説明

粘着フィルター式捕虫器

【課題】飛翔性の不快害虫を高効率で捕獲するだけでなく、捕獲した虫を定性的および定量的に確認でき、更に捕獲した虫が人目に付きにくいなどの衛生面にも配慮された捕虫器の構築。
【解決手段】虫が好む誘引剤および光源を任意の容器に設置し、本容器の開放された部分を粘着物質を塗布したフィルターで囲う。誘引源に誘われて飛来する虫は当該フィルターで捕獲される。また、当該フィルターを巻いたロールを当該容器の一端に設置し、他端には当該フィルター回収用のロールを取り付けることで、捕虫面を連続的または任意の間隔で移動させることが出来る。ロールの回転は手動または電動とする。さらに当該フィルターの両面をラップフィルムで挟みながら回収することで、巻き取り回収後、当該フィルター同士が貼り付くことがない。従って、当該捕虫器の使用後、ロールからフィルターを解き、捕獲した虫の数および種類を時間を追って確認することが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘引物質または誘引光で虫を惹き付けて、当該誘引因子に向かって飛来する虫を粘着物質を塗布したフィルターで捕獲する捕虫器である。また、一方から送り出された当該フィルターを他方から一定の速度で巻き取り回収することで、捕獲された日時ならびにその数と種類を確認することが出来るものである。なお、当該フィルターの巻き取り回収を行う時、フィルターに塗布された粘着物質同士が互いに貼り付かない様に巻き取り回収し、使用後巻き取りロールから当該フィルターを解く方法も本発明の特徴である。
【背景技術】
【0002】
食品、医薬品および化粧品などを取り扱う業者にとって、飛翔性昆虫の施設内への飛来は異物混入ならびに衛生問題上のトラブルを引き起こすため、様々な対策がとられている。
【0003】
飛翔性昆虫に対する具体的な対策として、粘着テープによる捕獲および電撃殺虫器の使用が主である。この内、粘着テープの使用は飛んでいる虫が偶発的に粘着テープに接触しなければ捕獲出来ないことから効率よく虫を捕獲するという面で不利である。一方、電撃殺虫器は紫外線ランプで虫を誘引するまでは効率よく虫を集められるが電撃部に虫が接触する確率は低い様である。
【0004】
以上から、虫を集めて、集まった虫を確実に捕獲する方法は未だ見出されていない。更に単位時間当たりに捕獲される虫の量や種類が分かるという捕獲方法も見出されていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
飛翔性の不快害虫を高効率で捕獲するだけでなく、捕獲した虫を定性的および定量的に確認でき、更に捕獲した虫が人目に付きにくいなどの衛生面にも配慮された捕虫器の構築。
【課題を解決するための手段】
【0006】
虫が好む誘引剤および光源を少なくとも一方向が開放された容器に設置し、本容器の開放された部分を粘着物質を塗布したフィルターで囲う。誘引因子源をフィルターで囲うことにより、誘引物質を当該フィルターの外へ放散させることが可能となる。誘引因子源に誘われて飛来する虫は当該フィルターで捕獲される。また、当該フィルターを巻いたロールを当該容器の一端に設置し、他端には当該フィルター回収用のロールを取り付け、そのロールを回転させることで、捕虫面を連続的または任意の間隔で移動させることが出来る。さらに巻き取り回収用ロールの手前に二本のラップフィルムを巻いたロールを当該フィルターを挟むように設置し、当該フィルターの両面をラップフィルムで挟みながら回収することで、当該フィルター同士が貼り付くことなく回収できる。従って、当該捕虫器の使用後、ロールからフィルターを解き、捕獲した虫の数および種類を時間を追って確認することが出来る。
【0007】
当該捕虫器に使用する誘引剤は、日本酒やワインなどの酒類、エタノール、醸造酢、酢酸水溶液、果実または野菜の絞り汁、果実または野菜の発酵液汁、および虫のフェロモン様物質などを用いる。また、捕獲する虫の種類および習性に応じて、単一または必要に応じて上記溶液の数種類を様々な組み合わせで混合して用いる。
【0008】
誘引光の光源にはブラックライトなどの誘虫灯を用いる。
【0009】
捕虫に使用するフィルターの孔径は0.01〜10mmとし、網、織物、不織布、フィルムに任意の穴を空けたものなどを用いることが出来、これらの材質はこだわらない。
【0010】
捕虫フィルターに塗布する粘着物質には、エポキシ系、アクリル系またはシリコーン系の接着剤または塗料、または天然粘着物質を用いる。
【0011】
当該フィルターの回収には巻き取りローラーを使用する。更に、巻き取り回収はローラーを定期的に手動で回転させる、またはモーターなどの動力を用いて回転させる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の捕虫器は以下に挙げる特徴を有する。
【0013】
捕虫面がフィルターであるため、フィルターで囲んだ内側に設置した誘引物質および誘引光がフィルターの囲いの外側へ放散されやすく、虫へアピールする効率が高まり、誘引因子源に集まろうとする虫は手前にしかけた粘着物質を塗布したフィルターで捕獲される。
【0014】
捕獲フィルターを巻き取り回収することから、常に新しい接着面が露出していること、および捕獲された虫が人目に付く機会が少なくなる。従って、粘着力減退による捕虫効率の低下が防止でき、また捕獲された虫が人目に付かないので美観的にも好ましい。
【0015】
粘着フィルター同士が互いに貼り付かないようにフィルターを一定速度で巻き取り回収することから使用後、巻き取ったフィルターを解いて捕獲した虫の数や種類を時間を追って確認することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本願発明者は予め設置した誘引因子に集まる虫を粘着物質を塗布したフィルターで捕獲し、当該フィルターをラップフィルムで巻き取りながら回収し、回収後捕獲した虫の数および種類を確認することに成功した。
【実施例1】
【0017】
任意の大きさの口の開いた箱を用意し、開口部が側面になるように置いた。箱の中にブラックライトおよび誘引物質を充分に含ませた脱脂綿を入れたビンを装備した。誘引物質にはメロンの皮の絞り汁を用いた。
【0018】
開口部の左端部分に粘着物質を塗布した2mmメッシュのフィルターを巻いたロールを装備し、開口部の右端には当該フィルターを回収するためのロールと、回収ロールの手前に二本のラップフィルムを巻いたロールを装備した。
【0019】
当該フィルターを巻いたロールからフィルターを引き出し、二本のラップフィルムロールから引き出したラップフィルムでフィルターの表と裏をそれぞれ挟み、「ラップフィルム−フィルター−ラップフィルム」の三層構造を造った。予め巻き取り回収ロールに取り付けておいたフックに三層構造の端をクリップで固定した。
【0020】
フィルター回収ロールはモーターで回転する様にし、回転数を変化させることで、フィルターの巻き取り速度を変化出来るようにした。
【産業上の利用可能性】
【0021】
製品に対する消費者からのクレームの多くが異物混入に関するものである。混入した異物の大半はショウジョウバエなどの虫である。従って食品工場などでは虫の混入に対するチェックが厳重になされており、その対策および製品回収などにかかるコストは無視できない負担となっている。しかし、工場などの虫対策は飛んでいる虫が偶発的に粘着テープに接して捕獲する方式や、誘虫灯で集めた虫が電線に接すると感電死するものが多く使用されている。何れの方法も捕虫という観点から積極性に欠けるものが多い。捕虫効率が高く、捕獲した虫の確認が定性的および定量的に出来、さらに捕獲した虫が人目に付かない等の衛生的な捕虫器が必要とされる。従って、本発明の捕虫器はこれらの条件を満たしており、食品工場などに導入すると、捕虫効果を上昇させるだけでなく、サニタリー計画の高効率化およびコスト削減にも効果があることから、産業上の利用価値が高まることが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明を利用した粘着フィルター式捕虫器の概略図である。
【符号の説明】
【0023】
1 捕虫フィルター収納ローラー
2 捕虫フィルター
3 ブラックライト
4 誘引剤入りビン
5 ラップフィルム
6 捕虫フィルター巻き取りローラー
7 機器格納ケース
8 巻き取り用モーター


