も好ましい点を見出し、本発明の完成に至っている。従って、この構成は本発明の主な特徴の一つである。
【0020】
また、粘着シートの貼り直し性を向上するには、1箇所当たりの被着体との密着面積が小さいこと、すなわち微小の突起を有する形状であることが好ましい。しかしながら、こうした「微小突起」の形状であると、突起の数をいくら増やしたとても、総密着面積は小さいものとなり、粘着力の低下は否めない。
本発明者らは、粘着シートに使用する粘着剤層を、前記微小の突起が貼付時に経時的に消失し、平滑面に変形するような弾性率、具体的には2×104Pa乃至2×105Paの貯蔵弾性率を有するものとすることによって、相当時間の経過後には面全体で密着するものとなり、強い粘着力の発現が実現できるという事実を見出したのである。よって本発明は斯かる構成を他の特徴とするものである。
【0021】
さらに、本発明の剥離シート及び粘着シートに関する詳細な構成を以下に説明する。
【0022】
[剥離シート]
本発明に用いる剥離シートの材料としてはPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム、OPP(二軸延伸ポリプロピレン)フィルム等のフィルムや、紙にポリエチレンをラミネートしたポリエチレンラミネート紙等を使用可能である。
また、PETフィルム、OPPフィルム等のフィルムにポリエチレンをラミネートし、このポリエチレン部分にエンボスを付与して用いることもできる。
【0023】
本発明の剥離シートは、該剥離シートの上面に、粘着剤層と接触する上側の水平な基準面に対して上方に突出する凸部が二次元的に連続して備えられるとともに、該凸部により囲繞された所定形状の凹部が二次元的に繰り返し形成され、そして、該凹部の底面には、前記基準面に対して下方に凹む数多くの微小凹部が形成されてなる。
そして、前記剥離シート上面において、前記基準面において前記凸部が占める面積は、前記凸部が占める面積と前記凹部が占める面積との合計の面積に対して40乃至60%である。
【0024】
上述の、粘着剤層と接触する上側の水平な基準面に対して、上方に突出して二次元的に連続して形成された凸部と、該凸部により囲繞され、所定の形状で二次元的に繰り返し形成された凹部、さらに、該凹部の底面に形成された数多くの微小凹部に関して、図1〜図8を用いて詳細に説明する。但し、図1〜図8に示した凸部や凹部等は一例に過ぎず、図に示した大きさ、形状等に何等限定されるものではない。
【0025】
図1(a)は、凸部2が格子状に二次元的に連続して形成された剥離シート1の、基準面に投影された状態を上方から見たときの一部分を拡大した図を示すものである。図の上下方向が剥離シートの長さ方向を示している。図1(b)は、図1(a)においてA−A’面で直交する断面(長手方向に対して直交する断面(横断面))を示す図である。
図1(a)及び(b)に示すように、剥離シート1の上面には、粘着剤層と接触する上側の水平な基準面X−X’に対して上方の突出する凸部2と、該凸部2に囲繞された凹部3が形成され、また、該凹部3の底面には該基準面X−X’に対して下方に凹む微小凹部4が多数形成されてなる。
【0026】
前述の前記基準面に対して、前記凸部が占める面積と前記凹部が占める面積との合計の面積に対して、前記凸部が占める面積は、例えば図2及び図3の凸部及び凹部を有する剥離シートの場合、以下の通りに算出される。なお図2及び図3は、いずれも剥離シート1を上方から見たときの一部分を拡大した図を示すものであり、図の上下方向が剥離シートの長さ方向を示している。
【0027】
例えば図2に示すように、剥離シート1の基準面に投影された状態を上方から見たとき、幅aを有して格子状に形成された凸部2と、該凸部2によって囲まれた領域として、長辺xの略四角形(正方形)の凹部3が繰り返し形成された剥離シートの場合、剥離シート上面の面積、即ち凸部2と凹部3の合計の面積は[(x+a)2]に換算される。そして
凸部2の面積は[2ax+a2]に、凹部3の面積は[x2]に換算される。
従って、本発明の剥離シートが図2に示す形状を有する場合、該剥離シートは40<[2ax+a2]/[(x+a)2]×100<60を満たすような四角格子状の凹凸が形成されることとなる。ここで粘着剤層の凸部(剥離シートの凹部3)に注目すると、40<[x2]/[(x+a)2]×100<60となり、上記式は1.72a<x<3.44aに換算される。
【0028】
