説明

粘着性組成物、粘着剤および粘着シート

【課題】偏光板等の光学部材に適用したときに、応力緩和性に優れて光漏れを防止することができるとともに、耐久性にも優れ、さらにはリワーク性も良好な粘着性組成物、粘着剤および粘着シートを提供する。
【解決手段】重量平均分子量が50万〜300万の第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)と、重量平均分子量が8000〜30万の第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)と、架橋剤(C)とを含有する粘着性組成物であって、(A)も(B)も酸性基を実質的に含有せず、かつ(A)も(B)も水酸基含有モノマーを含有し、架橋剤(C)との反応性が(A)の水酸基モノマーの法が(B)の水酸基含有モノマーより小さいこと特徴とする粘着性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着性組成物、粘着剤(粘着性組成物を架橋させた材料)および粘着シートに関するものであり、特に、偏光板等の光学部材用として好適な粘着性組成物、粘着剤および粘着シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、液晶パネルにおいては、偏光板や位相差板を液晶セルのガラス基板等に接着するのに粘着剤組成物から形成された粘着剤層が使用されることが多い。しかし、偏光板や位相差板等の光学部材は熱等により収縮し易いため、熱履歴により収縮が生じ、その結果、該光学部材に積層されている粘着剤層がその収縮に追従できずに、界面で剥がれ(いわゆる浮き、剥がれ)を生じたり、光学部材の収縮時の応力に起因して光学部材の光学軸がずれることによる光漏れ(いわゆる白抜け)が生じるといった問題が指摘されている。
【0003】
これを防止するための方法としては、(1)粘着力が高く、かつ、形態安定性に優れた粘着剤層を偏光板等の光学部材に貼り合せることにより光学部材の収縮自体を抑えこむ方法、あるいは、(2)光学部材の収縮時の応力が小さい粘着剤層を用いる方法、が挙げられる。(1)の方法としては、特許文献1に示されているように貯蔵弾性率の高い粘着剤層を用いることが有効である。一方、(2)の方法としては、光学部材の変形に柔軟に対応できる応力緩和性に優れた粘着剤層を用いることが有効である。
【0004】
上記(2)の方法を実施すべく、特許文献2には、(A)アルキル(メタ)アクリレートと、架橋剤に対する官能性を有する重合性モノマー0.5〜20重量%との共重合体であり、かつ重量平均分子量が100万以上である高分子量(メタ)アクリル系共重合体100重量部と、(B)重量平均分子量3万以下の低分子量(メタ)アクリル系(共)重合体20〜200重量部と、(C)架橋構造を形成可能な官能基を分子内に少なくとも2個有する多官能性化合物0.005〜5重量部とからなり、[低分子量(メタ)アクリル系(共)重合体の官能基]/[高分子量(メタ)アクリル系共重合体の官能基]で表される官能基分配率が0〜15重量%の範囲内にある偏光板用粘着剤が提案されている。
【0005】
同じく上記(2)の方法を実施すべく、特許文献3には、重量平均分子量が80万〜200万の(メタ)アクリル酸エステル共重合体(a)100質量部と、重量平均分子量が5万以下の(メタ)アクリル酸エステル共重合体(b)20〜100質量部とからなるアクリル酸エステル共重合体混合物(A)と、架橋剤(B)とからなり、上記共重合体(a)が架橋剤(B)と反応性が高い官能基を有する単量体単位を含み、上記共重合体(b)が架橋剤(B)と上記共重合体(a)の官能基よりも反応性が低い官能基を有する単量体単位を含む光学用粘着剤組成物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−235568号公報
【特許文献2】特許第3533589号公報
【特許文献3】特開2009−108122号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2,3に開示されている粘着剤は、高分子量の(メタ)アクリル系共重合体を優先的に架橋することにより、応力緩和性を得ようとするものである。しかしながら、かかる粘着剤は耐久性に劣り、例えば湿熱条件下では、粘着界面で剥がれが生じていた。また応力緩和性も必ずしも十分ではなく、偏光板等の光学部材に適用したときに光漏れが発生する場合があった。さらには、貼付後の経時で粘着力が上昇する傾向があるため、リワーク性も不十分であった。
【0008】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、偏光板等の光学部材に適用したときに、応力緩和性に優れて光漏れを防止することができるとともに、耐久性にも優れ、さらにはリワーク性も良好な粘着性組成物、粘着剤および粘着シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、第1に本発明は、重量平均分子量が50万〜300万の第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)と、重量平均分子量が8000〜30万の第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)と、架橋剤(C)とを含有する粘着性組成物であって、前記第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、酸性基を実質的に含有せず、かつ当該重合体を構成するモノマー単位として、前記架橋剤(C)との反応性が下記式(I)を満たす水酸基含有モノマー(a)を含有し、前記第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)は、酸性基を実質的に含有せず、かつ当該重合体を構成するモノマー単位として、前記架橋剤(C)との反応性が下記式(I)を満たす水酸基含有モノマー(b)を含有することを特徴とする粘着性組成物を提供する(発明1)。
架橋剤(C)との反応性:水酸基含有モノマー(a)<水酸基含有モノマー(b)・・・(I)
【0010】
上記発明(発明1)に係る粘着性組成物を架橋して得られる粘着剤は、適切な凝集力と優れた応力緩和性とを発揮する。この優れた応力緩和性を有する粘着剤を使用することで、偏光板等の光学部材に適用したときに、耐光漏れ性と耐久性の両方に優れ、さらにはリワーク性も良好な粘着シートが得られる。また、上記粘着性組成物の各重合体は、酸性基を実質的に含有しないため、被着体が金属からなる場合または金属を含む場合に、当該金属が腐食することを抑制することができる。
【0011】
上記発明(発明1)においては、
(i)前記第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)の水酸基含有モノマー(b)における水酸基が結合している炭素原子に結合している炭素原子の数が、前記第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の水酸基含有モノマー(a)における水酸基が結合している炭素原子に結合している炭素原子の数よりも少ないか(発明2)、
(ii)前記第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)の水酸基含有モノマー(b)における水酸基が結合している炭素原子に結合している炭素原子の数と、前記第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の水酸基含有モノマー(a)における水酸基が結合している炭素原子に結合している炭素原子の数とが同数であり、かつ前記第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)の水酸基含有モノマー(b)に含まれる、重合体形成時に側鎖を構成する炭素原子の数が、前記第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の水酸基含有モノマー(a)に含まれる、重合体形成時に側鎖を構成する炭素原子の数よりも多いか(発明3)、
(iii)前記第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)の水酸基含有モノマー(b)における水酸基が結合している炭素原子に結合している炭素原子の数と、前記第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の水酸基含有モノマー(a)における水酸基が結合している炭素原子に結合している炭素原子の数とが同数であり、さらに、前記第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)の水酸基含有モノマー(b)に含まれる、重合体形成時に側鎖を構成する炭素原子の数と、前記第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の水酸基含有モノマー(a)に含まれる、重合体形成時に側鎖を構成する炭素原子の数とが同数であり、かつ前記第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)の水酸基含有モノマー(b)は、メタクリル酸ヒドロキシアルキルエステルであり、前記第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の水酸基含有モノマー(a)が、アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルである(発明4)