【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着物質を塗布したフィルターで作製した囲いの内側から虫の誘引物質および誘引光を発し、当該誘引剤および誘引光に惹かれて飛来する虫を当該フィルターで捕獲する捕虫器。
【請求項2】
粘着物質を塗布した任意の長さのフィルターを巻き付けたロールから当該フィルターを送り出し、同時に送り出されたフィルターを巻き取り回収することで常に新しい接着面が露出する仕組みを有する請求項1の捕虫器。
【請求項3】
一方から送り出された粘着物質を塗布したフィルターを回収するとき、当該フィルターの両面を透明なフィルムで挟みながら回収することで、当該フィルター同士が互いに貼り付くことを防ぎ、巻き取り回収した後ロールをほどいて、捕獲した虫を確認出来る仕組みを有する請求項1および請求項2の捕虫器。
【請求項4】
粘着物質を塗布したフィルターを巻き付けたロールから当該フィルターを一定の速度で送り出し、同時に巻き取ることで、当該フィルターを回収後、虫が捕獲された日時が確認出来る仕組みを有する請求項1、請求項2および請求項3の捕虫器。

【図1】
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【公開番号】特開2006−166719(P2006−166719A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−359824(P2004−359824)
【出願日】平成16年12月13日(2004.12.13)
【出願人】(597083172)有限会社こうすい (9)
【Fターム(参考)】