また図3に示すように、剥離シートの基準面に投影された状態を上方から見たとき、半径bの丸形状(円形状)の凹部3が間隔y毎に形成された剥離シートにおいては、剥離シート上面の面積、即ち凸部2と凹部3の合計の面積は[y2]に、そして凸部2の面積は
[y2−b2π]に、凹部3の面積は[b2π]に換算される。
従って、本発明の剥離シートが図3に示す形状を有する場合、該剥離シートは40<[y2−b2π]/[y2]×100<60を満たすような円形状の凹部を有する凹凸が形成
されることとなり、上記式は2.29b<y<2.8bに換算される(π=3.14とする)。
【0029】
ここで、図2における凸部2の幅a、或いは図3における凸部2の幅、すなわち、凹部3とその隣の凹部3の幅y−2bは、粘着剤層に転写した際の気泡の抜け易さのみを考慮すると、概ね10μm乃至1000μmであることが好ましい。
しかしながら、粘着剤層に転写されて形成された凹部が貼付後に背面から明確に視認されることは好ましくない。
このため、これらを踏まえた結果、粘着剤層に設けられる凹部の幅(すなわち剥離シートの凹部とその隣の凹部との間の凸部の幅)として10μm乃至500μm、好ましくは10μm乃至200μmであることが好ましい。
【0030】
上記剥離シートの凸部の幅等を考慮すると、例えば図2におけるxや図3におけるyは以下の通り算出される。
すなわち、図2において、剥離シートの凸部の幅aは10μm乃至500μmであり、仮に幅aを10μmとするとxは17.2μm乃至34.4μmの値となる。
また図3において、y−2bは10μm乃至500μmとなることから、仮にy−2bを10μmとするとbは35μm以上となり、このときのyのとり得る値は約80μm乃至98μmの値となる。
【0031】
以上より、前記凸部2が格子状に二次元的に連続して形成された場合(例:図2)、前記凸部により囲繞された略四角形の凹部は長辺が17.2μm乃至1720μmであるこ
とが好ましく、また、前記凹部3丸形状をなす場合(例:図3)、前記凹部3とその隣の凹部3との間隔が80μm乃至1400μmであることが好ましい。
【0032】
なお、本発明の剥離シートに設けられた凸部と該凸部によって囲繞された所定形状を有する凹部の形状は、凸部:格子状−凹部:菱形(図4)、凸部:格子状−凹部:平行四辺形(図5)、あるいは凹部:楕円形(図6)などのように様々であってよい(なお、図4乃至図6は、いずれも剥離シート1の基準面に投影された状態を上方から見たときの一部分を拡大した図を示すものであり、図の上下方向が剥離シートの長さ方向を示している。)。
【0033】
前記凸部は、その長手方向の断面において、図7に示すように、四角形(図7(a))、台形(図7(b))、三角形(図7(c))、半円形(図7(d))、四角形と半円の組み合わせ(図7(e))や楕円(図7(f))などのドーム形等、様々な形状を有することができ、このうち略四角形又は略三角形の断面を有することが望ましい。
前記凸部の前記基準面からの高さは7乃至35μmであり、より好ましくは7乃至25μmである。
【0034】
前記凹部3の底面には、粘着剤層と接触する上側の水平な基準面X−X’に対して下方に凹む数多くの微小凹部4が設けられている(図1(b)参照)。
微小凹部4は、粘着剤層に転写されると微小凸部となり、粘着シートの貼り直し性を向上させる働きを有する。
こうした観点から、微小凹部4の深さは3μm乃至15μm、好ましくは3μm乃至10μmであり、その横断面の長径は3乃至15μm、好ましくは3μm乃至10μmである。
【0035】
また、剥離シートの上方から見た微小凹部4の形状は円形、楕円形、四角形(正方形、長方形、菱形、平行四辺形、台形等)、三角形等、様々であってよい。
さらに、微小凹部4の長手方向に対して直交する断面(横断面)の形状は、図8に示すように、四角形(図8(a))、台形(図8(b))、逆三角形(図8(c))、半円形(図8(d))、四角形と半円の組み合わせ(図8(e))や楕円(図8(f))などのドーム形等、様々な形状を挙げることができる。
【0036】
上記微小凹部4は、前記凸部2によって囲繞された凹部3の底面に、5乃至1000個、好ましくは10乃至250個設けられる。
【0037】
前記剥離シートへの凹凸部の付与は、上記に示した所定の条件で彫刻を施されたエンボスロールと、加圧ロールの間を、所定の条件で剥離シートを通すことにより達成される。
なお剥離シートの剥離処理は、エンボス処理の前後いずれでも可能であり、剥離処理を施さなくてもよい。
【0038】
[粘着シート]
本発明の粘着シートに用いる基材としてはPETフィルム、OPPフィルム、紙、和紙、布、不織布、これらの複合基材等、様々なものを使用可能である。