ことが好ましい。
【0012】
上記発明(発明1〜4)において、前記第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)に含まれる水酸基に対する前記第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)に含まれる水酸基のモル比は、1.0以上、15未満であることが好ましい(発明5)。
【0013】
上記発明(発明1〜5)において、前記第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、前記水酸基含有モノマー(b)を10〜40質量%含有することが好ましい(発明6)。
【0014】
上記発明(発明1〜6)において、前記第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部に対する前記第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)の割合は、5〜50質量部であることが好ましい(発明7)。
【0015】
上記発明(発明1〜7)において、前記第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)および前記第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)は、水酸基以外に、前記架橋剤(C)と反応性を有する官能基を実質的に含有しないことが好ましい(発明8)。
【0016】
上記発明(発明1〜8)において、前記架橋剤(C)は、イソシアネート系架橋剤であることが好ましい(発明9)。
【0017】
上記発明(発明9)において、前記イソシアネート系架橋剤の含有量は、当該イソシアネート系架橋剤のイソシアネート基が前記第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)に含まれる前記水酸基の量に対して0.1〜3.5当量となる量であることが好ましい(発明10)。
【0018】
第2に本発明は、前記粘着性組成物(発明1〜10)を架橋してなる粘着剤を提供する(発明11)。
【0019】
第3に本発明は、基材と、粘着剤層とを備えた粘着シートであって、前記粘着剤層は、前記粘着剤(発明11)からなることを特徴とする粘着シートを提供する(発明12)。
【0020】
上記発明(発明12)において、前記基材は、光学部材であることが好ましい(発明13)。
【0021】
第4に本発明は、2枚の剥離シートと、前記2枚の剥離シートの剥離面と接するように前記剥離シートに挟持された粘着剤層とを備えた粘着シートであって、前記粘着剤層は、前記粘着剤(発明11)からなることを特徴とする粘着シートを提供する(発明14)。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る粘着性組成物を架橋させた粘着剤においては、従来は可塑剤的に使用していた低分子量の重合体を優先的に架橋させることで、当該低分子量の重合体の化学的な架橋構造による三次元網目構造を形成し、その三次元網目構造に、複数の高分子量の重合体を挿入させて高分子量の重合体同士を拘束し、高分子量の重合体間に擬似的な架橋構造を形成するものと推定される。これにより、得られる粘着剤は、適切な凝集力と優れた応力緩和性とを発揮し、偏光板等の光学部材に適用したときに、光漏れを効果的に防止することができるとともに、耐久性にも優れ、さらにはリワーク性も良好である。また、本発明に係る粘着性組成物の各重合体は、酸性基を実質的に含有しないため、被着体が金属からなる場合または金属を含む場合に、当該金属が腐食することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る粘着シートの断面図である。
【図2】本発明の第2の実施形態に係る粘着シートの断面図である。
【図3】粘着剤層付き偏光板における光漏れ性試験(目視)の評価基準を示す図(カラー)である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について説明する。
〔粘着性組成物〕
本実施形態に係る粘着性組成物は、重量平均分子量(Mw)が50万〜300万の第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)と、重量平均分子量(Mw)が8000〜30万の第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)と、架橋剤(C)とを含有し、好ましくはシランカップリング剤(D)をさらに含有する。なお、本明細書において、(メタ)アクリル酸エステルとは、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルの両方を意味する。他の類似用語も同様である。また、「重合体」には「共重合体」の概念も含まれるものとする。
【0025】
第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、酸性基を実質的に含有せず、かつ当該重合体を構成するモノマー単位として、架橋剤(C)との反応性が下記式(I)を満たす水酸基含有モノマー(a)を含有し、第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)は、酸性基を実質的に含有せず、かつ当該重合体を構成するモノマー単位として、架橋剤(C)との反応性が下記式(I)を満たす水酸基含有モノマー(b)を含有する。なお、水酸基含有モノマーとは、分子内に水酸基を有するモノマーをいう。
架橋剤(C)との反応性:水酸基含有モノマー(a)<水酸基含有モノマー(b)・・・(I)
すなわち、重合体(B)の水酸基含有モノマー(b)の架橋剤(C)との反応性は、重合体(A)の水酸基含有モノマー(a)の架橋剤(C)との反応性よりも高い。
【0026】
酸性基としては、主としてカルボキシル基が挙げられ、その他、スルホン酸基、リン酸基等が挙げられる。第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)および第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)が酸性基を実質的に含有しないことで、被着体が金属からなる場合(例えば、被着体が酸化インジウムスズ(ITO)からなる電極の場合)または金属を含む場合(例えば、被着体が金属メッシュを含む場合)に、当該金属が腐食することを抑制することができる。
【0027】
ここで、「酸性基を実質的に含有しない」とは、酸性基を全く含有しない他、金属を腐食させない程度の微量の含有を許容するものである。具体的には、重合体(A)または(B)の構成単位としての酸性基含有モノマーの含有量は、通常1質量%未満であり、好ましくは0.5質量%未満であり、特に好ましくは0.1質量%未満である。
【0028】
上記のように、第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)よりも、第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)の方が、架橋剤(C)との反応性の高い水酸基含有モノマーを含有することで、上記粘着性組成物を架橋したときに、第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)(低分子量ポリマー)が架橋剤(C)と優先的に反応し、架橋剤(C)を介して三次元網目構造を形成するものと推定される。そして、その三次元網目構造に、第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)(高分子量ポリマー)2分子以上が、直接の化学結合を伴わずに、又は極めて少ない化学結合を伴って挿入され、重合体(A)同士がある程度の自由度を有する状態で拘束された、擬似的な架橋構造を形成しているものと推定される(このように推定される構造を、以下「構造X」という場合がある。)。第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、架橋剤(C)との反応性が比較的低い水酸基含有モノマー(a)に由来する水酸基を含むことで、上記三次元網目構造に良好に挿入されると考えられる。かかる構造Xを有する粘着剤は、適切な凝集力と優れた応力緩和性とを発揮する。このように優れた応力緩和性を有する粘着剤は、偏光板等の光学部材に適用したときに、耐光漏れ性に優れるとともに、耐久性にも優れ、湿熱条件下等においても浮きや剥がれなどを防止することができる。さらに、上記の構造Xでは、応力緩和性を付与するための未架橋の低分子量成分等が存在しない。そのため、従来の応力緩和性タイプの粘着剤で問題となった低分子量成分のブリードアウト等が生じない。その結果、本実施形態に係る粘着性組成物から得られる粘着剤は、リワーク性にも優れる。