該粘着シートは、上記基材に粘着剤を塗布し、乾燥させて粘着剤層を形成する。
【0039】
[粘着剤層]
前述したように、本発明の粘着シートの粘着剤層は、その表面に前記剥離シートを圧着させることにより、該剥離シートの凸部、凹部及び微小凹部が転写され、凹部、凸部並びに微小凸部が形成されることとなる。
ここで粘着剤層の微小凸部は、前述の通り粘着シートの貼り直し性を向上させる働きを
有する。
しかしながら、被着体に対して該微小凸部のみが密着している状態のままであると接着力が弱く、剥がれを生ずることとなる。
従って粘着剤層として、該微小凸部が貼付された状態で経時的に消失し、平滑面に変形するような弾性率を有する粘着剤層を採用することにより、貼付直後〜30分程度では微小凸部の形状が変化せず、弱い粘着力を保つことで複数回の貼り直しを可能とし、以後粘着剤層が変形して微小凸部が消失し、被着体との密着面積が増加することにより、強い粘着力を発現させることを実現した。
【0040】
このような粘着剤層としては、粘着剤層の貯蔵弾性率が2×104Pa乃至2×105Paであることが好ましく、より好ましくは5×104Pa乃至1×105Paである。
粘着剤層として上記数値範囲より低い貯蔵弾性率のものを採用すると、粘着剤層の凝集力が弱く、被着体に粘着剤層が残留する虞があり、一方、上記数値範囲より高い貯蔵弾性率のものを採用すると、経時的に粘着剤層が変化せず(即ち前記微小凸部が消失せず)、強い粘着力を発現させることができない。
尚、貯蔵弾性率は、日本シイベルヘグナー社製のMCR301を用いて測定された数値を採用した。
【0041】
上記粘着剤層の貯蔵弾性率を満たすものであれば、使用する粘着剤や、粘着シートに通常使用される各種添加剤の種類及び使用量は特に制限されない。
例えば粘着剤としてはゴム系、アクリル系等種々のものを使用可能であり、その形態も溶剤型、エマルジョン型、ホットメルト型等、特に制限されず使用することができる。また、架橋剤を添加する必要は特にないが、添加する場合には上記貯蔵弾性率の範囲となるように、添加量を調整する必要がある。
【0042】
[粘着剤層における凹部の形成方法]
上述の粘着剤層を形成された粘着シートと、所定の形状にて凸部、凹部、微小凹部が形成された剥離シートは、粘着剤層表面と凸部、凹部、微小凹部が形成された剥離シート表面とを貼り合わせ、空隙を調整した2つの圧着ロールを通過させて圧着することができる。
このとき、剥離シートに形成された凸部と凹部、特に微小凹部が潰れない程度に加熱することにより、粘着剤が軟化し、気泡が抜けやすくなる。例えばポリエチレンに凸部、凹部、微小凹部を形成した剥離シートを用いた場合には、60℃〜80℃の温度で加熱しながら圧着することが望ましい。
【実施例】
【0043】
以下、実施例を挙げて、本発明を更に詳しく説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものでない。
【0044】
[剥離シート付き粘着シートの作製]
剥離シートの基材としてポリエチレンテレフタレート(PET#50)フィルムを採用し、これにポリエチレンを溶融して25μmの厚さに塗布した。得られたフィルムのポリエチレン面にシリコーン系の剥離処理を施した後、該シートをエンボスロールで加圧する直前に100℃に加温し、後述の所定形状のエンボスパターンを形成できるエンボスロールに通して加圧し、エンボス面を有する剥離シート(下記実施例1〜4、比較例1〜4を参照)を作製した。
次に、粘着シートの基材としてポリエチレンテレフタレート(PET#125)フィルムを使用し、乾燥後の厚さ25μmにてゴム系粘着剤(25℃の貯蔵弾性率:5.8×104P)を塗布して、粘着シートを作製した。
上記エンボス面を有する剥離シートと粘着シートを、粘着シートを40℃に加温しなが
ら、加圧ロールを通して貼り合わせ、剥離シート付き粘着シートを得た。
【0045】
[評価]
剥離シート付き粘着シートを作製して5日経過後、貼り合わせた両シートの接着面に存在する気泡の有無について、ビデオマイクロスコープで150倍に拡大し、観察した(評価1)。
また、剥離シートを粘着シートから剥がした後の、エンボスの形成性を、同様にビデオマイクロスコープで150倍に拡大して観察した(評価2)。
さらに、剥離シートを剥がした後、粘着シートのアクリル板への貼付時の貼り直し性(評価3)及び貼付1日後の微小突起の消失性(貼付面の平滑性)を目視でマクロ的に確認した(評価4)
【0046】
[剥離シートのエンボスパターン]
実施例1.