【0029】
第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、アルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、水酸基含有モノマー(a)と、所望により用いられる、架橋剤(C)と反応性を有する官能基を含まない他のモノマーとの共重合体であることが好ましく、第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)は、アルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、水酸基含有モノマー(b)と、所望により用いられる、架橋剤(C)と反応性を有する官能基を含まない他のモノマーとの共重合体であることが好ましい。
【0030】
アルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ペンチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n−デシル、(メタ)アクリル酸n−ドデシル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
水酸基含有モノマー(a)および(b)としては、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
ここで、水酸基含有モノマー(a)と水酸基含有モノマー(b)との組み合わせとしては、例えば、以下の(i)〜(iii)の態様が挙げられる。
【0033】
(i)第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)の水酸基含有モノマー(b)における水酸基が結合している炭素原子に結合している炭素原子の数が、第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の水酸基含有モノマー(a)における水酸基が結合している炭素原子に結合している炭素原子の数よりも少ない場合である。水酸基が結合している炭素原子に結合している炭素原子の数が少ない方が、水酸基の求核性が高く、また立体障害が少ないことにより、水酸基の反応性が高いからである。したがって、水酸基が結合している炭素原子に結合している炭素原子の数が、架橋剤(C)との反応性に関して優先的な判断基準となる。
【0034】
例えば、水酸基含有モノマー(a)が2級水酸基モノマーであり、水酸基含有モノマー(b)が1級水酸基モノマーである場合である。具体的には、水酸基含有モノマー(a)が、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、または(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチルであり、水酸基含有モノマー(b)が、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、または(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルである場合である。
【0035】
(ii)第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)の水酸基含有モノマー(b)における水酸基が結合している炭素原子に結合している炭素原子の数と、第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の水酸基含有モノマー(a)における水酸基が結合している炭素原子に結合している炭素原子の数とが同数であり、かつ第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)の水酸基含有モノマー(b)に含まれる、重合体形成時に側鎖を構成する炭素原子の数が、第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の水酸基含有モノマー(a)に含まれる、重合体形成時に側鎖を構成する炭素原子の数よりも多い場合である。水酸基が結合している炭素原子に結合している炭素原子の数が同数であれば、モノマー中の、重合体形成時に側鎖を構成する炭素原子の数が多い方が、主鎖から離れており、立体障害も小さいため自由度が高く、反応性が高いからである。
【0036】
例えば、水酸基含有モノマー(a)および水酸基含有モノマー(b)がともに1級水酸基モノマーであり、かつ水酸基含有モノマー(a)の、重合体形成時に側鎖を構成する炭素原子の数が2個であり、水酸基含有モノマー(b)の、重合体形成時に側鎖を構成する炭素原子の数が3個または4個である場合である。なお、「重合体形成時に側鎖を構成する」については、例えば、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルの場合、ヒドロキシアルキル部分が「重合体形成時に側鎖を構成する」部分に該当する。また、当該「炭素原子の数」とは、水酸基が結合する炭素原子から、重合体形成時に主鎖を構成する原子まで繋がった炭素原子の数をいい、当該側鎖中における分岐鎖部分の炭素数はカウントしない。例えば、アクリル酸2−ヒドロキシプロピルにおける上記炭素原子の数は、2個となる。
【0037】
(ii)の具体例としては、水酸基含有モノマー(a)が、アクリル酸2−ヒドロキシエチルであり、水酸基含有モノマー(b)が、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、または(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルである場合である。
【0038】
(iii)第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)の水酸基含有モノマー(b)における水酸基が結合している炭素原子に結合している炭素原子の数と、第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の水酸基含有モノマー(a)における水酸基が結合している炭素原子に結合している炭素原子の数とが同数であり、さらに、前記第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)の水酸基含有モノマー(b)に含まれる、重合体形成時に側鎖を構成する炭素原子の数と、前記第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の水酸基含有モノマー(a)に含まれる、重合体形成時に側鎖を構成する炭素原子の数とが同数であり、かつ第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)の水酸基含有モノマー(b)がメタクリル酸ヒドロキシアルキルエステルであり、第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の水酸基含有モノマー(a)がアクリル酸ヒドロキシアルキルエステルの場合である。水酸基が結合している炭素原子に結合している炭素原子の数が同数であり、重合体形成時に側鎖を構成する炭素原子の数も同数であれば、アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルと比較して、メタクリル酸ヒドロキシアルキルエステルの方が、主鎖が剛直で直線的になり、それにより水酸基が露出して、架橋剤(C)と反応し易くなるからである。
【0039】
例えば、水酸基含有モノマー(a)および水酸基含有モノマー(b)が、ともに1級水酸基モノマーまたは2級水酸基モノマー同士であり、かつ水酸基含有モノマー(a)がアクリル酸ヒドロキシアルキルエステルであり、水酸基含有モノマー(b)がメタクリル酸ヒドロキシアルキルエステルである場合である。例えば、水酸基含有モノマー(a)がアクリル酸2−ヒドロキシエチル、水酸基含有モノマー(b)がメタクリル酸2−ヒドロキシエチルである場合、あるいは水酸基含有モノマー(a)がアクリル酸2−ヒドロキシプロピル、水酸基含有モノマー(b)がメタクリル酸2−ヒドロキシプロピルである場合である。
【0040】
ここで、粘着性組成物中における第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)に含まれる水酸基に対する第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)に含まれる水酸基のモル比は、1.0以上、15未満であることが好ましく、特に2〜10であることが好ましく、さらには2〜8であることが好ましい。
【0041】