剥離シートの基準面に投影された状態を上方から見たとき、図2に示すように、凸部2の幅a=10μm、凹部3が長辺x=30μmの正方形となるように、剥離シートに格子状の凸部を形成した。このとき、凸部2の基準面からの高さは20μmであった。
また凹部3の底面には、剥離シートを上方から見たときに四角形であり、長手方向の断面が図8(b)に示すように台形である微小凹部4を16個形成した。該微小凹部4は、凹部3の底面において面積4μm×4μmの正方形、深さ3μm、微小凹部の底面において面積3μm×3μmの正方形となるように形成した。
【0047】
実施例2.
実施例1において、図2における凸部2の幅a=25μm、凹部3の長辺x=65μmとした以外は、実施例1と同様に凸部及び凹部を形成した。
また凹部の底面には、実施例1と同様の形状を有する微小凹部を100個形成した。
【0048】
比較例1及び2.
ゴム系粘着剤に変えてアクリル系粘着剤(イソシアネート系架橋剤添加、25℃における貯蔵弾性率:6×105Pa)を用いて、実施例1又は実施例2と同じ凸部、凹部並び
に微小凹部を有する粘着剤層を形成し、比較例1及び比較例2とした。
【0049】
実施例3.
剥離シートの基準面に投影された状態を上方から見たとき、図3に示すような円形状の凹部を繰り返し形成した。ここで図3における凹部2の半径b=35μm、間隔y=90μmとし、凸部の高さを20μmとなるように、剥離シートに凸部及び凹部を形成した。
また凹部の底面には、実施例1と同様の形状を有する微小凹部を、49個形成した。
【0050】
実施例3において、図3における凹部2の半径b=50μm、間隔y=135mとした以外は、実施例3と同様に凸部及び凹部を形成した。
また凹部の底面には、実施例1と同様の形状を有する微小凹部を100個形成した。
【0051】
比較例3及び4.
ゴム系粘着剤に変えてアクリル系粘着剤(イソシアネート系架橋剤添加、25℃における貯蔵弾性率:6×105Pa)を用いて、実施例3又は実施例4と同じ凸部、凹部並び
に微小凹部を有する粘着剤層を形成し、比較例3及び比較例4とした。
【0052】
[試験結果]
【表1】

【0053】
表1に示すように、実施例1乃至4のエンボスパターンを有する剥離シートにおいては、粘着シートと貼り合わせた後に粘着面に気泡を生じさせず、また、エンボスの形成性も良好であった。
さらに、貼付時の貼り直し性にも優れ、貼付1日後には微小突起が消失し、平滑な表面を得ることができた。
【0054】
一方、粘着剤の貯蔵弾性率が本発明で規定する範囲外となる、アクリル系粘着剤(25℃の貯蔵弾性率:6×105Pa)を使用した比較例1乃至4は、いずれも貼付1日後に
微小突起が消失せず、表面に凹凸が残る結果となった。これは、経時的に強い粘着力を発現できず、剥がれ落ちる虞があることを示唆するものであった。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】図1(a)は剥離シートの基準面に投影された状態を上方から見たときの一部を拡大した図であり、図1(b)は図1(a)のA−A’面で直交する断面を示す図である。
【図2】図2は本発明の第一形態の剥離シート(凸部が格子状に二次元的に連続して形成される形態)の基準面に投影された状態を上方から見たときの模式図を示したものである。
【図3】図3は本発明の第二形態の剥離シート(凹部が丸形状をなす形態)の基準面に投影された状態を上方から見たときの模式図を示したものである。
【図4】図4は本発明の第三形態の剥離シート(凸部が格子状に二次元的に連続して形成され、菱形の凹部が形成された形態)の基準面に投影された状態を上方から見たときの模式図を示したものである。