このように、第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)に含まれる水酸基の量が第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)に含まれる水酸基の量以上(モル比が1.0以上)であることで、本実施形態に係る粘着性組成物を架橋したときに、第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)と架橋剤(C)との優先的な反応がより効果的に進行し、上記構造Xが良好に形成されるものと推定される。一方、第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)に含まれる水酸基の量が第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)に含まれる水酸基の量よりも過多(モル比が15以上)であると、第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)の架橋が過度になり、応力緩和性が低下するおそれがあり、また架橋後にも水酸基が残存することによって、特に湿熱条件下での耐久性が劣るおそれがある。
【0042】
第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、水酸基含有モノマー(b)を10〜40質量%含有することが好ましく、特に10〜30質量%含有することが好ましく、さらには10〜20質量%含有することが好ましい。水酸基含有モノマー(b)を上記範囲で含有することで、第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)の架橋の程度が好ましくなり、第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)との組み合わせにおいて、得られる粘着剤の応力緩和性をより効果的に向上させることができる。水酸基含有モノマー(b)の含有量が10質量%未満では、第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)の架橋が十分でなく、ゲル分率が低く、それにより耐久性が低下するおそれがある。一方、水酸基含有モノマー(b)の含有量が40質量%を超えると、第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)の架橋が過度になり、応力緩和性が低下するおそれがあり、また架橋後にも水酸基が残存することによって、特に湿熱条件下での耐久性が劣るおそれがある。また、水酸基含有モノマー(b)の含有量の上限を30質量%とすることで、得られる粘着シートの耐光漏れ性がより優れたものとなる。
【0043】
なお、第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)における水酸基含有モノマーの好ましい含有量は、上記第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)における水酸基含有モノマーの含有量および前述した水酸基のモル比から、おのずと定まる。
【0044】
上記他のモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等の脂肪族環を有する(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸フェニル等の芳香族環を有する(メタ)アクリル酸エステル、アクリルアミド、メタクリルアミド等の非架橋性のアクリルアミド、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノプロピル等の非架橋性の3級アミノ基を有する(メタ)アクリル酸エステル、酢酸ビニル、スチレンなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0045】
上記他のモノマーの中でも、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノプロピル等の非架橋性の3級アミノ基を有する(メタ)アクリル酸エステル、特に(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチルは、重合体中の水酸基と架橋剤(C)との反応を促進させる触媒効果を有するため、第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)において、当該重合体を構成するモノマー単位として含まれていてもよい。
【0046】
この場合、第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)中における上記非架橋性の3級アミノ基を有する(メタ)アクリル酸エステルの含有量は、0.01〜1質量%であることが好ましく、特に0.1〜0.5質量%であることが好ましい。
【0047】
ここで、上記構造Xを確実に形成するためにも、第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)および第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)は、水酸基以外に、架橋剤(C)と反応性を有する官能基を実質的に含有しないことが好ましい。かかる官能基としては、例えば、架橋性の1級アミノ基または2級アミノ基が挙げられ、当該官能基を含有するモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸n−ブチルアミノエチル等のアミノ基含有モノマーが挙げられる。
【0048】
「架橋剤(C)と反応性を有する官能基を実質的に含有しない」とは、当該官能基を全く含有しない他、水酸基と架橋剤(C)との反応性を妨げない程度に当該官能基を含むことを許容するものである。具体的には、各重合体(A)および(B)において、当該官能基の水酸基に対するモル比が0.2以下であることが好ましく、特に0.1以下であることが好ましい。
【0049】
第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)および第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)の重合態様は、それぞれランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよい。
【0050】
第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重量平均分子量は50万〜300万であり、好ましくは70万〜250万であり、特に好ましくは100万〜200万である。すなわち、第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、高分子量ポリマー成分となっている。なお、本明細書における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定したポリスチレン換算の値である。
【0051】
第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重量平均分子量が上記範囲内にあり、重合体(A)が比較的大きな分子量を有することで、上記構造Xが良好に形成されるものと推定される。
【0052】
第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重量平均分子量が50万未満であると、得られる粘着剤のゲル分率が低く、耐久性およびリワーク性に劣るものとなるおそれがある。また、第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重量平均分子量が300万を超えると、第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)等との相溶性が悪化し、得られる粘着剤の応力緩和性が低下するおそれがある。
【0053】
一方、第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)の重量平均分子量は8000〜30万であり、好ましくは1万〜20万であり、特に好ましくは5万〜10万である。すなわち、第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)は、低分子量ポリマー成分となっている。
【0054】
第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)の重量平均分子量が上記範囲内にあることで、本実施形態に係る粘着性組成物に特有の三次元網目構造が形成され、優れた応力緩和性に寄与することとなる。すなわち、第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)の重量平均分子量が8000未満では、良好な三次元網目構造が得られない。一方、第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)の重量平均分子量が30万を超えると、第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)などとの相溶性が低下し、重合体(B)により形成される三次元網目構造体中への重合体(A)の挿入が不十分となり、その結果、得られる粘着剤が耐久性およびリワーク性に劣るものとなる場合がある。
【0055】
本実施形態において、上記の第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)および第2の(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)は、それぞれ1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0056】
第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部に対する第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)の割合は、5〜50質量部であることが好ましく、特に5〜40質量部であることが好ましく、さらには10〜30質量部であることが好ましい。
【0057】
上記割合で第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)および第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)を含有する粘着性組成物から得られる粘着剤は、上記構造Xを良好に形成するものと推定される。
【0058】
架橋剤(C)としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤、金属キレート系架橋剤等が挙げられるが、中でも重合体(A)および(B)が有する水酸基との反応性に優れたイソシアネート系架橋剤が好ましい。
【0059】
イソシアネート系架橋剤は、少なくともポリイソシアネート化合物を含むものである。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネートなど、及びそれらのビウレット体、イソシアヌレート体、さらにはエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ヒマシ油等の低分子活性水素含有化合物との反応物であるアダクト体などが挙げられる。
【0060】
上記架橋剤(C)は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0061】
架橋剤(C)の含有量は、当該架橋剤(C)の架橋性基(例えば、イソシアネート基)が第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)の水酸基の量に対して、通常0.05〜5当量となる量であり、好ましくは0.1〜3.5当量となる量であり、特に好ましくは0.3〜1.0当量となる量である。上記架橋性基の量が0.05当量未満の場合、得られる粘着剤のゲル分率が低く、十分な凝集力を発揮することができないおそれがある。また、上記架橋性基の量が0.1当量以上、特に0.3当量以上であれば、得られる粘着剤を耐久性のさらに優れたものにすることができる。一方、上記架橋性基の量が3.5当量以下であれば、得られる粘着剤をリワーク性の優れたものにすることができる。さらに、上記架橋性基の量が1.0当量以下であれば、架橋剤(C)を重合体(B)の三次元網目構造の形成にのみ寄与させ、重合体(A)の架橋を有効に防止することができるものと推定される。その結果、得られる粘着剤は応力緩和性に優れたものとなる。
【0062】
本実施形態に係る粘着性組成物は、好ましくは、さらにシランカップリング剤(D)を含有する。このシランカップリング剤(D)を含有すると、シランカップリング剤(D)のアルコキシシリル基等がガラス基板等の被着体面に作用するため、例えば偏光板を液晶ガラスセルなどに貼合する場合に、粘着剤と液晶ガラスセルとの間の密着性がより良好となる。
【0063】
このシランカップリング剤(D)としては、分子内にアルコキシシリル基を少なくとも1個有する有機ケイ素化合物であって、粘着剤成分との相溶性がよく、かつ光透過性を有するもの、例えば実質上透明なものが好適である。このようなシランカップリング剤(D)の添加量は、第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部に対して0.01〜0.5質量部であることが好ましく、特に0.05〜0.3質量部であることが好ましい。
【0064】
シランカップリング剤(D)の具体例としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の重合性不飽和基含有ケイ素化合物、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ構造を有するケイ素化合物、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノ基含有ケイ素化合物、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0065】
上記粘着性組成物には、所望により、アクリル系粘着剤に通常使用されている各種添加剤、例えば帯電防止剤、粘着付与剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、軟化剤、充填剤、屈折率調整剤などを添加することができる。
【0066】
〔粘着性組成物の製造方法〕
上記粘着性組成物は、第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)と、第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)のそれぞれを製造し、それらを混合するとともに、任意の段階で架橋剤(C)及び所望によりシランカップリング剤(D)を添加することで製造することができる。
【0067】
好ましい具体例としては、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)および(B)を、それぞれ別個に通常のラジカル重合法により製造する。(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)および(B)の重合は、所望により重合開始剤を使用して、溶液重合法等により行うことができる。重合溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、トルエン、アセトン、ヘキサン、メチルエチルケトン等が挙げられ、2種類以上を併用してもよい。
【0068】
重合開始剤としては、アゾ系化合物、有機過酸化物等が挙げられ、2種類以上を併用してもよい。アゾ系化合物としては、例えば、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1'−アゾビス(シクロヘキサン1−カルボニトリル)、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)、ジメチル2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、4,4'−アゾビス(4−シアノバレリック酸)、2,2'−アゾビス(2−ヒドロキシメチルプロピオニトリル)、2,2'−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]等が挙げられる。
【0069】
有機過酸化物としては、例えば、過酸化ベンゾイル、t-ブチルパーベンゾエイト、クメンヒドロパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2−エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシビバレート、(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキシド、ジプロピオニルパーオキシド、ジアセチルパーオキシド等が挙げられる。
【0070】
なお、上記重合工程において、2−メルカプトエタノール等の連鎖移動剤を配合することにより、得られる重合体の重量平均分子量を調節することができる。
【0071】
次に、得られた重合体(A)および(B)の溶液を混合し、希釈溶媒を加える。その後、架橋剤(C)及び所望によりシランカップリング剤(D)を添加し、十分に混合することにより、溶媒で希釈された粘着性組成物(塗布溶液)を得る。
【0072】
粘着性組成物を希釈して塗布溶液とするための希釈溶剤としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、塩化メチレン、塩化エチレン等のハロゲン化炭化水素、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール等のアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、イソホロン、シクロヘキサノン等のケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル、エチルセロソルブ等のセロソルブ系溶剤などが用いられる。
【0073】