【図5】図5は本発明の第四形態の剥離シート(凸部が格子状に二次元的に連続して形成され、平行四辺形の凹部が形成された形態)を上方から見たときの模式図を示したものである。
【図6】図6は本発明の第五形態の剥離シート(凹部が楕円形状をなす形態)の基準面に投影された状態を上方から見たときの模式図を示したものである。
【図7】図7は凸部の、剥離シートの長手方向に対して直交する断面の様々な形状を示した図である。
【図8】図8は微小凹部の、剥離シートの長手方向に対して直交する断面の様々な形状を示した図である。
【符号の説明】
【0056】
1 ・・・ 剥離シート
2 ・・・ 凸部
3 ・・・ 凹部
4 ・・・ 微小凹部
A−A’・・・ 剥離シートの長手方向に対して直交する断面
X−X’・・・ 粘着剤層と接触する上側の水平な基準面
x ・・・ 格子状に二次元的に連続して形成された凸部によって囲繞された略四角形の凹部の長さ
a ・・・ 格子状に二次元的に連続して形成された凸部の幅
y ・・・ 丸形状に形成された凹部とその隣の凹部との間隔
b ・・・ 丸形状に形成された凹部の半径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着シートの粘着剤層表面に凹凸を形成するための剥離シートであって、
該剥離シートの上面には、粘着剤層と接触する上側の水平な基準面に対して上方に突出する凸部が二次元的に連続して備えられるとともに、
該凸部により囲繞された所定形状の凹部が二次元的に繰り返し形成され、そして、
該凹部の底面には、前記基準面に対して下方に凹む数多くの微小凹部が形成されてなり、前記剥離シート上面において、前記基準面において前記凸部が占める面積は、前記凸部が占める面積と前記凹部が占める面積との合計の面積に対して40乃至60%であり、
前記凸部の高さは7乃至35μmであり、
前記微小凹部は、前記凹部当たり平均で5乃至1000個形成され、その深さは3乃至15μmであり、その横断面の長径は3乃至15μmであることを特徴とする、剥離シート。
【請求項2】
前記微小凹部は、その深さが3μm乃至10μmであり、その横断面の長径は3乃至10μmであることを特徴とする、請求項1記載の剥離シート。
【請求項3】
前記凹部とその隣の凹部との間の凸部の幅が10μm乃至500μmである、請求項1又は2に記載の剥離シート。
【請求項4】
前記凸部は格子状に二次元的に連続して形成され、
該凸部により囲繞された略四角形の凹部は長さ17.2μm乃至1720μmの長辺を有することを特徴とする、請求項1乃至3のうち何れか一項に記載の剥離シート。
【請求項5】
前記凹部は丸形状をなし、該凹部と隣の凹部との間隔が80μm乃至1400μmであることを特徴とする、請求項1乃至3のうち何れか一項に記載の剥離シート。
【請求項6】
基材シート上に形成された粘着剤層の表面に、請求項1乃至5のうち何れか一項に記載の剥離シートを重ね圧着することにより、該剥離シートの凸部、凹部並びに微小凹部の各形状が該粘着剤層表面に転写され、凹部、凸部並びに微小凸部が形成された粘着剤層を有する粘着シート。
【請求項7】
前記粘着シートは、前記剥離シートが剥離され貼付された状態で前記微小凸部が経時的に消失し、平滑面に変形するような弾性率を有する粘着剤層を備えていることを特徴とする、請求項6記載の粘着シート。
【請求項8】
前記粘着剤層の弾性率が、2×104Pa乃至2×105Paの貯蔵弾性率であることを特徴とする、請求項7に記載の粘着シート。
【請求項9】
前記粘着剤層が、架橋剤を含まない粘着剤により形成されていることを特徴とする、請求項6乃至8のうち何れか一項に記載の粘着シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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