このようにして調製された塗布溶液の濃度・粘度としては、コーティング可能な範囲であればよく、特に制限されず、状況に応じて適宜選定することができる。例えば、粘着性組成物の濃度が10〜40質量%となるように希釈する。なお、塗布溶液を得るに際して、希釈溶剤等の添加は必要条件ではなく、粘着性組成物がコーティング可能な粘度等であれば、希釈溶剤を添加しなくてもよい。この場合、粘着性組成物がそのまま塗布溶液となる。
【0074】
〔粘着剤〕
本実施形態に係る粘着剤は、上記粘着性組成物を架橋してなるものである。上記粘着性組成物の架橋は、加熱処理により行うことができる。なお、この加熱処理は、粘着性組成物の希釈溶媒等を揮発させる際の乾燥処理で兼ねることもできる。
【0075】
加熱処理を行う場合、加熱温度は、50〜150℃であることが好ましく、特に70〜120℃であることが好ましい。また、加熱時間は、30秒〜3分であることが好ましく、特に50秒〜2分であることが好ましい。さらに、加熱処理後、常温(例えば、23℃、50%RH)で1〜2週間程度の養生期間を設けることが特に好ましい。
【0076】
上記の加熱処理(及び養生)により、架橋剤(C)によって第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)が架橋するとともに、その三次元網目構造に第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が挿入され、上記構造Xが形成されるものと推定される。
【0077】
本実施形態に係る粘着剤は、無アルカリガラスに対する粘着力が、0.1〜15N/25mmであることが好ましく、特に1〜10N/25mmであることが好ましい。なお、ここでいう粘着力は、JIS Z0237に準じた180°引き剥がし粘着力(剥離速度300mm/min)をいい、0.5MPa、50℃で20分加圧して被着体に貼付した後、23℃、50%RHの条件下で24時間放置してから測定するものとする。粘着力が上記の範囲内にあることで、偏光板等の光学部材に適用したときに、浮きや剥がれなどを防止することができる。
【0078】
本実施形態に係る粘着剤は、上記被着体への貼付から、さらに23℃、50%RHの条件下で14日放置した後の粘着力(貼付14日後の粘着力)が、0.1〜25N/25mmであることが好ましく、特に2〜20N/25mmであることが好ましい。このように経時による粘着力の上昇が抑制されることで、本実施形態に係る粘着剤は、リワーク性に優れたものと評価することができる。
【0079】
以上説明した粘着剤は、光学部材用として好ましく用いることができ、例えば、偏光板(偏光フィルム)と位相差板(位相差フィルム)などの光学部材同士の接着、あるいは偏光板(偏光フィルム)や位相差板(位相差フィルム)とガラス基板との接着に好適である。本実施形態に係る粘着剤によって形成される粘着剤層は、応力緩和性に非常に優れるため、被着体の寸法変化が大きい場合であっても、その寸法変化によって生じ得る応力を粘着剤層で吸収・緩和することができ、したがって長期にわたって被着体から剥がれ難いものとなるとともに、上記のような光学部材に使用したときに光漏れを効果的に防止することができる。すなわち、本実施形態に係る粘着剤は、耐光漏れ性と耐久性との両立を達成するものである。さらに本実施形態に係る粘着剤は、良好なリワーク性を有し、また、酸フリーであるため、被着体が金属からなる場合または金属を含む場合に耐腐食性に優れる。
【0080】
〔粘着シート〕
図1に示すように、第1の実施形態に係る粘着シート1Aは、下から順に、剥離シート12と、剥離シート12の剥離面に積層された粘着剤層11と、粘着剤層11に積層された基材13とから構成される。
【0081】
また、図2に示すように、第2の実施形態に係る粘着シート1Bは、2枚の剥離シート12a,12bと、それら2枚の剥離シート12a,12bの剥離面と接するように当該2枚の剥離シート12a,12bに挟持された粘着剤層11とから構成される。なお、本明細書における剥離シートの剥離面とは、剥離シートにおいて剥離性を有する面をいい、剥離処理を施した面および剥離処理を施さなくても剥離性を示す面のいずれをも含むものである。
【0082】
いずれの粘着シート1A,1Bにおいても、粘着剤層11は、前述した粘着性組成物を架橋してなる粘着剤からなる。
【0083】
粘着剤層11の厚さは、粘着シート1A,1Bの使用目的に応じて適宜決定されるが、通常5〜100μm、好ましくは10〜60μmの範囲であり、例えば、光学部材、特に偏光板用の粘着剤層として使用する場合には、10〜50μm、特に10〜30μmであることが好ましい。
【0084】
基材13としては、特に制限は無く、通常の粘着シートの基材シートとして用いられているものは全て使用できる。例えば、所望の光学部材の他、レーヨン、アクリル、ポリエステル等の繊維を用いた織布または不織布;上質紙、グラシン紙、含浸紙、コート紙等の紙類;アルミ、銅等の金属箔;ウレタン発泡体、ポリエチレン発泡体等の発泡体;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリウレタンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、トリアセチルセルロース等のセルロースフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、アクリル樹脂フィルム、ノルボルネン系樹脂フィルム、シクロオレフィン樹脂フィルム等のプラスチックフィルム;これらの2種以上の積層体などを挙げることができる。プラスチックフィルムは、一軸延伸または二軸延伸されたものでもよい。
【0085】
光学部材としては、例えば、偏光板(偏光フィルム)、偏光子、位相差板(位相差フィルム)、視野角補償フィルム、輝度向上フィルム、コントラスト向上フィルム、液晶ポリマーフィルム、拡散フィルム、半透過反射フィルム等が挙げられる。中でも偏光板(偏光フィルム)は、収縮し易く、寸法変化が大きいため、耐光漏れ性の観点から、本実施形態の粘着剤(上記粘着剤層11)を形成する対象として好適である。
【0086】
基材13の厚さは、その種類によっても異なるが、例えば光学部材の場合には、通常10μm〜500μmであり、好ましくは50μm〜300μmである。
【0087】
剥離シート12,12a,12bとしては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン酢酸ビニルフィルム、アイオノマー樹脂フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム等が用いられる。また、これらの架橋フィルムも用いられる。さらに、これらの積層フィルムであってもよい。
【0088】
上記剥離シートの剥離面(特に粘着剤層11と接する面)には、剥離処理が施されていることが好ましい。剥離処理に使用される剥離剤としては、例えば、アルキッド系、シリコーン系、フッ素系、不飽和ポリエステル系、ポリオレフィン系、ワックス系の剥離剤が挙げられる。
【0089】
剥離シート12,12a,12bの厚さについては特に制限はないが、通常20〜150μm程度である。
【0090】
上記粘着シート1Aを製造するには、剥離シート12の剥離面に、上記粘着性組成物を含む溶液(塗布溶液)を塗布し、加熱処理を行って粘着剤層11を形成した後、その粘着剤層11に基材13を積層する。その後、養生期間を設けることが好ましい。
なお、加熱処理および養生の条件については、前述した通りである。
【0091】
また、上記粘着シート1Bを製造するには、一方の剥離シート12a(または12b)の剥離面に、上記粘着性組成物を含む塗布溶液を塗布し、加熱処理を行って粘着剤層11を形成した後、その粘着剤層11に他方の剥離シート12b(または12a)の剥離面を重ね合わせる。
【0092】
上記塗布溶液を塗布する方法としては、例えばバーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等を利用することができる。
【0093】
ここで、例えば、液晶セルと偏光板とから構成される液晶表示装置を製造するには、粘着シート1Aの基材13として偏光板を使用し、当該粘着シート1Aの剥離シート12を剥離して、露出した粘着剤層11と液晶セルとを貼合すればよい。
【0094】
また、例えば、液晶セルと偏光板との間に位相差板が配置される液晶表示装置を製造するには、一例として、まず、粘着シート1Bの一方の剥離シート12a(または12b)を剥離して、粘着シート1Bの露出した粘着剤層11と位相差板とを貼合する。次いで、基材13として偏光板を使用した粘着シート1Aの剥離シート12を剥離して、粘着シート1Aの露出した粘着剤層11と上記位相差板とを貼合する。さらに、上記粘着シートBの粘着剤層11から他方の剥離シート12b(または12a)を剥離して、粘着シートBの露出した粘着剤層11と液晶セルとを貼合する。
【0095】
以上の粘着シート1A,1Bによれば、粘着剤層11が応力緩和性に非常に優れるため、例えば偏光板の接着に適用した場合でも、偏光板の変形によって生じ得る応力を粘着剤層11で吸収・緩和することができ、それにより、優れた耐光漏れ性および高い耐久性が発揮されているものと推定される。
【0096】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0097】
例えば、粘着シート1Aの剥離シート12は省略されてもよいし、粘着シート1Bにおける剥離シート12a,12bのいずれか一方は省略されてもよい。
【実施例】
【0098】
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0099】
〔実施例1〕
1.重合体(A)の調製
攪拌機、温度計、還流冷却器、滴下装置および窒素導入管を備えた反応容器に、アクリル酸n−ブチル99.0質量部、アクリル酸2−ヒドロキシエチル1.0質量部、酢酸エチル200質量部、および2,2'−アゾビスイソブチロニトリル0.08質量部を仕込み、上記反応容器内の空気を窒素ガスで置換した。この窒素雰囲気下中で攪拌しながら、反応溶液を60℃に昇温し、16時間反応させた後、室温まで冷却した。ここで、得られた溶液の一部を後述する方法で分子量を測定し、重量平均分子量157万の重合体(A)の生成を確認した。
【0100】
2.重合体(B)の調製
攪拌機、温度計、還流冷却器、滴下装置および窒素導入管を備えた反応容器に、アクリル酸n−ブチル81.4質量部、アクリル酸4−ヒドロキシブチル18.6質量部、酢酸エチル200質量部、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル0.16質量部、および2−メルカプトメタノール0.3質量部を仕込み、上記反応容器内の空気を窒素ガスで置換した。この窒素雰囲気下中で攪拌しながら、反応溶液を70℃に昇温し、6時間反応させた後、室温まで冷却した。ここで、得られた溶液の一部を後述する方法で分子量を測定し、重量平均分子量6万の重合体(B)の生成を確認した。
【0101】
3.粘着性組成物の調製
上記工程(1)で得られた重合体(A)100質量部(固形分換算値)と、上記工程(2)で得られた重合体(B)20質量部(固形分換算値)とを混合した後、架橋剤(C)として、重合体(B)の水酸基0.6当量に相当する量のトリメチロールプロパンのキシレンジイソシアネート付加物(三井化学ポリウレタン社製,商品名「タケネートD−110N」)3.0質量部を添加した。最後に、シランカップリング剤(D)として、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製,商品名「KBM403」)0.3質量部を添加し、十分に撹拌することにより、粘着性組成物の希釈溶液を得た。
【0102】
なお、配合したモノマーの比率より、重合体(A)100g中における水酸基の量(H[OH])は8.62mmol、重合体(B)20g中における水酸基の量(L[OH])は25.84mmolと計算される。したがって、重合体(A)100質量部中の水酸基のモル数に対する重合体(B)20質量部中の水酸基のモル数の比(L[OH]/H[OH])は3.00となる。
【0103】
ここで、当該粘着性組成物の配合を表1に示す。なお、表1に記載の略号等の詳細は以下の通りである。
[重合体(A)および(B)]
BA:アクリル酸n−ブチル
AA:アクリル酸
DM:メタクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル
HEA:アクリル酸2−ヒドロキシエチル
HEMA:メタクリル酸2−ヒドロキシエチル
2HPA:アクリル酸2−ヒドロキシプロピル
4HBA:アクリル酸4−ヒドロキシブチル
H[OH](mmol):重合体(A)添加量(質量部)を(g)として計算した水酸基のモル数
L[OH](mmol):重合体(B)添加量(質量部)を(g)として計算した水酸基のモル数
[イソシアネート系架橋剤(C)]
XDI−TMP:トリメチロールプロパンのキシレンジイソシアネート付加物(三井化学ポリウレタン社製,商品名「タケネートD−110N」)
[シランカップリング剤(D)]
KBM403:3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製,商品名「KBM403」)
【0104】
得られた粘着性組成物の希釈溶液を、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した剥離シート(リンテック社製,SP−PET3811,厚さ:38μm)の剥離処理面に、乾燥後の厚さが25μmになるようにナイフコーターで塗布したのち、90℃で1分間加熱処理して粘着剤層を形成した。
【0105】
次いで、ディスコティック液晶層付偏光フィルムからなる、偏光フィルムと視野角拡大フィルムとが一体化した偏光板を、粘着剤層の露出表面とディスコティック液晶層の表面とが接するように貼合し、23℃、50%RHで7日間養生することにより、粘着剤層付き偏光板を得た。
【0106】
〔実施例2〜11,比較例1〜3〕
粘着性組成物を構成する各モノマーの種類および割合、架橋剤およびシランカップリング剤の種類および配合量、ならびに重合体(A)と重合体(B)との配合比を表1に示すように変更する以外、実施例1と同様にして粘着剤層付き偏光板を製造した。
【0107】
ここで、前述した重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて以下の条件で測定(GPC測定)したポリスチレン換算の重量平均分子量である。
<測定条件>
・GPC測定装置:東ソー社製,HLC−8020
・GPCカラム(以下の順に通過):東ソー社製
TSK guard column HXL−H
TSK gel GMHXL(×2)
TSK gel G2000HXL
・測定溶媒:テトラヒドロフラン
・測定温度:40℃
【0108】
〔試験例1〕(光漏れ性試験)
実施例または比較例で得られた粘着剤層付き偏光板を、裁断装置(荻野製作所社製スーパーカッター,PN1−600)を用いて233mm×309mmサイズに調整した。剥離シートを剥がして、露出した粘着剤層を介して無アルカリガラス(コーニング社製,イーグルXG)に貼付したのち、栗原製作所製オートクレーブにて0.5MPa、50℃で、20分加圧した。なお、上記貼合は、無アルカリガラスの表裏に、粘着剤層付き偏光板を偏光軸がクロスニコル状態(偏光軸:∠45°,∠135°)になるように行った。この状態で、80℃dry環境下にて250時間放置した後、23℃、50%RHの環境下で2時間放置し、これをサンプルとして、以下に示す方法で光漏れ性を評価した。結果を表2に示す。
【0109】
<光漏れ性評価:目視>
上記サンプルをフラットイルミネーター(電通産業社製,HF−SL−A312LC,照度:26,000Lux,輝度:10,000cd)の上に設置し、二次元色彩輝度計(コニカミノルタ社製,CA−2000)にて撮影し、解析ソフトウェア(コニカミノルタ社製,CA−S20w)によって輝度分布画像に変換した。得られたサンプルの輝度分布画像を、図3に示す評価基準に基づいて評価した。
【0110】
〔試験例2〕(耐久性評価)
実施例または比較例で得られた粘着剤層付き偏光板を、裁断装置(荻野製作所社製スーパーカッター,PN1−600)を用いて233mm×309mmサイズに調整した。剥離シートを剥がして、露出した粘着剤層を介して無アルカリガラス(コーニング社製,イーグルXG)に貼付したのち、栗原製作所製オートクレーブにて0.5MPa、50℃で、20分加圧した。
【0111】
その後、下記の耐久条件の環境下に投入し、500時間後に10倍ルーペを用いて観察を行った。外観変化は以下を基準とした。結果を表2に示す。
◎:4辺において、欠点が無いもの
○:4辺において、外周端部から0.6mm以上の部位に欠点が無いもの
×:4辺の少なくとも1辺において、外周端部から0.6mm以上の部位に、浮き、剥がれ、発泡、スジなどの0.1mm以上の粘着剤の外観異常欠点があるもの
<耐久条件>
・60℃,相対湿度90%RH
【0112】
〔試験例3〕(リワーク性評価)
実施例または比較例で得られた粘着剤層付き偏光板を裁断し、25mm幅、100mm長のサンプルを作製した。このサンプルから剥離シートを剥がし、露出した粘着剤層を介して無アルカリガラス(コーニング社製,イーグルXG)に当該サンプルを貼付したのち、栗原製作所社製オートクレーブにて0.5MPa、50℃で、20分加圧した。次いで、50℃dryの条件下で48時間放置し、23℃、50%RHの条件下で3時間調湿した。その後、無アルカリガラスからサンプルを手で剥がして、上記無アルカリガラスの表面の汚れを目視で評価した。評価は以下を基準として行った。結果を表2に示す。
○:ガラスの汚れ・粘着剤の残存なし
△:ガラスの汚れ・粘着剤の残存がわずかにあり
×:ガラスの汚れ・粘着剤の残存が著しい
【0113】
〔試験例4〕(耐腐食性の評価)
実施例または比較例で得られた粘着剤層付き偏光板の剥離シートを剥がして、銅箔(厚さ:80μm)に貼り合わせた後、60℃、90%RHの雰囲気下に500時間保管した。その後、上記銅箔から粘着剤層付き偏光板を剥がし、露出した銅箔の表面を目視で観察して、腐食の有無を確認した。結果を表2に示す。
○:腐食無し
×:腐食有り
【0114】
〔試験例5〕(へイズ値の評価)
実施例または比較例の製造過程で得られた剥離シート/粘着剤層(厚さ:25μm)からなる構成体(偏光板貼付前の構成体)を用意した。この構成体の露出している粘着剤層表面と、ソーダライムガラス(ヘイズ値0%)とを貼り合せ、剥離シートを剥がすことにより、測定サンプルを作製した。
【0115】
上記測定サンプルについて、ヘイズメーター(日本電色工業社製,NDH2000)を用いて、JIS K7105に準じてヘイズ値(%)(Hz(%)と略する場合がある)を測定した。なお、好ましいヘイズ値の範囲は0〜3%であり、当該範囲内のものを○、当該範囲外のものを×と評価した。結果を表2に示す。
【0116】
【表1】

【0117】
【表2】

【0118】
表2から明らかなように、実施例で得られた粘着剤層付き偏光板においては、耐光漏れ性および耐久性のいずれも優れているとともに、リワーク性、耐腐食性および光学特性のいずれも良好であった。
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明の粘着性組成物および粘着剤は、光学部材、例えば偏光板や位相差板の接着に好適であり、また、本発明の粘着シートは、偏光板や位相差板等の光学部材用の粘着シートとして好適である。
【符号の説明】
【0120】
1A,1B…粘着シート
11…粘着剤層
12,12a,12b…剥離シート
13…基材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量平均分子量が50万〜300万の第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)と、
重量平均分子量が8000〜30万の第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)と、
架橋剤(C)と
を含有する粘着性組成物であって、
前記第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、酸性基を実質的に含有せず、かつ当該重合体を構成するモノマー単位として、前記架橋剤(C)との反応性が下記式(I)を満たす水酸基含有モノマー(a)を含有し、
前記第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)は、酸性基を実質的に含有せず、かつ当該重合体を構成するモノマー単位として、前記架橋剤(C)との反応性が下記式(I)を満たす水酸基含有モノマー(b)を含有する
ことを特徴とする粘着性組成物。
架橋剤(C)との反応性:水酸基含有モノマー(a)<水酸基含有モノマー(b)・・・(I)
【請求項2】
前記第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)の水酸基含有モノマー(b)における水酸基が結合している炭素原子に結合している炭素原子の数は、前記第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の水酸基含有モノマー(a)における水酸基が結合している炭素原子に結合している炭素原子の数よりも少ないことを特徴とする請求項1に記載の粘着性組成物。
【請求項3】
前記第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)の水酸基含有モノマー(b)における水酸基が結合している炭素原子に結合している炭素原子の数と、前記第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の水酸基含有モノマー(a)における水酸基が結合している炭素原子に結合している炭素原子の数とは同数であり、かつ
前記第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)の水酸基含有モノマー(b)に含まれる、重合体形成時に側鎖を構成する炭素原子の数は、前記第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の水酸基含有モノマー(a)に含まれる、重合体形成時に側鎖を構成する炭素原子の数よりも多い
ことを特徴とする請求項1に記載の粘着性組成物。
【請求項4】
前記第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)の水酸基含有モノマー(b)における水酸基が結合している炭素原子に結合している炭素原子の数と、前記第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の水酸基含有モノマー(a)における水酸基が結合している炭素原子に結合している炭素原子の数とは同数であり、さらに、前記第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)の水酸基含有モノマー(b)に含まれる、重合体形成時に側鎖を構成する炭素原子の数と、前記第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の水酸基含有モノマー(a)に含まれる、重合体形成時に側鎖を構成する炭素原子の数とは同数であり、かつ
前記第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)の水酸基含有モノマー(b)は、メタクリル酸ヒドロキシアルキルエステルであり、前記第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の水酸基含有モノマー(a)は、アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルである
ことを特徴とする請求項1に記載の粘着性組成物。
【請求項5】
前記第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)に含まれる水酸基に対する前記第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)に含まれる水酸基のモル比は、1.0以上、15未満であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の粘着性組成物。
【請求項6】
前記第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、前記水酸基含有モノマー(b)を10〜40質量%含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の粘着性組成物。
【請求項7】
前記第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部に対する前記第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)の割合は、5〜50質量部であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の粘着性組成物。
【請求項8】
前記第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)および前記第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)は、水酸基以外に、前記架橋剤(C)と反応性を有する官能基を実質的に含有しないことを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の粘着性組成物。
【請求項9】
前記架橋剤(C)は、イソシアネート系架橋剤であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の粘着性組成物。
【請求項10】
前記イソシアネート系架橋剤の含有量は、当該イソシアネート系架橋剤のイソシアネート基が前記第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)に含まれる前記水酸基の量に対して0.1〜3.5当量となる量であることを特徴とする請求項9に記載の粘着性組成物。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の粘着性組成物を架橋してなる粘着剤。
【請求項12】
基材と、粘着剤層とを備えた粘着シートであって、
前記粘着剤層は、請求項11に記載の粘着剤からなる
ことを特徴とする粘着シート。
【請求項13】
前記基材は、光学部材であることを特徴とする請求項12に記載の粘着シート。
【請求項14】
2枚の剥離シートと、
前記2枚の剥離シートの剥離面と接するように前記剥離シートに挟持された粘着剤層と
を備えた粘着シートであって、
前記粘着剤層は、請求項11に記載の粘着剤からなる
ことを特徴とする粘着シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−10838(P2013−10838A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−143598(P2011−143598)
【出願日】平成23年6月28日(2011.6.28)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】